朝日 4月30日 24面 「格差」の国で ※一部抜粋
「B地区にようこそ!」
インターネットのHPでアニメの美少女キャラクターが呼びかける。
「B」は被差別部落地区を指す隠語。
愛知や岐阜、三重県内にある部落地区とされる地名や写真が公開された。
作ったのは東海地方に住む無職の男性(27)。
ネット公開から6ヵ月後、名誉棄損の疑いで逮捕され有罪判決を受けた。
差別に向かったのはなぜか?
男性は地元の工業高校出身。派遣やアルバイトとして働いたがどれも長続きせず、
05年ごろから引きこもりがちになった。
インターネットにはまり、「2ちゃんねる」を特に面白がった。
ある乗り物事故がおきたときの書き込み。「自己責任だよ」を見て笑った。
イラクで旅行者が殺害された事件について「面白いショーを見せてくれた」と自ら書き込んだ。
そんな中、伏字やアルファベットだらけで意味がわからない掲示板に出会った。
部落地区を中傷する書き込みだった。
部落問題を知って興味を抱き歴史を調べてみた。
HPを立ち上げルポや写真を発表し始めた。
「よく調べたな」。ほめるコメントもあり、ますますのめりこんだ。
「今思えば「ネット弁慶」になっていました」
仕事を失って寄る道をなくした男性が向かった先は、
昔から差別されてきた人たちを、匿名となれるネット上で叩くことだった。
検事が取調べで動機を尋ねた供述書がある。
「引きこもりやニートと呼ばれる立場になったあなたが、
下位にまだ人がいると思って、自分の立場を保とうとしていたのではないか」
問いに男性は答えた。
「そうではないと思いますが、心の中に差別意識があったのかもしれません」