三笠書房、小田晋著「精神科医の目から見た宗教と日本人」P215〜P216より
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実は、人間というのは、ものごとを前向き・肯定的に見ることによって、一つには認知体験の変化が起こり、世の中に対する見方が変わってくる。
それまで暗い面しか見えなかったのが、明るい面も見えてくるようになる。
そうすると、自分の周りにはいいことが次々と起こってくるように感じられるようになる。
宗教を信じて救われたと主張する人は、どうやらこうした心のしくみをもっているのではないかという気が私にはするのだ。
人間は前向き・肯定的に人生を見れば、なんでも前向き・肯定的だし、逆に否定的・悲観的に見れば、みな否定的・悲観的である。
かつて「宗教が阿片」たり得たのは、あまりにも悲惨な生活を送っている人が多かったからである。
そうした人が「自分はこれで幸せです」などというと、マゾヒスティックだと思われるが、今日の日本ではそれほどみじめな生活を送っている人は
多くない。確かに上を見ればキリはないが、相対的には多くの人が物質的には満足しているのである。
そういうことがあるから、いわゆる新宗教を信じることによって、その人が前向きに努力する、自己確信的になるのは、ある意味で必然である。
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「宗教が阿片」 現代ではこうは言えなくなっているとあるが、
株でギャンブルをする依存症の人の努力や根拠なき都合の良い前向きな思考が、
まるで昔の悲惨な生活を送りながら幸せと言っていた宗教依存の人とかぶるのは気のせいか