☆朝夕の娯楽★天声人語&素粒子。46の蝦蟇★

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417文責・名無しさん
天声人語 2007年04月24日(火曜日)付

 テレビの普及台数が約1億と聞き、今さらながら驚いた。低俗番組を批判して「一億総白痴化」
と言われた昭和30年代初めが約50万台だから、ざっと200倍に増えたことになる。

 暮らしに寄与してきた半面、悪(あ)しき影響への心配はどこも同じとみえ、英語には「愚者
のランプ(イディオッツ・ランタン)」と呼ぶ俗語もある。これを「阿呆(あほう)の提灯(ちょ
うちん)」と訳したのは誰だったか。ともあれ1億台となれば、ほぼ国民ひとりが一つずつ、提
灯を提げている計算になる。

 俳人の長谷川櫂(かい)さんが雑誌で、家庭にテレビがあることを、「家族の中にあまりガラ
の良くない他人がいるということ」と述べていた(「望星」4月号)。安手なバラエティーなど
に苦り切り、我が意を得たりの人も多いだろう。

 テレビ草創期以来の半世紀は、その“ガラの良くない他人”が、ぐいぐい巨人化してきた時代
でもあった。たとえば成長期の少年が、自分の腕力に無自覚なまま人を殴り、思いがけないけが
をさせてしまう。それに似た幼稚さと無責任が、なお業界にあるように見える。

 関西テレビの捏造(ねつぞう)問題を機に、政府は放送法改正案を国会に提出して会期中の成
立をめざしている。国の規制を強めようとする法案である。テレビ側にも問題はあるが、表現の
自由の阻害を心配する声も大きい。

 不名誉な呼ばれ方の多いテレビではあるが、良くも悪くも、家族の一員のような存在ではあろ
う。ガラの悪さを正すのは、国家権力ではなく、作る側の良識と、見る側の批評眼でありたいも
のだ。
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「昭和30年代」という言い方は何だろ。朝日新聞は頑なに元号を使わないと思ったのだが。
ガラの悪さと捏造手法では、テレビメディアより半世紀も先を行く言論ヤクザの羽織ゴロが、何
をまた偉そうに、という感じ。
「良識」「批評眼」と言うは易いが、その言葉に見合わない行動をする「言論機関」に対して、
「国民の代表」たる政府が規制を行うのは仕方が無かろう、という諦観もあるのは、事実。