産経抄ファンクラブ第57集

このエントリーをはてなブックマークに追加
814文責・名無しさん
平成18(2006)年2月27日[月]
 とうとう終わってしまったトリノ五輪。フィギュア女子の荒川静香選手のアジア初の金メダルという快挙で
終盤は盛り上がったとはいえ、君が代が聞けたのが一回とは寂しかった。

 ▼その一方で、選手たちが「五輪を楽しめました」とあっけらかんとしていたのは、未明からテレビにくぎ
付けになり寝不足で出勤していた視聴者としてはちょっと違和感があった。冬季五輪としては最大規模の
約二百四十人の役員・選手団を送り込み、目標メダルを五個と言っていた。

 ▼五輪プレッシャーに負けまい、という自己暗示でもあったのだろうが、国民の期待と誇りを背負って参戦し
ているのだ。納得のいかない成績ならば、もっと闘志をむき出しにして悔しがってほしいというのは間違いか。

 ▼そのなかで、金メダルの荒川選手とともに健闘したものの、惜しくもメダルに届かなかった村主章枝選手
が印象に残った。大きな目に涙をためて、バンクーバー五輪を次なる目標に語ったのにはちょっとしびれた。

 ▼はかなげな風情とは裏腹に、強靱(きょうじん)でしなやかで熱い彼女の精神は、個人的に拍手を送り
たいもののひとつだ。豊かな表情から「女優」とも言われるが、十六歳のときは表現力が足りないことが悩
みだったという。それを自らカナダの著名振付師、ローリー・ニコル氏に直談判して教えを請い、表現力を
会得していった。才能面では荒川選手に及ばないことを認める勇気、それでも失わない闘志が美しい。

 ▼闘志といえば難病を克服し、二十七歳で大会に参加したやはりフィギュアのロシアの女王、スルツカ
ヤ選手も燃えるような勝利への情熱を見せ、心に残った。バンクーバーでは村主選手が彼女のような貫
禄(かんろく)を見せてくれることを期待しよう。