どうせ毒男だしツンデレ小説でも書くか 第5話目

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1Mr.名無しさん
毒男のためだけのツンデレ小説を書くスレ。
でも萌えられたらツンデレから多少離れてても良し。
絶対にsage進行。

初代
http://etc4.2ch.net/test/read.cgi/male/1110367127/
第2話
http://etc4.2ch.net/test/read.cgi/male/1120669390/
第3話
http://etc4.2ch.net/test/read.cgi/male/1130681506/
第4話
http://etc4.2ch.net/test/read.cgi/male/1140319920/

ログ置き場
http://dousedokuodasi.hp.infoseek.co.jp/

はてなダイアリー - ツンデレとは
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C4%A5%F3%A5%C7%A5%EC
2ch検索: [ツンデレ]
http://find.2ch.net/?BBS=ALL&TYPE=TITLE&STR=%A5%C4%A5%F3%A5%C7%A5%EC&COUNT=50

職人さん方、いつもクオリティの高い作品ありがとうございます。
2Mr.名無しさん:2006/07/25(火) 07:19:32
待ちきれなくて建てた
後悔はしていない
3Mr.名無しさん:2006/07/25(火) 17:30:18
乙なんだがスレタイが・・・
なんだ5話”目”って
4Mr.名無しさん:2006/07/25(火) 19:03:24
とりあえず☆
5 ◆yVoA9C7lzI :2006/07/25(火) 23:19:05
酉がこれであってるか微妙なとこだけど、うんあれだ
パクリ云々で潜伏してたが、8月の初めくらいから復帰するよ
夏休み突入で暇だらけだからな。大学って長期休暇長すぎ
6Mr.名無しさん:2006/07/25(火) 23:37:11
>>5
期待

誰か知らんが前スレ梅乙
しかしこのスレタイの微妙な違いがどうも気になるな・・
7Mr.名無しさん:2006/07/26(水) 07:30:44
>>5
そういやパクリ疑惑でたたかれてた人いたな
続き読みたかったんだが
8Mr.名無しさん:2006/07/26(水) 19:20:44
>>ALL
スレタイの微妙な間違えすまんorz
もしどうしても気になるようなら新しいスレ建ててくれ・・・・

>>5
つなぎ屋お帰り
期待してる
9 ◆yVoA9C7lzI :2006/07/26(水) 23:27:25
>>5
あっちはデータ消したから続きは無理っす
8月入ったら新しいネタ投下してくんで、そっちで暇でも潰してくださいな

>>8
ただいま
明日はテスト無いからちょっと書いたけど、しばらくツンデレ物から離れてたおかげでツンデレってないw
しかも萌えられないとか致命的w
10Mr.名無しさん:2006/07/27(木) 16:56:08
ほっほ
11Mr.名無しさん:2006/07/27(木) 21:34:30
自信は無いけど投下してみてもいいですか?
12モムチャン@アリぶろぐ:2006/07/27(木) 21:35:28
「おめーマジうぜーんだよ」
13モムチャン@アリぶろぐ:2006/07/27(木) 21:37:53
うずくまった僕の腹を蹴り上げながら、マミは言った。
僕はうめき声を押し殺しながらマミを見上げた。
「なに見てんだよてめー」
パンツが見えても平気な顔したマミは、
僕の頭に足を乗せ、ぐりぐりと踏みつけた。
14Mr.名無しさん:2006/07/27(木) 21:42:26
sageてください。
15Mr.名無しさん:2006/07/27(木) 23:39:19
続きマダー?
16Mr.名無しさん:2006/07/27(木) 23:59:54
極楽・山本の第二の人生はAV男優!?
http://that4.2ch.net/test/read.cgi/goods/1154012132/
17Mr.名無しさん:2006/07/29(土) 11:07:09
とりあえず応援絵
ttp://apple.mokuren.ne.jp/loader_1/src/apple010036.jpg
職人さん期待してます。
18Mr.名無しさん:2006/07/29(土) 11:32:51
>>17
(*゚∀゚)=3
19Mr.名無しさん:2006/07/29(土) 12:52:19
>>17
これはやる気でた
20Mr.名無しさん:2006/07/29(土) 12:57:36
>>17
勉強そっちのけで書いてるぜ。今日中には一つ落とせそうだ。単位と一緒に
21Mr.名無しさん:2006/07/29(土) 13:07:14
>>17
あんたの絵好き過ぎるんだが。このパッション何処へ向かわせたらいいのやら
22Mr.名無しさん:2006/07/29(土) 14:28:35
>>17
いきなり神絵師降臨されたな。鮎川まどかを一番に思い出した俺はオッサンorz

しかしこのスレ、こんなに人がいたんだなw
23過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/07/29(土) 18:07:38
一応一つ作ったんだが、このスレの目的から外れてることに、読み直して気付いた
ツンデレ小説っていうより、ツンデレ小説職人不在の時の閑話休憩的な位置づけでよろしく

>>24からネタ投下
24過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/07/29(土) 18:09:06
   夕立刻   序話

 普段より少し送れた時間での登校。大きく蛇行した尾根道を、夏の日差しの下ひたすら歩く。
 鳴り響く蝉の鳴き声は、夏という事象を全身全霊で叫ぶかの如く。一週間という短い命を、その生き様を叫び続ける。
 東京の八王子に程近い、山梨県のはずれに位置する秋山市。一応市という名前を冠しているが、よく見て町、悪く言えば村というか、集落だ。
 山間の盆地に無理矢理作られた、山に囲まれた田舎町。そんな説明が一番しっくり来るようなそんな場所に暮らし、今年で20年目。
 ダラダラと生活を続け、大学生になり、普通に単位を取って、普通に友達を作って、普通に遊ぶ。平凡すぎて逆に非凡なくらいに、俺は平凡な人間だと思う。
 家族とか、そういうのを除いては。
 物心が付いた頃から、父親はいなかった。中学生になったころ、母親はうつ病を患い、窓の無い病院に閉じ込められた。
 あんなもの、母親とも呼べはしない。小さい頃から構ってもらった覚えも無くて。母親というよりも、たまに来てくれる家政婦さん。俺の中での母親は、そんな立場だった。
25過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/07/29(土) 18:10:09
 山道を歩き続けると、山の頂上に場違いともいえる真新しい建物が見える。俺が通う大学、西東京理工学大学。
 土地が安いからなのだろう、わざわざ山の頂上に建てられたそれは、夏の日差しを受け爛々と輝いて見える。
 去年外装工事を行ったおかげで外面は綺麗だが、中はというと汚いの一言に限る。何せ、築30年なのだから仕方が無い。
 校門付近、それまで急な上り坂だった道が、平坦な道へと変わる。
 ここからは多少楽になるが、夏の日差しの下では大した効力は発揮しない。夏の日差しは際限無く体力を奪ってゆく。
 校門の寸前、学生が乗っていると思われる車が俺を追い越してゆく。車が欲しいが、あいにく免許なんて持っていないしそんな金も無い。
26過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/07/29(土) 18:11:02
 校門を通り抜けて学校の玄関口に到着する。
 今日はテスト最終日で、それは明日から始まる夏休みを迎えるに当たって最大の難敵であることを意味する。
 一体どういったシステムでテストの日程が決められているのかは分らないが、何故か決まって苦手な教科が最終日に放り込まれるのだ。
 あれはいじめとしか思えない。
 テストが行われる教室を確認しようと、学科共通の掲示板に足を運ぶ。と、見知った後姿を見つけた。
 きのこの様な髪型をした、骨と皮だけなんていう表現がしっくり来る、俺より10cmほど背が小さい男。
「よう、テル」
「ん? あぁ、富山」
 どこから見てもすぐにこいつだと分るこのマッシュルームカットは、こいつの特徴とも言えるだろう。
 大山輝明(おおやまてるあき)、身長はたぶん170cmくらい。俺が180と少しだから、恐らくそれくらいだ。
「お前も微積?」
「そうだよ。そっちも?」
 頷く。顔を上げ、ため息をついてみせると、彼も俺に釣られたのか、小さなため息をついた。
「何でお前もため息つくんだよ。お前、勉強は最強じゃないか」
 運動はからっきしだけどな、と心の中で付け加える。
 体力が無いクセに休日は引き篭もってパソコンばかりやっているからそうなるんだよ、と普段から言っているのに、ほんの少しも聞こうともしない。
「富山がため息ついたからだよ。そういえば、微積苦手なんだった?」
「ああ、苦手だな。苦手で悪いか」
「んー。悪いと思うよ」
 少し考える仕草を見せた後、至極当然とも言える答えを俺に向ける。
「お前って、嫌なことを本当にはっきり言うよな」
「でも、言わないと治さないでしょ」
「それはそうだけどな」
27過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/07/29(土) 18:12:04
 テストが行われる教室を確認し、テルと連れ立って教室に入る。
 黒板に張り出された座席表を確認し、テルから遠く離れたJ列の前から4番目に座る。
「遅かったじゃない。時間ギリギリよ?」
 座ると同時に、正面に座っている女子生徒の声が聞こえた。
「お前な、先に行くなら起こしてからにしてくれよ」
「嫌よ、いつも起こしてあげてるんだから、たまには自分で起きなさいよね」
 肩甲骨くらいまで伸びた髪の毛を、邪魔そうに指で弄んでいる。エアコンの冷風に靡く髪の毛は、まるでサラサラと音が鳴っているかのようだ。
 元々の地毛が茶色っぽく、固い髪質の俺からすると、真っ黒で柔らかくて、毛先まで綺麗なストレートは羨ましい。
 仮に俺がそんな髪質だったとしても、別に伸ばそうとも思わないけれど。
「ところで、お前一コマ目テストあったのか?」
「まーね。あんたと違って勤勉ですから、私は」
「その割にテストの点数悪いけどな。大方、今日だって一コマ目あるのに寝坊して、慌ててたおかげで俺を起こす暇がなかったんじゃないのか?」
「ち、違うわよっ!」
 声を張り上げて否定する。周囲にいた数人が、何事だと振り向いたのが見えた。視界の隅でテルが、また始まったと首をすくめているのが見える。
 こいつ、詫槻ひなたとは、いわゆる幼馴染という間柄で、あの人が入院し始めた頃から世話になっている詫槻家の長女。
 幼稚園から始まった腐れ縁は、小学校、中学校、高校、そして大学と、今年を含めて18年間行動を共にしている。まったくもって、大した腐れ縁だ。
 自称勤勉だが、その実態はというと、部活の剣道に命をかけるスポコン少女。二年生でありながら実業団からもスカウトが来ている実力派だとか。
 そういえば、小学生くらいの頃から朝の集会や始業式、終業式その他諸々で表彰されていた。
28過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/07/29(土) 18:13:05
「本当に違うのか?」
「う、うんっ!」
「今朝、このえさんがそんなこと言ってたんだけどな」
「お、お母さんが?」
 ああ、と声を上げながら頷いてみせると、ひなたは「あの馬鹿親め」とでも言いたげな表情で顔を覆った。
 それに次いで手の平で机を叩く。
「その通りよ。何、何か悪いわけっ!? 仕方ないじゃない、私だって人間なんだから寝坊の一つや二つするわよっ!」
 今度は開き直る。
「お前って寝坊する時が毎回ピンポイントでテストの日だよな。あ、一応言っておくけど、このえさんからは何も聞いてないから」
「はい?」
「だから、このえさんがそんなこと言ってたってのは嘘だってことだよ。お前、引っ掛けると簡単に引っ掛かってくれるからありがたいな」
 それに比べてテルと来たら。こちらが何かしらを引っ掛けようとしても、逆に相手が俺に対してなんらかの引っ掛けを施してくるのだから性質が悪い。
 怒りに拳を震わせ、今にも飛び掛らんとするひなたを知ってか知らずか、タイミングよく担当の教授らしき人間が現れる。
「ほら、先生来たからさっさと前向け」
「後で、覚えてなさいよ」
 不穏な一言を残し、彼女は後ろに向けた身体を前に向けた。
 どうせ鳥のように三歩歩けば忘れるような頭をしてるんだ、仮に俺が覚えていても、ひなたが忘れているんだから意味が無い。
29過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/07/29(土) 18:14:09
 テスト終了と同時に、その生命力を失って行くかのように、ぐったりと机に突っ伏してゆくひなた。
 あぁ、出来が悪かったんだな。その気持ちはよくわかるさ、俺だって単位はきっと落としたんだろうからな。
「おいひなた、聞くまでもないだろうと思うが、出来はどうだった?」
「最悪。分ってるなら聞かないでよ」
 顔色までも悪くみえる。
「さて、俺は帰るけどお前どうする?」
「ん? 私は部活あるから。こうちゃんもう帰るの?」
「そりゃ、ここにいる理由もないからな。それと、こうちゃんやめれ」
 昔からのあだ名だが、もう20歳にもなって「こうちゃん」などと呼ばれたくは無い。
「まあまあ、いいじゃない。今更名前で呼ぶような間柄でもないでしょ?」
「名前の呼び捨てとあだ名ってのは、一体どちらのほうが親密な関係と言えるんだ?」
「さぁ? 私に聞かれても」
「どっちだろうな」
 別にどちらでもいいのだけれど。
 机の上に放り投げられたようにぞんざいに放置されていた筆箱を鞄の中に仕舞い、帰り支度を終わらせる。
「じゃ、部活頑張れよ」
 ぽん、と軽くひなたの頭を叩いてから、教室から出る。
30過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/07/29(土) 18:15:03
 玄関口に到着し、何気なく空を見上げた。
「夕立、来るかもな」
 小さく呟く。夏の象徴とも言える積乱雲が近い。
「天気予報だと、今日一日中晴れみたいだけど」
「ん? あぁ、テル」
 一体いつの間に俺の隣にいたのだろうか、難しそうな顔をして携帯電話を見つめるテルの姿があった。
「ここらは山だからな、山の天気は変わりやすいし。それよりどうした、天気予報なんかで変な顔して」
「天気予報じゃないよ。ほら、こっち」
 差し出された携帯電話のディスプレイを覗き込むと、数行の文章が目に飛び込んできた。
「ふーん、殺人事件ね。刃物で滅多刺しにされ失血死、容赦ねーな。って、秋山市ってここじゃんっ!? しかも今日かよっ!?」
「気付くの遅いよ。はぁーあ、折角の夏休みなのに、幸先悪いね」
「そうだな。犯人捕まってるのか?」
「んーと」
 もう一度携帯電話を取り、画面をスクロールさせる。
「捕まってないみたい。付近に潜んでいる可能性があるから、付近住民は注意してください、だってさ」
「マジで、幸先悪いなこれ」
 ぱくん、と携帯電話を閉じてポケットに詰め込んでいるテルを尻目に、鞄を持ち直してさっさと歩き始める。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ!」
「あちぃからさっさと帰りたいんだよ」
「だったら走らせないでくれよ」
 ため息混じりに切れた息を整えるテル。本当に、運動不足は深刻そうだ。
「それに、殺人犯がいるかもなんだろ? だったら早いところ帰ったほうがいいだろ」
「うん、確かにね。折角の夏休みだけど、犯人が捕まるまでは外に出れないなー」
31過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/07/29(土) 18:15:47
「お前は俺が誘わないと、ずっと家に引き篭もりっぱなしだろ」
「そんなことないよ。僕だって、たまには外出するんだから」
「嘘言うなよ、ふかわ」
「ふ、ふかわっていうなー!!」
 丁度テルが拳を突き上げ、俺を追いかけようとしたとき、マナーモードにしっぱなしだった俺の携帯電話が、俺の太ももに振動を伝える。
「と、ちょっと待てよ」
 手と言葉でテルを制し、携帯電話を取り出す。振動の種類からして、メールではなく電話だ。
「はいもしもし」
『あ、こうちゃん? 私、このえ』
「あ、このえさん。どうしました、ひなたならこれから部活ですよ?」
『うん、それは知ってるんだけど。それより、出来るだけ急ぎで帰ってこれる?』
「はぁ、大丈夫ですよ。でも、なんでですか?」
『それは、こうちゃんが帰って来てから教えるよ。ほんと大切な用事だから、急いで帰って来てね』
 そんな声と同時に、プツッと電話が切れる。
「どうしたんだろ、急ぎで帰って来いなんて」
「誰から?」
「現在の保護者」
「えーと、詫槻さんのお母さんだったよね」
「そうだな」
 携帯電話をポケットに仕舞い、二、三度屈伸をする。
「わりぃ、急ぎで帰らないといけなくなったから、走る」
「あぁ、うん。それじゃまたその内に」
「じゃーな」
 足に力を込め、下り坂を走り抜けた。
32過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/07/29(土) 18:16:26
 大学から徒歩20分の道のりを10分で済ませた俺。自画自賛をしたい気持ちだ。
 秋山駅のすぐ近く、大衆食堂秋雄。亡くなったひなたの父親、詫槻秋雄さんの名を冠したその食堂は、今も地元の人間に変わらず愛されている。
 それは一重に、仙台の店主であるこのえさんの力だろう。
 ちなみに、当代の店主でありひなたの兄、詫槻和也はどうでもいい。
 営業中の札がかけられた入り口を通り、店内に入る。
「へいらっしゃーって、なんだ、クソガキか」
「よう中年一歩手前、今日も精が出るな」
 入り口のすぐ正面、システムキッチンのような作りになっている店内は、客と料理人がコミュニケーションを行えるようになっている。
「それでどうした、汗かいて。そうかそうか、犬に追いかけられたのか、そいつぁいい」
「仮にそうだったとしても、俺がはいそうですと頷くように思うか? 思ってるなら、お前相当脳みそ腐ってるな。それと、料理中は煙草止めたほうがいいぞ」
「これがねーと料理に集中できねぇんだよ。ほっとけ」
 この出来損ないが。死んでしまえばいいのに。
「で、このえさんはどこだ」
「あぁ、母さんか? 知らねーよ、テメェで探せや」
 見たところ、店内にはいないらしい。
 時刻は午後三時、店も落ち着く時間帯だ。きっと家のほうにいるのだろう。
「あぁ、勝手に探させてもらうよ」
 店内から家に通じる通路を進み、玄関に靴を丁寧に並べてから家に入る。
 一応居候という立場だ、こういうところはそれらしさを出しておかないといけない。
33過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/07/29(土) 18:17:27
 とりあえず荷物を自室に置き、居間に入る。
「あ、このえさん」
 案外早く見つかった。真面目な顔でテレビと向かい合っていたこのえさんは俺に気付くとテレビの電源を落とし、こちらに向きなおす。
「帰って来てすぐで申し訳ないんだけど、ちょっといいかしら?」
「あ、はい」
 真面目な雰囲気に、思わず固まってしまう。
「座って」
 促され、正座で座る。
「まず、由利音さん。あなたのお母さんが、病院から抜け出したらしいの」
「へ?」
 どうやってとか、なんでとか、そんな言葉も出てこなかった。
 いきなり聞かされたあの人の名前に、愕然とした。
「それでね、私のところに警察から連絡があったの」
「警察って、あの人が何かしたんですか?」
「まだ確実ってわけでもないみたいなんだけど、病院の配膳室から包丁が一つ、無くなっていた、みたい」
 なんとなく、このえさんが言わんとしていることがわかった気がした。
「ここら辺で事件が起きたの、知ってる?」
 頷く。喉が渇いて声がでない。
「丁度ね、由利音さんがいなくなった時間の三十分後に、精神病棟の近くで人が殺されてる」
 予想通りだった。
 至極当然の考えだ。精神病を患う、姿を消した患者。そして亡くなった包丁。さらには、元々その人間がいた近くの場所で起こり、それぞれの時間も近い。


「警察は、由利音さんが事件を起こしたって考えているみたい」
                     つづく?
34Mr.名無しさん:2006/07/29(土) 18:20:55
ヽ(´Д`;)ノ アワワ
お、重いぞ・・・

でも期待
35Mr.名無しさん:2006/07/29(土) 23:35:52
続いてくれ(;´Д`)
36Mr.名無しさん:2006/07/30(日) 00:44:02
スレ初のミステリー?

期待
37Mr.名無しさん:2006/07/31(月) 02:40:30
ミステリーものは苦手だけど、ツンデレなら読めるかもしれないw
38Mr.名無しさん:2006/07/31(月) 09:32:26
期待sage
39Mr.名無しさん:2006/07/31(月) 18:06:55
保守
40Mr.名無しさん:2006/07/31(月) 18:27:28
なぁ、VIPのツンデレスレしばらく見ないけど、なんかあったのか?
41Mr.名無しさん:2006/07/31(月) 19:06:40
スクリプトやらなんやらで今は避難所生活中のような気がする
42Mr.名無しさん:2006/08/01(火) 16:49:53
ほしゅ
43Mr.名無しさん:2006/08/02(水) 20:43:42
ほしゅう
44Mr.名無しさん:2006/08/02(水) 21:20:07
捕手
45Mr.名無しさん:2006/08/03(木) 00:30:17
このままだとこのスレおちないか?
だからage
46Mr.名無しさん:2006/08/03(木) 01:52:17
短いのを書こうと思うんだが、その前に一つだけ質問したい。
皆さんは会話のみの文と、一人称の地の文入り、どっちが良いですか?
47Mr.名無しさん:2006/08/03(木) 03:01:34
>>46
好きに書くがヨロシ
それが個性というものです
48Mr.名無しさん:2006/08/03(木) 11:10:29
とりあえず(O゚・∀・)wktk
49Mr.名無しさん:2006/08/03(木) 22:24:46
補習授業
5046:2006/08/03(木) 22:58:34
解りました。じゃあ一人称で今日から書きますね。
短いのって書いたけど、少し長くなるかも……。

一区切り書けたら投下しますね。
51Mr.名無しさん:2006/08/04(金) 16:25:55
ほしゅ
52Mr.名無しさん:2006/08/05(土) 06:52:25
保守
53Mr.名無しさん:2006/08/05(土) 11:42:39
BOSCH
54Mr.名無しさん:2006/08/05(土) 19:33:05
保守sage
55Mr.名無しさん:2006/08/06(日) 00:01:30
 高3女子の平均身長をご存知だろうか。平成16年調査で157.9センチ。
 つまり、目の前の彼女はその平均より17センチも高いわけである。
 そんな彼女が上から目線で俺を見る。
 「試合まであと8日よ」
 腕組み仁王立ちで昇降口に立つその姿は、そこいらの生徒指導の教師よりも
圧倒的な威圧感、らしい。
 「あっしには関係のねぇことでござんす」
 その威圧感を柳のごとくさらりと流し、返事を返すとついでにきびすも返す。
 彼女の長い腕が伸びて、くるりと後ろを向いたそのタイミングで襟首を捕まれた。
 「関係あるのよ、今日こそ練習に出なさい、あなたがいないとレギュラーが揃わないの」
 「……、ちょっと真面目な話をしましょうセンパイ。退部届けは先週に出しましたよね?」
 「あ、コレ?」
 センパイはブレザーから退部届けを取り出してひらひら弄ぶ。
 「顧問教師は受理しておりません、ゆえにあなたは現在進行形でバスケ部員」
 ニヤリと笑うなそこで。
 「ほら、さっさと来なさい、キミがいないと頭数が揃わないんだから」
 首根っこ掴んだまま引きづられそうになる。
 「やる気がありません、行きません」
 「部員である以上先輩には絶対服従よ」
 「部員だったのは双子の弟です、彼は宇宙飛行士になって木星往還船に乗って
旅立ちました、7年は帰ってきません」
 掴んでいた襟をはなして、センパイが俺の正面に立った。五センチ上から
まっすぐに俺の目を見る。
 「ふざけないで」
 「ふざけてるのはセンパイでしょ」
 そのまっすぐな目線をかわすように目を伏せた。「もう部活には出ませんから」背を向けて、
センパイを置いて学校を後にした。
 
 
 
56Mr.名無しさん:2006/08/06(日) 00:02:31
続きません、なぜならバスケなんてツメの先ほどの知識も無いから
思いつき保守ということで
57Mr.名無しさん:2006/08/06(日) 00:17:12
期待
58Mr.名無しさん:2006/08/06(日) 02:48:17
初体験なんだが投下していいか?
59Mr.名無しさん:2006/08/06(日) 02:53:07
そんなこといちいち聞かない
レスの無駄
せっかく書いたのなら投下しなさい



べ、別に読みたいなんて思ってないんだからねっ
60Mr.名無しさん:2006/08/06(日) 03:42:57
ボトム    第一話

起床時刻は午後4時過ぎ。起きてすることと言えば、アニメのDVDを観るか
或いはエロゲーに興じるか。そうこうしてる内に夜が訪れ、睡眠時刻は午前6時過ぎ。
このところずっと繰り返される、とても誉められたものじゃないが、一応は規則的な毎日。
それが俺の夏休み。
大学のクラスメートは、俺と違って夏休みにやることが目白押しのようで、前期試験の最終日には
こっちが憂鬱になるほどはしゃいでいて・・・。
そんな、サークル活動や色恋沙汰とは全く無縁なダメ大学生「高杉レイ」とは俺のことだ。
え?ダメ人間決め込んでるくせに大学生って肩書きは矛盾してないかって?
そうだな。確かに矛盾してる。ただ少し言い訳させてもらうと、高3の時の俺ってヤツは
情けないことに、大学っていうコミュニティーに関して甘ったるい幻想を抱いてたんだ。
例えばそう、多少不細工の身分の男でも女と楽しく喋ったりできて、男友達と夜通し遊びまわって、
夏は海に行き、クリスマスは誰かのアパートで女を交えて慎ましくも楽しい宴。
ラブコメじゃあ在るまいし、こんな幻想に胸躍らせてしまったのは中高と6年間を
半径1キロ圏内にコンビニ1つ無い田舎の男子校で過ごした反動だろうな。
とにかく、世間を知らなすぎた。
まあ、それ故に大学受験はそれなりに頑張り、なんとか都内の三流私大に引っかかったてわけだ。
だが入学してからの俺はというと、男友達はクラス内で数人できたわけだが、女友達はおろか
女と一言も会話すらできていないわけで、人間というのは顔とキャラクターで全てが決まると
思い知ったわけで・・・・・。
だから、先に述べたような怠惰な夏休みを俺が送るのも至極当然な流れだ。
61Mr.名無しさん:2006/08/06(日) 12:06:48
そんな・・・・・
前置きだけたなんて・・・・
生殺しにするつもりですかw
62Mr.名無しさん:2006/08/06(日) 19:28:14
ハルヒ厨打倒の狼煙が遂に上った!
志を持つ者は我先にと来い!ハルヒ厨の横暴許すまじ!
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1154793355/l50
63Mr.名無しさん:2006/08/06(日) 21:31:21
ちょwwwお前らwwwwww
中途半端は良くないぞwwww
6460:2006/08/07(月) 01:15:37
「さてと。今日もワークをこなしますかな」
かつて日本列島を震撼させた、どこぞの極悪教祖さながらの台詞を呟き
、俺はいつものようにパソコンを起動させた。エロゲーを進めるためにな。
ふと窓ガラス越しに広がる風景を見てみると、もう日が沈みかけていた。
時刻は午後6時。俺が起床してから2時間足らず。
実態はどうあれ規則的な生活だ・・・。

とその時、出し抜けにチャイムの音が耳に入る。
「(・・・・・・一体誰だ?)」
我が家の門の前に居るであろう訪問者について、俺に思い当たる節など皆無に近い。
なにせ、俺の家をアポなしで訪ねてくるほどに親しい友人は大学に入ってから作れてないし、
躊躇無くそういう行動をとるであろう高校時代の数少ない友人は、揃いも揃ってここ
横浜の地には居ないのだから。・・・ある者は独りで免許合宿に出かけ、またある者は母親の
実家に帰省し。

大方、新興宗教、あるいは真っ赤な新聞の勧誘だろう。容易に想像が付く。
まあなんにせよ、俺にとって確実に快くない客であることには間違いないだろう。
なぜなら、俺の人生の流れ、ベクトルはそういう不幸な、あるいは不快なイベントに向かって
爆進していることに物心ついた頃から身を持って体感してきたのだからな。
例えばそう、あれは俺が11歳の誕生日を迎えて間もない春の午後。
親父が1週間前に買ったばかりというベンツのシートに、俺は大量の下痢便を盛大にぶちま・・・・。
やめよう。嫌な思い出だ。

何はともあれ、居留守はどうも好かん。エロゲーをやりたいのは山々だが
ここは潔く玄関のドアを開けてやるべきだろうな。
6560:2006/08/07(月) 01:16:11

まもなく俺は、怠惰な毎日を送り続けたせいですっかり活力を失った体と心を無理やり奮い立たせ、
自室から一階へ降りた。
その間、チャイムはけたたましく不規則なリズムで鳴り響いていた。
「(どんだけこの客はせっかちなんだよ!?・・・つうか、俺朝起きたままだから口臭くねえかなあ・・・)」
ダメ人間のくせにやたらと体裁を気にする俺であった。これは随分昔から変わらない。

「ちょっと待ってください、今鍵開けますから」
玄関に辿り着いた俺は、親父が愛用している皮製のサンダルをだらしなく履き、ドアに
もたれかかるような格好でそう言いながら鍵を開けた。

「はい、今鍵開けまし・・・・ブハッ!!!!」
・・・・・俺は勢いよ玄関から階段の辺りまで吹っ飛ばされた。
「(・・・ド、ドアに飛ばされた。なぜだ?ポルターガイスト?いや違う。・・・そうか、向こう側の人間が、
鍵が開いた瞬間にドアを蹴り飛ばしやがったんだ!!一体なぜ!?
ま、まさか・・・はるばる福建省からやってきたシルバニアファミリーよろしく森の愉快な強盗団!?)」

「な〜にぶつぶつ言ってんのよアンタは。」
0コンマ数秒前のプチマトリックスのせいで、階段付近で腰砕けの仰向け状態になっていた俺が
声の先を見上げると・・・・。
そこには新興宗教の勧誘員でもなく、真っ赤な新聞の勧誘員でもなく、福建省の強盗団でもなく

・・・・・ツインテールの美少女が仁王立ちしていたのだった。
66Mr.名無しさん:2006/08/07(月) 01:25:40
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 続き!続き!
 ⊂彡
67Mr.名無しさん:2006/08/07(月) 01:29:28
数時間待ってくんろ
68Mr.名無しさん:2006/08/07(月) 22:14:45
もはや数時間の域を超えているw
6960:2006/08/07(月) 22:33:09
「お前・・・・誰だ?」
不本意極まりない俺の返答。
そちらさんの精神状態を憂いでしまうほどのチャイムの鳴らし方、ドアを蹴り飛ばされたせいで
俺が負った痛手、いまだに全く話が見えない美少女の来訪、などなどの
疑問や憤りを無理に脳内で集約して言葉にしようとした結果がこれ。情けない・・・。
「だ、誰ってあんた・・・本気で言ってるの!?」
ああ、本気だ。こんなシチュエーションで冗談が言えるほど俺はアメリカかぶれしてない。
それに、そのまるで電波な人間と相対したような目はなんだ?そんなに俺の返答は
おかしかったのか?しかも、今現在状況から判断するには、俺よりお前のほうが電波度は勝ってると思うぞ?
「あっきれた!!あんた8年そこら前の記憶すら頭に留めておけないの〜!?」
と、両手のひらを上に向け頭を左右に振りながら、怒ったような口調で彼女は言った。
大げさなリアクション・・・。
「8年前?なんだそりゃ。全く意味が不明だぞ」
「な!? ほんとにあんたって・・・私が引っ越したのが8年前ってことよ。これで
思い出せた?高・杉・レ・イ・君」
「お前・・・なんで俺の名前を。・・・・・ああああ!!お前、マコト、上月マコトじゃねえか!」
俺の頭の中で走馬灯の如く記憶がよみがえった。

上月マコト。俺が10歳くらいの頃まで近所に住んでいた幼馴染だ。
生まれてまもなく母親を亡くした俺は、その寂しさを紛らわす為に
3歳くらいから殆ど毎日のようにコイツの家に遊びに行った。
マコトの母さんはそんな俺に対して実の息子のように接してくれて、
マコトは同い年のくせに滅茶苦茶偉そうで。夜になると仕事を終えた俺の親父が
迎えに来て。そんな暮らしをしてた。
逆のパターンもしばしばあった。マコトが俺の家に来て、夜になるとマコトの母さんが迎えに来る
といった風な。
まあ先に述べたように、8年前にコイツは家庭の都合でケルンに引っ越してこの
暮らしは終焉を迎えたわけなんだが・・・・・・。

それにしても、なんでマコトがまたここに居るんだ?
70-1-:2006/08/08(火) 12:23:32
「ちょっとあんた、なに人の顔をジロジロ見てるのよ」
 俺がアパートに帰ると、其処には見覚えの無い女の子がいた。
 長くて艶やかな栗色の髪をツインテールで纏めている、とても可愛いい女の子。目が少し釣り目だけど、それがまた整った顔を引き立たせてる。今まで見た中で、一番自分の好みに近いかもしれない。
そして年は、俺と同じくらいか。へぇ、俺も遂に自分の家に連れ込めるこんなに可愛い彼女が出来たのか。正直、驚きを隠せないな。
 そっかそっかー。嬉しいなあ。俺もやっと彼女いない歴=年齢から卒業でき――
 …………
 ――は? なんか、自分で言うのもなんだけど意味がよく解らないんだけど。そもそも俺彼女作った覚えないっていうかこんな可愛い娘俺じゃ無理っていうか……。まぁ、つまりは――どゆこと?
「黙ってないで、なんか言ったら?」
 彼女が俺を見る目は、あまり良いものとは言えない。なんか、殆ど睨んでるような気がする。いや、きっとこれは気がするだけに留まらず、確実に睨んでいる。……俺、なんかしたっけ?
「――」
 ……駄目だ、思いつかない。うーん、……あっ、多分きっとあれだ。満員電車に乗った時、触るつもりなんてさらさら無かったけど、誤ってお尻とかそういうの触ってしまったんだ。
ぶっちゃけ、触る気がさらさら無かったかなんて確かじゃないけど。もしかしたら最初から触るつもりだったのかもしれない。俺の欲求は底抜けだからな! まぁそれでその事を根にもって、住所まで割り出して、そこまで頑丈じゃない鍵をピッキングして中に入った、と。
変な因縁付けられたもんだなぁ。いやまったく、困ったもんだ俺の馬鹿。一時的な欲求のせいで、こんな事態になるなんて。

 ――まぁそもそも俺、電車に乗った覚えないんだけど。
71-1-:2006/08/08(火) 12:24:35
「なに? そうやってだんまりを決めるってわけ?」
 目の前の彼女の機嫌は、どんどん悪くなっていく。目もそれに比例してか、どんどん鋭くなっていく。やばい、これはやばい。
なにか話しかけなければ。頑張るんだ、俺!
「えっと……こんにちは。外は相変わらず良い天気ですね。太陽が眩しいなあ」
 よし、これで良いだろう。こうやってさり気無く、身近な事から話し始める。我ながら完璧だ。
多分此処で、「お前誰だよ! 勝手に人の家に入ってんじゃねえよ! 目障りだからとっとと失せやがれ!」とも言おうならば、きっと俺は瞬間で屍と化すだろう。
相手との力差なんて、纏っているオーラを見れば一目瞭然である。
「はぁ? 今、夜なんだけど」
「……そ、そうだよねえ、あはは……」
 機嫌は相変わらず変わらずに、見る目だけが不審者でも見るような目に変わった。なんか、穴があるなら入りたい気分です、父さん。
っと、こんな事で落ち込んでる場合じゃない。解った、もう俺は恐れない。正面からぶつかってやる!
「……じゃあ、えっと、一番の疑問を。……君は一体、――誰?」
 言った、言ってしまった。俺は殺される。多分、一瞬にして俺の前に立って、懐に忍ばせておいたナイフで――
「――っ!」
 あれ? 殺すどころか、唖然とした表情で固まってるんですけど。いや、どんどん切なげな表情になっていってる。俺そんなに変なこと言ったかな?
「…………」
「…………」
 なんか重苦しい沈黙がこの部屋を包み始めたので、
「あ、あのー、何か変な、」
「あたしはっ!」
 とりあえずもう一回声を掛けようと思ったら、凄い剣幕で遮られた。うへえ、意味解んね。
「えっと、――あ、あたしは椎水かなみ。あんたの守護霊よ。死神様にあんたを護るよう任命されたから、仕方が無く冴えないあんたを護ってあげるわ。べ、別にあんたの為じゃないんだからね! 仕事よ、仕事!」
72-1-:2006/08/08(火) 12:26:28
「――」
 椎水かなみ、か。うん、良い名前だ。しかし、うーん、ちょっと待ってくれ。
なんか今の、もしかして今彼女――椎水さんが喋った言語って日本語のようなもので、実は日本語ではありません! みたいな感じなのかな。よし、念のためもう一回言ってもらおう。
「よ、よく意味が解らなかったんだけど、出来ればもういっか、」
「だからっ! あたしはあんたの守護霊で、あんたを 仕 方 が 無 く 護ってあげるって言ってるでしょ! 解った!? 
あんたのその馬鹿な頭じゃ解らないかも知れないけど、無理矢理にでも解りなさい!」
 うーん、…………電波? これが所謂、電波ってやつなのか!? それに、そんなに顔赤くさせて「人権って、知ってる?」と思わず尋ねたくなるような暴言を吐かれましても……。今、こういうの流行ってるんですかね?
 とりあえず、当たり障りの無い事を返そう。怒鳴られるのも嫌だし。
「そ、そうなんだ。あははは……」
「そいうことよ。それで、今日からあんたと……そ、その、仕方が無く、一緒に暮らす事になるけど……へ、変なことしたらぶっ殺すからね!」
「へぇ……君は俺の守護霊で、俺を護る為に俺と一緒に住む、と。なるほどね、納得」
 そっか。そういうわけだかどういうわけだか、俺と一緒に暮らすんだ。へぇ、皆羨ましがるだろうな。こんな可愛い娘と同棲してるだなんてこと知ったら。
早速山田に教えてやろう。よし、携帯でメールを、……ん? 冷静になってよーく考えてみろ。今、彼女はなんて言った? 俺は普通に対応してしまったが……。なんか、さらりと核爆弾を投下しなかったか?
 ――仕方が無く、一緒に、暮らす事になるけど
「ちょっと待て! 一緒に暮らすってなんだよ? 全っ然意味が解らないんだけど」
「いや、あんたさっき納得したでしょうが」
「ええ! ……いや、確かにさっきは納得したんだけど、心境の変化というかなんというか……って! そうじゃなくてさ。
いきなり、今日初めて会った人、いや守護霊だっけ? と一緒に暮らすことになるの? いや理屈じゃ解るけどなんか抵抗があるっていうかなんていうか……」
 うわぁ、テンパってるな俺。自分が言ってる事が頭に入ってこない。
73-1-:2006/08/08(火) 12:28:01
「――っ! ……ま、そ、そりゃそうかもしれないけど……。あーもうっ! うるさいうるさいうるさい! とにかくあんたはあたしと一緒に暮らすの! 異議は認めないわ! ……し、仕事なんだから仕方ないじゃない!」
 まただ。俺の言葉を聴いて、一瞬だけとても切ない表情になった。うーん、なんでだろ?
 というか、何故にキれる……。とにかく、流されやすいとよく人から言われる俺だが、此処は引き下がるわけにはいかない。
「お前、馬鹿じゃねーの? なんでこんな可愛い娘と一緒に暮らせるっていうのに、拒否するんだよ?」とか、言う人がもしかしたらこの世界にはいるかもしれない。
でも、落ち着いて考えて見て欲しい。帰ってきたら知らない娘がいて、散々電波的なことを言った後に「一緒に暮らそ?」という言葉をまるで「ごめん、お金貸して?」的なノリで言われても、困るものである。
いや、本当は困らないけど。全っ然OKなんですけど。でも、ほら、一応人並みの建前みたいなの、必要でしょ? 人間社会を渡っていくのは、実に難しい事なのです。
 だから俺は、「異議は認めないわ!」と、予め言葉を塞がれても、知らん顔で異議を唱える事にする。嗚呼、人間社会とは難儀なり。
「で、でもさ、ちょっと考えてみてよ。落ちついて。ほら、深呼吸。すーはー、すーはー。OK? えーとね、守護霊だかなんだか知らないけど、俺も年頃の男の子なわけであって、全く知らない女の子と一緒に暮らすなんて、出来ないよ。
いや、別に知っていれば良いって事じゃないけど。とにかく、俺、君の事知らないわけだし……なんか、ほら、デート商法だっけ? 
そんなのに騙されてるのかもって疑いたくなるし、そんな気持ちで一緒に暮らしたくなんてないし……ね? ……って! どうしたの!?」
 俺の話を聞いていた椎水さんは泣いていた。堪えてるんだろうけど、堪えきれずに零れていた。涙の雫が。
「う、うるさい! ……うる、さい。泣いてなんか、い、いない……う、うう、ひっく……う、うわあぁ」
「ちょ、ちょっと、大丈夫!?」
 本格的に泣き出した。俺、なんか言ったか!? 男は女の涙に弱いってのはデフォだから、困るんだが。思わずおろおろしてしまう。あわわわ……どうしよう。
 ……はは、馬鹿馬鹿しい。それこそ建前だよな。俺はいつから演劇部に入ったんだろうか、と思わず突っ込んでしまいたくなる。
74-1-:2006/08/08(火) 12:29:22
 ――目の前に身を縮込ませて泣いている女の子がいても、俺は別にどうも思わない。

 それは別に、椎水さんに限った事ではなくて。俺は、いつからか、人の痛みが解らない人間になっていた。勿論、自分自身の痛みも。
涙を見ても「何泣いてるの? それって、意味があるの?」くらいの感情しか芽生えなかった。喧嘩した時、どんなに酷い事を言われようが、どうも思わなかった。
いや、別にだからと言って空気が読めないとかそういうのはない。此処ではこうしなきゃいけないんだろうな、とか、此処でこれを言ってはいけない、とか“予想”して過ごしてきた。
勘がいいのかなんなのか、今まで当たり障りなく来れたと思う。
 空気なんて読みたくない、知らん振りを決め付けたい、という思いは日を重ねるにつれ俺を締め付けて息苦しくさせるけど。
それでも、やっぱり建前は大事で。人間社会を渡るには必要な事だから、毎回演劇部員も驚く演技力で誤魔化さなきゃならない。
 今回もまた、仮面を被って、本心を隠して。
「本当に、大丈夫? 俺何かいけないこと言った?」
 おろおろした動作で、本当に心配しているような表情で尋ねる。あぁ、息苦しい。
一般の人で例えるなら、自分より立場が上の人に対して、愛想笑いをし続けるような感覚。別に、面白くもなんともないのに笑わなきゃいけない。
しんどい以外の何者でもない。でも、俺は息苦しさに耐えながらも実行する。なんて模範的な人間なんだろう。
「ねえ、何か言ってくれな、」
「うるさい」
「――え?」
 俺は、椎水さんの口から出た言葉を、日本語として頭の中にカテゴライズ出来なかった。おかしいな? やっぱり日本語じゃないのかな。
「うるさい! あんたの芝居なんて、みたくない!」
「――」
 え……芝居? もしかして、もしかして、見破られた? ……何年間も続けてきた、この俺の芝居が、一発で、見破られた? でもそんな、ありえな――
「あんた何様!? そんなうすっぺらな仮面被って、バレないとでも思ってるの!? そんな下手糞な三流芝居するくらいなら、しない方がよっぽどマシよ!」
「――」
75-1-:2006/08/08(火) 12:29:58
 あぁ、……確かにその通りだ。でも俺は今、俺の行動が相手にどういう影響を及ぼすか、なんてことより、何でバレたのかが気がかりで仕方が無い。
目の前の女の子が泣き崩れていても、どうせ俺はこの娘を知らないわけだし、関係ない。だからさっさと、その鬱陶しい涙を引っ込めて黙るか、なんで芝居だと解ったか教えてくれ! 
今までにない事で、俺は相当焦っているんだ。
 やばい、思考が暴走し始めた。抑えないと。建前モードに戻さないと。でも――駄目だ。焦りは消えない。
「どうなの? 図星なんでしょ!? 何か言ったらどうなのよ!」
「――」
 ……あー五月蝿い。そんなのはどうでもいいだろ。俺が芝居をしているからって、それをお前に教える必要なんて全く無いだろ。
少し黙っとけ。お前にはあとでゆっくりと話を聞くつもりだから。その前に少し自分で頭の中整理させてくれ。
 ……何で、バレたんだ? 俺は別に手を抜いた訳じゃない。いつもどおり上手く役者を演じられた筈だ。さっき言ってた、守護霊、だからなのか? 
いやそんなの関係ないだろ。なのに、なんで、なんで――

 パチンッ

 乾いた部屋の空気の中に、小奇麗な音が響き、左の頬に鋭い痛みが走り、熱を帯びる。思わず、手を添える。
「あんたなんか……あんたなんかっ……!」
 肩を小刻みに震わせ、ボロボロと涙を零しながら、椎水さんは叫んだ。
 そして、一瞬にして俺を押しのけてドアの向こうへと走っていった。
 一人、ポツンと、俺だけが残された。
76-1-:2006/08/08(火) 12:30:27
 ――直径5mmの傷をどっかで無くしてしまって 痛みがワカリマセン...

 ふと、脳裏に過ぎるのは、俺のお気に入りのアーティストが歌っている歌詞の一部分。この歌詞は、俺のことを的確に表していると思う。
いや、歌詞の解釈は人それぞれだと思うけど。まぁでも、「根性焼きの傷?」とかいう解釈をする人はいないだろう。だが俺の近くには残念ながらいた。
山田に初めて聞かせたときの感想がそれだ。とりあえずその馬鹿な頭を治すために活を入れておいた。
 ……いや、山田の話なんてどうでもいい。とにかく、この歌詞は俺にピッタリなのです。俺が、人の痛みが解らなくなったのは、きっと、過去に傷つくべき所で、傷つかなかったから。
その分、勿論他の誰かが傷ついて。俺は何も知らずに、笑っていて。他の誰かは、今も傷ついていて――。
 なんとなく、そんな風に感じる事がある。核心は、無いけれど。過去を振り返る限り、そんな場面無かったように見えるけれど。
 そんな事を思いながら、俺は先程の焦りから解放され放心した状態で、椎水さんが消えていったドアを焦点の合わない、滲んだ目で呆然と見ていた。

 ――俺は、泣いていた。

 一体、何年ぶりなんだろう。何で、泣いてるんだろう。頬を伝うこの冷たい筋を、感じなくなってどれくらい経つんだろう。何で、こんなにも心が痛いんだろう。
何で、こんなにも椎水さんの心の痛みを感じるんだろう。答えは――解らなかった。
 でも、別にそれを無理に知りたいとは思わない。
 ――ただ俺は、椎水さんに謝りたかった。
 何故椎水さんが泣いたのかは、俺には解らない。でも、心がどうしようもなく痛んでいるのは解った。
そして泣いていた椎水さんを思い出すたびに痛む、自分の心が在る事も、十分に解った。

 だから俺は、椎水さんに――謝らなければ。
77Mr.名無しさん:2006/08/08(火) 12:37:27
以上。
文が長すぎたから、適当なところで改行しているので少し読み辛いかもしれません。
もう少しだけ-1-が続きます。一気に投下したら10レス以上行きそうだったので、
ひとまず区切りのいいところで。ちなみにタイトルは未定だけど、
一応自分の中の仮タイトルは「守護霊のいる生活」です。

てか、短いのって言ってたのに、長くなりそうだ。
無事に完結まで漕ぎ着けるか不安だけど、とりあえず頑張ってみる。
それが俺クオリティ。
78Mr.名無しさん:2006/08/08(火) 13:00:17
乙。
さすがに始まったばかりなのでどうなってるのかよくわからない・・・
79Mr.名無しさん:2006/08/08(火) 13:46:42
乙。 期待して待ってる
80Mr.名無しさん:2006/08/09(水) 00:10:06
乙、そして期待しています。

べつに過疎ってるから10スレくらい続いても大丈夫な気がする。
81Mr.名無しさん:2006/08/09(水) 11:11:39
10スレってーと薄い文庫本クラスだな。張り終わるまで何時間くらいかかるだろう。
82Mr.名無しさん:2006/08/09(水) 11:44:13
>>81言ってる意味が分からん
83Mr.名無しさん:2006/08/09(水) 12:14:45
>>82
10「レス」 じゃなくて 10「スレ」 だからね。
84Mr.名無しさん:2006/08/09(水) 12:17:05
皆さん、有難うございます。
期待を裏切らないよう頑張ります。

>>82
多分、10スレって書いてるからだと思います。
流石に、そんなには長くならないと思いますが……w
85Mr.名無しさん:2006/08/09(水) 16:35:40
10スレって…是非書いてもらいたいなww

椎水かなみってなんか久しぶりにきいたよ…(´・ω・`)
86Mr.名無しさん:2006/08/09(水) 16:42:17
間接キススレでは毎日出てるけど、ここでは使われてないからな
87Mr.名無しさん:2006/08/09(水) 17:20:57
>>86
まぁ俺も間接住人だったりする訳なんだが、ここはVIPじゃ無いからagesageだけは気をつけようぜ!
ここ好きなのに「VIPに帰れ」とか言われたくないからさ・・・・
88Mr.名無しさん:2006/08/09(水) 17:39:53
あ〜ホントだ、vipにいたからsage忘れてた。スマソ
ここは進行遅いけど良作が多いから俺も好きだ
89Mr.名無しさん:2006/08/10(木) 07:36:32
保守
9060:2006/08/11(金) 03:20:26
「はぁ・・・。ここまで言わなきゃ思い出せないなんて。レイの間抜けなところは
8年前から変わらないわね!」
「い、いちいちお前はうるせえなあ。」
一方、お前が8年前と比べるとすっかり電波女になってて俺は本当に残念だがな!
・・・なんて付け加えることは流石に俺には出来なかった。
「ふん。で、私の部屋はどこになるのかしら?」
ええと・・・先ほどの登場以来、お前は実に意味不明な発言ばかりするのだな。
なんで俺の家にお前の部屋があるんだよ。
「呆れた!レイ!あんた、おじ様から何も聞いてないの〜!?」
「いやいや。『聞いてないの〜!?』なんて言われても、何のことやらサッパリ。
それに、なんだそのおじ様ってやつは?お前、援助交際でもしてんのか?」
刹那、ドタバタラブコメよろしく、鼻血を大量噴射させながら俺は宙を舞った。
「レイのお父さんのことに決まっってんでしょうが〜!!!!!」
「小粋なジョークだろうが〜!!!!!!!」
「はぁ?あんたのその不細工面でジョークなんか言われても、気味悪いから。」
こ、この小娘・・・。ツインテールだからって下出にでてれば調子乗りやがって!
自分の容姿が俺にとっちゃあタブー中のタブーだってことを知らんのか!!
・・・まあ知らないだろうな。容姿のことで社会から冷遇されたのは中学入って
からだもんな。
「で、俺の親父がなんだって?」
このまま黙ってると不細工ネタをマコトが引っ張る恐れがあったので、話題を
元に戻そうと切り出した。
「あたしね、先週ケルンから横浜に帰ってきたんだ。で、しばらく経っておじ様から
連絡があってね。びっくりした〜、まさかニューヨークに3年間も単身赴任してたなんて。」
そう。俺の親父は長年勤めてた都市銀行を三年前に退職して、外資系コンサルタント会社に
再就職したのだ。おかげで俺は、毎月振り込まれる金で生活自助する羽目になったのだ。
「ああ、そう。それで?」
俺は続きを話すように促した。
9160:2006/08/11(金) 03:22:23
「でね、おじ様に『レイのやつ、俺が居ないのを良いことに、大学にもろくに行かずに
怠惰な生活を送ってるようだからマコトちゃんがお目付け役になってくれないかなあ。』って言われたの!」
俺の親父の粗末な真似を交えながら、嬉々として事情を説明するマコト。
「そ、それで。そ、そのお目付け役ってのは、ぐ、具体的になんなんだよ?」
流石の俺でも話の展開が薄々見えてきてドモリを抑えることが出来ない。
「うん!『この家でレイと一緒に生活してくれないか?』だって!」
「何じゃそりゃあああああああ!!!!お前まさか引き受けたのか!?」
「当ったり前じゃない!じゃなきゃ、自分の部屋の場所なんて聞かないわよ。」
なんてあっさりと・・・。しかし、非常にまずい。親父の要請を受けたこの女によって、エロゲー、アニメに彩られた
俺の悠々自適ライフが破壊されてしまうのは必至だ!!なんとしても阻止せねば・・・。
「お前正気かよ!?幼馴染とは言え、男と女だぞ!?普通は断るだろうが!!」
「大丈夫よ。だってお兄さん居るんでしょ?」
「兄貴は去年からニュージャージーで一人暮らししてる。」
「え〜、うっそ〜!東大辞めちゃったの!?」
ん?マコトのやつ、以外に驚いてる。もしかしたらこの話立ち消えに出来るんじゃねえか?
「いや、辞めてはいない。留学だ。なんでも、理系のくせにMBAを取るんだと。・・・さて、この通り兄貴は不在。
つまり、この家で暮らしてるのは俺だけ。こんな状況下でこの話を引き受けるのは危険だと思わないかね、マコト君?
事実上の同棲生活じゃぞ?」
よし。将棋で言うところの「詰み」だな。後半を堀内賢雄ボイスにしたのは効果的なはずだ!
「え?危険なわけないじゃん。あたし、レイにそんな度胸あるなんて思ってないし!」
「く・・・。(堀内賢雄効果なしかよ!)」
と、その時、僥倖。少々強引だが僥倖が。
「そ、そうだ!!なんで単身赴任の親父が俺の生活態度を知ってるんだよ!?どうせ憶測だろ!?
そうに決まってる!早速、国際電話で親父に・・・」
「ああ、無駄無駄。おじ様、あなたの部屋に3年前から盗聴器と監視カメラ仕掛けてたんだってさ。」
「NOオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」

つづく
92Mr.名無しさん:2006/08/11(金) 09:04:05
>>60 >>70 クオリティー高いな。続きが楽しみだ
93Mr.名無しさん:2006/08/12(土) 11:41:24
>>76の 十分解った、の次に そして、これはきっと――椎水さんだけが、感じさせてくれるものだという事も。
を入れてください。では、続き投下します。
94Mr.名無しさん:2006/08/12(土) 11:41:59
「こんな所にいたんですか……」
 俺は、椎水さんを探すために色々な場所を走り回った。荷物は家に置きっぱなしみたいだったから、いずれ戻っては来るんだろけど、気が付くと体が動いてたって感じで。
そして、走り続けて約二時間。携帯で時間を確認すると、もう十時を過ぎていた。一回アパートに戻って、態勢を整えますか……四月とはいえどまだ寒いし。
ってな感じでアパートに戻ると、アパートの階段前で立ち往生している椎水さんがいた。俺の今までの走りって……。
「な、何よ? あたしが何処に居ようと、あんたには関係な」
「ごめんなさい」
 俺は椎水さんの言葉を遮って、頭をぺこりと避けた。勿論、建前ではなくて。
「え……?」
「なんでかはよく解らないけど……俺のせいで泣いてたのに、適当にあしらって、ごめんなさい」
 椎水さんは目を見開いて驚いている。俺が謝ったら其処まで驚きますかそうですか。
 でも、すぐに勢いを取り戻したようだ。
「……そ、そうよ! 本当に怒ってるんだからねっ!」
「うん、解ってる。本当にごめんなさい。……じゃあ外は寒いし、とりあえず中に入ろっか」
「……へ?」
 椎水さんはきょとんとした顔で俺を見うめる。俺は何食わぬ顔で答える。
「護ってくれるんだよね? 俺のこと。なら、やっぱり一緒に暮らさないと。ね? 守護霊さん」
 俺の心は走っている間にいつの間にか決まっていた。俺は椎水さんのことをもっと知りたい。
俺の芝居を見破った、彼女の事を。俺に痛みの感覚を、久しぶりに(といっても過去にいつ感じたかさえ覚えていない)蘇らせてくれた、彼女の事を。
あっちが一緒に暮らそうって言ってるんだから、とてつもなく好都合だ。それに――
「いいの? さっきはあんなに拒んでいたのに……」
「さっきは、いきなりすぎたからさ。混乱しちゃって、何が何だか解らなくなって。……こんな可愛い娘と一緒に暮らせるんなら、こっちからお願いしたいくらいだよ」
「か、可愛いって……ば、バカぁ!」
 椎水さんなら、俺がいつの間にか失くしてた痛みを、取り戻してくれそうな気がしたから。
 赤面する椎水さんを見て、思わず微笑んでしまう。うん。俺キモイな。まぁ、キモイのは俺のデフォというか専売特許みたいなのだから気にしない事にしますか。
95-1- 忘れてた:2006/08/12(土) 11:43:42
「お、おじゃまします……」
「うん、適当に座って寛いどいてよ。俺はなんか食べるもの作るからさ」
「え? まだ夕飯食べてなかったの?」
「いや、俺は外で食べてきたけど……椎水さんはまだ食べてないでしょ?」
 俺が帰ってきたとき、椎水さんが苛立ってたのはきっと俺をずっと待っていたからだろう。
今日は山田と朝から出かけてたからなぁ……。いつ頃家に来たんだろ。なんか、悪い事したな。いや、仕方が無いか。
こんな事誰が予想できようか、いやできまい。
 ……そういえば、どうやって部屋に入ったんだろうか。鍵はちゃんと掛けてた筈なんだが……。やっぱり、ピッキング? 
いや、そういえば守護霊とか言ってたから、ドアくらい簡単にすり抜けられるのかな?
「食べてないけど……いいわよ、そんな。なんかあんたに借り作るみたいで嫌だし」
「いやいや……今から一緒に住むってのに、そんな事言ってられないって」
「む……まぁ、そうね。ありがとう、お願いするわ」
「いえいえ。それとさ、どうやって俺の部屋に入ったの? やっぱり、守護霊だからドアをすり抜けて?」
 とりあえず聞いてみることにした。椎水さんはギクって感じな表情を一瞬だけ垣間見せたけど、気のせいかな。
「……そ、そうよ。なんてったって、あたしは最新式の守護霊なのよ? すり抜けなんて、基本中の基本で、なんてことないわ」
「へぇ、凄いなぁ。最新式かぁ……」
 守護霊に旧式とか最新式とかあるんだ。これは初耳だったりする。最新式の守護霊から護られる俺ってやっぱり、ついてるのかな? 
憑いてるのはそりゃまぁ確実だけど。なんちって。……面白くないなおい。
 自分のギャグセンスの無さに少々鬱になりながら、そんなこんなで料理完成。買い物は明日行く予定だったから、たいしたものは無かったけど、
どうにかこうにかでチャーハンが出来た。自炊は、一人ぐらいを始めた一年前からしているのでなんら問題ない。
最初の頃は目も当てられないくらい凄まじい出来だったなぁ。あの頃に比べると成長したな、俺。
96-1-:2006/08/12(土) 11:44:17
「はい、出来たよ。熱いから、気をつけて」
「ん、ありがと。……うわあ、美味しそうじゃない」
「だろ? 俺こう見えて料理が上手いんだ」
「……自分で上手いって言うかな、普通」
「え? なんか言った?」
「いえ、なんでもないわ。いただきます」
 うん、やっぱり改めて見ても可愛いな。今から一緒に暮らすとなると、少し緊張するなあ。まぁどうにかなるだろ、多分。
「……美味しいわね。人は見かけによらないって、今改めて感じたわ」
「……なんか、素直に喜べないな」
 思わず苦笑する。自分で作った料理を人に食べさせるのって初めてだから少し緊張したけど、成功してよかった。
 それにしても……今更当たり前の疑問が浮かび上がった。
「守護霊ってご飯食べれるんだねえ。やっぱり守護霊でもご飯食べないと生きていけないの?」
 お供え物とかはそりゃ確かにあるけれど。でも、茶碗からご飯が無くなってたりする所は、今まで遭遇した事が無いな。
「そ……そりゃあ、もちろんよ。あたしは最新式なんだし。普通の人間とあんまり変わらないわよ。それとも、何? あたしみたいな守護霊は、何も食うなって言うの?」
「い、いや、そんな事は言ってないけど……ただ、ほら椎水さんの事、もっと知りたかったから」
「――っ!」
 あ、また顔が赤くなってる。俺、なんか言ったかな?
 へぇ、しかし守護霊でもご飯食べるのかぁ……。なんか、それは守護霊にとって不便な事のような気がするけれど……最新式だもんな。霊力だけじゃ養えないのかもなぁ。
97-1-:2006/08/12(土) 11:44:53
 そういえば、自己紹介がまだったか……てか、もう知ってるかな?
「ところで、俺の名前はもう知ってる?」
 椎水さんはスプーンを止めて答える。
「タカく……じゃなくて、べ、別府タカシでしょ? し、死神様に教えてもらったわ」
 やっぱり知ってたか。そりゃあ、まぁ仕事上先に知っておくべきだろうな。ってことは、
「じゃあ俺が何で一人暮らししているか、とかも?」
「……ご両親は、去年から海外で仕事しているから、でしょ? ちなみに、不都宇野高校2年、クラスは理数科、所属している部活、
クラブは無し。彼女は……この素っ気無い部屋も見る限りでは、いないみたいね」
「うへえ、其処まで解ってるのか。凄いな」
 うん、何この個人情報だだ漏れ。しかも、彼女の有無も解っているとは……なかなか侮れないな。
「でも、良かった。彼女がいなくて……」
「へ? なんか言った?」
「な、なんでもないわ!」
 椎水さんはそう言うと、真っ赤になって残りのチャーハンをバクバク食べ始めた。なんて言ったんだろ。
 こうしたやり取り、他愛ない会話が、ひどく懐かしい。……懐かしい? 何を言ってるんだ俺は。椎水さんと会ったのは、
今日が初めての筈だろ? それとも、別の誰かと? おかしいな、記憶に無いや。まぁ大方、いつもの勘違いと言うやつだろ。
「ごちそうさま」
「うん、お粗末様……って言うのかな、この場面は」
「あたしに聞かないでよ」
「ははは、まぁとにかく、これから宜しく、椎水さん」
98-1-:2006/08/12(土) 11:45:58
「…………」
 反応が無い。もしかしたら、宜しくしたくないってことなの?
「椎水さん? あの、」
「名前で呼んで。その方が、守護霊にとって好都合なの。……いろいろ」
「じゃあ、かなみさん?」
「……さんもいらないわ」
「え? で、でも、まだ知り合ったばっかりなのに、」
「タカシ!」
「はいぃぃ!!」
 いきなり怒鳴られた。身を縮こませる俺。カッコ悪いな。
「あ、あたしはあんたの事をタカシって呼ぶ。それなら、問題ないでしょ?」
「え……あ、ああ。それなら……別にいいけれど」
 なんか、思いっきり恥ずかしがってません? 怒ったり、恥ずかしがったり、色々と大変だなあ。
「じゃあ、改めて、宜しくな、かなみ」
 差し出した俺の手を、かなみはおずおずと握る。
「よ、宜しく……タカシ。きっちりと護ってあげるから、覚悟しておきなさい!」
 覚悟していないといけないんですか。
 まぁ、……なんだか楽しくなりそうな予感。俺の予感は百発百中だから、まず間違いはないと見ていいだろ。
 ああ、そういえば……すっかり忘れていたけど、かなみは何で泣いたんだろ? 
何で芝居ってバレたんだろ? 気になるけど……今日聞いても、答えてくれなそうな気がするな。まぁ、また今度でいいか。
99-1-:2006/08/12(土) 11:47:09
 ――椎水かなみ。彼女なら、俺を変えてくれそうな、そんな気がする。
 そう信じて、俺は彼女に微笑みかける。殴られた。
 
