102 :
文責・名無しさん:
> 今回の参院選は、極言すれば、私たちに二つの道のどちらを選ぶかを迫っていると言えます。
> 一つは、与野党逆転によって参院は野党主導の運営となり、次の衆院選での与野党逆転、野党政権が
射程に入ってくるという道です。この場合、国政が停滞することはある程度覚悟しなければならないでしょう。
> 第二は、安倍政権の存続を認め、「戦後レジーム(体制)からの脱却」にゴーサインを出すという道です。
民意は上記でいうところの第二の道を選択した。
ゴーサインは出なかった。
103 :
文責・名無しさん:2007/07/31(火) 13:48:12 ID:8Kha4gFQ0
>>102 間違い訂正
○第二の道を選択しなかった
104 :
1/8:2007/08/01(水) 04:34:01 ID:ILO1vXhi0
特集 「参院選 自民党なぜ負けた」
安倍自民党が歴史的な大敗を喫した。29日投開票の参院選で、自民党は1989年の惨敗に次ぐ37議席にとどまり、
参院での第1党の座も失った。自民党はなぜ負けたのか。
105 :
2/8:2007/08/01(水) 04:36:25 ID:ILO1vXhi0
「組織への忠誠心低下」
平野浩:学習院大学教授。専門は計量政治学、政治過程論。
著書に「変容する日本の社会と投票行動」など。47歳。
小泉内閣の下で行われた4回の国政選挙のうち、最初の選挙である2001年参院選と最後の選挙である
05年衆院選で小泉自民党は大勝した。今回の安倍自民党の大敗は、この二つの選挙の見事なまでの
裏返しのように見える。
第一に、01年参院選で自民党は性別、年齢、職業、居住地域といった有権者の属性を超えた満場一致
的な支持を得た。相対的に弱いとされてきた大都市部でも、若者の間でも、既得権から切り離された
非正規雇用の人々からも、票を取った。しかし今回、こうした属性を超えた支持を獲得したのは民主党で
あった。自民党の牙城であった農村部でも、熟年世代の間でも、また自営業に携わる人々からも票を得た。
また、01年参院選では、成立後間もない小泉内閣に対する評価は「漠然とした改革への期待」に基づく
ものであり、それが自民党への投票を促進した。しかし今回、安倍内閣への評価は、閣僚の言動への
対処や国会運営の手法などに関する「個別具体的な『実績』の評価」であり、これが自民党にマイナスに働いた。
第二に、05年衆院選では「郵政民営化」という争点が、その具体的・政策的な内容を超えて、小泉首相を
信任するかどうかのシンボルとなり、結果として自民党を大勝に導いた。これに対して、今回の選挙では、
年金問題が(やはり具体的な内容を超えて)安倍政権に対する「不信任」のシンボルとして働いてしまった。
政策争点に関して付言するならば、今回の民主党は年金問題の他に、農家への「戸別所得補償制度」や
「子ども手当」と言った、自民、公明両党の支持層それぞれを明確なターゲットとした政策を前面に立てた。
これに対して自民党は、当初最大の争点としていた憲法問題をトーンダウンさせ、また格差問題に関しても
明確なスタンスを提示するには至らなかった。
言うまでも無く、これらの争点は、自民、公明両党の間に緊張関係を引き起こすものである。自民党、公明党の
いずれにとっても、緊密な連携を保つことの政策的なコスト(ひいては支持拡大に対するコスト)が次第に大きく
なってきているのではなかろうか。(続く)
106 :
3/8:2007/08/01(水) 04:37:39 ID:ILO1vXhi0
(続き)
では、今回の選挙結果から見えてくるものは何か。まず、有権者と政党との結び付きの希薄化である。
これは単に無党派層の増大といったことにとどまらず支持政党のある有権者においても、その意味が
急激に軽くなってきているように見える。民主党に投票した自民支持者が25%もいたという出口調査の
結果は、このことを明瞭に示している。
同様に、組織に対する忠誠心の低下は、組織票の動員を次第に難しいものとしている。その結果、今後
有権者の投票行動は、個別的な利害関係というよりも、その時々のシンボリックな争点や、内閣に対する
全体的な期待や業績評価によってますます大きく影響されるようになり、選挙結果の振れ幅も大きくなる
ことが予想される。
