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電波がよめるのは朝日だけ:
国会審議に「使われた?」
有事法成立と白装束集団
河原 宏 早稲田大名誉教授(日本政治思想史)
武力攻撃自体対処法など有事3法が成立した。
野党民主党の対案が衆議院に提出されたのは4月30日。与党と民主党の間で
修正協議が続けられて審議は軌道に乗り、5月15日、衆議院で可決された。この
間およそ2週間。
時期はこれとピッタリ重なる。例の白装束集団「パナウェーブ研究所」の白塗り
車列がマスコミの表舞台に登場し始めたのは4月末。5月1日には佐藤英彦警察庁
長官が「オウム真理教の初期に似ている」と発言。翌日、元内閣安全保障室佐々淳行
氏が「小さな芽のうちに摘むのが肝心だ」と語って、俄然マスコミの報道合戦は過
熱した。さらに森山真弓法務大臣が「将来、公共の安全を害するかもしれない」
「風体が異様なので気持ちが悪い」と述べたのが9日。この頃、衆議院で与野党の
法案修正協議は山場にさしかかっていた。
だがテレビを始めとして新聞・週刊誌などマスコミは、むしろ白装束集団の動静
を報ずるのに熱心だった。4月末以来、福井、岐阜、長野、山梨そしてまた福井へ
と移動する彼らに、途上の自治体からは通過拒否が続出した。中には自治体の長を
先頭に、住民総出で道路に立ちふさがって地域への進入を拒むところもあり、テレ
ビはヘリコプターまで使ってその光景を伝えた。「オウムに似ている」発言が生き
てきた。5月6日、在京テレビ6局の放送時間は計8時間半に達したという。
しかし、16日、彼らが元の拠点に戻るや、加熱した報道合戦は一転して鎮静化
し、テレビから白装束の姿は消えた。前日の15日、法案は衆議院で可決されてい
た。
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電波がよめるのは朝日だけ:03/06/10 19:49 ID:qdilejU3
この二つの出来事の時間的一致は偶然なのか、意図的なものだったのか?断定は
できない。しかし、少なくともこうは言える。政府や有事法制の担当者たちは、法
案が国会を通過することには懸念を抱かなかったであろう。だがイラク戦争の直前、
世界各地には反戦運動が高まっていた。有事法の制定に当たって、このような盛り
上がりだけは防止する。これが担当者たちの堅い決意だったであろう。そのために
は、マスコミ報道を国会審議とは別の人目を引く話題に向けさせればよい。たまた
ま福井の山中には見るからに”異様な”白装束の集団がいる。白い車の列はテレビ
の映りもよい。「使える!」、政府や警察当局がこう考えたとしても不思議ではない。
今や世界は劇場化し、戦争は反戦運動さえ劇場型になっている。このような風潮
の中で、人目をさらったのがあの白装束集団をめぐる見世物だった。家庭で職場で、
人々は有事法制の審議よりは、この集団の”不気味さ”について語りあった。
しかし今回の法制自体が、将来への課題を多く積み残している。今後に予想され
る有事は、この法律が想定する「武力攻撃」より遥かに広いものになるだろう。武
力攻撃は有事のほんの一部にすぎない。つまり有事は戦争に先立って、あるいは並
行して、様々な工作を伴って起こる。
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電波がよめるのは朝日だけ:03/06/10 19:49 ID:qdilejU3
戦争の反対は平和だが、有事の反対は無事。有事への対応とは平穏無事な日常生
活を守ることである。国にとって異様なもの・不審なものが入ってくるのは有事だ
が、地域や家庭にとっても当然、有事だ。白装束の集団の騒ぎに巻き込まれた岐阜
や福井などの町村住民は、正に擬似的有事を体験させられたのである。
成立した法律に有事という言葉はない。だが、有事法制の推進者たちは知ってい
た。本当の有事対応が地域次元にあることをである。だから彼らも考えていた。国
民は、この種の有事に”自分の地域は自分で守る”という対処法を身につけなけれ
ばならないと。白装束騒動は、この課題への絶好の予行演習となった。
この騒ぎが終わり、代わって法成立の直前に登場したのは、東京・お台場に展示
された北朝鮮工作船である。この時期的一致には、新しい劇場の仕掛けが秘められ
ているかもしれない。
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