96 :
文責・名無しさん:
朝日新聞西部版 31日付「私の視点」
◆学歴詐称問題 もっと大切な事あるのに
中山千夏(なかやまちなつ)作家・元参議院議員
学歴は人間を測る役にはまったく立たない。これは古くからの常識だし、最近では、ブランド大学の学生や
OBがひっきりなしに破廉恥な事件を起こして、それを証明してくれている。
にもかかわらず学歴によって人を判断しようというのは、ひどい怠惰であり、不合理な差別行為である。本
当によい人と結ばれたいなら、相手の学歴は気にしないことだ。本当によい人材を得たいなら、採用条件に学
歴を問わないことだ。そして、本当によい議員を選びたいなら、候補者の学歴は参考にしないことだ。
怠惰で不合理な選別へと私たちを誘惑する点で学歴は悪質な情報ですらある。だから、選挙民のより良い選
択を促すためには、候補者の学歴記載を公報では禁止したほうがいいとさえ思う。そうなれば、偽った学歴を
票の足しにしようなどという不埒(ふらち)者も減るだろうし、私たちも大事な議員を学歴で選ぶなどという
手抜きをしなくなるだろう。
それにしても、この揺れ方は尋常ではない。学歴詐称ごときがこれほど大きな政治報道になるなんて。今、
小泉内閣はブッシュ政権の要請に応えて、日本を強引に本格的な軍事大国にしようとしている。私たちは福祉
や労働条件の悪化に苦しみ脅えながらここ数十年で最も重大な局面に立たされている。一議員の学歴詐称がそ
れよりはるかに小さな問題であることは、真昼の太陽なみに明らかだ。イラクに大量破壊兵器はもともと無か
ったという前米国調査団長の衝撃的な証言で、さすがに古賀問題は後退しそうだが、この大事な時、政界と報
道機関が学歴問題にこだわったロスは大きい。
(つづく)
97 :
文責・名無しさん:04/01/31 08:53 ID:gHwukBkg
(つづき)
もうやめようではないか。学歴詐称が愚行なのは、考えるまでもないことなのだから。公約違反をは
じめとする大嘘が政界に溢(あふ)れているとしても、政治家の公言における嘘が国民に対する大罪で
あることは、論じるまでもないのだから。国会ふうに言うなら、審議省略、即採決の案件だ。
古賀潤一郎議員がどんなに粘っても、私たちはもっと大事なことをしよう。なあに、「泥棒」そのも
のでさえしょっちゅう頂いて耐えてきた私たちだ、「泥棒の始まり」がもう一人増えたぐらいでびくと
もするものか。
こだわるとしても、焦点は学歴詐称ではなかろう。古賀議員は自民党の福岡県議だった時代から同じ
学歴を公表していたという。それが、今回に限って糾弾され、しかもこれほどの大スキャンダルにまで
肥大したのはなぜか。裏側にうとい私でも、そこに、政治権力を巡っての、政党同士、政治家同士の激
しい抗争があることは見え見えだ。つまり、国会と報道機関は政治権力抗争に乗っ取られ、その間、私
たちにとっての真の重大事は棚上げされてしまった。そのことが最も情けなく腹立たしい。
マスコミがかくもたやすく政治権力抗争に呼応してしまうところにも、学歴の害があると私には見え
る。政・官・財を貫く癒着という名の暗渠(あんきょ)は、主としてカネを材料に構築されているのだ
が、地縁などと共に学閥というやつも微妙に重要な役割を果たしている。そしてその暗渠は、しばしば
政治報道機関にまで伸びていて、時に政治家たちの抗争の採れと連動してしまうのだ。これは6年間、参
議院に身を置いてみての実感だ。学歴がモノを言わなくなれば、政治はずいぶん浄化されるだろう。
この機会に、そんな学歴の悪しき働きを反省し、学歴は問わない、言わない決心をみんなが固めれば、
この間のロスも少しは実になるかもしれない。
(おわり)