■朝日と読売比較スレッド■その10

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169「千と千尋」の精神で−今年も洗脳活動続行
1月1日、一年を占う最初の社説も両社のカラーの違いがよくでていました。

■読売(1月1日朝刊、社説)
●分岐点にさしかかる日本経済
「政権発足早々に現在の竹中経済財政・金融相がまとめた構造改革基本方針は、冒頭から、『創造的
破壊』を経済運営のキーワードとして掲げている。その『創造的破壊』の下で、小泉内閣発足以来、さま
ざまな経済指標が、悪化の一途をたどっている。実質GDP(国内総生産)、名目GDP、株価、企業倒
産数、失業率、鉱工業生産指数、全産業設備投資額……。金融面では、昭和恐慌以来の現象という
貸出残高の持続的な減少、いわゆる信用収縮が続いている。『日本経済の縮小』が進行しているので
ある。」
「小泉緊縮財政路線がすでに破綻(はたん)しているのは、明らかである。経済の縮小は二年続いての
大幅な税収減をもたらし、財政を再建するはずが、かえって財政を痛めつけることにしかならなかった。
二〇〇一年度の税収不足は国債整理基金の流用でごまかしたものの、二〇〇二年度は税収不足分
二兆五千億円を国債発行で穴埋めすることになり、『三十兆円枠』路線は名実ともに放棄された。だが
、小泉首相は、これを『政策転換』ではなく『政策強化』だという。これが滑稽な詭弁だというのは、だれ
にでもわかることだ。」
「小泉首相は、『構造改革』の意味はどうあれ、当面は財政再建よりも『景気回復』を優先することを、
明確に宣言すべきである。差し当たり、それだけでも、世の中の空気が大きく変わり、企業行動、消費
動向にも好影響が出るだろう。」
「通常の国債だけでなく、十兆円規模の無利子非課税国債の発行により、いわゆるアングラマネーを吸
収することも検討に値するだろう。」

読売は社説の前半部分を経済政策批判、代替案の提案に当てています。国民の最も高い関心が経済
に向いている現状を考えれば、経済政策に関しての論説は自然なものです。具体的な政策や結果から
行う政策批判の鋭さは、朝日の比ではありません。アングラマネーの活用まで求めて経済再生を促す
論調は、ブルジョア新聞の本領発揮です。目先の金儲けさえできれば後のことは気にしない読売グル
ープのカラーがそのまま社説になっています。
170つづき:03/01/01 23:49 ID:Wn5G8XX/
「国際テロは、平穏な国際社会での通商が国民生活の基盤となっている日本にとって国の存立にかか
わる脅威である。テロリストおよび大量破壊兵器をテロリストに提供する可能性のあるテロ支援国家は
容認できない、との原則に立って行動しなくてはならない。それが、民主主義という価値を共有する米国
との同盟関係を将来にわたって維持する基本原則ともなる。」
「『集団的自衛権は保持しているが行使はできない』などとする法運用の建前は、『自衛隊は軍隊では
ない』という子供にでもウソとわかる強弁と同様に、明々白々な現実から遊離した空虚な言葉遊びにす
ぎない。小泉首相は、二〇〇一年春の自民党総裁選の際、集団的自衛権行使に関する解釈変更の可
能性に言及している。今こそ、国際的には非常識でしかない解釈を、現実的なものに変更する時である。」
「北朝鮮問題は、日本の国家、国民の安全保障に直接かかわる。テロリストの保護、拉致、国家テロ、
国家事業としての覚醒剤密輸、弾道ミサイルの拡散、そして核開発……。この異常な国と、どう向き合
うのか。戦後日本の、惰性的な外交・安保手法の延長では対応しきれない状況もありうる、との心構え
が必要な年である。」

政治に関する論説部分は後半3分の1程度。米国追従、集団的自衛権行使の明確化。そして最後に
は北朝鮮の悪行を並べて読者の危機意識を煽る。読売ならではのタカ派的現実路線は今年も健在で
す。