 その後、少し話をして、眠かったのですぐに寝ることに。ベッドは勿論、一人用だったので、かなみにはソファーに寝てもらおうと思ったのに、
何故か、かなみがベッドで、俺がソファーで寝ることになった。ああ、山田からソファーをもらっておいて正解だったなぁ……。
「それじゃ、おやすみ」
「……タカシ、変なことしないでよね? 本当に殺すからね?」
「――っ! 当たり前でしょ!? 何を言ってるんだか……」
「どうだか……なら、おやすみなさいね」
 流石に、初日からそんなことを、初対面の人にする勇気はない。というかこれからも永遠にないと思う。思いたい。
 二時間程走り続けていたせいか、すぐに眠気が俺を襲い、言葉を交わした数秒後には、既に意識がなくなっていた。


 …………


「ええ、……はい……無事に着きました」
 ふと、目が覚めた。台所の方から、ぼそぼそと声が聞こえる。……かなみだろうか?
「……やっぱり…………さんの言うとおりで……覚え……みたいです」
 駄目だ、今日は色々な事がありすぎて、眠すぎる。電話してるのかな? 何を話しているかかなり気になるけれど――
「…………はい、……頑張ってみます……うまく…………かせて……みたいですし……」
 ……駄目だ、もう、駄目だ。寝る。もう……寝る。…………。
「…………」
100Mr.名無しさん:2006/08/12(土) 11:49:11
以上、-1-は終わりです。
なんかまぁ、2人を包んでいるふいんき(ryが 堅いですが、次回からは多分普通に馴れ合っていると思います。

次はちょっと遅くなるかも。
でも気にしない、それが俺クオリティ。
101Mr.名無しさん:2006/08/12(土) 11:54:10
>>99
その後、少し話をして、眠かったのですぐに寝ることに。

その後、少し話をして、お互いに眠かったので、詳しい話はまた後日、ということにしてすぐに寝ることに。
に変えてくれ。忘れてたorz

ちなみに、名前がVIPのデフォなのは、単に好きだからという。
椎水かなみの由来を聞いて不覚にも感動を覚えたw
102Mr.名無しさん:2006/08/12(土) 11:58:31
GJ!! wktkする展開だな
おれもVIPの名前は好きだ。気にするな
103Mr.名無しさん:2006/08/12(土) 12:04:44
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 続き!続き!
 ⊂彡

104Mr.名無しさん:2006/08/14(月) 02:01:09
ほしゅ
105『T&E』第一話:2006/08/14(月) 05:23:07

先輩、大場かつみ(おおばかつみ)は何処にでもいる、至極平均的な日本人高校生男子であるようだ。
彼は毎日が楽しそうだ。もっとも、彼とて思春期の少年であり人並みの悩みなどはあっただろうが、おおむね能天気でお気楽な人生を歩んでいるらしい。
それは彼のもともとの性質に拠るところが大きかったと思う。
彼は毎日、学校での楽しいこと、友達のこと、自分のこと、家族のこと、その他のよしなし事を適当に考え、学校の勉強のこと、部活動の先輩に頼まれる面倒なこと、もうどう考えても足りなくなってきている財布の中身の事などを極力考えないようにして生きて来たという。

彼には、誰とでも友達になれるという特技があるようだ。
もともと他人と話すことが嫌いではなく、ほどほどの社交性もある人間である。新しいものや、流行りものにも興味があった。少しお調子者なところもあった。さほど美男子でもない彼だったが、彼の笑顔には何処となく愛嬌があったことは否めまい。

そういえば、ついでといえば、彼は少しばかり、いや、実は結構勉強も出来なかったようだ。
「ちがうって、勉強が俺に合わないだけなんだって」
はっきり言ってしまえば努力が足らないだけである。その一日のうちの遊びに回す時間を少しだけでも勉強に回せば彼のテストの点は飛躍的に伸びるだろうに。
『大場、お前、再試験な』
『うぇええー』
『うぇええー・・・っじゃないよ。お前、なめてんのか?1837年に起こった幕府内部者が起こした反乱をなんと言うか?って問題で『江田島平八郎の乱』とか書くやつがあるか』
『・・・・え、違うんですか?』
そんなエピソードを誇らしげに語る彼を見る私の目はどうだっただろう?
江田島平八は、漫画の某塾塾長であって、実在の人物じゃない。しかも名前間違ってるし。
そのことを指摘すると、彼は『ばかっ、あの人は最強なんだぞ。幕府なんか簡単に倒せる』と威張るのだ。
私から見ると、どうにも、ただの馬鹿にしか見えない。いったいこのお調子者の何処がいいのやら

106『T&E』第一話:2006/08/14(月) 05:23:44
『T&E』
第一話「二人の出会いは・・・」


先輩と過ごす時間は、私にとってなんなのだろう。正直私にとって他人というものはうっとおしいだけの存在である。
とにかく、うるさい。何がそんなにしゃべることがあるのか、常にぺちゃくちゃと意味の希薄なことをさえずりあっている。話はすぐに飛び、一貫性が無い。気に入らない。
だから私は、クラスメイトなどと話していても会話についていけなくなり黙りこんでしまう事が多い。
これは、彼女たちが悪いというのではなく、ひとえに私のコミニュケーション能力の問題なのだろう。
私は、なあなあで人付き合いをするのが苦手なのだ。上辺だけで他人に合わせることなど出来ようも無い。
そんな私とは正反対の先輩。
先輩は頭が悪いから難しい話などは分かる筈もないし、俗の権化のような人だから私が興味を引くような高尚なお話なんか出来る筈もない。
私は、暇さえあれば本ばかり読んでいるような偏屈な堅物で、彼は軽いお調子者。そんな全く接点のない二人なのに、今こうして同じ机に座り、顔をつき合わせている。もっとも、私の視線と意識は常に手元に開かれた文庫本に注がれているわけであるが。
先輩はそんな私にかまわず、今日の出来事をしゃべり続ける。
彼は、いつもこうだ。毎日毎日休み時間になると、図書室の隅に居る私の元に足げく通って来る。

107『T&E』第一話:2006/08/14(月) 05:25:41

初めは、まるで出来の悪いナンパだった。『ねぇねぇ、君いつもここに一人で居るけど本好きなの?俺と話しない?ちょっとでいいからさ』
へらへら笑いながら話しかけてくる表情は軽薄そのもので、街の繁華街に出れば一山いくらで売っているような唾棄すべき男共と何一つ変わらなかった。
もちろん私はそういった男が好きではなかったし、そもそも自分の時間をそんな人種に割いてやることは無意味極まりないと思っていたから適当にあしらった。
曰く
『結構です』
『私、一人が好きなんです』
『そうですか。どうでも良いですけど、ここ、図書室なんで静かにしてもらえません?』
普通の男なら、これだけつれなくすれば舌打ちの一つもしてとっとと引き下がる。が、先輩は普通ではなかった。もっとはっきり言ってしまえば異常に馬鹿だった。
『いやー、今日いい天気だよね』
『土砂降りですよ。台風来てますし』
『こないだのテストどうだった?わからないとこあったら聞いてよ。一応先輩だし』
『結構です。失礼ながら私学年でも上位の方なんで、貴方よりは勉強できるつもりです。貴方の成績知りませんけど』
『読書の邪魔です。しゃべるだけなら帰ってもらえませんか』

毎日毎日、放課後になると図書室一番奥の机ではこんな問答が繰り返された。
先輩はあの手この手で私に話しかけてきた。私は、あるときは適当なあいづちをうちながら流し、またあるときはあからさまに無視を決め込んだ。
彼は辛抱強く通い続けてきた。私は諦め、彼がそこに存在することについて何も言わないことにした。そうして二週間が過ぎた。

108『T&E』第一話:2006/08/14(月) 05:26:16

ところで、私は私を快く思わない人間からは『ノリの悪いヤツ』『鉄仮面』『いい気になってる子』と影口を叩かれることがある。
私自身は取り立てて目立つタイプではなかったが(地味な黒ぶちの眼鏡を好んでかけているぐらいである)共に整った容姿を持つ両親の元に生まれた為か、標準よりも好まれる容姿をしているようである。したがって、言い寄ってくる男も今まで居なかったわけでもない。
しかし、私は思う。姿かたちの美醜など、人間としての私という個人の価値を些かも決定付けるものではないと。
私は私でしかなく、今、私自身が認識している価値しか有していない、ただの一人間である。そしてその私の認識から照らしてみれば、私という人間は極めてくだらなく矮小な存在なのだ。
私自身が、まだ、私を認めていないのだ。
だから、私こと綿見灯(わたみあかり)はいくら陰口を叩かれようとも、なんら気にならない。気にする必要も無いからだ。それに対してまっとうに怒れるほどに価値のある自分でもないし、それを言うような人間にこそ、関わるほどの価値があるとは思えない。
こんなことを数少ない友人に言うと、自分を卑下するなというようなことを言われるわけだけど、卑下しているわけではなく、まだ私は成長途中なのだということを言っておく。

であるからして、私が言い寄ってくる男に連れなくするのも、私自身の容姿に対して無関心なのも、それゆえなのである。

109『T&E』第一話:2006/08/14(月) 05:27:16

ある日、先輩こと大場かつみ(もちろん私が聞きだしたわけでない、向こうが勝手に喋ってきたのだ)は図書室に一枚のチョコレートを持ち込んだ。
彼はそれを私に勧める。私は最初、飲食禁止である図書室に物を持ち込むのは如何かという事を意見しようかと思ったが、実は私もよく飴などを持ち込んでいるので何も言わない事にした。
先輩はそれを最初真ん中から半分に折り、私の顔を見た。私はふるふると頭を振り、そんなにいらないということを伝える。先輩はその半分に折ったチョコをさらに半分に折り私に差し出した。
私はそれを受け取って、『ありがとうございます』とおざなりなお礼を言う。
私の言葉を聴くと、先輩はひどく幸せそうな顔をした後照れ隠しのつもりか、わははと笑った。

外界は夏真っ盛りで、セミなどがせわしなく鳴いているようである。図書室は空調が効いていて、静かな駆動音が聞こえて来た。先輩はどこで見つけてきたのか、アメリカインディアンの昔話の絵本を感心しながら読んでいた。

ふと、ページを繰る指を止め、前から気になっていた質問をしてみた。
何故、貴方はそんなに私にまとわりつくのか。こんな退屈な女と一緒にいても詰まらないだろうと。
先輩は最初何を言われたのか分からなかったらしく、きょとんとしていた。
そのあと、しばらく難しい顔をして腕を組み、首をひねり、うぅ〜むと唸っていた。
私は、その様子をしばらく見つめていたが、彼もその少ない脳味噌の中で少ないながらの色々な葛藤があるのだろうと判断して手元に視線を戻した。
しばらくすると先輩は『わかった』と言って私を見た。
私は栞を挟みパタンと本を閉じ、『はい』と先輩を見た。
先輩の真顔などそうそう見れない。先輩は真剣な目で私を見据え、のどを一回鳴らし、そしていつもと全く違う真剣な声で、

『メガネな灯ちゃんがすっごく可愛いかったから』

そう言ったのだ。私は、正直、当たり前なのだが、非常に、とっても、どうしたものか、不覚にも、ひどく困惑したのだった。
110105:2006/08/14(月) 05:32:40
なんか湧いたからまた書いてみます。

  _   ∩
( ゚∀゚)彡 眼鏡っ娘!眼鏡っ娘!あと、おっぱい!
 ⊂彡
111Mr.名無しさん:2006/08/14(月) 05:40:34
俺も何かツンデレ書きたくなった。挑戦してみる。
112Mr.名無しさん:2006/08/14(月) 11:24:11
これはなかなか良作の悪寒

>>111
期待
113Mr.名無しさん:2006/08/15(火) 05:49:42
過疎時の繋ぎやさんの続きがものすごく気になるのは俺だけか?
それと誰か、碓氷かなみ由来を教えてくれ。
114Mr.名無しさん:2006/08/15(火) 08:39:58
TUN=かなみ
DERE=しいすい

ヒント:キーボード
いや、携帯だから自信はないけど確かこうだったはず。
115Mr.名無しさん:2006/08/15(火) 08:51:30
>>114
すげーほんとだ!!
情報サンキュ!キーボード見たらそうなってたよ。
116Mr.名無しさん:2006/08/15(火) 22:28:49



117111:2006/08/16(水) 06:35:54
あのさ、職人さんに質問なんだけど(読み手さんもどっちの方がいいか教えて)
書き終わった後に投下してるの?それとも書き上げた分を随時投下してるの?
118Mr.名無しさん:2006/08/16(水) 06:58:45
ある程度書き終ったら、その分を投下してるんだろう。
短編でもない限り、お話全部書き終えてから投下、なんて事は無理
119Mr.名無しさん:2006/08/16(水) 07:06:09
ある程度のプロットは建ててあるけど書けたもの随時投下だな
住民の反応次第で流れが変わったりする
酷評だろうと一行レスだろうと反応あったらモチベも上がると言うもの
120111:2006/08/16(水) 07:21:06
>>118
>>119
そうなんだ。ありがとう!
じゃあ俺もある程度書けたら投下してみるよ。
121Mr.名無しさん:2006/08/16(水) 10:11:24
>>120
俺も書きながら投下だな。

ガンガレ!
122111:2006/08/17(木) 16:14:21
>>121
おk!
お互いがんばろうぜ!今週中には投下出来そうだ!
123Mr.名無しさん:2006/08/18(金) 12:49:08
もしゅ
124Mr.名無しさん:2006/08/18(金) 17:51:28
俺も挑戦してみようかなぁ。









125Mr.名無しさん:2006/08/18(金) 18:09:39
うう、出だしだけが上手くいかない。他は書けてるのに……。
そこで自分にプレッシャー
「明日の午前中に投下します」

>>124
スレを保守して君を待つ
126Mr.名無しさん:2006/08/18(金) 18:34:55
さてワクテカしておくか
127『T&E』第二話:2006/08/19(土) 04:04:11
「要するに、私を口説こうって言うんですね」
「私、今のところ誰とも付き合う気ありませんから」
「もちろん、これから先も先輩みたいな人になびくことはないと思います」

『T&E』
第二話「チキン・ヘッド」

いつもの見慣れた帰り道。夕暮れも近い午後の商店街は買い物の主婦や、私達と同じ帰りの学生達でなかなかに込み合っている。
器用に人を避けながら、ずんずん先を歩く私の顔は今、どんなだろうか。おそらく感情の読み取れない、いつも通り無愛想なものなのだろう。
「ご、ごめんって、謝るから。灯ちゃん待ってって」
後ろから情けない声を出して先輩が追いついてくる。ここで甘い顔をしては付け上がらせることになり、後々厄介なことになるのだ。ストーカーなどになられては困る。ハッキリとさせておくべきだ。
「気安く名前で呼ばないでくださいますか?毎日来られて、なんだか麻痺してましたけど、先輩とは友達でも何でもないただの他人なんですから」
すぐ後ろに背中に先輩の気配を確認した私は振り返り、そう宣言した。
私の二、三歩後ろまで来ていた先輩は困ったよな顔をして笑っていた。

なぜ、笑う?


128『T&E』第二話:2006/08/19(土) 04:05:15
人の流れの中、私達はアーケードの中央で立ち止まり、向かい合う。過ぎ去っていく周りの人間は私達などには感心は無い。世の中はそういうものだ。八百屋の店主が声を張り上げ、野菜を売る。
『奥さん、どうこの大根。いいつやしてるでしょう。』
先輩は言う。
「灯ちゃん。俺はまだ何も言ってないんだけどな」
「言ったも同然です」
「可愛い子が居たから、知り合いになりたかった。これって駄目な事なのかな」
「私は可愛くなんかありませんし、そう言われた所で喜んだりしませんから」

私は踵を返し、歩き出す。その背中に追いついてくる人物の気配を感じながら続ける。
「それになんですか、眼鏡って。あれですか、先輩ってなんかそんな特殊な趣味の人なんですか?正直キモイし、引きます」
「いやぁ、可愛いものを可愛いと言って何が悪いんだよ。灯ちゃん、その眼鏡よく似合ってるよ」
「じゃ、明日からコンタクトにしてきます」
「眼鏡をはずした灯ちゃんもかわいいんだろうなぁ」
「・・・・・・ちっ」
馬鹿には何を言っても通じない。私は今それを身をもって痛感した。これは悲劇だ。シェイクスピアなんか目では無い。
先輩は私のすぐ左後ろをなにやら無駄にニコニコしながらついてくる。実はもう家は通り過ぎているのだ。私達は、どことも知れない住宅街を歩いていた。

129『T&E』第二話:2006/08/19(土) 04:06:16
「先輩、いつまでついてくるつもりなんですか」
「灯ちゃん家まで♪」
可愛く人差し指を立てて振って見せたりする。私は本当に気味が悪くなって、ものすごい目で先輩を見てしまう。
・・・・だめだ、手遅れだ。この男はもうすでに手遅れだ。立派なストーカーになってしまった。
私はこの男の接近を許したことを激しく後悔する。これからこの男に、毎日つけ回され、ゴミを漁られたり、日常をビデオで盗撮されたりするのだろうか。あるいは、毎日靴を懐で暖められたりとか。
どうしよう、あまり分別していないことがバレてしまうかもしれない。私のお母さんはずぼらなのだ。
以前テレビで見た、『恐怖、異常な愛情、激化するストーカー被害』という番組を見たことを思い出す。このままでは、ポストに鶏の頭を大量に詰め込まれてしまう。それだけは避けなくてはならない。子供のころ鼻をつつかれて泣いて以来、鶏は嫌いだ。
強い眩暈がした。無数の鶏の鳴き声が頭の中に木霊する。日が暮れるまでまだ時間があるはずの町並みが真っ暗になっていくようだ。はぅ・・・・

「おっと、危ない」
本当に真っ暗になった。

130『T&E』第二話:2006/08/19(土) 04:07:17
気がつくと私は誰かの腕の中にすっぽりと包まれていた。目の前には学校指定制服の紺のネクタイが見えた。肩から背中にまわされた腕がしっかりと私を抱きしめていた。瞬時に理解&絶望
「うはっ、灯ちゃん。自分から飛び込んでくるなんて積極的だなぁ」
「た、立ち眩みしただけですっ、離してくださいっ」
私はジタバタともがき、急いで先輩の腕から脱出する。体温が急激に上昇していく。これは悪寒から来る熱なのか?
「灯ちゃんって、いい匂いする。それに、すごくやわらかいし・・・・」
「へっ、変態!」

全身の毛が一瞬で逆立つ。やはり悪寒だ。それにしても、何たるセクハラ、何たる侮辱、私の乙女心は深く深く傷ついてしまったのだ。
私は、なにやら恍惚の笑いを浮かべて手をワキワキ動かしている先輩を尻目にじりじりと後退し、そのまま脱兎のごとく逃げる。
「あ、灯ちゃん。明日も一緒に帰ろうね、バイバイ〜」
誰が帰るもんかっ!時刻はすでに7時近く、全速力で走る私の髪は風でクシャクシャになっていく。綿見灯、16歳の純情ここに散るっ。涙が一筋後方に飛び散っていった。


131『T&E』第二話:2006/08/19(土) 04:08:10
「どしたの、姉ちゃん顔赤いよ?それに涙目だし」
今年、小学5年生になる弟がアイス片手に呆れていた。いつまでも半ズボンが似合う愛いやつだ。玄関に飛び込むなり鍵を掛け、血走った目で息を整える私を見られてはそれも仕方が無いことであろう。

「悠介ぇ〜、おねぇちゃん汚されちゃったよぅぅぅ」
「ちょっ、姉ちゃん抱きつかないでよ!アイス落とすっ」
「いいじゃない、アイスくらい。あんたねぇ、ねぇちゃんとアイスどっちが大事なのよ。あ、アイス一口頂戴」


まったく、世の中には、ひどい変態も居たものである。
「悠介、あんたは変な人に引っかからないようにしなさいよ。世の中には常軌を逸したど変態がわんさと居るんだから」
「そうなんだ、気をつけるよ」
リビングでテレビを見ている時の弟は基本的に私の話はうわの空だ。洗面台で手を洗う私はふと、目の前の鏡に誰かの視線を感じた気がして顔を上げた。
やはり、いつもの見慣れた女の子が居た。普段は眼鏡に隠れている黒目がちの瞳が少し、揺らめいたように見えた。

『あかりちゃんがかわいかったから』

鏡の向こうの顔がみるみる険しくなっていく。
馬鹿馬鹿しい・・・・私がかわいい?そんなこと言われたって嬉しくともなんともない。
私は乱暴にタオルを投げ込んで家族のリビングに歩いていった。

その日見た夢は、大量の鶏に追いかけられた私が、キレて片っ端から鶏がらスープにして煮込むという訳のわからないものであった。幸い、あの変態は出てこなかった。
132105:2006/08/19(土) 04:13:36
1スレ目sage忘れスマソ
なんかギャグが入って来た。
まいどまいど、物語が勝手に走りだしてプロット通りに進んだためしがない

暇つぶしにでも読んでもらえれば幸いです
133Mr.名無しさん:2006/08/19(土) 05:42:26
>>132
乙です!今のところツンツンデレって感じで、おもしろいです。
というか、物語が勝手に走り出すとかうらやましい。
しかしこの先輩、まだまだ脈がなさそうだな。これからどうなることやら……。
にしても一人称形式で書いてる人多いな。書きやすいのかな。
134Mr.名無しさん:2006/08/19(土) 12:30:33
>>132
(・∀・)イイヨイイヨー
いい感じのツンでデレが楽しみだwww
三人称で書いてみた。ちなみに昨日の>>125は俺だ。そして>>111も俺だ。
公約は破ってしまったが、そこは許してくれ。
それと、題名は、完結を迎えられたら一緒に考えてくれると嬉しい。

登場人物は、容姿に関しての描写は避けた。そこは読む人に任せたい。
だけど短い髪というヒロインの設定だけは譲れねえ。
だからそこは涼風を想像してくれ。

じゃあ、投下いくぞ↓
第一話


 随分前から、予鈴三十分前に教室に入っておく事が、理恵の習慣になっている。

 誰もいない教室で、廊下側最端の席に座り、視線を教室の反対側である窓の向こうへと送る。
理恵の視線は、教室を素通りし、窓のフィルターをすり抜け、外の広い世界へと伸びて行く。
教室の窓をフレームにして見る外界の景色は、理恵を美術館で風景画を見ているような気分にさせる。
毎日様変わりする風景画は、雨であっても晴れであっても理恵のお気に入りだ。

 この風景画を独り占めにして観賞し、クラスメイトが登校するまでの数分間を、ゆっくり過ごす。
これは誰にも知られていない、理恵だけの秘密の日課である。

 そのための早朝登校なのだ。

 また、普段は騒々しい娘である理恵が、落ち着き払っていられる貴重な時間でもあった。

七月四日晴れ。緑ヶ丘高校二年六組にて。

 この日も日課を果たすため、短い髪をなびかせながら、予鈴三十分前に教室のドアの前に辿り着いた理恵は、今日も一番乗りだとご機嫌の様子。
だがこの日、理恵の機嫌が良かったのはここまでだった。

 教室のドアを開けた理恵は、お気に入りタイムを著しく妨害するであろう、よく知る人物の姿を確認した。
 驚いてすんなり教室に入る事が出来なかった理恵に、その人物が気付いた瞬間、

 ――バタン!

 壊れてしまえ。と、言わんばかりの乱暴さで、教室へ入る事無くドアを閉める理恵。体が勝手に、そういう反応だ。
閉じたドアの廊下側、先程までご機嫌だったはずの理恵は、日課が果たす事が出来ないせいか、一瞬悲しげな顔をした後、はぁ、と溜め息をつき、ムッとした表情で再びドアを開き、口も開いた。

「何であんたがいるのよ!!」

 教室の中にはクラスメイトの男子生徒、祐樹の姿があった。遅刻常習犯であり、早くてもHRでの出席を取っている最中に教室へ駆け込んでくる祐樹の姿が。

 それはさて置き、祐樹にとっては心外極まりない挨拶である。祐樹はようやく教室に入り込んだ理恵を見て、軽く受け流すかのように、

「ああ、おはよう」

 と、答えた。理恵もそれにつられて

「お、おはよう」

 と、答えてしまう。

 ……三拍ほど、間が空いた。

「じゃなくて!何であんたがいるのよ!」

 思い出したように再度問いかける理恵。

「何でって、おまえなぁ、ここ俺のクラスでもあるんだけど」

 半ば呆れ口調の祐樹。彼の言う事はもっともである。だが理恵が尋ねているのはそんな事ではなかった。
「そうじゃないわよ! 何でこんなに早く来てるかって聞いてるの!」

「ああ、そういうこと」

 気だるそうにそう理解した後、面倒くさそうに頭をかきむしりながら祐樹が続ける。

「溜まりに溜まった宿題やってたらいつの間にか朝になっててな。睡魔さんが襲ってきたんで、学校でやろうかなと。そのため早朝出勤した次第でございます。これで満足したか?まだ宿題終わってないんだから少しは静かにしてくれ」

 あしらわれた。理恵はそう感じた。途中で敬語を交えた言い方が、理恵の神経を逆撫でしたようだ。日課を邪魔された事も相まって、さらに突っ掛かってしまう。

「そんなもの家で全部やりなさいよ!」

「いや、だから家でやってたら眠りそうになったから早めに来たんだって!理恵こそ何でこんなに早く来てるんだ?」

「あたしはいつもこの時間に来るの!」

 まるで、優等生ですから、と言いたげな表情をしてそう言ったが、言い終えた直後理恵は、しまった、と思った。

「こんな早くに来て何してるんだ?」

 当然の質問、理恵が予想した通りの質問だった。困ってオロオロしながら答える。
 
「え、あ、あたし? あ、あたしは……。も、もちろん予習よ予習」

 秘密の日課の事は口が裂けても言いたくない理恵。だが嘘をつくのは若干下手のようだ。薄っすら顔を赤らめながら、目が泳いでいる。

「その割には成績あんまり良くないよな」
祐樹はそれ以上追求する気がない事を示したつもりだったが、余計に理恵を怒らせる結果になってしまった。

「ゆーうーきー!」

 顔を真っ赤にして祐樹の座る席へと歩いていく理恵。手には恐らく凶器に使われるであろう鞄を持っている。祐樹には理恵の背後にメラメラと炎が燃え上がってる気がした。

「え? ちょ、ちょっと待てって理恵。俺が悪かった。落ち着こうぜ、な?」

 焦った祐樹は、どうにか落ち着いてもらおうと、苦心して思いつく限り謝罪の言葉を並べ立てるが、理恵の耳には届かない。

 祐樹は内心、またやっちまった。と、思いながらも、自分も鞄を持ち、立ち上がり教室の隅へと逃げ込み防御体制に入る。慣れちゃいるけどあれは痛い、そう、胸のうちで呟く。

 早い話、逃げれば良いのだ。普段ならそうしている。だが、残りの宿題を片付けなければならない祐樹は、教室を離れるわけにはいかない。何とか怒りを抑える方法を考える。

 その間にも一歩一歩、頭を少し、うつむき加減で祐樹に近づいていく理恵。本気で怒っている時の動作だ。

 しかし祐樹にいいアイディアが浮かばない。そして、ああ、こりゃ宿題は諦めて逃げた方がいいな、と、すでに免れないであろう理恵の一撃目をしのいだ後に、全速力で逃げる事を決めた。

 さらに祐樹へと近づく理恵。
 
 鞄を振り上げて、次は祐樹に振り下ろすであろうと思われた。祐樹は鞄でガードを固め、その一撃を何とか回避しようと構えている。
が、振り上げた鞄が祐樹へと振り下ろされる事にはならなかった。

「おっはよー! って、あら?」
 
 理恵が開けっ放しにしていたドアから、美幸が現れた。美幸の声で我に返った理恵は、慌てて鞄を背中にしまい込み、祐樹に背を向け、美幸に応える。

「おはよう、美幸」

 祐樹はホッと一息つき、助かったと思わざるを得なかった。

「あららら、朝っぱらから夫婦でイチャイチャ? 邪魔しちゃったかしら」

 祐樹からは見えなかったが、顔を先程よりも真っ赤にして理恵が怒る。これは照れ隠しのようだ。

「美幸ー!」
 
 おいおい、これ以上理恵を怒らせないでくれよ。本気で祐樹はそう思った。

「冗談よ」

 笑いながらそう言った美幸の方へと、理恵は駆け寄り、もう、と言いながら雑談を始めた。何とか鞄が体にめり込むという悲惨な思いをせずにすんだ祐樹は、自分の席へと戻り、せっせと宿題に取り掛かる。

 そうこうしている内に、クラスメイトが続々登校し、朝の授業へと入っていった。

続く
読みやすいように改行多めにしてみたが、読みにくかったら言ってくれ。
142Mr.名無しさん:2006/08/19(土) 16:39:46
まあとりあえず、だ。

#は半角で
>>142
で、できたか?
144Mr.名無しさん:2006/08/19(土) 16:54:36
>>143
鳥キーは上での投下中に書いた奴を使ってはいないよな?
>>144
うん。あれ?使った方が良かったのか?
すまん、2ちゃん始めて間もないんだ。
146Mr.名無しさん:2006/08/19(土) 17:00:12
いや、使っちゃいけないんだよw
本物確認の手段なんだからキーがわかってる鳥だと意味ないからな

何はともあれ、執筆乙。

期待。
そ、そうなのか。
理解できた、ありがとう。一週間以内に続き投下する。楽しみにしといてくれ。
148 ◆spcluABU52 :2006/08/19(土) 18:05:35
そういや鳥ってどう出すんだこうか
149Mr.名無しさん:2006/08/19(土) 18:35:21
鳥がわからん奴はここ嫁
http://info.2ch.net/guide/faq.html#C7
150「クラスメイト」:2006/08/19(土) 18:43:47
 教室には彼しか居なかった。

 右手の指に挟んだ煙草を口に運び、それを彼の肺活量の限界までゆっくりと吸い、彼の肺を汚してゆく。
 身体のあらゆる部位で煙を堪能すると、今度はゆっくりと煙を体外に押し出す。
 吐き出された紫煙は刹那の間、空中を漂った後、雲散霧消し男の視力では認知できなくなった。
 
 その空間だけ世間とは切り取られたように時間が遅い気がした。
 男は只ひっそりと、いずれ訪れる時間の停止を覚悟をしていた。
 規則的に動く時間は彼に一切の憐憫を与えず彼を蝕んでゆく。
 
 彼は孤独に「その時」を迎える準備をしていた。
 しかし彼は、独りであることは運命であると前々から腹積もりをしていた。
 それ故彼の中にある感情は絶望や悲哀などといった激しい物ではなかった。
 とっくの昔に飲み込んだ情動はいつの間にか消化し、彼の心に何の刺激も与えなかった。
 
 何が起きようと俺はエイエンに救われることはないだろう。彼はぼんやりとそう悟った。


 
 

 それは規則正しく並んだ彼の歯車の中で唯一の、そして致命的なズレだった。
 「彼女との出逢い」という出来事は、彼に取っても相手に取っても間違いなくイレギュラーであった。
 
 
 そう、

 
 
 “奇跡”という名のズレだった。
  
 何となく書いた、気が向いたら本編も書く。
151Mr.名無しさん:2006/08/19(土) 18:44:52
 教室には彼しか居なかった。

 右手の指に挟んだ煙草を口に運び、それを彼の肺活量の限界までゆっくりと吸い、彼の肺を汚してゆく。
 身体のあらゆる部位で煙を堪能すると、今度はゆっくりと煙を体外に押し出す。
 吐き出された紫煙は刹那の間、空中を漂った後、雲散霧消し男の視力では認知できなくなった。
 
 その空間だけ世間とは切り取られたように時間が遅い気がした。
 男は只ひっそりと、いずれ訪れる時間の停止を覚悟をしていた。
 規則的に動く時間は彼に一切の憐憫を与えず彼を蝕んでゆく。
 
 彼は孤独に「その時」を迎える準備をしていた。
 しかし彼は、独りであることは運命であると前々から腹積もりをしていた。
 それ故彼の中にある感情は絶望や悲哀などといった激しい物ではなかった。
 とっくの昔に飲み込んだ情動はいつの間にか消化し、彼の心に何の刺激も与えなかった。
 
 何が起きようと俺はエイエンに救われることはないだろう。彼はぼんやりとそう悟った。


 
 

 それは規則正しく並んだ彼の歯車の中で唯一の、そして致命的なズレだった。
 「彼女との出逢い」という出来事は、彼に取っても相手に取っても間違いなくイレギュラーであった。
 
 
 そう、

 
 
 “奇跡”という名のズレだった。
  
 何となく書いた、気が向いたら本編も書く。
152謝罪:2006/08/19(土) 18:48:04
 
間違えて二回カキコしちゃった、みんな御免orz
153Mr.名無しさん:2006/08/19(土) 21:53:07
>>146
初心者は半年ROMれ



っと言いたい所だが乙、是非完結させてくれ
>>150
教室で煙草吸っちゃ駄目だろwww
気になるので続き期待
154Mr.名無しさん:2006/08/19(土) 21:56:26
>>153

>>146>>145だった
正直スマンカッタorz
と、トリがつけれたことが嬉しくって筆が早く進んだんじゃないんだからね!

予定では登場人物が出尽くしすので、まとめるっす。

祐樹……主人公。
理恵……ヒロイン。

美幸……面白い事に首を突っ込みたがる。多少悪ふざけが過ぎる事も。
和也……これといって特徴なし(おい!)
ほのか……話すのが苦手。眼鏡っ娘。
第二話

 一時間目に、授業そっちのけで何とか宿題をやり遂げた祐樹は、二、三時間目を満足げに居眠りで消化した。

理恵はというと、こちらは日課を邪魔された事を根に持っているようで、休み時間には美幸などに愚痴をこぼし、イライラしながら授業を受けていた。

 三時間目が終わり、眠っている祐樹にクラスメイトの男子生徒が近づいていく。頭をポンポンと叩きながら話しかけた。

「よう、今日は朝っぱらから密会してたらしいな? 美幸から聞いたぞ」

 まだ眠り足りない目をこすりながら、むくっと体を起こし、アクビをしながら祐樹は応える。

「なんだ、和也か。もう少し眠らせてくれ」

 どうやら面倒な問いかけは一度スルーしてしまうのが祐樹の癖のようだ。和也が重ねて尋ねる。

「もう十分寝ただろ? それより教えてくれよ、朝っぱらから何してたんだ? お前ら」

「何って、ええと、ああそうだ。宿題してたら怒られた」

「はぁ?訳わかんね」

「俺の方がわからん」

 失笑しながら聞く和也。そこへ美幸が割り込んできた。

「あら? もしかして秘密の作戦会議? 私も混ぜて」

 朝のイチャイチャ発言といい、いつも訳の分からん事を、祐樹はそう思った。和也は美幸と目を合わせ、コクン、と頷く。何か含みがありそうだ。が、祐樹は気付かない。

 強引に美幸が続ける。

「なるほどね。で、自然な仲直りがしたいと」

「ちょっと待て、いきなり何言い出すんだ? 何でそうなる?」

 唐突な発言に目を丸くする祐樹。目覚ましには十分だったようだ。完全に目を覚ました。

「今朝の事は理恵が悪かったって言ってたよ。反省してるって。でもほらあの娘、すぐ喧嘩口調になるでしょ?」

 その通り、と頷く祐樹。

「でね、謝りたいんだけどきっかけがどうしても作れそうに無いって言うから、理恵に内緒で祐樹に頼みに来たわけ」

「何をだよ?」

「理恵を昼食に誘って」

「断る!」

 そう言った瞬間、和也が祐樹の頭を軽く、パン、と叩いた。イテッ、と言う祐樹を無視して和也が話す。
「祐樹、理恵ちゃんは謝りたいって言ってるんだぞ? 男だったらそのためにきっかけの一つや二つ、作ってやれよ」

「いちいち謝らなくても、その内また口喧嘩ふっかけてくんだから放っといてもいいだろ?」

 また叩かれる祐樹。そろそろイライラしてきたようだ。変わって美幸が話す。

「理恵はね、そうやって口喧嘩をふっかけてしまう事全部について謝ろうとしてるの。なんて、なんて健気な……」

 いつの間にか手に出していたハンカチを目にあてがい、わざとらしく泣きまねをして話す美幸。祐樹は段々、断る事が面倒くさくなってきた。しかも何となく自分が悪者扱いされているような気がした。
 
 そして舌打ちをした後、

「わかったよ。昼メシ誘えばいいんだろ?」

 と、引き受けてしまった。座ったままの祐樹の頭上で、美幸と和也が視線を合わせ、したり顔をする。そして四時間目開始のチャイムが鳴り、

「じゃあお願いね」

 美幸が笑顔で自分の席へと戻っていき、和也も席に戻り、四時間目の授業に入っていく。祐樹の視界の片隅に、慌てて教室へと駆け込んでくる理恵とほのかが映った。

 本当に謝りたいと思っているのか、という疑問からか、少し目で追っていた。
 ――一方、その休み時間に理恵はどうしていたかと言うと、教室にいなかった。

三時間目終了後、すぐに理恵の元へと駆け寄ってきたのは、クラスの中で仲の良い、美幸とは別のもう一人の友人、内気なほのか。彼女は小学生からの理恵の親友だ。

 次の授業で使う教科書を忘れてしまったので、他のクラスまで借りに行くのを付いてきて欲しい、との頼みを快く引き受け、そそくさと二人して出て行った。

 目的を果たしたその帰り道。自分達の教室へと歩きながら、付いてきてくれた理恵に礼を言うほのか。笑顔で応える理恵。理恵はほのかに対してだけは、決してきつい態度ををとらない。

 そしてほのかは、言いにくそうに、恐る恐るこう切り出した。

「あ、あのね、理恵ちゃん。ど、どうしていつも、ゆ、祐樹君と、そ、その……」

 いきなり祐樹の名前を出されて、怪訝そうな顔をする理恵。それをちらりと見て、ほのかはさらに続けた。

「け、喧嘩、す、するの?」

 ところどころ言葉が詰まるのは、別に理恵を怖がっているからではなく、ほのか自身が言葉を発する事を苦手としている事からである。

 視力が弱く、眼鏡をかけていたことも相まって、小さい時からよくからかわれたりしたが、その度に理恵が庇いに入り、そうこうしている内に親友になった。そんな間柄だ。

 さて、ほのかからの意外な、真剣な質問に、理恵はどう答えるか。
「……ふられたから。だと思う」

 少し考えた後、真剣に、そして正直に答えた。

「で、でも、それは」

「わかってる。誤解だったんでしょ?でもね、私の初恋はあれで終わったの。未練も無いしね。で、普通にしてようって思って話しかけたら、どういうわけか、喧嘩になっちゃうの。前にも話したでしょ?」

「う、うん。でも、そ、その」

 「祐樹のこと心配してるなら大丈夫だと思うよ。たぶん私より図太い神経してるから」

「そ、そうじゃない。そ、そうじゃなく――」

 ほのかの言葉を、四時間目のチャイムが遮る。

「あ、急がないと。ほのか、走るわよ」

 言うべき事を言い損ねたほのかは、仕方なしに理恵の後を追いかけていく。

 教室へ着いた理恵は、先程話題に出てきた祐樹をちらりと見やった。どういうわけか、目が合う。

 その瞬間、二人とも同時に目を反らしてしまった。

 そんな二人のやり取りを見逃した美幸は、ほのかの方へ、どうだった? と、視線を送る。ふるふる、と首を横に振るほのか。

 ――しまった。美幸は額に手を当てて、和也とほのかの三人で企てた計画が、破綻しそうな事に頭を悩ませた。


続く
161「クラスメイト」第一話:2006/08/20(日) 21:27:49
 【邂逅】
 
 新しい校舎が建ち使用されなくなったその旧校舎は、予算の都合上解体されることもなく敷地の隅で細々建っている。 

 名門校とまではいかなくとも比較的競争率の激しいこの学校はそれに似合うだけの厳しい校則がある。

 その為それに対応仕切れる優良生と仕切れないでやさぐれてしまう劣等生の二極化が激しく、毎年名門大学に進学する生徒を出す反面、非行を繰り返す生徒も続出するという裏の面も存在する。

 埃っぽくて黴臭いこの校舎に立ち入るような輩と言えば後者の連中で、喫煙やクスリ、はたまた不純異性交遊などロクでもない目的の奴が大半である。時々意中の相手に愛の告白をするという青春ラブコメ的な理由で立ち入る奴も居るが本当に時々である。

 そんな校舎も漸く解体の目処が立ち、立ち入り禁止の札が置かれるようになり本当の意味でこの校舎はさびれてしまったといえるだろう。
 
 

 そんな校舎の中で俺は一人、煙草をふかしていた。
 
 
162「クラスメイト」第一話:2006/08/20(日) 21:30:17
「ふううぅぅ」
 
 俺こと篠崎純(しのざき じゅん)は肺に溜まった煙を吐き出し三階の窓から景色を眺めた。窓から見える建造物や山々は夕日の朱に色彩を占領されていた。
 「きれいだなぁ」と俺は思ったままの感想を述べた。

 
 まぁ、読者諸君は一連の文章から俺はここの生徒で例の落ちこぼれであると察する事であろうがそれは間違いなく間違いだ。
 
 着ている服は間違いなくこの学校の制服ではあるが俺はここの生徒ではない。
 
 ついでに俺はこの教室を住処としている。
 
 これには海よりも深い事情があっての事なのだが、まぁ機会があれば追々話していこうと思う。

 閑話休題・・・とは言っても「あー、暇で仕方ねえ」などという台詞をうそぶいてる時点でその辺の高校生とまったく同レベルである。とある理由によりここから出られない俺に取って退屈は常に付いて回る物だった。
 
 「取り敢えず寝るか」
 
 携帯灰皿に煙草を押しつけた後、彼はそういって自前の枕をバッグから取り出し不貞寝を決めた。
 
 枕を見ると急に眠気がこみ上げてきた。重くなる瞼、思わず出る欠伸
 
 「ふぁ〜あ、っと」枕を置き俺は横になった。
   


 カツンっ

 正にその瞬間、足音が聞こえた。
 
163「クラスメイト」第一話:2006/08/20(日) 22:00:04
 「っ!ヤベっ!」

 その音を聞き眠気も完全に吹っ飛んだ俺が咄嗟に取った行動は枕とバッグごと、ボロボロの教卓に身を隠すという至極単純な物だった。

 お察しの事だと思うが俺はこの学校の宿泊許可など取っていない。

 見回りの先生などに見つかったらただでは済まない。下手すりゃ警察沙汰だ。
 
 制服を着てるのだからそんなことになる可能性は高くはないが、用心に越したことはない、と言うのが俺の座右の銘である。

 「しかしおかしいな?」と俺は心の中で勘繰った。

 見回りの時間は主に夜間に行われる。この学校の教師達が当番制でこの学校の見回りをするのだが、今はまだ夕暮れだ、

 一階や二階ならともかく(非行や情事にわざわざ三階まで上って来る奴は居ないby俺の経験則)こんな時間にこんなところまで来る奴は今まで居なかった。

 「そんなことはどうでもいいか」小さくつぶやくとできるだけ俺は小さくなった。よしギリギリで見えないはずだ。
 
 第一四クラスある中の三組という微妙なポジションに位置するこの教室に入ってくる可能性は低いだろう。四階だってあるし何もこの教室には入ってこないだろう俺はそう高を括った。

 ガラガラガラ・・・

 そして俺の期待は見事に裏切られた。
 
164「クラスメイト」第一話:2006/08/20(日) 22:33:27
 「入ってキターーー(゚∀゚)ーーー」
 
 声にはならない悲鳴が俺の中でこだました。 

 え、マジ?マジっすか?何この素敵な天文学的確率?今もの凄い現実を懐疑したよ俺ねぇ?
 いやいやこれ絶対有り得ないって?マジで吃驚したよ。イヤほんとに震えるぞハート燃え尽きるほどヒートだよ?
 ああそうかこれは夢なんだ!いやぁタチの悪い夢だなぁ。頬をつねったら痛みは無いはずだ。確認するまでも無いが試してみるぜ!
 HAHAHAHAHAHA痛いよやっぱ畜生!

 取り敢えず冷静になろう。俺はそう判断した。急いては事をし損じる。
 
 自分は今隠れている、わざわざ教卓を調べにくるやつはいないだろう。
 
 はみ出てない部分はないか周囲を確認した。
 
 バッグOK、枕OK、俺OK、よし不備は無いな。俺はそう確信した。
 
 ふう、と安堵の溜息をつきそれらから視線を外した。そしてその拍子に俺の視界に入ってきた。

 
 俺の唯一のエンゲル係数、ブロック食品達が五箱ほど教卓の外に出ていた。
 
 
 
 
165Mr.名無しさん:2006/08/20(日) 22:35:39
もしかして書き終わるごとに投下してる?
スレ的にはよくないぞ、そうだとするなら。
166Mr.名無しさん:2006/08/20(日) 22:43:42
>>160の続きが気になるよ〜
167164ではないが:2006/08/20(日) 22:56:08
>>165
ああ、一レスごと書きながら投下してるのかってことか

↓みたいに過去ログで出てるから書き終わる毎投下は別にかまわんとは思うが、一レス単位とかはぶつ切りになる可能性があるから気をつけたほうがいいぜ!

117 :111:2006/08/16(水) 06:35:54
あのさ、職人さんに質問なんだけど(読み手さんもどっちの方がいいか教えて)
書き終わった後に投下してるの?それとも書き上げた分を随時投下してるの?


118 :Mr.名無しさん :2006/08/16(水) 06:58:45
ある程度書き終ったら、その分を投下してるんだろう。
短編でもない限り、お話全部書き終えてから投下、なんて事は無理


119 :Mr.名無しさん :2006/08/16(水) 07:06:09
ある程度のプロットは建ててあるけど書けたもの随時投下だな
住民の反応次第で流れが変わったりする
酷評だろうと一行レスだろうと反応あったらモチベも上がると言うもの


168「クラスメイト」第一話:2006/08/20(日) 23:10:20
 これはガスも電気も通っていないこの場所で効率よく栄養をとり続ける食品として買いだめしていたのだが・・・
 
 冷静に状況を考察する、どうやら急いでこの中に入った時枕を出したまま閉めていなかったバッグの開け口から出てしまったのだろう。

 うん・・・。

 
 神様、俺はそんなに悪いことしましたか?身に覚えが全く無いのですが・・・。

 気付かれるのは時間の問題だろう。早く何らかの対策を講じねば!

 「むう仕方がない」

 危険だがそれしかないだろう、と俺はそこからブロック食品に手をのばす。

 しかし回収できたのは手前にあった三つだけだった。残りは教卓から上半身を出さなければ取れない位置にある。

 「ゴムゴムの実って美味しいかなぁ?いやまずいか。」多分今の俺ほど切実に望んでいる奴は居ないだろう。

 はぁ、と溜息を一つつき俺は腹を括った。
 
 気付かれないよう、音を立てないようゆっくりと上半身を伸ばす。ぐぐ、と普段使わない筋肉が軋む感覚を覚えた。

 後ちょっと・・・もう少し、・・・よし!一つ目ゲット!
 
 その段階で俺は例の入ってきた人物に目を向けた。

 
 そいつは長い髪と虚ろな目が特徴的な、一人の女生徒だった。
 履いていない靴を尻目に、窓から身を乗り出そうとしていた。 
169「クラスメイト」第一話:2006/08/20(日) 23:38:17
 なんてわかりやすい・・・俺はそう思った。

 彼女はまるで人形のようにそこに佇んでおり、窓から差し込む斜陽で真っ赤に染まっていた。

 
 さて、君子は危うくに近寄らないのが一番正しい選択なのだろう。

しかし、俺は特殊な事情から彼女の行動を黙認できなかった。
 
 多分俺もフツウであればそれを黙って見て見ぬ振りをするだろう。それが彼女の選択であり俺が干渉する権利など無い、そう判断するだろう。

 俺はその体勢から身を起こす。
 
 起こした際に音が出た。彼女がその音に気が付きこちらを向いた。
 
 「っっ!?」
 
 驚いた表情でこちらを見る。だが今の俺には何でもなかった。
 
 未だに困惑している彼女に向かいこう言った。
  

 「死んだら楽しくないよ」

 陳腐な言い草だったが俺の言いたいことの全てが凝縮されている言葉だった。
 
 
  後から気付いたことだが俺の服装はこの学校が指定した制服であった。仮に見つかっても大丈夫だった。軽く死にたくなった。
  

 ツンデレ小説初挑戦!多少稚拙な部分もあると思いますがどうか暖かい目で見守ってて下さい。
 
170Mr.名無しさん:2006/08/21(月) 01:06:06
最近投下ラッシュで嬉しいわー
マジ参考になります、最高です皆さん

前の続きかけたけど、投下ラッシュ中は俺の管轄外ってことで、過疎るまで待ち
結局、ツンデレから離れたエセミステリーになってるしw
>>165
俺は一応まとまりがついたら投下してるよ。
投下した後にラッシュが続いてたみたいでびっくりしたけど。
>>166
次は本当に一週間くらいかかりそう。何とか頑張るよ。
>>170
さては過疎時の繋ぎ屋さんだな!楽しみにしてます。

やっぱ反応あったらモチベ上がるな。さらにやる気出てきた。
172166:2006/08/21(月) 18:09:26
>>171
ゆっくりでもいいので頑張ってください!
楽しみにしてます!
173Mr.名無しさん:2006/08/22(火) 11:21:12
投下ラッシュ(・∀・)イイヨイイヨー
もっともっと上質のツンデレをっ!
もっともっと萌えころがさせてくれ

あと、積極的にレスして行こうぜ。何でもいいから反応あったほうが職人さんも書きやすいだろうし
前に比べてこのスレの勢い(特に読み手側の)が無くなって来た気がするんだ
174Mr.名無しさん:2006/08/22(火) 12:59:57
読み手の勢いがなくなってきたんじゃなくて書き手の馴れ合いが増えただけだろ
175Mr.名無しさん:2006/08/22(火) 13:05:18
>>174
同意
書き手が増えたのは喜ばしい限りだけどな
176『T&E』第三話:2006/08/23(水) 12:34:24
この日本に『うんざり』という言葉があることに心底感謝をしよう。これほど今の私の感情を的確に表現するものは無いと思うのだ。


―――しとしとぴっちゃん、しとぴちゃん

「灯ちゃん、おはよう!」
何だというのだ、その上機嫌さは
「いやー、今日も気持ちのいい天気だね」
狙って言っているのか?今、私とあなたがそれぞれ手に持っている青と白黒のビニール製器物が見ないのだろうか。
「あの、私のこの表情見えません?私、今すごく嫌な顔してると思うんですけど」
「ははは、雨でよく見えないなぁ。でも、怒った灯ちゃんもかわいいなぁ♪」
・・・・・・雨降ってるのわかってんじゃねぇか

177『T&E』第三話:2006/08/23(水) 12:36:41

『T&E』
第三話『Rain days(1)』

ふと、気づいて立ち止まる。危ない、まともに踏み込む所だった。
水溜りがうざたっい。昨日、真夜中から降りだした雨は朝を瑞々しい透明な空気に染め上げた。いや、透明ではあるまい。限りなく澄んで透きとおった世界に淡い淡いブルーをひとつまみ。
空からは穏やかに細い細い糸が幾筋も降りてくる。草木の表面に溜まった水滴が光るさまなどはとてもきれいで好きなのだけれど。
そしてこの男もうざったい。この水溜りのように思いっきり踏みつけてやれればどんなに爽快だろう。
「えいっ」
ぱしゃ
「うわっ、灯ちゃんひどいよ、ズボン濡れたし」
「ふふっ・・・・いい気味」
呼ばれもしないのに勝手に出てくるのが悪い。少しスッとした。
「というか、先輩。こんな朝早くからストーカーですか?昔からそういう変態行為は夕暮れ以降と相場が決まっているものですけど。変態は変態なりに節度を守ってくれないと困ります。はっきり言って迷惑です」
いつもの通学路、水溜りに邪魔されつつも気合で歩き、学校までもう少しという所で運悪くこの男に捕まったのだ。
「いや、俺も毎日ここ通ってるし。前から登校してくる灯ちゃんよく見たよ」
そんな以前から目を付けられていたのか・・・・・・明日からもう10分早く出ることにしよう。

178『T&E』第三話:2006/08/23(水) 12:37:46
「かっちゃん、おっはー」
並んで歩く先輩と私に声をかける者がいた。先輩は振り返り、よっ、と軽く返す。
「お、なになに〜?その娘。あ、そっかそっか〜、その娘がかっちゃんの言う図書室の姫なんだねぇ〜。んーんふふ、いいねいいね、いいんじゃな〜い?」
また騒がしいのが増えた。どうやら先輩の知り合いみたいだけれど。赤い傘がまぶしい。制服からすぐ二年生と知れた。
「あ、いやまぁ、その、なぁ」
「オー、確かにかっちゃんの好きそうな清純派だわ。かぁあい〜ぃ」
いいえ、地味なだけです。抱きつくのやめて下さい。雨かかります。
「で、いっしょに登校ってことは告白成功したんだ?向こうももう俺にメロメロだし、もう落としたも同然だ!あの娘は俺にとって運命の人なんだ。俺はあの娘に人生すべて捧げるぜ!って息巻いてたもんねぇ」
は?聞いてないぞコラ。横目で先輩をにらむ。
「ちょwww緒方wwwおまっwwwww」
「いーねぇ、今度うちのとダブルデートしよーよ。あ、あなたお名前は?」
「・・・・綿見灯です」

『オー、かぁあいい名前だねぇ。あかりちゃんか。うんうん、また今度遊ぼうね〜』そういい残して、そのやたらと騒がしい人は去って行く。
後に残されたのは、微妙な空気に包まれた私と先輩。もっともその微妙な空気は私が無言で出している先輩への圧力であるのだが。

私は黙って歩き出す。とりあえず笑ってごまかそうとしている先輩を残して。
179『T&E』第三話:2006/08/23(水) 12:38:23

しとしとぴっちゃん、しとぴっちゃん

向かう先、坂の上に建つ学校の校舎は雨煙にくすんで大昔のお城のように見えた。灰色の壁は敢然と立ちはだかり、屈強な中世の騎士をも威圧するのだ。
『図書室のお姫様』『人生をすべて捧げるべき相手』さしずめあの変態がナイトさま?
眠りの森の眠り姫。悪くはないけれど、変態は勘弁願いたい。
いつの間にか口元が笑ってしまっていた事に少しだけ驚いてあせる。誰かに見られてなかったかな。
確かに先輩はストーカーではあるのだろうが、とりあえず私に害のある人ではなさそうだ。それが昨夜布団の中でだした結論。
なにやらあの人には誤解されてしまったようだが、まぁいい。後で先輩に言って誤解は解かせておこう。解いてくれなかったらもう二度と話してやらなければ済むことだ。

180『T&E』第三話:2006/08/23(水) 12:40:26
授業が進み、昼を過ぎても雨はしつこく降り続く。私はひとり外を眺める。
朝に透明だった空は黒くにごり、うねうねと動くまるで何か不吉な生物の腹部を想像させた。
雨が打ちつける窓に自分の顔を見た。頬杖をつき、無表情でこちらを見ている。
その瞳に感情の色はない。ただただ空虚がそこにはあった。
私の意識は拡散し、自身が離れていく。
『相変わらず心はひとりなんだね』
『寂しくないの』
空虚が語りだす
『素直になれないんだね』
『どこに居ても、そこにいない感覚』
そんなことはないよ
『クラスメイトの陰口を聞いた時どう思った』
『悲しかったよね』
だって、私は昔からこうだから。もっとうまく生きられるのかもしれないけれど
『本当に何も感じなかった』
相手も人間だから、そういうこともあるよ
『我慢してない』
ひとりでしか見えないものもきっとあると思うから。我慢するのは嫌い
『嘘ばっかりだね』
181『T&E』第三話:2006/08/23(水) 12:41:12
あなたと話すの嫌いじゃないよ。なんか落ち着く
『だって、自分だもの』
そっか
『あの人のこと、嫌い?』
別に
『でも、気になってるよね』
別に
『あの女の先輩と仲よさそうだったよね』
そうだね
『他にも友達いっぱい居そうだね』
かもね
『あの人なら、連れて行ってもらえるかもね』
私を、この、茨のお城から、何も無い井戸の底から
『連れ出してくれるかもね』
だといいけどね


182『T&E』第三話:2006/08/23(水) 12:41:59


「あかり、あかり!」
「え、なに?」
「またボーっとして。授業終わっちゃったよ」
気がつくと、友達の少し呆れた顔が目の前にあった。どうやら教科書やノートを広げたまま、授業の合間ずっと放心してしまっていたようだ。
「ほら、次移動教室だってさ」
「うん、ありがと。すぐ準備するね」
手早く準備をすませ、彼女といっしょに歩き出す。
この子も大切な友達。家には優しい家族だっている。なのに、何が足らないんだろうか。





「あっかりちゃ〜ん」
「何ですか、やぶからぼうに」
「いや、見かけたから声かけてみた」
「そうですか。用事ないんでしたらもう行きますね」
「ちょwwまってまってっwwwそれあまりに冷たスwwww」
「奇怪な言葉を使わないで下さい。大体それどうやって発音してるんですか。あと、大声で名前呼ばないで下さい。変な噂立ったらどうするんですか」
「いいじゃん。俺、周りなんか気にならないし、関係ないない」
「私が気にするんです」
183『T&E』第三話:2006/08/23(水) 12:42:43
「ところで、灯ちゃんどこ行くの」
「帰るんです。今日は雨がひどいし、もう真っ暗だし」
「じゃ、俺も帰るわ。一緒に行こうぜ」
「・・・・・・別にいいですけど」
「じゃあ決まりだ。いこーいこー」
「あれ・・・・・・」
「あん、どーした?」
「傘・・・・・・無いや・・・・・・」

古びた蛍光灯が照らすロッカーは薄暗くひどく寒々としていた。端のほうに備えつけてある傘箱には私が中学校から愛用している白と黒の傘、通称パンダ傘の姿は無い。
誰かが持って行ったのか、傘が自分で何処かへ行くことは無いだろう。

外は相変わらずの大雨である。
「・・・・・・雨、止みそうもねぇなぁ」
先輩がつぶやいた。その声はなぜか狡猾な悪魔の声に聞こえた。
ひどく、嫌な予感に襲われたのだった。

184『T&E』第三話:2006/08/23(水) 12:47:10
第三話お届け

今気づいた。俺、雨のシチュ好きだな
185Mr.名無しさん:2006/08/23(水) 22:29:22
文章の雰囲気が良い良い
186Mr.名無しさん:2006/08/24(木) 18:04:35
age
187Mr.名無しさん:2006/08/25(金) 23:20:50
そしてだれもいなくなった
188Mr.名無しさん:2006/08/25(金) 23:57:35
投下ラッシュはどこに行ったんだ
189Mr.名無しさん:2006/08/25(金) 23:58:48
↑そんな小説もあったね。懐かしい。
190Mr.名無しさん:2006/08/26(土) 00:00:00
だからageるなと
191Mr.名無しさん:2006/08/26(土) 00:22:05
>>184だが、もしかしなくてもスレの流れ止めてるかな
純粋なツンデレ書けないのは自分の悪い病気だが、あんまりふいんき(何故か(ry壊してしまうようなら自粛しようかなとも思う
192Mr.名無しさん:2006/08/26(土) 01:17:47
>>191
「ぼくはだめなんでしょうか」みたいなレスが個人的には一番嫌い
自分の好きなように書いて自分の好きなように投下すればいいんじゃない?
もちろんルールは守らなきゃいけないと思うけど
193Mr.名無しさん:2006/08/26(土) 01:36:37
少なくとも俺は期待しているから自粛しないで欲しい。
第三話

 いつも喧嘩ばかりしている男女が、あるきっかけを境に、急激に仲が良くなり、いつの間にか付き合うようになった。
 こんな話はよく聞くが、「あるきっかけ」と言うものは、実はなかなか生まれない。

 三人の計画とは、そのきっかけが自然発生するのを待つのではなく、外野の自分たちが起こしてやろう、というものだった。本人たちにとって、あくまで自然発生に思えるような形で。

 早い話、二人をくっつけてしまおう、そんな計画だ。

 この計画自体が練られたきっかけは、意外にも内気なほのかだった。

 きっかけとなったのは、ほのかが美幸に、理恵と祐樹について一生懸命話していた時の事だ。

 彼女の話をまとめると、次の通りになる。

 理恵は否定しているが、理恵はまだ祐樹のことが好き。自覚していないだけなのか、とぼけているだけなのかは分からないが、そう思う。理恵と長い付き合い故の直感もある。
 そして祐樹は、理恵の事が好きなのかは正直言って分からないが、他の女の子と話しているときと、理恵と話しているときの表情や態度の違いからして、まんざらでも無いように思う。
 その結果導き出された答えは、ほのか曰く、

「二人はき、きっと、す、好き、ど、同士、だと、思う、の」

 だそうだ。これがきっかけとなった。
 話を聞いた美幸が、

「じゃあこの際くっついてもらおうよ」

 と、計画及び作戦を提案。
 美幸に引きずり込まれる形で参加する事になった和也は、

「おもしろそうじゃん」

 と、すぐに乗り気になった。
 そこからトントン拍子で話は進み、美幸が考えたアイディアを中心として、各自の具体的な行動が決まり、かくして計画は実行に移される。

 その実行日が今日なのだが……。 


 話を現在に戻そう。
 
 四時間目の授業中、美幸の脳内会議。

『ごめん理恵! 今日ちょっとほのかとあたし、先生に呼び出されててさ、悪いんだけどお昼先に食べててくれない?』
(じゃあ待ってるって言いそうね)

『理恵、祐樹が朝の事で謝りたいって言ってたよ。お昼一緒に食べながら話したいってさ』
(あら? 同じような事祐樹に言ったわ)

『理恵、最近祐樹との喧嘩多すぎだから、ちょっとゆっくり話して来な』
(直球過ぎね。こんな事言えるのほのかだけ)
 右手でペンをクルクルと回し、理恵が祐樹と昼食をとらなければならない状況をどうやって作るか。美幸の四時間目の授業は、その事を考えるだけの時間になっていた。

 四時間目終了まで残り時間は僅か。

(参ったわね。ほのかが失敗するなんて考えてなかったわ。……でも仕方ない、自然にだもんね、急いでもしょうがないか。ぶち壊しになったら意味ないものね。
祐樹に、『ごめん、さっきの無かった事にして』って言えばいいし。今回は中止ね)

