4/3「声」大阪
斉唱の拒否に私は「いいよ」 無職/岡本操二(和歌山県田辺市 73歳)
私が公立中学校の校長をしていた21年前のことです。
当時、国旗国歌をめぐって文部省・教育委員会と教職員組合が、激しく対立していました。
教育委員会から卒業式で日の丸掲揚、君が代斉唱が通達された2月。
校長室のドアをノックする音がし、3年の女子生徒が入ってきました。
私がすすめたいすに腰掛けると、彼女は静かに話し始めました。「私は宗教上の理由で卒業式の
国歌斉唱のときは立ちませんし、斉唱もしません。先生にそのお許しを受けに参りました」
事情を知っていた私は即座に、「結構ですよ。信仰を貫き通しなさい」と言いました。
安堵した彼女の姿が、今も目に焼き付いています。
卒業式の当日、彼女は座ったままでした。憲法に認められた思想・信仰の自由を貫いた彼女を、
立派だなと私は思いました。
いろいろな式典で国旗・国歌が普通になった今。同時に憲法改正に向かっている今。
あの時の判断に間違いはなかったと、私は今も考えています。