関西の人が東京方面から新幹線で帰るとき、ホッとする瞬間があるという。
車窓から伊吹山の姿が見えたときである。標高一、三七七メートル、滋賀、
岐阜の県境、関西の玄関口にそびえている。
「やれやれ帰り着いたか」と感じるのだそうだ。
▼その伊吹山を観察し続けた人のことを、司馬遼太郎さんが『一人のいなか記者』
というエッセーに書いている。産経新聞長浜通信部の記者だった伊藤末造さんの話だ。
伊藤さんは毎年秋が深まると、朝三時に起き物干し台から伊吹の方向を見つめ、
夜明けを待つのが日課だった。
▼「伊吹に初雪」という「特ダネ」を書くためである。ここに雪が降れば関西に冬がくる。
伊藤さんにとって一刻も早く知らさねばならない情報だった。司馬さんも「こういう人たちの
努力があって、毎日の新聞はできあがっている」と、畏敬の念を込め紹介している。
▼今年の伊吹の初雪はさすがにまだ先のことだろう。しかし、このところの新聞や
テレビには、季節の深まりを伝えるニュースが多い。富士山では初冠雪を観測し、
北海道での紅葉はピークを迎えた。兵庫県の高原では、ススキの穂が秋風に揺れているという。
▼それほどまでに秋は季節の移ろいが早い。だが今年は、変化が激しいのは気候ばかりでない。
政治の世界もそうだ。七月にはわずか五票差で衆院を通過した郵政民営化法案が、
こんどは二百票の大差で可決された。選挙の結果とはいえ、信じられないような激変である。
▼前原民主党の誕生で憲法改正も一気に現実味を増した。小泉首相の靖国神社参拝をめぐる
環境も大分変わってきた。伊藤さんが伊吹山を見つめ続けたように、
この世界も注視していかねばならない。変化を見逃してはならないのである。
http://www.sankei.co.jp/news/column.htm ___________________________________
今日の産経抄をどうやって叩くつもりだ?
言いがかりや因縁をつけなきゃ叩きようがない内容だぞ。
さて、楽しみに観察しようじゃないか。