『産経抄』ファンクラブ 第18集

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459文責・名無しさん
 神戸の連続児童殺傷事件の少年A、いまは成人した加害男性(二
一)の両親の手記を読んで胸が詰まる思いをした。とりわけ父親の
悲痛な述懐は息苦しいほどである。六年五カ月にわたる少年院での
長男とのかかわりを克明に報告したものだった。

 ▼東京・府中の関東医療少年院に収容された二カ月後、両親は初
めて少年を訪ねた。しかし彼は親に会いたがらない。会話もままな
らず、目はうつろで「心の整理がしたい。彫刻の本を送ってくれ」
というばかり、ほとんど放心の状態が続いたという。

 ▼何度も面会拒否があり、行きつ戻りつの試行錯誤があった。そ
して入院二年四カ月で初めて長い手紙が届く。そこには被害者や自
分の両親や家族への謝罪の気持ちがのべられていた。面会するとや
っと穏やかな表情になっており、「僕を産んでくれてありがとう」
とも。溶接技術を身につけていた。

 ▼将棋や陶芸を始めており、彼が作成したポスターには紫の宇宙
や青い地球や明るい日本が描かれていた。黄色い月の上で二匹のウ
サギが乾杯している絵もあった。父は彼が立ち直るきっかけをつか
んだことを確信したというのだった。

 ▼手記は「私たちは死ぬまで長男のそばにいて二度と間違いを起
こさぬよう」全力を尽くすと誓っている。これは信じていい父親の
“真情”というものではないだろうか。少年の犯行は「性的サディ
ズム」によるといわれた。この病気は完治するのか。

 ▼専門家は精神医療と矯正教育が成果をあげたと診断している。
これまた信じるほかはない。法務省の異例の情報公開も、遺族の感
情や社会の衝撃を考えれば妥当なことである。退院後の彼がいかに
謝罪と更生をしていくか。インターネットを含めた情報社会の責任
は重い。