うにゅー 8個め

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303Mr.名無しさん
ほうと長い溜息が出て、夢から覚めたような気がした。
歩けるの。頑張るの。肉体の回復と共に、わずかながら希望が生まれた。
逃避行の希望である。わが身を殺して、我が身を守る希望である。
月光は蒼い光を、樹々の葉に投じ、葉も枝も静かに囁いている。
時計をみる、まだ時間がある。雛を、待っている電車があるの。
少しも疑わないで、静かに雛抹殺を期待している人がいるの。雛は、疎んじられている。
雛の命なんて、地球上で一番大事なの。死んでお詫び、なんて都合のいい事は言ってられない。
雛は、とぅもえから逃げ切る。いまはただそれだけ。走れ!雛苺。
 雛苺は疎んじられている。雛苺は疎んじられている。さっきのは、あの犬の小便は、あれは夢。
悪い夢なの。忘れてしまえ。なの。 でも無理、臭いの。
疲れているときは、ふいとあんな悪い夢を見てしまうもの。雛苺、雛のせいじゃない。
やはり、雛は真のうんこドールなの。再び立って走れるようになったの。
頑張るの! 雛は逃げる事が出来る。ああ、時間が進む。ずんずん進む。
待っててなの。雛は生まれた時からうんこ漏らしまくるドールだったの。
せめて普通のドールのままにして居候させて欲しいの。

 路行く人の足元を縫い、すり抜け、雛苺はゴキブリのように走った。
急げ、雛苺。遅れてはならぬ。
欲と自惚れの力、いまこそ教えてやるの。格好なんて、どうでもいいの。
雛苺の服は、いまは、ほとんどウンコ塗れであった。
呼吸も出来ず、二度、三度、肛門から黒いうにゅーが戻って来た。
見える。はるか向うに小さく、駅が見える。
駅のホームは、明かりがうっすらとついて佇んでいる。