■辻元前議員――なぜいま逮捕か
社民党の辻元清美前衆院議員が警視庁に逮捕された。
歯切れよい言葉で疑惑を追及してきた社民党の元エースは秘書給与問題で刑事責任を問われる身となった。
今秋の解散風が吹き始めた矢先の突然の逮捕だった。
な ぜ 今 な の か 。 政 治 的 な 意 図 は な い の か 。
疑惑の徹底的な解明を期待する一方で、どこか、すっきりしないものを感じる人も多いのではないだろうか。
もちろん、容疑通りならば、刑事責任は重大だ。
勤務実態がほとんどない女性2人を政策秘書として登録し、その給与として計約2千万円を国からだまし取った詐欺の疑いがもたれている。
永田町にそれほど詳しくなかった辻元前議員に秘書を紹介したのは、社民党の土井たか子党首の当時の秘書だった。
その秘書らも共犯として逮捕された。
土井氏は政治的な責任を免れない。社民党の資金管理のあり方も問われよう。
土井氏には、事件についてきちんと説明する責任がある。
同じような秘書給与のピンハネで詐欺罪に問われた山本譲司元民主党衆院議員は、実刑となっている。
判決は「政治改革への国民の期待を裏切り、政治不信の原因ともなる悪質なもの」と厳しく戒めた。
今や政治資金収支報告書にうそを書いただけで国会議員が逮捕される時代だ。
政治と金の関係をできるだけ透明にすることで、政治家が説明責任を果たすことが求められている。
税金の詐取となれば、有権者を裏切るものにほかならない。
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一方で、なぜこの時期に逮捕したのか、捜査当局はきちんと説明する必要がある。
解散前に辻元前議員、さらには土井党首の元秘書を逮捕すれば、社民党が大きな打撃を受けることは目に見えている。
昨年3月に週刊誌が疑惑を報じ、辻元前議員は辞職に追い込まれた。
それから1年4カ月もの間、捜査当局はいったい何をしてきたのだろうか。
辻元前議員は政治活動を再開しつつあり、地元では人気はなお高い。
次期総選挙に推そうという動きもあった。
また、犯意を否認しているとはいえ、在宅でなく逮捕という捜査手段に踏み切る必要がどこまであったのだろうか。今さら証拠隠滅などをする恐れは考えにくい。
辻元前議員は金利分を含めた全額を国に返納している。流用の事実は大筋で明らかだ。
秘書給与にかかわる問題で議員辞職に追い込まれたのは、辻元前議員だけでない。
自民党に所属していた田中真紀子前外相は、ファミリー企業を使って秘書給与の一部を流用した疑いがもたれている。
辻元前議員は国会で事実関係を大筋で認めた。田中氏は流用疑惑を否定している。
永田町では国会議員の逮捕が年中行事のようになっている。だからこそ、捜査当局には、国民が納得するような徹底した、かつ公平な捜査が求められる。