また、春の統一地方選の結果にも現れていた、衆院の選挙制度改変に端を発する2大政党化への流れが、
今回の選挙でも明確に示された。両院の第1党を2大政党が分け合うという状況は、二院制の在り方に
関する議論を緊急のものとするであろう。(了)
107 :
4/8:2007/08/01(水) 04:39:19 ID:ILO1vXhi0
「首相の行動に未熟さ」
飯尾潤:政策研究大学院大学教授。専門は政治学。
最近の著書に「日本の統治構造」など。45歳。
劇的な参院選の結果である。議席が大幅に減っただけではなく、政権や与党への批判が敗北をもたらしたことを
意味する「与党大敗」。従来のように与党が参院選で過半数に足りないというだけではなく、民主党主導の参院
運営が予想される初めての状況に立ち至ったことを示す「民主第1党」。この二つの言葉が、状況をよく示している。
安倍首相は悪くないのに、取り巻きの閣僚が悪い、という意見もあるが、やはり政権担当者の責任は重い。どの
ようなことを改めるべきなのか、政権運営に焦点を当てて考えてみよう。
選挙での敗北をもたらした政権運営の問題点は大きく分けて二つの要因があった。
一つは構造的な要因で、小泉政権の負の遺産とでも言うべき要素である。自民党内部の矛盾を逆手にとって、
「抵抗勢力」との戦いに仕立てた小泉首相の天才的な政治手腕は、党内の路線対立を拡大させたまま安倍
政権に重い課題を残した。
2005年の郵政解散・総選挙では、政権を失うという危機感をあおることで、従来型自民党支持層と、小泉自民党
支持層の双方が動員される形で、自民党に大勝をもたらした。しかし、安倍政権になると、そうはいかない。
疲弊した地方の自民党組織に、小沢民主党代表の手が伸び、これが今回の参院選での1人区大敗につながる。
他方、小泉自民党支持層は、昨秋の郵政造反組復党以来、安倍政権への支持を撤回し始め、今回は都市部の
複数区における民主党躍進を支えた。
安倍政権は、従来型自民党支持層と、小泉自民党支持層の二つの流れを統合して、新しい流れを作ることが
出来なかったのである。難しい課題だが、これをこなしていかなければ、安倍政権が目指す方向性についての
「得体の知れなさ」は解消しない。(続く)
108 :
5/8:2007/08/01(水) 04:40:19 ID:ILO1vXhi0
もう一つの要素は、安倍首相のマネジメント能力に関するものである。政権発足以来の官邸主導体制が
うまく機能しないほか、官邸と与党との関係もぎくしゃくし、霞が関官僚の能力の活用や、閣僚の統率能力
にも疑問符が付いた。昔のように官僚のおぜん立てにのればすむ時代ではないから、問題の解決は簡単
ではない。そこで、閣僚など人を入れ替えるだけではなく、どうすればチームワークが確保できるのかを
考え抜くことが大切である。
同様に、指導者自身の演出力についても課題がある。首相が自分で「指導力を発揮する」といえばすむ
わけではなく、人々から納得されるような指導者イメージを維持しなければならない。その点で、5月以降の
安倍首相の行動パターンは、一生懸命やっていることはわかるが、一国の首相としては未熟だという印象を
与えたことも否定できない。
最も欠けているのは、力を「ため」て、大きく行動することである。何ごとによらず、すぐに反応していては、
中途半端な対応しかできなくなる。年金記録問題などの対応を誠実にこなしていても、それが人々の共感を
生まないのは、そうした行動様式にも原因がある。
安倍首相が続投するのも一つの選択だが、体制の立て直しが出来なければ、国政に混乱をもたらすだけである。
真摯な反省に立った、政権運営体制の改善を期待したい。(了)
109 :
6/8:2007/08/01(水) 04:42:47 ID:ILO1vXhi0
「格差拡大 地方の怨念」
片山善博:慶應義塾大大学院教授。前鳥取県知事。自治省を経て1999年、
知事に初当選し、今年4月まで2期8年務めた。56歳。
自民党が惨敗した。この選挙の特徴の一つは、多くの1人区で自民党が敗れたことである。これまで自民党に
不利な風が吹いた選挙でも、1人区ではそれをはねのけるだけの底力を持っていたのに、一体どうしたのだろう。
変化の理由の一つに地域間格差の存在があげられる。景気回復によって大都市地域では雇用も税収もぐんぐん
