>>914 ハイジャック犯の投稿、俺も気になったので全文うPしておこう。
私の視点「拘置所建て替え、塀の中の人権にも配慮を」東京拘置所在監/田中義三
私は、70年の日本航空機「よど号」ハイジャック事件の実行犯の一人で、裁判中の身である。
東京拘置所に在監して2年半になる。その拘置所での生活について、知ってもらいたいことがある。
拘置所が建て替えられ3月末、新築された建物の房に移った。転房してみて、これが本当に人間の
住むところか、と驚いてしまった。
新しい拘置所は、地上12階地下2階の超近代的な高層ビルである。この方式ならば堅牢な高い
塀や、広大な敷地も必要ない。古い房では、ゴキブリと同居の生活だった。夏は蒸し暑く、汗疹に
悩まされ、冬は隙間風にさらされ、霜焼けも体験した。54歳の身にはこたえた。それだけに、
新しい建物に期待はふくらんでいた。
足を踏み入れると、豪華で頑丈できれいにつくられており、房も今までよりひと回り大きくなり、
隣の房の足音や水音も全く聞こえない。ところが、信じられない事にすぐに気づかされた。外部を
一切見ることができないのだ。
房には窓があるが、外壁との間に幅約1.6メートルの巡視路があり、外壁の窓はくもりガラスだ。
くもりガラスの上下のわずかな隙間にはブラインドがつけられているが、景色を見ることはできない。
昼夜の区別はついても、刻々と移る時の流れを感じ取ることなど不可能だ。廊下側も、行き来する
看守を見ることはできるが、向かい側の房は、互いに特殊ガラスのため真っ黒くしか見えない。
自分で新鮮な空気を取り入れることができず、一日中よどんだ空気の下で、生活するしかない。
これまでの房では、日の出で朝を知り、夜は布団の中から月見もした。庭の木々の芽吹きで春を抱き、
紅葉や落ち葉で秋を感じ、静かに降るゆきで娑婆の正月を思いやった。また、窓辺でハトやスズメの
動作にひとり笑い声をあげたこともあった。面会の時には季節の植物を眺めて散歩したりした。安らぎ
を覚える至福の時間だったが、新施設では、こうした一切のことができなくなった。 (つづく)