 不本意ながらも中止と決定した美幸だが、この後の昼休み、事態は思わぬ方向へと進む事になる。

 四時間目終了後、祐樹のもとへと急ぐ美幸。不測の事態の解決役は彼女が全て引き受けている。

 祐樹は四時間目終了のチャイムに気付いていないのか、座ったまま一点を見つめてボーっとしていた。

「祐樹、悪いんだけど、あら?」

 ボーっとしたまま聞いていない祐樹。

「おーい! 祐樹ー! 起きてるー?」

 美幸が祐樹の目の前で手をぶんぶん上下に振ってみると、やっと祐樹は美幸がそこにいる事に気付いた。

「ああ、起きてるよ。どうした?」

 いろいろ突っ込みたい美幸だが、今は本題が重要だ。
「さっきの話なんだけどさ、悪いんだけど――」

「ああ、覚えてるよ、心配すんなって」

 立ち上がり理恵の方をチラリと見る祐樹。慌てて美幸が遮る。

「ちょっと待って祐樹! さっきのやっぱり無かった事にして!」

 先程とは打って変わった美幸の発言に、不審そうな表情をする祐樹が尋ねる。

「なんで? さっきはあんなに強引に理恵を誘えって言ってたのに」

「や、やっぱりさ、悪いのは理恵だし、理恵から祐樹に謝るべきだと思うのね」

「そんな事別に気にするなよ。今朝の事抜きで俺もちょっと話したいし」

「え?」

 訳が分からないと言いたげな美幸。祐樹がこうも乗り気になっていたとは思いもよらず、混乱した頭では祐樹を止める言葉が思いつかなかった。

「じゃあ」

 そう言って理恵の方へと歩いていく祐樹を、もうどうにでもなれと見送る美幸。

(ああ、終わった)

 口には出さなかったが、そう思わざるを得ない美幸だった。
 理恵のもとへと辿り着いた祐樹は、先程自分がしていたようにボーっとしている理恵へと話しかけた。

「理恵、ちょっといいか」

 ボーっとしたまま聞いていない理恵。

「理恵! 起きてるかー?」

 そう言いながら理恵のおでこをツンツンと人差し指で突っついた。ようやく祐樹がそばにいる事に気付いた理恵は、慌てて立ち上がる。

「は、はい!」

 まるで寝ぼけ眼で聞いていた授業中に、いきなり教師に質問されたような反応だ。祐樹は少し笑いながら話す。

「もう四時間目は終わったぞ? 昼飯喰おうぜ」
「あ、あれ? ほんとだ」

 理恵は辺りを見回して、もう昼休みに入っている事に気付く。

「じゃあ俺学食だから、弁当持って行ってあっちで喰おうぜ。理恵は弁当だろ?」
「?」

 祐樹が何を言ってるのか理解できない理恵。その表情を見て改めて祐樹が言う。

「だから、俺と昼飯喰おうぜって言ってんの。ちゃんと起きてるか?」
「な、なんであんたなんかとお昼ご飯食べないといけないのよ!!」

 条件反射。それ以外に言い表せない。

 遠くで見守っていた美幸ら三人は、やっぱりこうなったか、と皆一様に溜め息をついた。

続く。
199Mr.名無しさん:2006/08/26(土) 17:22:16
イイヨイイヨー
続き期待
200Mr.名無しさん:2006/08/26(土) 23:41:00
これはいい!
201Mr.名無しさん:2006/08/27(日) 21:48:50
今さっきこのスレ来ました。
で、過去ログの片瀬青葉でキュンキュンした。
もう見てないかもだけど、書いた人乙でした。
202Mr.名無しさん:2006/08/28(月) 16:18:05
ほす
203Mr.名無しさん:2006/08/29(火) 20:02:03
ほしゅ
204Mr.名無しさん:2006/08/30(水) 15:49:09
ほしゅ
205Mr.名無しさん:2006/08/30(水) 22:35:00
「あー、めんどくせー・・・。なんで俺1人で残業してるんだろ・・・」
独り言を呟きながら、俺はレジの変更をする
「はぁ・・・。店長はさっさと帰っちまうし・・・俺バイトなのになー・・・」
パネルを操作して1時間、ようやく設定を変え終わる
「あー疲れた・・・。さって、帰るか・・・」
俺はのろのろと動きながら、帰り支度を整えた
「今日も疲れたな・・・。・・・ったく、店長め。何でもかんでも俺に押し付けやがって・・・!ちっとは南支店の店長を見習えよ!」
南支店とは、駅からこの店と間逆の位置にある姉妹店である
何度か南支店の従業員と飲み会を行ったりと、支店同士なのに仲のいい店だ
そこの店長は風貌は人のいいオッサンだが、いろいろと謎に包まれている人物なのである
「ま、従業員に優しいし、よく店ぐるみで遊びに行ったりするし、少なくともウチの店長よりはいい人だな」
誰もいない店内に皮肉を言って、俺は店の鍵を持って外に出ようとドアを開けた
瞬間、ドン、と何かにぶつかった感触が手に伝わり、続いて「きゃあ!」という妙な声が聞こえてきた
「・・・え?」
一瞬何が起こったかはわからなかったが、ドアが人にぶつかったという認識はした
俺は急いでドアから身を乗り出す
するとそこには、女が前のめりに倒れていた
「いったー・・・」
女が頭をさすりながら(どうやら頭を打ったらしい)こちらを振り返る
「何すんのよ!」
怒鳴りながら立ち上がる
「何すんのって・・・帰ろうかと思って・・・」
「帰るからって、人にドアをぶつけなくてもいいでしょ!?」
「それはそうだけど・・・。っていうか、ドア付近にいるほうが悪いんじゃない?」
「何よそれ!私が悪いって言うの!?」
「いや、こっちに悪気は無いんだし、そろそろ許してほしいかな、と」
「反省しなさいよね!まったく・・・!」
「あー、悪かったって。じゃ・・・」
俺はこれ以上付き合いきれないと思い、目の前の女・・・いや、少女を無視して帰ろうとした
「待ちなさいよ!」
がっしりと腕を掴まれる
206Mr.名無しさん:2006/08/30(水) 22:35:32
「・・・まだ何か?」
俺がうんざりしながら振り返ると、眉を吊り上げた少女の顔が目に入る
(高校・・・いや、中学生か?割と可愛い顔してるな。・・・気が強そうだけど。しかし、小さいな。最近の子にしては、発育不良だな)
そんなどうでもいいことを考えている俺の目を、少女はじっと見据えてきた
「頭が痛い」
「・・・は?」
突然の意味不明な発言に、俺は素っ頓狂な声を出す
「こんな時間にレディーを傷ものにしたあげく、放っておく気?」
「なんか誤解の生まれそうな発言だな・・・」
「うるさいわね。それより、頭が痛いんだけど?」
「・・・それで、どうしろと?」
頭の中で警鐘が鳴る
これ以上この子を相手にしていると、面倒くさい事になる
俺がそう確信した瞬間に、少女が口を開いた
「傷の手当を兼ねて、私をアンタの家に招きなさい!」
「・・・はい?」
どうやら、めったに当たらない俺の勘はこういう時にだけ当たるようだ
心の中でそう自嘲し、疲れた身体にいきなり降りかかった災難をひしひしと感じた

こうして、俺と少女の奇妙な物語がスタートする
207Mr.名無しさん:2006/08/30(水) 22:36:11
妙な少女と出会って十数分
結局俺は、少女を連れて(正確にはついてきた)家の前のドアに立った
「へー、ここがアンタの家?」
目の前のボロいアパートの一室を一瞥して、そんな言葉を口に出す
「そうだけど・・・いつまでついてくるんだ?」
「悪い?」
「悪いわ!」
俺は少し強めに声を出す
「な、何よいきなり・・・」
いきなりの怒声に、少女が少し怯む
それを見た俺は、もう少し強く出れば諦めるかと思い、さらに強い口調で言う
「おまえがなんのつもりか知らんが、言いがかりで勝手についてこられれば、誰だって怒鳴るわ!」
心の中で言い過ぎたか?と思いながらも、強い口調で少女に詰め寄る
すると、今まで吊り目がちだった少女の目が途端に下がり、今にも泣き出しそうな顔になった
「ひどい・・・私の事を傷ものにして、捨てて行こうって言うのね!」
俺よりも大きな声を少女が出す
その声は、アパート中に響き渡った
「お、おい・・・」
「えーん!ひどい、捨てられたー!」
今度は顔を伏せていきなりしゃがみ込み、泣き声を出して喚く
俺は少女のいきなりの態度の豹変振りに戸惑い、立ち尽くす
すると、この騒ぎを気にした人間がいるのだろう
あちこちから窓が開く音がし始めた
208Mr.名無しさん:2006/08/30(水) 22:36:43
「あー、もう・・・!」
俺はしゃがみ込んだ少女の腕を掴み、急いでドアを開いて押し込んだ
そしてすかさず自分も入り、すぐにドアの鍵をかけた
「はぁ・・・」
あまりの出来事に加え身体にたまった疲れが出て、俺はドアを背にずるずると座り込んだ
「うわー、汚い部屋ねー」
いつの間にか泣き止んだ少女が、部屋の中を見回す
「・・・泣き真似かよ?」
「女の武器の一つよ」
素っ気無く答えて、少女が靴を脱いで部屋に入る
「はぁ・・・」
とりあえず観念した俺は、ため息をついて少女の後に続いて部屋に入った
「ねぇ、お風呂ってどこ?」
俺が中に入って数分、部屋の中をを見回すのに飽きた少女が聞いてくる
「・・・ねえよ」
本当はあるのだが、早く出て行って欲しい俺は嘘をつく
「ふーん。じゃあ、身体拭くからあっち向いてて」
俺は突然の少女の発言に硬直する
そうしている間にも、少女が上着を脱ぎ始めた
「お、おい!?」
「ちょっと、見ないでくれる?ヘンタイ!」
そう言いながら、少女はブラウスのボタンを一つずつ外し始めた
「あー、もう!奥のドアの向こうが風呂だから、そこでやれ!」
慌てふためきながら風呂の方を指差し、少女の顔を睨む
「やっぱりね、嘘つき」
少女はそう言うと、脱衣所のドアを開けて中に入った
209Mr.名無しさん:2006/08/30(水) 22:37:14
「・・・」
俺は絶句しながら再び呆然とする
すると少しだけドアが開き少女が顔だけ出した
「欲情して覗きに来ないでよ?ヘンタイ」
言うなりドアを閉め、ほどなくしてシャワーの音が聞こえ始めた
「・・・」

「ねー」
少女が風呂に入って30分ほど経っただろうか
風呂の方から、俺を呼ぶ声が聞こえてくる
「・・・」
答えるのがめんどくさかった俺は、とりあえず無視を決め込む
「ねー?」
(無視無視・・・)
「ねーってばー?」
先ほどより少し大きな声が聞こえてくる
(無視無視無視無視無視・・・)
「こらー、ヘンタイ!さっさと返事しなさいよ!」
隣の部屋にまで聞こえそうなくらいの声が響き渡る
「誰が変態だ!」
ついに堪忍袋の尾が切れ、俺は走って脱衣所の前に行き、勢いよくドアを開けた
210Mr.名無しさん:2006/08/30(水) 22:37:53
「人が黙ってれば・・・!」
吊りあがった目に映った光景は、上半身を風呂場のドアから出していた少女の姿だった
お互い突然の出来事に固まり、口を開いたままの状態で沈黙が訪れる
それから、俺は過去最高のスピードで振り返って脱衣所から出て、すぐさまドアを閉める
「わわわわ悪かった!」
慌てて謝罪の言葉を発する
そして、少女から罵声または悲鳴を聞く羽目になるであろう自分を呪った
しかし聞こえてきたのは、小さくてほとんど聞き取れない言葉だった
「・・・た?」
何か言ったのだろうが、俺には理解できなかった
「・・・えーと?」
「・・・見たわね?」
二度目の台詞で、ようやく俺は理解した
少女は怒っているのか悲しんでいるのかはわからないが、俺に裸を見たかどうかを聞いているのだ
「・・・わ、悪かった」
俺は素直に謝る
いくら故意じゃなかったとは言え、裸を見てしまったことに違いはない
心の中で一度深呼吸をし、もう一度謝罪しようと口を開いた瞬間、少女の声が聞こえた
「べ、別に減るもんじゃないから、いいけどね」
211Mr.名無しさん:2006/08/30(水) 22:38:44
ザー・・・ッ
シャワーの音が響く浴室で、俺は1人で考え込む
(・・・意外と、胸があった)
先ほど見た光景を思い出して、ふと顔を赤くする
バカか俺は!あんな子供に何を考えている!
必死に頭の中から彼女の裸を追い出す
そして、これからの事を考える
(とりあえず、今夜はもう遅いから追い出すわけにはいかないな・・・)
こんな時間にあんな子を外に出すわけには行かない
もし追い出せば、何をやらかすかわからない
いや、そもそも素直に出るような子ではない
もしかしたら、大声で騒ぎ出して、警察が来るかもしれない
(・・・おいおい、この状況は、下手をすると犯罪なんじゃ・・・)
一気に血の気が引いていく
シャワーから出るお湯が暖かいはずなのに、何も感じない
(まずい、非常にまずい・・・)
警察に連れて行かれることを想像し、今までの人生が走馬灯のように頭の中を駆け抜ける
そしてそれが、足元から崩れ去っていく
(・・・どのみち、今日は追い出さないほうが俺の身のためにもなるな・・・!)
第一に考えるは自己保身だ
先ほど出会ったばかりの少女に、今までの、そしてこれからの人生をダメにされるわけにはいかない
(さて、結論は出たとして、このあとどうするか、だな・・・)
ここで新たな問題が生じる
212Mr.名無しさん:2006/08/30(水) 22:39:16
この家には布団が一つしかない
見ず知らずな上に無礼とはいえ、相手は女の子だ
自分の布団は譲るしかない・・・しかし・・・
(・・・春先とはいえ、まだまだ夜は冷え込む・・・どうする?)
仮に服やタオル類をかき集めて寝たとして、風邪をひくのは必至だ
いっその事、カラオケボックスにでも泊まるか?
我ながらいいアイデアではないか?
(そうだな、それが一番いい案だ)
俺はそう結論付け、シャワーを止める
そしてバスタオルで体を拭き、すぐに着替えてリビングに戻る
「あのさ、俺・・・」
『あン・・・!いい、もっとぉ・・・!!』
風呂から上がるやいなや、喘ぎ声に出迎えられる
『気持ち良いか?ん?』
『ああ、いいのぉ・・・!』
「・・・」
俺は無言で立ち尽くし、熱心に見ていたであろう人物に目を向ける
そこには、思いがけない出来事に思い切り動揺し、ものすごい顔で固まったままの彼女がいた
『や!もうだめ、イ・・・』
プツンッ
少女は無言でビデオの電源を切り、こほん、とわざとらしい咳払いをして、俺に向き直る
213Mr.名無しさん:2006/08/30(水) 22:39:37
>>205
ものすごい見覚えのある文章なのは漏れの気の精か?
喪版の某スレのコピペのような気がしてならないんだが・・・
214Mr.名無しさん:2006/08/30(水) 22:40:01
「・・・」
「・・・ヘンタイ」
「勝手に見るなよ!」
俺は当然の抗議をする
「タイトルの書いてないDVDがあったから、気になったのよ!」
「おま・・・、あほか!?」
俺は怒りと呆れと戸惑いで頭がいっぱいになり、なにを言っていいかわからなくなった
「誰がアホよ!」
少女が勢いよく立ち上がる
「だいたい、人を待たせておいて何よその態度は!」
「待たせてって・・・おまえ、風呂に入るときに『ゆっくり入れば?』って言っただろうが!」
「社交辞令よ!」
「そんな社交辞令ねーよ!」
「あるわよ!」
「ねーよ!っていうか、百歩譲ってそれでいいとして、なんでDVD漁りすんだよ!」
「ひ、暇だったから・・・」
ふと少女の声から勢いがなくなる
どうやら勝手にDVDを見たことに、多少の罪悪感を感じてはいるようだ
「・・・じゃあ、なんでアレを見てたんだ?」
「あ、アレって・・・?」
明らかに動揺した表情ながらも、なんとか冷静さを保とうとして見える
「AVだよ!」
「ば・・・バカ!女の子の前で何を聞いてるのよ!」
顔が真っ赤になりながらも、なんとか反論してくる
「ごまかすな!」
「そ、そんなに怒らなくてもいいでしょ・・・」
「・・・で、暇だからAVだったと?」
「そ、そんなに見てないわよ?ちょっとよ、ちょっと・・・」
「いきなりAV女優がイくAVがあるか!」
「へ、変なこと言わないでよ・・・バカ・・・」
よっぽど恥ずかしいのだろう、徐々に声が小さくなっていく
先ほどまでの横柄な態度もどこへやら、今では借りてきた猫のようになっていた
215Mr.名無しさん:2006/08/30(水) 22:40:36
「・・・俺が上がるまで、ずっと見てただろう?」
「・・・見てないもん」
「見てただろ?」
「ちょ、ちょっとだけだもん・・・」
「ちょっとー?」
「ちょ、ちょっとよちょっと!ほんとにちょっとなんだから!」
少女があまりに狼狽するので、俺はここら辺でいじめるのをやめる
(これ以上やって騒がれるとめんどうくさいし・・・)
頬を膨らませて睨み付ける少女
俺は二・三度頭をかいて、少女にこれからの事を伝えることにした
「はぁ?なんでアンタが出て行くのよ?」
俺の説明に、少女があきれた顔をする
「だから、布団が一つしかないから・・・」
「そんなの気にしなきゃいいでしょ?」
特に何も気にならないといった様子で、少女が喋る
「いや、でも・・・」
「なに?まさか私に変な事するつもり?」
意地の悪そうな笑みを浮かべて、少女が覗き込んでくる
一瞬
ほんの一瞬だが、その笑顔にドキっとする
「しねーよ!」
しかしその思いを振り払い、俺は少しムキになって否定する
「あれ?図星?」
更に少女が聞いてくる
先ほどとはうってかわって、少女が俺をいじめる形になっていた
「バーカ。俺は変な趣味は持ってないんだよ」
皮肉交じりで俺が言い返す
「な、なんですって!?どういう意味よ!!」
「さあ、ね」
俺は大げさに両手を上げる
「ふん!バーカ!」
少女はそう言うと、俺に背を向けて布団に潜り込んだ
216Mr.名無しさん:2006/08/30(水) 22:41:07
「・・・寝るのか?」
「悪い?」
どうやらコンプレックスに触れてしまったらしい
少女は明らかに機嫌が悪くなっていた
(ったく・・・これだから子供は・・・)
心の中で思うだけに留め、俺はコップに水を注いで一気に飲む
そしてふと少女の包まっている布団の方を見る
(どうしたもんかな・・・)
少女は気にしないと言ってくれた
(・・・そうは言われてもなー)
ガシガシと強めに頭を掻く
すると布団が少し動く音がした
続いて、少女が顔を少しだけ出す
「この中以外で寝ようとしたら、殴る」
言い放ってすぐに潜りなおす少女
俺は苦笑いをし、ゆっくりと深呼吸して、少女の包まっている布団へ向かった
電気を消して、布団の中へ慎重に入る
しかし緊張のせいか、身体に妙な力が入った俺は、足が少女の身体に少し当ててしまう
その感触に驚いたのか、少女がビクリと身体を震わせた
『この中以外で寝ようとしたら、殴る』
少女の言葉が、ようやく強がりだと気付く
(・・・無理しやがって・・・)
そう思いながら、俺はさっき以上にゆっくりと慎重に布団に身体を潜らせた
そして少女に背を向けた状態で寝転がる
(・・・なんか変な感じだな)
直接くっついているわけではないが、背中に感じる少女の体温に不思議な感触を覚える
そんな事を考えていると、少女が少しだけ動く
そして俺の背中に、何かがぶつかった
いや、何か、はすぐにわかった
少女が背中を合わせたのだ
217Mr.名無しさん:2006/08/30(水) 22:41:57
「・・・」
俺は何か言おうとするが、何を言っていいのかわからずに、口を開いたまま固まる
「・・・い・・・」
すると固まったままの俺の耳に、微かな声が届く
「・・・えと、なに?」
ほとんど聞き取れなかった俺は、おそるおそる聞き返した
「・・・」
「・・・」
だが、少女は言い直してはくれなかった
「・・・」
「・・・」
無言状態が続く
俺はそれに耐えられずに、口を開く
「おやすみ」
言ってすぐに目を閉じる
当然眠気は無いのだが、それでも眠ろうと何も考えないようにする
再び、少女がもぞもぞと動き始める
(?)
俺が不振に思っていると、背中に手の感触が伝わってくる
「・・・え?」
218Mr.名無しさん:2006/08/30(水) 22:42:28
「こっち向くな、バカ・・・」
弱弱しい声を出しながら、少女が身体をくっつけてくる
「・・・」
「・・・あ、アンタが聞いてないのが悪いんだからね」
言うなり、少女はしっかりと俺の肩を掴む
「・・・なぁ?」
「・・・何よ?」
「さっき、なんて言ったんだ?」
先ほどの聞き取れなかった言葉が気になった俺は、ダメもとで聞いてみる
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・くっついて寝ていい?」
「え・・・?」
「うるさい!さっさと寝なさいよ!・・・おやすみ」
少女はそう言うと、俺にくっつけるだけくっつく
それから少しして、少女の微かな寝息が聞こえてきた
「・・・おやすみ」
どことなく心が落ち着いた俺は、少女の温もりを背中に感じながら、ゆっくりと眠りについていった
219Mr.名無しさん:2006/08/30(水) 23:08:30
>>213
俺そのスレ知らないけど、この際コピペでもよくね?

・・・いや、駄目かw
220Mr.名無しさん:2006/08/30(水) 23:12:32
ここまでエロゲ的妄想臭が激しいのも珍しい
221Mr.名無しさん:2006/08/30(水) 23:18:29
毒男みたいなオッサンよりは喪男みたいなガキが好む文章だな
222過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/08/30(水) 23:35:10
このまま完璧な過疎状態まで書き溜めていくと、なんかもの凄く膨大な量になりそうなんで、折を見て落としてくよ
それでなくても一つ一つが長い話になりそうだし
あと、最初に投下したやつは序話になってたけど、話の性質上序幕に変更
タイトルも少し付け加えて、夕立刻に降る雨は としたんでご理解のほどよろしく

んでは、次のレスから >>33の続き投下
223過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/08/30(水) 23:35:47
   -fact-

 時計の針の音だけが、無機質な部屋に響く。
 中央に設置された、アルミの机とパイプ椅子。背後から光が差し込む窓は、鉄格子に覆われている。さながら牢獄のようだった。
 正面に座り、難しそうな顔をした初老の男性。彼は、稲村というらしい。この真夏にビシッとスーツを着込んだ彼は、机に並べられた紙を見つめている。
「それで、お母さんについて知っていることを教えてもらえるかな?」
 このえさんから容疑者としてあの人の名前が挙がっていると聞いた一時間くらい後、一体どのように俺の居場所を突き止めたのかもわからないが、稲村さんが数人を引き連れて現れた。
 申し訳ないけど、一緒に来てもらえないかな?
 柔らかな物腰で、彼はそう言ったのだった。別に断る必要も理由も無く、彼らに取り囲まれるかのように、俺は街の中心に位置する警察署へと連れて行かれたのだ。
「別に、知っていることといわれても、何も知りません」
「実の親なのに?」
「被疑者の息子になれば、他人の家庭環境にも口を挟むんですか? 警察っていうのは」
「すまないね、これが仕事なんだよ」
 ため息を付いた。
 こんなにも柔らかい物腰と口調なのに、異様なまでの威圧感を感じる。
 この聴取室と言う密室が織り成す威圧感なのか、それとも彼自身が発する威圧感なのか。
 おそらく、後者なのだろう。
「ではこうしよう、こちらのほうから質問をするから、分る範囲でいい。答えてもらえないかな?」
「それでいいのなら」
 即答をすると、稲村さんは満足をしたようにうっすらと笑みを浮かべて頷く。
「じゃあ、お母さんは浩介君から見てどのような母親だったのかな?」
「どうと言われても。あの人とは、それこそ自分の箸より短い付き合いですから」
 答えると、稲村さんは眉間にしわを寄せ、鋭い目つきで、まるで睨むかのようにこちらを見る。
「君は中々、文学的な言い回しをするね」
 表情はそのままで、言葉は柔らかい。この矛盾は一体なんなのだろう。
「よく言われます」
 意図的に、分りにくいような言葉を選んで話す自分がいる。
 一体何故、こんなことをしているのだろうか。
224過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/08/30(水) 23:36:38
「次に、君は今日の午前十一時ごろ、何をしていたかな?」
「あの人に関する質問じゃなかったんですか?」
「あぁ、申し訳ない、気を悪くしないでくれ。一応、形式上の物なんだ」
「そうですか。十一時ごろなら、テストを受けてました。証人もすぐに確保できます」
「いやいや、別に君を疑っているわけではないからね」
 白紙の紙に軽くペンを走らせた。暗さで何が書かれたのかは判別できない。
「よし、わざわざありがとう。帰っていいよ」
「はぁ。なんか、予想していたのよりも短いですね」
「浩介君の話し方を見れば、君のお母さんに関する情報は手に入らないだろうからね。実の母親を『あの人』なんて呼ぶ人は初めて見たよ」
 気付かれないようにため息をつき、椅子からそっと立ち上がる。
 扉のドアノブに手をかけた刹那
「あ、そうそう、浩介君。何か思い出したら、この番号に電話をしてくれるかな。私の携帯だ」
 紙切れを一枚渡される。そこには、確かに携帯電話の番号と思しきものが殴り書きされている。
「たぶん思い出すことは無いと思いますけど、一応貰っておきます」
 今度こそと、もう一度ドアノブに手をかける。
「それと、もう一つ」
 手をかけた右手を下ろし、振り向く。
「今度はなんですか?」
「君のお母さんが今のところ重要参考人だけど、まだ君のお母さんがやったと決まったわけではないから。心配しているかもしれないから、教えておいてあげようと思ってね」
「別に、心配なんかしてません」
「本当に?」
「なんで、今更あの人の心配をしなければならないのですか?」
「まあ、君がそう思うのならそうなんだろうね」
 そんなよくわからない言葉を残し、稲村さんは俺よりも先に聴取室を抜け出して行った。
225過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/08/30(水) 23:37:43
 大衆食堂秋雄に到着する頃には、もう夜の七時を回っていた。
 この時間ならもう、ひなたが帰宅しているはずだ。少し今日のことを話してみよう。
 引き戸を開けると、戦場の如くの勢いでこのえさんとおっさんが右往左往している。
「へいらっしゃーいっ!!」
 俺を客と勘違いし、おっさんが声を張り上げる。いつもならば俺と気付いて罵倒の一つも飛ばすのに、今日はちらりと俺を見ただけですぐに作業に取り掛かる。
「こうちゃんお帰り、はいこれっ!」
 このえさんから手渡されたエプロン。大衆食堂秋雄とプリントされた、俺専用のエプロンだ。端に富山浩介と刺繍が入れてある。
 どうやら手伝えということらしい。
 急いで荷物を厨房の隅に放り投げ、貼り付けられた伝票を見て現在の注文を確認する。
「おいおっさん、俺は13番さんまでやっとくから、おっさんは18番さんからやってくれ」
「あぁっ!? テメェ、もう少しやりやがれっ!!」
「計算も出来ないのか、もうろくじいさん。ちょうどそこで半分だ」
 むしろ、本職ではない手伝いが半分の注文を捌くのだ。その時点でこちらのほうがしんどい。
「ちくしょー!!」
 反論が出来なかったらしい。ラードに沈めたカツを箸で引っ張りあげていた。
 さってと、小遣い稼ぎだ、頑張ったほうがいいだろう。
226過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/08/30(水) 23:38:29
 ようやく人が落ち着いたのは、午後十時を回った頃だった。
 大衆食堂という割りにはつまみ系のメニューが多く、昼は食堂、夜は居酒屋のような位置付けになっているため、注文が落ち着くのも遅い。
「ふぅ、ようやく落ち着いたな」
 言いながら煙草を吸い始めるおっさん。
「おいおっさん、俺にも一本くれ」
「しかたねぇな、頑張った褒美だ。ありがたく吸えよ」
 ソフトケースから少しだけ顔を出したピースを一本取り出し、おっさんの煙草を火種に火をつける。
 煙を肺に入れた瞬間、少しだけ目眩のようなものを感じる。普段からあまり吸わないのに、ショートピースは荷が重かったらしい。
「お疲れ様、二人とも。はいこれ、冷えたお茶」
 ホールに出ていたこのえさんも厨房に戻ってくる。最後の客が帰ったのだろうか。
「サンキュ、母さん」
「ありがとうございます、このえさん」
 それぞれ違う言葉を発し、お盆に乗ったお茶を受け取る。カラン、と一度氷が音を鳴らせた。
「あー、疲れたー」
 お茶を飲み干し、氷を齧る。この瞬間が最も美味しく氷を食べる方法だと思った。
「今日はやけに忙しかったからねぇ。殺人事件なんて起こっちゃったから、お客さんこないかなって思ってたんだけど」
 確かにそうだ。
 こんな田舎の平和な街で殺人事件なんて、それこそ宝くじで二等くらいが当たる可能性くらい低いんだろう。
 しかも一応容疑者としてあの人の名前は公開されているものの、未だ捕まらず、どこに潜んでいるかもわからない。
 そんな状況でよく店になんて来るものだ。
「むしろ、こんなことがあったからお客さんがたくさん来たんじゃないの?」
 そこにいた三人以外の声が厨房に響く。
 ひなただった。
227過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/08/30(水) 23:39:26
「あれ、ひなちゃん。いつ帰ってきたの?」
「ついさっき」
「お帰り、愛しのひなたー!」
「はいはい」
 語尾にハートマークでも付きそうな発音のおっさんを軽くあしらうひなた、手馴れている。おっさんの重度のシスコンは相変わらずだ。
「で、事件があったから客がたくさん来たってのは?」
「さっきね、店先で常連さんに会ったのよ。こんな時なのによく来てくれましたって言ったら、こんな時だから飲みに来たんだってさ」
「あー、なるほど。家にいるより、仲間と連れ立って飲んでる方が気持ちは楽だからな」
 それなら納得できる。
「それはいいとして、早くお片づけしちゃいましょう!」
 このえさんの言葉は、休憩終了を意味していた。
 各々返事を返し、それぞれの持ち場に移動する。
「それとひなちゃん、後で私の部屋に来るように。大学生って言っても、この時間は遅すぎよ?」
「りょ、りょーかいしました」
 力なくうなだれるひなたを、激励せずにはいられなかった。
228過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/08/30(水) 23:40:32
 このえさんの部屋がある方向から、未だに小さな怒声が小汚い家の中に響く。
 田舎の一軒家とは例外なく大きいのが相場であり、この家も例外ではない。ひなたの父、秋雄さんの一つ上の代までは農業を営んでいたらしく、今も家の片隅にその時の欠片が残されている。
 そんな家の、本当に隅。元々は物置部屋だった場所が、今は俺の部屋として使われている。
 ベッドと本棚。あと、小さな机がそれぞれ部屋の端に、テーブルが部屋の中央に設置されている。必要最低限のものしかこちらに持ってこなかったため、こんなことになっているのだ。
 そんな生活感のない部屋に、ノックが響く。
「うぃ」
 小さく声を返し、時計を見る。十一時少し前と言った所だろうか。普段ならばひなたが来たのかとでも思うのだが、ひなたはまだ説教を受けている最中だ。
 とすると、誰かなんて決まっている。
「俺だ、入るぞ」
 おっさんの声だ。
 そう考えた直後、有無を言わさず引き戸が開く。普段から手入れをしているので、ふすまを開く音は無い。
「ようがきんちょ。しけた面してんな」
「がきんちょ言うなよ、おっさん」
「じゃあお前もおっさんは止めろってのっと、ここ座るぞ」
 いいよとか、そういう答えを聞く気は毛頭も無いらしい。
 俺の返答を聞かず、勝手に俺の正面に座る。
「で、おっさん。あんた何しに来たんだよ。あんたがわざわざ俺のところ来るなんて珍しいじゃないか」
「まーな。ひなたもまだ母さんに怒られてるし、お前で暇つぶしでもしようかと思ってな」
「俺は忙しいぞ」
 どこがだよ、とでも言いたそうな顔だ。だがそんなことは気にせず、矢継ぎ早に次の言葉を出す。
「大方、警察に何を聞かれたとか、そういうこと聞きに来たんだろ。あんたは昔っから野次馬体質だからな」
「なんだ、わかってたのかよ。じゃあさっさと話せよな」
 聞きに来た癖に、なんでそんなにも偉そうなんだ。
 別に俺は話してやる必要も無ければそんな義務もない。
 だが、子供のように目を光り輝かせて俺の返答を待つこの中年一歩手前を見ると、話してやらないのはどうもかわいそうになってしまう。
229Mr.名無しさん:2006/08/30(水) 23:40:47
なげーよ読む気失せるよ
230過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/08/30(水) 23:42:17
「別に、これといったことは聞かれてないな。俺から見てあの人はどんな人だったのかとか、その程度」
「マジで? 事情聴取っていうからどれだけ仰々しいのかと思ってたら、その程度だったのかよ、つまんねーな」
 仰々しいの使い方が間違っている気がするが、なんとなくの言葉のニュアンスは伝わって来ないこともないのでよしとする。
「で、おっさん。話はそれだけか?」
「いや、他にもあるぞ。この事件に対する、俺なりの推理だ!」
 そんなもの他所でやってくれ。
「いいか、よーく聞けよ」
「聞きたくはないが、仕方ないから聞いてやる」
 子守でもさせられるような気分だ。
「まず、この事件を起こしたのは、由利音さんじゃないような気がするんだよな、俺」
「はぁ? なんでだよ。警察だってそう考えてるし、あの人が事件を起こしたって考えるのが普通だろ」
 いなくなった精神病患者と、無くなった包丁。そして患者がいなくなってすぐに殺された一人の人間。
 こんなもの、中学生くらいの。いやむしろ、小学生くらいの知能があれば思いつくような気がする。
「考えてみろよ、俺は小耳に挟んでた程度だけど、由利音さんは精神病でも鬱患者だろ? しかもリストカットの常習者。ってことは、包丁なんか手に入れたら、先に自殺するんじゃないか?」
「あ、それは思いつかなかった」
 どうやら俺は、おっさん理論によると小学生くらいの知能すら持ち合わせていないらしい。一応大学生なのだが。
「それに、いなくなって30分後って話だけど、それっていなくなったことが発覚して30分後ってことだろ? いなくなったことに気付いたのが配膳しにきたおばちゃんって聞いたから、実際はもっと前にいなくなってたんじゃないか?」
 それも確かに。いなくなったことに気付いたのが配膳のおばちゃんというのは初めて聞いたことだが、それが事実ならその通りだ。
「以上のことから、俺は由利音さんは犯人じゃないと考えるわけだ。がきんちょ、どう思う?」
「いや、どうと言われても」
231過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/08/30(水) 23:43:09
 別に関係ない。あの人は一応俺の母親なのだが、でもあくまで「一応」だ。心の中ではあの人のことを母親などとは思っていないし。
「別に、どうでもいいんじゃね? 俺とか、俺の知り合いに危害が無ければどうでも」
 おっさんは例外として、だが。一度刺されたほうが大人しくなっていいかもしれない。
「ていうかおっさん、なんであんた事件のことそんな知ってんだよ?」
「常連に件の病院の従業員がいるんだよ。酔った拍子にポロッと言ったわけだ」
「それで、仕事中にそんなくだらないこと考えてたわけか」
 道理でいつもより仕事の能率が悪いわけだ。そんなことに頭を使っていたら、仕事が遅くなるのなんて目に見えている。
「るせーな。ま、犯人が由利音さんにしろ、別人にしろ、日本の警察は有能だとか言うしな。どうせすぐに解決して終わりなんだろうな」
 と、どこかつまらなそうに言う。
「早いところ解決してくれれは、それで万々歳じゃないか。平和が一番、だろ」
「まぁな。それに、愛しのひなたにもしものことがあったら」
 その『もしものこと』とやらを想像したのか、少しだけ顔を青くする。
「てか、相変わらずシスコンなのな、おっさんは」
 昔からそうだった。
 普段の対応から、俺自身のことを嫌っているわけではなくて、ひなたと仲良くしているときの俺を嫌っているんだろう、この人は。
 その証拠に、ひなたがいない場ではこうやって、普通に会話をしているんだから。
「まぁ、な。否定はしねぇよ、実際そうだからな」
 当然のように言い放つ。本人にも自覚というものはあるらしい。
 なんでまたそんなにシスコンなのかと疑問にも思うが、いちいちそんなことを考えるのも面倒くさい。
「ああ、そういえば、お前知ってるか?」
「知らん」
「話の内容を聞いてから答えろよ」
 小さくため息。
「わかったよ、聞いてやるからさっさと言え」
「なんかムカつく対応だが、話してやる。いいか、よく聞け」
 こっちはこっちでムカつく対応をされたが、まぁいい。



「昔な、この村で似たような事件があったらしいんだ」
232過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/08/30(水) 23:44:26
  -dream-

 暗闇の中を、走る、走る、走る。
 まるで車に乗っているみたいな速度で、前から後ろへ流れて行く景色。
 映画でも見ているような錯覚を覚えながら、暗闇を走る続ける。
 一体、「僕」は何をしているのだろう。少し、考える。
 前を見ると、人が走っていた。僕から逃げているみたいに。
 いや、みたいじゃなくて、きっと僕から逃げているんだ。
 そして、躓いた。僕じゃなくて、走っている人が。
 僕は何も考えていない。なのに、勝手に体が動いた。
 僕の前を走っていた人は、女の人だった。女の人のお腹の上に馬乗りになると、女の人はヒィって小さく悲鳴を上げた。
 手が、女の人の首に伸びてゆく。いつも見ている自分の手より、ずっと大きい。
 簡単に女の人の首を多い尽くした僕の手は、容赦なく女の人の気道を圧迫する。
 だけどそれよりも先に、窒息で息を引き取るよりも先に、女の子の首からごきん、と乾いた音が鳴った。たぶん、首の骨が折れたんだと思う。
 それからは、カエルの解剖でもするように、僕は女の人を『解剖』していった。

>>229
ごめん、自分でも長いなって思う
233過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/08/30(水) 23:45:20
  -fact-

 翌朝。激しい頭痛で目が覚める。
 キリキリとまるで苛む様なほどの頭痛。目覚めは最悪だ。
 ていうか、なんでまたシーツがこんなことに。まるでシャワーでもぶちまけたかのように、布団が湿っている。
 そして気付く。俺の着ている服も同じように濡れていることに。
 そうだ、嫌な夢を見たんだ。きっとこの寝汗は、その所為に違いない。
 リアリティ溢れるというか、臨場感がたっぷりの、それはまた珍しい夢だった。
 やっていることはどこか浮世離れしていたのに。
 首の骨を折ったときの感触。ぐったりと力を失ってゆく、女の人だったモノ。そして、抵抗がなくなった体を、引き千切っていくときの感触、血の温かさ、滑り。
 全てが、頭の中に、鮮明に生き残っているのだ。
 酷い吐き気を感じた。
「――っっ」
 小さくうめき声を挙げて、こみ上げる胃液を飲み下す。
 ギリギリのところで飲み下した胃液は、口の中に僅かな苦味を残した。
 なんだったんだろう、あの夢は。
 殺人事件なんて起こった所為で、少し頭のほうがおかしくなっているのかもしれない。
 時計を見ると、おおよそいつも起きる時間だったので、キリキリと痛む頭をどうにかし、一階の台所へ向かった。
234過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/08/30(水) 23:46:09
「あら、おはようこうちゃん。思ったより早かったのね?」
 台所に入ると同時に聞こえたのは、ほんの少しだけ驚きの色合いが混じったこのえさんの声だった。
「早かったっていうと?」
 いつもより早起きをしたつもりはないのだが。大体いつも通りの時間に目を覚ましたから降りてきただけのこと。
「ほら、今日から夏休みじゃない。いつもより寝ぼすけさんするのかなぁって思ってたから」
「あぁ、なるほど」
 整った生活のリズムだ。一日で崩れるわけもない。崩れてから直すほうが大変なのだが。
 俺の分であろう味噌汁とご飯を器に盛り付け、ちゃぶ台に乗せる。と同時に、まじまじと俺の顔を覗き込んで来た。
「どうかしました?」
「え、あぁ、顔色悪いけど、大丈夫?」
「顔色?」
 きっと、あの夢とこの頭痛の所為だろうと思う。
「大丈夫ですよ。ちょっと頭痛いだけなんで」
 夢のことは伏せておくことにした。あんな猟奇的な夢を見たことなんて、人に話したくない。
「あー、そう。私の生理痛用の薬だけど、飲む?」
「大丈夫ですよ、そこまで酷いわけでもないんで」
 苦笑を漏らす。提示した薬が頭痛薬ではなく生理痛薬だというのも、なんだかおかしい。
 まぁ、用法の中に頭痛も入っているものが多いみたいなんだけど。
 そんなことを、味噌汁を飲みながら考える。
 うん、今日も美味しい。
 さすがに定食屋を営むだけのことはある。俺も一応手伝いとして仕事をやっているが、この味は絶対に出せない。
「あ、そうそう、こうちゃん」
「はい、なんです?」
 味噌汁の味が口に残っている間に、ご飯を口に詰め込む。
「あの、ね。一応言っておこうかなって思うんだけど、今朝早くに、刑事さんが来たの」
「はぁ」
 まさか、このえさんやひなたに事情聴取なんてことじゃないだろうな。おっさんは別に事情聴取してもらって構わないが。
235過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/08/30(水) 23:46:51
 だが、表情はそんな感じではない。何かこう、苛立ちとか、焦りとか、いわゆる負の感情というものが一切感じられないのだ。
 その表情が持つ意味を把握しかねていると、まるで助け舟でも出すように
「あ、事情聴取とかじゃなくて、もっと個人的な用事で」
「個人的?」
 刑事さんとこのえさんが知り合いだったとか?
「ほら、由利音さんとこうちゃんは家族なわけでしょ?」
「一応、戸籍上は」
「戸籍上じゃなくて、家族なの!」
「はぁ」
 いつもと少し様子が違うような気がする。
 俺の中のこのえさんは、もっと大人っぽくて、それでいてどこか子供っぽいところも持っていて。これではまるっきり子供だ。
「それでね、こうちゃんに由利音さんの情報を求めたお礼に、由利音さんの情報をこうちゃんに教えてくれるんだってさ」
「、それで?」
 だから、なんだというのだろう。
 別にあの人が捕まろうが、死のうが知ったことじゃない。とっくの昔に縁を切ったと思っているような母親の情報を流されても。
「それでって、嬉しくないの?」
「嬉しいって、なんで?」
 俺が喜びの感情を浮かべる要因が、どこにも見当たらない。
 むしろ、わざわざあの人の情報なんか流されたら胸糞悪い。
「はぁ、由利音さん可哀想」
「ていうか、別にこれなら個人的じゃないでしょ。思いっきり事務的ってか、そんな感じじゃないですか?」
「まだ続きがあるのよ」
「続き?」
 鸚鵡返しに尋ねた瞬間、このえさんの表情が少し曇った気がした。

「また、事件があったらしいの」
236過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/08/30(水) 23:47:42
 町の混乱を防ぐために公の発表はしない方針らしいのだが、無関係というわけでもないだろうということで、個人的に教えてくれたらしい。
 今朝未明、ここの近所の農道の隅、草むらの中に放置されていた死体が発見されたらしい。
 同一犯である、という見解を主に捜査しているらしいのだが、最初の事件とあからさまな相違点があるみたいなのだ。
「遺体がね、人の力とは思えないような力で、引きちぎられていたらしいの」
「引きちぎられて?」
 なんとなく、どこかで見たことがあるような、そんな気がした。
 スッと、暑さで滲み出ていた汗が引く。
 そうだ。
『夢の中の「僕」も、人を人とは思えないような力で、引きちぎっていた』
「被害者は秋山高校に通う女の子。友達のところに遊びに行って、その帰りだったみたい」
「あの、何時くらいですか?」
「確か、死亡推定時刻は夜の十一時半くらい、発見時刻が朝の七時少し前って言ってたかな」
 十一時半。その辺の時間は、俺はおっさんと話していたはずだ。
 よかった。
 よかった? あれはただの夢だ。よかった、などと考えるほうがどうかしている。
 唐突に、脳裏に夢のあの情景が映し出された。
 暗闇の中、走り続ける『僕』。逃げ惑う女の人。首の折れる音、腕を引きちぎる感覚、血の温かさ、滑り。
「それで、余裕があるときでいいから、個人的に話を聞きたいって刑事さんがって、どうしたの、顔真っ青だよ?」
 酷い吐き気だった。一瞬でも気を抜けば、一度に胃の中味が全て飛び出してしまいそうなほどに。
「病院いく?」
 右手を思い切り口に押し当て、こみ上げる胃液を押さえる。口中にあの独特の酸っぱさが広がってゆく。
 ギリギリのところで飲み下し、右手を離す。
「大丈夫、です」
 自分でも分るほどに、声が震えていた。そうだ、この感覚は。
 俺は、何かに怯えている。
237過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/08/30(水) 23:48:30
  -dream-

「さあ、ここだ」
 促された先にあったのは、大きな水槽みたいな物だった。
 でも、水槽みたいに四角形じゃなくて、丸い。なんだっけ、円柱っていうんだったかな。
 たくさんのコードが繋がっていて、まるでくらげみたいだった。
 薄緑の水に満たされた水槽の中は、それ以外に何にも入っていない。
「今日から3日間、ここに入ってもらう」
 なんで? 僕は尋ねた。
「君はね、何人もいた『素体』の中で、唯一合格したんだよ。だから、この中に入れるんだ」
 そたい? ごうかく?
 わからない。一体この人は、何を言っているんだろう。
 ここに入るとどうなるの? 僕は、そうやって尋ねた。
「それはわからない。自分達も、初めての経験だからね」
 そう言って苦笑いをして、僕の手を引いて階段を登った。
 水槽の上、蓋みたいなものを外し、僕に中へ入るように促す。
 でも、水の中に入ったら息ができない。
「大丈夫、すぐに慣れるから」
 どん、と背中に衝撃を感じた。
 水槽の中に落とされたみたいだった。
 僕は苦しくて、動かせる限り、体を動かした。
 ぴったりと締められた蓋を、何回も蹴ったり、殴ったりした。
 でも、びくともしなくて、意識が遠くなっていって。
 目の前が、真っ暗になった。
238過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/08/30(水) 23:49:10
  -fact-

 本日二度目の起床は、またそれは最悪なものだった。
 朝食を食べてすぐ、吐き気があまりにも酷くてそのまま就寝。十時くらいだったと思う。
 今の時間は十二時を少し過ぎた辺りだ。思ったよりも寝ていたらしい。
「あー、やぁっと起きた」
 部屋の入り口から、聞きなれた声が聞こえる。
「あぁ、ひなた」
「おはよ、体調はどう?」
「んー、上々?」
 どうだか、と呟きながらテーブルに土鍋を置く。
「これは?」
「お昼ご飯。お腹空いたでしょ?」
 言われて見れば空いている様な。その程度の空腹感だった。
 吐き気はなくなっているし、寝汗によるべとべとした感じを除けば、まぁ通常の起床と大差ないのかもしれない。
 よくわからない夢の内容にも目を伏せるとして。
「それと、お母さんから伝言。今日はお店手伝わなくてもいいから、ゆっくりなさいだって」
「もう大丈夫だぞ? 頭も痛くないし、吐き気もないし」
「駄目。あんた、昔っから無理しすぎるところあるじゃない。たまには自分の体をいたわってやりなさいよね」
「そういうお前は、昔から心配しすぎで俺を振り回してきたけどな」
 目を閉じれば今も浮かぶ。
 俺が捕まえた蛇を、危険だからといって取り上げた後に、その蛇に追い掛け回されていたひなたの姿が。
 本当に申し訳ないが、あの時のお前は最高に笑えたぞ。
 パコォォォォン! と逆に気持ち良いくらいの快音が部屋に響く。
 何かが俺の頭に当たったらしい。見てみると、しゃもじだった。
 ひなたを見ると、わなわなと体を震わせ、その表情は鬼一歩手前といった様子だった。まさか俺の考えていることが読まれたとでもいうのだろうか。
「帰るっ!」
239過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/08/30(水) 23:49:59
 帰るって、ここはお前の家だぞ。
 思わずツッコミそうになってしまったが、寸でのところで堪える。今度はお盆チョップでも喰らいかねない。
「あ、ひなた」
「何よっ!?」
「心配してくれてありがとう」
「し、心配なんかするわけないでしょっ! お母さんが持ってけっていったから、仕方なく持ってきたんだから!」
「それでも、な」
「う、うん」
 歯切れが悪く、小さく頷く。
「ちゃんと、明日には治しなよ」
「あれ、やっぱ心配してくれてるの?」
「ち、違うっ! あんたがいないと店が大変なのっ!!」
 それだけ叫ぶように話し、部屋を出て行った。
「ふう」
 小さく息をつく。
 それにしても、あの夢は一体なんだったのだろう。
 昔から夢は見るが、あんな夢は見たことがなかった。
 夢なんて、もっと理不尽で身勝手で、自分の思うとおりに事が進むものなんじゃないのか。
 と、鼻にいい匂いが届く。発生源はテーブルの上に置かれた土鍋。
 蓋を開けてみると、おかゆが入っていた。そして良く見てみると、黄色いもので文字のようなものが。
 きっと溶き卵だ。沸騰によって崩れてしまった文字を、どうにか解読しようと試みる。
「早、く、治、せ、よ」
 思わず苦笑が漏れた。こんなことをやるやつ、一人くらいしかいない。
 なんだ、やっぱり心配してくれてたんだな。
240過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/08/30(水) 23:50:48
 夕方になり、このえさんの話を思い出す。
 あの時は吐き気を堪えることで精一杯だったが、確かにこういっていたはずだ。
『余裕があるときでいいから、個人的に話を聞きたい』
 そして、余裕があるときが今この時だった。
 体調は万全なのだが、今日は仕事を手伝わなくてもいいと断言されてしまったので、手伝うわけにはいかず、かといって皆が働いている中で居候である俺だけがテレビなんか見ているわけにもいかない。
 このえさんの勧めもあり、刑事に連絡を取って外で会うことになった。
 やはりというか、尋ねてきた刑事は稲村さんだった。
241過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/08/30(水) 23:51:33
 指定された、警察署のすぐ近くにある喫茶店。ぐるりと店内を見渡すと、すぐに稲村さんの姿を見つけた。
「稲村さん」
 呼びかけると、右から左へ一度、小さく手を振る。
 正面に座り、アイスコーヒーを注文すると、早速話は始まった。
「奥さんから、聞いてくれた?」
 奥さん。その言葉に、少しだけ戸惑う。このえさんのことだと気付くのに、少しだけ時間が掛かった。
「はい。個人的に話が聞きたいって、なんです?」
「そう構えなくていい。今回の事件は、君のお母さんとは無関係だと私は思っているからね」
「なんで?」
 尋ねてから、思い出した。人とは思えないほどの力で引き千切られた遺体。そんな人間離れした芸当、あの人に出来るわけはなかった。
 予想通りの答えを返してくる稲村さんに、疑問を覚えた。
「あの人に関係がないってことは、俺も無関係なんじゃないですか?」
「まぁ、そうなんだけどね。だから個人的に話をしたかったんだよ」
「だから、それが何でかがみえてこないですけど」
 少しだけ口を噤み、周囲を気にするように語りだした。
「あまり知られていないんだけど、今回の事件と非常に良く似ている事件が、昔にも起こったんだ」
 昨日、おっさんが言っていた。だがその詳細までは知らなかったらしく、結局曖昧なまま終わってしまった話だった。
「よく似ている、いや、違うな。まったく同じ事件とでも言っていいくらいに、似ているんだ」
「どんな、事件だったんですか?」
「最終的に、被害者の数は五。いや、六人。高校生二人と、大学生二人と、自営業の男性が一人、女性が一人。その内、男子大学生一人が自殺」
「自殺?」
「理由は不明。事件後の聞き込みも、彼が死ぬ理由に至るものはなかった。でも、おそらく事件と何らかの関わりがあったのだろうとされている」
 なるほど、それなら被害者と言ってもいいかもしれない。
「それで、今回の事件と似ているところっていうのは?」
 コーヒーを一口だけすすり、さらに声のトーンを落とす稲村さん。
242過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/08/30(水) 23:52:06
「まず、時期。一人目も、二人目も、微妙な時刻の違いはあるんだが、日付はまったく同じなんだよ」
「昔に起こった事件と?」
 こくり、と小さく頷く。
「そして場所。あと、職業、死因、死体の状況、被害者の名前。全てが、昔の事件をトレースしているんだ」
「被害者の名前まで?」
「ああ」
 名前以外が一緒なら、単なる模倣犯というだけで話が済むのだが、被害者の名前まで一緒だとは。
 そもそも、昔とまったく同じ名前が、今この現代に丁度存在しているなんて、殆ど奇跡に近い。
「さらに、名前だけじゃない。被害者同士の間柄も、まったく同じものだったんだ」
「間柄っていうと、友達同士とか、クラスメイトとか、そういうのですか?」
 煙草を大きく吹かし
「親友だったそうだ」
 そう、答える。
 親友。果たして、こんな偶然があるのだろうか。
 まったく同じ名前の親友同士の人間が、昔に起こった事件と同じように、同じ場所で、同じ日に発見される。
 完璧に、トレースするかのように。
「それで、少し気になって、その事件をもっと調べてみたんだ」
 喉がからからに渇いている。注文したコーヒーは、まだ届かない。
「昔の事件の被害者の名簿に、見覚えのある名前を見つけた」
「知り合いとか、ですか?」
 小さく首を横にふり、射抜くような眼差しで俺を貫く。
「詫槻このえ、詫槻ひなた、詫槻和也。そして、富山浩介」
「それ、本当、ですか?」
243過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/08/30(水) 23:52:54
 背筋が凍るように冷たい。
 先ほどの言葉を思い出す。
 高校生が二人。現在の被害者は、高校生二人だったはず。
 大学生二人。それは、ひなたと俺のことなのだろうか。
 自営業の男性と女性。きっと、おっさんとこのえさん。
 すると、自殺した男子大学生は、過去に当てはめれば、俺ということになる。
「さらに、事件を担当した刑事は、稲村信幸。私の名前と同じだ。もっと言えば、重要参考人であり、事件の犯人として捕まった人物は、富山由利音。昔の富山浩介の、母親だった」
「でも、こんな偶然って」
「ありえない、と言いたいんだよね?」
 力なく、頷いたんだろう。
 色々な情報が一度に放り込まれているような、あの時の感覚に似ている。脳の処理速度が追いつかず、複数の情報が混ざり合い、混沌としている。
「でも実際に、この偶然は起きている。そして、事件は始まっているんだよ」
 間違いなく、現実として。そうやって付け加えた。
「それでだ、富山君。君を呼んだのは、ある頼みがあるからなんだ」
「頼み?」

「私の手伝いを、してみないかい?」
244過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/08/30(水) 23:53:40
  -dream-

 もうどれくらいになるだろう、僕が水槽の中に閉じ込められて。
 最初は苦しかったけど、もう慣れてしまった。住めば都とはよく言ったもので、それなりに居心地はいい。
 でも、服を着たらいけないっていうのは恥ずかしい。白衣を着た大人の人が、僕を見ている。恥ずかしい。
 今日も大人の人たちは、難しそうな機械とにらめっこ。よく飽きないな、って思う。
 最初の内は大人の人たちを見ているだけで面白かったけど、そんなのすぐに飽きてしまった。
 おもちゃもないし、部屋の中にある小さな窓から外を見るくらいしか、暇を潰せる手段なんてなかった。
 窓の外に見える森。真っ暗で、どこまでも続いていそう。
 まだ昼のはずなのに、なんであの森はあんなに真っ暗なんだろう。そんなに木が多いのかな?
 今日も僕は、何もすることもなく、ただ外だけを見続ける。
 暇だなぁ。暇だなぁ。暇だなぁ。
 そもそも、なんで僕はこんなところに閉じ込められているんだろう。
 何回も考えるけど、結局答えなんて出てこない。だから、僕はこのことについて考えないようにしていた。
 考えたって、頭が痛くなるだけ。だったら考えなければいいんだ。
 でもそうすると、また暇になる。
 暇だなぁ。暇だなぁ。暇だなぁ。暇だなぁ。暇だなぁ。
 そこで、あることに気付いた。
 そうだよ、暇で暇で仕方ないんだったら、外に出ればいいんだ。
 この水槽のガラスを割って、外に出ればいいんだ。
 きっと大人の人たちは怒るけど、僕をこんなところに閉じ込めるのがいけないんだ。うん、そうしよう。
 いつの間にか大きくなっていた右手を、ガラスに打ち付けた。
 ぱりん。
 ガラスの、割れる音が聞こえた。


                 つづく(予定)
245Mr.名無しさん:2006/08/30(水) 23:56:25
いくらなんでも一気に投下し過ぎだな
246過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/08/31(木) 00:01:15
貼ってる途中で指摘があったように、マジ長すぎです。もう少し考えろよ俺・・・
ちょっと話が複雑になってきたんで、登場人物の名簿を書いておく
○は今回ので登場した人。●は登場しなかった人
ちなみに、正ヒロインは実はまだ登場してなかったり

○富山浩介
○詫槻ひなた
○詫槻このえ
○詫槻和也
●富山由利音
●大山輝明

長くて読む気出ねーよ! という人のために、今回のやつを数行でまとめて見ますわ
たぶん十分くらいでできると思われます
247過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/08/31(木) 00:10:45
夕立刻に降る雨は(一幕) 要約版

最初の事件が起きた後も、町に住む人たちは変わらず平和に暮らしていた。
事件から約一日、再び平和な町に新たな事件が起こる。
母親が容疑者に挙げられている浩介は、最初の事件の時に事情聴取を受けた警官、稲村に呼び出され、喫茶店へと赴く。
呼び出された浩介に稲村が放った言葉は、予想外の物だった
なんでも、現在起きている事件は、過去に起きた事件をほぼ完璧にトレースしたものであり、稲村はそれと関係があるのではないかと睨んでいるらしい。
そして、稲村は浩介に、自分の手伝いをしないかと申し出たのだった
自分自身が見た奇妙な夢に不安を感じつつ、浩介は稲村の申し出を受けるのだった(ここまで書いてないけど)

こんなとこ?
248Mr.名無しさん:2006/08/31(木) 00:26:18
長いしツンデレじゃないがおもしろいから許す
一つ言わせてもらうとすれば、もう少し単純な文章にできないか?回りくどすぎ
249Mr.名無しさん:2006/08/31(木) 00:36:18
まぁ味があっていいじゃない
それにツンデレの正ヒロインはまだ登場してないらしいし。
250Mr.名無しさん:2006/08/31(木) 02:41:10
>>246
俺はいいと思うぞー
こんな夜中にドキムネしながら読んでしまった
ageで文句言ってる奴なんざ気にするな
読みたくなければ読まなきゃいいんだから

書きたいように書けばいい
読みたい奴だけ読めばいい
それがこのスレのやり方だ
251Mr.名無しさん:2006/08/31(木) 03:36:45
すげー、GJ!

まぁ、ちぃと一遍にしすぎたと思うが、流れ的に問題ないよ。
252Mr.名無しさん:2006/08/31(木) 08:00:20
あれ?ツンデレキャラ出てきたような…
ツンデレってよく分からんorz
253Mr.名無しさん:2006/08/31(木) 10:03:49
>>252
俺もそう思った
長文だからって流し読みしたんじゃねw
254Mr.名無しさん:2006/08/31(木) 11:32:13
横溝ちっくな気味の悪さを感じた。これかなり好きかも知れん。GJ!


>>192 >>193
すまん&ありがとう
今、骨子から練り直してる
プライドを持って最後まで書き続けることにするよ
255Mr.名無しさん:2006/08/31(木) 19:58:25
独特の文体が好き。GJ!

