「夜の映画学校」読んでみた。
確かに、森のトンチンカンなドキュメンタリー論や屁理屈が、黒木に軒並み一蹴されてる。
森 黒木さんは岩波映画製作所にいましたから、ドキュメンタリー映画の監督として
出発したわけですよね。
黒木 いや、僕はドキュメンタリーじゃないですね。何と言いますか、チンドン屋って言いますか、
PR映画からスタートしまして、ドキュメンタリーをやった覚えはほとんどありません
森 いい加減にやってるところが、ドキュメンタリータッチだと勘違いされる?
黒木 いい加減じゃなくて、醒めてやってる
森 失礼しました。全然違いますよね。でも醒めてやってるわりには最近の戦争レクイエム
三部作を含めて、僕から見てもほんとうに精力的に作ってらっしゃいますよね。いま何か
駆り立てるものがあるんですか。
黒木 いや、ただ映画をやっているからしょうがなくて、映画で何かを作ろうということに過ぎない
感じがしますけど・・・・・・。映画以外にツブシがきかないんですね。ですから、自分がやって
いることがちゃんとしているかどうかは皆目わかりませんね。
この後、森は「そうは言ってもですね」と食い下がるが、黒木はとりあわず、業を煮やしたのか、
黒木はやんわりと話題を変えている。
169 :
文責・名無しさん:2007/07/01(日) 15:38:09 ID:pjV+uO3a0
黒木 森さんの期待をちょっと裏切ることになりますけれども、ドキュメンタリーとフィクションはまったく
違いますね。同じなんだとおっしゃりたいんだろうと思いますけど、話の展開としてはね。しかし
ほとんど違います。
森 ・・・・・・どの辺が違いますか?
黒木 フィクションはほんとうにないものをまったくでっち上げますけど、ドキュメンタリーはあるものを
どうでっち上げるかというね、決定的な違いですね、それは。永遠の違いです。
森 そうでしょうか?フィクションの場合はまず頭の中でストーリーを作って、それでプトットを考えて
シナリオにしますよね。それから絵コンテを作って、撮影していくわけなんですけど、ドキュメンタリーの
撮影はまず現場に行って撮影し、撮影した素材から自分の中で絵コンテを作って、そこからストーリーを
作って編集していく。つまり、現場に行って撮影するまでの過程は違うんですけど、そこから後は
フィクションと一緒なわけですよね。
黒木 いやー、違うんだよね。まったく違う。
森 どのへんが違いますか? そこから後も違いますか?
黒木 ええ、それはもうあくまでドキュメンタリーはあるものをフィクショナルに組み立てていくわけですから。
劇映画の場合はないものを、まったくないものをどこまでフィクションに作り上げていくわけですね。
質的な関係は、全然どっちが素晴らしいとかどっちがまずいとかそういうことはまったくありませんけども、
ドキュメンタリーとフィクションはまったく違います。
森 つまりその、僕が言ったのはその後半部分は同じじゃないかっていう・・・・・・。
黒木 いや、違うと思います。
森 そこも違うんですか?
黒木 ドキュメンタリーはあるものをデフォルメしてるわけですからね。劇映画はないものを全部デフォルメ
するわけですね。
この後も屁理屈で食い下がる森を黒木が一蹴するというやりとりが繰り返された挙句、
ちゃんと映画を見ていないことを諭された森が「すいません」と誤り、別の話題に移るという
間抜けな展開になっている。