☆朝夕の娯楽★天声人語&素粒子。30枚の銀貨★☆

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550文責・名無しさん
■《天声人語》 05月12日付

 昔々、あるところに「どんぐり国」がありました。将来の暮らしに備えて、オトナたちは毎月決め
られた数のどんぐりを、森の奥の大きな蔵に納めておりました。どんぐりは大切な食糧で、お年寄
りたちに配られていました。

 森の中でも少子高齢化が進んできました。ある年、どんぐり内閣は、納めるどんぐりの数を増やし、
将来受け取るどんぐりは減らす「どんぐり年金」改革法案を、どんぐり国会に出しました。

 ところが、何人ものどんぐり大臣が、どんぐりをきちんと納めていなかったことが分かりました。ど
んぐり国会は大騒ぎです。どんぐり野党の党首は「どんぐり未納兄弟」とかみついたのですが、本
人も未納と分かって辞任しました。他の野党元党首も未納と分かり、国会の主な政党すべてに未
納問題は波及したのです。「どんぐり議員年金」の特別扱いも疑問視されました。

 ここまではどこかの国の騒ぎとそっくりですが、その先が違いました。議員全員のどんぐり納付の
実績公表を求める世論が起こりました。もっと出せと求める側が、ちゃんと納めていないのでは恥
ずかしいという議員も増え、公表されたのです。

 法案は、それこそ抜本的に見直されました。仕事で異なる年金の一本化も、真剣に話し合われ
ました。かの国の、先送りの響きを伴う「一元化」ではありません。ひたすら、負担と給付の「公平
化」をめざしたのです。

 取りやすい所から、いっぱいどんぐりを取る。こんなやり方を改めさせたのは、やはり、どんぐり
国民の声だったということです。