○●○朝日の社説 Ver.8

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528■国債急落――市場の警鐘を聞け(上)
 国債の価格が下がり、それと逆の動きをする長期金利が急上昇している。
 今回の値下がりは、余りに高すぎた国債相場の修正という面もある。株価が回復し明るい経済指標が出始めたことで、
資金の流れが株式市場に向かった。基本的には、その結果と見るべきだろう。いたずらに動揺することはない。
 銀行や生命保険は国債を大量に抱え込んでいる。含み損が増え、金融システムがまた動揺するとの心配も出ているが、
上昇を続ける株価が国債値下がりの打撃をうち消している。株価が堅調なら、とりあえず金融機関の経営への影響は少
なかろう。
 金融機関は、これまで国債一辺倒だった資金運用の修正を迫られている。ただ、ここでも横並びで一斉に国債から資
金を引き揚げるのでは、相場を過度に冷やし、自分の首を絞めるだけだ。
 市場には、最近の景況感の改善で、日銀が量的緩和策をやめるのではないかという予測から国債が売られている、と
の声もある。投資家の過剰反応を防ぎ、国債相場の動きをなだらかにしていくことは重要だ。先手を打って十分に資金
を供給し、動揺をしずめるのは日銀の役割だ。
 今回の下落が直ちに経済に悪影響を与えるとは言い切れないが、政治家や官僚は、市場からの警告として真剣に受け
止めるべきだ。自民党総裁選をめぐって、財政による景気対策を求める声も強まっている。しかし、無計画に金をばら
まけば国債発行量が増え、相場暴落のリスクが高まる。
529■国債急落――市場の警鐘を聞け(下):03/09/04 10:15 ID:qwXtk8lb
 もしそうなれば、銀行や生保は含み損を抱え、金融不安が高まる。長期金利が上昇し、利払いの重荷で苦境に陥る企
業も出てこよう。住宅ローンの金利も上がるなど、国民生活への影響も大きい。景気対策のための国債増発が景気を悪
化させる、という皮肉な結果になりかねないのだ。
 だからといって、やみくもに財政を引き締めれば、せっかく明るさの出てきた景気の腰を折るという懸念も理解でき
る。過度の国債下落を避け、景気拡大を持続させるという細い道を探らなければならない。
 まずは、財政再建の長期的な道筋を示すことだ。年金などの社会保障制度をどう立て直すのか。消費税など税制の今
後は。公共事業や公務員の人件費をどのように削減していくか。自民党総裁選から総選挙へと、議論の機会はいくらで
もある。政治の責任で、これらの課題について信頼できる答えを示さなければならない。
 長期的な財政再建への手応えが感じられるようになれば、今回のような市場の動揺は少なくなるだろうし、金融対策
などで短期的に国債増発が必要になっても、市場は安心して吸収できるだろう。
 市場からの警告に耳を澄ませ、財政再建への信認を高めることだ。それが結果的に景気の足腰を強くし、いざという
ときに財政を発動する余力を生む。