キュー 涙を誘うだけ「仔犬のワルツ」
「冬のソナタ」に代表される韓国ドラマ・ブームが、今シーズンの
連ドラに波及している。というか、そもそもは日本のドラマの影響が
色濃い韓国ドラマによって、作り手が自らの力を再認識したようだ。
その最たるものが、野島伸司が企画する「仔犬のワルツ」(日本テレビ系)である。
ヒロインは養護施設で育った盲目の少女。実はピアニストとして天才的な
才能を持っている。そんな彼女を発見し、育てるのが、音楽大学の
経営者の養子で、きょうだいに疎外される孤独な青年だ。
そこに少女を癒す仔犬がからむ。「星の金貨」に野島伸司作品の
「家なき子」のエッセンスを滴らせたようなもの。
しかし、原典は「シンデレラ」と「マイフェアレディ」であろう。
不幸な状況にいる女性が、王子さま的男性によって救い出され、
愛という媚薬により本来の才能を開花させていく。野島はそれを、
なんでやねんと思わずつっこみたくなる強引なストーリー展開で、
あざとく見せていく。実に不快だ
死んだはずの初恋の人が10年後に再び現れる「冬のソナタ」も
びっくりものだが、そこに不快感はない。アホらしいとは思うが、
恋人の再生という奇跡への願望を共有できるからだ。だが、
寂しい生い立ち、ハンディキャップ、仔犬、いじめといった涙を
誘う記号の押し売りには、人の弱みにつけこむ嫌らしさがある。
マッサージ師をしていた少女が同僚の女性からこれでもかと、
いじめられる1回目の放送でもうたくさんだった。なぜ女たちが、
「冬のソナタ」にハマるのか。本当の理由が「仔犬のワルツ」の
作り手にはわかってないとみえる。(島崎今日子)
野島で日テレであの枠のドラマを真面目に観るのは、
朝日新聞で電波浴をしないに等しいと思う。