☆朝夕の娯楽★天声人語&素粒子。聞か36★

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52文責・名無しさん
■《天声人語》 12月20日付

 謎のクジラが北太平洋を遊泳しているそうだ。発する声からはヒゲクジラの一種だと思われるが、
波長がまるで違っていてこれまで聞いたことのないタイプだという。

 米海軍の潜水艦探知記録によると、もう12年間も遊泳を続けている。年齢のせいか、声は徐々
に低くなっているらしい。群れではなく単独行動をしている。英科学誌ニューサイエンティストが報じた。
未知の声を発しながら、孤独な老クジラが大海を泳いでいる。想像をかきたてられる光景だ。

 オーストラリアとニュージーランドでは、11月末から大量のクジラが浜に打ち上げられた。懸命の
救助作業にもかかわらず、100頭以上が死んだ。いろいろ原因が論じられている。

 クジラは地球の磁場を頼りに移動するという説がある。何らかの理由で磁場が変化したためでは
ないか。気候変動を原因にあげる人もいれば、餌の移動説、あるいは人工音に惑わされたとの見
方もある。「病んだリーダーか幼いクジラが浜に打ち上げられ、他のクジラは助けようとした」。地元
紙はそんな説も紹介していた。

 昨年公開されたニュージーランド映画「クジラの島の少女」を思い出す。浜に打ち上げられた瀕
死(ひんし)のクジラの群れを一人の少女が助ける物語だ。リーダーのクジラにまたがり群れを誘
導する少女の感動的な姿は、先住民マオリ族の伝説の再現だった。

 今度の「事故」でも「彼らの魂は私たちと同じです」といって、死んだクジラの頭を海に向け、丁寧
に埋葬する光景が見られたそうだ。謎と伝説が尽きない生き物である。