>>252
きっともっとツンデレしたキャラが出てくるんだ!
256Mr.名無しさん:2006/09/01(金) 23:00:36
ほっしゅ
257Mr.名無しさん:2006/09/02(土) 23:15:15
保守
258Mr.名無しさん:2006/09/03(日) 13:30:00
Hosyu
259Mr.名無しさん:2006/09/04(月) 13:19:18
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260Mr.名無しさん:2006/09/05(火) 02:56:17
ほす
261『T&E』第四話:2006/09/05(火) 04:44:18
『どーする?このままじゃ帰れないしなぁ』
『もう遅いからみんな帰っちゃったんじゃないかな』
『俺みたいな駄馬はともかく灯ちゃんみたいないい子が傘泥棒なんてしないよねー』
『おー、どんどん雨強くなってくなぁー』


『T&E』
第四話『Rain days(2)』


空が暗い。私の心も、なんだかもやもやしている。これは何だろう。大事にしていた傘が無くなったから?先輩に捕まったから?それともただ単に雨のせい?
「やー、灯ちゃんとこんなふうに帰れるなんて俺は幸せだなぁ」
今、私の隣には先輩がいる。雨は私たちの差す傘に遮られ、私たちを包むように流れ落ちる。まるでヴェールのようだと思った。

「ほらほら、もっとこっち来ないと濡れちゃうよ」
すっと、腕が伸びて来て私の肩を軽く引き寄せた。私はそれに軽く抗った。
「ちょっと、触らないでください。引っ張らなくっても入りますから」
私だって濡れたくは無い。けれど先輩の思い通りになるのは癪だ。
雨がひどすぎて傘なしで帰るのは不可能だった。入れてくれるような友達も見当たらなかった。一緒に帰ろうという先輩が一人いた。ただし、下心付きで。
一つ傘の下。私の顔はやはり不機嫌に歪んでいるのだろうか。我ながらかわいげの無い女だと思う。

262『T&E』第四話:2006/09/05(火) 04:44:57
「先輩こそ、肩濡れてますよ」
「お、ほんとだ。のサイズじゃちょっときついかな・・・・・・」
「もう少し・・・・・・寄ってもいいですよ」
「ほんとにいいの?」
「私のせいで風邪ひかれても困りますから」

これぐらいはしょうがあるまい。入れてもらっているのはこっちだ。
傘が雨を弾く音と道のアスファルトに弾かれる音を聞いていた。

学校のある高台から、街の方へ抜ける。
私は始終黙っている。先輩は私を気にしながらいろいろと話しかけてくる。

「あーはは・・・これ見られたら、また誤解されちゃうよねぇ・・・・・・あの、もしかして怒ってる?」
住宅街に入ったあたりで先輩がおずおずと聞いてきた。今朝のことを言っているのだろう。
「・・・・・・あんなこと、言ってたんですね」
別に、怒ってやしないけれど。
「いや・・・・・・まぁ、あれは言葉のあやってやつでね・・・・・・」
やはり先輩は気まずそうに笑う。

263『T&E』第四話:2006/09/05(火) 04:46:01
雨の音だけが響く。
「灯ちゃん・・・・・・やっぱり、怒ってる?」
先輩がこちらを向いて言う。
「怒ってませんよ」
私はそっけなく返す。
「多少、呆れましたけど」
私にとってそんなことは大して問題じゃない。確かにその時は何を勝手なことをと思ったけど。
「私、そんなふうに人に好かれるような人間じゃないですから」
「・・・・・・俺のこと嫌い?」
「そういうことじゃなくって・・・・・・」

私は、あの井戸のイメージを思い浮かべていた。
「先輩、私といても楽しくないですよ。私、先輩を楽しませれるようなこと何も出来ませんし。私、人間として不良品なんですよ、きっと」
もしかしたら私はいらいらしていたのかもしれない。自分でも驚くような自棄の言葉が出た。

「それ、本心で言ってる?」
「・・・・・・別に、すいません」
私は何を口走ったのだろうか。先輩の声が急に恐く感じたのだ。
雨は相変わらず強く降りつける。アスファルトに当たった水滴が弾け、あたりが煙っている。

264『T&E』第四話:2006/09/05(火) 04:46:38
「俺ね・・・・・・」
先輩が、不意に語り出す。私を見つけたときのこと、新入生が学校に入ってきたあの春の日のこと、校舎の廊下で偶然すれ違った時のこと。
「はじめて見たとき、この子しかいないって思ったんだ」
「この子さえいれば俺はなんにでもなれるって」
「それこそ大統領でも、宇宙飛行士でも」

・・・・・・そんなこと言われても困る。私にはそんな力は無い。
一目ぼれだったという。私は、そんなに価値のある人間じゃないんです。偏屈で、人嫌いで。先輩の好意は少し嬉しいが、同時に、重い。

「・・・・・・そうだ、それと、灯ちゃんがなんだか寂しそうだったからさ」
「私が、ですか」
意外だった。そんなそぶりは絶対に人に見せたことなかった筈なのに。
「灯ちゃん、毎日図書室で本読んでるんだけど、その横顔がたまに寂しそうに見えたんだ」
寂しい、私は、寂しくなんて、でも確かに以前は。私は無意識の言葉を思い出す。深い深い井戸の底、流れ落ちる雨はそれを想像させるに十分だった。

―――連れ出してくれる?  広い世界を見せてくれる?
―――私は寂しくなんか無い  でも、世界が広がるならば、このままじゃ・・・・・・

「それで、一緒に居てあげたいなって思ったんだ」
先輩はそういうと照れくさそうに、下を向いて笑った。

265『T&E』第四話:2006/09/05(火) 04:47:15

先輩は、息を一息つく
「ごめん、こんな話されても迷惑だよな。あー、ほんっと何やってんだろうな、俺。そりゃ灯ちゃんにも嫌われるわ」




「寂しく、ないですよ」
「え」
ふと、口をついた言葉。ただ、自然に言葉が出ていった。
「先輩が、うるさくまとわりつくから、別に寂しくありませんでした」
私は、ここ二週間、私の生活に先輩が現れてからの事を思い出していた。

最初は、面倒くさいと思った。
それから、よく続くなと思った。
そのうち、別にいいかと思った。
なんとなく、慣れてしまった。
彼の好意を知って、うろたえた。
・・・・・・でも、不思議とイヤじゃなかった。

「だから、寂しいなんてことないです。勝手に人を寂しい子にしないで下さいよ」

266『T&E』第四話:2006/09/05(火) 04:47:51
「その、私、こんな性格だから、素直じゃありませんけど、別に先輩のこと嫌いじゃありませんし。馬鹿だなぁ、お調子ものだなぁってよく思いますけど・・・・・・」
「その、嫌だったら嫌だっていいますから・・・・・・」
・・・・・・不覚にも照れた。
「でも、確かに退屈はしてたんです。だから・・・・・・」

私達の横を水しぶきをあげながら車が通り過ぎていった。

「そっか、じゃあ、別にそこまで嫌われてた訳じゃなかったんだ」
「・・・・・・めんどくさい人とは思ってます。けど、別に嫌いじゃないです」
「そりゃ厳しい」
先輩がはははと笑う。
「先輩の気持ちは分かりました」
「じゃ、俺の彼女になってくれる?」
「ば、バカ言わないでください・・・・・・それとこれとは別の話です」
先輩のストレートな物言いに少し焦ってしまう。
「でも・・・・・・全く勝ち目が無いってことはないです」

「先輩」
なに?と振り向く顔。

267『T&E』第四話:2006/09/05(火) 04:49:11
「今度、遊びに連れてってください。先輩の見てるもの、私にも見せてください。
私、本物じゃなきゃ嫌なんです。知識も、経験も、友情も、愛情も。
中途半端なものなんか最初っからいりません。
先輩が、本気で私のこと、好きだって言うならその本気見せてください」

まっすぐと、先輩の目を見て言った。周りは雨、傘の下には二人きり

だって仕方ないじゃない。他人なんて煩わしいだけだけれど、他人がずかずかと入ってくるのは嫌だけれど、そんなにまっすぐ来られたらこっちだって困ってしまう。

これはテストでもある。先輩に対する、私に対する。
『恋愛』辞書で引いてみると「男女間の恋い慕う愛情。愛する異性と一体になろうとする愛情。こい」とある。
テレビのドラマなんかで見る『恋愛至上主義』にはいい加減飽き飽きだけれども、そんなに楽しいものならば体験してみたいと思う。
借り物の、他人の感想や、本なんかで見るのじゃもうだめだ。

私に、本当の恋を教えてください。貴方にそれが出来ますか?
それができた時、私は貴方のものになりましょう。



268『T&E』第四話:2006/09/05(火) 04:49:50



「先輩・・・・・・」
「な、何」
「傘は、ちゃんと返してくださいね?」
あれは、中学から使っているお気に入りなのだ。

この日から私と先輩の戦いが始まる。私にとっては私自身との戦いでもある。
私は変われるのだろうか。
普通のものが馬鹿らしく思えて、毎日退屈だった私。
超然とした風を気取って何かから逃げていた私。
家族の前でしか、自分をさらけ出せない臆病な私。

それらを、果たして打破しえるのか

鍵は、このしまりの無い顔で笑う能天気極まりない、先輩が握っているのだ


269Mr.名無しさん:2006/09/05(火) 12:40:16
そんなに楽しいものならば俺も体験してみたいぜ・・

と、萌えるためのスレなのにいらんところで鬱('A`)
270Mr.名無しさん:2006/09/05(火) 18:16:09
>>269
それが毒男クォリティー
271Mr.名無しさん:2006/09/05(火) 20:00:12
>>269
俺も鬱だ。
一人じゃないからガンバレ。
272Mr.名無しさん:2006/09/06(水) 16:15:20
ほしゅ
273Mr.名無しさん:2006/09/07(木) 04:16:30
保守
274Mr.名無しさん:2006/09/07(木) 21:14:23

ツーンデレー

5世紀頃、アジアの北部で、白人系遊牧民が創始した兵法。それがツーンデレー
である。その闘法は圧倒的な戦力を持つモンゴル系騎馬民族に対して、硬軟取り混ぜた
戦略を臨機応変に行うことにあった。ある時は、死に物狂いで戦ったと思うと、次の日には
にこやかな顔で、和睦を勧めてくるなど現在で言う高等心理戦術であった。彼らの見事な戦いに
感服したモンゴル人はその後、モンゴル帝国を築いた時に、都会のすました感じのくせに仲
が良くなると態度が軟化し、人前で平気で腕を組んでくる女性のことを「都腕麗(つうでれい)」
と呼ぶようになった。なお、現在でも彼らの住まう地が、季節によって、寒い氷原や温かい平原
に変わるツンドラというのはもちろんこの名残である。

民明書房刊「偉大なるかな真(まこと)の亜細亜」より抜粋
275Mr.名無しさん:2006/09/07(木) 21:22:29
男塾wwwwwww
276Mr.名無しさん:2006/09/08(金) 00:24:29
hosyu
277Mr.名無しさん:2006/09/08(金) 22:59:23
人いないな……
みんなVIPに帰ったか?
278Mr.名無しさん:2006/09/08(金) 23:45:07
何をおっしゃります
正座して続きを待っておるのですよ
279Mr.名無しさん:2006/09/09(土) 00:26:02
たぶん書き手のことだよ
280過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/09/09(土) 11:46:26
過疎っているみたいなのでネタ落っことしていきます
前回よりもさらに大量書き溜めてあるんだけど、長すぎという意見が多発したので今回は一つの話を二回に分けてやりますんで

んでは、 >>244の続き
281過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/09/09(土) 11:48:02
  夕立刻に降る雨は  二幕−その1

-fact-

 手伝いをしてみないかといわれても、何をすればいいのかが全然わからない。
「何、手伝いといってもそんな大層なものじゃない。前の事件をトレースした模倣犯的なものだとしたら、きっと犯人は前の事件と同様に事を進めるはずだからね」
 そう言って、煙草を肺一杯に吹かす。
「明日の午後八時ごろに詫槻ひなた、三日後の午前二時ごろに詫槻和也、五日後の午前五時半ごろに詫槻このえ。彼と彼女らの動向に注意をしてもらいたいんだ」
 丁度いい具合に同居をしているため、君が適任だよ。と小さく付け加えた。
「昔の事件だと、それくらいの時間に殺されているということですか?」
「まぁ、そうだね。それと、十日後の午前五時半ごろに、詫槻このえと同時に富山浩介の遺体も発見されている。一応、気をつけて」
 といっても、ただの偶然としか思えない。昔のまま、同じように、同じ名前の人間が殺された。だから、同じ名前の人物も殺されるかもしれないから気をつけろ。
 そんなことを言われても、納得できないというか、無茶苦茶だ。ただの偶然、とはき捨ててしまうのが当然だと思う。
 だが、何故だろうか。そうやって、はき捨てることが出来ない自分がいるのだ。
「あの、遺体の発見現場とか、そういうのはわかりますか?」
「あぁ、ちょっと待ってくれな」
 言いながら手帳に視線を落とす。ぱらぱらと何枚かページを捲り、あからさまに『おっ』というような表情を浮かべた。
282過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/09/09(土) 11:49:11
「詫槻ひなたは、白鶴川の河原で見つかっている。これも人間がやったと思えないような怪力で、原型を留めないまでに破壊されてしまっている。詫槻和也は、八重山の森の中。彼女も詫槻和也と同様だ。
詫槻このえと、富山浩介。この二人は、白鶴川の上流にある湖の湖畔。何故か、この二人だけは心臓を刃物で刺された状態で発見されている」
 と、言い終わったところで疑問を感じる。
「あの、昔の富山浩介は自殺とされていたんですよね? なんで、自殺ってわかったんですか?」
「彼の部屋から遺書が見つかったんだよ。詳しい資料は、もう残されていなかったから、遺書の内容も分らず仕舞い。どうやら彼の遺族に返却したらしいね」
「そう、ですか」
 しかし、なんでまた自殺なんか。
 その辺も尋ねてみたのだが、当時の遺書にその理由が記されていたという以外には分っていることはないらしい。


 稲村さんと別れ、そのまま市立図書館へ足を運んだ。
 こんな田舎で起こった事件だ、この地方の新聞を捜していけば、もしかしたら少しくらいは、今知っている以上の情報が手に入るかもしれない。
 久しぶりに入った図書館は、冷房の所為かとても冷たい。地元の受験生が、今が勝負だといわんばかりにペンを走らせている。
 勉強の邪魔をするのも申し訳ないので、彼らから少し離れた場所に自分の荷物を置く。この時期の日向は、やはり人気が薄い。
 図書館をざっと見渡し、目当ての物を発見すると、とりあえず持てるだけ抱えてテーブルの上に置く。
「さってと、頑張りますかね」
 小さく呟き、一番古い新聞から探してゆく。
283過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/09/09(土) 11:50:08
 こんなことなら稲村さんから詳しい年度を聞いておけばよかったと思ったが、後悔先に立たずだ。
 流すようにページを捲り続け、一冊目が終わろうというところ
「あれ、富山じゃないか」
 俺の名を呼ぶ声が聞こえた。顔を上げると、テーブルの向かい側にトートバッグを下げたテルが立っている。
「よう、テル。お勉強か?」
「ま、そんなところだよ。そっちはなんで図書館に?」
 珍しいこともあるもんだ。とでも言いたげである。まぁ、実際珍しいのだが。
「ちょっとな、調べ物だ」
「調べ物? うわ、凄い量だね」
 新聞を年度ごとに纏めた分厚い本を見て顔をゆがめる。
「そりゃな。調べごとの詳細がわからないから、総当りで調べないといけないんだよ」
「なるほどなぁ。僕も手伝おうか?」
「いや、いいよ。お前はがり勉らしくおべんきょーしてなさい」
「がり勉っていうなっ!!」
 じろり。そんな擬音が良く合うであろう視線を図書室中から浴びる。
「ご、ごめんなさい」
 ペコリと頭を下げて、そのまま椅子に座るテル。
「それで、調べ物って何を調べてるの?」
 先ほどの反省だろうか、声を潜めて尋ねてくる。
 別に隠す必要もないだろう。
「昔にな、今みたいな事件があったんだと。それで調べてるとこ」
「なんでまた。もしかして、自分が事件の真相を暴いてみせるなんてこと考えてるんじゃないよね」
「ただ単に、少し気になっただけだって」
 事件の真相云々というのまで自分自身で突き止めようとは思わない。
284過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/09/09(土) 11:51:05
 ただ、少し気になるだけだ。稲村さんが言っていたことが本当のことなのか。そして本当なら、もしかしたら自分自身で稲村さん以上のことを知ることができないか。
「それで、いつの事件かわからないから手当たり次第に探してるってことか」
「ま、そういうことだ」
 パラパラとページを捲っていく。めぼしい記事がないまま、一冊目が終了しようかというところ。
「ん?」
 思わず手を止め、その記事を読む。
「見つけた?」
「いや、そうじゃなくて、別の記事だ」
 殺人事件云々ではなくて、内容はもっと別の物だった。
「どんな記事?」
「八重山に国立研究所なんかあったのか。それが引き払われた時の記事」
「国立研究所? いつの話?」
 新聞の上の日付を見る。今の西暦と照らし合わせると、およそ七十年前の記事であることが分った。
「随分昔だね。きっと、もう建物も残ってないんじゃないかな」
「ま、そりゃそうだよな」
 何故自分がこんな記事に目を留めたのか、それがいまいち把握できないでいた。調べている内容とはまったく別の物なのに、何故だろうか。
 しかし、その疑問はすぐに解決する。
 他の記事、どうでもいいようなものばっかだしな。その中でちょっと珍しいのがあったから、気になったんだろう。
285過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/09/09(土) 11:51:44
 結局、昔の事件に関する記事は見つからなかった。
 それほどまでに昔の話なのか、それとも表沙汰にされることなく終わったのか。おそらく、前者だと思うが。
 図書館の前でテルと別れ、一旦家に戻ることにする。
「にしても、スゲェ蝉だな」
 夏の代名詞ともいえるこの雑音は、いまや日常の中に上手く溶け込んでいる。蝉と意識して聞かない限り、別に五月蝿いとも思わない。
 と、携帯電話がズボンのポケットの中で暴れだす。マナーにしたまま放置したままだった。
「へい、もしもし」
『あー、こうちゃん?』
「あぁ、ひなたか。どうした」
 俺のことをこうちゃんと呼ぶ人間は二人、ひなたとこのえさん。そして、落ち着きのないやかましい声は、ひなたであることに間違いはないだろう。
『今さ、どこにいる?』
「今? 市立図書館から五分くらいの場所だけど」
『あ、じゃあさ、帰るついでにお使い頼まれてくれる? どーせもう体も大丈夫なんでしょ?』
 そりゃ、大丈夫じゃなければ外に出歩くなんてことはしない。あちらもそれを知っての質問というか、確認だったのだろう。
「はいよ。あぁでも、少し遅くなるかも。すぐにいるものか?」
『んー、別に明日でいいようなものばっかだから。食材頼みたいんだけど、今日はなんとかなるから大丈夫だよ』
「りょーかい。んじゃ、何かってこればいいんだ?」
『えーとね、鶏肉と、ジャガイモと、ナスと、玉ねぎとー』
 ひなたの声を頭の中にインプットしてゆく。そして最後に
『それとレシート持ってこないとあんたの自腹だからね。忘れないように』
286過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/09/09(土) 11:53:09
 レシートだけは忘れないようにしよう。
『あ、それとホイップクリームと苺。これも忘れないようにね』
「ホイップクリームと苺? そんなの何に使うんだよ」
『え、えーとね、し、新メニューにケーキでも加えようかって話になったのよ。それの材料。とりあえず試作品を作るから、スーパーで売ってるので構わないからね』
 言葉がどもっているのは何故だろうか。
「はーいよ。他にはないよな?」
 オッケーです。その声を頭の中で確認する。
「ほんじゃ、またな」
 電話を切り、鞄からルーズリーフを取り出すと、お使いの内容を書き込んでゆく。
 鞄の中にルーズリーフをしまい、別のルーズリーフを取り出す。稲村さんから聞いたことの大筋をメモした紙だ。
「さてと、現場百回だな」
 まだ起きていない事件だが、その候補地をしっかりと把握しておこう。
287過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/09/09(土) 11:54:01
 夕焼けの河原は、どこか寂しげだった。
 遠くに沈みかける太陽と、柔らかな音を立てて流れる清流。ちゃぽん、と魚の跳ねる音。
「くぅぅ〜」
 一度、大きく伸び。肺一杯に川沿いの湿った空気を送り込む。
 手元のルーズリーフに視線を落とす。
 その昔、当時の詫槻ひなたの遺体が発見された場所は、この場所に相違いない。
 年月という流れは、当時の悲惨な面影を残すこともなく失わせていた。
 そんな事件の存在も知らず、面白そうに駆け回る数人の子供。
 平和。
 その二文字がしっくりくる。そんな夕暮れ時だった。
 本当にこんな平和な場所で、明日に、殺しても殺しても死なないようなあのひなたが死ぬというのか。
 手足を引き千切られ、五臓六腑をはみ出して、そんな悲惨で猟奇的な死に方をするのだろうか。
 ふと、気付く。
 ただの偶然。そんな考えを持っていたはずなのに、いつの間にかその偶然が自分の中で必然に移り変わろうとしている。
 ふう、と苦笑ともため息とも取れるような、そんな苦笑を、今俺はしたんだろう。
 ただの、偶然だ。そう頭に言い聞かせて。
 俺は、次なる場所へ歩みを進めた。
288過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/09/09(土) 11:54:36
 八重山に到着した頃には、夕日も見えなくなっていた。
 西側の空がまだほんのりと茜色に染まり、反対に東側の空は少しずつ闇を含み始めていた。
 そのグラデーションを横断するように、一本の飛行機雲。何気なく、それを見上げる。
 八重山の登山道。頂上は、白鶴川の大本になる白鶴湖がある。
 そして昔の詫槻和也は、この登山道の中腹辺りの草むらで発見された。やはり、他の遺体と同様に、残忍な殺され方で。
 段々と暗闇が支配してゆく世界は、少しだけ怖い。
289過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/09/09(土) 11:55:36
 八重山の頂上、白鶴湖に到着する。
 湖というほども大きくはないが、池というほども小さくはない。そんな中途半端な印象を受ける場所だ。
 小さい頃に何度も足を運び、友達と駆け回った場所は、今も変わらずそのまま残されていた。
 うっすらと記憶に残る、湖の中央にぽっかりと浮かぶ小さな島。実際にあそこまで行った事はないが、聞いた話では中央部だけが陥没し、その中の様子は湖畔から見ることができないらしい。
 切り立った崖の上。ここで、昔の詫槻このえの遺体が発見された。ただし、刃物で、まだ人としての形を保ったままの死だったらしい。
 そして、昔の富山浩介の遺体は、崖の下で見つかった。
 柵から身を乗り出し、下を見下ろす。小さな波が崖に押し寄せ、微かに音を鳴らす。
 空にはもう、陽の明かりは残されていなかった。
 地上を照らす明かりは、僅かな星の光。そして、三日月。
 もう一度、柵から身を乗り出して下を見つめる。
 昔の富山浩介は、一体どんな気持ちでこの下に落ちて行ったのだろう。
 自殺した理由は知らない。しかし、自殺までしてしまうということは、よほど絶望していたのだろう。
 苦しかっただろう。悲しかっただろう。辛かっただろう。
 名前が同じという共通点は、必要以上にその人物の辛さとか、悲しさを考える要因になっていた。
 ふと、自分もここから飛び降りてしまいたいという衝動に駆られる。
 押し寄せる、言い知れぬ不安。これを断ち切ることができるなら、どんなに楽だろうか。
 知らず知らずの内に、柵に足をかけていた。
「あ、あのっ!」
 声が聞こえた。本来は小さい声を無理矢理大きくしたような。声の主は、きっと大声を出しなれていないのだろう。
 柵に乗せた足を地面に下ろし、振り返る。
290過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/09/09(土) 11:56:38
「あ、危ないですよ。落ちたら、痛いです」
 夜の暗さになれていない目は、その人物のシルエットしか捕らえることが出来なかった。
 声からして、女性であることに間違いはない。風に靡く長髪と、平均的とも言える身長。
 その姿が、どこか昔のあの人と被る。
 辛いことなんて何一つなかったあの頃。両親がいて、友達がいて。そして、楽しいと思える毎日があって。
「あの、どうか、しましたか?」
 見る見る内に小さくなってしまう彼女の声。
「あぁ、ごめん。ちょっと、考え事」
「考え事、ですか」
「うん、そう」
 会話が途切れ、どちらからともなく空を見上げた。
 街から少し離れた山頂。街からの街灯など届くわけもなく、そこはありのままの星空を映し出していた。
「辛いことがあったら、誰かに話すといいです」
「え?」
「何か辛いこと、あったんですか?」
 その声は、柔らかかった。
「別に、そういうわけでもないよ」
「そう、ですか」
「うん」
 そして、また会話が途切れた。
 小さくため息をつき、再び空に視線を上げる。
「あの、貴方の、お名前は?」
 緊張しているような、そんな声音。
291過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/09/09(土) 11:57:45
「俺の?」
 こくん。シルエットが、僅かに頷くような動作を見せた。
「富山、浩介」
「富山、浩介君」
 暗闇の中、相手がどのような表情を浮かべたのかは分らない。
 だけど、きっと笑ったんだと思う。
「貴方の名前は?」
「私ですか?」
 小さく頷く。この暗闇の中、きっとその様子を確認なんて出来なかっただろう。
「私は、富山唯と言います」
「富山、唯?」
 何か聞き覚えがあるような。
 ていうか、もしかして。
「唯姉ぇ?」
 もう顔すらも思い出せない昔の友達のあだ名を口にしたような、そんな懐かしさ。
「やっぱり、浩介君? ご無沙汰してました、元気ですか?」
 そうだ、四年前に最後に会ったときも、確かこんな感じだった。
 優しい声と、どこか浮ついた敬語。
 唯姉ぇは、俺の従姉妹だった。

  つづく
292過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/09/09(土) 11:59:58
ところどころ変な文章があるのは見逃してくれたら嬉しいなーなんて思ったり
二幕−その2は次に過疎っぽくなった時に落っことしていきます
293Mr.名無しさん:2006/09/09(土) 13:04:12
なんか知らんが、今回の話を読むときはみょーに緊張してしまうな
内容が内容だからか
とにかく続き期待
294Mr.名無しさん:2006/09/10(日) 14:33:58
http://orere.jugem.jp/
伝説のスレ「はっきり言って、ガクト気持ち悪いです」の作者のHP
現在「俺がドラクエ3の主人公だったら」連載中
295Mr.名無しさん:2006/09/11(月) 18:22:03
保守
296Mr.名無しさん:2006/09/12(火) 19:57:34
ツンデレが足りなくて死にそうだ!
職人さんの投下に期待しつつ保守!
297Mr.名無しさん:2006/09/12(火) 20:30:38
「香奈子は……」
「「お前の最愛の人」以外に生きていく道がない」
「あいつ…純粋な社会不適合者だしなぁ
あは、あはは…」
「あたしは…その気になればなんでもできる
だから、贅沢いってられない」
「さようなら…さようなら大介
お前と知り合ってもう10年だよ…
嬉しくって楽しくって…哀しかったよ」

いいなーショコラいいなー
お前らならわかるだろこの良さ
298Mr.名無しさん:2006/09/12(火) 22:36:46
>>297
ここはお前の日記帳ではない
299Mr.名無しさん:2006/09/14(木) 00:50:49
ほしゅ
300Mr.名無しさん:2006/09/15(金) 00:16:50
age
301Mr.名無しさん:2006/09/16(土) 09:49:10
保守ておく
302Mr.名無しさん:2006/09/17(日) 05:43:05
補習
303Mr.名無しさん:2006/09/17(日) 12:13:54
そして予習も忘れないでね
304Mr.名無しさん:2006/09/18(月) 17:55:14
ほしゅ
305Mr.名無しさん:2006/09/19(火) 08:05:46
保守!ツンデレの投下求む!
306Mr.名無しさん:2006/09/19(火) 12:29:26
age
307Mr.名無しさん:2006/09/19(火) 21:14:54
ageないでね。
308Mr.名無しさん:2006/09/20(水) 16:39:03
ほしゅ
309Mr.名無しさん:2006/09/21(木) 00:04:16
オッス
310Mr.名無しさん:2006/09/21(木) 21:03:01
おら
311Mr.名無しさん:2006/09/22(金) 00:57:41
筑前守大田原権ノ丞満春である
312Mr.名無しさん:2006/09/23(土) 01:27:29
いっちょやってみっか!!
313Mr.名無しさん:2006/09/23(土) 01:36:21
カカロッ
314Mr.名無しさん:2006/09/24(日) 15:21:54
ほs
315Mr.名無しさん:2006/09/24(日) 15:58:13
いつもより少し早いけど投下ラッシュでわかりにくさもあるようなので
このスレまとめ

【連載中の作品】
過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI氏の作品
夕立刻に降る雨は
序幕
>24 >25 >26 >27 >28 >29 >30 >31 >32 >33
一幕
>223 >224 >225 >226 >227 >228 >230 >231 >232 >233
>234 >235 >236 >237 >238 >239 >240 >241 >242 >243 >244
登場人物名簿 >246
一幕要約 >247
二幕−その1
>281 >282 >283 >284 >285 >286 >287 >288 >289 >290 >291

『T&E』
第一話「二人の出会いは・・・」
>105 >106 >107 >108 >109
第二話「チキン・ヘッド」
>127 >128 >129 >130 >131
第三話『Rain days(1)』
>176 >177 >178 >179 >180 >181 >182 >183
第四話『Rain days(2)』
>261 >262 >263 >264 >265 >266 >267 >268
316Mr.名無しさん:2006/09/24(日) 15:59:34
【連載中の作品】続き
理恵のカタチ、祐樹のカタチ(仮) 作者:◆D0jSd07HNs
第一話
>136 >137 >138 >139 >140
キャラまとめ>155
第二話
>156 >157 >158 >159 >160
第三話
>194 >195 >196 >197 >198

「クラスメイト」
>150
第一話 【邂逅】
>161 >162 >163 >164 >168 >169

七誌さんの作品1
>55

七誌さん(60氏)の作品2
ボトム
第一話
>60 >64 >65 >69 >90 >91
317Mr.名無しさん:2006/09/24(日) 16:01:13
【連載中の作品】さらに続き
七誌さんの作品3
守護霊のいる生活(仮)
-1-
>70 >71 >72 >73 >74 >75 >76(>93)
>94 >95 >96 >97 >98 >99(>101)

七誌さんの作品4
>205 >206 >207 >208 >209 >210 >211 >212 >214 >215
>216 >217 >218

【応援絵】
>17

このスレではまだ完結した話はなかったよな?
んじゃ間違いあったら(ry
318Mr.名無しさん:2006/09/24(日) 16:16:23
まとめさん乙。
319Mr.名無しさん:2006/09/24(日) 16:20:59
あげ
320Mr.名無しさん:2006/09/24(日) 17:48:15
>315-317
な、なによ、まとめてもらったって別に嬉しくなんかないんだからね!
321Mr.名無しさん:2006/09/24(日) 18:51:30
うぉぉぉマトメ乙!
322Mr.名無しさん:2006/09/24(日) 20:22:27
お、お疲れさまなんて言わないからね!



ご、ご苦労さま.........ふん!
323Mr.名無しさん:2006/09/24(日) 22:33:41
キーンコーンカーンコーン

昼休憩を告げるベルがなり、学校中が活気付いてくる
俺は空腹を満たすために、鞄から弁当を取り出した
いつものハンバーガーセット
子供の頃から近所にある、馴染みの店の商品だ
「いただきます」
いつもの様に手を合わせてボソリと呟き、ガサガサと袋を開ける
そしてハンバーガーを取り出して包みを開け、大きく口を開けた
「美味しそうね、一口ちょうだい」
急に横から声がして、次いで俺の手からハンバーガーが消える
突然の出来事に驚きながらも、ハンバーガーが消えた方向に目をやる
すると、立ったまま俺のハンバーガーを頬張る女子が目に入る
「へー、結構美味しいじゃない。ジャンクフードも捨てたものじゃないわね」
喋りながら食を進める器用な彼女を呆然と眺める
「ま、たまにはこんな昼食もいいわね」
そう言いながら、袋からしなびたポテトを取り出した
「揚げたてじゃないポテトなんて初めて食べるわね」
全く勢いを衰えさせず、次々と俺のポテトを口に運ぶ
そしてあっという間に俺の昼食は無くなった
「・・・」
「ふん、後味は最悪ね」
袋から炭酸の抜けかけたコーラを出し、一気に飲み干す
そしてカラになったカップを袋に入れると、ハンバーガーの包みやポテトのカップも一緒にし、縛ってゴミ箱へ捨てた
こうして、俺の昼食はこの世から姿を消した
324Mr.名無しさん:2006/09/24(日) 22:34:18
「・・・」
俺は無言のまま、突然現れて俺の食料を平らげたブラックホールの女を睨んだ
「・・・あ、ごめんね、全部食べちゃった」
カラカラと笑いながら、自分の席へ戻っていく
あまりの出来事と彼女の態度に、俺は何も言わずに机に突っ伏した
「・・・腹、減った・・・」
そう呟いて、俺は窓の外を見る
そこには、芝生の上で円になって楽しそうに弁当箱をつつく、女子の一団の姿があった
羨ましい・・・
軽く涙目になりながら鬱々としていると、ふいに後頭部に殺気を感じた
325Mr.名無しさん:2006/09/24(日) 22:34:51
俺が驚いて顔を上げ振り返ると、先ほど俺の昼食を消滅させた女が立っていた
しかし先ほどとは違い、何故か視線を合わせようとしない
「・・・なんだよ?」
ビビりながらも、勇気を振り絞って声を出す
すかさず目の前に大きな箱を出され、少しビビって身を引く
なんだこれは、弁当箱か?
「アンタの食べちゃったから、あげる」
彼女は俺に弁当箱を渡すと、すぐに俺に背中を向けた
「あんな脂っこいもの食べたら、もう食べれないわよ。責任もってアンタが食べなさい」
それだけ言うと、彼女は再び自分の席に戻った
「・・・なんなんだよ」
俺はそう毒づきながらも、久しぶりのまともな弁当だという事に期待で胸が膨らんだ
「・・・いただきます」
326Mr.名無しさん:2006/09/25(月) 22:20:30
もうちょっと続きが欲しいぞ
327Mr.名無しさん:2006/09/25(月) 22:29:40
328Mr.名無しさん:2006/09/25(月) 22:34:20
なんだ天災か
329Mr.名無しさん:2006/09/25(月) 22:53:09
いくら過疎ってるからって転載すんなよ
330過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/09/26(火) 00:07:22
>>315-317
まとめ乙です

過疎と判断したので二幕−その2を落っことします
ちょっと文章滅茶苦茶感もあるけど、その辺は勘弁してくれ・・・
じゃ、次のスレから落っことしていきます
331過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/09/26(火) 00:08:20
  夕立刻に降る雨は 二幕ーその2

「久しぶりねー、唯ちゃん。元気だった?」
 とりあえず、詫槻の家に唯姉ぇをつれてきて、唯姉ぇの姿を見た瞬間にこのえさんは店の閉店を告げた。
「お久しぶりです。あ、和也さんも、ひなたさんも、元気でしたか?」
「おう」
「うん、お姉ちゃんも元気そうですね」
 落ち着いた様子を見せる三人に比べ、俺はきっと酷く戸惑っているんだろう。
「つーか、なんで三人ともそんな落ち着いてるんだよ?」
 四年前、忽然と姿を消した唯姉ぇ。それが突如帰ってきたのだから、驚かないほうがおかしい。
 おまけに、久々の再会からずっと、会話が余所余所しい。元々詫槻の家の人たちには敬語を使っていた唯姉ぇだったが、俺に対しては敬語なんて使っていなかったはずだ。
 どうも釈然としない。
「私達は唯ちゃんが帰ってくること、知っていたから」
「はぁ!?」
「昨日の夜、電話を入れたんです」
「なんで、俺に言おうとか思わなかったんだよ」
 なんだか、凄い勢いで置き去りにされている気分だ。
「どうせだからちょっと驚かそうかなーって話になったのよ。ていうかあんた、ホイップクリームと苺は?」
「うぇ、いや、まだ買って来てねぇ」
332過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/09/26(火) 00:10:02
 買い物に行く前に唯姉ぇと遭遇してしまったんだ。買いに行く時間なんてなかった。
「あんたってやつは。居候なんだから、せめてお使いくらいちゃんと行きなさいよね。ほら、今から行く!」
「ま、マジか?」
「マジもマジの大マジよ。ほらほら、さっさと行きなさい!」
 確かにひなたの言い分も一理あるが、なんだか釈然としない。
 ていうか、一応この中で唯姉ぇと血縁関係にあるのは俺だけのはずなのに、何故俺だけにその帰郷を教えてくれないんだ。
 驚かせようとか余計なことを考えないで欲しい。
「わっかりましたよ、行ってこればいいんだろ」
 しぶしぶ立ち上がり、財布をポケットに突っ込んで玄関に向かうと、後ろから慌てたような足音が聞こえた。
 振り返ると、唯姉ぇがそこに立っていた。
「私も行きます。どうせ暇ですし、浩介君とも色々お話したいですから」
 そう言って、大げさに思えるくらいな笑みを浮かべた。
333過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/09/26(火) 00:10:50
 流されるように唯姉ぇの申し出を受けたはいいが、話すことが見つからず、無言のまま十分ほどの道のりを歩く。
 昔ならスルスルと話題なんて出てきたのに、身にまとう雰囲気が根源から変わってしまっている唯姉ぇは、本当に同一人物なのかという疑惑まで浮かんでしまう。
 いつもの仕入先から、あらかじめ頼んでおいたらしい食材を貰い、そのままスーパーに向かう。
「凄い、ですね」
 唐突に口を開く唯姉ぇ。何が凄いのか、答えを出しあぐねていると、助け舟でも出すように
「仕入れとか、手馴れていました」
 そう、付け加えた。
「あぁ、そりゃ居候の身分だから。店の雑用は出来る限り引き受けるようにしてるし」
「頑張ってるんですね」
 会話が止まりそうになるが、折角生まれた会話なのだ。これを足がかりに、ずっと気になっていたことを聞く。
「唯姉ぇは、なんでいきなりいなくなったの?」
 四年前の丁度今頃。
 本当に、唐突に、唯姉ぇは忽然と姿を消した。
 今は遠くに引っ越してしまった唯姉ぇの家族も、なんでいなくなってしまったのかが分らずにいたらしい。
 警察に捜索願まで出したのにも関わらず、結局見つからないまま、今日いきなり姿を現した。
「少しだけ、一人旅に」
「一人旅?」
 四年という期間は決して少しとは言えないような気がするが、その辺は突っ込まないでおこう。
「ええ、日本全国をぶらぶらと。結構面白かったですよ」
「面白そうだけど、でも何の連絡も無しってのは」
「そう、ですよね。連絡なんかしたらすぐに連れ戻されるんじゃないかって思って。高校もすっぽかして行ってしまいましたし」
 こんなことをする人には見えないのだが、どうしてまた一人旅なんて思い立ったのだろうか。
 尋ねてみたい衝動にも駆られたが、どうせ尋ねたところではぐらかされて終わりなんだろう。
 小さくため息をつき、ようやく見つけた苺を買い物籠の中に放り込む。
334過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/09/26(火) 00:11:41
「もしかして、心配してくれましたか?」
 もう一度ため息をつく。大きく息を吸い込んで
「当たり前だっ!!」
 叫ぶように、答える。
 きっとスーパーの中にいた人間達は、一斉に声の根源に振り返ったのだろう。
「せめて俺には連絡くらいよこせっての! 普通の人間なら、いきなり失踪したら心配するに決まってるだろっ!!」
 長い髪の毛を引っ張ってやると、痛みに顔をゆがめる。
「い、いたい、いたいです」
「俺の心の痛みに比べたら、唯姉ぇの今の痛みなんてゴミクズみたいなもんだっつーのっ!」
 腕にこめる力をさらに強める。
「ご、ごめんなさい、ごめんなさい」
 必死になって謝る姿は、俺の記憶の中にある唯姉ぇの姿と同じだった。
 手を離してやると、潤んだ瞳で俺を見上げてくる。
「うー」
 痛さに顔をゆがめている。
「な、何するのよっ!?」
「お前の所為だろがお前のっ!!」
 ようやく、浮ついた敬語が消え去った。
 まったく、無理して大人っぽく見せようとしていつも失敗してたくせに、今度は敬語っすか。マジ合ってねぇっての。
「な、何で私の所為なのよっ!?」
「唯姉ぇがいきなりいなくならなかったら、俺はこんな暴挙になんて出てなかった」
「うっ」
 どうやら、勝ったらしい。
「ふー、ようやく昔の姿に戻ったな。詫槻の家の人たちに敬語は今までもそうだったけど、俺には敬語なんて使ってなかったろ? なんで敬語なんだよ?」
「そ、それは年上の包容力って言うのを見せてあげようかと」
「無理して化粧したら大失敗したやつみたいな結果になってたぞ」
「そ、そこまで酷かった?」
 力強く頷いてやる。
335過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/09/26(火) 00:12:29
「そっか、ちょっとショック」
「勝手にショックしてろ」
 お菓子作りのコーナーに並べられていたホイップクリームの素を籠に放り込み、レジに並ぶ。
「日本全国旅してたって、具体的にはどこに行ってたんだ?」
「え? えーと、主に東北。津軽三味線弾かせてもらったんだよー、凄いでしょ」
「はいはい、凄いですね」
 それにしても、本当に凄い差だ。一応大人っぽくをイメージしていたらしい演技は、四年前よりも格段に上手くなったらしい。
 機械的な口調で値段を告げるレジ打ちの人。五百二十円です、高。
 千円と二十円を手渡し、お釣りの五百円を受け取る。
 買った物が少なかったし客も少なかったので、レジ打ちの人が商品を入れてくれたビニール袋を唯姉ぇに手渡す。
「はい、持ってくれ」
「えー、浩介君が持ってよー」
「現段階でそれの数倍も重たい荷物持ってるんだよ。どうせ一旦詫槻の家に戻るんだろ? だったらそれくらい運べ」
「一旦って?」
「一旦は一旦だろ。実家のほうに行く前に、詫槻の家においてきた荷物回収してこないといけないんじゃないか?」
「荷物の回収? なんで」
「だから、実家のほうでしばらく住むんじゃないのか?」
 なんだか頭の悪い会話の応酬な気がする。
「私がいつ、どこで、実家のほうでしばらく住むなんて言ったの?」
「え、じゃあ日帰り?」
 ふるふる、と首を振る。
「このえさんのお家でお世話になりまーす。よろしくね、居候の先輩さん」
「、マジ?」
「マジ」
「ちなみに、このえさんたちはなんて?」
「快諾してくれました」
 部屋、余ってたんだっけ? いや、余ってなんかなかったよな。
 なんとなく、俺が今後どのような道をたどるのか、予測がついてしまった。
336過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/09/26(火) 00:13:25
  -dream-

 
 僕が水槽を割って外に出ると、大人の人たちは大慌てだった。少し、笑ってしまったくらいに。
 大人たちの一人が、僕に向かって銃を撃った。なんでだろ?
 チクっとした痛み。それからだんだんと痛みは大きくなって、痛くなった右腕全体がずきずきと痛み始める。
 なんで、こんなことするの?
 僕は問いかけた。でも、大人は悲鳴を上げるだけで、何も答えてくれなかった。
 なんだ、この人壊れちゃったのか。だって、悲鳴しか上げないんだもん。
 壊れていない人間は、ちゃんとお話できるはずだもん。
 
 こわれちゃったものだったら、ぼくがあそんでもいいよね?

 最初に、腕をもいだ。次に、足。最後に、首。
 面白くない。すぐにつまらなくなって、なんだか息苦しそうにしてる大人の人に近づく。

 ――く、来るな化け物!!

 ばけもの?
 ぼくが、ばけもの?
337過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/09/26(火) 00:13:56
 酷いなぁ。
 僕をこんな風にしたの、ここにいる大人の人たちじゃない。

 こんなに大きくなった手も、太くなった腕も、足も、体も。
 全部全部、ここにいる人たちがやったことじゃない。

 それなのに、化け物?
 酷いなぁ。本当に、酷いなぁ。

 僕、傷ついたよ?
 僕が人を引き千切ったとき、みんな嬉しそうにしてたくせに。
 自分がやられるときだと、そんなに怖そうな顔をするんだね?

 ほら、いつもみたいに引き千切ってあげるからさ。
『でーた』っていうの、取らないと。ね?



 夜の闇の中、僕は真っ赤な部屋にいた。
 ううん、真っ赤にしたのは僕だから、元々は真っ赤じゃなかったけど、今は真っ赤な部屋に、僕はいる。
 あぁ、なんかわからないや。僕、学校行ってないからお勉強できないし。
 色々なところに散らばる腕とか、足とか、頭とか。
 気持ち悪いし、臭い。
 こんなところにいたら体を悪くしてしまいそう。
 どうしよう。
 少し、考える。

 そうだ。
 外に、出ればいいんだ。
338過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/09/26(火) 00:16:35
 つづく(を書き忘れた)

実はまだ二幕って結構たくさんあるんだけど、全部落とすと前の二の舞になるから今回はここで打ち止め
それと、新たに出てきた唯姉ぇさんは、今はまだツンデレしてないけど、もう少し後からツンデレしてくる予定ってか、ツンデレしてこないと激しくスレ違いw
じゃ、次の過疎に続き落っことします
339Mr.名無しさん:2006/09/26(火) 23:38:52
hosyu
340Mr.名無しさん:2006/09/27(水) 01:58:25
>>338
グ、グッジョブなんて言わないからね!
べ、別に早く続き読みたくなんかないからね!
341Mr.名無しさん:2006/09/27(水) 12:26:09
別にどうでも良いんだが、女の子の髪の毛引っ張るような奴は男として最低だぞっと言ってみる
342Mr.名無しさん:2006/09/27(水) 12:53:42
男つーか、人としてダメだと思う。
343Mr.名無しさん:2006/09/29(金) 05:19:18
ほしゅ
344Mr.名無しさん:2006/09/30(土) 21:20:08
ほsh
345Mr.名無しさん:2006/10/01(日) 22:53:35
あげ
346Mr.名無しさん:2006/10/02(月) 11:55:30
晒しage
347Mr.名無しさん:2006/10/03(火) 23:55:17
規制解除記念保守
348Mr.名無しさん:2006/10/05(木) 21:42:12
349Mr.名無しさん:2006/10/05(木) 22:19:48
しぇいむおん、やった人いる?
350Mr.名無しさん:2006/10/05(木) 23:45:34
うたわれるものならつい先日やった
351Mr.名無しさん:2006/10/06(金) 16:52:56
>>349
ノシ
これツンデレなのか? って思うやつもいたけど、良作だと思う。
352Mr.名無しさん:2006/10/08(日) 00:08:52
やってないな
積んでるエロゲだけで手一杯だぜ
353Mr.名無しさん:2006/10/09(月) 17:42:46
本格過疎
354Mr.名無しさん:2006/10/09(月) 19:05:11
まあマターリ待てや
投下ラッシュと過疎時のメリハリがきっちりしてるのがこのスレなんだしw
355過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/10/10(火) 23:09:56
>>341-342
まああれだ、フィクションってことで見逃してくれ

んで、とりあえず前の続き落っことしますわ
で、相変わらずツンデレがいまいちよく書けない俺
あれだ、いつもツンデレでテンションうpしてばかりじゃ疲れるだろうから、前にも言ったけど
閑話休憩的な位置づけでよろしく
じゃ、前の続き落っことしていきます
356過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/10/10(火) 23:11:08
夕立刻に降る雨は 二幕―3

 朝、台所から漏れる包丁の音で目を覚ました。
 自分の部屋を唯姉ぇに取られ、なし崩し的に俺がリビングのソファーで寝るハメになってしまった。慣れない場所で眠ってしまったために、少々腰が痛い。
「あら、こうちゃん起きたの? おはよう」
「おはようございます」
 寝起きのため曖昧な意識を無理矢理復帰させ、タオルケットを丁寧にたたむ。
 こみ上げる欠伸を噛み殺し、たたみ終えたタオルケットを部屋の片隅に放置したと同じくらいに、ひなたが姿を現した。
「おはよー、今日もいい天気だねぇ」
「よ、おはよう。まったくだな、今日も暑そうだ」
 窓の外を見上げると、夏を主張するかのような白っぽい感じの青空。遠くの空に、大きな積乱雲が浮かんでいる。
 今日も、世界を包む音の大部分を、蝉の鳴き声が占めていた。夏真っ盛りといった様子だ。
 先ほどまで横になっていたソファーに座りなおし、ぼんやりと考えた。
 本当に、こんな平和な場所で殺人事件なんて起きたのだろうか。
 あれはもしかしたら何かの間違いとか、俺の夢の中での出来事で、本当は何も変わることがない平和な日常が今も送られているのではないか。
 その僅かな希望は、俺がソファーに寝ていたとう事実で脆くも崩れ去るわけだが。
 唯姉ぇが帰ってきた理由は、事件のことを知ったからだというところが一番大きいそうだし、新聞の地方版では今日も捜査の進展具合を逐一報告している。
 新たな情報はありません、事件の現場を目撃した、不審人物を目撃した方は、至急秋山警察署にご連絡ください。その文字は飽きることもなく、事件の当日から連日でかでかと地方版を占拠していた。
357過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/10/10(火) 23:12:16
 それにしても、未だに解決の糸口さえも見つけていないというのはいかがなものだろうか。
 少なくても、あの人程度ならすぐにでも見つけることが出来そうな気がする。
「ま、警察は警察で一生懸命やってんだろうけどなぁ」
 誰に言うでもなく呟いた言葉に、丁度となりに座ったひなたが反応を見せる。
「そもそも、目撃者がいないからね。由利音さんが犯人だって言ってるのだって、単に病院から逃げ出したっていう状況証拠からなんでしょ?」
「まぁ、そうだな」
 稲村さんに限っては、昔の事件と関連付けているのかもしれないが、あまりに馬鹿馬鹿しい話だと思う。
 大体、昔の事件通りにことが進んだら、今日にはひなたがこの世から姿を消すわけで。
「それはいいとして、今日は別にどこにも出かける用事ってないよね?」
 使い古された『置いといて』のジェスチャーを見せるひなた。
「んー、今日は別に用事ないし、昨日仕事休んじゃったから、今日はばっちり働くぜ?」
「それなんだけど、今日はお昼でお店終わりだから。お姉ちゃんの歓迎パーティーやるんだって」
「唯姉ぇの? 歓迎パーティーって言っても、何するんだよ?」
 尋ねると、ふふんと得意げな笑みを浮かべ、まるでずっと分らなかった問題の答えを教えてやるような雰囲気をかもし出しつつ
「昨日、何のためにホイップクリームと苺買ってきてもらったと思う?」
 と、言う。
 なんのためって、それは店のメニューに加えるとかそんなことを言っていた気が。ていうか、まさか、
「あ、もしかして唯姉ぇの歓迎パーティーをするために買ってこさせたのか?」
「そういうこと。あんたを驚かせる予定だったから、それを言えなかったのよ」
 あの時言葉がどもっていたのはそれが原因だったのか。
358過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/10/10(火) 23:13:19
「そもそも、なんで俺を驚かそうとかそういうことになったんだよ?」
 単純に驚かすだけなら、俺よりもおっさんのほうが面白いリアクションをしそうだ。
「なんでって、あんたお姉ちゃんのこと好きでしょ? だからちょっとしたサプライズー、みたいな」
「べ、別に好きじゃねぇって」
「嘘ばっかり。何年あんたと一緒にいると思ってんのよ。あんたの感情なんて、手に取るようにわかるんだからね」
「そ、そりゃ嫌いじゃねぇけど、好きでもないっていうか」
 一瞬、ひなたの表情がフッと暗くなった気がした。だがすぐに、いつものような快活な笑顔へと移り変わる。
「ふーん。別に、いいんだけどねぇー」
 どことなく拗ねたような感じで、放り投げるように言う。
 別にいいなら、初めから言うなよと思ったが、ひなたに暴力という名の反撃を受ければ、対抗できる自信はない。
「なに、お前ジェラシー?」
「ば、馬鹿っ! あんたなんかになんであたしが嫉妬なんかしないといけないのよっ!?」
「声が裏返ってるぞー」
「ぐっ」
「お前、さっき俺に言ったよな。何年一緒にいると思ってるんだ? お前がそういう感じで話すときは、基本的に俺がお前を放ってどっか遊び行った時限定だろ?」
 要するに、仲のいい幼馴染であり、友達である俺が、自分の知らない人間と遊んでいるのが気に食わないんだろう。
 その証拠に、テルと遊びに行ったときはこんな風にならないわけだし。
 恋愛感情レベルの嫉妬ではないにしても、嫉妬されることに悪い気はしない。
「さて、そんじゃそろそろ飯だろうし、俺台所行くわ」
 言いながら立ち上がり、眉間にしわを寄せて頬を膨らませたひなたを放置し、さっさと台所へと足を進めた。
359過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/10/10(火) 23:14:34
「いらっしゃいまーせ!」
 居候ということで、唯姉ぇも今日から仕事に参戦することとなった。
 今日が初めてとは思えないような慣れた様子で仕事を片付け、客からのセクハラ的発言もあしらい、料理を運ぶ。
 長い髪の毛を一本に結い、店の名前がプリントされたエプロンを、まるで昔から着ていたかのような自然さで着こなしている。
 昔から何でも器用にこなしてしまうほうだとは思っていたが、まさかここまでとは思わなかった。
「おい、愛しの唯お姉ちゃんに熱烈な視線を送るのもいいけどな、仕事はちゃんとしろ」
「してるっつーの。つーか、愛しの唯お姉ちゃんってなんだよ?」
 今朝のひなたといい、今のおっさんといい、俺はそんなに誤解されるような態度ばかり取っているのだろうか。
「隠すなよ若人。唯ちゃんのこと好きなんじゃねーの?」
「別に恋愛感情はねぇよ。つーかおっさん、仕事しろ」
 俺は話しながら仕事をするくらいはできるが、おっさんは一つのことにしか集中できない人間だ。俺と会話をしている間は、目に見えて仕事の能率が低下する。
 その分俺がおっさんをカバーしないといけないわけだから、困ったものだ。
「それ以前に、隠すなよ若人というこの台詞は自分がおっさんだと認めたような物だと思うぞ」
「俺はまだ29だ! まだいける!」
「まだ気付いてないのか。おっさんは四年くらい前に賞味期限切れてるんだよ」
「なんだとっ!? でもお前、消費期限ならギリギリじゃねぇのかっ!?」
「そうだな、あと一ヶ月ってとこか」
 おっさんの誕生日は九月の中旬だったはずなので、あと一月くらいで消費期限すら切れてしまう。
 残された道は、その消費期限切れをわざわざコレクトする人間か、同じく消費期限が切れた人間とくっつくかのどちらかだ。
「お、お前も若いからって余裕見せてると、今に消費期限が切れるぞ」
「俺は結婚願望とか一切ない人だから。ひなたー、から揚げあがったぞー!」
360過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/10/10(火) 23:15:40
 パタパタと駆けてくるひなたにから揚げを渡し、次の注文に取り掛かる。
 日替わり定食か、今日は掻揚げとミニうどんとミニ丼だったかな。
 テキパキと料理を作り終え、盛り付け。何かが足りないような気がする。
「おいおっさん、今日の日替わりってなんだった?」
「掻揚げ、ミニうどん、ミニ丼、から揚げ」
 あぁ、から揚げ忘れてたのか。
 先ほど多めに揚げたから上げを三つ器に放り込み、ホールのほうに出しておく。
 ざっと店内を見渡し、ひなたとこのえさんは手が空いていないことを確認して
「唯姉ぇー、日替わり六番さんのとこまで持ってってくれー!」
 お盆の隅に伝票を置いて、準備完了。
「はいはーい、ちょっと待ってねぇー!」
 それにしても、初日にしては本当に良く働いてくれるもんだ。
 ていうか、ひなたと同じくらいには働いているような気がする。
 空いた皿を流しに並べ、そのついでに料理を持っていく。最も効率的な手段だった。
「それにしても、唯ちゃんは凄いな」
「あ? なにがだよ」
「初日なのに、こんなにしっかり働く人なんてそんないないぞ」
「ま、あの人は昔から万能型だったし」
 伝票を見ると、先ほどの日替わり定食で最後の注文だった。専用のコップに冷蔵庫で冷やした麦茶を注ぎ、一息つく。
 ギリギリでお茶が凍らない程度の温度にまで下げられた麦茶は、一口飲んだだけで頭痛を催すほどに冷たい。
「将来はいいお嫁さんタイプだな。今朝母さんに聞いたけど、料理も得意らしいじゃないか」
「そりゃ、四年も一人で生活してたわけだからな。アパートとかに暮らしてたとしても、料理は必須になるだろ」
361過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/10/10(火) 23:16:21
 何度聞こうと試みても、結局四年という月日をどのように過ごしたのか、何故いなくなってしまったのか、などの詳細な理由は話してくれなかった。
 どうせ聞いても答えてくれないならと、すでに聞く気も現在のダム状況のように干からびたのである。
「それでもだ、俺は唯ちゃんをお嫁に欲しい!」
「こんなとこでぶっちゃけトークなんかするな」
「なんだ、お前は欲しくないのか?」
「うぇ、そ、それは」
 確かに料理もできるし、万能型なわけだから家事全般はお手の物だろう。
 言うのは癪だが美人だし、天然だが気はきく。
 ここまで理想のお嫁さんを的確に射抜いているなら、答えは当然決まっている。
「欲しい、な」
 自分で言って顔が熱くなるのが分り、恥ずかしくてグラスの麦茶を半分程度煽る。多少は顔の熱も下がるだろう。
「なーにが欲しいのよ?」
「うぇ、ひ、ひなた!?」
 危うく食道を通る寸前だった麦茶をリバースしそうになる。
「お疲れ、ホールも落ち着いたか?」
 平然とした様子で尋ねるおっさん。テメェ、いつもは『愛しのひなたー!』なんて恥ずかしいこと言ってるくせに。
「ま、少しだけね。お母さんとお姉ちゃんはまだ働いてるわよ」
「お前は行かなくていいのか?」
「行ったって邪魔になるだけ。お姉ちゃん、私よりも働くんだもん、驚いちゃった」
 複雑そうな表情だった。自尊心とか、プライドとか、そういうのを傷つけられたのだろう。
 そりゃ、もう何年も働いている自分よりも今日始めて働く唯姉ぇの方がよく働くのだから、当然というか仕方ないというか。
「ひなた、気にするな。神様は常に不条理なものなんだ」
「別に気にしてないわよ。それより、お皿洗うの手伝ってよね。あんたまさか、あれだけの量をあたし一人で洗えなんていうんじゃないでしょうね?」
「おっさんがやればいいだろ。今日の厨房MVPは間違いなく俺だぞ」
362過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/10/10(火) 23:17:34
「お兄ちゃんは厨房の片付けがあるでしょ?」
 昼食時という戦争を思わせるひとときを乗り越えた厨房は、混沌がその大部分を治めていた。
 散らばった小麦粉やら、盛り付ける時にこぼれたキャベツの破片とか。
「そういうことだ、ひなたと一緒に仕事が出来ないのは悲しいが、任せたぞがきんちょ」
 皿は皿で混沌だが、厨房と比べるとまだ可愛いものだ。皿洗い決定だな。
「がきんちょ言うなっての。しかたねーな、手伝ってやるよ」
「はい、決まったらさっさと行く」
「ちょ、まだお茶少し残ってる」
 がっしりとひなたに手を握られ、引きずれるように流しに向かう。
 段々と遠くなるおっさんのドナドナが、何故か耳にこびりついて離れなかった。
「おーい、ひなちゃーん」
「あれ、お姉ちゃん。10番さんのアフターは?」
「もう終わったよ。それで、手が空いたからお皿洗うの手伝おうかなーって」
 仕事を終えたらしい唯姉ぇも皿洗いに参戦するらしい。
「あのねお姉ちゃん、皿洗いは三人もいらないからさ、あたしと浩介の二人に任せて、ゆっくり休んでていいですよ」
 浩介? あれ、おかしいな。こいつが俺のことを呼ぶときは、大体こうちゃんとかこいつとかあんたとか。
 流し台に溜められた皿を洗うので一人、洗い終えた皿を片付けるので一人。そうすると、一人余ってしまう。別に皿を片付けるほうは二人でもやれないことはないが、狭い厨房を二人が駆け回るのだ。帰って作業能率が悪くなってしまう。
「それじゃあ、ひなちゃんが休みなよ。私まだ大丈夫だから」
「なっ!? あ、あたしだって大丈夫ですっ!」
 つーか、俺が休むっていう選択はないのな。
「んー、でもなぁー。あ、それじゃあ浩介君が決めてよ」
「うぇ、俺!?」
 完璧に傍観を決め込んでいたので、まさか自分に話が回ってくるとは思っても見なかった。
「さあ浩介君、選びなさいっ! 私かひなちゃんか、どっちが欲しいの!?」
「浩介っ、もちろんあたしを選んでくれるわよね!?」
「まさか従姉妹の私を蔑ろにするつもりはないでしょうね?」
 話の流れを一切知らない人が聞いたら、間違いなく誤解されるであろう言葉を大声で吐く二人。
 いつの間にか、厨房の周りに常連さんの野次馬が出来上がっていた。
363過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/10/10(火) 23:18:30
 ――何々、なんなの?
 ――新しいアルバイトの娘に、浩介君を取られそうなひなたちゃんが奮闘しているんだよ。
 ――へー、なんか面白そう。
「外野は黙ってろー!!」
 ――こ、これはますますドロドロの展開だわっ!
 ああだこうだと、店内で推論が交わされる。人の垣根をかきわけながら、このえさんが厨房に現れた。
「あらあら、面白いことになってるわねー。なんなら、私もその選択肢の中に入っていいかしら?」
「「駄目ですっ!」」
 二人揃って答えを返す。息はぴったりだった。
「しょぼん」
 可愛らしく呟き、厨房の裏にとぼとぼと歩いていった。
「「さあ、どっちを選ぶの!?」」
 このえさんを追い払った二人は、さらに俺へと詰め寄る。
「あ、それじゃあ二人ともお休みってのは」
「「却下!」」
「で、ですよね」
 どうあっても選ばないといけないらしい。
 考えろ、考えるんだ俺。妥当な理由を。
「そ、それじゃあ、えっと、仕事に慣れてもらうためってことで、唯姉ぇ」
 答えた直後、外野から大歓声が巻き起こる。よくやったぞ兄ちゃん、それでこそ男だ! などと、絶対に現状を把握していない人からの言葉が聞こえた。
「私の勝ちぃー!」
 満面の笑みを浮かべ、天高く拳を突き上げる唯姉ぇ。いっそそのまま天に帰ったらどうだろう。世紀末覇者みたいに。
「、っ」
「あ、おいひなた!?」
 スカートを翻し、走り去っていくひなた。うっすらと、目に涙が浮かんでいた気がした。
「ちょっとやりすぎちゃったかなぁ。どうしよう、浩介君」
「放っておけば元に戻りますよ、きっと」
 小さくため息をつき、皿洗いを始めた。 
364過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/10/10(火) 23:19:49
「あー、づかれだー」
 ベタリ、と畳みに張り付くように横たわる唯姉ぇ。どうやらお姉さんキャラの演技は諦めたらしい。
「頑張ってたみたいだしな。ほら、麦茶」
「さんきゅー、助かったよー」
 テーブルの上に置くと、グラスの外側に張り付いた水滴が幾つかこぼれる。
 手が濡れないようにティッシュか何かで拭こうと思いティッシュを探していると、背後からゴクゴクと喉が鳴る音。
「ふぃー、生き返るねぇー」
 この人にそんな気を回す必要はなかったらしい。
 むしろその水滴をグラスから自分の手に移し、火照った顔に押し当てている。
「あー、冷たくて気持ちいー」
 見なかったことにしよう。
 おっさんと唯姉ぇを嫁に欲しいかなどと議論したが、あの時の『欲しい』という考えは捨て去ったほうがよさそうだ。
「唯姉ぇ、いっそ俺が水でもぶっ掛けてやろうか」
「んー? そりゃ涼しそうでいいわぁー。もう水でもお茶でもコーラでも変な体液でもなんでも来いって気分だねー」
「水とお茶はまだいいにしても、コーラなんてかけたらべとべとになるぞ」
 つーか、変な体液ってなんだよ。
 たぶん、おっさんにでも頼めば喜んでぶっ掛けてくれると思うぞ、変な体液を。
「じゃあ牛乳とかならいいんじゃない? ほら、牛乳風呂ー、みたいな」
「別にいいけど、おっさんが男連中が前かがみになる」
「なんでー?」
「色合いに問題がある」
「んー、冷凍庫で冷やしたバターとか体に塗ったら気持ちよさそうじゃない?」
「お向かいさんのタローでも借りてくるか?」
 冷たさと外的な快感。って、俺は何考えてるんだ。
「タロー?」
「柴犬だ」
 それも普通の柴犬より1.5倍くらい大きい。破壊力はありそうだ。
「いぬ? なんで」
「なんでもない」
365過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/10/10(火) 23:20:25
 分らないふりをしているのか、素で分ってないのか。
 なんとなく、後者のような気がする。
 あぁ、この人と話していると、なんだか俺はもの凄く穢れているように思えてしまう。
「タローに姦られちゃえばいいのに」
 ぼそりと呟き、しかめっ面で俺の横を通り過ぎ、テーブルの側に座るひなた。
 一体いつの間に来たのだろうか。つーか、お前さり気無くバイオレンスなことを。
「おうひなた、おつかれ」
「ひなちゃーん、おつかれー」
 二人の言葉に反応を見せず、べたりとテーブルに突っ伏す。
「ひなたおつかれ」
「ふん」
 そっぽを向いてしまった。
「おーい、ひなたー」
「えーと、リモコンリモコン」
 俺などいないのだ。そう言い聞かせるように、周囲を見渡しリモコンを探すひなた。
 まださっきのことを怒っているのだろうか。
「ひなたー? ひなちゃーん?」
「っ、なによっ!?」
「な、何怒ってんだよ?」
「お、怒ってなんか、ないもんっ!」
 いやいや、怒ってるって絶対。
「ちょっとアンニュイなだけだもんっ!」
 アンニュイ?
 俺の脳内にインプットされた辞書を引く限り、今のひなたにアンニュイという言葉は当てはまらないような気がする。
 アンニュイならもっと静かになるんじゃないだろうか。
「つーか、なんでさっきので怒るんだよ? 仕事やらなくて済んだんだから、喜ぶところだろこれは」
 キッ、と睨まれる。
366過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/10/10(火) 23:21:10
 なんとなく、さっきの言葉は地雷であったことが容易に想像できた。
 間違いなく飛んで来るであろう拳に備え身構えるが、拳も足も飛んでこなかった。
 その代わりに見えたのは、ひなたの辛そうな表情。
「あんた、なんにも、分ってない」
「分ってないって、言ってくれないとわかんねーって」
「言いたいけど、言いたいけど言えないから、だから困ってるんじゃないっ! もう、もう知らないから! 勝手にお姉ちゃんと仲良くなって結婚でもなんでもすればいいでしょっ!!」
「は、はぁ!? いやお前、何を誤解してるんだ?」
 その質問の答えは、帰ってくることはなかった。
 店の制服のまま走り去ってゆくひなたを、俺は固まったままぼんやりと見つめていた。
367過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/10/10(火) 23:21:51
 午後六時を回った頃。唯姉ぇの歓迎パーティーがあるからと張り切っていたひなたが、まだ戻らない。
「ひなたのやつ、どこ行ったんだろうな」
 誰もが口にしなかった一言を、ようやくおっさんが口にした。
 いつもならこの時間に帰ってこないことなんて気にもならなかったが、事態が事態だ。
 俺が何をわかってないのか、それについては全然思い当たらない。だが、ひなたを怒らせたのは間違いなく、俺の一言だったんだと思う。
「お、俺、少し探してきます!」
「わ、私も」
 立ち上がる唯姉ぇを、おっさんが手で制する。
「一時間以上は待たないからな。それだけ待っても帰ってこなかったら、先にパーティー始めるぞ」
 頷くだけで返し、俺は外に駆けだした。
368過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/10/10(火) 23:22:33
 ――どれだけ走っただろう。
 前から後ろへと流れていく景色には目もくれず、ひなたの姿だけを探し続けた。
 家に戻ったのなら、きっと携帯のほうに連絡くらい入れるだろう。携帯を確認するが、待ち受け画面に変化はない。
「あんにゃろ、どこ行きやがったんだよ」
 七時半。どうやら一時間半も走っていたらしい。
 そういえば。

