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金原ひとみ■ハリウッド観る人間は薄っぺら■蒙作家 :
芥川賞に選ばれて 1月20日朝日新聞夕刊
「何者か」でなくたっていい
金原ひとみ 作家
自分が何者であるか、を定義できる人間はつまらない人間だ。
人は常々答えを求めているらしい。自分は何者であるか、
などと、何にでも結果を求めるらしい。
しかし、自分を定義するのはおかしい、と私は思った。
そんなことに意味は無い。求めて何になるのか。手に入れたら、
金がもらえるわけでもなく、それはきっと自己満足だ。
ただ理由付けをしたいだけで、ハリウッド映画のようなものだ。
私はミニシアター系の映画が持つ、独特の色味やら、
わけのわからなさのユーモアとか、どうなったの?
みたいな濁りが持つ魅力という物があってもいいと思うし、
デビット・リンチが大好きだ。不条理だから面白いのに。
答えを求める人は、こぞってハリウッドばかり観る。
本当は答えなどないし、なくていいし、いらないし、バカバカしいのに。
誰も自分が何者かなんて分かっていない。分かっている、
という人は勝手に位置づけ定義づけをして自己満足しているだけなのだ。
そんな薄っぺらくてつまらない人間になってほしくない。