諸君!2001 8月号より
森 それと、教科書は、年来、私の土俵ですし・・・・。
早坂 ライフワーク中のライフワークだ。
森 一九八二年の教科書問題の時も、新聞の誤報でえらい目にあって
火消しのために韓国に飛んでいったのですが、あの時も
実は、韓国政府が「是正しろ」と要求してきたのでは
なかったんです。出先にある日本大使館の外務省高官の方が
「是正させます」と言ったのが発端です。それで僕は怒った
んです。「是正する」と言っても、国定教科書ではないし、
検定済みの段階で首相や文部大臣が原則としてあれこれ
教科書に口を入れられないんだから出来るわけがない。結局、
「近隣諸国条項」など後から作って収拾を図ったわけです。
そういう経験があるから、二の舞を演じて、また外国から
日本の教科書をあれこれ言われるのはいいことではないと
認識していたわけです。
今回の騒動でも、外国の責任ある人たちも、「日本の教科
書を訂正しろ」なんて内心では思ってないでしょう、ただ、
朝日をはじめとする一部の新聞が騒いで、自国の世論を揺さ
ぶってくる。その挙句に外に向けて、「この教科書、どう思い
ますか」と聞かれると「ケシカラン」と言うしかなくなるわけ
ですよ。
早坂 向こうも、それが本音だよね。日本からカネや技術を引き出し
たいんだから。
早坂 向こうも、それが本音だよね。日本からカネや技術を引き出し
たいんだから。
森 ところが、この教科書問題でも、田中さん(眞紀子)は五月八日
の閣僚懇談会で「事実を捻じ曲げている教科書を合格とするような
検定制度は問題だ」と発言している。
しかし、私が、かつて、訪韓した時に、向こうの首脳が「森さん、
かさぶたって知ってるか」と言うんです。「知ってますよ、
日本語だから。でも、それが?」と聞いたら、「かさぶたという
のは自然にとれていくものでしょう。しかし日本の側でそれを
すぐ引っ掻くからまた血が出る。それが教科書問題の騒ぎになる
んですよ。いや、政府がやっているのではなくて、お宅の国の
一部のマスコミがそれをやっている」と仰る。なるほどと思い
ましたよ。
だから、私が首相のときにいはこういう問題に、政府が一々
容喙するのを止めなくては本当の独立国家でも民主主義国家でも
ないと考えていたんです。この問題についての私の軸足はまったく
揺るがなかったと自負しています。