90 :
文責・名無しさん:
でも救いはあるよ。
久保紘之 平成の考現学
命賭け守る国益
世論に反しても語らねば
アメリカのイラク攻撃が、いよいよ秒読み段階に入ったらしい。
「らしい」というあいまいな表現を用いるのは、これまでも何度か
緊迫した段階に入りながら、いつの間にかカウントダウンが途中
で途切れてしまったためである。米メディアも「レッドランプ点滅」
などと報じ始めたから、今度は本物なのだろう。
ここへきて小泉純一郎首相の国会答弁も「日本を支えてきた
原動力は国際協調態勢と日米同盟。この繁栄の基礎をゆるがせ
にしてはならない」から「同盟国として責任ある対応をしたい」と、
対米支持を鮮明にする内容に変わってきた。
つまり、ブッシュ米大統領が「新決議は必ずしも必要としない」と、
あらかじめ宣言したように、国連安保理で新決議案が通ろうが通る
まいが、武力行使は断行される。その場合、迫られるアレ(国際協
調)かコレ(日米同盟)かの選択について、首相はやっと公にする踏
ん切りがついたということだろう。
五日の参院予算委員会では、「世論調査でイラクへの武力行使
に国民の80%が反対しているが」との問いに首相は「世論に従っ
て政治をすると間違う場合もある」とさえ言い切った。
小泉首相は二月末、「イラクと北朝鮮の問題は連動している。
イラクはイラク、北朝鮮は北朝鮮と言って切り離せるものじゃな
い」と語っている。日本の選択肢はイラク危機と北朝鮮危機とリン
ケージで考え、北朝鮮の核ミサイルに対しては「核の傘を含めて
米軍の打撃力と攻撃力に頼るしかない」というのが、シビアな国際
政治の現実だろう。
91 :
文責・名無しさん:03/03/07 12:03 ID:FTxA4F3z
しかし、だからといって、いま「日本の国益と国民の生命財産を守る
ために、断固アメリカに協力すべきだ」と、声高に言い切ることに、
筆者は心の奥底に黒々とわだかまる抵抗感を覚えざるを得ない。
たとえば、ブッシュ大統領は二月二十六日の演説で、新たにフセ
イン政権崩壊後の『イラク民主化構想』を打ち出し、「イラク新政権
の実現こそ、他の中東諸国の自由の手本となるはずだ」と語った。
それはいいのだが、ブッシュ演説で日本人なら聞き捨てにしては
ならないくだりがある。
それは、ブッシュ氏が先の大戦で敗戦国になった日本とドイツを
「アメリカ民主主義を受け入れた手本」として引き合いに出しながら、
イラクの民主化構想を語ったことである。
その骨子は、ニューヨーク・タイムズ(昨年十月十一日付)が最初に
報じたが、ブッシュ政権はイラク制圧後の青写真を「アフガン方式」で
はなく「日本方式」で検討している、というのである。ブッシュ大統領は、
そうした考え方を二月末現在においても「揺るぎない信念」のもとに
抱いているというわけだ。
いうまでもなく、ブッシュのアメリカが“戦後イラクの民主化構想”
の手本と位置付ける戦後日本とは、すなわち、(1)マッカーサー
憲法第九条「国権の発動たる戦争の永久放棄・戦力不保持・交戦権
の否認」を二十一世紀に至るも、至上のものとして守り、(2)自らの
国家の伝統・歴史をマゾヒスティックに総否定して、勝者である連合
国の価値観(「東京裁判史観」)に同一化し、(3)「アメリカからは一方
的に守ってもらうが、日本は集団的自衛権によってアメリカを守る
義務からは解放されている」といった、占領時代の片務的な日米安保
体制への過剰な依存心・欠落した自立心の「戦後精神」を、中国に
続く北朝鮮の核ミサイルの脅威にさらされた現在も、なお護持しよう
という日本である。
92 :
文責・名無しさん:03/03/07 12:05 ID:FTxA4F3z
「彼ら(連合軍)は日本が侵略戦争を行ったということを歴史にとどめる
ことによって自らのアジア侵略の正当性を誇示し、日本の過去十八年
間のすべてを罪悪であると烙印(らくいん)を押した。…(略)日本の子弟
が歪(ゆが)められた罪悪感を背負って卑屈・退廃に流されてゆくのを、
わたしは見過ごすわけにはいかない」−という東京裁判のインド代表
判事、パール博士の言葉を、想起されたい。
いま、無神経極まるブッシュ発言に何の異議も立てないで、ただ
「アメリカに追随するのが日本の国益」と声高に言うのは、こうした
屈辱的な戦後史との保守派のささやかな戦いの経緯さえすべてご
破算にして勝者による不当な東京裁判史観を改めて唯々諾々として
受け入れ「どうか北朝鮮から日本を守ってください」と、哀願するに等
しい。
しかし、そうまでして「守られるべき国益」とは、一体、何なのか?
国家の伝統・文化、何よりも尊厳と誇りを無造作に踏みにじられな
がら、国民の生命財産のみ安全なら「国益は守られる」と、まるで古
代ローマ帝国の周辺に位置する衛星国・弱小国的“打算”で考えて
いるから、北朝鮮はじめ周辺国からさえ軽侮の眼(まな)差(ざ)しで
みられ、ナメられるのだ。
いま、国民の命や財産よりも大事なもの、つまり生命を懸けても守る
べき国益とは何か。小泉首相が「イラク攻撃反対80%」の世論に逆ら
っても、語るべきはそれ以外にない。
石井、田久保、中西、その他もろもろ「保守」よ、聞いたかおい。