『産経抄』ファンクラブ 第9集

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702これは日本の新聞ではありません
◆【産経抄】
  六日の「広島」から九日の「長崎」へ。原爆忌の鎮魂と慰霊の日がつづい
 ているが、八月というと相も変わらず大向こう受けをねらったパフォーマン
 スや、奇妙な政治イデオロギーの宣言がまかり通る。その上やたらと“平和"
 が大安売りされるのだ。
  ▼広島市の秋葉忠利市長が平和記念式典で読み上げた「平和宣言」という
 のもそうだった。ところがそれは核開発を始めている国に対する“反核宣言"
 ではなく、もっぱらアメリカへの批判に終始した。反米・嫌米・憎米の表明
 だったといってもいい過ぎではない。
  ▼宣言はさきのイラク戦争にも言及している。それはそれでいいが、しか
 し「米英主導のイラク戦争は、罪のない多くの子供らを殺し、何十億年もぬ
 ぐえぬ放射能汚染をもたらしました。口実だった大量破壊兵器も見つかって
 いません」という。
  ▼まるでサダム・フセインが良識ある被害者、米英がならず者の加害者と
 いった調子なのだ。“口実”という表現も穏やかではない。口実とは「言い
 のがれの材料、またその言葉」と広辞苑にあるように、初めから米英を卑劣
 な虚言者に見立てた物言いになっている。
  ▼市長がいう「至るところに垂れこめた暗雲」が「今にもきのこ雲に変わ
 り、黒い雨が降りだしそうな気配さえある」のなら、その当事者は北朝鮮を
 おいてない。ところが北に対する抗議も要求もない。金正日総書記の名がで
 てはくるが、全くおざなりなのである。
  ▼広島にしろ、長崎にしろ、北朝鮮の核に対してきちんとものをいったと
 いう話は聞かない。秋葉市長は旧社会党左派の議員の出身だが、宣言にはそ
 の古ぼけた政治イデオロギーのしっぽがぶらさがっている。日米離間を画策
 する国々はほくそ笑んだに違いない。