「今日の午後八時ごろ、昔の詫槻ひなたは河原で殺されている」

 何気なく呟いたその言葉は、否応がなしに不安という感情を生む。
 そしてその影が、段々と俺の中を侵食していく。
「一応、念のために行ってみるか」
 体の向きを変え、河原へと走った。
369過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/10/10(火) 23:23:12
 河原のすぐ近くに差し掛かったとき、遠くから悲鳴のようなものが聞こえた。
 その声は、聞きなれたものだった。
「、ひなたっ!?」
 限界が近い足は、すでに膝から下の感覚が無い。
 まさか、本当に。
 昔のとおりに、事件が起こるっていうのかよ!?
 土手の道から河原へ降りる。急な斜面に足を取られ、前のめりに転んだ。
「ってー」
 体の右半分が所々痛い。
 切れてしまったか、打ち身か。
 そんなことはどうだっていい。それよりも、一秒でも早く、ひなたのところに行かないと!
 足が動くかどうかを確認する。
 感覚はとっくの昔になくなってしまったが、まだ大丈夫だ。走るくらいならできる。
 駆け出した直後、ふわりと体が浮かぶような、そんな感覚に襲われた。
 不安定な足場が崩れ、自分の体が倒れようとしている。
 ――ゴッ!!
 鈍い音が聞こえた。
 後頭部が痛い。洒落にならないくらいに、激痛が走っている。
「ひな、た」
 意識が、遠くに飛ばされていくようだった。
370過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/10/10(火) 23:23:51
  -dream-

 たくさん殺した。僕の手は、もう真っ赤。
 今日は、河原に一人でいた女の子。ちょっと見覚えがあったけど、やっぱり知らない人。
 気付かれないように後ろから近づいた。でも、石がころんって音を立てて、女の子は僕に気付いた。
 女の子は、僕に言った。
 ――な、何の用よ!?
 用って言われても、別に用はないんだけどなぁ。
 そうやって言うと、女の子はがっかりした感じで僕に背中を向けて、小さな石を川に放り投げた。
 ――用事がないなら、帰りなさいよ。あたし、今日は友達のところに泊まるから。お母さんに言っておいて。
 僕に言われても困るよ。
 ――は? なんで。
 だって、僕。
 ――ちょっと待って、僕って、あんた自分のこと僕って言ってた?
 うん、僕は僕だよ。
 ――おっかしいなぁ、そうだったかなぁ。
 ぶつぶつと何かを言っている。
 もう、いいのかなぁ。この女の子、僕を知っているみたいだけど。
 僕、君のお母さんのこと知らないから、お母さんに言っておいてなんて言われても困るよ。
 ――ねえ、あんたってさ、あたしが知ってるあんた?
 どういうことだろう。よく、わかんない。
 ――なんかねー、別人みたいだから。ごめん、忘れて。
 やっぱり、この女の子は僕を知っているみたい。
 でも、別にいいや。

 まだ、まだ、殺し足りないんだから。

 後ろから、女の子の手をつかむと、力いっぱい引っ張ってやる。
 最初にボキって音がなって、その後にブチブチって音がなって、右手が千切れた。
 女の子は驚いたような、怖そうなような、なんかそんな顔をしながら、口から胃液を出している。
371過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/10/10(火) 23:24:31
 全部出し終わったのか、おえっ、おえってやるだけで、何も出てこなくなった。
 次は、左手。
 思いっきり引っ張ると、さっきみたいに簡単に千切れた。やっぱり、人間って脆いや。
 体中の色んな穴から、色んな液体を流す女の子。涙だったり、よだれだったり、汗だったり。
 汚いなぁ。
 痛い?
 聞いても、答えてくれない。苦しそうにずっと、息をしているだけ。
 次は、足。
 腕よりも大変だけど、力いっぱい引っ張ればすぐに千切れる。
 両手も両足も無くなって、女の子は胴体と頭だけ。白目を剥いて、泡を吹いている。
 でも、少しだけ息をしている。まだ、死んでいない。
 首を引き千切るのは最後。一番、面白いから。
 だから、爪をお腹に突き立てる。皮膚も筋肉も簡単に切れて、お腹の中味がビュルって飛び出す。
 首を千切るのの次に面白い。
 最後に、首を引き千切る。
 女の子の髪の毛を束にして、つかんで、もう一方の手で肩を押さえて、一気に引っ張る。
 ゴキリ。また、この音。
 それで、ブチブチ。
 噴水みたいに、真っ赤な水が流れる。
 血。
 血、血、血、血、血、血、血、血、血、血。
 ち、ち、ち、ち、ち、ち、ち、ち、ち、ち、ち、ち、ち、ち、ち、ち。
 真っ赤。きれいだなぁ。
 だんだんと噴水が小さくなっていく。死んじゃったみたい。
 あー、楽しかったなぁ。
 次は、誰を殺そうかなぁ。
372過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/10/10(火) 23:25:06
  -fact-

 目が覚めると、見慣れた染みが目線の先に見えた。
 ここは、俺の部屋。
 なんだろう、凄く疲れている。
 もう少し寝よう。そう思って目を閉じた時、夢の光景がビデオでも再生するように見えた。
「っ!!?」
 激しい嘔吐感。
 夢の中の自分は。夢の中の俺である『僕』は、間違いなく、一人の女の子を殺した。
 虫で遊ぶ子供のように、四肢を引き千切り、内臓を取り出し、最後に首を引き千切って。
 最近、この手の夢を見ることが多くなった気がする。
 あの夢の中の女の子。
 どこかで見たことがある。どこかで、じゃない。いつも、身近にいてくれる人。
「ひなた」
 ハッとした。あの夢の中の女の子は、ひなただった。
 夢の中だとは言え、俺は自分の手でひなたの手を千切り、足を千切り、腹部を捌き、首を千切った。
 そういえば、ひなたは!?
 上体を起こすと、後頭部に痛みを感じる。手を当てると、頭に包帯が巻かれていた。
 トントントン、と階段を上がる音。廊下の床板が軋み、その音はこの部屋の前で途絶えた。
 控えめなノックの後、ゆっくりと扉が開く。
「このえさん」
「あら、目が覚めたのね」
 見て分るほどに、元気がない。目の下にクマが出来ていて、それでいて目は白いはずの部分が残されること無く赤い。
 瞼は赤く腫れ上がっている。
「おはよう」
373過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/10/10(火) 23:25:49
「おはよう、ございます」
 このえさんは手に持っていた土鍋をテーブルに置き、正座して俺の前に座った。
 言っていいものか悪いものか。そんな葛藤が、目に見えるように感じ取れる。
「このえさん」
「なに?」
「ひなたは、見つかりましたか?」
 ぽろりと、このえさんの目から涙が零れ落ちた。
 そして小さく首を振り
「見つかったことには見つかった。酷い、有様、だった、けど」
 涙に言葉を詰まらせる。
「俺の、所為ですよね」
「違うわよ、これは、誰の所為でもない。責任を取るべきなのは、犯人だけ、だから」
 涙を拭い、あくまで気丈に振舞うこのえさんを見ていて、胸が痛んだ。
 ひなたを守れなかった。事件が起こると知っていたのに。
 ひなたが死んでしまったのは、俺の責任だ。
 だから、俺は。

 俺は。


「俺が、犯人を、絶対に見つけます」
374過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/10/10(火) 23:27:52
はい、つづくねー
まああれだ、唯一ツンデレっぽいキャラが死んでしまったわけだが、どうしようか・・・なんも考えてねぇw

あと、少し長くなってしまったんで、その辺はごめんなさい
もう一回どこかで切ろうかと思ったんだけど、上手く切れそうな場所が見当たらなかったんだよね

んじゃ、次の過疎ん時に
375Mr.名無しさん:2006/10/10(火) 23:28:16
乙ンデレ

何かさ、主人公が好きになれ(ry
376Mr.名無しさん:2006/10/11(水) 01:52:39
鬱ンデレ。。。。
377Mr.名無しさん:2006/10/11(水) 12:22:07
長い
三行にまとめてくれ
378Mr.名無しさん:2006/10/11(水) 20:18:19
>>374
長くても問題なし
どうせ過疎してるんだしな
379Mr.名無しさん:2006/10/11(水) 20:55:07
なんつーかさー
最初に構想した展開があるんだろうけどさー

このスレ的には間違ってね?
380Mr.名無しさん:2006/10/11(水) 21:47:14
>>379
別に擁護するつもりは無いんだが
(髪の毛引っ張るヤツ最低とか言ったのも自分だし)
『過疎時の繋ぎ』と明言してる以上いいんでないか

それよりも問題なのは本題であるツンデレ物が
一向に投下 さ れ な い こ と だ
381Mr.名無しさん:2006/10/11(水) 22:09:55
議論するつもりはないが・・・

過疎の繋ぎなんて言い訳にしてほしくないな
自分の妄想を晒してみんなでハァハァしようってスレで、
途中でヒロイン1人死んじゃうような鬱話はどうかと思うんだよなー

>繋ぎ屋
これはあくまで俺の主観
だから「自分のせいでアレなことになってるようなんで〜」とか言って打ち切るのは無しな
ここまで書いたんだし最後まで書いてくれ
382Mr.名無しさん:2006/10/11(水) 22:15:00
ちょちょっと、つないでくれなんて頼んでいないんだからね!
383Mr.名無しさん:2006/10/13(金) 20:55:46
ほしゅ
384過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/10/15(日) 00:02:39
このままこの話で続けていいのか悪いのか判断に困る
確かにスレ違いってのは最もだし、鬱話ってのもその通り
過疎時の繋ぎだからーなんて言い訳ぶったこと言ってるが、実際は自分がツンデレ上手くかけないからそう言ってるだけだしな
まだ続きかけてないけど、落とすかどうかはその後のレスに任せますわ
実際、この話って人によっては不快になるかもだし、こういう反応出るのは仕方ないわな。そういうのも出てくるだろうって思ってたから
385Mr.名無しさん:2006/10/15(日) 00:06:20
おまいさんが好きなようにやりなされ
文句言いつつも読んでるツンデレ野郎ばかりだから、このスレ
386Mr.名無しさん:2006/10/15(日) 00:37:55
その通り・・・

文句言いながら投下されたら俺も読むしな
387Mr.名無しさん:2006/10/15(日) 06:44:23
書け書け
あー、なんかこの展開ありがちーとか、おいおいそりゃあないんでないの?
とか思いながらもこのスレに投下されたのは全部読んでるんだから
ツンデレだろうと無かろうと楽しみにしてるからさ
388Mr.名無しさん:2006/10/15(日) 11:02:36
ほんとにわかってないわね繋ぎ屋のバカ!
別に書くななんて言ってないでしょ・・・

わかったらさっさと書きなさいよ!よ、読んでやるんだから!
389Mr.名無しさん:2006/10/15(日) 19:46:33
繋ぎ屋以外の人はどこ行ったんだろう。
戻ってきてもらいたい
390Mr.名無しさん:2006/10/16(月) 14:41:22
何が困るって途中で打ち切られることなんだよ!!111
391Mr.名無しさん:2006/10/17(火) 21:49:08
そう考えると、一応終わらせる事ができたやつ等は偉いんだろうな
392Mr.名無しさん:2006/10/17(火) 23:06:45
そら偉いよ

でもそういうの言ってるとさらに
ネタ投下しづらい空気になるんじゃない
思いつきと勢いも大事かと
393『T&E』第五話:2006/10/18(水) 05:51:52
寒くなってきてやっと妄想が復活した
忘れてる人が大半だと思うが続き投下します
コンゴトモヨロシク

〜あらすじ〜
ある男の子がある女の子に恋をしました
しかしその女の子はダウナー(?)ツンで反応薄
男の子は自分なりに頑張ってます

男の子:大場かつみ
女の子:綿見灯
394『T&E』第五話:2006/10/18(水) 05:52:29

彼は語る。彼の愛しい彼女のことを

『T&E』
第五話『彼岸の景色』

最近よく一緒に遊びに行くんだ。彼女が見たいって言ったから。俺が楽しいと思ったもの。彼女に見せてあげたいと思ったもの。

強い子なんだと思う。
なんと言っても、いつも凛としている。背筋がぴんと伸びている。言葉使いもしっかりしていて、俺なんかよりよっぽど年上みたいだ。
ちゃらちゃらしていない。髪はしっとりさらさらの黒髪ストレートだし(シャンプーのCMにでも出ればいいのにと言ったら本気で睨まれた)それに知的なメガネが凄くマッチしている。
大人しそうな外見の割に、実は結構気性が荒い。あんな大人しそうな顔してるのに。街中で絡んできた男を睨みつけるような、そんな感じの子。
でもさ、結構優しいところもあるんだ。こないだ街を歩いてたら泣いてる小さい子が居てね。あれー迷子かなぁって思ってたら彼女がすっと出て行って、大丈夫、お母さんとはぐれちゃったの?って。
その子のお母さんすぐ見つかったんだけど、その子に接するときの彼女、本当に優しそうでさ。なんていうかお母さんの優しさみたいなそんな感じ。

うん。そうなんだ。それだけなら何も問題ないんだけど。
395『T&E』第五話:2006/10/18(水) 05:53:06

・・・・・女の子の考えることって基本的にわかんないじゃないか。でも、彼女はもっと分かんないんだ。俺だけかもしれないけど。
基本的にあんまり笑わなくて、反応もしなくて、あれ、俺ってもしかして無視されてる?アウトオブ眼中?って思うんだけど、そのこと話したら少しめんどくさそうな顔して『聞いてますよ』って。
俺なに話してた?って聞くと、しっかり内容答えてくる。興味ないようでもしっかり聞いてくれてるんだ。
あと、一緒にいても、いつも遠くを見て考え事してる。かと思ったら、気がつくとこっちの顔をじーっと見ていることもある。掴みづらい。笑うとあんなにかわいいのに。

・・・・・いや、違うんだ。別に彼女に不満がある訳じゃなくって、そう、不安なんだ
いろんなところに遊びに行っても、あんまり楽しそうじゃないんだ。
誘うと嫌な顔せず着いてきてくれるんだけど、ほとんど無表情で『はい』『はい』って・・・・・
折角一緒に遊んでくれるようになったんだ。これ壊したくないんだよ。
今までも、ものすごく素っ気無かったけど、最近もっともっと無表情なんだ。なんか、能面みたいでさ。『退屈?』って聞くと『別に』って・・・・・・
でも誘いは断らないんだよ。これ何なんだ?ダメならダメってはっきり言ってくれたほうが楽だよ。なんか生殺しみたいだ・・・・・
そのうち、『やっぱりくだらない人みたいだから、もう近づかないでください』とか言われそうで。

「なぁ・・・・・・俺、どうしたらいい・・・・・・?」

396『T&E』第五話:2006/10/18(水) 05:53:36



・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・シラナイワヨ

カフェ『サンクチュアリ』のコーヒーフロートはアイスクリームの甘さの中にもオリジナルのコーヒーの渋みがじんわりと利いていて、昔からのお気に入りなのだ。
透明で暗褐色の液体とそれに混じり、早々ににごりかけてきているアイス&クリームの層。
温度差ですこし結露しているグラスに長いスプーンを突っ込んでガシガシとかき混ぜる。
私、緒方有紀(おがたゆき)はこの瞬間が堪らないほど好きである。
店内にはいつもの音楽が流れている。とても穏やかで心地よいひと時。邦楽ではないだろう。高く涼やかな高音とハスキーで力のある低音が、流麗などこの国ともわからない言葉でしなやかに歌われている。

397『T&E』第五話:2006/10/18(水) 05:54:10
「・・・・・・なぁ、お前聞いてんの?」

あぁ。コーヒーフロートおいしいなぁ
至福の時間だなぁ、しかも人のおごりだと思うとなおさら、おいしいなぁ
今日は夏らしく突き抜けるような快晴だし、とっても気分がいいなぁ

「別に、俺はおごりなんて一言も言ってない訳だが」

「・・・・・・WHAT?」
どういうことだ、私はそんな話は断じて認めない。
貴方、人にのろけだか愚痴だかするのに呼び出しといて、お茶の一つも奢らないなんてどういう了見だ?
「言っとくけど、私お金一円たりとも持ってきてないからね」
先に釘を刺しておくことにする。
「あんたがお金払わないって言うんなら、アタシここのトイレから逃げるからね。先に帰ろうったってそうはいかないから」
まぁ、確かにこいつは馬鹿だが、案外常識的なところがあるし、何だかんだで女には弱い。ここまで言っておけば、コーヒーフロート代450円がこいつの財布から出ることになるのはほぼ確実だろう。

「ようするに、かっちゃんはどうしたいわけよ」
私の数人の友達の中でも、特に気安い友達である大場かつみ。通称かっちゃん。
最近こいつはとある後輩の女の子とお付き合いしだした。最も、彼氏彼女の関係ではなくて、お試し期間、またはお友達から始めましょう、体のいい暇つぶし相手、そういった類のものらしいのだが。
その彼女というのが(私も一度会ったきりなのだが)なんというか、非常にクールというか無感動というか厳しい子なのだそうだ。
「そういう子だって最初から知ってたんでしょうが。何を今更ぶつくさと、男らしくない、あほか、甲斐性なし、いっそ死になさい?」
さくっと切って捨てる。
398『T&E』第五話:2006/10/18(水) 05:55:25

だが私は思う。かつみの彼女(候補)である、綿見灯ちゃんは確かに魅力のある女の子だった。男に媚を売る最近の若い子特有のかわいらしさとは違う何か、憂いのようなものを含んだ可憐さだ。私はかわいい女の子が好きなのだ。
「あれよ、あれ。女の子はね。多少謎めいてるほうがミステリアスで素敵なの。あほのアンタにはわかんないかもしれないけどねぇ」
テーブルに置かれたグラスの氷がカラリと揺れた。
「その程度で挫けかけてるんなら、あの子はアンタには手におえないわよ」
苦しいのなら諦めなっさぁい。それだけ言って意識をフロートに戻した。

しばらくフロートを突付いてかつみの方を盗み見た。彼は何がしか考え込んでいるようだ。
かつみの話と私自身が感じた印象から『灯ちゃん』像を想像する。
やや内向型。どちらかと言うとペシミスト。理性的思考者。超然的。大人びているようでどこか無理をしているような少女。少し頑固な芯のある性格。こんなところか。
きっと世渡りが苦手なタイプだ。確かに天然馬鹿のかつみには分が悪い相手かもしれない。

目の前にはまだ苦悩しているかつみの姿があった。私は苦笑して、フロートのスプーンに触れた。
私にもそんな時期があったな。少女から大人に変わる不安定な時期。さなぎが蝶に生まれ変わるその間際。私だってそんなに大人じゃないけどね。

399『T&E』第五話:2006/10/18(水) 05:56:28
流れる音楽を聴きながらスプーンを動かしていた。
ふと、あるイメージが浮かんだ。

悲しい目をした彼と、強い意志の篭る瞳をして対峙する彼女。彼女の心は硬く強い。さらりと揺れる髪。美しく止まった世界。閉じた彼女。それを探す彼・・・・。
そこにかつみと灯ちゃんの顔が埋まった。
奥からにじみ出てくる。情景が次から次へと浮かんでは消え浮かんでは消えていく。脳がじんわりとした刺激に包まれる。
そうだ、彼女ならピッタリなんじゃないだろうか?いや、彼女しか居ない。彼女がいい。あはは、そうね。やってみる価値はあるかもしれない。

「・・・・かっちゃん。アタシが何とかしてあげようか。もちろんアンタの協力は必要不可欠だけど・・・・・・」
フロートをかき回す手が震えた。
「かっちゃん、アンタ土曜の放課後あけときなさい」

かつみは薄く笑う私を訝しげに見ていた。そんな事はどうでも良いのだ。
脳みそはフル回転で今後の予定を練っている。やること、考えることは多い。
「ちょっと店員さんー、こっちお願いします」
当然のように店員呼んで今度はバナナフロートを注文した。
「ちょ、お前お金持ってないんだろ」
もちろんお金なんか無いけど。きっとかつみが払ってくれるだろう。
「うるさい、ちょっと黙りなさい」
私は自分の考えに没頭してしばらくかつみを無視することに決めた。


400『T&E』第五話:2006/10/18(水) 05:57:08



窓から眺める。日のあたる中庭のベンチには何時もの様にかつみと彼女の姿があった。
土曜のお昼である。弁当を広げて一緒に食べているようだ。かつみは一生懸命に何事か話しかけているようなのだが、彼女の方は振り向きもせずマイペースに租借を続けている。涼しげな顔をして食事を終えると、今度は本を出して読み始めた。
相変わらず、まったく相手にされていないようだ。まったく、だらしの無いことである。
私は小さくため息をつくと、私と同じように覗き込んでいる隣の男に顔を向けた。

「どう?」
「あれが、例のコ?」
「そ、かわいらしい娘でっしょ」
「イメージ的には悪くないな」
「性格の方もなかなかよ」
「大人しそうに見えるけど」
「芯はあるコだと思うよ」
「有紀がそう言うなら・・・・いや、しかしなぁ」
「何よ。アタシのすることに文句あるわけ?」
「無い無い、そう睨むなよ」

そう言って彼はカーテンを引く。埃っぽく薄暗い部屋に再び闇が戻った。
401『T&E』第五話:2006/10/18(水) 05:57:40
私は、椅子を引いて座った。ギイ、と年代ものの音がなった。
一年の頃、古道具屋で見つけたいい加減ぼろぼろのアンティークの椅子だが不思議と気に入っている。

「圭、シナリオの方はどうなのよ」
「あんまりだな。キャストが決まんないとこれ以上はイメージ湧かないんだ」
「じゃ、あの娘でイメージしてみて」
「一回みただけじゃ分からん」
「じゃ、もっと見なさいよ、ばか」

わたし達の居るのは第二校舎二階にある文化部のクラブ棟。わたしと圭の所属する映画研究部の部室である。紀谷圭(きたにけい)はこの部の部長で、わたしは副部長。
といっても名前だけの幽霊部員以外の現在活動している部員はわたし達だけなのだが。

「大場、ずいぶん熱心だな」

暗幕代わりの厚いカーテンの隙間から外をうかがう圭の顔に光の帯がかかっている。
その真剣な横顔はいつもより凛々しく見えた。

「有紀?」
「え、あ、うん。な、なんだったっけ・・・・」
「本気であの娘使うつもりなら一回会いたいんだけど?」
「あ、それなら大丈夫。放課後ここ来るように言ってあるからもうすぐ来るんでない?い、いいからアンタはさっさとイメージ膨らませなさいよ」
402『T&E』第五話:2006/10/18(水) 05:58:18

どきどきした。圭とは高校に入ってから知り合って、3ヶ月ほど前から付き合っている。
最初はかつみの紹介だった。中学から一緒で腐れ縁であるかつみが何処からか見つけてきた。
最初はただの友達だったのだが、共通の趣味、映画好きであるという事から意気投合した。一緒に廃部寸前だった映研にも入った。
それからはどこに行くにも一緒で、もういい加減慣れても良さそうなものなのだが、不意に気持ちが飛んでしまう。惚れた弱みというものは恐ろしいものである。

「大場達こっち来るみたいだね」
「あ。そ、そう?じゃ準備しないと。窓、開けといてね」

部屋の外に話し声と二組の足音が聞こえた。かつみ達が廊下を歩いてきているのだろう。
私は二人を迎える為に頭を切り替える。これから二人に重要な話をしなくてはならない。気合いを入れないと。私の説得にこの部の存亡がかかっているのだ。
私は、深呼吸を一つ。
弱みを見せてはいけない。堂々としなければいけない。
絶対に、彼女をこの話に引き込んでみせる。
彼女にあの物語を演じてもらう為に。
正直、私は緊張している。
圭が開いた窓から強い光と風が舞い込んだ。まぶしい。
外の足音が一歩また一歩と近づいてくる。
圭は全開に開けた窓の縁に浅く腰かけていた。
足音がドアの前でピタリと止まった。
「ここですか?」「そうそう、ほら入って、入って」そんな声が聞こえた。
ドアが、開く。
403『T&E』第五話:2006/10/18(水) 05:59:56

「有紀、有紀」
「なによ?」
「俺、お前のこと、超愛してるぞ」

「っ・・・・・・・・いきなり何言うのよっ・・・・ばか!!」

圭はこういうヤツだ。こういう恥ずかしいヤツだ。これから人が真面目な話をしようとするときにわざわざ動揺するような事を言って面白がるヤツだ。
がらりと開いたドアの向こうには突然の大声に驚いた彼女とかつみの顔。
窓のヘリには逆光にククク、と笑う圭の姿。
その間に真っ赤になってうろたえる無様な私。
ああ、もう最悪である。

『Cocoon』
殻に包まれた少女の物語。
私、緒方有紀はこの四人でそれを作りたい。そう、思ったのである―――



『T&E』第六話に続く
404Mr.名無しさん:2006/10/18(水) 13:56:02
そうきたか・・・
これはますます続きが楽しみですな(;´Д`)ハフーン
405Mr.名無しさん:2006/10/18(水) 20:23:35
ダウナーってかデレたら素直クール?になりそうな気もするな
406Mr.名無しさん:2006/10/18(水) 20:54:20
だがそれでもいい
むしろ俺はツンデレより素直クールのが好きかもしれん
407Mr.名無しさん:2006/10/19(木) 17:05:02
ほしゅ
408Mr.名無しさん:2006/10/21(土) 06:18:39
ほしゅう
409Mr.名無しさん:2006/10/22(日) 13:25:48
ほっしゅ
410Mr.名無しさん:2006/10/23(月) 01:38:09
まったりと保守
411Mr.名無しさん:2006/10/25(水) 01:04:17
ほしゅ
412Mr.名無しさん:2006/10/26(木) 22:12:50
お前ら元気?
413Mr.名無しさん:2006/10/26(木) 22:32:27
ノシ
414Mr.名無しさん:2006/10/27(金) 07:48:19
元気だぜ
俺もひとつ書いてみたいなと思うんだが長編じゃないと駄目系か?
415Mr.名無しさん:2006/10/27(金) 09:40:03
短編の方が喜ばれるんじゃないか?
長編より書くの難しいけど。
416Mr.名無しさん:2006/10/27(金) 18:27:41
萌えられればそれでいい
長さなどは特に関係ない
417Mr.名無しさん:2006/10/27(金) 23:22:31
ちょちょっと・・・予告だけして書かないなんて許さないからね!
418Mr.名無しさん:2006/10/27(金) 23:33:08
いいからsageなさいよバカ!
419Mr.名無しさん:2006/10/28(土) 17:11:44
ほしゅ
420Mr.名無しさん:2006/10/28(土) 18:10:47
職人の方々!投下プリーズ!
ツンデレ成分の不足でインポになりそうです(´・ω・`)
421Mr.名無しさん:2006/10/28(土) 18:20:31
つバイアグラ
422Mr.名無しさん:2006/10/28(土) 20:07:17
>>421
べ、別にお礼なんか言わないからね!
423Mr.名無しさん:2006/10/28(土) 23:10:31
未完のボツ文、読む?
424Mr.名無しさん:2006/10/28(土) 23:23:23
完結させてから読む
425Mr.名無しさん:2006/10/29(日) 22:27:30
保守
426Mr.名無しさん:2006/10/30(月) 21:06:10
ほしゅ
427Mr.名無しさん:2006/10/30(月) 22:23:31
>>423
そんなこと言ってじらすつもりなんでしょ!そ、その手には乗らないんだから!
428Mr.名無しさん:2006/11/01(水) 15:06:39
人がいなさそうな時間に保守age
429Mr.名無しさん:2006/11/01(水) 16:24:28
ちょっとだけ書いた。

でもツンデレにならなかった・・・。_| ̄|〇
430Mr.名無しさん:2006/11/01(水) 16:26:36
萌えがあればいい
投下汁
431Mr.名無しさん:2006/11/01(水) 16:46:40
>>430
ごめん・・・しかも男同士・・・。
432Mr.名無しさん:2006/11/01(水) 16:50:15
ウホッ!?

それ投下するつもりで書き始めたのか?
433Mr.名無しさん:2006/11/01(水) 17:09:24
>>432
投下しようと思って書いたんだけど、投下する場所がない。

(;゚∀゚)=3 でもすごくがんばって書きますた!
434Mr.名無しさん:2006/11/01(水) 17:29:04
同性愛板池ww
435Mr.名無しさん:2006/11/01(水) 17:50:30
毒男板ではかまってちゃんを叩かなくてもいいんだっけ?
436Mr.名無しさん:2006/11/02(木) 13:12:57
まぁ、とりあえず投下してみたらイーンデネーノ
なんか気になるし、それに暇だし
437Mr.名無しさん:2006/11/02(木) 14:35:53
ウホッはやめてくれ
438Mr.名無しさん:2006/11/02(木) 20:42:02
脳内で女に変換すればいいんだよ
439Mr.名無しさん:2006/11/03(金) 00:51:32
ちょ、ちょっと、男同士なんて絶対に読まないんだからね!




すまんマジで
440Mr.名無しさん:2006/11/03(金) 12:57:23
非難ゴーゴーの中あえて投下して、みんなに叩かれまくるのを見てみたいと思ってしまう俺
441Mr.名無しさん:2006/11/04(土) 12:29:40
hoshu
442Mr.名無しさん:2006/11/05(日) 18:47:26
ほっしゅ
443Mr.名無しさん:2006/11/06(月) 21:02:10
初代の1です。お久しぶりです。
初代スレのツンデレ小説は途中で投げてしまったのですが、
この小説の設定を生かしたものを作ろうと考えています。
どこかで似たような名前を聞くことがあれば、1が頑張ったんだなと思ってください。

それでは、スレの発展を祈っています。
ノシ
444Mr.名無しさん:2006/11/06(月) 22:25:34
えー、結局初代1の作品は未完かいな
この分だと突出 玲の補完も期待出来んな…
445Mr.名無しさん:2006/11/08(水) 03:01:45
「思ったんだけど」私の向かい側に座っている彼は唐突に語り始めた
「今の世の中はやり直しが利かない。利かなすぎる」
多くの“喪男”と呼ばれる人がそうらしいが
彼も突拍子もなく深く考え込む癖がある。
「人生は一度しかないもんね」
「そういう事を言ってるんじゃない。
この世の中は一度の失敗を必要以上に引っ張る。
挙げ句の果てには一度の失敗で人格まで否定されかねない」
真剣に語る彼。だけど多くの喪男がそうであるように
視線は窓の外を向いたままほとんど私と合わせない。
「だからみんな臆病で、他者と違うものを忌み嫌う。
失敗が怖いから可能性を無為にする」
「そういうところはあるかもね」
私が無難に相槌を打つと彼は満足そうに口の端を釣り上げた

ほんとになんでこんな奴のこと・・・。
溜息混じりに考えてみても、
それでもこいつと一緒にいる時間を幸せに思ってる自分を思い知るだけだった
446『T&E』第六話:2006/11/08(水) 20:53:32
―――『幸せ』ってなんですか。その言葉ばかりが胸をつく
スクリーンの中の世界は元々、こちら側に有ったはずなのに、もう今では、どうしたって手の届かない過去の幻像になってしまった。遠い、遠いスクリーンの中の君は挑発的な微笑を浮かべる。僕は何も出来ずにただそれを眺めるだけだ。
彼女はどこまでも自由なアゲハチョウ。僕は所詮、この大地に囚われている。ただ、ひたすらに空を見上げるしかない一輪のケシの花でしかないのだから―――

『T&E』
第六話『さなぎの心』


「これが、面白いことですか」
いつも通りの涼やかな横顔。その呟きにはおよそ感情の高まりというものが欠如していて、道を歩いていて偶然犬でも見つけた、位のさりげなさだった。
次に聞こえてくるのは空気の抜けたような情けない声だ。
ハ、ハハハ・・・・と乾いた笑い、誰の笑い。俺の笑いだ。何も言えないから、笑う。笑って流すしか出来ない自分。
―――失望させたかもしれない。その思いが俺に笑う事しかさせなかったのだと思う。彼女の反応があまりにも薄かったから。

『畜生、恨むぞ、くそったれ!何がアタシに任せておきなさいよ、この嘘つきっ。灯ちゃんが気悪くしてたらどうすんだよ・・・・』
俺は、正面に座った見知った二人の友人の顔を泣き笑いのような表情で睨んだ。友人達は変に真剣な顔をしていて、こちらをチラリとも見なかった。
447『T&E』第六話:2006/11/08(水) 20:54:24
灯ちゃんの手の中には一冊の小冊子があった。恐らく台本、だと思う。
午後の部室はいやに静かで、灯ちゃんは昔ながらの四角椅子に座っていた。俺はその傍に座った。まるで良く訓練された犬か主人を守る従者のように。

「あなた、映画とか結構見るほう?」
「人並みには」
「芸術関係興味ある?」
「本は好きです。小説とか詩とか」

緒方なんかに相談した自分が馬鹿だったのだ。自分の考え無しに激しく後悔していた。
どうしよう、どうしたらいい。何とかこの場を「冗談でした」で終わらせる方法は無いものか。俺がそんな煩悶を抱えている間も、正面に立った緒方が灯ちゃんに次々と質問を浴びせかけていく。
「な、なぁ緒方、いくらなんでも急すぎるって。いきなり映画に出ろなんて、灯ちゃんが戸惑ってるだろうが。もっと順序だてて説明しろよ、なぁ、灯ちゃん?」
とりあえず彼女を気遣う演技で好感度を狙う自分を情けない。
いや、別に演技でも何でも無いのだ、純粋に彼女の為なのだと自分に言い聞かせ、彼女の顔を覗き込んだ。彼女は相変わらず無表情でぺらりぺらりと台本をめくっていた。

「煩いわねぇ、アタシは彼女に喋ってるのよ。彼女別に嫌がってないじゃない。かっちゃんはちょっと黙ってなさいよねー」
緒方がめんどくさそうに言った。灯ちゃんが少しだけこちらを見た気がした。

「・・・・・・これ、登場人物の名前が変わってますよね。『アゲハ』はともかく『ケシ』なんて」
灯ちゃん白くスラリとした、そういえば白魚のようなという形容詞があったなと思い出すような指が、すっと膝の上に広げられた台本の一文を撫でた。
「『また、彼女からの手紙が来たんです。遠い異国の地に居るはずのアゲハから』『先生、僕はアゲハの為に何が出来ますか?可哀想な彼女の為に・・・・』ケシ、振り向く・・・・」
灯ちゃんが呟くように台詞を読んだ。
448『T&E』第六話:2006/11/08(水) 20:55:35
「まだ、ちょっとしか見てませんけど、少し不思議で、少し悲しい話ですよね。多分・・・・大切な人が遠くに行ってしまった?」
「興味・・・・出てきた?」
緒方が我が意を得たりと、にんまり笑うのが見えた。
「そう、物語の舞台は近未来・・・・ってほどでもないんだけど、現実のこの世界と似てるけどちょっとだけ違う世界。ある恋人同士が居るんだけど、その彼女の方が外国に、まぁ、戦争してる国なんだけどね、そこに写真取りに行っちゃうのよ」
「写真ですか」
「戦場カメラマンってやつね」
「女の子が一人で、ですか?それに具体的に何処に行ったんですか?」
「一人じゃないかもしれないけど・・・・そこはもう、どうでもいいのよ。とりあえず、彼女が遠くて危ない異国の地に旅立っちゃったの」
「はぁ」
「でね、その彼氏が彼女をずっと待ってる訳なんだけど・・・・」

緒方は、灯ちゃんの正面に椅子を置き、座りなおすとまるで機関銃のような勢いで物語のあらすじを話して聞かせ始めた。
灯ちゃんは相変わらずの感情のよく読み取れない顔ではあったが、律儀にそれに頷きつつ黙って聞いていた。
こくこくと頷く彼女の横顔を眺めていると、本当に根が素直な良いコなのだなぁと、じんわり胸に迫るものを感じた。しかし、だけど何故、俺に対してはあんな風に素直になってくれないんだろう・・・・
俺はなにやら釈然としない気持ちを抱える羽目になる。
緒方の意識の中にもはや俺は居ない。熱心に話しこむ二人の横でいたたまれない思いに身をよじった。
449『T&E』第六話:2006/11/08(水) 20:56:16

「圭ちゃん。あいつどうにかしてよ」
そして、腰を上げ奥に移動することに。部屋の隅で事の成り行きを眺めていた機関銃女の保護者に八つ当たりだ。
「男のヤキモチってカッコ悪いらしいな」
唯一の仲間だと思われた圭さらりとかわされてしまう。どうやらこの場に味方は誰一人居ないらしい。
「彼女取られて、ふて腐れてるな」
「・・・・うっせい」
窓際にもたれかかって中を眺めていた圭に並ぶ。
紀谷圭という男はいつでも『俺は何でも分かってるんだぜ』と言うような顔をして笑う。丁度、今もそうだった。
「彼女とどこまでいった?」
「・・・・まだ、何にもしてないっす」
「だと思った」
緒方のマシンガントークはまだ続いているようだった。午後三時の第二校舎は静まり返っていて、緒方の大げさな語り口と甲高い声が隅々まで響き渡って行くようだった。
今、世界には俺たち四人しか居ないのではないのか?なんていう馬鹿馬鹿しい空想なんかが浮かぶほどに。
「実は、あの脚本書いたの俺なんだよ」
「だからなんだよ」
確かに、俺は完全にふて腐れていた。圭は静かに彼の書いたという物語を説明しはじめる。
「あれ、一応恋愛モノなんだ。まぁ、ただのボーイ・ミーツ・ガールの話じゃないんだけどな」
「俺には関係ないっすね」
「キスシーンとか、あるってのに?」
「なんだよそれ、合成とかで?」
「あほ。何でSFでもないのにわざわざそんな事するんだよ。もちろん実写でこうブチュ〜っと濃厚なのを一発な」
圭は何がそんなに面白いのか顔歪めて笑っていた。
「そんなの嫌だ!」
正直な気持ちを伝えた。
「お前、俺の味方じゃないのかよぉ・・・・」
灯ちゃんが他の男とキスをする?しかもそれが映画になって多くの人に見られる!?冗談じゃない。あ、おてんとぅ様が許したってぇ、このかつみさんが、あ、ゆぅるさなぁいぜぇ!!
450『T&E』第六話:2006/11/08(水) 20:56:50
俺がよほど悲壮な顔で睨んでいたのだろう。圭がまぁ落ち着けといった風に笑った。何のためにお前も呼んだと思ってるんだよ。そう微笑むのだ。
「もしかして・・・・その相手役って俺?」
どう思う?そう言って圭は笑いながら俺の顔を見た。

緒方の言葉がよみがえる。『何とかしてあげないことも無い』
映画の撮影で恋人役を演じるうち、お互いを意識せずには居られなくなる二人。いつの間にか縮まる二人の距離。そして決定的なキスシーン!
俺の脳裏にバラ色に彩られた幸せな未来が怒涛のように広がって行った。
毎日灯ちゃんと一緒に登下校し、文化祭や体育祭などの各種イベント事には一緒に行動し、夏な冬なの長休みには一緒に旅行をし、バレンタインデーにはみんなが羨ましがる中、手作りチョコを貰うのだ。
そして、俺は卒業間際、『もうすぐお別れですね・・・・』と寂しそうに俯く彼女を慰め、卒業してからもずっと一緒だよ・・・・なんて呟きながら彼女を抱きしめ将来を共に誓い合うのだ!
その頃には、灯ちゃんはその可愛い声で今の抑揚の無い言い方など比較にならないほどの親しみを込めて俺のことを『先輩っ』と呼ぶのだろう。そう、ハートマークが踊るほどに!
わははははははははは!!

「ハァハァハァハァハァハァ・・・・」
「はぁはぁすんなよ、うっとおしい奴だな・・・・」
圭が何か汚いものでも見たかのように眉を顰めたのと、じゃあ、決まりね!といやに嬉しそうな緒方の声が聞こえてきたのはほぼ同時だった。

451『T&E』第六話:2006/11/08(水) 20:57:33




帰り道、圭は緒方を送っていくというので、俺は灯ちゃんを家まで送るべく彼女の隣を歩いていた。やはりいつも通り、良く訓練された犬か主人を守る従者のように。俺の心は浮かれに浮かれていた。

結局、灯ちゃんは緒方の申し出を受けたのだ。普段、あまり周りの物事に関心が無いかのような彼女を見ていた俺にそれは結構以外な結果だった。
「灯ちゃん。何で、こんな急な話を受けたの?」
ふと、聞いてみたくなった。
いつもの通学路。良く考えれば付き合ってなくたって、俺と灯ちゃんは毎日こうして一緒に歩いているのだ。俺の考えるバラ色の未来はもう半分くらい現実になっているのかもしれなかった。
「いけませんか?」
灯ちゃんが眼鏡の奥からじっと俺を睨む。訂正、『未来』は未だ来ていないから『未来』というのだ。灯ちゃんは何故かさっきから機嫌が悪いようだった。いつもより少しだけ刺々しい気がした。
「せ、先輩には関係ありませんよ。それとも先輩、私のすること全部知っとかなきゃ気がすまないとかいうタイプの人間ですか?」
相変わらずのきつい一言が俺の胸を貫く。そんなつもりではなかっただけに少し悲しくなった。
「なんなんですか。私、まだ先輩の彼女じゃありませんよ」
「い、いや。そんな事ないけど灯ちゃんってこういうのあんまり積極的に関わるようなイメージじゃなかったからさ。ほ、ほら。学校のイベントで馬鹿みたいに騒ぐ奴らを『くだらない』って醒めた目で見てるけど入って行けない・・・・みたいな!?」
焦った俺は、精一杯おどけた振りをして誤魔化そうとし、さらに失敗したことに気づく。
いつもは冷静な灯ちゃんの目がかってないほどに怒りに染まっていた。
「い、いや。だから俺がそんな偏屈かつ人嫌いな灯ちゃんを楽しませてあげようと日々色々と努力を・・・・・・・・」

「よっ、余計なお世話ですよ!」
瞬間、灯ちゃんがぐっと体を捻った気がした。視界の下の方から何か黒いものが迫って来たと思った瞬間、俺の意識は何者かによって強制的に切断された。

「あ・・・・そういえば図書館の本何冊も入って・・・・」
そんな灯ちゃんの呟きと共に・・・・
452『T&E』第六話:2006/11/08(水) 20:58:36

            ◆

私は珍しく反省していた。いくらなんでもいきなり殴るなんてやり過ぎた。鞄の当たり所も悪かったのだろう。

近所の公園のベンチに座っていた。夕暮れの迫った児童公園はオレンジ色に染まっていて、遅くまで遊んでいた子供達は母親に呼ばれ暖かな夕食の用意された家に帰っていくのだろう。
そんな親子がこっちを不思議そうに見ていた。少しだけ笑って手を振った。子供はそのまま母親の所に走っていった。
膝の上には鼻にティッシュを詰めた情けない姿の先輩が居る。ベンチに長々と伸びてしまっている先輩の顔は怖い夢でも見ているのか時々苦悶に歪み、うーうー唸っていた。自分のせいとはいえ、人がわざわざ膝枕までしてあげているというのにいかにも失礼な事である。
親子連れの影は夕焼けに長く伸び、帰っていく。
私はそれを見送ると膝の上の彼の寝顔を、ぼんやりと眺める。

何故、自分はあんなにも腹が立ってしまったのか。それは結局のところ、図星だったからだろう。
前から目を付けられていたといっても、いつもいつも自分の事ばかり見ている訳ではあるまい。きっと普段の自分から彼には分かってしまったのだろう。子供の頃から今までの自分を思い出す。

他人は怖いもの。信用できないもの。

常に一枚壁を隔てて人と付き合ってきた私には、先輩のあっけらかんとした明るさと考えもなく人の心の中に入って行ける所が羨ましくもあり、疎ましくもあった。
緒方有紀は情熱をもって自分の夢を語った。
ほとんど初対面の自分相手に楽しそうに夢を語る緒方にもかつみと同じ憧れを感じたのだ。
一人で何でも出来る筈だったのに。一人でも寂しいなんて無い筈だったのに。
まったく、嫌になるくらいずかずかと人の中に入ってくる。
少しずつ、少しずつ、壁が崩されていく。

453『T&E』第六話:2006/11/08(水) 20:59:17
ため息をひとつだけつくと、眼鏡を外し、ゆっくりとそれを先輩の顔にかけた。
「まったく・・・・先輩って本当に馬鹿っぽくて考え無しで・・・・でも、こうしたら結構いい感じなの、知ってました・・・・?」
眼鏡をかけた先輩は少しだけかっこよく見える。
眼鏡を外した私は少しだけ素直になれるのだ。
「馬鹿・・・・ですよねぇ」


不意に胸に違和感が広がった。数回、小さく咳き込んだ。ケホケホと咳き込む音が公園に響いた。
なんだろう、風邪をひいたかのかもしれない。
気がつけば太陽は完全に沈み、公園はすっかり暗くなっていた。空にはぽっかりとまるい月が昇っていた。
こうやって寝顔を眺めているのも悪くは無いけれどいい加減帰らないといけない。

「先輩!先輩!いい加減起きてください。起きないなら置いて帰りますけどいいんですか?」
先輩はなかなか起きない。それどころかむにゃむにゃと幸せそうな寝言まで言っている。
このまま、ほって帰ろうかな。そんな気にもなる。

『私が、映画の話引き受けたのは、先輩が居るからに決まってるじゃないですか・・・・』

そんな気持ちを正直に言えるのは一体いつになるだろうか。とりあえず、先輩はいっこうに起きてくれる気配がなさそうだ。
このまま置いて帰ろう。そう決めたのと、大げさなくしゃみと共に先輩の目が覚めたのはほぼ同時だった。

本当に、馬鹿。自分も、やっぱり同じくらい馬鹿なのだろう。そう思った。


『T&E』第七話に続く
454Mr.名無しさん:2006/11/08(水) 21:45:55
ハァハァ・・・
すごくいいよ・・・すごくいい・・・
おかげさまでツンデレ成分補給できたよ・・・
455Mr.名無しさん:2006/11/09(木) 01:56:26
VIP落ちててツンデレスレ見られなくて悲しいんだぜ?

すげー良いんだが最後の方の咳がなんか気になる…
体は大事にしてくれー!
456Mr.名無しさん:2006/11/09(木) 22:47:33
しばらくはバイアグラいらずだよ!
GJ!!!!!!
457Mr.名無しさん:2006/11/10(金) 11:48:45
タカシ「おれ・・おまえのこと好きだよ・・」
かなみ「・・・え?な、なに言ってんのぉ!?」
タカシ「俺と付き合ってくれないか」
かなみ「ば、ばか!変な冗談はやめてよね!」
タカシ「冗談じゃねーよ!好きなんだよ!」
かなみ「これって何かの罰ゲームでしょ?いい加減にしてよ!」
タカシ「本気だよ!お前の気持ちが知りたい」
かなみ「ふっふざけないでよ!!」
タカシ「お前は俺のことどう思ってるんだよ?」
かなみ「・・・うっうるさああああい!!!!      チュ    」
タカシ「・・・ぅわ!!!キ、キス???」
かなみ「う、うるさいから黙らせただけだからね!!で、でもタカシのこと嫌いじゃないよ・・・」
タカシ「・・・かなみ・・・」
かなみ「あっでも愛してるとかそんなんじゃないからねっ!そのなんというか・・・えっと・・・」
タカシ「かっかなみいいいいいいいいい!!!!」
かなみ「・・・あっだめっやめてっ!  あっ   あっ   いやぁ!  
     あっ・・・は・・・あっ  ん・・・んっ んん・・・(ピチャピチャ・・・ギシギシ)
    (ヌチュ!  クチュクチュ )  あっん・・・あっあっあっはぁん・・・
    (パンパンパン!!!!)ああああ────────────!!!」
458Mr.名無しさん:2006/11/11(土) 13:09:28
>>457
ageるなでもちょっと面白いからおk
459Mr.名無しさん:2006/11/12(日) 18:45:34
規制解除記念保守
460Mr.名無しさん:2006/11/14(火) 10:04:00
hosyu
461Mr.名無しさん:2006/11/15(水) 11:23:33
462Mr.名無しさん:2006/11/15(水) 21:13:10
463Mr.名無しさん:2006/11/15(水) 21:21:34
464Mr.名無しさん:2006/11/16(木) 20:09:40
465Mr.名無しさん:2006/11/16(木) 21:39:47
466Mr.名無しさん:2006/11/17(金) 21:52:39
467Mr.名無しさん:2006/11/17(金) 21:56:54
468Mr.名無しさん:2006/11/17(金) 23:19:06
ワラタw
469Mr.名無しさん:2006/11/18(土) 03:54:08
ホッシュ
470Mr.名無しさん:2006/11/18(土) 17:39:10
ちょっと,保守するんだからね!
待っててやるんだからね!
471Mr.名無しさん:2006/11/18(土) 20:07:53
保守ついでに質問
小説初挑戦だけどかいていい?
472Mr.名無しさん:2006/11/18(土) 20:20:44
書けばヨロシ。誰も止めはしない。
473Mr.名無しさん:2006/11/18(土) 20:56:30
この過疎を打開してくれる救世主をお待ちしております
474 ◆7wztWnochM :2006/11/20(月) 05:57:00
酉テス
475 ◆PBWeu9ps86 :2006/11/20(月) 05:57:45
酉テス
476Mr.名無しさん:2006/11/20(月) 06:00:59
トリスタン
477Mr.名無しさん:2006/11/20(月) 21:16:24
水色の薄い服の下で、二つの膨らみがユサユサと揺れている。
「ねぇ、さっきからどこ見てるのよ。スケベ、ヘンタイ」
「何を言っているんだか…、笑わせるなよ。お前の本当の姿はそれではないだろ。上手く化けやがって」
彼女は、本当のところ、人間に擬態している水龍だ。ヌメヌメとした深青色の鱗姿を
思い出すと、湧き上がった興奮も頭を引っ込めてしまう。
旅の途中で通りかかった村で、依頼を受けて退治した水龍だった。
深い怪我をしていたことも幸いし、難しい依頼ではなかった。
だが、最後の止めをさそうとしたときに、俺は水龍に命乞いをされる。プライドの高い水龍が
命乞いをしてきたことに興味を覚えた彼女を助けることにした。
依頼主とは、俺が彼女を管理すると言うことでまとまった。
依頼料は貰えず、よけいな食いぶちが増えるという結果になったが…
「水浴びしたいんだけど、ほら、あそこの泉でさぁ」
「いい加減にしろよ、また水浴びか。」
「しょうがないでしょ。これでも歴とした水龍なんだから。それから、覗かないでよ。ヘンタイさん」
「はいはい、俺はここで寝ているから、さっさと行って来いよ。」
「ふ〜ん、か弱い女性が、暴漢に襲われないように起きていてくれないんだ。」
「お前のどこがか弱い女性なんだか…あほらしいから俺は寝る。」
彼女は、なんで女心がわからないのかしらこの唐変木等々言いながら水浴び行った。
ウトウトと眠っていた俺は、激しい破壊音で目を覚ました。
音のしたほうに行ってみると、泉の淵に彼女が立っており、辺り一面が
すべて破壊され更地になっている。
「おいおい、やりすぎだろ。何も賊を相手にここまですることは…ないだろ。」
俺は、彼女の真の力に正直驚いていた。彼女を襲おうとした賊は、超高速の水により
ほぼ粉末状態にまで破壊されている。彼女が怪我をしていなかったら、
俺は今頃ここには………………………
動揺を隠しきれない俺を厳しい鋭い目で見つめると言った。
「バカ!! 本当、鈍感なんだから。この世で私の裸を見ていいのは、貴男だけなんだから。」
478Mr.名無しさん:2006/11/20(月) 21:32:14
もちろん続きあるんだよな?
479Mr.名無しさん:2006/11/20(月) 23:09:37
HOSHUせよ!HOSHUせよ!
480Mr.名無しさん:2006/11/21(火) 18:09:30
hoshu
481Mr.名無しさん:2006/11/22(水) 14:35:56
しかたねえ
保守してやるよ
482Mr.名無しさん:2006/11/22(水) 20:41:52
人の本棚を見るとその人の意外な一面が見えてくるという。
本屋さんでバイトをしている及川君も同じようなことを日々感じていた。
文学賞が発表されると、受賞作品を必ず買いに来る中年のサラリーマン
ライトノベルを買っていく地味な高校生。学習参考書と漫画を買う小学生…
お客さんの生活や人生の一片を買っていく本を通して感じられる時給は安いが面白い仕事だった。
「カバーをお付け致しますか?」
「うん、お願い。と言うか、いい加減覚えなよ。いつもカバーは付けるでしょ。」
「あっ!! すみません」
そのお客さんは、いつも近代の純文学を買っていく。 だが、誰がどう見ても、近代文学を読む文学少女には少しも思えなかった。
やや派手目な、ぞくに言う今時の女子高生だった。
クリスマスイブの日も彼は本屋のバイトをしている。
暗くなり始めたころに、何故か例の女子高生がやって来た。
「今日は、ラッピングをお願い。」
この時期になるとよく頼まれることなので
小さな書店が生き残るため一つとして、クリスマスラッピングをサービスにしていた。
「どの絵柄に致しますか?」
「う〜ん、そのスッキリした柄にしてくれない。リボンは青でさ」
兄弟へのプレゼントかぁ…と思ったが、包んでいる本が、
いつもとは違う高校生向きの青春恋愛モノなのが少し気になった。
「毎度有り難うございました。」
ラッピングされた本を大事そうに抱えると彼女は本屋を出ていく。

そろそろ閉店時間というときに、いきなり彼女が店に飛び込んできた。
「これ、プレゼント。受け取って。お願い。」
つい先ほど彼女自身が買った本だった。
いきなりのことで戸惑っている彼に、彼女は早口で続ける。
「本が好きなんでしょ?わざわざ、時給が安いここでバイトしているんだから。
 私、本なんてよくわからなかったけど、気を引きたかったから難しい本を買っていたんだ。
よくわからないけど、えっと、その、あれ…この本は面白いから、受け取って。お願い。」
無理矢理、本を押しつけると彼女は、嵐のように出ていった。
寒さで赤い顔をさらに真っ赤に染めて…
483Mr.名無しさん:2006/11/22(水) 20:46:36
これはいい微ツンデレですね
484Mr.名無しさん:2006/11/23(木) 05:20:41
いいね!
485Mr.名無しさん:2006/11/23(木) 17:45:32
俺的にはツン成分多い方が好きなんだが、乙!
486Mr.名無しさん:2006/11/24(金) 04:08:47
続きはいつだ?
487 ◆NDzg39pmjE :2006/11/24(金) 05:10:53
ふふふ
488Mr.名無しさん:2006/11/24(金) 10:41:58
age
489Mr.名無しさん:2006/11/24(金) 22:53:56
春の暖かい風を受けながら屋上で食べるお弁当は何とも言えない開放感と相成って美味しいものだ。
ただ…一つだけ問題があった。
少しずつ無くなっていく気がする…僕のお弁当
プチトマトの次は卵焼きだった。
「あの…お弁当…」
「なあに?」
深い溜息をついて、視線をお弁当に戻すとチキンナゲットがなくなっていた。
「ごちそうさま。」
毎日のことにさすがに堪忍袋の緒が切れた。
「だから、なんで僕のお弁当をいつもつまみ食いするんだよ!!」
屋上全体に僕の声が大きく響き渡る。
立ち上がった僕を見下ろすように背の高い江上さんも立ち上がった。
いきなり僕の胸ぐらを掴み顔を近づけると言った。
「五月蝿いわね。チビ介。いいじゃないお弁当の一つや二つ。お弁当ぐらい私が
作ってくるわよ。返せばいいんでしょ。返せば…」
 翌日、いつものように屋上でお弁当を食べていると、江上さんがやってきた。
手に持ったお弁当らしきものを押しつけるとぶっきらぼうに言った。
「はい。お弁当…作ってきたから、ちゃんと食べてね。」
押しつけられたお弁当箱をゆっくりとあけると…
言葉では表現できないようなお弁当だった。間違いなく腹を壊すと
頭の中をエマージェンシーコールが最大音で響き渡っている。
徹夜で作ったのだろう…江上さんの顔には隈ができていた。
断ったら殺されそうな雰囲気を感じ取ることが出来る。
「えっと…これ食べないと…ダメ?ダメだよね…アハハハ」

490Mr.名無しさん:2006/11/24(金) 22:55:05
>>489
「あら、お邪魔じゃないなら、ケーキとジュース置いておくわね。
ヒロキは食べちゃダメだからね。それじゃ江上さんごゆっくり」
と言って妙に浮かれている母親がうっとうしく感じる。
母親が出ていった後の沈黙を破ったのは彼女だった。
「……せっかく作ったのに…あんたなんか嫌いよ」
「…って嫌いってなんだそりゃ?そもそもお見舞いにきたんじゃないのかよ?
こっちは君のお弁当で腹痛とトイレ…うっ…帰れ!!」
と言い返し勢いよく枕を投げつけた。運の悪いことに江上さんの顔にそれがもろに直撃した。
「ご、ごめんなさい…わたし、わ、……がんがんばったのなあにじょいgふぁう゛ぁdsc」
布団に潜り込み反撃に備えていた僕に聞こえてきたのは、嗚咽混じりの江上さんの泣き声だった。


「はい、お口開けて、あ〜ん」
必死に口を閉じて、僕は逃げる。
「どうして食べてくれないの。必死に作ってきたのに…」
「ああ、もう泣かないでよ。江上さん…ちゃんと食べるから」
ちょっと赤くなった頬を膨らませて、肉団子らしきものが刺さったフォークを押しつけて江上さんは言った。
「だったら口を開けて。それから私のことは由里子って呼んで…」
どうやら…僕のお弁当は無くなりそうです。
491Mr.名無しさん:2006/11/25(土) 10:52:58
hosyu
492Mr.名無しさん:2006/11/25(土) 13:12:52
もう少しツンが欲しい気もする・・・
ツンあってこそのデレ
493Mr.名無しさん:2006/11/25(土) 16:55:40
        ,,__                     _,,..-,'
     ,,__'|  ->                __,,,,,  |  |_-,
      >    ''ーー_,.__..__..__.|ヽー-.-ゝΓイ',ー'  .|
      .|     Γ_| イ| イ.|   ||   /| | |  |/|    ,|
      |  | ̄|  .| | ‖ レ'|| \| ̄"| レ- | .レフ||   |-   |
       ̄"' .|  ..|,| .‖  ||  .|レt | |" /ー" ||  //   .|
      _--''"  ノ|" ‖  |.|__∧|// |_L,,|  ||  //    |
     |    / r-;''|/ ̄     ̄     ̄ |/ ̄ r,_|/_/|  .|
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     レ                              ヽ|

今日5時半からだぞ わすれんな
494Mr.名無しさん:2006/11/25(土) 17:09:06
なんか長編を書いては消して、なんだな。飽きるんだろうな
とりあえずねんがんのつよきすをてにいれたのでやるか
495Mr.名無しさん:2006/11/25(土) 17:26:44
文字制限内でなんとかしようとする極超短編好きなので
なかなか難しいです。ツンデレは…
ツンを長くするとデレが薄くなり
デレを短くするとツンデレではなくなり…
ツンを長くして、デレになる瞬間をえがくしかないのかねぇ
496Mr.名無しさん:2006/11/26(日) 15:50:18
  _   ∩
( ゚∀゚)彡 繋ぎ屋!繋ぎ屋!投下希望!投下しる!
 ⊂彡
497497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/27(月) 17:39:00
久しぶりにこのスレ見つけて何となく嬉しかった
まだ続いていたのかと!!

