社説 雇用慣行を根本から見直せ(8/19)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20070818AS1K1700118082007.html (要約)
少子高齢化が進む中で、高い経済成長をいかにして実現するか。その鍵を握るのは人材である。
改善されない長時間労働や低賃金で不安定な非正社員の増大がそれである。
厚生労働省がまとめた2007年版「労働経済白書」は、「企業部門で先行している回復を、雇用の拡大、賃金の上昇、労働時間の短縮へとバランスよく配分する」必要性をわざわざ訴えている。
量的な面だけでなく、雇用の中身も改善しなければ、成長の基盤が損なわれかねないとの危機感の広がりが感じられる。
上場企業全体では最高益を5期連続して更新しているが、将来を見通すと企業は様々な問題を内部に抱えている。例えば中堅以下の若手社員の仕事への意欲の低下や心の健康問題として表れている。
日本経団連は、景気回復の要因として「人間尊重」「長期的視野に立った経営」を柱とする「日本的経営の理念」を挙げている。負の側面を見落としてはならないだろう。
内閣府の07年版「国民生活白書」によれば、正社員の67%強は5年前と比べて「仕事上の責任や負担が増した」と感じており、中堅層の30歳代は78%近くに上る。
社会経済生産性本部のメンタル・ヘルス研究所の昨年の調査では、61%強の企業がここ3年間に「心の病」が増加傾向にあるという。
「心の病」が最も多い年齢層については「30歳代」という回答が年々増えて61%に達し飛び抜けて多い。
理由は単純ではないものの、長時間労働の定着が一因と考えられる。30歳代の男性正社員の約4人に1人が週に60時間以上働いている。週40時間の法定労働時間より5割以上長い。土日に出勤しないとすれば1日4時間を超す残業となる。
年次有給休暇の取得率も1990年代半ばの56%強をピークに低下傾向にあり、01年からは50%を切る状態である。