『産経抄』ファンクラブ 第20集

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コレね。

戦禍の狭間、見捨てられた命 “ストリート・チルドレン”に日本人女性が救いの手
2004.01.06 
 ■北海道千歳市出身・高遠菜穂子さん(33)
 ■バグダッドで少年たちを単身救済
 ■「医者でもない私ができることを」
 【バグダッド=岩田智雄】イラクの首都バグダッドで、米軍の掃討作戦や武装勢力のテロ攻撃
の陰でイラク人社会からも国際社会からも見捨てられ、すさんだ暮らしに身を沈めている青少
年たちがいる。彼らはサダム・フセイン政権の弾圧や度重なる戦争で家族を失い、廃虚となって
いる雑居ビルの地下室に集まってきた。そんな“ストリート・チルドレン”に、北海道千歳市出身
の日本人女性、高遠菜穂子さん(三三)が単身、救いの手を差し伸べている。
                  ◇
 一歩足を踏み入れると、汚物の悪臭が漂い、十数人の少年がうつろな表情で毛布にくるまって
いた。室内にはテレビが一台と粗末な棚があるだけだ。多くの外国報道機関が取材拠点にしてい
る市中心部のパレスチナホテルやシェラトンホテルは目と鼻の先。米兵やイラク人警官の目を
避けるように生活を共にしている。ここで暮らす青少年たちは十五−二十歳代前半。靴磨きや物
ごいをしながら日銭を稼ぎ、シンナーや睡眠導入剤などのドラッグにふける。命の灯火を小さくし
ながら、ただ毎日が過ぎ去るのを待っているかのようだ。

 「イラク人警官にマシンガンで殴られ、目がよく見えないんだ」
 年長格の若者はこう話した。彼らに対するイラク人社会の目はことのほか厳しい。街を歩いて
いるだけで警官から容赦のない暴行を受けることも珍しくない。この若者はイラン・イラク戦争で
両親を亡くし、兄はサダム・フセイン政権のもとで処刑されたという。自分の年齢さえよくわから
ない。精神はズタズタに壊れているようだ。
 別の十五歳の少年は、五年前に両親がヨルダンへ行ったまま行方がわからない。祖母と暮ら
していたが、最近亡くなったため、このシェルターへやってきた。叔父が四人いたが、やはり「フ
セイン政権下でみな処刑された」と話す。
179引き出し:04/04/09 11:35 ID:1Ha4FNiA
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続き。

 こうした若者を救おうと、昨年十一月から食糧支援やドラッグからの切り離しに取り組み始めた
のが高遠さんだ。大学卒業後、OLをしていたが、米国で出会った黒人解放運動の活動家に触発
されボランティアの道に。二〇〇〇年に三十歳を迎えたのを機に、インドを中心に手弁当で孤児
の救済活動などに携わってきた。非政府組織(NGO)の外国人スタッフが、治安の悪化で次々
にイラク国外へ退避するなか、高遠さんは「私は医者でも看護婦でもないが、一人の人間として
小さいことでも何でもできることを確かめたい」と、日本でのアルバイトで稼いだお金で、単身ボ
ランティアを続けている。
 高遠さんは毎日、地下室のシェルターにパンなどの食糧を持ってやってくる。部屋の掃除をさ
せ、ドラッグを取り上げる。シェルターにはかつて、十歳未満の子供もいたが、こうした年少者は
欧米のNGOの支援で孤児院に引き取られていき、扱いにくい十代半ば以降の者だけが取り残
されているという。
 高遠さんは「少年たちを説得してドラッグをやめさせるのは不可能に近い。はっきりと感情を示
し、見捨てないという気持ちをみせないと、こちらの気持ちが伝わらない」と話す。
 将来、少年たちの施設をつくり、地元のNGOが支援しているフセイン政権に処刑された人々の
遺族らとの「家族的な生活」を実現し、立ち直らせるのが高遠さんの夢。「イスラム社会には、お
金のある人が弱者の面倒をみるという考え方がある。イラク国民は教育レベルも生活水準も高く、
一、二年で基盤がつくれる」と考えている。
                  ◇
 高遠さんは自衛隊駐屯地がある千歳市出身で、自衛官家族の友人や知人に囲まれて育った。
同級生は次々に自衛官と結婚していき、自分に見合い話がきたこともある。
 「ここには電気も十分になく、一般のイラク市民は厳しい環境で生活している。シェルターで暮
らし、社会から見捨てられたような少年もいる。一民間人として彼らの窮状を伝え、これから来る
自衛隊員にも、人道支援とは何かを考えるきっかけにしてほしい」
 高遠さんは来月日本に一時帰国し、地元の千歳市などで報告会を行うことにしている。