162 :
文責・名無しさん:
朝日新聞2002/12/21土曜
イラク問題で苦悩する左派―週刊誌「ネイション」VS.有名コラムニスト
廣部 泉 北海道大学助教授
左翼系週刊誌「ネイション」のコラムニストで、20年以上にわたって同誌で活躍していた
クリストファー・ヒチェンスが、同誌と袂を分かった。ヒチェンスの側が一方的に
関係解消を通告したようである。米国政府の対イラク攻撃の是非を巡る意見の相違が
直接の原因とされる。その結果、10月14日号に掲載された彼の記事が同誌における
最後となった。左派の有力論客として名をなしてきた彼のこの決断は、
米国左派の停滞を象徴するものとして話題になっている。
そもそも、「ネイション」誌があくまでイラク攻撃反対の立場をとる一方で
ヒチェンスは攻撃酸性の立場を明らかにしていた。とくに9月始めに彼が
「ボストン・グローブ」紙に寄稿した「戦争にはうってつけの時」という記事において
その立場を強調した時点で、相違は決定的となった。彼の決断の背景には、
「ネイション」誌が擁護する戦争反対派の多くが極端な議論に走りすぎるという
ことがある。戦争に反対し、第三世界を擁護することは、道徳的に優位であるという
立場を振りかざし、ブッシュ大統領をヒトラーになぞらえ、悪魔呼ばわりするのみで、
よりより将来に向けての具体的展望が示せていないというのである。
米国のすることはすべて悪、第三世界は善と決めつける方向に動きすぎ、
一般の米国民感情からも乖離してしまっているという。
つづく
163 :
文責・名無しさん:02/12/21 15:29 ID:DgRSqi4A
つづき
ヒチェンスは最後のコラムで急進的な意見を戦わせるべき場であるはずの
「ネイション」誌が一方の側に肩入れし、ビンラディンよりも
アシュクロフト司法長官の方が脅威であるというような極端な論議に一方的に
加担するようになったのでは、同誌との関係を絶たざるを得ないとした。
ヒチェンスを支持するロン・ローゼンバウムは、「ニューヨーク・オブザーバー」誌
において、左派知識人のようにブッシュ大統領の知的レベルを揶揄するのは愉快で
たやすいかも知れないが、彼らには大局が見えておらず、そもそもナチスドイツと
米国を同一視するような議論は馬鹿げていると論じる。左派雑誌「ディセント」を
自ら編集し、イラク攻撃反対の立場をとるマイケル・ウォルツァーですらも、
左派はテロを減らすために具体的になにが出来るか真剣に考えているとは思えないと
言わざるを得ないと語る。
現実的な方策を伴った反論が見えてこず、有力な論客たちが離反して行かざるを
えないところに米国左派の苦悩があるのかもしれない。