敗北のナショナリズム 国際感覚欠く保守派 「国益」失う逆説生む
中国で起きた「反日」デモに関して、保守論壇から多くの論考が出た。相変わらず勢いだけはいい。
石原慎太郎「緊急提言 北京五輪を断固ボイコットせよ」(文芸春秋6月号)を見てみよう。石原は、
「あの抗議行動は官製デモ」であるとし、この「反日デモ」のきっかけになった首相の靖国参拝は
「日本人の精神と文化の本質に深く関わるもの」であって、経済とは「全く次元の違う問題」だと述べる。
そのうえで、
「日本の政財界が国益を損なってまで重きを置くほど、中国は将来性あふれる市場なのでしょうか」と問いかける。
そして尖閣諸島の「魚釣島へ自衛隊を常駐させ」、「軍事的対処と情報戦略で相手を揺さぶる」ことが必要だと
主張する。
多くの保守派の論者は、「反日デモ」を官製デモだとするが、貧富の格差と不満が背景だという評価も出ている。
富坂聡「第二の天安門事件の幕開け 反政府暴徒137人が殺された」(文芸春秋6月号)がそうだ。
富坂は、
「中国政府が民衆の力を利用したとしても、それはデモの直前までのことだ。なぜなら、中国の権力者は
どんな理由にせよ、大衆が政治的意図を持って集まることを嫌うからだ」という。農村から都市に来た労働者の
貧困状況だけでなく、学生の就職率も深刻な状況だという。(その2に続く)