☆朝夕の娯楽★天声人語&素粒子。42(死に)至る病★

このエントリーをはてなブックマークに追加
53文責・名無しさん
【天声人語】平成18(2006)年01月16日付
http://www.asahi.com/paper/column20060116.html

 朝晩めっきり冷え込む季節は体調を崩しやすい。ちょっと風邪気味かなと思
った先日、ホームセンターの家庭用品売り場で、子ども時代に使っていた湯た
んぽと再会した。
 カメの甲羅のようなブリキ製のあれである。昭和30年代には、今のような
軽くて暖かい寝具は出回っていなかったから、湯たんぽは欠かせなかった。た
だし栓が小さいので熱湯を入れるのは難しい。毎晩母に入れてもらっていた。
ネルの袋も母の手作りだった。
 作家の故向田邦子さんも回想している。「湯タンポは翌朝までホカホカとあ
たたかかった。自分の湯タンポを持って洗面所にゆき、祖母に栓をあけてもら
い、なまぬるいそのお湯で顔を洗うのである」(『父の詫(わ)び状(じょう
)』)。湯たんぽの周りでは、時間がゆっくり流れていた。
 もともとは中国伝来である。清代の小説『紅楼夢』にも登場するという。日
本でも元禄期には使われていたらしい。かつては陶製だったが、昭和初期から
金属製が普及した。高度成長期に広まったガスや電気の暖房器具に追われて、
ほとんど姿を消していたものの、今また注目されている。
 店頭には、ゴム製やプラスチック製も並ぶ。湯たんぽは空気を乾燥させない
ので、肌にやさしい。電気の消し忘れもない。こうした様々な効用が見直され
ている理由だろう。
 湯たんぽという名前も、とても温かそうだ。「たんぽ」とは、器をたたいた
ときの音から来たという説と、中国語で湯たんぽを意味する「湯婆」の唐音が
語源だが、それが忘れられて、「湯(ゆ)」が付け加えられたという説がある。
--------
参考までに01月15日付の読売新聞「編集手帳」をご覧下さい。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060114ig15.htm