厳善平「中国の所得分配と貧困問題」(東亜5月号)が、経済格差の実態と原因を詳しく分析している。
(略)
こうした実態を見ると、中国政府が「反日」運動を組織しているのか、貧富の格差に不満を持つ人々が「反日」をスローガン
として利用しているのか、実は判然としない。むしろ、正当性を競う外交において、相手国に足元を見られるような行為を
する自らの愚かさこそ自省するべきである。その意味で、
「一方で東アジア共同体構想を唱えながら、小泉純一郎首相がA級戦犯を合祀した靖国神社に参拝して近隣諸国をいたずらに
刺激するのは国際感覚を欠く」とする岡部直明「日中は仏独に何を学ぶか」(日経新聞5月9日)の指摘は正しい。たとえば、
ドイツのシュレーダー首相がナチス幹部の墓参りをすれば、EUにおいて彼の政治生命は絶たれるだろう。保守派には
こうした国際感覚そのものが欠けている。
彼らには外交で勝つ展望は無い。いまや保守派が「国益」を盾に情緒的なナショナリズムを煽れば煽るほど、「国益」を失うと
いう逆説が生じている。首相の靖国参拝で関係がこじれて以降、携帯電話や新幹線など中国国内の
OS(オペレーティングシステム)を欧米企業に握られそうになっており、将来の「国益」が損なわれつつある。しかも保守派は、
北朝鮮の場合と違い、経済制裁や資産凍結をとは言えない。仮にそうすれば、中国経済とともに日本経済も壊滅的な打撃を
被るからだ(その3に続く)