さて、昨年と同様、今年も全く変わっていない特徴が読売の社説には読みとれます。社説が「つまらな
い」ことです。読んでいて退屈でおもしろみもない。社説の視点は非常に鋭く、小泉政権に求められる重
要な課題を網羅したバランスのとれた内容です。しかし、どれだけの読者が社説を最後まで読み、読売
の言わんとする内容を租借できたでしょうか。
171つづき:03/01/01 23:49 ID:Wn5G8XX/
書き出しが経済から始まっていますが、これがまず読者を突き放しています。たしかに世論調査では、
多くの国民が景気の回復を望んでいます。しかし、読者の望んでいることは、自分に支給される給料が
増え、自営業者なら売り上げが増えることでしかありません。「緊縮財政」やら「国債整理基金」やら「デ
フレ」やらといった経済用語はあまりにも漠としており、自分の生活に結びつくといった実感がないので
す。それを恐慌の背景やら、小泉経済政策の方針やらを並べても、読者が自分のことのごとく理解でき
ようはずもありません。読者に経済のことを問いかけるなら、読者の財布の中身を具体的に問いかけ
るか、もしくはその手の話題を避けるべきでしょう。

「購読者の5人に1人しか読まない新聞」と揶揄される読売新聞。読者は感情の動物であり、理性で物
事を理解できるほどには賢くないと言うことを全く理解していない鈍感さは今年も健在です。

■朝日(1月1日朝刊、社説)
●「千と千尋」の精神で――年の初めに考える

昨年同様、朝日の読者を引きつける文章力は完璧です。まず、タイトルが違います。「千と千尋」。ヒット
映画のタイトルを見出しに付け、社説に読者の親しみがわくように工夫をしています。「千と千尋」の人
気に乗っかって社説に対するイメージもコントロールしようと言う高度なテクニックです。また、内容も朝
日の十八番、政治ナショナリズムに的を絞り、国民の最大の関心事ではありますが、書く退屈な経済の
話題を見事に避けています。重要なものから始めるのではなく、自分の土俵で勝負をする。朝日は必
勝パターンを心得ています。

「米国が嫌われるのはなぜなのか。過激テロが生まれる根っ子に何があるのか。深く突き詰めようとせ
ぬまま、何かと世界の王様のように振る舞う米国は、21世紀のもう一つの不安材料になりつつある。」
「中国をことさら敵視したり、戦前の歴史を美化しようとしたりの動きも見られる。深まる日本経済の停
滞と歩調を合わせるように、不健康なナショナリズムが目につくのは偶然ではあるまい。」
172つづき:03/01/01 23:49 ID:Wn5G8XX/
中身も昨年同様すばらしいの一言です。「米国が嫌われるのはなぜなのか」、このように朝日新聞が唱
えれば、自分の頭でものを考えることができないがそのことに自覚のない読者は、「米国は嫌われてい
るんだ」と疑いなく思いこんでしまいます。そうです。「米国が嫌われている」のではなく、朝日新聞がそ
のように読者にすり込みをしているのです。

では実際にアメリカがどの程度嫌われているのか、内閣府が昨年12月に発表した最新の世論調査で
みてみたいと思います。下の結果を見てわかるとおり、アメリカが嫌われているという事実はありません
。もちろん、今後朝日新聞のがんばりのおかげで、日本でもアメリカが嫌われてゆくことになることは大
いに期待できます。

「アメリカに親しみを感じるか聞いたところ,『親しみを感じる』とする者の割合が75.6%(『親しみを感じ
る』34.3%+『どちらかというと親しみを感じる』41.2%),『親しみを感じない』とする者の割合が20.0%
(『どちらかというと親しみを感じない』12.6%+『親しみを感じない』7.4%)となっている。前回の調査結果
(平成13年10月調査をいう,以下同じ)と比較して見ると,大きな変化は見られない。」
http://www8.cao.go.jp/survey/h14/h14-gaikou/2-1.html

また、「中国をことさら敵視したり」としていますが、これも理由あってのことです。朝日の読者はほとん
ど知り得ないのですが、軍事費の大幅な増強とICBMの大幅な増強に日本、米国、そして中国と領土問
題を抱えているインド、ベトナム等近隣諸国は危機意識を持っています。そのような一切の理由を無視
して、「ことさらに敵視」といえば、中国の軍事力増強を問題視すること自体が無体なことのように聞こえ
るよう文章が構成されています。話の前提を隠蔽して、異なる意見を敵視、糾弾する朝日のテクニック
です。

