反日騒動 日中関係の明日に暗い影
禹 守根(ウ スグン) 上海・華東師範大学客員教授(国際関係学)
中国製品があふれ、中国とのビジネスで景気に明るさが見え始めた日本。一方中国でも
日本製品はあこがれの高級品。アニメやJポップの人気も高い。1日1社のペースで日本
企業の進出が続く。日本は中国にとって一番の貿易相手だ。
「すでに運命共同体」(日本の財界指導者)と言われるほど緊密な段階に来た日中の
経済関係だが、重慶、済南、北京と熱戦が続いたアジア杯サッカーでの激しい「反日」
ブーイングはつい忘れがちな両国間に横たわる亀裂を見せつけた。
7月初め、上海の食堂でこんな光景に出くわした。店のテレビは、南京にある旧日本軍
従軍慰安婦施設の撤去をめぐる番組を流していた。その一幕に、靖国参拝をする小泉
首相の硬い表情が映し出されると突然、客たちが口々に小泉首相をののしり始めた。
アジア杯での騒動を「反日教育の結果」と批判する永田町は気付いていないようだが、
中国大衆の対日感情の悪化は深刻だ。ささいなことが日中関係に打撃を与えかねない。
陳潔華(チェンチェファ)・華東師範大学教授は「経済は『熱』、政治は『冷』。
国民感情はすでに日本と『戦争中』」とまで指摘する。
日中の政治関係は「異常」が続いている。東アジア共同体構想や北朝鮮の核問題が
大事な時期というのに、日中首脳の往来は01年10月の小泉首相訪中以降ないままだ。
中国の外交当局は会談を首脳部に進言しているが、靖国問題があって、大衆の反発を恐れる
首脳部は聞こうともしないと陳教授。
参拝にこだわり、反日の火に油を注ぐ姿勢は指導者として唯我独尊のそしりを免れない
だろう。
日本と中国のビジネスマン約200人を対象に日本の新聞が最近行ったアンケートがある。
今後最も関係を強化していくべき国として、日本人は、43%が中国、21%が東南アジア
諸国連合(ASEEAN)、19%が米国をあげた。しかし、中国人は米国の31%、ロシアの24
%、ASEANの23%が上位で、日本は4%にとどまったという。
日本政府自らの「改善」への期待が薄れ、「熱」であるはずの経済関係者の間でも日本
離れが表れてきた兆しなのだろうか。