前もちょっと書いていてまた書きたくなったので
投下してみます

ブランクあるから文章変かもしれないけど
そこら辺はご了承下さい

では、暇つぶしにどーぞ
498497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/27(月) 17:40:18
地方から就職で東京に来てもうすぐ6年が経つ。
せわしい都会の暮らしにも慣れ、僕(嶋川源一郎)は平凡な日常を過ごしていた。
今日も何もなく一日が終わるはずたっだ
あのコンビニに行かなければ・・・


「アレ?今日は休みか」
いつも夕食を買う個人経営のコンビニが臨時休業だった。
しかたなく少し離れたチェーン店のコンビニへ向った。

陳列棚からカルビ丼とコーンサラダ、そして缶ビールを2本カゴにいれレジへと向う。
チェーン店のレジは少しだけど行列が出来る。
僕はこの行列が嫌いだ。

隣のレジでは若いカップルが仲良さそうにおでんを物色している。
やれウインナー巻きだ、いや、ちくわぶだと。
東京に出てきてから彼女がいない僕にとって、その光景は眩しく見えた。
正直、羨ましい・・・

レジも進み、ようやくあと一人で僕の順番になった。
前に並んでいるのは、20代後半ぐらいの女性だった。
いかにもキャリアウーマンといった感じのスーツを着ていて
気軽に声をかけれないオーラを漂わせていた。
  (こんな人が上司だったら、神経すり減りそうだな・・・)
そんな事を考えていると、レジの姉ちゃんがその女性にこう言っていた。
  「100円足りません」
499497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/27(月) 17:41:58
 「えっ、あ・・・・」
その女性は少し動揺した様子で財布を広げた。
そして、右、左とズボンのポケットに手を入れる、そしてまた財布を見る。
どうやら足りないみたいだ。
隣にいたカップルの女がそれを見て、小声でこう言った。
 「ダッサいね、あの人」
その言葉に何故か不快感を覚えた僕は、ポケットに入っていた100円を握り
前に並んでいる彼女の横にしゃがみこんだ。

突然、視界に入ってきた僕を上から見下ろす彼女。
その目はとても好戦的だった。
僕は少しためらいながら、しゃがみこんだまま彼女に話しかけた。
 「落ちていましたよ、これ、あなたのですよね?」
そう言って100円が乗っている右手を彼女に差し出す。
彼女は一瞬驚いた表情をしたが、サッと僕の右手から100円を取り
レジの姉ちゃんに渡した。
 「ちょうどのお預かりです。レシートは?」
 「いりません」
とても冷たい声でこう答えた彼女はスタスタとコンビニを後にした。

 「お礼の一言もないのかよ・・・」
そう小声で呟いて、僕は少し苦笑いをしながら立ち上がり、カゴをカウンターの載せる。
 「優しいんですね」
レジの姉ちゃんが微笑みながら話しかけてきた。
 「えっ、い、いや、早く家に帰りたいんで・・・」
普段、女性と会話しない僕は突然女性に会話を振られると
気の聞いた事が言えない。
500497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/27(月) 17:43:06
 「ありがとうございました」
レジの姉ちゃんの声に送られ、僕はコンビニの出口に向う。
コンビニを出るとちょっと離れた所にさっきの女性が立っていた。
僕の姿を見ると真っ直ぐにこちらに向ってくる。
そして、僕の前に立ち止まる。
  (なるほど、さっきは人前で恥ずかしかったからお礼が言えなかったのか)
でも、彼女が発した言葉は僕の想像を遥かに超えていた。

 「余計な事しないでよね!まったく、恥かいたじゃないの!!」
腕組みをして、まくし立ててくる彼女。
 「え、ぼ、僕のセイ?」
罵声される事をしたっけ?いや、むしろ感謝される事したハズなのに・・・
 「ちゃんとカバンの中も見ればお金あったのよ!」
たたみかけるように威圧してくる彼女。
 「あ、ああ、すみません・・でした」
その威力に圧倒され、僕は思わず謝ってしまった。
 「本当は謝ってもらったぐらいじゃすまないけど、もういいわ」
そう言うと彼女はスッと背を向け、歩き出していった。
取り残された僕はポカーンと彼女の背中を見ていて、
その姿が見えなくなったトコロで我に返った。
 「何で俺が謝らなくちゃいけないんだ?」
考えれば考えるほど腹が立ち、コンビニに戻り、缶ビールを買い足す事にした。
501Mr.名無しさん:2006/11/27(月) 18:06:57
新作期待sage

ときに、某コピペからネタぱくったろww
502497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/27(月) 18:28:56
>>501
期待に応えるよう頑張ります

パクれるものはパクりますよwww
このネタのおかげでヒロインの人物像作るの楽だったし
503497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/27(月) 18:30:09
>>500
翌日、社食で同僚達と昼食を食べている時に昨日のコンビニでの話しをした。
みんな一様に ふざけた女だ と言っていた。
ただ、一人だけみんなとは違う意見を言う子がいた。
 「もしかしたらその人は照れ隠しでそう言ったんじゃないですか?」
そう言ったのは2年後輩の宇野久子だ。
実は密かに僕はこの子の事が好きだった。
 「そう?それにしてもあの言い方はなかったぞ」
 「うーん、まぁ人それぞれですしね、でも・・・」
 「でも?」
 「私、凄いと思います。困ってる人をさりげなく助けるなんて」
思いがけず、意中の子から褒められ、僕は取り乱した
 「い、いや、そ、そ、そでれほでども・・ま、まいったな・・」
僕のとんでもないドモリに宇野久子はクスクスと笑い出す。
この笑顔が見られただけで、ご飯3杯は食べられるな。


仕事が終わり、駅に着くと雨が降っていた。
こんな日に限って折り畳み傘をカバンに入れ忘れるものだ。
売店で買っていくか少し迷っていると、視界にどこかで見た事のある女性が飛び込んできた。
その女性は真っ直ぐ僕の方に向かってくる。
えっと、この女性は・・・
思い出すと同時にその女性は僕に話しかけてきた。
504497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/27(月) 18:31:28
 「何?傘も持ってないの?」
話しかけてきたのは昨日の100円女だ。
 「た、たまたま忘れて・・・」
 「自分の世話も出来ないクセに、よく他人の面倒を見ようと思えるわね?」
 「す、すみません・・・」
何故かまた謝ってしまう。
 「まったく、しょうがないわね、途中まで入れてってあげるわ」
 「えっ、いや、でも・・」
 「何?人にはおせっかいやいといて、人の親切は受け取れないっていうの?」
 「そ、そんなんじゃないですけど・・・」
 「いいから傘持ちなさいよ」
そう言うと彼女は傘を僕に押し付けてきた。
されるがまま、僕は傘を持つ。
そしてなるべく彼女が濡れないよう傘を彼女に寄せて歩き始めた。

それから僕の家に帰るまで、何も会話もなく歩き続けた。
僕は何を話していいか分からず、彼女が話しかけてくるのを待った。
でも、彼女は何も言ってこなかった。
ただ、雨が地面を叩きつける音だけが聞こえてきた。
 「あっ、僕、ここなので」
マンションの入り口前で僕は立ち止まる。
 「ねぇ、何か言うことないの?」
下から覗き込むように僕を見る彼女。
 「え、あ、ああ、傘入れてくれてありがとうございます」
そう言って彼女に傘を渡そうとする。
すると彼女はハァっと小さなため息をつく。
505497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/27(月) 18:32:33
 「そうじゃなくて、私はアンタからお金を借りたのよ?」
 「そうですね・・・」
 「だったら私はアンタにお金を返さなくちゃいけないでしょ?」
 「そ、そうですね・・・」
 「ああ!もう、もっとテンポよく話せないの?!」
あなたが威圧的だから話せないんです、とは、とても言えなかった。
彼女は財布から100円を取り出し、僕に差し出してきた。
 「はい、これで貸し借りなしだからね」
 「あ、ありがとうございます、じゃあ僕はここで」
傘を彼女に渡し、立ち去ろうとすると、彼女は僕を呼び止めた。
 「ちょっと待って、そういえば利息が発生するわよね」
 「えっ?」
 「当日に返してないんだから、利息が出てもしかたないわね・・・」
言葉の真意が分からず、僕は少しだけ狼狽した。
 「い、いや、利息なんていいですよ、たかが100円だし」
 「それじゃ、私の気がすまないの!」
 「は、はぁ」
 「そうね、ねぇ、今週の土曜日って休み?予定は?」
 「え、あ、特に予定はないですけど・・・」
 「そう、じゃあ、駅に10時に来て」
 「はあ?」
 「分かったわね?10時よ、じゃあ私はこれで」
 「あ、あの、ちょ、ちょっと・・・」
一方的に僕の休みの都合を決め、彼女は雨の中を帰って行った。
 「いったい何なんだ・・・」
雨に濡れている事も忘れるくらい、僕は呆然としていた。
506Mr.名無しさん:2006/11/27(月) 18:43:28
イイヨイイヨー
507Mr.名無しさん:2006/11/27(月) 19:44:23
…('A`) こんな子が現実にいればなあ・・・・・・・
508Mr.名無しさん:2006/11/27(月) 23:14:54
ちょちょっと、ぜったいに誉めたりしないんだからね!
時間があったから読んであげただけなんだから勘違いしないで、ホントなんだから!
509497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/27(月) 23:24:18
>>505
翌日、いつものメンバーで昼食を食べている。
昨日の100円女との出来事をみんなに相談してみた。
 「それって何かヤバクねーか?」
 「えっ、ヤバイって何が?」
 「例えば高いツボ売られたり、英会話教材とかさ」
 「そ、そうか?」
同僚の言葉に不安にかられる。
 「そうじゃなきゃ、1,2回会った男を休みの日に誘うか?」
 「言われてみればそうかもな・・・」
同僚達の言葉に僕は頷き、土曜日は駅に行かない事にしようと思った。
 「でもその人、本当はお礼がしたいんじゃないんでしょうか?」
宇野久子の言葉に全員ポカンとした顔をする。
 「きっと・・・照れくさかったんですよ」
 「そうかな〜」
 「行ってあげたほうがいいですよ、でも・・・」
 「でも?」
 「え、あっ、いや、な、なんでもないです・・・・」
そう言った宇野久子の表情はなんだかつまらなそうに見えた。
その表情が気になったが宇野久子の言ってる事も当たってるかもしれない。
僕は土曜日、あの100円女と会う事にした。
510497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/27(月) 23:25:20
土曜日になった。
よく考えたら女性と二人で外出するなんて何年振りだろう。
最近は実家に帰った時、オフクロをスーパーに連れて行くぐらいしかなかったし。
服は、ユニ○ロでいいのか?靴はNI○Eしか持ってないし。
しかも時計はGシ○ックか・・・
コーディネイトとは程遠いアイテムしか持ち合わせていない僕にとって
これは予想外のハプニングだった。
30分悩んだ挙句、僕はスーツで家を出る事にした。
何かヤバクなったら 「これから仕事だから」 と言って逃げれるし。

駅が近づくにつれ、僕はとてつもない不安にかられた。
どこに行くかも分からないし、相手がどこの誰かも分からない。
そんな状況なのにノコノコ会っていいのだろうか?
そこで改札が見える喫茶店に入り、相手の様子を伺うことにした。

「まるで探偵にでもなった気分だ・・・」
ホットコーヒーを飲みながら僕は呟いた。
時計は9時55分になろうかとしている。
すると、自動券売機の横で立ち止まった女性が目に入った。
ちょっと離れているので顔まで確認できないが、多分100円女だ。
 「本当に来たのかよ」
誘ったのは向こうだから来るのが当たり前か。
周りにヤ○ザみたいな男は・・・いない。
時計は9時59分、ここで喫茶店を出れば時間通りの待ち合わせになる。
でも、何故か僕は席から立ち上がらず、じっと僕を待っている100円女を見ていた。
511497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/27(月) 23:27:36
しばらくの間、僕は100円女を見ていた。
彼女はイライラする様子もなく、携帯をいじるでもなく、
ただ、ずっと僕を待っているように見えた。
そんな彼女を、僕は時が経つのも忘れてずっと見ていた。
 「おかわりお持ちしましょうか?」
 「えっ?」
ウェイトレスの声で我に返る。
パッと時計をみると・・・
 「い、いや、結構です!!お会計お願いします!!」
慌てて小銭をポケットから出し、喫茶店を飛び出した。
時計は10時17分をまわっていた。

息せき切って100円女のソバに駆け寄る。
 「す、すみません!遅れました!!」
遅れた事を罵倒されると思った僕は少し身構えた。
でも、彼女は違う事で僕を罵倒し始めた。
 「何で休日なのにスーツなの?」
 「私服持ってない訳じゃないでしょ?」
 「この前の雨の日と同じスーツじゃない?」
予想外の言葉に僕は思わず本当の事を言ってしまった。
 「何、着てきていいか分からなかったのでスーツにしました」
僕の言葉を聞いた彼女は一瞬キョトンとした表情を浮かべ、そして
楽しそうに笑い出した。
 「何それ、おかしな事言わないでよ、もうっ」
まだ3回しか会った事のない、いつも僕も罵倒するしかしなかった
100円女の笑顔はとても可愛らしく見え、僕の胸は急速にドキドキしてきた。
512497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/27(月) 23:30:11
1年ぐらい書いてなかったから文章変じゃないか不安で・・・
聞くのもどうかと思うんですが、続き書いてもいいえですかね?
513Mr.名無しさん:2006/11/27(月) 23:32:17
そんなこと上の反応見りゃわかるだろ

ぜひ書いて
514Mr.名無しさん:2006/11/28(火) 02:18:32
書きたければ書けばいいし、書きたくなければ書かなければいい
いちいち聞くな
515497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/28(火) 18:07:11
>>511
それから100円女と一緒に、4駅先の駅まで電車で移動した。
そこは若者が集まるオシャレな街で、僕には無縁の街だ。
電車に乗って改札を出るまで、100円女は何も話さなかった。
  (どこに行こうとしてるんだ?)
僕の心の声が聞こえたのだろうか、急に100円女は立ち止まって
僕に話しかけてきた。
 「パスタでいいでしょ?」
 「はっ?」
 「ホント、アンタって人は鈍いわね」
 「す、すみません・・・」
また謝る僕。
 「この前のお礼に食事をオゴってあげるって言ってるの」
宇野久子の言った通りだった。
それを思い出した僕は何だか可笑しくなった。
「なーんだ、そうだったんですか」
少し笑いながらそう言うと、100円女はホホを少し赤らめた。
 「な、なにがそうなのよ?」
 「照れくさかったから言わなかったんですよね?」
僕がそう言うと100円女は耳まで真っ赤にし、
 「バ、バカな事言わないでよ!アタシの事、からかってるの?!」
 「す、すみません・・・」
ようやく会話らしい会話が出来たと思ってたら、また怒られる僕だった。
516497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/28(火) 18:08:58
店に入り、僕と100円女はメニューとニラメッコしている。
普段、コンビニのナポリタンしか食べない僕にとって呪文のように
長ったらしい名前ばかりでどれにしようか決めかねていた。
 「ねぇ、決まった?」
 「え、あ、まだ・・・」
 「まだ決まらないの?早くしてよ」
 「だって、そっちもメニュー見てるし・・・」
 「私はとっくに決まってるの、アンタを待ってるのが分からないの?」
だったらそう言ってくれよ!と心の中で小さく、とても小さく叫んでみた。
 「・・・お勧めって何かあります?」
恐る恐る聞いてみると、100円女は少し嬉しそうな表情を浮かべ
 「まったく、しょうがないわね、そうね・・・これなんか美味しいわよ」
と言いながらメニューを指差す。
それは ナントカ風オレンジソースうんたら と書いてあった。
パスタとは思えないほどオレンジ色のソースから全く味のイメージが出来ず、
僕は思わず
 「えっと、じゃあカルボナーラで」
と答えた。
さっきまでニコヤカだった100円女の表情は一瞬にして曇り
 「何?アタシのお勧めが食べれないっていうの?」
と低い声で言い、軽く睨んできた。 
 「え、あ、い、いや、、そ、そういう訳じゃなくて・・・」
 「じゃあこれ食べなさいよ、決定ね。すみませーん、注文お願いします」
僕の意見はまったく反映されず、100円女は自分の分とオレンジなんとかを注文した。
517497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/28(火) 18:11:08
100円女が勧めてくれたオレンジなんとかは、僕が今までに食べた事がない味で
でも、とても美味く、僕は夢中で食べていた。
 「・・・ねぇ、それ、美味しい?」
上目かげんで、ちょっとだけ小さな声で100円女が尋ねてきた。
まるで子供が母親に何かをねだるようなその視線に、僕はドキっとし、
そしてパスタをノドに詰まらせてしまった。
 「んぐがぁ、、ぐ、、、ん、んん!!」
 「ヤダ、ちょっと、大丈夫?」
慌ててコップを差し出す100円女。
僕は凄い勢いでコップを受け取り、水を流し込んだ。
 「・・ぐふぁぁ、、あ、ありがとうございます」
 「落ち着いて食べてよね」
 「いやぁ、あまりにも美味しかったんで夢中で食べてました」
 「ホ、ホント?ホントに美味しい?」
 「はい、こんなに美味いパスタは初めてですよ」
 「そう・・ま、まぁアタシのお勧めだし、当然よね」
そういいながら100円女は自分のフォークを僕のパスタに伸ばしてきた。 
 「アタシもちょっといただこっと、、、、、うーん、やっぱり美味しい」
その光景に僕は高揚感を覚える。
それはまるでドラマか映画のワンシーンみたいな、まさにデートの風景でよく見かけるシーンだ。
ここで、僕も相手のパスタを食べる事が出来れば・・・
518497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/28(火) 18:14:17
  (今なら場の雰囲気で食べても大丈夫そうかな?)
  (じゃあ、僕も・・とか言ってサッとフォークを伸ばして・・・)
あれこれ一瞬の内に頭の中で考える。
そして少し落ち着く為、コップに手を伸ばす。
あれ、僕の手元にコップが二つある?
あっ、さっき100円女が渡してくれたコップか・・・
まてよ、って事はさっき水を飲んだコップは・・・
 「何でコップ見てるの?」
 「え、あ、あの、このコップ・・・」
薄っすらと口紅がついたコップを僕は指差す。
 「そ、それ私のコップじゃないの?!」
100円女もその事に気付いた様子だ。
 「ぼ、僕が取ったんじゃないですよ!!」
 「さっ、さっさと返しなさいってば!!」
慌ててコップを返す。
少しホホを膨らませ、下を向いている100円女。
怒ってるのか?僕は心配になり、何か声をかけようと考える。
でも、いい言葉が思い浮かばず、ようやく出てきた言葉をかけた。
 「べ、別にこれぐらいじゃ間接キスとかじゃないですよね?」
その言葉を聴いた100円女の体は一瞬ピクッと動き、次の瞬間、
 「ウルサイ!!この変態!!!」
と目をギュっとつぶり、真っ赤な顔でそう言ってきた。
519Mr.名無しさん:2006/11/28(火) 19:16:49
イイヨイイヨー(;゚∀゚)=3
520497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/28(火) 23:00:27
>>518
会計をすませ店を出ると、100円女は僕に尋ねてきた。
 「ねぇ、アンタ今日は予定ないんでしょ?」
 「え、まぁ、無いといえば無いんですけど・・」
 「そう、じゃあちょっと買い物付き合って」
 「はぁ?」
 「いいじゃない、利息分以上のご馳走したんだし」
 「え、でも・・・」
 「何?美味しくなかったとでも言うの?」
 「いや、そういう訳じゃないんですけど・・・」
 「じゃ、何よ?ハッキリ言いなさい」
 「僕はあなたの事、知らないし第一、名前すら知らないんですよ」
僕の言葉に100円女はハッとした表情を浮かべる。
 「そうね、アンタがいつもグズグズしてるから忘れてたわ」
 「す、すみません・・・」
ここまで来ると謝る事に何の抵抗もなくなっていた。
 「・・・・・・」
 「・・・・・・」
お互い黙っている。あれ?名前を教えてくれるんじゃなかったかな?
 「あの〜、あなたの名前は・・・」
 「普通、男の方から名乗るものじゃない?」
おいおい、話しの流からいってそっちが先に名乗るんじゃないのかよ?
そんな事は決して口にできず、僕は自己紹介をする事にした。
「嶋田源一郎、27歳、趣味は・・・・」
僕は話し出すと100円女はポカーンとした表情になる。
あれ、変な事言ったかな?
521497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/28(火) 23:01:44
 「アンタ、年上だったの?信じられない?!」
目を真ん丸にして、未確認生命物体でも見るような視線で僕を見つめる100円女。
 「えっ、て、言うことは、、あなたは何歳?」
 「普通、女性に年齢を聞く?」
 「すみません・・・」
ハァっと小さなため息をつく100円女。
 「私は永友っていうの」
 「永友さん、ですか、、えっと、名前は?」
ピクっと眉毛を動かす100円女・・改め、永友さん。
 「いいでしょ?名前なんて、苗字だけ分かれば」
 「そ、そうですね」
 「ほら、お互い自己紹介も終わったんだし、さっさと買い物行くわよ」
 「え、あ、はい・・・」
年下に指示される僕って一体・・・
歩き出した永友さんは急に立ち止まり僕にこう言い放つ。
 「年上だからってアンタに敬語とか使わないから、それと」
 「それと?」
 「年下だからってタメ口きかないでね、使ったらタダじゃすまないわよ」
 「・・・了解しました・・・・」
自己紹介というより、主従関係を確認させられた気分に僕はなった。
522Mr.名無しさん:2006/11/28(火) 23:08:29
ツンの中にわずかにデレが含まれているな・・・
すごくいい
523Mr.名無しさん:2006/11/29(水) 01:22:45
ツン:デレの成分比がたまらなく絶妙だ。
近年まれにみる快作の予感
524Mr.名無しさん:2006/11/29(水) 07:44:15
ワッフルワッフル
525497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/29(水) 20:35:10
>>521
気が付くと時計は19時をまわっていた。
あれから僕は永友さんの買い物に付き合い、ス○バでコーヒーを飲んで、
路上でチラシを配っている、着ぐるみを来た人についてアレコレ話したりした。
怒られながらの会話だったが永友さんの事が少しだけ分かった。
同じ駅の近くに住んでいる事
永友さんも地方から出てきて一人暮らしをしている事
 料理が好きな事(でも下手らしい)
 映画が好きな事
 洋服を見るのが好きな事
口調は威圧的だったけど、自分の事を答えている時の永友さんは
どこか楽しそうで、そして時折見せる笑顔がとても可愛らしく、
僕はもっと永友さんの事が知りたくなっていた。

帰りの電車の中、二人並んで座っていた。
永友さんのヒザの上には買った服が入った袋が乗せられている。
それは薄いピンク色のコートで、ボンボンみたいな飾りがあちこちに付いている物だった。
  (このコートを着た永友さんってどんなんだろうな・・・)
そんな事を考えながらジーッとコートを見ていると、永友さんは僕の顔を
覗き込むようにたずねて来た。
 「・・何見てるの?」
 「えっ、あ、い、いや、、そのコートって永友さんに似合いそうだなって」
僕は思わず考えていた事を素直に口にしてしまう。
永友さんは慌てた感じでコートをギュッと抱きしめ、少しだけ口を尖らせながら
 「そ、そんな事思ってないくせに・・」
と言った。
何回かしか見せない、こういった仕草が僕の胸をキュンとさせる。
526497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/29(水) 20:36:18
 「絶対似合いますって、絶対!」
興奮した僕は思わず声を荒げてしまう。
 「ちょ、、声が大きいわよ!」
 「す、すみません」
 「まったく・・・恥ずかしいじゃないの」
それから永友さんはコートを抱きしめたまま黙ってしまった。

駅に着いて改札を出る。
時間も時間だからここでお別れなんだなと思うと、とても残念な気がした。
でも、元々は知らない人だし、それに美味しいパスタも食べれた事だし
僕はそのお礼を言って帰る事にした。
 「今日はごちそうさまでした。ホント美味しかったです」
 「・・・・・」
永友さんは黙ったままだった。まだ電車の中の事を怒っているのだろうか。
これ以上怒らせたら申し訳ないので立ち去る事にした。
 「じゃあ、帰りは気をつけて下さい」
後ろ髪を引かれる思いで永友さんに背を向け、立ち去ろうとする。
 「ね、ねぇ・・・」
思いがけない呼び止めに僕は慌てて振り向き、 
 「ハ、ヒャイ?」
と声を裏返してしまった。
527497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/29(水) 20:37:22
うつむきながら、そして少しモジモジした感じで永友さんは僕に尋ねてきた。
 「・・・・似合うと思ってる?」
あまりにも小さい声で語尾しか聞き取れなかった。
 「えーっと、な、何がですか?」
キッとした表情に変わり、強い口調でさらに尋ねてくる。
 「このコート、本当に私に似合うかって聞いてるの!!」
いい終わった永友さんはハッと我に返ったようで、またうつむいてしまった。
 「に、似合うと思います。本当に、いや、絶対」
 「そう・・・じゃ、じゃあちゃんと見てよね」
 「はい、え、い、いつですか?」
 「今日のスカートじゃこのコートに合わないから、別の日にちゃんと見てよ」
僕は別の日、という言葉の意味がいまいち理解できずにいた。
 「えー、あー、だ、み、見ます、見ます」
 「そうね、明日は私、予定あるし、、、ねぇ、携帯教えてくれない?」
 「え、あ、は、はい・・」
言われるがまま携帯を取り出し、説明書でしか読んだ事のない赤外線機能とやらで
お互いの番号とアドレスを交換した。
 「都合いい日を連絡するから、じゃあ私はここで」
 「あ、はい、気をつけて・・・・」
僕は呆気にとられて、口をポカーンと空けたまま永友さんの姿が見えなくなるまで
その背中を見送っていた。

家に帰ってから、僕はずーっと携帯をいじっていた。
携帯を開けては閉じ、閉じては開け、繰り返し永友さんのアドレスを見ていた。 
早く永友さんから連絡が来ないか、そればかりを考えていた。
528Mr.名無しさん:2006/11/29(水) 21:05:33
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 続き!続き!
 ⊂彡
529497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/29(水) 22:37:40
>>527
月曜日の昼食時、僕は土曜日の事をいつものメンバーに話した。
僕としては色々なトコロに連れまわされて大変だった、
謝ってばかりで辛かった、と伝えたつもりだった。
アドレスの交換やコートの話しは恥ずかしくて話さなかったけど。
 「それってモロ、デートだよな」
 「そうそう、シリに引かれた男のパターン」
 「お前ってどっちかと言うとマゾだし、ちょうどいいんじゃね?」
間違いなく僕はからかわれている、そう感じた。
 「そんな事ないって、マジ辛かったんだぞ?」
 「それにしてはお前、今、楽しそうに話してたぞ?」
 「そ、そんな事・・・」
楽しかったか?と聞かれたらきっと答えるのに苦しむだろう。
最初はどうしたらいいか分からなかったけど、最後の方はもっと永友さんと
一緒にいたいと思ったのは事実だし・・・
 「そんな事ないよね?宇野さん」
困った僕は宇野さんに助けを求めた。
 「どうなんでしょう・・・私には分かりません」
普段なら何か言ってくれる宇野さんだが、この時は驚くほど無表情で
素っ気なくそう答えた。
機嫌が悪かったのかな?僕はそれ以上宇野さんに話しを振るのをやめた。

仕事も終わり、家路に着く。
改札を出て僕はちょっとだけ辺りを見渡した。
もしかしたら永友さんがいるかもしれないと期待して。
でも、永友さんはいなかった。
 「そうそう会えるもんじゃないよな、ハハッ・・・」
自宅に帰ろうと歩き出した時、後ろから僕を呼び止める女性の声がした。
 「あの、ちょっといいですか?」
530497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/29(水) 22:39:11
振り返るとそこには宇野さんが立っていた。
彼女は僕とはまったく違う路線なのに、何でこの駅にいるんだ?
僕はびっくりした顔のまま、聞いてみた。
 「あ、あれ?宇野さん?何でこんなトコにいるの?」
 「えっと、あの、そのですね・・・」
何か言いたそうなのは分かった。
でも、何を言いたいのかがまったく分からない。
 「あ、た、立ち話もなんだから、そこの喫茶店でも入らない?」
 「あ、はい・・・」
こうして僕と宇野さんは、僕が探偵チックな事をした喫茶店に入る事にした。

運ばれてきたホットコーヒーを口に運び、飲もうとした瞬間、宇野さんから
思いもしなかった質問が飛んできた。
 「永友さんって人の事、好きなんですか?」
 「んぐがぁ、、ぐ、、、ん、んん!!」
熱々のコーヒーがダイレクトに、のどちんこを直撃した。
あまりの刺激にダチョウ倶楽部以上のリアクションをする僕。
 「だ、大丈夫ですか?」
優しく声をかけてくれる宇野さん。
これ以上心配かけまいと、僕はコップの水を一気に飲み干し、ノドを冷やす。
 「うん、大丈夫、大丈夫、平気平気」
 「本当にすみません、いきなり変な事聞いちゃって」
本当に申し訳なさそうに謝る宇野さんだったけど、僕はそれどころではなく
店員を呼んで水のおかわりをお願いした。
531497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/29(水) 22:40:55
 「んで、永友さんの事・・だっけ?」
 「はい、その、好きなのかなって・・・」
宇野さんは何でこんな事を聞くのだろうか?
 「好きも何も、友達でも何でもない人だからなー」
 「でも・・・一緒に買い物とかしたんですよね?」
不安そうな顔をしながら宇野さんは尋ねてくる。
 「あれは連れまわされただけだし」
ちょっとだけ明るい表情でまた尋ねてくる。
 「お礼がしたいって言われたから、会っただけなんですよね?」
 「そうだよ」
一息ついて、最初とは全く違った表情で尋ねてくる。
 「じゃあ、好きとかそういった気持ちはないんですよね?」
 「考えた事もないなー」
 「そっか、そうなんですか」
ホッとしたような表情でミルクティを飲む宇野さん。
とっても嬉しそうに見える。
 「えっと、それを聞きたかったの?」
 「・・・はい・・」
小さな声でうなずきながら宇野さんは答える。
 「なんだ、そんな事だったら会社で聞いてくれれば良かったのに」
 「・・・・嶋田さんって・・・鈍感って言われません?」
そう言えばこの前も永友さんに鈍いって言われたな。
 「そんな事はないと思うけど・・・・」
 「それとも、直接言わせようとしてます?」
 「えっ、何を?」
僕がそう言うと宇野さんはクスクスと笑い出した。
 「やっぱり鈍感ですね」
宇野さんが何で笑っているのか、僕にはまったく理解できなかった。
532497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/29(水) 22:43:15
それから10分ぐらい喫茶店で宇野さんと話しをした。
仕事の事とか、上司の悪口などを。
 「じゃあ私、そろそろ帰ります」
 「改札まで一緒にいくよ」
 「はい、お願いします」
二人並んで喫茶店を出て、改札へと向かう。

 「すみませんでした、いきなり呼び止めて」
 「い、いや、全然大丈夫だったから」
 「それじゃ、また明日、会社で」
 「じゃ気をつけて」
宇野さんが改札に向かおうとした時、僕の視界に永友さんの姿が飛び込んできた。
永友さんも僕を見つけ、こっちに向かってきた。
 「どうしたんです?」
 「えっ、あ、いや・・・」
宇野さんの問いかけに答えるため、一瞬僕の視線は宇野さんに向けられる。
そして直ぐに永友さんへ視線を戻す。
永友さんは宇野さんの存在に気付いたらしく、歩みを止め、ほんの少しだけ立ち止まり
そして、180度反対に体を向け立ち去っていった。 
 「・・・嶋田さん?」
 「えっ、あ、じゃ、じゃあ、気をつけてね」
 「はい、お疲れ様でした」
宇野さんが改札を通り抜けた瞬間、僕はすかさず永友さんを追いかけていた。
533Mr.名無しさん:2006/11/29(水) 22:49:14
お?
もうジェラシックデレモード発動か?
534497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/29(水) 23:37:57
>>532
信号待ちをしている人混みの中から僕は永友さんを見つけ、隣に駆け寄った。
 「こ、こんばんは・・・・」
 「・・・・」
騒音がウルサイのだろうか、永友さんは返事をしなかった。
 「あの〜」
僕は永友さんの斜め前に立ち、話しかける。
永友さんは僕とは逆方面に顔をそむけ
 「何?何か用でもあるの?」
と冷たい口調で言い放つ。
 「い、いや、用事がある訳じゃないんですけど・・・」
 「だったら私のトコなんかこないで、彼女さんのトコに行けばいいじゃない」
僕は永友さんの言葉が理解できず、
 「彼女って?誰の?」
と聞いてみる事にした。
ちょうど信号が青に変わる。
 「アタシの事、からかってるの?バカにしないでよ!!」
そう、言い残して永友さんは早歩きで信号を渡って行った。
 「また怒鳴られたよ・・・」
宇野さんといい、永友さんといい、何だかはっきりしない一日だなと僕は思った。

コンビニでカツ丼とサラダ、そして缶ビールを買ってから家に帰った。
いつもと同じ缶ビールなのに、何故か苦くかんじられる。
何かが引っかかってる。なんだろう・・・
宇野さんの事? 永友さんの事?
コンビニ弁当は味気ないものだけど、今日はいっそう味気なく感じた。
535497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/29(水) 23:39:23
テレビを見ていても、風呂に入っても胸のモヤモヤが取れない。
なんだかとてもイライラっていうか、落ち着かなかった。
僕は携帯を取り出し、電話をする事にした。
2コールした後、威勢のいい声が聞こえてくる。
 「何だ、久しぶりじゃん!どうした、出来損ない」
電話の相手は2つ上の姉貴だ。
弟が言うのも何だけど、まぁ美人の部類に微かに入る容姿をしている。
でも、地方の漁師町で生まれ育ったおかげで、言葉遣いはごらんの通りだ。
 「実の弟に 出来損ない はないだろ?」
 「気にすんなよ、それぐらい、で、何か要があんの?」
普段、めったに電話などしないのだが、特別相談する相手もいないので
姉貴に相談する事にし、今日まであった事を話すことにした。

一通り説明が終わった後、姉貴はわざとらしく、大きなため息をついてこう言った。
 「・・・お前さ、本当にわかんないの?」
 「何が?」
 「こりゃダメだ、お手上げだな」
 「わかんねーからこうやって電話してるんだよ、助けてくれって」
藁にもすがる思いで姉貴を頼ってみた、すると姉貴は落ち着いた口調で聞いてきた。
 「お前、今、好きな人いるんだろ?」
 「えっ・・・」
姉貴の言葉を聞いて、僕はある女性を思い浮かべた。
536497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/29(水) 23:40:42
 「ほら、もう答え出ただろ?私、もう寝るから切るぞ」
 「あ、ちょ、ちょっと待てって・・・」
 「んだよ、しつけーなー」
 「俺はどうすればいいんだよ?」
 「そこから先は男が考える事だ、しっかりしろ、私の弟だろ?じゃーなー」
そう言うと姉貴はブツっと電話を切る。 
その晩、僕は一睡も出来なかった。


翌日、僕は仕事帰りに宇野さんを誘う事にした。
誘った時の宇野さんはとても嬉しそうだった。

 「今日は誘ってくれてありがとうございます」
 「い、いや、別に・・・」
 「何か話したい事があるんですか?」
 「う、うーん、ま、まぁそうかな・・・」
 「それは、、、私が期待してもいい事ですか?」
 「期待・・・」

沈黙する二人。
しばらくして、宇野さんが口を開いた。

 「やっぱり、私に言わせようとしてます?」
 「えっ、い、いや・・言いたい事はさ・・・」
537Mr.名無しさん:2006/11/30(木) 01:28:41
だぁぁぁぁあぁあぁっぁぁぁぁああぁ!!!!!!!!!!
いいよいいよつんでれいいよ(*´д`)ハァハァ
538Mr.名無しさん:2006/11/30(木) 09:54:44
ワ ッ フ ル ワ ッ フ ル
539Mr.名無しさん:2006/11/30(木) 11:59:39
  _  ∩
( *´д`)彡 ハッフン!ハッフン!
  ⊂彡
540Mr.名無しさん:2006/11/30(木) 18:35:57
ちょっとこんなところで話を切るなんて、私のことバカにしてるの?!
さ、さっさと続き書きなさいよ!
541Mr.名無しさん:2006/11/30(木) 18:37:00
sage忘れちゃったじゃないの・・・
話に夢中にさせた497 ◆ToK1blLRAIの責任なんだからね!
542Mr.名無しさん:2006/11/30(木) 20:21:13
さぁ、盛り上がって参りました。

盛 り 上 が っ て 参 り ま し た 。
543497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/30(木) 21:06:43
>>536
宇野さんは椅子からちょっとだけ身を乗り出し、そして姿勢を正した。
僕は両手をテーブルにつき、頭を深々と下げた。
 「ゴメン、嘘ついてた」
 「・・・嘘?」
 「あの、そ、その、、、永友さんの事で・・・」
僕の話をさえぎるように、宇野さんは話し始めた。 
 「やっぱりですね」
 「えっ・・」
 「そうじゃないかなと思ってたんです」
 「そ、そうなんだ・・・」
 「あ〜あ、結構期待してたんですよ?」
 「ご、ゴメン・・・」
 「謝らないで下さい、私が勝手に想ってだけですから」
 「思ってた?何を?」
僕がそういうと、宇野さんはクスクスと笑いだす。
 「ほら、やっぱり鈍感ですよ」
 「そ、そうかな・・・ハ、ハハッ」
 「そして、やっぱりマゾなんですね」
 「い、いや、、そ、それは違っ・・・」
 「冗談ですよ、冗談」 
その後、少しだけ他愛のない話しをして、店を出ることにした。
544497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/30(木) 21:09:48
別れ際に、宇野さんは僕にこう言った。
 「本当はずっと前から、嶋田さんの事、好きだったんですよ」
 「えっ、そ、そうだったの?気付かなかったよ」
 「でも、もうふっきります。だから・・・」
 「だから?」
 「これからも優しい先輩でいて下さいね」
宇野さんの言葉に、僕は泣きそうなってしまい、こらえるのが大変だった。


宇野さんと別れた後、僕は永友さんに電話をかけた。
3回、4回、5回・・・呼び出し音だけが流れるだけだった。
しかたなく僕はメールを出すことにした。
内容は、今日会えますか? といった感じで。
メールを送信してからすぐ、返信が来た。
僕は慌ててメールを開く。送信者は永友さんだ。

 【電車に乗ってるの、それぐらい分からないの?】

そのメールを見て、僕は少しだけホホを緩ませた。
「はは、永友さんらしいメールだ」
僕は永友さんから来た初めてのメールを保存し、返信する事にした。

 【じゃあ改札で待ってます、永友さんが来るまで】

そして僕は駅の改札に向った。
545497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/30(木) 21:11:12
改札口がよく見える場所で僕は永友さんを待っていた。
10分ぐらい経った時、永友さんが改札に現れた。
永友さんも僕を見つけ、僕の方へ向って・・・・
こなかった。
僕と視線を合わせると、スッとそっぽを向いて交差点の方へ歩き出してしまった。
僕は慌てて後を追いかけた。

信号を渡り、商店街を抜ける。
僕はずっと永友さんが話しかけてくれるまで後ろをついて歩いた。
公園に差し掛かった時、ようやく永友さんは立ち止まった。
 「何か用があるの?」
 「はい、話したい事があります」
 「アタシは別にないわ、じゃ」
 「待ってください!」
自分でもびっくりするぐらい、力のこもった口調で呼び止める。
永友さんはキョトンとした表情で僕を見つめる。
 「す、少しだけなら聞いてもいいけど・・・」
 「あの・・立ち話しも何なんで、そこの公園でも行きません?」
 「別に行ってもいいけど、変な事したらただじゃおかないからね」
こうして僕と永友さんは公園のベンチに腰掛けることにした。

ちょっとの間、お互い黙っていた。
僕は高鳴る心臓を無理やり押さえつけ、話しを切り出した。
546497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/30(木) 21:16:00
 「昨日、駅にいた子は彼女じゃありません」
 「そ、そんな事を言いに来たの?」
 「はい、なんか、誤解されてるみたいで・・・」
 「べ、別にアンタに彼女がいたってアタシには関係ない・・・」
 「永友さんに関係なくても、僕には関係あるんです」
 「えっ・・・」
 「だって、僕、僕は・・そ、その・・永友さんが・・・・」
 「・・・・」
あと一息、あともう一歩で言える。でもなかなか続きが言えない。
   好きです   という言葉が・・・

 「ねぇ、ちょっと待っててくれない?」
うだうだしている僕をさえぎるように、永友さんは話し出した。
 「いい?アタシが戻ってくるまでココにいるのよ?動いちゃダメだからね」
 「え、で、でも、まだ話しが・・・」
 「うるさいわね、アンタは私が戻ってくるまでここにいればいいの?返事は?」
 「は、はい・・」
訳も分からぬまま僕は待つことになり、そして永友さんは立ち去っていった。
どこに行ったんだろう・・・

永友さんの戻りを待っている間、僕は自分の不甲斐なさを後悔していた。
好きです
たったこれだけの言葉すら僕は言えなかった。
きっと永友さんはこんな僕に呆れてしまったに違いない。
永友さんが立ち去ってから10分が経過した。
 「きっと戻ってこないよ・・・」
諦めるように自分に言い聞かせ、僕はベンチから立ち上がった。
公園の出口に向かい、振り向いてベンチの方を見るけど、永友さんの姿はない。
泣きたい気持ちを押さえて公園を出ようとした時、
 「ちょっと、どこいくのよ!」  という永友さんの声が聞こえた。
547497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/30(木) 21:28:05
次の投下が最終回になります。
まず、1年振りに書いたので、うまく書けなかった事をお詫びします。
そして、つたない文章を読んでくれてありがとうございます。

>>523-524
おだてたって何もでないからね!

>>524>>538>>539 は >>528 と同じ事言ってるでFAだっけ? 

>>533
初めて見た言葉だ、勉強した

>>540-541  ワロスwww

前、書いた時もくだらないオチをいれてたんだけど
今回は最終回に入れてみた
くだらなかったら、本 当 に ゴ メ ン

では最終回をこれからまとめて、出来上がったら投下します
それでは、またどこかで

548497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/30(木) 21:29:42
あ・・・間違えた・・

>>522-523
おだてたって何もでないからね!
お詫びに新作なんて書かないから!!!
549Mr.名無しさん:2006/11/30(木) 21:34:16
うまく書けてないなんてとんでもない
しっかり堪能させてもらってるぞ

ハァハァ
550497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/30(木) 23:48:19
>>546
振り返ると、ベンチの前に永友さんがいた。
でも何かが違う。
僕は慌ててベンチに戻り、そして永友さんを見る。
 「待っててっていったのに、アタシの言う事聞けないの?」
違っていたのは永友さんの洋服だった。
さっきまではいかにも仕事が出来るOLみたいな、パンツルックだっが
今は女性らしい、ロングスカートをはいていて、そして上着が
一緒に買い物に行った時に買ったピンクのコートを着ていた。
 「えっ、あ、な、何で・・・」
 「や、約束したでしょ?」
 「約束・・・」
 「そ、その・・アタシに、このコートがに、に、似合ってるか見なさいって・・・」
 「や、約束しました、しました」
 「で、ど、どうなの?似合ってる?」
うつむきながら、足をモジモジさせ永友さんはとても小さな声で聞いてくる。
 「似合ってます。とても」
 「そ、そう・・ま、まぁ、当然よね・・アタシが選んだんだから」
 「とっても可愛いです」
僕は思わず正直な感想を言ってしまった。
それを聞いた永友さんは手のひらをギュッと握り、僕を軽くにらみつける。
 「からかってるんでしょ?」
次の瞬間、僕は無意識に永友さんのすぐソバまで歩み寄った。
そして、真っ直ぐに目を見つめた。
 「えっ、ちょ、ちょっと・・何?」
僕は軽く永友さんを抱き寄せる。
 「こ、コラぁ、な、何するのよ・・・」
551497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/30(木) 23:50:13
 「僕は、永友さんが好きです」
自分でも驚くぐらいサラッと、自然に言う事が出来た。
それを聞いた永友さんはただジッと、僕の腕の中にいた。
 「約束、覚えていてくれてありがとうございます」
 「・・・」
話しかけても永友さんは返事をしなかった。
しばらくして、僕は冷静になり、自分がとても大胆な事をしている事にきづいた。
バッと抱きしめた腕をほどき、少しだけ後ろに下がる。
 「えっ、あ、そ、その・・・・」

オロオロしている僕を見て、永友さんはハァっとため息をつく。
そして腕組みをして、口を尖らせながらこう言った。

 「誰が抱きしめてって言った?」
 「ご、ごめんなさい・・・」

永友さんは一歩だけ僕に近づく。

 「自分の事だけ言って満足なの?」
 「え、あ、いや・・・」

さらに一歩近づいてくる。

 「アタシの気持ちは聞かなくてもいいの?」
 「えっ?」

永友さんはピタッと自分の体を僕の正面まで近づける。

 「あの時、コンビニで助けてくれてありがとう・・・」
552497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/30(木) 23:52:22
すぐソバに永友さんの顔がある。
ドキドキしすぎて僕は頭の中が真っ白になった。
すると永友さんは、消え入りそうな声で小さく呟いた。
 「・・早く・・・抱きしめなさいよ・・・・」
その言葉に反応するかのように、僕はソッと、永友さんを抱きしめた。
少しずつ、少しずつ腕の力を強めていった。
ブランと下がっていた永友さんの手が僕の背中に触れてきた。
そして、永友さんも僕の身体を、ほんの少しだけ力を込めて抱きしめてくれた。
 「あの・・聞いてもいいですか?」
 「何が聞きたいの?」
 「そ、その・・ぼ、僕の事・・・どう・・」
言いかける僕の言葉を遮るように、永友さんはめ一杯の力で僕を抱きしめてきた。
 「こ、こうしてるんだから・・・分かってよ、それぐらい・・・」
 「す、すみません・・ありがとうございます」
ほんの1,2分だったと思う、僕と永友さんはこうして抱きしめあっていた。

その後、ベンチに並んで、さっきより近くに並んで座って色々話していた。
相変わらず、僕は怒られながらだけど。
 「そういえば、名前を知らないんですよね〜」
 「べ、別にいいでしょ?」
 「い、いや、でも・・」
 「何よ・・」
 「これからは、名前で呼びたいな〜、、なんて・・」
すこし戸惑った表情をした後、恥ずかしそうに自分の名前を僕に言った。
 「・・・リンっていうの」
553497 ◆ToK1blLRAI :2006/11/30(木) 23:54:17
 「リンさんですか?どういう漢字です?」
 「ちゃんと聞きなさいよ、何度も言わせないで」
 「えっ?リンさんじゃないんですか?」
再び聞くと永友さんはギュッと僕のほっぺたを強くつねってきた。
 「痛い、痛いです!!」
 「キャサリンっていうの!」
 「え、キャ、キャサリン?」
繰り返して名前を言った後、ほっぺたをつねっている手にさらなる力が加わった 
 「しょうがないでしょ?私、ハーフなんだし・・・」
ほっぺたをつねっていた手を離し、永友さんはそっぽを向いてしまった。
 「でも、それが永友さんの名前ですよね?」
 「バカにしてるんでしょ?似合わないって思ってるんでしょ?」
 「僕だって今時、源一郎ですよ?」
 「そ、そうかもしれないけど・・・」
 「だから、全然、変じゃないです。これからはキャサリンって呼んでいいですか?」
僕がそういうと、永友さん、改めキャサリンはスッと立ち上がり
 「人前でそう呼んだらタダじゃすまないからね?分かった?」
 「えっ、あ、やっぱり、ダメですか・・・」
 「でも・・」
 「でも?」
すっと僕の耳元に顔よせ、キャサリンはこうささやいた。
 「二人っきりの時だけなら、許してあげるわ」  
そう言うとキャサリンは慌てて公園の出口に小走りに走っていった。
僕は慌ててキャサリンの後を追いかけた。
 「待ってよ、キャサリン!」
立ち止まり振り返ったキャサリンは
 「恥ずかしいから名前で呼ばないで!それに私にタメ口なんて生意気よ!!!」 

  〜  終  〜
554Mr.名無しさん:2006/11/30(木) 23:56:05
>>553
激しくGJ!!
お疲れ様〜
555Mr.名無しさん:2006/12/01(金) 00:09:27
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 キャサリン!キャサリン!
 ⊂彡
556Mr.名無しさん:2006/12/01(金) 05:30:03
GGGGGJJJJJ!

永友さん=イメチェンした宇野さん
とか妄想しちゃってごめんなさい
557Mr.名無しさん:2006/12/01(金) 13:06:07
イイハナシダナー(;∀;)イイハナシダナー
558Mr.名無しさん:2006/12/01(金) 20:17:53
ぐっどじょぶといわざるを得ない
559Mr.名無しさん:2006/12/01(金) 22:45:45
あんたねえ、アタシを萌えさせてどうする気?
責任とりなさいよ!
560Mr.名無しさん:2006/12/02(土) 23:32:20
ほっす
561Mr.名無しさん:2006/12/03(日) 16:22:05
もしゅ
562Mr.名無しさん:2006/12/04(月) 20:32:47
ほしゅほしゅ
563Mr.名無しさん:2006/12/05(火) 13:29:47
さて、携帯から行きますか
564497 ◆ToK1blLRAI :2006/12/06(水) 12:20:17
ひっそりと新作を投下します


学校に行かなくなって3ヶ月が経過した。
理由は特にない。いじめられた訳でもないし。
ただ、単純につまらなかった。それだけ。
そんな僕でも、子供の頃から毎日かかさず続けている事がある。

家には犬がいる。名前はコジロー。
小学生の頃、僕が拾ってきた犬だ。
今日も朝5時に起き、散歩に連れて行く。
小屋の前まで行くと、コジローは今か今かと待ちかねていたようだ。
リードを取り付け、いつもの散歩コースへと歩き出した。

「あれ?工事中か・・・」
10年近く歩き続けた散歩コースの途中は、土手沿いのサイクリングコース。
でも、そのサイクリングコースの入り口に工事のお知らせを告げる看板があった。
何でも、コースの舗装をするらしい。
 「しかたない、ほら、コジロー行くぞ」
コジローはちょっとの間、サイクリングコースを眺めていたが
渋々、僕の後をついて来た。

いつもと違う散歩コースに、コジローは少しおっかなびっくりの様子だ。
電信柱の匂いをしきりに嗅いだり、新聞配達の自転車にイチイチ反応したり・・・
 「しばらくの間、このコースになるんだから早く慣れろよ」
立ち止まり、僕はコジローの頭をなでながらそう言い聞かせた。
まぁ、コジローには伝わらないだろうけど。
565497 ◆ToK1blLRAI :2006/12/06(水) 12:23:39
区民館の手前まで来た。その角を曲がって帰ろうか。
すると、その曲がり角から大きな犬が急に飛び出してきた。
アフガンハウンドか、ラブラドールか・・・
リードを引いている飼い主は明らかに引きずりまわされていた。
 「ははっ、大変そうだな」
その様子を見ながら、僕は呟いた。
気が付くと、その大型犬は真っ直ぐ僕とコジローの方に向かってきている。
 「まさか・・な・・・」
疑問は確信に変わった。標的は間違いなく僕とコジローだ。
逃げるか、避けるか、迷っているウチにその大型犬は僕に飛びついてきた。
 「うわっ!!!」
僕はあっという間にマウントポジションを取られた。
そして、激しいベロベロ攻撃を受け続ける事になった。

 『こら、やめなさい!!』
大型犬の飼い主が一生懸命リードを引っ張っているようだ。
でも、ちょっとやそっとじゃどく気配を見せない。
 『ちょっと、ムサシ、言う事聞きなさいってば』
約30秒の間、僕は大型犬に舐め続けられていた。
僕に飽きたのか、ようやくマウントポジションから開放される。
 「うっわ・・顔がベタベタだよ・・・」
僕は不快感を覚え、自分の犬すら押さえられないバカ飼い主に文句を言うことにした。
 「あのさぁ・・・」
立ち上がりながら、僕は大型犬の飼い主の顔を見た。
566497 ◆ToK1blLRAI :2006/12/06(水) 12:25:17
僕は思わず、その飼い主に見とれてしまった。
何故なら僕が今、一番好きな芸能人に結構似ているからだ。
 (めっちゃ、可愛いじゃん)
年も僕と同じぐらいだろう。これを機会にお近付きになれるかも・・・
そんな事を考えていると、その飼い主は僕に話しかけてきた。
でも、その言葉は僕の予想とはまったく違う言葉だった。
 『あれぐらい、よけてよね、まったく』
ビックリした。僕の予想では謝罪の言葉だと思ったから。
だって被害者はこっちだったし、第一、本気で飛び掛ってくる
大型犬を避けられる訳ないだろ?っと思った。
カチンときた僕は反撃する事にした。
 「はぁ?そっちがちゃんと犬を散歩させてなかったからだろ?」
 『男だったらそれぐらい出来るでしょ?』
険悪なムードが流れる。
このコウマンチキな女は、可愛い顔をしているけど、性格は最悪だ。
 「だったらオマエは避けられたのかよ?」
 『オマエとか言わないでよ、どこの馬のホネか分からない軟弱男に言われたくないわ』
話せば話すほどイライラしてくる。こういうヤツとは関わらない方がいいと思った。
 「まったく、オマエみたいなのが飼い主じゃ犬も可愛そうだな」
 『あら、アンタみたいな軟弱男が飼い主じゃそっちの犬もかわいそうね』
 「これ以上、話してもムダだな、おい、コジロー、帰るぞ」
僕はコジローを引っ張ろうとコジローを見た。
すると、コジローはこの生意気な女の犬と楽しそうにじゃれあっていた。
 『ほら、ムサシ、そんなバカな飼い主に飼われている犬と遊んじゃダメでしょ?』
567497 ◆ToK1blLRAI :2006/12/06(水) 12:26:59
 「・・ムサシって言うのか?」
 『・・コジローって言うの?』
ほぼ同時に僕とその女はそう言った。
そして二人同時に少しだけ笑い出す。
 「そりゃ、口論にもなる訳だ」
 『あら?犬のセイにするの?』
僕は思わず、この生意気な女の笑顔にドキっとしてしまう。
顔だけは本当に可愛いんだけどなぁ。
 『ほら、ムサシ行くわよ』
生意気な女はムサシを力ずくで引っ張り、歩いていった。
僕はコジローを見つめながら
 「オマエはムサシを気に入ったのか?」
と尋ねる。
ムサシは黙って僕の顔を見ていた。

区民館を曲がったトコロで後ろから誰かが走ってくる音が聞こえた。
振り返ると、そこにはさっきの生意気な女とムサシがいた。
 『はい、これ』
生意気な女は黙ってハンカチを僕に差し出す。
 「何、これ?」
 『これで、顔ふきなさいって言ってるの』
 「別にいいよ」
 『このままじゃムサシが悪者になっているみたいだから』
 「あ、じゃ、じゃあ」
僕はオズオズと女の手からハンカチを受け取る。
そして、ハンカチ王子みたいな仕草で顔を拭いてみた。
僕の会心のボケは伝わらなかったらしく、女はスッと振り返って走り出した。
 「お、おい、ハンカチ返すって」
 『別にいいわよ、返さなくったって』
走り去る女の背中を、僕はしばらく見続けていた。
568Mr.名無しさん:2006/12/06(水) 14:47:58
(;゚∀゚)=3

これはまた・・・
569Mr.名無しさん:2006/12/07(木) 15:54:50
ワクテカ
570497 ◆ToK1blLRAI :2006/12/08(金) 14:31:28
>>567
家に帰り、朝食を食べる。
学校に行かなくなった僕にも、母さんは毎朝ご飯を用意してくれている。
それには訳がある。
僕は学校には行かないけど、これでも常に試験は学年1位だ。
入学以来、誰にも1位の座を明け渡した事がなかった。
定期的に行われる全国模試にも参加し、全国でもTOP20に入っている。
僕が通っている高校は全国有数の進学校で、僕の成績は学校の評判に繋がっている。
だから学校も僕が学校に籍を置いている限り、出席に関してあまり文句を言ってこない。
事実、僕は家でダラダラしている訳でもなく、勉強をしている。
その事を母さんは理解してくれていた。

 「今日は学校行く日だっけ」
 「あぁ、そうだったね」
あまり学校に行かなくなってから、学校側から一つの提案をされた。
成績は優秀なので学業には問題ないけど、出席日数は何とかしないといけない。
そこで、2週間に1日でいいから学校に顔を出して欲しいと。
今日はその日だった。
特別、教室に入って授業を受ける訳でもなく、ただ、教育指導室に行って
近況を話して、ものの20分ぐらいで帰ってくる。
ただそれだけでいい。
その事も、僕が学校に行かない理由にもなっていた。

僕は2週間振りに制服に着替え、学校に向った。
571497 ◆ToK1blLRAI :2006/12/08(金) 14:35:11
学校に着き、教育指導室に向う途中、幼馴染の翠が話しかけてきた。
 「あら、今日は出廷日だったの?」
 「ははっ、出廷日か。面白い表現だ」
こいつとは幼稚園からの縁で、お互い異性としては見ていない。
 「アンタの事、みんな色々言ってるわよ」
 「言わせたいヤツには言わせておくよ」
キチンと学校に来て授業に出てるヤツラに言わせれば、
授業に出てないヤツが学年トップだなんて、きっと許せないんだろう。

教育指導室で少し話をして僕が家に帰ることにした。
校庭では体育の授業をしている。
その中に翠の姿を見つけた。マラソンのタイムでも計っているのか、
翠は一生懸命走っていた。
昔は自分もあの輪の中にいたんだな、と遠い目で考えていた。


学校から帰り、リビングでくつろいでいると母さんがニヤニヤした顔で近づいてきた。
 「このハンカチって誰の?」
それは今朝、あの生意気な女から借りたハンカチだった。
 「ああ、それ、それはさ・・・」
僕は今朝の事を母さんに話した。
すると母さんは少しだけガッカリした表情になる。
 「どしたの?」
 「いやね、アンタも家にばかりいないで、彼女の一人でもって思ったんだけど」
 「別にいいよ、彼女なんて」
 「まったく、淡白なのはお父さんにそっくりね」
 「何?最近、ご無沙汰なの?」
僕がからかうと、母さんは手に持っている布団叩きを振りあげた。
 「親をからかうんじゃありません!!」
 「おお、怖っ、俺、コジローの散歩行ってくるよ」
 「こら、逃げるんじゃないよ!!」
572497 ◆ToK1blLRAI :2006/12/08(金) 14:36:06
僕はコジローを連れて、朝と同じコースを散歩した。
あの生意気な女に会いたいような、会いたくないような気分だった。
会えばまた口論になりそうだけど、あの笑顔がまた見たいとも思っていた。
ユラユラした気分で僕は歩いていた。

区民館まで来た。でもそこに女とムサシの姿は無かった。
 「ちぇっ」
軽く舌打ちをして、僕は少しだけコジローのリードを強く引っ張って家に帰った。


翌朝、僕はいつも通りコジローを散歩に連れて行く。
ポケットには昨日借りたハンカチを入れていた。
同じコースを同じ時間に歩いていればあの女に会えるだろう。
そして投げつけるように返してやる、そう決めていた。

区民館に近づくにつれ、僕は何となくドキドキしていた。
たった1回だけ会話した、名前も知らない女に会う事を期待しているんだろう。
ふっと立ち止まり、自問自答してみる。
 「まさか・・・一目ぼれ?、あんな生意気な女に?」
ブツブツ呟いてると、曲がり角から生意気な女が一人で走ってきた。
凄い勢いでこっちに走ってくる。
そして、僕とコジローには目もくれず、僕達の横を走り去って行こうとした。
 「お、おい!」
僕は女を呼び止めた。
その声に女は立ち止まり、僕の方を振り返る。
573497 ◆ToK1blLRAI :2006/12/08(金) 14:38:04
 『あ、昨日の・・』
 「今日は一人なのか?」
 『ねぇ、ムサシ見かけなかった?』
 「いや、見てないけど・・・逃げられたのか?」
 『見てないならアンタに用事はないわ』
どうやら逃げられたらしい。
立ち去ろうとする女に僕は助けを出す事にした。
 「一緒に探してやろうか?」
女は僕の申し出を
 『アンタの助けなんていらないわ、余計なおせっかいよ』
と言って走り去っていった。
 「んだよ、マジ可愛くねーな」
僕はそのままコジローを連れて家に帰る事にした。

家の近くまできて、やっぱりあの女の事が気になった。
アイツはまだムサシを探しているんだろうか・・・
 「しょーがねーなー、コジロー、今日は散歩延長だ」
区民館まで戻り、その近所を僕とコジローはムサシ探しを始めた。

しばらくしてムサシが区民館近くの家の柵越しに犬とたわむれているのを見つけた。
 「なんだ、こんな近くにいたのか、おーい、ムサシ」
僕がムサシを呼ぶとムサシは振り返り、一直線に僕を目がけて走ってきた。
 「うわっ・・またかよ!」
今度は避ける事に成功した。
そしてムサシのリードを取り、とりあえず区民館まで連れて行くことにした。
574497 ◆ToK1blLRAI :2006/12/08(金) 14:39:26
区民館前で僕は10分ぐらい待っていた。
その間、ムサシとコジローは仲良くじゃれあっている。
 「お前等,随分と仲良しだな」
しばらくして、あの女がやってきた。
息は切れ、髪の毛もボサボサだ。随分走り回ったんだろう。
 『ムサシ!!どこ行ってたの?心配したんだよ?』
一目散にムサシに駆け寄る女。
 「俺が見つけてやったんだぞ?」
その言葉に女は黙っていた。そして
 『別に頼んでないし・・・』
と言ってきた。

この言葉にさすがにカチンと来た。
 「確かに頼まれてねーけどよ、その言い方はねーだろ?」
僕は声を荒げる。女は少し、戸惑った表情になる。
 『そ、そういう意味で言った訳じゃ・・・』
女の言葉をさえぎるように、僕はムサシのリードを女の足元に放り投げる。
 「じゃあ俺はこれで」
 『あっ・・』
何か言いかけた女に背を向け、僕はその場を立ち去った。
575Mr.名無しさん:2006/12/08(金) 18:42:04
(・∀・)イイヨイイヨー
576Mr.名無しさん:2006/12/08(金) 22:04:47
wktk
577497 ◆ToK1blLRAI :2006/12/08(金) 22:42:18
>>574
翌朝、僕は散歩コースを変えることにした。
あの区民館を通るのはやめよう。そうすればあの女に会わなくてすむだろう。
区民館の近くに来て、別の道に行こうとした。
すると、コジローが抵抗してきた。
 「おい、コジロー、そっちじゃない。今日からこっちに行くぞ」
グイっとリードを引っ張っても、コジローは動かず、区民館の方に行こうとする。
 「わがまま言うなって、ほら」
何度引っ張ってもいう事を聞かない。ついに僕は根負けし、区民館の方へと向った。

区民館の前にあの女とムサシがいた。
僕はハァとため息をついた。
ムサシもコジローもお互いの姿を見つけると、お互いに向って走り出した。
僕は何とかコジローを制することが出来るけど、あの女は案の定、ムサシに引っ張られている。
そして僕はまた、あの女と対峙する事になった。

足元ではコジローとムサシがじゃれあっている。
僕は女の事を見ないようにした、でもやっぱり気になる・・・
チラっと横目で見ると、女はずっと僕の方を見ていた。
顔はやっぱり可愛い・・・僕は思わず話しかけてしまった。
578497 ◆ToK1blLRAI :2006/12/08(金) 22:43:42
 「な、何か用かよ・・・」
女は無言でコーラを僕に差し出して来た。
 「何?それ?」
 『・・・昨日のお礼・・』
 「は?」
 『昨日、ムサシを探してくれたお礼・・・』
うつむきながら、ちょっと上目使いの表情でそういう女。
 「ま、まぁ最初っからそう素直だったら良かったのにな」
照れながら僕はコーラを受け取る。
そしてプルタブを開けると・・・
プシュー!!!!
シャンパンファイトみたいに缶から泡が吹き出してきた。
 「うっわっ!!!」
あっと言う間に僕の顔から全身はコーラまみれになった。
 『ぷっ、バカじゃない、こんなのに引っかかった』
 「オマエ、ふざけんなよ!!」
 『あーあ、どんくさいわねー、帰ろ、ムサシ』
女はそう言いながらムサシを引っ張って走り出した。
曲がり角の手前で女は立ち止まり、僕にこう言った。
 『昨日はありがとう』
その言葉を聞いて、僕は怒りよりも嬉しい気持ちになった。
 「んだよ、素直じゃねーな、なぁ、コジロー?」
笑いながらチラっとコジローを見る。
どうやらコジローにもコーラの泡がかかったらしく、僕はコジローに吠えられ続けた。
579497 ◆ToK1blLRAI :2006/12/08(金) 22:45:28
それから僕は毎日、あの生意気な女と会っていた。
会うと言っても朝のほんの数分だけ、あの区民館の前で
コジローとムサシがじゃれあっている間だけだ。
 『さてっと、行こうか、ムサシ』
女はムサシのリードを引っ張り、立ち去ろうとする。
僕は思い切って、前から知りたかった事を聞いてみた。
 「あ、あのさ」
 『何?』
 「名前、聞いてもいいか?」
 『何の為に?』
 「べ、別にいいだろ?俺は、如月って言うんだ、2月の別名」
僕が名乗ると、女は一瞬、目を大きく丸くした。
 「なんだよ、変な顔して」
 『犬の名前だけかと思ったら、飼い主の名前も似てるなって・・』
 「似てる?」
 『私は弥生、3月の別名ね』
 「じゃあ当然、生まれた月は・・・せーの」
僕の問いかけに少しだけ笑顔をみせ、弥生は小さく息を吸う。
 「2月!」
 『3月!』
二人同時に生まれた月を言い合った。そして同時に笑い出した。
この時、僕は直感した。これは偶然じゃない、運命だ!
犬の名前に関連があり、本人達の名前にも関連があるなんて!!
 『じゃあ私はこれで、バイバイ、コジローと2月』
 「お、おう、気をつけろよ、ムサシと3月」
僕はスキップしならが家路に着く。

そして帰ると真っ先に母さんに感謝した。
 「如月って名づけてくれてサンキュー!!」
580Mr.名無しさん:2006/12/08(金) 22:55:13
(*´Д`)ハァハァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ ノ \ア ノ \ア / \ ア / \ ア
581Mr.名無しさん:2006/12/09(土) 12:48:31
(*´Д`*)ハイパーチンポボッキングだった。
582Mr.名無しさん:2006/12/10(日) 02:18:46
       _____
   / ̄.....//.... θ ̄>
  ∠|::::::::::::::U:: τ ::::::<
⊂二|::::::::::::::::::::::::::θ_>
    ̄∠/ ̄ ̄   既に満足感でいっぱいさ。
583Mr.名無しさん:2006/12/10(日) 10:55:12
ちょちょっと、何勝手に新作なんて投下してんのよ!
読みたくなって仕事に手がつかないじゃない!アンタのせいなんだからね!
584Mr.名無しさん:2006/12/10(日) 16:57:30
つまんねえな

晒しage
585Mr.名無しさん:2006/12/11(月) 14:56:59
>>584はツンデレ。
586497 ◆ToK1blLRAI :2006/12/11(月) 18:18:40
>>579
今日は学校に行く日。
僕は弥生とお互いの名前を知り、距離がグッと縮まった感じがして上機嫌だった。

 「何かいい事でもあったの?」
学校に着くと、目ざとく翠が僕をつかまえる。
 「い、いや、別に何も」
危ない危ない、そんなに顔に出てたのか。
 「あのさ、今日、夜ヒマ?」
 「予定なんて毎日ないけど、なんで?」
 「お父さんがサーカスのチケットもらってきたんだけどね」
 「サーカス?」
翠の話だと先月から家の近所にサーカス団がやって来ているらしい。
散歩以外、外に出ない僕には関係ない話だ。
 「如月、あんまり表に出てないだろうっと思ってさ」
 「誘ってくれてるのか?」
 「まぁ、そんなトコ」
 「うーん」
 「いいじゃん、行こうよ、どうせやる事ないんでしょ?」
 「それもそうだな」
 「じゃあ5時に如月の家に行くから」
 「ああ、分かった」
翠は僕との約束をすると、教室へと戻っていった。
昔はよく翠と遊びに行ってた。映画だったり、遊園地だったり。
でもそれは小学生までの話で、中学・高校になってから遊びに行ったりはしなかった。
それが何で今頃になって・・・
少しだけ疑問に思ったけど、ヒマなのは事実だし、僕は深く考えない事にした。
587497 ◆ToK1blLRAI :2006/12/11(月) 18:20:00
約束の時間前に翠は家に来た。
そして二人でそのサーカスを観にいくことにした。

正直、僕はサーカスの事をバカにしていた。
でも、間近で見る様々なショーはとても興奮し、感動もした。 
ショーも終わり、みんな一斉に席を立ち、出口へ向かう。
 「混んでるからのんびり出ようよ」
 「ああ、そうだな」
出口が空くまで、僕と翠は席で待っている。
会場の後片付けをしている団員は忙しそうだ。
 「ねぇ、聞いていい?」
 「何を?」
 「もう、学校来ないの?」
 「どうだろう、俺もわかんねーな」
 「このままじゃ、本当に戻れなくなるよ?」
 「そーなったら、そーなったでしょうがないだろ」
 「そんなのヤダよ・・・」
 「な、何だよ、急に」
横に座っている翠に目を向ける。
小刻みに震える肩、そして、微かに聞こえるすすり泣き・・・
 「お、おい」
 「ゴメンね・・何か・・私、帰るね」
そう言うと翠は席を立ち、出口に向かった。
 「ちょっと待てってば!」
僕は慌てて翠を追いかけた。
588497 ◆ToK1blLRAI :2006/12/11(月) 18:21:55
出口をすぐ出たところで僕は翠をつかまえる。
 「どうしたんだよ、一体?」
 「私にも分からない・・」
 「分からないって、何が?」
僕がそう言うと翠は静かに、ゆっくりと僕の胸に頭を預けてきた。
 「っと・・な、何だよ・・」
 「寂しくて・・如月がいなくなってから・・」
 「えっ、、」
 「ずっと、ただの幼馴染だと思ってた・・ううん・・思い込もうとしてた」
 「翠・・」
 「如月が学校来なくなって、、もう自分に嘘つけなくなって・・・」
思いがけない翠の告白に、僕はどうしたらいいか分からなかった。
小さい頃から翠は僕のすぐ近くにいた。
でも、一度もコイツを女をして見た事がなく、僕はどうしたらいいか分からなかった。
 「私は、如月が好き。子供の頃から、ずっと、ずっと・・・」
胸がバクバクする。耳が熱くなる。
翠の髪から漂う匂いが鼻腔を刺激する。
僕の理性は吹っ飛ぶ寸前だった。
何とか冷静になろうと、辺りを見渡す。
サーカス小屋から色々な道具を運び出す人達が見える。
すると一人の女の子が出てきた。その子は重そうな荷物を一生懸命抱えていた。
 (あれは・・)
どこかで見た事がある。
589497 ◆ToK1blLRAI :2006/12/11(月) 18:23:27
その子は荷物をプレハブ小屋にしまい、また小屋にもどろうとしている。
その途中で、パッと僕と視線があう・・・
それは弥生だった。
何で弥生がこんなトコにいるんだ?
弥生はしばらく僕を見ていた。
僕も弥生を見ていた。

 「如月はどうなの?」
 「えっ?」
翠が僕に問いかける。その声が聞こえたのだろうか、
弥生は慌てて小屋の中へ走っていった。
 「お、俺は・・その・・・」
正直、答えに困った。
翠の事は嫌いじゃない。でも、好きとかそんな風に考えたことがない。
スッと翠は僕の身体から離れる。
 「ゴメンね・・急に」
 「い、いや、あ、謝らなくても・・」
 「私、一人で帰るから・・・」
そう言うと翠は駅の方へ歩き出した。
僕は迷った。翠を追いかけるのか、それとも弥生に説明するのか。
結局、どちらも出来なかった。
あれから弥生はサーカス小屋から一回も出てこなかった。 

翌朝、僕はいつものように散歩に行った。
そして区民館の前で弥生を待った。
でも、その日はいくら待っても弥生は来なかった。
590Mr.名無しさん:2006/12/11(月) 18:42:52
急展開ですな
591Mr.名無しさん:2006/12/11(月) 19:33:38
  _  ∩
( *´д`)彡 もっこリ!ハッフン!もっこリ!ハッフン!
  ⊂彡
592497 ◆ToK1blLRAI :2006/12/11(月) 23:32:51
休載のお知らせ

マイペースで書いているんだが、才能の違いを
思い知らされ、文を書く自信がなくなりました
しばらく休ませてください
楽しみにしている人は少ないでしょうけど
勝手行ってすみません

理由はサマーを読んでしまったからです
593Mr.名無しさん:2006/12/11(月) 23:47:23
>>592
ちょwwwwおまwwwwwwww
あれと比べたら過去ログの職人たちはみんな霞んじまうぞwwwww
比べる相手を間違ってるってwww
594Mr.名無しさん:2006/12/12(火) 11:24:34
せめて今のやつを終わらせてからにしてほすぃ
でもやる気出ないなら仕方ないか


べ、別にあんたの小説なんか楽しみにしてないんだからね!
595Mr.名無しさん:2006/12/12(火) 20:31:59
>>592おまいの話好きなんだ!続きを書いてくれ頼む!!
596Mr.名無しさん:2006/12/13(水) 16:46:28
サマーは(・з・)キニスルナ!