「(ワールドカップでは)思い思いに外国チームのユニホームを着て声援を送る日本人も、世界には新
鮮に映った。顔に日の丸を塗って声をからす若者たちのナショナリズムは、軍国日本の熱狂とは異質
のものだった。」
173つづき:03/01/01 23:50 ID:Wn5G8XX/
社説全体の中で異質な文章がこの部分です。さんざんナショナリズム批判を煽っていながら、いきなり
、不自然に出てくるのがこの文章です。ワールドカップのナショナリズムは、軍国主義の熱狂とは異質
?ある意味当たり前で、ある意味誤ったこの解説は、朝日がワールドカップスポンサーになってナショ
ナリズムを盛り上げたことの弁明なのです。もし、ナショナリズムすべてを否定すると、韓国の排外的自
己中心的ナショナリズムや朝日がW杯のスポンサーになったこと自体が否定されかねません。そのた
め、「学校で使われる日の丸はだめだけど、W杯の日の丸はいいんだよ」と自社の行動を弁明している
わけです。

●多神教の思想を生かそう
「宮崎駿監督のアニメ映画『千と千尋(ちひろ)の神隠し』が昨年、ベルリン映画祭で金熊賞を受けるな
ど、内外で大ヒットした。主人公の少女・千尋は神隠しにあい、異界の湯屋で働くことになる。そこには
八百万(やおよろず)の神々が疲れを癒やしにくるのだが、中には奇妙な神や妖怪もやってくる。ヘドロ
まみれでひどい悪臭を放つ『河の主』。仮面をかぶり、カエル男やナメクジ女をのみ込んでは凶暴化す
る『カオナシ』。始末に負えない化け物たちだ。だが、むき出しの欲望が渦巻く湯屋にあって、千尋はひ
とり果敢に、しかし優しく彼らと向き合う。そうすることで、逆に彼らの弱さや寂しさを引き出すのだった。
この地球上にも、実は矛盾と悲哀に満ちた妖怪があちこちにはびこって、厄介者になっている。それら
を力や憎悪だけで押さえ込むことはできない。それが『千と千尋』に込められた一つのメッセージだった
のではないか。」
174つづき:03/01/01 23:52 ID:VoHevwev
この部分は今回の社説の中でもっとも重要な役割を果たしています。「千と千尋」の解説を行い、その
映画のメッセージが社説の結論となる。多くの読者が知っている映画のストーリーを説明することによっ
て、読者に親しみのわくストーリーとし、そして映画のメッセージを都合よく解釈して読者に植え付ける。
そして、社説の結論を映画のメッセージが同じだと思わせるテクニックを使っています。もちろん朝日は
、「一つのメッセージだったのではないか」と控えめな表現を使っていますが、ストーリーだった文章の中
で、このメッセージの適否や映画の中でのこのメッセージの重要性の順位について異論を唱えるような
読者はいません。かくして読者の頭の中では「『千と千尋』のメッセージ」=「社説の結論」という等式が
成立し、社説全体が権威付けされるのです。

「古来、多神教の歴史をもつ日本人は、明治以後、いわば一神教の国をつくろうとして悲劇を招いた。
そんな苦い過去も教訓にして、日本こそ新たな『八百万の神』の精神を発揮すべきではないか。厳しい
国際環境はしっかりと見据える。同時に、複眼的な冷静さと柔軟さを忘れない。危機の年にあたり、私
たちが心すべきことはそれである。」

あまりに漠然とした文章で、当たり前の結論であるため誰も反論がありません。かくして結論が受け入
れられることにより社説全体への信頼が高まり、朝日が前半、中盤で書いていた、米国への嫌悪感や
中国敵視のナショナリズム等が読者の頭の中に浸透します。もちろん、読者たるもの書かれていないこ
とに疑問を持つことはありません。「『八百万の神』の精神」を捨てて、検定に合格した「作る会教科書」
を解説・社説をあげて糾弾し、採択するべきでないという論陣を張ったのは他ならぬ朝日新聞です。教
科書に明確な欠陥がないとわかると、「わかりにくい」というあら探しを行い、「西尾幹二はドイツ留学で
性格が悪くなった」といった個人攻撃まで、なりふり構わぬ非難中傷していた朝日新聞に「複眼的な冷
静さと柔軟さ」をみることはできませんでした。自分は異論に不寛容、他人には寛容を求める。自己矛
盾を顧みない論説はまさにマスコミとしてなくてはない姿勢でしょう。
175つづき:03/01/01 23:52 ID:VoHevwev
2003年、最初の社説。読者の気持ちになれない愚直な読売。読者を引きつけ、扇動と洗脳に長けた
朝日。会社のカラーは今年も変わりません。