>>618 朝日新聞 2008年(平成20年)9月25日 木曜日 大阪 13版 21面 オピニオン面
私の視点 '08政権選択 ワイド ◆解散総選挙へ
ほぼ期待してない
高橋 源一郎(たかはし げんいちろう)作家・明治学院大教授
おれはいままで2人の国会議員さんと話したことがある。いま気がついたんだが、どちらも二世
議員だった。ほんとに議員の二世比率、高すぎますから。
話して、おれは心底、びっくりした。ぜんぜん、話が通じない。っていうか、あの人たち、他
人の話を聞いてないんだ。おれがなにかを質問する。でも、そいつはおれの質問への答えじゃな
くて、そいつが話したいことをいう。で、おれが、だから質問への答えになってないじゃん、と
いうと、そいつは、またその質問への答えじゃなくて、そいつが話したいことをいう。そこで、
おれは……以上、繰り返しである。
おれの考えでは、あの人たちは、おれたちとは別の国に住んでいるのである。それは「政治の
国」だ。通用しているのは「日本語」じゃなく「政治語」、しゃべりの基本は「朝まで生テレビ!」。
ほら、あの番組の出演者、誰も、他人の話なんか聞いてないじゃん。あんなにたくさん出てるの
に、全員、演説しかしてない。あれです。
ゼミの学生で選挙権のあるやつに「選挙になったら、投票する?」と訊(き)いてみた。そした
ら、答えは「わかんないす」だった。「なんで」って訊いたら、「なんか期待できますか」だっ
た。いや、その通りかも。
期待してないんだよね。期待したいけど、あの人たちの顔や話してることをみるとげんなりし
ちゃうんだよ。だって、しゃべってることも、やってることも、意味ぜんぜんわかんないですか
ら。
(つづく)