的保守
597Mr.名無しさん:2006/12/13(水) 19:14:31
ところでサマーって何
598Mr.名無しさん:2006/12/14(木) 01:57:39
小さい頃の話

晴香「ねぇー、おうち帰ろうよ。もう真っ暗だよ」
太一「うるさいな、まだおれはまだ遊び足りないんだよ!」
晴香「でも・・もうみんな帰っちゃったよ?」
太一「うるせー!一人で遊ぶからおまえは帰ってろよ!」
晴香「でも・・」
太一「いいからさっさと帰れよ!うるさいな!」
晴香「ひっ・・ぐす・・うわーん!たいちゃんがぶったぁ!あーん!」
泣きながら走り去っていく晴香。

太一はその日、どうしても家に帰りたくなかった。
冬、陽が落ちて静けさを増していく公園は寒くて心細かったが
家に帰り両親の醜く罵り合う姿を見るよりはマシだった。
太一「家に帰らなければすきなだけ遊べるし、宿題もやらなくていいんだ!」
自分にそう言い聞かせても空腹と寒さで次第に心細くなっていく。

晴香「たいちゃん?」
公園のすみ、膝を抱えていた太一に声がかかった
太一「な、なんだよ!帰ったんじゃないのかよ!」
晴香「だって・・・」
太一「いいからほっとけよ!」
さっきまでの心細さはどこへやら、途端に強がりが目覚めはじめる
599Mr.名無しさん:2006/12/14(木) 02:09:03
そんな強がりはお構いなしに晴香は太一の隣にちょこんと座った。
晴香「ね?」
太一「な、なんだよ」
晴香「おなかすいたでしょ?」
太一「べ、べつに、まだ・・」
晴香「あたしね、たいちゃんにおべんとつくってきたの」
太一に差し出した小さな手には弁当箱。
太一「べつに・・おれは・・」
弁当の中には不格好なおにぎりと晴香の好物のプチトマト
思えばこの時が晴香が太一に最初にお弁当を作った時だった。
晴香「ほら、がんばって作ったんだから食べてよ」
太一「・・しかたねーな」
そういいながらも食べ始めたら弁当に夢中になった太一
それを笑顔で見つめながら
「ね?おうちに帰りたくないならあたしのうちにきなよ」
晴香は言った。



そして、太一の両親は迎えに来なかった。
600Mr.名無しさん:2006/12/14(木) 02:11:02
とりあえず寝れないので暇つぶしに出だしを書きました。
男もややツンデルになってもいいですか?
601Mr.名無しさん:2006/12/14(木) 03:52:20
>>600
過去レス読んでないの?
いちいちきかなくても自分がやりたいようにやればいい
602Mr.名無しさん:2006/12/14(木) 18:20:55
個人的には男のツンデレはうっとーしい
603Mr.名無しさん:2006/12/14(木) 20:04:13
604Mr.名無しさん:2006/12/16(土) 17:39:23
ほしゅ
605Mr.名無しさん:2006/12/16(土) 17:56:36
逝ってよし!!
606Mr.名無しさん:2006/12/17(日) 14:45:00
繋ぎ屋の作品が読みたいんだがどこ行った?
607Mr.名無しさん:2006/12/17(日) 19:13:45
俺はこのスレ好きだ
でも、何かが足りないんだよ
だから足りない物を埋め込んで書く事にした
608Mr.名無しさん:2006/12/17(日) 19:15:30
携帯が鳴る。
発信者は母だ。
母からの電話はめったに無い。
俺は嫌な胸騒ぎを覚える。

「どうした、何かあったの?」
「鹿児島の叔父さんが亡くなったの」
「えっ・・・」

鈍器で頭を殴られたような痛さが突き抜ける。
幼い頃に親父を事故で亡くした俺にとって、叔父さんは父親同然だった。
夏休みに遊びに行けば、海や山に連れて行ってくれた。
そんな叔父さんが亡くなった。

「明日、朝一の飛行機で行くから、隆弘も来るのよ」
「あ、ああ・・・」

叔父さんに最後の挨拶をしに行くのは当然。
でも、出来れば行きたくない。
あの夏の日の出来事を思い出してしまうから・・・
609Mr.名無しさん:2006/12/17(日) 19:17:44
鹿児島行きの飛行機の中で、俺はあの記憶を思い出していた。
それは8年前の夏の日だった・・・

〜 〜 〜 〜 〜

「待ってよ〜」
「悔しかったら追いついてみろよ」

当時、中学2年だった俺は叔父さんの家で従妹の沙織と遊んでいた。
沙織は4歳年下で、叔母さんの兄弟の子供だったと記憶している。
負けん気が強く、いつも俺に突っかかってきていた。
あの日も俺をからかってきていた。
仕返しに俺は沙織が大事にしていた人形を取上げ、小山の中を駆け抜けていた。

「返してってば、私の人形!」

だんだん遠くなる沙織の声を後ろに、俺は小山にある無人の小屋に入り込む。
そして、無造作に置いてある藁の中に人形を隠した。
しばらくして沙織が小屋の中に入ってくる。

「たっくん、私の人形は?」
「さぁ、知らないよ」
「分かってるもん!小屋の中に隠したんでしょ?」

沙織は一生懸命小屋を散策する。
でも中々見つからず、段々泣き顔になってくる。
610Mr.名無しさん:2006/12/17(日) 19:19:32
「教えて欲しかったら、教えてください隆弘様って言えよ」
「絶対言わない!自分でさがすもん!!」
「じゃあ、ずっとこの小屋の中にいればいいじゃん」

そう言い残し、俺は小屋を後にする。
俺は一人で小山を降りていった。


すぐ戻ってくるだろうと思って、俺は叔父さんの家に戻る。
しばらくすると、突然の豪雨がやって来た。
雷も鳴り、あたりはあっという間に真っ暗になる。

「まだ帰って来ないのかよ・・・」

沙織は大の雷嫌い。
今頃小屋の中で震えているのだろうか・・・
いてもたってもいられなくなった俺は、豪雨の中、小屋に戻る事にした。


小屋に戻ると、びしょ濡れの沙織が人形を抱えながら隅っこで泣いていた。

「何で帰ってこなかったんだよ?」
「だって、、途中で雷が鳴って・・グスン・・・」
611Mr.名無しさん:2006/12/17(日) 19:23:05
雷の恐怖と雨に打たれた寒さからか、沙織は震えていた。
ちょっとした罪悪感から、俺は沙織に謝ることにした。

「あ、その・・ゴ、ゴメンな」
「・・・許さないもん」

沙織がそう言った時、轟音と共に雷が鳴る。
その音は地面を揺らす程だった。

「キャッ!!!」

沙織は人形を投げ出し、俺に抱きついてきた。
いきなり抱きつかれ、俺は狼狽する。

「お、おいっ」
「たっくん、怖いよ・・・」
「だ、大丈夫だからさ」

震える沙織の身体を俺はそっと抱きしめる。
雨に濡れたせいで、白いTシャツの下からブラジャーの線がハッキリ浮かび上がっていた。
思春期を向かえた俺の心臓はバクバクと鳴り出す。
腕の中にいるのが、従妹の小学生だとしても抑えられない感情だった。
612Mr.名無しさん:2006/12/17(日) 21:18:17
続きマダー!?
613Mr.名無しさん:2006/12/17(日) 21:25:30
「沙織・・寒い?」
「うん、寒いよ・・・」
「な、なぁ、知ってる?は、裸で抱き合うと暖かいんだって」
「そうなの?」
「あ、ああ」
「じゃあ、そうしてよ」

素直に俺の言葉を受け入れた沙織は、びしょ濡れのTシャツをスッと脱ぎ捨てた。
発育途中の胸の膨らみに、俺の視線は釘付けとなる。

「たっくんは脱がないの?」
「い、今脱ぐよ」

寒さからなのか、興奮からなのか、俺の手は震えていた。
震える手を必死に押さえながら、俺も上半身裸になる。
そして、また沙織は俺の腕の中に埋もれてきた。

「さっきより暖かい」
「だ、だろ?」

俺の視線の先には沙織の背中がある。
そしてブラのホックが飛び込んでくる。
これも外したい・・・
そんな衝動に駆られる。
614Mr.名無しさん:2006/12/17(日) 21:27:03
「こ、これも取った方がもっと暖かいかも・・」

沙織のブラを2,3回ノックし、恐る恐る問いかける。
沙織は少し戸惑った感じで答えた。

「・・・ホント?」
「ほ、ホントだって」
「で、でも・・な、何か恥ずかしいよ」
「べ、別に変な事してる訳じゃないしさ」
「じゃあ・・」

俺の胸に頭を持たれたまま、沙織はブラのホックを外し、足元にブラジャーを置いた。
その瞬間、再び雷が落ちる。

「キャー!!」

大きな叫び声と共に、沙織は力いっぱい俺に抱きついてくる。
俺の胸に2つの突起が押し付けられてくる。
それがはっきり分かった。
その瞬間、俺の理性は吹っ飛んだ。

「さ、沙織!!」

雷に負けないぐらい大きな声だったと思う。
俺は沙織を藁の上に押し倒した。
615Mr.名無しさん:2006/12/17(日) 21:28:28
ここから先はwiiみたいな出し方にするか
616Mr.名無しさん:2006/12/18(月) 09:31:10
続きは無いのか?
617Mr.名無しさん:2006/12/18(月) 09:55:39
「えっ、な、何・・?」

沙織は不安そうな表情を浮かべる。
俺は夢中で沙織の胸に顔を埋めた。

「たっくん、どうしたの?」

胸の膨らみが始まる所に俺は自分の唇を当てる。
そしてそこから突起部へと唇を這わす。

「あっ、く、くすぐったい・・・」
「やっ・・・あ・・・」

沙織の口から、吐息が漏れ始める。
その声に俺の体中の血液が沸騰した。
俺は夢中で唇を沙織の胸にあてがい、突起部の直前まで近づける。
そして、突起部全体を唇で摘んだ。

「やっ、、あ、ああぁ・・はふぅ・・・」

ガクンッっと大きく沙織の身体がはねる。
俺は力いっぱい沙織の動きを封じ込めようとした。
618Mr.名無しさん:2006/12/18(月) 09:57:56
安価あった方が見やすいのか?
小手とかなくてもいいんだよな?
てかsageようぜ
619Mr.名無しさん:2006/12/18(月) 10:12:17
ごめん
620Mr.名無しさん:2006/12/18(月) 11:32:51
>>618俺は読めればどっちでもいい
安価なくても問題ない
621Mr.名無しさん:2006/12/18(月) 16:25:09
了解、じゃこのままで
622Mr.名無しさん:2006/12/19(火) 16:10:35
続きマダー?
623Mr.名無しさん:2006/12/19(火) 18:09:23
誰か投下してくれ
624Mr.名無しさん:2006/12/19(火) 21:31:06
「・・たっくん・・・ど、どうした・・・の・・・」

沙織は自分の状況が分からないのだろう。
泣き出しそうな声で俺に尋ねる。
でも、その時の俺はその問合せに答えるだけの冷静さを持ち合わせてなかった。

「な、何か・・へ、変な感じだ・・よ・・っ・・・」

沙織の呼吸が速くなる。
それに呼応して、俺の動きも速くなった。
左手で沙織の胸をまさぐる。
そして、舌で沙織の右胸の突起部をすくいあげる。

「あっ!!やっ・・・はぁぁ・・んんっ!!!」

先程とは比べようもないぐらい、沙織の身体は跳ね上がった。
俺は必死に沙織の身体を押さえつける。
そして、空いている右手を沙織の股間へと忍ばせた。
指先が股間に触れた。
その瞬間、沙織は精一杯の力で俺を突き飛ばした。
625Mr.名無しさん:2006/12/19(火) 21:33:18
泣きながら俺を睨む沙織。
俺は自分がした事の重大さに気付く。

「あっ、ご、ゴメン・・・」
「たっくんのバカ!!」

Tシャツとブラを手にし、沙織は小屋を飛び出していった。

雷雨の中、俺は一人で小屋の中で泣いていた・・・・

〜 〜 〜 〜 〜

8年も前の事なのに、今でも鮮明に覚えている。
あれから沙織とは会っていない。
会いたくない。
でも、今日、会わなくてはいけない。
どの顔して会えばいいのか?
8年という時間は解決してくれているのか?
不安だけがよぎる。
モヤモヤした状態で、俺は飛行機を降りて叔父さんの家に向かった。
626Mr.名無しさん:2006/12/19(火) 21:34:09
「隆弘君、久しぶりね」
「久しぶり、叔母さん」

叔父さんの家に着き、叔母さんと久しぶりに会話をする。
リビングには親族がチラホラ集まっていた。
でも、その中に沙織の姿はなかった。

「叔母さん、トイレ借りるね」

緊張している俺はトイレで一息つくことにした。
台所からトイレまでの廊下をあるき、右に曲がるとトイレだ。
曲がり角から誰かが来た。

沙織だ・・・

学校の制服だろう、ブレザー姿だった。
直立不動で俺を見ている。
俺もずっと沙織を見ていた。
何か言わないと・・でも、言葉が出ない。
あの時沙織は小学生とはいえ、5年生。
記憶がない訳がない。
俺は声を振り絞って話しかけた。
627Mr.名無しさん:2006/12/19(火) 21:35:17
「ひ、久しぶり・・・お、大きくなったな・・・・」
「そうね」

8年ぶりに聞く沙織の声は、『女の子』の声ではなく『女』の声だった。
でも、その声はとても冷たく、とても攻撃的だった。

「叔父さん、事故だったんだって」
「それぐらい聞いてるでしょ、イチイチ私に聞かないで」

何とか普通の会話をしようとする。

「お、大きくなったよな、見違えたよ」
「8年ぶりなら当たり前でしょ?」

返ってくる返事には全てトゲがある。
俺は焦りに焦った。
628Mr.名無しさん:2006/12/19(火) 21:36:03
「トイレ行くならさっさと行けば」

スッと壁に寄りかかる沙織。
道を譲っているのだろう。

「あ、ありがとう」

沙織の前を、視線をあわせないようにすり抜けようとした時、
沙織が小声で呟いた。

「・・・私、忘れてないから」

そう言うと、沙織はリビングへと歩いていった。
その言葉を聞いた俺は、全身の血の気がサーッと引いていくのを覚える。
1秒でも早く、俺はこの場から消えて無くなりたかった。



リビングに戻ると親族がめいめいの話しをしていた。
子供が少ない家系で、10代は俺と沙織しかいない。
必然的に会話の中に入っていくのが難しくなっていく。
一言二言返事をするだけで会話が終わってしまう。
気が付いたら俺は沙織の隣に座っていた。
629Mr.名無しさん:2006/12/20(水) 10:27:19
        グッジョブ!!           ∩   ∩
       _ _∩           (⌒ )   ( ⌒)       ∩_ _ グッジョブ!!
        (ヨ,,. i             |  |  / .ノ        i .,,E)
グッジョブ!!  \ \          |  |  / /         / /
  _n      \ \   _、 _  .|  | / / _、_    / ノ
 (  l     _、 _  \ \( <_,` )|  | / / ,_ノ` )/ /    _、_    グッジョブ!!
  \ \ ( <_,` ) \         ノ(       /____( ,_ノ` )    n
    ヽ___ ̄ ̄ ノ   |      /   ヽ      | __      \     l .,E)
      /    /     /     /    \     ヽ   /     /\ ヽ_/ /
630Mr.名無しさん:2006/12/20(水) 10:28:55
んでもって

  _  ∩
( ゚∀゚)彡 続き!続き!
 ⊂彡
631Mr.名無しさん:2006/12/20(水) 13:28:48
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 ワッフル!ワッフル!
 ⊂彡
632Mr.名無しさん:2006/12/20(水) 17:09:52
面白くなってきたぜ!
633Mr.名無しさん:2006/12/20(水) 18:34:35
このスレ鬱になるな…
634Mr.名無しさん:2006/12/20(水) 22:52:46
つ・づ・き! つ・づ・き!
635Mr.名無しさん:2006/12/21(木) 00:11:54
長い、長い沈黙が続く。
あの事を沙織は覚えていた。
きっと俺と同じぐらい鮮明に覚えているのだろう。

「いつまで黙ってるの?」

不意に沙織が話しかけてくる。
俺は何を話したらいいか分からない。

「い、いや、、何だかな、ハハッ・・」

照れ笑いにも似た笑みを浮かべる。

「何笑ってるの?気持ち悪い」

沙織の一言一言が俺の胸を突き刺す。
気持ち悪いとは、あの時の事を言っているのか?
俺はこの空気を何とかして変えたかった。

台所のテーブルの上には、食事用に買ってきたと思われる
コンビニの惣菜が並んでいる。
困ったら何か食べよう。ふと、そう思った。

「お、俺、腹減ったから何か食べるけど・・」
「いいわよ、私が持ってくる」

沙織は立ち上がり、台所へ歩いて行く。
636Mr.名無しさん:2006/12/21(木) 00:13:28
沙織はおにぎりを数個、抱えてきた。
その内の3つを俺の前に無造作に差し出す。

「ありがとう」
「別に、ついでだし」

置かれたおにぎりはすべてツナのおにぎりだった。
俺はツナ缶が大好物で、子供の頃は毎日のように食べていた。
無論、叔父さんの家に来た時もそれは変わらなかった。

沙織と仲が良かった頃は二人で1つのツナ缶をおやつ代わりに食べていた。
何をかけたら美味しいか、二人で試行錯誤したものだ。
もしかしたら、沙織は俺がツナが好きな事を覚えていて・・・
そう考えると何だか嬉しくなった。

「俺がツナ好きなの、覚えてたのか?」
「そうだったっけ?そんなの覚えてないもん」

俺とは視線をあわさず、ボソっと沙織は答える。
沙織は意地を張る時や隠し事があろ時は、語尾に必ず "〜もん" と言うクセがあった。
それを思い出し、俺は思い出し笑いをする。

「な、何で笑ってるのよ?」
「いや、沙織は変わってないなってさ」
「訳分からない事言わないでよ!」

沙織は食べかけのおにぎりを慌てて口の中に詰め込んでいった。
637Mr.名無しさん:2006/12/21(木) 00:14:46
こっからギア上げてくぜ
まぁ、NOPLANだがね
638Mr.名無しさん:2006/12/21(木) 08:47:59
wktkして待ってますよ!
GJ!!
639Mr.名無しさん:2006/12/21(木) 18:09:02
おもしろいぜ
最初はただのエロ小説かと思ったが
640Mr.名無しさん:2006/12/21(木) 19:08:27
GJJJJJ!
641Mr.名無しさん:2006/12/21(木) 21:40:42
王道ツンデレもいいが
こういうのも悪くないな
642Mr.名無しさん:2006/12/22(金) 14:43:23
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 保守!保守!
 ⊂彡
643Mr.名無しさん:2006/12/23(土) 10:28:41
葬儀は一通り終わった。
遠方の親族は早々に引き上げていく。
浪人中の俺は慌てて帰る事もない。
広々した家に一人になってしまう叔母さんを気遣い、残ることにした。

「沙織、帰るわよ」

沙織のお母さんが沙織を呼んでいる。
これでもう、沙織と会う事もないんだな、と考えていた。
気が付いたら俺はソファの上で眠りについていた。


・・・・
・・・息苦しい・・・

「ぐぅっっわっ!!」

俺は飛び起きた。
足元にタオルが数枚、拡散していた。
誰かが寝ている俺の顔にかけたのだろう。
窒息目的で・・
目一杯息を吸い込む。
頭がくらくらする。
誰がやったんだ?
左右を見渡す、誰もいない。
後ろを振り向く。

沙織がいた。
644Mr.名無しさん:2006/12/23(土) 10:30:56
「か、帰ったんじゃなかったのか?」
「叔母さんが心配だから残った」
「一人で?」
「一人じゃいけない?」
「いけないっていうか・・」

俺は複雑な心境だった。
もう会うことはないと思った沙織が突然、目の前に現れた。
嬉しいような、困ったような・・・

「他の人は?」
「みんな帰った」
「みんな?」
「そう」
「叔母さんは?」
「上で横になってる」

親族一同は全員帰り、叔母さんは2階で寝ている。
今、この家には俺と沙織しかいないという状況に俺は気付いた。
少なくとも明日、帰るまではこの状態なんだろう。
何をどうしたらいいのか、俺はわからないでいた。
645Mr.名無しさん:2006/12/23(土) 10:32:37
「ねぇ、あそこに連れてって」

沙織が口を開く。

「あそこって?」
「わからないの?あの小屋」
「な、何で・・」

あの小屋とは、俺が子供の頃、沙織に悪戯をした小屋の事だ。
なぜ、そこに連れて行けと言い出すのか?
真意が分からない。俺は狼狽する。

「い、いや、もう、10時過ぎてるし、夜道は危険だし・・・」
「今、行きたいの。連れて行くの?行かないの?」
「明日にしよう、な、な」
「もういい、私、一人で行くから」
「ちょっ・・」

引き止めるより先に、沙織は玄関に向かい、家を出て行った。


沙織が家を出てから10分ぐらいたった。
俺は一人で考えていた。
何故、沙織はあの小屋に行きたいのか?
何故、俺に連れてってと言ってきたのか?
窓の外を見ると、あの日と同じように雨が降ってきた。
646Mr.名無しさん:2006/12/23(土) 10:35:21
沙織が家を出て20分が経った。
まだ帰ってこない。
雨足は強まる。
稲光が見えてきた。
雷が嫌いな沙織は一人で小屋の中で震えているのかもしれない。
いてもたってもいられなくなり、俺は沙織を向かえに行くことにした。

小屋につき、扉に手をかける。
ギィーっという音が小屋中に響きわたる。
携帯電話の明かりで小屋の中を照らす。
隅っこで沙織は自分の肩を抱きしめ、小さくなっていた。

「だ、大丈夫か?」
「・・・来るのが遅いんだけど」
「沙織が早く帰ってこないからだろ」

雷鳴が地面を揺らす。
稲光が小屋の中を一瞬、明るくした。
沙織の身体はビクっと反応する。

「まだ、怖いのか?」
「・・・うるさい・・」
「まぁ、誰にでも苦手な物はあるしな」

あの時と変わらず、雷に怯える沙織がなんだかとても愛おしく感じる。
647Mr.名無しさん:2006/12/23(土) 20:39:48
続き続き
648Mr.名無しさん:2006/12/24(日) 12:06:57
やぁメリークリスマスイブ
649Mr.名無しさん:2006/12/24(日) 18:48:48
繋ぎ屋はどこにいったんだ!!
お前さんの小説が好きなんだYO!!!
650Mr.名無しさん:2006/12/24(日) 18:54:20
途中でヒロイン殺してあれだけ言われちゃあな
そりゃ来なくもなるだろう
変に演出に凝ってプロの真似事したみたいな小説はこのスレとはたぶん合わないし

新たな話を書いてくれるんなら俺は読むけどな
651Mr.名無しさん:2006/12/24(日) 22:00:30
繋ぎ屋じゃないけど何か書くよ
性の6時間中に意地でも完成させてやる
652Mr.名無しさん:2006/12/24(日) 22:53:15
「雨がひどくならない内に帰ろう」
「・・もう、ひどいじゃん」
「でも、そんな事言ってたらいつまでも帰れないだろ?」

俺は沙織に近づき、手を差し伸べる。
沙織は俺の手をチラっと見て、でも、俺の手を取ろうとしない。

「ほら、帰ろう」

スッと沙織は立ち上がり、急に俺に抱きついてきた。

「な、なんだよ、急に・・」
「たっくんがいけないんだから」
「えっ?」
「私の時間は、ここで止まったままなんだよ?」

消え入りそうな声で、沙織は俺の耳元で囁く。
言葉の意味が分かるような、分からないような気がする。

「い、イマイチ分からないんだけど」
「全部言わせるつもりなの?」

俺を抱きしめる沙織の手に力がこめられる。
653Mr.名無しさん:2006/12/24(日) 22:55:05
気が付くと、俺は沙織を押し倒していた。
8年前と同じように。

「たっくんのせいだからね」
「ああ」
「ちゃんと責任とりなさいよ」
「分かってる」

覆いかぶさるように、沙織の身体を押し付ける。
沙織の息遣いが耳元で早くなる。
体中の血液が一点に集中する。
俺の理性は吹き飛んだ。

「沙織・・・」

耳元で囁き、沙織の耳たぶを甘噛する。

「んっ・・・っ・・ふっあぁ・・・」

逃げようとする沙織の顔を強引に戻し、舌で耳全体を1周させる。

「やっ・・こ、こんなの・・・ぜ、全然・・・・」

感じてないとでも言いたいのか、虚勢をはる沙織。
俺の手は、沙織の胸にあてがわれていく。
654Mr.名無しさん:2006/12/24(日) 22:56:07
ブラウスの隙間に指を入れ、胸元をまさぐる。
ボタンを一つずつ外し、ブラジャーの上から胸をもむ。

「あぁっ・・んっ・・・バ、バカじゃない・・・の・・・」

押し寄せる快楽の波に抵抗しているのだろうか、一生懸命脚をバタつかせる。

ブラウスを脱がし、そしてブラを外す。
8年の年月は沙織の胸を大人の胸へと成長させていた。

「大きいな」

思わず正直な感想を口にしてしまう。
沙織は口を尖らせながら

「ジロジロ・・見る・・・な・・・バカ・・」

と吐息交じりに言う。
その仕草がとても愛くるしい。
俺は夢中で沙織の胸に顔を埋めた。

「あっ、、だ、ダメ・・・んんんっ・・・」

2つの突起物はどんどん大きくなる。
感じているのがはっきり分かる。
もう、俺は自分を止める事が出来なかった。
655Mr.名無しさん:2006/12/24(日) 22:57:39
省略されました
続きを読みたい場合は(ry
656Mr.名無しさん:2006/12/24(日) 22:58:06
エロよりツンデレたのむ
657Mr.名無しさん:2006/12/25(月) 13:24:24
>>651君は結局投下してないね
罰としてしゃぶれよ
658Mr.名無しさん:2006/12/25(月) 14:29:03
wktk
659Mr.名無しさん:2006/12/25(月) 22:41:20
そろそろこのスレまとめ

【連載中の作品】
過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI氏の作品
夕立刻に降る雨は
序幕
>24 >25 >26 >27 >28 >29 >30 >31 >32 >33
一幕
>223 >224 >225 >226 >227 >228 >230 >231 >232 >233
>234 >235 >236 >237 >238 >239 >240 >241 >242 >243 >244
登場人物名簿 >246
一幕要約 >247
二幕−その1
>281 >282 >283 >284 >285 >286 >287 >288 >289 >290 >291
二幕ーその2
>331 >332 >333 >334 >335 >336 >337
二幕―3
>356 >357 >358 >359 >360 >361 >362 >363 >364 >365 >366
>367 >368 >369 >370 >371 >372 >373

理恵のカタチ、祐樹のカタチ(仮) 作者:◆D0jSd07HNs
第一話
>136 >137 >138 >139 >140
キャラまとめ>155
第二話
>156 >157 >158 >159 >160
第三話
>194 >195 >196 >197 >198
660Mr.名無しさん:2006/12/25(月) 22:42:26
【連載中の作品】続き

『T&E』
第一話「二人の出会いは・・・」
>105 >106 >107 >108 >109
第二話「チキン・ヘッド」
>127 >128 >129 >130 >131
第三話『Rain days(1)』
>176 >177 >178 >179 >180 >181 >182 >183
第四話『Rain days(2)』
>261 >262 >263 >264 >265 >266 >267 >268
ここまでの復習的あらすじ>393
第五話『彼岸の景色』
>394 >395 >396 >397 >398 >399 >400 >401 >402 >403
第六話『さなぎの心』
>446 >447 >448 >449 >450 >451 >452 >453

「クラスメイト」
>150
第一話 【邂逅】
>161 >162 >163 >164 >168 >169

497 ◆ToK1blLRAI氏の作品
>564 >565 >566 >567 >570 >571 >572 >573 >574 >577
>578 >579 >586 >587 >588 >589
休載のお知らせ>592(復活マダー?)
661Mr.名無しさん:2006/12/25(月) 22:43:02
【連載中の作品】さらに続き

七誌さんの作品1
>55

七誌さん(60氏)の作品2
ボトム
第一話
>60 >64 >65 >69 >90 >91

七誌さんの作品3
守護霊のいる生活(仮)
-1-
>70 >71 >72 >73 >74 >75 >76(>93)
>94 >95 >96 >97 >98 >99(>101)

七誌さんの作品4
>205 >206 >207 >208 >209 >210 >211 >212 >214 >215
>216 >217 >218

七誌さんの作品5
>489 >490
662Mr.名無しさん:2006/12/25(月) 22:45:06
【連載中の作品】さらにさらに続き

七誌さんの作品6
>598 >599

七誌さんの作品7
>608 >609 >610 >611 >613 >614 >617 >624 >625 >626
>627 >628 >635 >636 >643 >644 >645 >646 >652 >653 >654

七誌さんの作品?
>445
>477
>482
喪版からの転載>323-325

【完結した作品】
497 ◆ToK1blLRAI氏の作品
>498 >499 >500 >503 >504 >505 >509 >510 >511 >515
>516 >517 >518 >520 >521 >525 >526 >527 >529 >530
>531 >532 >534 >535 >536 >543 >544 >545 >546 >550
>551 >552 >553

【応援絵】
>17

なんかすげえ久しぶりにまとめた気がする・・・
どっか間違ってる悪寒をひしひしと感じるけどまあ許して。
663Mr.名無しさん:2006/12/26(火) 08:33:48
かっ、勝手にまとめないでよ!

お礼なんて言わないんだからね!!
664Mr.名無しさん:2006/12/26(火) 12:02:16
まとめ乙!

>>657
すまん、『ドキッ!男だらけのクリスマスイブ飲み会(ポロリもあるよ)』に呼び出されたんだ
明日あたりに書き込むよ
665Mr.名無しさん:2006/12/26(火) 12:53:18
お疲れ。

放置して4ヶ月……。
修理だしてハードがdだからなぁ。

…………なんか書くか。
666Mr.名無しさん:2006/12/26(火) 16:30:59
>>664にふられちまったぜ…


まとめ乙
667Mr.名無しさん:2006/12/27(水) 10:17:05
ageていいかな?いいよね?ね?
668Mr.名無しさん:2006/12/27(水) 10:41:38
ほしゅ
669Mr.名無しさん:2006/12/27(水) 21:16:23
>>646
エロツンデレ乙!堪能しますた
670Mr.名無しさん:2006/12/28(木) 00:21:42
ツ「はぁ・・・。今日も仕事疲れたわね・・・」
マックで仕事を終えた私は、コートを羽織ってドアを開ける
ツ「・・・寒」
風が吹いて私の体から体温を奪い去ろうとする
ツ(・・・早く帰って、お風呂に入ろう)
事務所のカギを閉めて、足早にお店を後にする
今日はクリスマス・イブという事で、みんな休みを取ったようだ
5時を過ぎた時点で、私と店長と後輩君の3人しかいなかった
7時を過ぎた段階で、私は店長を無理やり帰らせた
家庭を持つ人をこんな時間まで働かせるのは、気が引けたからだ
おかげでお店は物凄く忙しくなったが、後輩君は「仕方ないッスね」と苦笑しながらもしっかりと働いてくれた
9時を過ぎて、店の片付けもなんとか終わり、後は事務作業だけになった
しかし朝からほとんど手をつけていなかったため、どうにも終わる気配が無かった
後輩君は「手伝います!」と意気込んでくれたが、役に立たないのは目に見えていたので早々に帰らせた
ツ(・・・ま、あの子もイブに仕事じゃ可哀相だし)
はぁ、と溜息交じりの息を吐くと、真っ白な湯気が立ち上って消える
ツ「・・・ほんと、今日は寒いわね・・・」
体を震わせながらも家へと急ぐ
自宅のマンションまであと100mというところで、入り口のドアの前に誰かが立っていることに気付く
671Mr.名無しさん:2006/12/28(木) 00:22:13
ツ(鍵でも忘れて入れないのかしら?)
訝しげに見つめながら近づくと、見覚えのある顔が視界に映る
俺「・・・よ、よお」
片手を上げて挨拶をする彼に、私は目を吊り上げる
忙しくて大変だった仕事が終わり、心休まる自宅まであと少しというところで、彼を見てしまったからだ
にやける顔を必死で堪えようとすると、必ずこの顔になる
ツ「・・・なによ?」
違う、そんな事を言いたいんじゃない
私は「どうしたの?」と言いたかったのに、何故かいつもキツい言葉が出る
俺「いや、えーと・・・ちょっと、な・・・」
いつも通り煮え切らない言い方をする彼
ツ「・・・家に入りたいんだけど」
じっと彼を見ながら言う
彼は私の言葉に、少し落ち込んだ顔をする
違う、私はこんなところじゃ寒いから、ウチに上がる?と言いたかったのだ
けれども、いつもと同じで、一番言いたいところが言えない
私は自分の言動に、軽く下唇を噛む
いつも彼と話すときは、自己嫌悪に陥ってしまう
俺「・・・ちょっとだけ、時間、いいか?」
私に気を使うような表情をする
672Mr.名無しさん:2006/12/28(木) 00:23:16
そこで私は気付く
今日は彼はマックに来なかった
いつもお昼になると、必ずお店にやってきてハンバーガーセットを頼むのに、今日は来ていない
あまりにも忙しくて気付かなかったが・・・
ツ「なに?」
俺「・・・えーと」
頭がガシガシとかく姿を私は見つめる
心とは裏腹に、決して表情に出ないように、目を吊り上げて見る
彼は一度私と視線が合うと、すぐに逸らした
ツ(なんで私はいつもこうなんだろう・・・)
私は昔からそうだった
私を可愛がってくれた、従兄にも
クラスに馴染めない私に優しくしてくれた先生にも
一生懸命部活に打ち込み、私を好きだと言ってくれた後輩にも
そして
私とくだらない事で口げんかをしたり、それでも私を気遣ってくれたり
時には甘えさせてくれて、頼りないくせにここぞって時は体を張ってくれたり・・・
私が初めて好きになったこの人にも
私は素直な気持ちを出せずに、ただただ冷たい態度を取り続けてしまう
私に近づこうとする人を、私は拒絶してしまう
それは昔から私の中にあるコンプレックスであり、嫌悪の対象であった
そして、大抵こういった態度を見せれば、相手は私に近づくのをやめるのだが・・・
673Mr.名無しさん:2006/12/28(木) 00:23:49
俺「えーと・・・安物なんだけど・・・メリークリスマス」
彼はポケットをまさぐって、小さな小箱を取り出した
ツ「・・・え」
俺「ほんとは、昼に渡そうと思ったんだけど、忙しそうだったからな」
そんな事を言いながら、彼は私にリボンが付いた小箱を渡す
私は無言でそれを受け取り、視線をそこにやる
私の手のひらより少しだけ大きいその小箱を見つめ、次いで彼に視線を戻す
俺「・・・そ、それだけだから!じゃ、じゃあ!風邪引くなよ!!」
鼻のあたりまでマフラーを上げて、走ってこの場を去ろうとする
その姿に
ツ「待って!!」
私は声を挙げて彼を引き止めた
674Mr.名無しさん:2006/12/28(木) 08:19:15
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 続きマダー?続きマダー?
 ⊂彡
675Mr.名無しさん:2006/12/28(木) 12:40:40
また天才か
676Mr.名無しさん:2006/12/28(木) 20:34:18
       _____
   / ̄.....//.... θ ̄>
  ∠|::::::::::::::U:: τ ::::::<
⊂二|::::::::::::::::::::::::::θ_>
    ̄∠/ ̄ ̄   かろやかに1000ゲット
677Mr.名無しさん:2006/12/28(木) 23:18:03
>>676
どんだけやる気無いんだよ…
678Mr.名無しさん:2006/12/29(金) 07:53:26
また喪板のコピペか…
このスレもう潮時じゃね?
679Mr.名無しさん:2006/12/29(金) 12:56:05
空気読まずに講習さぼって6時間で書いて一応見直した
国語偏差値40代の俺が投下。
============================
そいつは幼馴染みだった。

五歳の頃、私の家の隣の老夫妻の家に引っ越して来た。あいつは常に泣いていたのを覚えている。
この田舎に来た理由が両親を失ったから、というのだから当然と言えば当然だったのだが
当時私はそんな事も理解せずに、仲良くしていたおじいちゃんおばあちゃんを独占できなくなったとか
都会から来たとかいう理由で嫌っていた。

その後、思ったより早めにあいつは周りに馴染んだ。勉強が良くできた。病弱ではあるが運動だって出来ないわけではないらしく
元兵隊のおじいちゃんから学んだ格闘技とかも、馴染んだ一因なんだろうか。

隣のおじいちゃんとおばあちゃんが立て続けに亡くなって、そいつが高一のくせに一人暮らしを始めた頃からだろうか。
両親がそいつの事を今まで以上に気にしだして親しくなったことも手伝ってか、気付けば男子の中ではあいつばかりを目で追っていた。

でも結局、今は二人共片田舎のまぁまぁ頭の良い学校に通って二年と少し。ただそれだけだった。
そう言ったら友人は大笑いして「ふざけるなって!」と言ったが。まぁ、ともかく。――それだけの筈だった。


一緒に返っている最中、そいつが崩れるように倒れた。
680Mr.名無しさん:2006/12/29(金) 12:58:53
病院は嫌いだ。匂いが好かない。
あいつが倒れてもう1週間弱。結局お見舞いには今日まで来れなかった。

あいつがいるのは小さな個室だった。
ノックをしてはいると、彼は体を起こし、本を読みながら寝ていた。

私は愕然とした。たった一週間と言う期間を考えれば異常なほどに痩せていた。
布団から出ている腕は自分の腕よりは太いが、普段の印象とはかけ離れて。
その腕に点滴が刺さっているのをみて、これは彼を元気にするためのものの筈なのに
何だが病人という事をより深刻にしているような印象を受けた。
体全体はまるで板のように薄く、光の加減もあるのか顔は全体が黒ずんでるが
色は青と言うよりも、むしろ白みがかった黄色をしていた。

私まで病気になったんじゃないか、と思う程に嫌な感覚が全身を包んだ。

「立派な病人してるのね」

そう呟くと視界がぼやけた。こぼれはしなかったが、私も立派に泣いていた。
ベッドの前に屈むようにして彼の頬を撫でた。間違いなく暖かかった。
そうする事でしか彼を認識できないような気がした。でも少しだけ不安が消えた。

そのまま少し撫でていると、彼が目を覚ました。

「……う」
「ごめん、起こした?」
「……なんだ、お前か」

容赦なく一発かました。こいつが弱っている事をすっかり忘れてた筈だったが
いつもよりとても弱い一撃だった。でもいつものやりとりが出来た事に、また安心した。
681Mr.名無しさん:2006/12/29(金) 12:59:47
「あ、ごめん……で、これ、頼まれてた本と充電器」
「え?」
「あんた自分が本持ってこいって頼んだ事も忘れたの? 大好きな参考書と筒田康隆」

紙袋から、表紙だけはカラフルな参考書を取り出す。
重くて、分厚い参考書だ。それも数学となると見るだけで参ってくる。
それも数学だけではなかった。そんなに長くかかる病気なんだろうか、と嫌な考えがふと頭をよぎった。

「そんなの病気の時にやったら益々弱るんじゃないの」
「弱りはしねえよ、寧ろ暇で。 あ。どうぞ座って」

私は傍にあった椅子に座った。参考書を持つ手は心なしか震えていたのかも知れない。
そう見えるほど、彼があまりに弱々しくて下手に励ます事もはばかられた。
そんな自分の疑念を払うため、ではないが、私は通学鞄を開いた。

「それとこれ」
「……サラダ記念日?」

笑った。ただでさえ低い声なのに更に低い笑い方で。その時の顔は何だか別人のような気がした。

「現代文で出てくるかな」
「そういう見方するなら持って返るわよ」
「ごめんごめん」

やっぱり馬鹿だ。こいつは。

それから少し話した。家の事、クラブの事、通学路にいつもいるネコの事、授業の事……。
進路の話になった時、学校で「夢」について話した、と言った。

「そうか……俺の夢はなんだろうな」
「誰も聞いてないわよ」
「じゃあ、お前の夢は?」
682Mr.名無しさん:2006/12/29(金) 13:00:58
そういえば、一緒に学校を行き来してる割にはあまり話した事がないような気がした。
話す事なんてとりとめのない、もっとくだらない事を何日かおきに口に交わす程度だった気がする。
今は後悔している。これからはもっと話そう。

「……決まったら言うわ」

思った傍からこれだ。

「前もそうだったじゃねえか。 ほら、あのお前が裏の崖から落ちそうになった時」
「『あんたが』崖から落ちた時ね」

私の代わりに、という言葉が喉から出ることはなかった。
中学最後の夏祭りの時。花火を眺めようと二人で裏の山に登ったときのことだ。

「たかだか数メートル落ちただけなのに、お前が大声出してわんわん泣」

それ以上は喋らせなかった。あんまり思い出したい事ではない。みっともなくて。
でもその時にそんな話しただろうか。あのことは克明に覚えていると思ったがどうやらそうではないらしい。

「……で、そんときもそう言った」
「じゃ、まだ決めてないけど間違いなくあんたより稼ぐわ」

『アナタトイッショナラドコデモイイ』、そんな事言えるか。

「どうでも良いけど、あんたが早く良くなってくれないと……クラブの連中とか男子が私に色々言ってきて大変なんだから」

でも私の言いたい事はそんな事なんだろうか。
彼は笑った。少し声を出して。私も笑っていた。表情だけ。
なんで本当の事が言えないのだろう。
683Mr.名無しさん:2006/12/29(金) 13:02:33
「それに演劇の練習もあるから。 一昨年だっけ、あの『名演』は?」

尚も苦笑しながら彼が「勘弁してくれ」とでも言うように首を振った。
誰もいない舞台で、私の役に対して、客席に向かって「お前を泣かす奴は許さない!」と叫ぶシーンだった。
練習中、黒板に向かって練習する彼を見てみんなで爆笑したものだ。本番はまぁまぁ見れたものだった。

「……言うな」
「でも、早く良くなってね。 寂しいから」

………あーあ言っちゃった。ごく自然に。
みるみる頬が染まり体中が熱を帯びる。あいつもきょとんとしている。

でも何でわざわざ言ったんだろう。言わなくても何も変わらないんじゃないのか。
だって、本当に彼が、いや私が不安で。
684Mr.名無しさん:2006/12/29(金) 13:03:52
突如、彼の少し骨張った手が私の頭を撫でた。
堪える術もなく涙が溢れてきた。

「俺は大丈夫だよ」
「……バカ」

口ではそう言ったが手を振り払えはしなかった。振り払うわけもなかった。
その手は暖かかく、心地よかった。ずっとこうしていたかった。


「……それじゃ、もう時間があれだし帰るね」
「ああ、ありがとうな」

こんな事だけで、不安は薄くなっていた。彼は大丈夫だ。

「早く、良くなってね」
「モチロン」

親指を立てて彼は応えた。


あいつの容態が急変したという連絡を受けたのは、それから二日後の昼休み中だった。
685Mr.名無しさん:2006/12/29(金) 13:04:42
安置室に通されたのは、結局その連絡から三時間後だった。
その間にあいつの親族に連絡を入れたが、二年に一度くらいにある定期的な儀式を流すような受け答えだった。
私が何か言う権利はない。理由だって、見つからない。
ただ親戚でもない私がこんな事をしていると聞いて、急に声に色を付けた電話の向こうに
何も言えない自分が、ふがいなかった。

消毒や防腐処理が終わり、部屋に通されたが通されてもただ見る事以外出来ない。
知らせを聞いてやってきた人が増えてきたので、私は無言でその部屋を出た。

もう夜になるが帰る気になれない。私は何の脈略もなく通学鞄を開いた。
看護婦の人が言うには、彼が死んだ時に抱えていたという「サラダ記念日」。さっき渡して貰ったものだ。
おもむろに開いくが、本は綺麗なまま何も変わっていなかった。
貸して二日なんだから当然と言えば当然だったが、彼はもう一回は読んでしまっていたようだった。

ベッドにある物を捨てる事は許せなかったので参考書や人形など、私が持って行った物を私が引き取る形となった。
ポストイットが裏表紙に張ってあり、ただ「thank you」とだけ書かれていて。
封筒が挟んであって、そこには私への手紙が入っていた。

それからはまるで覚えていない。ただ周りがいくら焦っていたといっても
何か安定した基盤の上で大騒ぎしているようで、何だか自分が滑稽だった事ぐらいしか印象に残っていない。

気付けば、淡々と参列者が彼の写真の前に一礼していく。
泣いている人もいた。それを見て初めて自分がまだ泣いていない事に気付いた。
クラスメートも来ていたが、私に話しかけてくる人はいなかった。
クラス内で仲良くしたつもりもないし、誰かに話したわけでもないのだが、分かっていたのだろうか。
でも有り難かった。今話しかけられても答えるという事は出来ない気がした。
686Mr.名無しさん:2006/12/29(金) 13:06:32
そして花を入れる時も、何も思わなかった。ただ彼はそこにいた。
皆が花を入れていく様をただ見ていた。

そして最後、友達に連れられるように、実際引っ張られたのかも知れないが、
まさに閉じられる前の棺桶にやっと立った。
軽い化粧でもしてあるのだろうか、何だか綺麗な顔をしていた。
今更ながら、普段の彼の顔はもっと魅力的であった事に気が付いた。
私はしばらく突っ立った後、そうする事が決まっていたかのように、自然な動作で彼の頬に触り手を握った。


とても冷たかった――あんなに暖かかったのに


それがスイッチだった。感情を溜めていたダムが綺麗に砕けた。
意識してなかったのに喉から声が出た。膝から力が抜け、ひざまずく他無かった。
687Mr.名無しさん:2006/12/29(金) 13:07:24
後付なのは分かってるが彼の様子はおかしかった。病院にもっと早く行かせれば良かった。
悔しい、結局最後の最後も励まして貰ったのはこちらだった。彼の優しさに縋り付いただけだった。
私は彼に何をしてあげられたのだろうか。彼の口からは何も聞けなかった。
私が意地を張って聞こうとしなかった、というのが正しいのだろうか。自由だったくせに声も出さなかった。

不意にいつもの彼の姿が浮かんだ。
夜遅くまでついていた部屋のライト。体育で走っている時の姿。
自転車の後ろに乗っけてもらったときの背中。掃除のとき私が取れない物を取ってくれた。
問題を教えてくれた時の彼の一挙一動やメモの取り方。何気なく話している時の顔。

そういえば前に親と喧嘩し、深夜に出歩いたらあいつと鉢合わせた事もあった。
ねえ、ファーストキスはその時だっけ? ねえ、答えなさいよ。
こんなこっぱずかしい事こっちから聞いてあげてるんだから。ねえ?
答えてよ。ねえお願い。

気が付くと友人に支えられたまま大声を上げて泣いていた。
688Mr.名無しさん:2006/12/29(金) 13:09:52
――あれからもう半年ちかく経つ。
今日私はこの家を出る。
生まれ育ったこの町とも今日でお別れだ。
もう荷造りも終わり、あとはトラックを待つだけだった。

辛かった。あいつが居ない通学路をたった数ヶ月でも一人歩くというのは。
一時は寝ても醒めても勉強中も遊び時も不意にあいつの事が頭に浮かんできた。
あの封筒の中の手紙には何が書いてあるのだろう。私はまだ読んでいない。
頑張れ。とでも書いてあるのだろうか。あいつは頭が良かったからそんな月並みなメッセージじゃないんだろうか。
俺の事は忘れろ、だったら今からお墓を壊しに行く。あ、お墓のリクエストだろうか。だったら悪い事をした。
遺骨はもう親族の元で、両親と同じ処にある。遺骨は地中海に撒いてくれだろうか。何だっけこのエピソード。
大きく「ハズレ」と書いてある……って、これは昔に私があいつにやってやった事だ。あいつ泣いちゃったっけ。

涙が出てきた。これで何度目だろう。結局私の頬一番濡らしたのはあいつだった。

でも今は笑ってられる。見守ってて、とが傲慢な事を言うつもりはない。
向こうで見るか忘れてなければそれで良い。少なくとも私は忘れない。


彼の部屋を二階から見下ろして言った。

「またね」

春らしく暖かい風が頭を撫でた。
689Mr.名無しさん:2006/12/29(金) 14:43:04
 堪 能 させてもらった(*´Д`)
690Mr.名無しさん:2006/12/29(金) 17:42:25
これも間接スレ避難所のコピペだろ…
ガチでこのスレ終わったな…
691Mr.名無しさん:2006/12/29(金) 18:32:52
よく読むと完全なコピペじゃないな
「どうも」が「thank you」になってたり
転載じゃなくて普通に盗作だ
692Mr.名無しさん:2006/12/29(金) 18:37:59
転載や盗作なんてすぐバレるのに…
いったい何がしたいんだか
693Mr.名無しさん:2006/12/30(土) 00:11:08
もっとこう何ていうか、明るいラブコメが読みたいなぁ
694Mr.名無しさん:2006/12/30(土) 01:23:50
把握した
ラブコメ書いてみる
695Mr.名無しさん:2006/12/30(土) 05:51:34
>>694
盗作はやめてよね^^
696694:2006/12/30(土) 12:40:19
盗作なんてしねーよwww
どうせ正月ヒマだし


構想は
年上、同級生の幼なじみと人のいい委員長と金持ちが出る話しにしようとしてる
697Mr.名無しさん:2007/01/01(月) 01:19:39
新年だからageますよ
698彼のと彼女の……:2007/01/02(火) 00:32:45
『ねぇ、ひまじん。何してるの?』
今年も残り数時間で終わろうかという年の瀬の夜。毎年代わり映えのしない大晦日番組を、みかん片手にぼんやりと眺めていた彼の携帯にかかって来たコールは、いつもどおり憮然とした声の彼女でした。
『紅白見てる』
『ふうん。おもしろい?』
『おもしろいよ。お前見てないの?』
彼女は『興味ない』とだけ言いました。本当に興味がないのでしょう、そのまま電話口で黙り込んでしまいました。
彼は電話を耳に当てたまま、目と意識はテレビ画面を追っていました。

『ねぇ、なんか言ってよ』
『なんかって何だよ』
『なんかって言ったらなんかよ。そんなの自分で考えなさいよ』
彼と彼女の付き合いは長いく、いわゆる幼馴染という関係です。これでも幼いころは兄弟同然に育った仲でした。
『じゃ、『なんか』……これでいい?』
『ッ!!……死ね、馬鹿!』
ぶつりという音と共に唐突に切られます。
彼は完全に接続が切られていることを確認するとテーブルの上に携帯を投げ出し、意識をテレビに戻しました。

699彼のと彼女の……:2007/01/02(火) 00:33:51
数分後、また彼の携帯にコールがかかりました。彼が好んで使用している一昔前の海外のロックアーティストの着信音です。CD音源と大差のない歌メロディ全盛の今、電子音丸出しの単音がテーブルの上で鳴り響きました。
『寒い』
着信はやはり彼女からでした。やはり機嫌の悪そうな憮然とした声でした。
『暖房つけれ』
『暖房無い』
『嘘つけ。いつからお前んちはそんな貧乏になった』
『星が綺麗です。冬の大三角形も、さそり座アンタレスも輝いています』
『今日たしか月が大きいから星あんまり見えないだろ。っていうかお前外にいるの?』
『うん』
『馬鹿、何してんだよ。風邪引くぞ』
『馬鹿は風邪引きません』
『屁理屈言ってんじゃねーよ』
彼はそこでやっとコタツから這い出しました。
『今どこに居るんだよ』
『何処でしょうか。私にも分かりません。ただ一面銀世界です。凍死するかもしれません。死んだらあんたのせいだって遺書書くから覚悟しなさいよ』
『あ?まさか迷子になったんじゃないだろうな。外にいるってことはお前、おばさん達と○○神宮行ってるんじゃないのか?』
彼女の家では毎年家族そろって近所の神社に初詣に行くのが通例でした。彼ももちろんそれを知っていて、彼女は彼女の家族と一緒に居るものだと思ったのでした。
『うん。迷子になった。周り知ってる人誰もいない。お金も無い。ここ何処かもわかんない。どうしようか。どうしようもないね。このままここで白い雪像になって死ぬね。今までアリガトウ。あんたなんか大嫌いだったよ、五十二回と半分、豚に喰われて死ね、ファックオフ』
彼女はそれだけ言うとまたしても唐突にぶつりと電話を切ってしまいました。
彼は半分惚けたような顔で電話を耳に当てた姿勢のまま固まっていました。彼女は以前からなかなかにエキセントリックな性格でよく彼を困惑させるのです。
「うぜぇ……」
そういう彼の表情にはしっかりと苦渋の相が出ていました。
しかし、彼はなんだかんだと言いながらジャケットを羽織り、マフラーを巻き外に出かけていくのです。
彼の両親は共に仕事で留守でした。彼は誰もいない家に「行ってきます」と一声だけかけ外に飛び出しました。
700彼のと彼女の……:2007/01/02(火) 00:35:18
彼女の言うとおり、外は確かに一面の銀世界でした。彼が家の中に閉じこもってテレビに興じている間にいつの間にか降り積もっていたのでしょう。粉雪のようなきめの細かい雪がちらりちらりと降っていました。

彼は内心舌打ちしました。この天気では危なくてとても自転車は使えません。彼女のいる筈の○○神宮までは徒歩では三十分近くもかかってしまいます。
彼は夜の寒さに身震いしました。これは不味い。そう思いました。
彼は彼女のことを考えます。彼の知る彼女は確か寒さにはトンと弱いはずです。すぐ風邪を引いてしまうような子でした。
彼女は一度風邪を引くと長引くのです。長い付き合いで彼はそれを知っていました。
『走っていくしかない』
そう、彼が悲壮な決心して徐々にテンションを上げ、走り出そうとした時です。門柱の影に赤い鮮やかなものが見えました。
その影は、彼の方を伺っているようでした。本人は隠れようとしているのでしょうがその着物の柄が鮮やか過ぎてちっとも隠れていません。
「……うぉい」
赤い振袖を着たその影はビクリと体を震わせました。
「にゃ、にゃ〜ご……」

