165 :
神奈川新聞社説1:
神奈川新聞2003/10/15社説
新聞週間を迎えて「戦争の足音、近づかすまい」
古老から怖い話を聞いた。「今の世相が1930年代に似ている」と。
満州事変から太平洋戦争、敗戦に至る中で国民は辛酸をなめた。
戦争中は「非国民」と非難されるのを恐れ、言いたいことも言わぬ、
言えぬ状況に追いやられた。
「戦争の足音が聞こえてきたときには、その動きを止めるのは難しい。
新聞は足音が近づかぬように力を尽くしてほしい」。古老は、そうも言う。
15日から新聞週間が始まる。
今月7日の本紙「自由の声」に77歳の男性の投稿が載った。「攻撃は
最大の防御なり」と戦争に突き進んだが、空襲、原爆投下に遭い、女性や
子供まで死傷し家屋は灰になった。「戦争も暴力である」と指摘している。
同感だ。戦後58年、日本の平和は太平洋戦争で流されたおびただしい
鮮血の上に築かれてきた。
現状は戦火が世界から絶えない。イラクに大量破壊兵器が存在し
他国の脅威となっている。米英両国はそう主張し、国連の合意を得られ
ぬまま戦争に突き進んだ。
166 :
神奈川新聞社説2:03/10/15 15:30 ID:gu/Z09o9
ところが、米政府合同調査団の暫定報告では依然、大量破壊兵器は
見つかっていない。軍事行動はそもそも、証拠を先に明確に示し、
国際社会の理解と同意を得てから検討すべきものだろう。
日本政府は米英の軍事行動を理解すると表明、支持した。本紙は
その非を政府に問うてきた。二度と戦争に巻き込まれないように。
現状はしかし、その訴え、願いとは裏腹に、自衛隊をイラクに派遣する
動きが見られる。いや応なしに戦闘状態へ巻き込まれる恐れが出てきた。
あらためて政策転換を求めたい。古老の憂いが現実のものとならない
ように。国民の血を流さないためにも。
法整備にも「戦争の足音」の懸念がある。有事法制、個人情報保護法
などが成立している。いったん廃案になった人権擁護法案も、いつまた
復活するかもしれない。
いずれも表現の自由を制約する側面を併せ持つ。このほか住基ネット
ワークも本格稼動した。いったん「有事」になったときに国民総動員体制を
とりやすくなる。
一方で、新聞社自身も不断の努力が必要なことを自覚している。正確で
公平な報道を心掛けるのは当然のこと、たとえ自分たちの取材・報道に
確信があっても、それで問題が起きたと訴えがあれば、真剣に対応する。
本紙は15日に「紙面アドバイザー制」を発足させる。社外の識者に委嘱し、
問題の対応策を探る中で、より一層の市民の信頼を得、保持していきたい。
市民の信頼の負託がなければ、言論・報道の自由も力を持ちえないからだ。
質の高い情報と優れた判断を提供し、読者と信頼関係を築いていける限り、
新聞は生き続ける。私たちはそう信じている。