弱点はバブル経済 小泉「改革」の陰部
浜矩子・寺島実郎「 『入亜』時代にうまく身をゆだねられるか」(週刊エコノミスト5月3・10日号)で、寺島は、米国を抜いて
大中華圏が最大の貿易相手国になった事実を挙げた上で、
「この十数年で経済はとっくに『アジアシフト』しているのに、日本は米国のトラウマから逃げられない」という。
「ビジネスウィーク」誌記事「なぜ日中はいがみ合うのか」(4月25日号)もいう。長期的傾向を見れば、2010年代の終わりには
中国はGDPも軍事費も日本を抜くと見通した上で、
「日本人がそれを認めるのに痛みを伴うほど、中国はますます支配権を握ってゆくだろう」と。
保守派は、情緒的ナショナリズムを煽ることで中国に対する「優越感」を保とうとするが、それは「敗北のナショナリズム」という面
を色濃く帯びている。もちろん、「バブルの膨張をこれ以上許すことになれば、来るべき調整過程はさらに深刻なものとなる」との
指摘(週刊エコノミスト 4/26号)があるように、中国はバブル経済という弱点を抱えている。しかも、元切り上げは海外資金の流入を
もたらし、米国が要求する変動相場制移行を受け入れて元売りドル買い介入しても、同じく国内のマネーサプライを増加させ、
ますますバブルをひどくしてしまう。こうした中国の脆い分野でイニシアティブを取って調整力を発揮しながら、ソフトランディング
を図ってゆく高度な外交戦略こそが求められている。
ところが、鈴木宗男事件で有罪となった佐藤優は、
「国内では、『こいつは中国の手先じゃないか』・・・・などと批判されながらも、外では絶対に譲れない日本の原理原則を
主張して、両側から板挟みにあいながらも粘り強く交渉を進めていく。そういう外交官が少なくなりました」と嘆く
(佐藤優・福田和也「瀬戸際の日本外交−国益、情報、ナショナリズムとは何か」 現代6月号)
皮肉なことに、こうした「国益」をベースに行動するリアリスト保守の政治家や外交官が消えたのは、それを担ってきたのが
金権政治にまみれた「抵抗勢力」であったからだ。それが、扇情的ナショナリズムの一人歩きをもたらす。
そこが小泉「改革」の見えざる影の部分なのだ(お終い)