7/14大阪版
残留孤児らに「大岡裁き」を
会社役員 越野英雄 (神戸市東灘区 63歳)
中国残留孤児の苦難の人生に、日本国の責任はないのか。中国語で
救済を叫ぶ老いた孤児の姿に同情を禁じ得ない。これが豊かな国で起き
ている現実なのか。
大阪地裁は6日、孤児たちの訴えに対して、国に支援の義務があるとは
言えない、などとして全面的に退けた。
戦前の国策によって旧満州(中国東北部)への入植・国防政策が進めら
れた。敗戦直後の大混乱の中で幼い子どもたちは置き去りにされ、苦難の
道を歩んできた。裁判で彼らは、早期帰国をはかる国の義務、帰国後の
自立支援の義務を挙げて国と争った。
判決は、国民が等しく受忍しなければならない戦争損害に属する、と判断
した。だが、戦後の経済復興が進んだ国内に住む大多数の国民と、国外
に放置され過酷な人生を余儀なくされた孤児とは、明らかに大きな隔たり
がある。
裁判所は、深刻な生活実態や精神的苦痛に対しては一定の理解を示し
たものの、救済は拒絶した。平成の今、真に情のある「大岡裁き」は出来
ないものか。国民皆が問われている。