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文責・名無しさん:
日本経済新聞 2007年3月11日 朝刊
中外時評 「危うい日米慰安婦摩擦」 論説副委員長 安藤俊裕
河野洋平衆院議長が14年前に出した従軍慰安婦問題に関する内閣官房長官談話、
いわゆる「河野談話」はいまだに様々な議論を巻き起こし、深刻な混乱を招いている。
河野談話は果たして正確な事実に基づくものなのか、談話が指摘するような、慰安婦募集
に際して「官憲の加担」などの強制性が本当にあったのか、疑問視する声は日本国内に
少なくない。
(中略)
河野談話の経緯については当時の官房副長官だった石原信雄氏らの証言によって、
政府の調査では強制性を裏付ける文書や物的証拠はなく、もっぱら韓国人元慰安婦からの
聞き取り調査を根拠にして、河野氏が日韓関係に配慮し強制性の認定を政治決断したと
されている。物的証拠がないから強制性はなかったと決めつけることはできないが、
元慰安婦の証言だけで官憲の強制性があったと断定するのも乱暴な話である。
当時の政治家が外交関係の配慮を優先せざるを得なかった事情はあるにしても、そのため
に行った不用意な判断がその後も一人歩きして、世界中を駆け巡っているのは残念なことで
ある。慰安所のような施設は他国の軍隊にもあり、占領地での暴行・略奪を防止する狙いも
あったとされる。他国ではそれほど問題にならず、日本だけが大問題になるのは一部メディア
によって「朝鮮人従軍慰安婦を強制連行」「官憲が関与し、慰安婦狩り」のようなイメージが
作り出され、日韓間の外交問題に発展したからである。
明確な事実を根拠にして「性的奴隷を強制した」と非難されるなら、甘んじて非難を受け
入れ、謝罪するしかない。しかし、根拠が必ずしも明確でない対日非難が行われるとすれば、
日本人として心穏やかではいられない。安倍首相が「客観的な事実に基づいていないことに
謝罪することはない」と答弁したのはそうした心情からだろう。
この安倍発言は米国の世論を刺激した。米国では安倍首相らが「問題の核心」と重視する
強制性の有無にはさほど関心は払われず、従軍慰安婦が存在したこと自体が悪であり、
安倍首相は謝罪・反省を拒否するごう慢な人物として単純化されつつある。これは危険な
兆候である。 (後略)