伸びている。一方、地方では景気回復の足取りは弱く、しかも、「構造改革」による「官の撤退」の影響をもろに
受けている。良しあしは別にして、公共事業費の大幅削減と地方財政の圧縮は、地方の産業と雇用それに自治体
財政に相当大きなダメージを与えた。
もとより、地方は昔の状態に戻してほしいとまでは思っていない。しかし、格差の存在に鈍感で、口先以外には
何らの施策も講じてこなかった自民党に対するルサンチマン(無念さ、怨念)は確実に広がっている。
自治体財政の悪化は、経済面や生活面で「官」が何かと頼りにされざるを得ない地域で特に深刻である。ただで
さえ大都市地域との間で税収に大きな格差が付いているのに、三位一体改革はこの格差を人為的にさらに拡大
させてしまった。「地方分権推進」の狙いは官僚の御都合主義によって踏みにじられ、結果として地方交付税の
大幅削減だけがもたらされた。なまじ美名で言い寄られていただけに、「だまし討ち」にあったとの地方の不満と
怒りには根深いものがある。
首長や地方議員の批判を受けた自民党の国会議員の対応は、これを中央に持ち帰るのではなく、「霞が関の
言い分」でその場を取り繕うことでしかなかった。これによって、自民党の国会議員と地方の政治家の間の一体
感は急速に薄れ、ここでも別のルサンチマンを生むこととなった。(続く)
110 :
7/8:2007/08/01(水) 04:43:41 ID:ILO1vXhi0
その地方政治家も、市町村合併によって大幅に減っている。従来、小さな町村にも十数人の議員がいたが、
今では旧町村に地盤を持つ議員は1人か、せいぜい2人になってしまった。
過去、自民党がスキャンダルなどで評判を落とした折に、有権者と自民党の国会議員との間の「緩衝材」に
なっていたのが地方議員である。「うちの先生だけはちゃんとやっている」との地元への「とりなし」が意外に
功を奏していたのである。この緩衝材が消えてしまった今日、自民党の国会議員は直接有権者と向き合わねば
ならない。その際、「私だけは一生懸命やっている」といくら訴えても、それは言い訳にしか聞こえまい。国会議員は
、中央の失政に対する有権者の批判に直接さらされることになった。
地方議員が激減した効果は別の面にも表れている。かつて地方の有権者は保守系の地方議員によって組織化
されていたため、自民党以外の政党に「浮気」することに強い気兼ねがあった。しかし、もう気兼ねはいらない。
いまや、地方の有権者も都市の有権者と同じく浮動層に変じ、選挙のたびに「浮気」ができるようになったのである。
小泉前首相は、「自民党をぶっ壊す」と公約した。たしかに「構造改革」は地方にルサンチマンを生み、保守系地方
議員を一掃した。今回の1人区の選挙結果は、皮肉なことに前首相の公約が着実に実行されたことを示している。(了)
111 :
8/8:2007/08/01(水) 04:45:40 ID:ILO1vXhi0
〜今後も国民の目は厳しい〜
続投を表明した安倍首相は30日の記者会見でも、「反省すべき点は反省し、国民の信頼を取り戻したい」と述べた。
参院選で示された民意に耳を傾ける姿勢を示している。
首相は主に4点をあげた。
〈1〉年金記録漏れへの対応は、役所の立場でなく、国民の立場に立って行う
〈2〉小泉内閣以来の構造改革でもたらされた影の部分に光を当てる
〈3〉「政治とカネ」の問題に厳しく取り組む
〈4〉内閣改造で人心を一新する ――。
「衝撃」の大きさを物語る内容だ。
しかし、3氏の大敗分析を読むと、安倍政治と自民党の構造そのものにも、問題があると言える。
飯尾氏が「一国の首相としては未熟」とズバリ指摘しているが、首相自身の問題だ。指導力、統率力のあり方を、
もう一度考えるべきだろう。
また、構造改革路線と従来の自民党路線をどう統合していくのかも示す必要がある。平野、片山氏が言う、
地方組織の崩壊と大きく関係している。構造改革の直撃を受けた地方の支持基盤をどう再構築していくのか
につながる問題だ。
あわせて、首相が掲げる「戦後レジーム(体制)からの脱却」との整合性も取らなければならないだろう。
安倍首相は、今回の大敗で厳しい国会運営を強いられるが、国民から厳しい目を向けられることを忘れてはならない。
(編集委員 尾崎和典)
7月31日(火)の朝刊より