○●○朝日の社説 Ver.3

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565文責・名無しさん
■日本人拉致――世界の共感を得るために(1/2)

 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は拉致した日本人被害者5人の家族の
帰国をなお認めない。他の被害者に関する調査要求にも正面から答えようと
しない。

 日本政府は、北朝鮮が認めた以外に3人がほぼ間違いなく拉致され、拉致
の疑いがある行方不明者は総計70〜80人にのぼると判断している。

 北朝鮮に対して、全容の開示と原状回復を一層強く迫らなければならない。

 もう一つ、迂遠(うえん)ではあるが大事なことがある。北朝鮮の犯罪と
非人道性を世界に訴え、その転換を求める国際世論作りだ。

 拉致被害者の家族会から依頼を受けた日本政府が、ジュネーブにある国連
人権委員会の「強制的失踪(しっそう)に関する作業部会」に対して、北朝
鮮から「死亡」と伝えられた8人についての再審査を申し立てた。

 被害者の家族らは昨年春にも拉致の審査を申し立てた。それが途中で打ち
切られたのは、北朝鮮が部会からの情報提供要請を拒否したためだが、今回
は事情が違う。金正日総書記が小泉首相に対して拉致を認めて謝罪した。国
連機関の調査に誠実にこたえるのが国家としての義務である。

 日本を含む53カ国で構成される人権委員会は、世界人権宣言や国際人権
規約を起草した権威ある機関だ。作業部会はアルゼンチン軍政下で起きた大
量の失踪事件などをきっかけに、国家がかかわった拉致や拘禁の究明をめざして80年に設置された。

 過大な期待はできない。失踪者の情報を集めようにも、強制力を伴う調査
権限がない。まして北朝鮮の異様な国家体質を考えれば、楽観するわけには
いくまい。
566文責・名無しさん:02/11/19 15:53 ID:TlILmJme
■日本人拉致――世界の共感を得るために(2/2)

 それでも日本人拉致問題を国際舞台に持ち出したことの意義は大きい。北
朝鮮に責任ある行動をとらせるよう、国際的な風圧を高めるための足がかり
にはなる。

 気がかりなのは、この問題で悲しみ、憤る日本の世論に対して、海外から
必ずしも十分な共感が寄せられてはいないように見えることだ。その背景に、
日頃は国際的な人権問題に決して敏感とはいえない日本へのさめた視線があ
りはしないか。

 パレスチナ、チェチェン、東ティモール……。人権委員会には、世界各地
の悲惨な人権侵害が持ち込まれてきた。90年代には、従軍慰安婦問題での
日本政府の責任や賠償問題が取り上げられたこともある。

 「家族の気持ちはよく分かるが、かつて朝鮮半島から大勢の人々が連行さ
れて来たことがほとんど意識されていないことに驚いている」。いまの日本
の空気を、米国のグレッグ元駐韓大使はそう語っている。韓国からもそうし
た声が伝わってくる。

 拉致問題への共感を広げるには、いま世界で起きている人権侵害の痛みに
も、日本自身の植民地政策や過去の人権侵害にも思いを致す心の広さと冷静
さが欠かせない。

 そうすることが、北朝鮮に対する日本の足場を強めることにもなるはずだ。(2002年11月19日)