『週刊現代』1月25日号
「部数激減」「部長職廃止」
朝日専務が編集局報で訴えた「大ピンチ」
<東京都内で部数が激しく減っています。(中略)朝日が昔から得意にしていた
多摩地域などで、ライバル紙に逆転されている。前年同月比で数万という勢いで
減っています>
こう危機感を吐露しているのは、朝日新聞社専務で編集部門を統括する君和田
正夫氏だ。編集局員に配布される『編集局報』02年12月号に「ブランド力再構築へ」
と題する文章を執筆。部数が「激減している」と、強く警鐘を鳴らしているので
ある(<>内は『編集局報』からの引用)。
続いて君和田氏は98年のマーケティング室報に掲載されたブランド力調査の
数字を引用している。それを要約すると次のようになる。
「社会的信用が最も高い新聞」という質問に対し「朝日」と答えたのは、
88年には40.8%いた。他紙が10%台だから朝日が断トツの信用を得ていたのだ。
ところが、97年には26.6%と、14ポイントも下げているのに対し、読売、毎日は
横ばい。日経、産経が数字を上げている。朝日が沈み、他紙に追い上げられている
ことがわかる。
さらに、「オピニオンリーダーの朝日離れが著しい」とも、君和田氏は指摘
している。管理職に対して同じ質問を行ったとき、88年に48.1%に対し日経18.5%で
あったのが、97年には朝日21.1%、逆に日経は39.5%と、完全に逆転してしまっている
のだ。
つまり、<新聞全体が下がっているのではなくて、朝日がものすごく下がって
いる>のである。
専務が社員に直接語った大ピンチ。この苦境を乗り切るため、朝日は大規模な
リストラに踏み出すことになった。
まず、この春からの予定で、名古屋本社と西部本社の組織が改編される。社会部や
経済部、スポーツ部、学芸部などが「報道センター」に統合され、編集部門では事実上、
部長職を廃止されるのだ。西部本社で勤務するデスクはこう解説する。
「これまではそれぞれの部に部長がいたのですが、改編後は『報道センター長』
だけが部長待遇となる。整理部や校閲部も「編集センター」に一括され、この2本社の
編集局からは部長職を廃止される。高禄を食んでいた管理職を狙い撃ちにして
いるんです」
その他にも、社内報『Aダッシュ』02年12月号で秋山耿太郎東京本社編集局長が、
全国185ヶ所に展開されている通信局の整理を示唆した。
幹部の「部数激減」発言について、朝日新聞広報部は、
「本年元日の部数は約845万5000部で、『全国的、特に東京都内での販売部数が激減
している』という事実はありません」
と否定している。だが、編集担当の大幹部が社内報で「激減」を明言している以上、
朝日が「大ピンチ」状態であることは間違いないだろう。
現場の人間にもその影響がもろに出ている。東京本社で働く記者は言う。
「最近は取材費の枠も厳しくなり、自腹を切ることが多い。現場の負担は増えて
いるのに中には「今の2倍働け。もっと負荷をかけろ」という部長までいる。
士気は下がる一方です」
朝日の落日は止められるのだろうか。