「なんだ、ネコか」
この近所には野良猫が比較的多いのです。彼も気が乗った時は残飯をあげるくらいです。正月ともなればネコも振袖ぐらいは着るのでしょう。彼は『事実は小説よりも奇であるなぁ』と考え通り過ぎました。

「って納得しないでよっ!!」
「うるさいっ。こんなとこで何してんだ、この馬鹿!」
「ま、迷子になってたのよ」
「人の家の真ん前で?」
「う、うん」
「そんな晴れ着着て?」
「な、何か文句ある?」
「神宮までここから2キロ以上あるのに?」
「不思議な裏道通ってきたのよ。それこそネコしか知らないような不思議な裏道」

701彼のと彼女の……:2007/01/02(火) 00:38:13
彼はため息をつきました。
「お前さ。前から思ってたけど」
「なによ」
「馬鹿だろ」
「あんたほどじゃないわ」
「お前には負ける」
彼は、はっきりとそう言いきりました。彼女はとても不満そうでやはり憮然とした表情でした。
「ほら、頭に雪積もってる」
彼は彼女の頭を軽くはたきました。彼女は冷たい雪が背中に入り込んだのか『冷たい』とむずがりました。

「あのさ。初詣行きたいならもっとまともに誘えって」
彼は彼女の寒さでいつもより白くなった頬を撫でながら言いました。彼女の頬は本当に冷たくなってしまっていて、彼は何かいたたまれない気分になりました。
「は?何で私があんたと一緒に初詣に行きたがらないと行けないのよ」
彼女はそういって頭一つ分高い彼の顔を睨み付けました。
「むしろあんたが私に頼んで来るべきです。『愛する貴女様と一緒に今年最初で最後の年越しデートをさせてくださいまし』って」
どう見ても彼女の目は本気です。彼は少しだけ頭が痛くなりました。

702彼のと彼女の……:2007/01/02(火) 00:39:01
彼女は赤い花と鳥の図柄の振袖を着ていました。赤地に白と金の刺繍が良く映えていました。小柄な彼女の白い肌にそれはよく似合っていました。
「これどう?」
「何が」
「これこれ」
「だからなにがさ」
彼女はこれみよがしにすそを持ってくるりとターンを決めたりしました。
「この格好に決ってるでしょうが、ほんっとに馬鹿ね」
「いいじゃねーの」
彼はできるだけそっけない風を装って歩き出しました。後ろから不満そうな彼女の声が聞こえます。
「ちょっとどこいくのよ」
「○○神宮。初詣行くんだろ?」
彼はほら、と彼女に手を差し伸べました。彼女は少し迷った末にその手を取りました。
「君、手冷やっこい」
「お前の方こそ冷えすぎだろ。風邪引くぞ、馬鹿」
こうすれば寒くないだろ。そういって彼は彼女とつないだ手を自分のジャケットのポケットの中に入れました。
急に距離が近くなった彼女は少し顔を赤らめたようでしたが、しばらくすると諦めたようで大人しく彼に寄り添って歩き出しました。
彼はそっぽを向いていました。
ふたりは粉雪のちらちらと舞い散る夜を歩きます。ふたりの吐く息が白く立ち上って行きます。ふたり分の雪を踏みしめる音が静寂の世界に穏やかに響いていきます。
703彼のと彼女の……:2007/01/02(火) 00:40:06
「ねぇ」
「なんだよ」
彼女が呟きました。
「あたしのこと好き?」
彼は応えません。
彼女は下を向いています。ただ閑々とした雪の降る音と二人の足音だけが聞こえます。
彼のポケットの中で握られた彼女の手からするりと力が抜けていくのが感じられました。
彼はその気配を察し、その手を逃がさないように、ぎゅっと握りました。彼女の体が少しだけ震えるのが分かりました。
「嫌いなわけ、ないだろ」
「……ひねくれ者」
「お互い様だ」
彼らの行く先ににぎやかな音と光りが見えてきました。○○神宮は沢山の灯篭とちょうちんに彩られてその場所自体が光りを放っているようでした。人の楽しそうな声が聞こえてきました。かがり火の熱気も感じられます。
「あ、除夜の鐘」
「お、ほんとだな」
ゆっくりと、穏やかに、この雪の世界に染みとおるような鐘の音が聞こえてきました。
鐘の音は静かに夜の街に響いていきます。この時ばかりは犬もネコも人間もすべての生き物に平等なのです。
「今年も一年。ありがとう」
彼女が言います。
「うん。来年も、一緒に居られたらいいな」
「……どうしてもって言うなら、しょうがないから一緒に居てあげてもいいわよ」
二人は楽しそうに笑いあいます。
雪と鐘の音は若い恋人達を見守ります。この空の下、すべての人の下に平等に雪と鐘の音は降り注ぐのです。

彼と彼女は、笑いながら、ふざけ合いながら歩いて行きます。
願わくば、彼らがいつまでも幸せに共に歩いていけることを雪と鐘の音はいつまでも祝福するのでした。
                                       Fin
704彼のと彼女の……:2007/01/02(火) 00:41:18
あけましておめでとう。オマイラ
私はこのスレが好きだ。ツンデレ小説が好きだ。それはたとえツンデレが時代遅れになっても、このスレが飽られて過疎っても、ツンデレのパターンに行き詰ってもはやツンデレとはいえない作品ばかり書いてしまうようになっても変わらない物だと信じている。
そして何より、このスレに集うツンデレ好きのみんながいとおしいと思うのだ。
そんなわけで、新年一発目の投下頂きます。今年こそはみんなにツンデレの(別にツンデレじゃなくてもいいが)彼女ができることを祈って。

705Mr.名無しさん:2007/01/02(火) 00:51:02
GJ!
706Mr.名無しさん:2007/01/02(火) 11:49:27
GOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOODJOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOB!!!!!
707Mr.名無しさん:2007/01/02(火) 16:22:55
新年からいい仕事だ

いいお年玉ありがとう
708Mr.名無しさん:2007/01/02(火) 16:47:19
これはいいじゃないカカカカカカカカカッ(*´Д`)ハァハァ
709Mr.名無しさん:2007/01/03(水) 00:11:54
なんという良作
盗作とかで油断するとこんな作品が投下されるんだからこのスレは困る

ハァハァ
710Mr.名無しさん:2007/01/04(木) 00:03:07
次はだれが書く?
711Mr.名無しさん:2007/01/04(木) 00:11:54
とりあえず>>694に期待
712謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/04(木) 00:44:13
「新年!!明けましておめでとうございま〜す!!」
TVの中で芸能人が、騒いでいる・・・
俺は、暗い部屋でコタツに入り一人TVを見ていた。
俺「・・・・・・・」
今年も結局彼女はできなかった。
去年の・・・俺の
俺「今年こそ!!彼女作るぜぇぇ!!」
と缶ビール片手に机に足を乗り出して叫んだあの言葉はいったいなんだったんだ?
しかも以前親の仕送りに頼って生活している。最低だ。だから彼女もできないんだ・・・
部屋も食料品を買う以外出なくなった。そう俺は世の中で言う引きこもりだ
だが俺も就職する気が無いわけではない。この前の会社の面接も
男「わが社のどこが気に入りましたか?」
俺「・・・・・・・・・・・」
俺(どうした!!言える!!俺なら言える!!)
俺「・・・・・・・・・・・・」
男「どうしました?早くしてください」
俺「・・・・・・特にないです。。」
男「はぁ・・そうですか。」
それもそうだ。まともにここ最近話してないんだ・・
日本語忘れてきてるんじゃないか?俺・・・
それにしても腹減ったなぁ
飯でも食うか・・・
ガサゴソ・・あれ?
・・・そうだこの前食ったので最後だっけ・・
はぁ・・・買いに行かなきゃじゃないか。
しょうがない。
713謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/04(木) 00:46:21
コートを着て、サイフを持ち。コンビニへ
さすがに、人もいないそれもそうだ新しい年を迎えてまだ数分だ。
だれも出たがらない。静かだ・・・・
その静かで冷たいアスファルトの道をゆっくり歩く。
息が白い。
なんせ1月、普通コレくらい寒い。
そんなことを思ってるうちにコンビニへ。
714謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/04(木) 00:47:23
ガチャ
店員「いらっしゃいませ〜」
俺は、早速カップラーメンのコーナーへ行った。
この前、コレは食ったしぃ・・あれはあんまり旨くねぇ
えぇとどうしようかな、、、
?「キャッ!」
ガサガサガサ
俺「んん?」
女「いててててぇ・・ん〜〜もう!!何なのよ!!」
後ろを見るとそこには女店員が、手をバタつかせて座り込んでいる
715謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/04(木) 00:48:46
周りには、カップラーメンが散乱している。
俺は、その落ちているカップラーメンを拾い集め始めた。
女「あぁ。すいません、結構ですよ。」
俺「いえいえ、手伝わさせてもらいます」
女「すいません。。」
ガサガサと言うカップラーメンを拾う音が、周りに聞こえる
女はかなり焦って拾っている。
箱ごとだからたぶん30は、あっただろう
その急いでカップラーメンを拾う女は、とてもきれいだった。
スラリと伸びた足、そのかよわそうな体、ついつい見とれてしまうほど可憐だった。
俺「コレで最後です。」
女「ありがとうございます。」
俺「いえ」
女「あのぉ。。」
俺「はい?」
女「よかったらお名前をお聞かせください。」
俺「はぁいいですけど、谷 隼人です。」
女「タニ ハヤトさん・・ですか。はい」
俺「はい、そうです、」
女「あぁすいません。もうしおくれました。立森 冬香です。」
俺「たちもりさんですか。」
女「珍しい名前でしょ」
俺「確かに、初めて聞きました。」
女「でしょ!毎回どの人も言うんですよ」
俺「そうなんですか」
・・・・・・・・・・
こんな感じでくだらない話をずっとした。
しかもメールアドレスまで手に入れた。
あまりの事の大きさに買いに行った。カップラーメン買い忘れてしまった。
716謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/04(木) 00:49:44
気に入れば続編書きますが。。。どうですか?
717Mr.名無しさん:2007/01/04(木) 00:57:19
イっちゃいなyo
楽になるぜ
718Mr.名無しさん:2007/01/04(木) 01:08:45
もしかしてだが今日はこれで終わりなんて事はないよね?
719Mr.名無しさん:2007/01/04(木) 01:26:33
YOU書いちゃいなYO
720Mr.名無しさん:2007/01/04(木) 06:15:22
イチイチ菊名
書きたきゃ書け
721謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/05(金) 01:28:44

家に帰り考えた。
この後、わざわざまたカップラーメンを買いに行くか。
やめて我慢するか。
そして、もらった電話番号にダイアルをかけるか。
・・・・・・・・・・
チッチッチッと時計の音が、聞こえる、うっとおしい
しかし俺の思考は、明らかにいつもよりおとろっていた
理由は、極度の空腹と
初めて女の人から電話番号を手に入れたことによる。
精神的乱れだ。
722謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/05(金) 01:35:49

俺は、決めた。
もう一度カップラーメンを買いに行く。
俺も人間だ。腹が空いたら飯を食べる。
なにしろ朝も昼も食ってないのだ。
耐えられない。
家を飛び出し走った。
腹が減りすぎて痛い。
そしてやっとのことでコンビニに着いた
ほんの200Mくらいの距離がコレほどまできついとは、
「いらっしゃいませ〜」
「あっ」
そこには、お客(俺)に挨拶をするレジの前に立っている立森さんがいた。
軽く会釈をする。
「どうしたんですか?買い忘れですか?」
「えぇ、、まぁ、、そんなとこです。」
カップラーメンを適当に3つくらい取りレジへ、


723謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/05(金) 01:44:05
ピッ
レジ特有の電子音がする。
「もしかして、私とお話していて買うの忘れたんですか?」
「・・・・・・・まぁ。一応」
ピッ
「それは、すいませんでした。」
「いえいえ、あなたが気にすることじゃないですよ。僕が馬鹿なだけです。」
ピッ
「いえいえ、そんな事ないですよ。話しているとき色々教えてくれたじゃないですか。」
「そうでもないですよ。ちょっと知ってるだけですよ。」
「お会計452円いただきます。」
ジャラジャラ
「えぇと・・・452円ちょうどお預かりします。レシート入ります?」
「いえ、いりません」
「そうですか。」
「あのぉ」
「はい、なんですか?」
「・・・・・・・・なんで僕なんかに電話番号を教えてくれたんですか?メアドも付きで」
「えぇとそれは。。。あなたと話しているとおもしろいから、また話したいなぁと思ったから」
「じゃぁ今度メールしますよ。あなたからもしてくださいよいつでも待ってます。」
「はい、わかりました。」

724謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/05(金) 01:47:57
ウィィィン
コンビニを出て少ししたところの公園に行く
だれもいない、寂しい公園だ。
昼は、たくさんの子供でにぎわうのに。
冷たいベンチに座り。
今まで貯めていた。緊張を一気に爆発させる
よく言えたな。俺・・・・・・
やればできんじゃん。
一人ベンチで自惚れてニヤニヤしている
おまわりさんがみたら、即職務質問であろう、
少しして、冷静になると空腹が襲ってきた。
急いで家に帰りカップラーメンをすすり
その日は、早めに寝た。
とても疲れたから・・・・・
725Mr.名無しさん:2007/01/05(金) 11:28:11
書籍化狙ってんの?
726Mr.名無しさん:2007/01/05(金) 12:58:15
謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg さん
GJです!!
今後も期待してますよ
727Mr.名無しさん:2007/01/05(金) 19:45:44
むしろみんな書籍化してほしいくらいのクオリティだぞ
728Mr.名無しさん:2007/01/05(金) 21:17:12
そろそろそれぞれの作品事にまとめたサイトが欲しいと思うのは俺だけだろうか
過去の名作がこのまま朽ちていくのが惜しい気がするんだが
729Mr.名無しさん:2007/01/05(金) 21:22:37
>>728
言いだしっぺの法則って知ってるか?



よろしくな。
730Mr.名無しさん:2007/01/05(金) 21:55:23
なんなら、俺がやってもいいけど。
731Mr.名無しさん:2007/01/05(金) 22:02:48
>>730やってくれ
732Mr.名無しさん:2007/01/05(金) 22:03:59
>>730
頼んだ
733Mr.名無しさん:2007/01/05(金) 22:09:09
おっけー。
一つ聞く。
未完の作品(今後も完成しそうにないもの)も掲載する?
734Mr.名無しさん:2007/01/05(金) 22:14:26
>>733俺は掲載したほうがいいと思う
735Mr.名無しさん:2007/01/05(金) 22:19:48
>>733
せっかく作るのなら全部やってほしいな
736Mr.名無しさん:2007/01/05(金) 22:22:47
解った。
まぁ俺とてそっちの方が都合がいい。

んじゃ、ちょっと頑張ってくるわ。
737Mr.名無しさん:2007/01/05(金) 22:35:14
期待sage
738Mr.名無しさん:2007/01/05(金) 23:05:03
何頑張ってるのよ・・・・・・
バカみたい!!


つ 旦
739ウンパルンパ:2007/01/05(金) 23:07:58
無料見放題エロサイト教えてください
740Mr.名無しさん:2007/01/05(金) 23:08:46
おっぱいツンツン
741謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/06(土) 00:08:00

次の朝、とてもさわやかな朝だった。
小鳥のさえずりが聞こえる。
その何年振りであろうこの清々しい感じを楽しみながら
カップラーメンの出来上がりを待つ。
あぁ俺にも春が・・・・
神様は、見捨ててなかった。
なんて事を思ってるうちに完成。
ラーメンを勢いよくすする。
そんな時だ、携帯が鳴る。
ラーメンを食べるのをいったんやめ
携帯をみる。

着信あり『Eメール一件』
またどうせ勧誘かなんかだろう。
そう思いながら、一応確認


742謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/06(土) 00:24:43

件名『いつでもって言ったんで』
・・・・・・・・・・
もしや?もしやこれは?
そのもしやを期待して開封。
〈今日は、バイトも休みなんで暇だから。
せっかくお友達になったんだから、なんか話しましょうよ〉
・・・・・・・・・・・・・・
いいですよ。。口が腐ろうと話してやりますよ。
件名 Re:いつでもって言ったんで
〈いいですよ。
本当にメールくれるなんてうれしいです。
本当にうれしいです。〉

件名:私こそ、
〈お話に乗っていただきとてもうれしいです。
ところで趣味は何ですか?〉

件名:Re:私こそ
〈趣味は、、、寝ることです。
どうしようも無いでしょう・・・〉

件名:そんなこと
〈そんなことないですよ。
わたしだってゴロゴロするの好きですよ〉

・・・・・・・・・・・・
こんな感じで本当にどうしようもない
世間話を永遠と続けた。
でもどうしようもないこの話が、いつもはつまらないと思うのに
今日は、たのしくてしょうがなかった。
743Mr.名無しさん:2007/01/06(土) 00:48:09
終わりかな?
744Mr.名無しさん:2007/01/06(土) 04:36:29
別に今までずっとやってたわけじゃないけど、
とりあえず初代スレは無事に抽出出来た。全部で13作品。

……てか、これ全部まとめるの割と時間かかりそうなんで、気長にお待ちください。

>>738
べ、別にあんたのために頑張ってるんじゃないんだからっ! あたしのためよ!
……な、何よ、そんな目で見たって駄目だなんだから……。

百合かよ。
745Mr.名無しさん:2007/01/06(土) 09:03:04
>>744
焦らず諦めずこつこつと頑張ってくれ。超期待してる

今連載中の作家さん達もすごく期待してます
746Mr.名無しさん:2007/01/06(土) 11:15:54
>>744

  _  ∩
( ゚∀゚)彡 期待!期待!
 ⊂彡
747Mr.名無しさん:2007/01/06(土) 12:04:44
>>744


  _  ∩
( ゚∀゚)彡 ガンバ!ガンバ!
 ⊂彡
748Mr.名無しさん:2007/01/06(土) 12:06:15
あげちまった
すまあああん!!
749Mr.名無しさん:2007/01/06(土) 14:24:58
過去に投下した者だけど作品ごとにまとめられるのは恥ずかしいからやめてほしい
まとめ作ってる人、メルアド晒してくれないか?
嫌な人はそこにメールするみたいなかんじで
750Mr.名無しさん:2007/01/06(土) 14:30:49
>>749
見事な毒男リティだが、知らんふりしとけばおまいが書いたなんて誰もわからんぞ?
751Mr.名無しさん:2007/01/06(土) 15:29:02
>>750
酔った勢いで書いた意味不明な文なんてログでも苦痛なのにまとめられると地獄だ('A`)
752Mr.名無しさん:2007/01/06(土) 15:35:23
あんたの作品だなんて、名乗ってもいなければ誰もわからんから大丈夫。

ただ、ツンデレだけが残る。それだけさ。
753Mr.名無しさん:2007/01/06(土) 15:37:27
あれだろ?
やめろとかいいつつ実は密かに嬉しいMなんだろ?
わかるわかる
こんなスレにいる奴って大体そういうツンデレ野郎ばかりだからな
754謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/07(日) 01:23:02
立森さんもかしこまった言葉ではなく、
普段使うような言葉にいつしかなっていた。
なんだか距離が少し縮まったよううな
感じがして嬉しかった。
その有頂天気分も吹き飛ぶメールが来た。

件名:あなたは、
〈仕事なにやってんの?〉

・・・・・・・・・・・
無職とは言えないし
去年までなら大学生っていえたのに・・
最大のピンチ・・・

件名:Reあなたは
〈今はなにもしてない、探してるけど良いとこなくて
どこか良いとこある?バイトでもいいよ〉

755謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/07(日) 01:33:19

件名:う〜ん
〈そんなに知らないなぁ、今大学生だし
バイトくらいしか。それなら今働いてるコンビニ
なんてどう?〉

!!!!!っこっこれは!!!
なんと、都合のいい事、お金ももらえるし
飯も買って帰れる
そして最大の利点は、立森さんに会えるではないか。

756謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/07(日) 01:34:45
件名:Reう〜ん
〈ぜひとも。働かせください。〉

件名:じゃぁ
〈今度、上の人に話してみます。結果はお伝えします。〉

件名:Reじゃぁ
〈ありがとうございます。〉

よぉぉぉし!!!
・・・・・・・・・あっ。
俺、客としゃべれる自信があまりない・・・
もし物の場所とか聞かれても答えられるか・・・
俺、最近ロクに人と話してねぇもんなぁ
まぁ気合だ。
そんなことを考えているとメールが来た。

件名:今日は、
〈もうそろそろ寝る。おやすみなさい。〉

件名:Re今日は
〈おやすみなさい。〉

時計を見ると時間は、12時30分を指していた
厳密に言うと、32分だが。
することもないし、俺も寝ることにした。
757Mr.名無しさん:2007/01/07(日) 10:28:51
189 :可愛い奥様 :2007/01/05(金) 19:22:08 ID:8OLfPTpQ
夫が好きだー!!
いつもありがとうございます!夫!
大好きだー!!
でも恥ずかしくて人には言えない。
ツンデレ?


190 :可愛い奥様 :2007/01/06(土) 00:42:40 ID:z+EYW/na
私も超ーーー好きなのにツンツンしちゃう。
しかもくやしいことに旦那にはバレてる。
「俺のこと大好きなくせにっヽ(・∀・)ノ」と言われ
地で「好きなんかじゃないからねっ」と言ってしまう自分はアホだ。
  
俺の大好きなツンデレラが現実にいるなんて…('A`)ヴェェァァ
758Mr.名無しさん:2007/01/07(日) 10:47:52
ごめん、激しく誤爆した。
759まとめの人:2007/01/07(日) 17:27:27
>>751
一応サイト完成したとき掲示板かメールフォーム設置するんで、
それじゃ駄目か?

ちなみに、1レスとか2レスだけの投下でよく意味が解らんやつは俺の独断で切ってる。
760751:2007/01/07(日) 19:10:13
>>759
そこそこ数あるし先に言っといたほうがまとめるのが楽だと思ったんだ
だから別にいつでもいいよ
761まとめの人:2007/01/07(日) 20:54:02
まぁ……確かにな。なら頼みます。

他にも掲載して欲しくない人はよろしく。
まだ初代しか終ってないんで。
762Mr.名無しさん:2007/01/07(日) 21:11:18
まなみが住人にパンチラうpをねだられる!
345 名前:困った時の名無しさん[sage] 投稿日:2007/01/06(土) 20:55:25
>>まなみ
本当にスタイルいいの?顔はいいからさ、スカート前にめくってパンツ見せてよ。

→言われるままパンチラ写メをあpろーだにうp
366 名前:まなみ[sage] 投稿日:2007/01/06(土) 21:34:16
ウソじゃないでしょ?信じてくれましたか?

→騙されたことに気がつく
459 名前:まなみ[] 投稿日:2007/01/07(日) 07:10:23
ウワーン・゜゜・(/□\*)・゜゜・消し方教えて〜!

パンチラうp会場↓
http://food7.2ch.net/test/read.cgi/recipe/1145963882/
763謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/08(月) 02:00:59

翌朝。
起きて携帯を見てみると

件名:いいって
〈店長が、バイト一人欲しかったから採用だって。
今日からでも来ていいって言ってたよ。ちなみに
時間は、夜の12時から。〉

あぁそうですか。。眠いんでもっかい寝ようかな。
。。。。。。
んん?採用。今日。
おおぉ!!
面接なし!!
すげぇ。。
夜かぁ・・
ならまだ寝てていいや・・・
と言ってもう一回寝た。
764謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/08(月) 02:05:17

うぅ、、あぁ。。うぐっ。。あ〜〜
ガバッ
今何時だ?
・・・・・4時かぁ
さすがにもう寝れん
ので早い夕飯を取ることにした。
このラーメンで最後か・・・
まぁ調度いい。。
3分後
ズルルルル
今日からバイトか・・・
立森さんと一緒だよな。。
んん?立森さんと一緒・・・
ボフッ!
俺は、ベタにラーメンを吹いた
そうだった!!寝癖もすごいし服も適当しかないし
あっ服は、従業服あるからまぁ良しとして
765謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/08(月) 02:11:07

さっさとラーメンを食べ。
寝癖と戦うことにした。
「くそっ!!立つな!!寝ろ!!」
なかなか寝癖は直らない。
どうしよう。
俺は、布団に倒れこんだ・・・
あぁやばい。めっちゃやばいどうしよう・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
俺は、寝癖を倒す方法を必死に考えた。
。。。。。
・・・・はっ!!
寝てしまった!!
今何時だ!!
11時。。
あと1時間・・・
うぁぁやばっ
・・・・・・・
そうだ!!風呂に入ろう!!
急いで風呂を沸かした。
たまるころには時間は、11時20分
俺は、急いで入った
そして、髪を洗いまくった。
3回も洗った。そして寝癖も直り。ドライヤーで乾かし
着替えて、11時40分。。
おおっ調度いい
俺は、サイフと携帯だけを持って家を出た。
早くついて置いたほうがいいだろうと思ったからだ。
なんせ新人だからな。

766謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/08(月) 02:34:39

寒い道を一人歩く。寂しい
自分の歩く音しかしない。
その音を聞きながら歩いていたときだった
「わっ!!」
「うおぉおぁ!!」
「はははははは」
「なんだ、立森さんか。おどかさないでくださいよ」
「いやぁなんとなくだ。」
「そうですか。」
「そうだ。それにしても今日来るとは思わなかったなぁ」
「それ、なんかいやですねぇ」
「まぁ気にすんな」
「しませんよ」
「なんでおまえ敬語使うの?」
「なんとなくです。」
「普通に話してよ」
「普通に?」
「そう普通になんか嫌だ」
「じゃぁ今からそうするよ」
「うんうんその調子だ」
なんて離している間にコンビニ到着

767謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/09(火) 00:12:56

「店長」
「立森、コレが例の?」
「はい、そうです。」
「はじめまして」
「えぇと、じゃぁコレ着て。立森さんと同じ作業してもらうから彼女に全部聞いて。じゃっ頼んだよ」
「だって、立森」
「仕事は、少ない商品を足していつもある状態にするだけわかった?」
「なんとなく」
「じゃぁキビキビ働いてもらおうか。新人君」
「はいはい、先輩さん」
っと言うわけでせっせと働くことにした。
ちなみに夜なので人はあまり来ない。
商品は減らないから、掃除などもすることになった。
結構仕事あるんだなぁコンビニも


768謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/09(火) 00:14:17
「立森、おまえこんなんずっとしてたのか?」
「そうだけど」
「めんどいでしょ」
「まぁね、でも時給いいし」
「たしかに、深夜だからなぁ」
「眠い。。」
「でも大学生だから、仕送りとかあるんじゃないの?稼がなくても」
「必要最低限しか送らないから。欲しいもの買えないからさぁ」
「そうなのか。」
「服とかほしいし、友達と遊びにいきたいし」
「ほうほう」
「まぁお小遣いがほしいんだな」
「そうかぁ」
「毎日3時間で大体2500円」
「お小遣いにしては高額だな」
「かなりいい」
「寝不足だろ」
「なれた」
「そりゃなれるよな」
「うん慣れる」
「そろそろ三時じゃないか?」
「あぁ帰れるよし!」
「店長」
「どうした?」
「時間」
「あぁ。。わかったよ、じゃぁ今日の分」
俺たちは、給料をいただいた。俺にしては初給料
「おさきします。」
「おさきです。」
「おやすみなさい」
俺は着替えてカップラーメンを買って外で立森を待った。
769謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/09(火) 00:25:11

「おぉ、まってたの?」
「うん、まぁね」
「じゃぁ帰るとしましょうか」
「あぁ」
「どうだった、初仕事」
「結構思ったより仕事あるな」
「私も最初思った」
「あぁ〜寒い」
「たしかに寒い」
「遅くまで働きすぎると勉強に支障が出るぞ」
「うるさいなぁ。大丈夫だって」
「まぁそういうなら大丈夫なんだろう」
「大丈夫です。」
「なんの大学?普通?」
「普通の、」
「そっか」
「仕事見つかった?」
「まだだ」
「早く見つけなよ」
「見つかってほしいねぇ」
「私、道こっちだから、」
「じゃぁね」
「あぁおやすみ」
俺と立森さんは、道を別れた。
770Mr.名無しさん:2007/01/09(火) 00:38:53
>>769続き楽しみにしてるよ
771Mr.名無しさん:2007/01/09(火) 20:42:13
さて、そろそろ駄文しか書けんが、妄想が膨らみすぎて溢れてる漏れが投下しようか。
772Mr.名無しさん:2007/01/09(火) 21:02:03
>>771超期待!!
773Mr.名無しさん:2007/01/09(火) 22:56:30
俺はもし、好みのタイプは?と聞かれたら、間違いなく即答でこう答える。
『清楚で奥ゆかしくて大人しい子。』
しかし、今の俺の彼女はと言うと
「おーそーいー!!」俺は待ち合わせ場所の時計塔を見た。
「えぇ?!まだ約束の十五分前やんか!」
「うっさい!アタシは約束の三十分前にはもう来とったの!遅刻!!」

超理不尽

「ちょ、ちょっとマテ!」
「っアホー!!」

ズドン!

脇腹にいい角度でローがめり込む。
短いスカートが一瞬捲れる。
「がふぁ…!」

空手有段者

(今日はピンク…!)
そのまま倒れ込む。
「もー!何で遅刻して怒られとるのに、幸せそうな顔して倒れ込むんよ!」
俺がニヤけた顔をしているのが気に入らないらしく、じだんだを踏んで怒っている。
「ご…ごめんなさい」蹲って辛うじて声を出せた俺の事を、上から見下ろしながら、彼女はにっこり笑った。
「今度遅れたら死なすから!」

俺の好みとは正反対。
彼女はすこぶる気が強い。
黙ってれば見た目はかわいいし俺の好みど真ん中なんだが、口も手も出るキツい性格。
そろそろ我慢の限界も近付いていた。
774Mr.名無しさん:2007/01/10(水) 01:10:05
2作同時進行。。
GJ
775謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/10(水) 01:19:35

俺は、タバコを吹かしながら。家まで帰った。
バサバサ ガサガサ
歩くごとにビニール袋のを音が聞こえる。
この音を聞くと物を買った感じがする。
ふと空を見ると、月が出ていた、
それを見ながら俺は、思った。
このままでいいのだろうか、
年下の大学生でさえ、こうしてきちんと働いている
なのに社会人である俺は、仕事もしないで親の仕送りに頼っている。
まったく情けないことだ。
就職活動、もう一回してみようかな。
いつまでもニートであるわけにはいかない。
何かしてみよう。仕事をとりあえず見つけよう。
そう堅く心に誓った。
その誓いは、約5分後に砕け散った。
家に着きTVを見ながら俺は思った。
面接弱いのに就職なんて難しすぎる。
はぁ、どうしよう俺。
776Mr.名無しさん:2007/01/10(水) 01:20:31
>>773
ちょっと、気の強い女なんて今時流行ると思ってんの?
せ、せいぜいどうなるか見届けてあげるんだから!
777謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/10(水) 01:31:52

気づけば、TVをつけっぱなしで寝ていた。
携帯を開いてみる。
『Eメール着信 1件あり』
迷わず俺は、メールを開いた。
件名:今日も
〈今日も昨日と同じ時間にバイトあるから、遅刻しないように〉
件名:Re:今日も
〈了解〉
ピッ 《Eメールを一件送信完了》
パタン
「はぁ・・・・」
俺は、悩んでいた。やはりニートはカッコ悪い
カッコ悪いの前に最低だ。
そうだ。俺は、最低のクズ野郎だ。
そんなクズ野郎が、彼女なんてできるはずが無い。。。
バタン、布団に仰向けに倒れこむ
どこか、いい就職先は無いものか。。
・・・・・・・・・
――――――コンビニ。
そうだ!!バイトに就職するのは!
でも募集してないだろう。
工場とかで働いてみるか。。
役に立つだろうか。
どうすればいい、
喫茶店とか。
人と話すからきつい
・・・・・・・・はぁ。。
俺は、パソコンの起動ボタンを押した。

778謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/10(水) 01:40:02

多分、今の俺の顔は死んでるって言うやつだろう。
夢も希望もクソもない奴の顔だ。
パソコンのアイコンには、昔やりこんだオンラインゲームがいくつかあったり
ワープロソフトや訳のわからんファイルが並んでいる。
俺は、その中から。インターネットのアイコンをダブルクリックした。
《新着メール52件あり》
ここ最近してなかったもんなぁ。
俺は、受信箱を見てみた。
キャンペーンのお知らせみたいのばかりだ。
俺はいらないメールを次々削除していった。
とてもむなしい作業だった。
なんとなく、つらい。
全て結局いらないメールで全て削除した。
お気に入りには、ゲームサイトの名前ばかりだ。
ため息しかでない。

779謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/10(水) 01:49:40
俺は、パソコンをシャットダウンした。
そしてすることもないしカップラーメンを食べるためのお湯を沸かすことにした。
やかんに水をいれ。火をかける。
座って呆けていると、
ポケットの中の携帯が鳴り出した。
《Eメール着信1件あり》
件名:暇?
〈今。暇?〉
件名:Re暇?
〈あぁ暇だ。〉
送信した後、返信が来るまでの時間は、やはりとてもじれったい
件名:ご飯
〈食べた?〉
件名:Reご飯
〈まだだ〉
件名:なら
〈一緒に食べない?〉
俺は、困惑した。俺と飯を食べるって言うのか?
件名;Reなら
〈どこで?〉
件名:それなら
〈家来る?〉
件名:Reそれなら
〈いいのか?〉
件名:別に
〈かまわない、バイト先のコンビニに来て〉
件名:Re別に
〈あぁわかった〉
・・・・・・・・・・・・・
飯を女の人の家で食べることになった。夢にも思わなかった事態だ。
780Mr.名無しさん:2007/01/10(水) 15:00:53
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 続き!続き!
 ⊂彡


はやくぅ〜!!
781Mr.名無しさん:2007/01/10(水) 18:32:31
ツン不足中
誰か俺にツンを……
782Mr.名無しさん:2007/01/10(水) 18:46:22
>>781
氏ね
783謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/10(水) 22:51:12

俺に悩んでる時間は、無かった。
今すぐ家を出なければいけないからだ。
サイフをポケットに突っ込んで家をでた。
家を出て道を歩いていると。
最近感じてなかった緊張を味わった。
どうなるのか。。。。。
不安だけがつのる
きっと顔は、青ざめているだろう

784謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/11(木) 22:47:51

なんて考えているうちに
コンビニに着いた。
案外こっちのほうが早かったみたいだ。
たばこに火をつける。
とにかく寒い。
冬だからどうしようもない
電柱に寄りかかりタバコを吸う
白い煙が空中を漂う
そんな感じでタバコを吸っていると
「タバコ。臭い。」
やっと立森は来た。
ダッフルコートを着ている。
実に暖かそうだ。
「あぁゴメン」
「じゃぁついてきて」
「わかった」
ひょこひょこ歩く彼女の後ろをついていく。
周りから見たら俺は、どう見えるだろうか・・・
恋人、友達、兄弟、ストーカー、
他人、もしくは、その他、
ストーカーは、たぶんないだろう
たぶん、他人か友達に見えるだろう。
つまらないことを考えながら。
ただ彼女の後ろをついていく
そうしているうちに、一つのマンションの中に入った。
俺のボロアパートとは、大違いだ。
エレベーターに乗り
6階に向かった。
785Mr.名無しさん:2007/01/12(金) 00:55:03
ほしゅ
786Mr.名無しさん:2007/01/12(金) 01:25:28

エレベーターの中で立森と二人きりだ。
俺も男だ女の人と二人きりと言うシュチエーションには
正直心躍らせる。まさに世の男が望むシュチエーションな訳だ。
エレベーターは、次々上の階へ向かう。
2。3。4。5
そして6階についた。
カツコツ
どうしてマンションの廊下は、足音が大きくなってしまうのか。
なぜかそ〜っと歩いたような感じがする。
604号室
ここが、彼女の家だ。
ガチャ
「おじゃまします。」
「どうぞ〜」
部屋の中は、意外とシンプルだった。
もっと女の子らしいものがあふれているのかと思った。
白色系の家具が多い。実におしゃれな感じに仕上がっている。
落ち着いた感じが出ている。
「そこに座ってて」
俺は、腰を下ろした。
なぜか正座をしてしまう。
どうして男というものは、緊張すると正座をするのだろう、
787謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/12(金) 01:53:56
上トリップつけ忘れ、上げ。すみ。。

「おまたせ〜」
コトッ
そこには、立森作、チャーハンが置かれた。
「はい、ありがとうございます。」
「じゃぁ食べよっか」
「そうしましょう。」
「いただきます。」
「いただきます。。」
立森の手料理を口に運ぶ。
あぁ人の手料理なんていつから食べてなかっただろう。
788名前の無い物語:2007/01/12(金) 09:52:25
――ここはイタリア・ヴェネト州、水の都ヴェネスィア (ヴェネツィア)。
 カナル・グランデから分かれた、小さな運河沿いの小さなアパートメントで私、フランチェスカとベル……、ベルナルディーナは二人で暮らしています。

ヴェネチアを舞台にした、フランチェスカという少女の日常を書いた物語り。
文章とか未熟だと思うけどうpしてみてもいいかな?


789Mr.名無しさん:2007/01/12(金) 11:20:36
790名前の無い物語:2007/01/12(金) 11:41:04
♯01

お日様が沈み、お月様が昇る頃、私は目を覚ます。
体たらくな人間と思われるかもしれないけど、私は生まれながらにメラニン色素っていうものが普通の人より少ないみたいで、体がお日様の光にとても弱い。だから私という人間は夜の世界で生きる方が都合が良いと思う。

目を覚ますと一週間のうち六日はほとんど独りぼっち。
今日も独りぼっちの日で、ベルはお仕事。サン・マルコのバーにピアノの演奏に行っている。
私もお仕事をしたいのだけれど、ベルは『まだ早いわ』『フランチェスカのお仕事はお留守番!』ってまるで子ども扱い。
失礼しちゃうわ。私だってもう十二歳、立派な大人なんだから。
791名前の無い物語:2007/01/12(金) 11:41:43
「……つまんない」

 ボフッ

 お目覚め一番、悪態をつき私は抱き締めていた枕を布団に叩き付けた。
「むぅぅぅ……」
 少しの間壁と睨めっこしていたけど余計つまらなくなったので、取り敢えず着替えて髪を梳かす事にした。

 着替えを済ませて髪を整えると、私はリビングのソファーに座って“La Repubblica”という新聞を広げた。
大人なんだから新聞くらい読まないとね。

 ぐぅぅぅ〜

 ……でも今の私には俗世間の情報より、ご飯の方がもっと重要だと思う。
 うん、そうに違いないわ。
私は続き部屋になっているキッチンへと向かった。

 ガシャン!

 トースターからこんがりと良い色に焼けた食パンが吐き出される。キッチンにパンの香ばしい良い匂いが漂う。こうなるとそろそろ“彼”がやって来る。
 焼きたてのパンをお皿に載せ、お気に入りのジャムを塗る。冷蔵庫からパックのミルクを取り出して、グラスとお皿を一つずつ用意する。
 お決まりの席について後は彼が来るのを待つだけ……
792名前の無い物語:2007/01/12(金) 11:43:20
コツ、コツ

 席に着いて間も無くキッチンの窓が軽快に叩かれる。
 彼がやって来たのだ。

 コツ、コツ、コツ

「は〜い、待ってて。今開けるわ」

 ガチャ、カラカラカラ

 スタッ!

 窓を開けた途端、キッチンへ飛び込んできた一つの黒い影。

「ボナセーラ、アルフレード」
「ニャー」
 彼の名前はアルフレード。近所に住む野良猫で私がご飯を作ると決まってこうしてやって来る横着な黒猫さん。
 アルフレードはベルが付けた名前で、イタリアのピアニストから取って付けたらしい。私はもっと可愛い名前が良いと思ったんだけど、彼自身もその名前を気に入っているみたいだからそれはそれで良いのかもしれない。
「プレーゴ、アルフレード」
 私はアルフレードをテーブルの方へ促して、お皿にミルクを注いで床に置いてあげた。
「どうぞ、召し上がれ」
「ニャー」
 アルフレードは一鳴きするとピチャピチャと音を立てながらお皿のミルクを舐め始めた。
 
ぐぅぅぅ〜

……さてと、私もご飯にしましょう。

 NEXT→♯02
793Mr.名無しさん:2007/01/12(金) 12:24:38
期待
794Mr.名無しさん:2007/01/12(金) 19:42:19
俺のツンスカウターが高い数値を示した!

期待してます
795ふぇろ:2007/01/12(金) 19:57:29
間違っても自慢じゃないが、俺はすこぶる貧乏だ。
そのせいで、今俺は不本意ながらある女のパシりをしている。
「優児!たかがお昼ご飯の買い物でいつまでかかってんの!?ほんとに使えないわね!」
「…すんませんした。」
「何?何か不服でもあるわけ?」
「…別にないっす。」
「そうよねぇ?私に不満なんかあるわけないわよね。」
そう言って、ふふんと勝ち誇ったような仕草で俺の買って来た昼飯を確認する。
「ちょっと優児!何?この安っぽい餌!ちゃんとした食べ物を用意しなさいよ!」
中身を見るやいなや、普通のコンビニ弁当が気に食わなかったらしく、声を荒げて俺に詰め寄る。
「もういいわ!肩揉みしなさい!」
「はい…」
「ちゃんとうまく揉みなさいよ。ちょっとでも痛くしたら許さないから!」

なぜ、こんな事になってしまったかというと
796Mr.名無しさん:2007/01/12(金) 23:32:24
・・なったかっていうと?
その続きは〜?
797Mr.名無しさん:2007/01/12(金) 23:53:22
閉鎖される前に何か考えるか
798Mr.名無しさん:2007/01/13(土) 00:06:31
閉鎖祭りがあちこちで
799Mr.名無しさん:2007/01/13(土) 00:26:43
本当に閉鎖されるのかな…
俺、このスレ無くなったら正直寂しいよぉ
800Mr.名無しさん:2007/01/13(土) 00:48:44
閉鎖か。。。
俺たちどこいけばいいんだよ
801ふぇろ:2007/01/13(土) 00:49:52
最初に言った通り、俺は貧乏だ。
パシりをしないといけなくなったのは、この貧乏が故の悲しい運命だったのだろう。
事の顛末はと言うと

二か月前、学校が長引いてバイトに遅れそうだった俺は、自転車でバイト先へと猛ダッシュしていた。
まぁいつもギチギチにバイトを詰めていたので、それも日常茶飯事だったんだが、とにかく急いでいたのだ。
いつもの近道を通って、突き当たりの角を曲がればバイト先に着く、その瞬間事件は起こった。

『きゃあ!』
『うわっ!』

ガッシャーン!

角を曲がった先に、奴はいた。
有栖川 七佳
おもいっきし自転車で轢いてしまった。
そしてその先には

胴がながーい真っ黒な車。

俺が乗っていたであろう自転車が、いい角度で車のボディをへこましながらもたれかかっていた。

その時、血の気が引いて行くのが分かった。
802Mr.名無しさん:2007/01/13(土) 00:51:57
GJ!!
閉鎖の前にかけるだけ書いて下さい。

803謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/13(土) 01:01:06

彼女は、以外と料理がうまかった。
めっちゃ以外だ。
思わずがっついて食べる。
「そんなおなか減ってたの?」
「いやっうまいから。」
「まずいわけないだろ。私が作ったんだから」
「そうなのか。」
「まずくてもまずいとは言わせない。」
「そうなのか、」
「それより、食べたよね。ご飯」
「おいしく頂いてるぞ」
彼女はあやしくニヤリとした、
「ふっふっふっふ」
「どうした!急に薬でも混ぜてあんのか?」
「そんなんより簡単な仕掛けだよ」
「なんだそのからくりは。」
彼女は、さらに怪しくニヤリとした。
804謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/13(土) 01:07:30

「私、ご飯作ってるとき多く出来ちゃったんだよね」
「それで?」
「あんた、女の人が男の人にご飯誘うには理由があるんだよねぇ」
「それは、」
「私は、いいことを思いつきました。」
「単刀直入に」
「あんたを餌付けする。」
「餌付け?・・・・ちょっ!!」
「もうおそいよ。食べたもんねぇ」
「ひっひきょうだぞ!!」
「なぁに簡単だよ。買い物と多少の家事をすれば、エサがもらえるんだぞ、」
「・・・・・・・・本性か?」
「なんとなく思いついたことを実行したいだけ。」
「なんとなくで俺は、飼い慣らされるのか?」
「そうなるね。」
あぁ俺なんで食った。。
胸を弾ませてきた俺は、まるでしっぽを振っている犬じゃん
あぁ最悪だ。
805謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/13(土) 01:13:32

「まぁまずは何してもらおうか?」
「なにもさせないでください。」
「買い物だな。」
「買い物・・・」
「とりあえず初日だし。一緒についてってやる、感謝するんだぞ」
なぜ感謝せねばならん!!
しかも俺下手に出てるし。。。
「はいはい。感謝感謝」
と言うわけで。近くのスーパーへ、
あぁ人多い。
きつい。早く帰りたい。
「カゴ持って」
「はいはい。」
「返事は一回。」
「はい。」
俺は小学生か!!
人も多いし。精神的に参る
家帰る前に俺、蒸発するぞ。
「これと、これ。」
バサッ バサッ
次々と様々なものがカゴに納められていく。

806謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/13(土) 01:23:00

「まぁ今日は、これくらいで勘弁してやる。」
いつもはこれくらいで勘弁しないのか?
カゴ二つ目だぞ。
「さぁ思うぞんぶんレジに行け。」
「・・・・・・・まさかおごり?」
「さぁてどうしようかなぁ」
「せめて割り勘で。」
「その言葉!まってました。じゃぁ半分はお願いね。」
はっはめられた!!
くそっどんどん彼女のペースに。。
どうにか起死回生のよちは、ないのか!!
ピッピッ
「合計5642円です。」
微妙な数出しやがって
割り勘だからめんどいじゃないか!!
と心で思いつつ払う。
「ありがとうございました。」
スーパーを出ると外でのんきにジュースを飲んでいる立森がいた。
「家帰ったら。半分返せよ」
「わかってるよ。もう小さい男だなぁ普通は、僕がおごるよ と快く言うのではないかね。君」
「言わない」
「ノリわるいなぁ」
「ノリの問題かっ!」
「もううっさいなぁ」
そりゃノリでおごる人はいるだろうが。
俺は、あいにく金がない。
生活ギリギリだ。
それでおごったりしたら。飯を抜かねばならん・・・
それはいやだ、
ってかあいつ段々気が強くなっていくなぁ
どこまでいくんだ?
807名前の無い物語:2007/01/13(土) 06:24:43
♯02‐1 ある雨の日

お日様が沈み、お月様が昇る頃、私は目を覚ます。
 ……のだけれど、今日は少しだけ早く起きてしまった。

「……真っ暗……?」

 分厚いカーテンと雨戸を開けて表を見る。
 窓の向こうは曇天。この時間だと沈みかけのお日様は雲の暗幕の向こう側。
 今にも空が泣き出しそうな、そんなお天気。
何故かこんな日は早く目が覚めてしまう。
 ……乙女の感かしら? なんてね。
808名前の無い物語:2007/01/13(土) 06:25:29
いつも通り着替えを済ませて、いつも通りアルフレードと一緒にご飯を食べる。
 食後の片付けを済ませてリビングで読書をしていると、ポツポツと水の粒が窓にあたる音がした。
「降り出しちゃったね。今日はお泊りかしら、シニョーレ?」
「ニャー」
 ここぞと言わんばかりに私に寄って来て頬をすり付けてくるアルフレード。
 こういう所も本当に賢い猫だと思う。
「ふふっ、困った紳士だわ」

 ポツポツ、ポツポツ、ポツポツ……

 降り始めて数時間。雨脚は強くなるばかり。
そこでふと思う……
「ベルはちゃんと傘、持って行ったのかしら?」
 ベルはピアノの事になるとしっかり者なのに、プライベートはどこか抜けた部分がある。
 どうしても気になったので玄関にある傘立てを見に行くことにした。
809名前の無い物語:2007/01/13(土) 06:26:05
少し早足で玄関まで行くと、そこに置いてある傘立てにはシックなマッローネの傘と、可愛らしいローザの傘が一つずつ立てられていた。
 言わなくても分かると思うけど、マッローネの傘が私のでローザの傘がベルのもの。
まったく、ベルったら子供なんだから……
……って、そんなことはどーでもいいの!!
「た、大変……!!」
 ここヴェネスィア本島は車での移動は禁止されている。だからタッシーはもちろんバスも走っていない。
 雨のヴェネスィアで傘は必需品なのである。

 玄関のドアを開いて外を見る。

 サーサーサー……

雨は更に強さを増していて、悪い事に気温も肌寒い。
「ベルが風邪ひいちゃう!」
 すぐにでもベルの仕事場に傘を届けようと思ったけど、少し考える……
 この雨の中、私が傘を届けて優しいベルは喜ぶかしら?
810名前の無い物語:2007/01/13(土) 06:27:06
 パターン1

『ベル! 傘忘れちゃダメじゃない。まったくそそっかしいんだから!』
『ごめーん、フランチェスカ! ありがとう。助かったわぁ〜』
『まったく、ベルは私がいないとダメな子なんだから』
『うん。私、フランチェスカがいないとダメなの……』
『ふふっ。仕方の無い子ね、ベル』
 そう言うとベルナルディーナの髪を梳くように撫で、優しく抱き締めるフランチェスカ……

「……有り得ないわ」
 大きく頭を横に振る私。
811名前の無い物語:2007/01/13(土) 06:30:12
 パターン2

『ベル! 傘忘れ』
『フランチェスカッ!!そんなにずぶ濡れでどうしたの!!?』
『え? あの、傘……』
『身体までこんなに冷たくしちゃって……』
『うん、でも大丈』
『マスター! 私、この子を送っていくんで早退します!』
『は、そんな……』
『帰るわよ? フランチェスカ?』
『オ カピート……』
 雨のサン・マルコをベルナルディーナに抱えられ帰路に着くフランチェスカ……

「……有り得るわね」
 うんうんと頷く私。
……って、それはダメよ。ベルに迷惑掛けちゃうじゃない!

812名前の無い物語:2007/01/13(土) 06:31:02
パターン3
『ボナセーラ、シニョーレ』
『グラツィエ、ベッラ シニョリーナ』
『この傘をここでピアノを弾いているベルナルディーナという女性に渡しておいてくださるかしら?』
『畏まりました』
『それでは……』
『お待ちください。失礼ですがお名前を頂けませんか? シニョリーナ』
『はい、貴女の“ディレット(最愛の人)”とお伝えくださいますか?』
『オ! カピート』
『ボナノッテ、シニョーレ』
『グラツィエ、シニョリーナ』

「……これだわ」
 そう、これよ! この手でいくしかないわ!
 これならベルにも迷惑が掛からないし、ちょっとストーカーチックかもしれないけど格好もつくわ。
 そうと決まれば急がなくちゃ!

813名前の無い物語:2007/01/13(土) 06:31:35
私は自室のアルマーディオからカッポットを取り出すと、それを着てリビングに向かう。
「アルフレード、お散歩へ行きましょう!」
「?」
 アルフレードは私の言葉にピクリと尻尾を反応させこちらを一瞥したが、すぐにそっぽを向いてしまった。
「家主が家を留守にするのに、お客が居座るのはおかしいんじゃないかしら?」
「くわぁ〜」
 今度は欠伸を一つだけ。
「……アルフレード?」
「………………」
 反応無し。どうやら彼は無視を決め込むらしい。
 私、バカにされてる……?
 雨の中出歩くのが嫌なのは分かるけど、この猫の態度に私は遂に頭にきた。

814名前の無い物語:2007/01/13(土) 06:32:48
ガバッ!!

「!!?」
私はそっぽを向いてるアルフレードを無理矢理目の前まで抱き上げた。
「これから雨降る夜の街に可憐な美女が駆り出そうとしているの! 紳士なら大人しく付き添いなさい! カピーシ? アルフレード!」
「フニャーッ!!」
「暗いのが怖いんじゃないもん!!!!」
「ニャッ!!?」
「一緒に来てくれるわね? アニモーゾ シニョーレ」
「ニャ……」
「ありがとう。良い子ね、アルフレード」
「………………」
こうして私とアルフレードはベルの働くサン・マルコのバーを目指して出掛けるのでした。

 NEXT→♯02‐2

815名前の無い物語を書いた人:2007/01/13(土) 06:38:59
イタリア語は学校で少し習った程度の域だから間違っていたらゴメン。
816Mr.名無しさん:2007/01/13(土) 12:49:57
NHK教育で見た程度だが、ボンジョルノとかはまだしも、
知らない人にはオ カピートとかは何言ってるかわからんと思うよ
817Mr.名無しさん:2007/01/13(土) 13:50:26
パターン3を見て思ったんだが、これは百合?

ときに、現在436KB
1000まで持たない予感
818Mr.名無しさん:2007/01/13(土) 17:19:14
登場人物の紹介を書いてくれ
819ふぇろ:2007/01/13(土) 18:57:08
痛恨のミスだった。

よりによって外車のロールスロイス。
車の事はよくわからないが、確実に俺程度が弁償できるような代物ではない。

あと、向えに寝転がっている女の子。
幸い怪我はなかったようだが、成りから見て確実にこの車と関係ありそうな金持ちの雰囲気がプンプンしていた。

自転車で人を轢くと、有り得ない大金を取られると聞いた事がある。
もちろんこの俺が、保険なんぞに入っている訳はある筈がない。



「ハハハハハハ!」

とりあえず笑ってみた。

「ちょっ、ちょっと!何人を轢いといて笑いだしてるのよ!」

俺は女の子の甲高い声で我に帰った。

「っは!…君、大丈夫かい?」
「とって付けたみたいに言わないで!ぼーっとしてる暇があるなら介抱しなさいよ!ほら!早く!」

「は、はい!」

俺はなぜか彼女の言いなりになっていた。
後ろめたさやあわよくば弁償せずにすむかもとか、そんな気持ちとは関係なく、彼女の物言いは断われない力強さがあった。
820まとめの人:2007/01/14(日) 13:56:49
まだ初代スレしかまとめれてないけど、一応貼っておく。

ttp://www.geocities.jp/dousedokuodasi/

ミスあったら報告よろ。
821Mr.名無しさん:2007/01/14(日) 14:58:19
>>820
激しく乙
822Mr.名無しさん:2007/01/14(日) 15:58:57
もう乙としか言いようがない
823Mr.名無しさん:2007/01/14(日) 20:02:50
GJ!!
まとめ乙です!!
824Mr.名無しさん:2007/01/14(日) 22:17:22
乙なんだぜ
それとageてもいい?
825Mr.名無しさん:2007/01/14(日) 22:35:56
826『T&E』第七話:2007/01/15(月) 01:10:27
>>453



「あー、もう! カット、カットォ!!」
有紀さんの声が響く。またか、と嘆息する。本日、すでに七度目。素人映画の台詞くらいちゃんと覚えてほしい

……本当に、馬鹿だなぁ


『T&E』
第七話『黄色い日々』

「すっかり秋だわねぇ……」
有紀さんが空を仰ぎ見ながらそんな事を言った。
私達の映画『Cocoon(仮)』がクランクインして早、二ヶ月が経とうとしていた。
世間は、心そぞろな熱気を残した晩夏から紅葉が彩る、落ち着いた秋へと移り変わっていった。もちろん私達の住む町も同様に、瑞々しい緑から少し物憂げな黄色や赤色に染まっている。枯れ葉がはらはらと舞い落ち風がそれを運んでいった。
映画を撮るということ。何かを作るということ。言うは簡単やるは難し、なのだそうだ。
あの日、私と先輩のOKが出た後、有紀さんと圭さんの二人は大急ぎで散り散りになっていた他の映研部員に連絡を取った。
部員は全然居ないのだと有紀さんは言っていたのに私達の元に集まった人数は八人にも及んだ。私は四人だけで撮るものだとばかり思っていたから驚いたものだ。
彼らはさまざまな事情があって離れてはいたけれど、やはりみんな映画が大好きだという人たちだった。
『面白そう』ただそれだけの理由で多くの人が集まる。みんな、どこか変わり者だったが気のいい人達ばかりだった。
827『T&E』第七話:2007/01/15(月) 01:11:01
私達は毎日放課後と学校の休みの日に撮影をする。
圭さん脚本演出、有紀さん監督の『Cocoon(仮)』は生まれた時からの幼馴染というどこにでもあるような設定の男女を描いた観念的なラブストーリーだ。
私の役は活発で好奇心旺盛で自己中ではねっかえりの女の子『アゲハ』
普段の私とはまるで正反対の『アゲハ』を演じることに少しだけ抵抗はあったけれど、撮影を続けるにつれていつしか慣れてしまった。人は誰でも表層の自分と真逆の自分を隠し持っている、昔そんなことを本で読んだ記憶があった。
そしてその相手役、悩める大人しい青年『ケシ』
いつでも『アゲハ』の一歩後ろを歩き、見守り、しかし実際は何もできない気弱な青年。
彼が真の主役である。彼の物語と言っていい。『アゲハ』は実は道具なのだと圭さんは言った。彼の苦悩、悲しみ、決意それらのものが主題なのだ。
そんな大役を演じるのは誰あろう、この毎日毎日無駄なテイクを重ねさせ、フィルム代を無駄に消費させる元凶、いつもの大場かつみ先輩であるのだ。

「まったく……。かっちゃんアンタねぇ……真面目にやる気あんの? アンタが手間かけさせるから紅葉だってすっかり色づいちゃったじゃない! 葉っぱまで赤くなるほど怒らせるなんてアンタの馬鹿さもいい加減もオリンピック級だわね!!」
「しょうがないだろ! 大体『ケシ』の台詞だけなんでこんなに長いんだよ! ワンシーンの台詞で五分強あるのとか完全にイジメだってーの! もっと短くまとめろよこの無能監督!」
「自分の記憶力が無いのを棚に上げて人を無能扱い!? 大体アンタは演技だって大根なのよ! 灯ちゃんを見習いなさいよこの馬鹿っ!!」

先輩と有紀さんの言い合いは撮影時の風物詩みたいなものになっている。他のスタッフの人達は面白そうにニヤニヤ笑っている。有紀さんの彼氏さんである圭さんに至っては興味も無いとばかりに何か作業をしていた。
見習って私も知らん振りをすることにする。二人の言い合いに何となくムカムカする時もあるけれどいつも通りの無表情、無干渉を貫くのだ。
828『T&E』第七話:2007/01/15(月) 01:14:03
『Cocoon(仮)』のあらすじは先に挙げたとおり『アゲハ』と『ケシ』のラブストーリーだ。ただ、普通のお話と違うのは『アゲハ』は『ケシ』の回想の中と眠っている姿でしか登場しないという点。
『アゲハ』は『ケシ』の静止を振り切って、見たいものを見る為、遠い世界に飛び出して行ってしまった。(ちなみに最初有紀さんが話してくれた戦場カメラマンの設定はボツになった)
『アゲハ』は遠く異国の地から『ケシ』に向けて何通もの手紙を書く。
今日私はこんなに不思議な体験をしたよ。こんな面白い人達と知り合ったよ。こんなひどい現実を見たよ。でもこんなに美しい景色を見たよ。ケシも来ればいいのに。キット楽しいよ。ケシと一緒に旅が出来れば良いのに。
そんな手紙と共に現れる、まだ一緒に居られた頃の『アゲハ』の姿。
世界には『サナギ病』と呼ばれる原因不明の奇病が蔓延していて、世界中の人々は何時訪れるとも知れない死の影に怯えて暮らしている。
そんな世界だからこそ、愛する『ケシ』を置いてまで世界を旅する事を選んだ。そんな世界だからこそ、愛する『アゲハ』の旅に付いていく事も、彼女を止めることも出来なかった。
どこまでも対照的な二人だ。
829『T&E』第七話:2007/01/15(月) 01:15:03
その内、『ケシ』は『アゲハ』が旅先で件の『サナギ病』を発症したとの報せを受ける。
物語の中の『サナギ病』は全身が硬く醜くサナギみたいに硬くなって死んでしまう病気だという。正直これもどこかで聞いたような設定だと思うけれど。
生まれ故郷の町に帰ってきた病身の『アゲハ』は明らかに『サナギ病』とは違う症状を示していた。
『サナギ病』は皮膚が石のようにかさかさに乾いて硬くなっていくのだけれど、『アゲハ』の体は柔らかいままだった。ただ、初期『サナギ病』に必ずある発熱、嘔吐、意識の混濁、だけが見られた。
発症して三週間ほどで死んでしまう『サナギ病』の筈の『アゲハ』はそのままこんこんと眠り続けた。ただ、意識だけが戻らなかった。
『アゲハ』はこの新種の『サナギ病』解明の為にある研究施設に移される。そこは研究所というより古びたお屋敷で、天才と呼ばれたドクターが一人で研究していた。『ケシ』とドクターはそこで『アゲハ』を治すために色々な努力をする。
だけれど『アゲハ』は目覚めない。『ケシ』はそんな彼女に毎日のように自分の想いを、気持ちを、考えた事を話して聞かせ続けた。
……そういうお話だった。
830『T&E』第七話:2007/01/15(月) 01:15:37

「これ。結末……どうなるんですか?」
未だ喧嘩だかじゃれあいだかを続ける二人を尻目に、撮影機材か何かをいじっていた圭さんに話しかけた。前々から気になってはいたのだ。私達にはそこまでの台本しか渡されていない。その先は脚本家である圭さんしか知らない。
圭さんは私が真後ろに立って声をかけるまで私に気がつかなかった。
振り向いた圭さんは「灯ちゃん、どうかしたの?」そう言って柔らかい表情で笑った。
「結末」
「……いつも通り、一通り言い合って終了じゃないかな? ほっとくと良いよ」
「じゃなくって、お話の結末です」
圭さんは少し黙って考え込んでいた。
「灯ちゃん。『ケシ』と『アゲハ』の先が気になるんだ」
「当たり前です。結末が見えてないお話演じるなんて聞いたこと無いです。なんか気持ち悪いです」
圭さんはまぶしそうに目を細めて言った。
「それだけ感情移入してるって事だから今は知らないで良いよ。どうせ僕達は素人なんだから技術なんか求められてないしね」
演じながら頭の中人物像で一杯にして、魂で演じてね。それだけ言って機材の方に向き直ってしまった。

「ほら、馬鹿のせいでまた遅れちゃったわ。もういいから撮影再会するよー!」
現場に有紀さんの号令が響いた。
本日、日曜日。撮影現場は隣町の某大学のキャンパス。流石に休日ともなると人通りは少ない。黄色一色に染まった街路樹と昭和初期から建っているという旧学舎が幻想的でノスタルジックな雰囲気をかもし出している――――

831『T&E』第七話:2007/01/15(月) 01:16:35
シーン『12』テイク『9』『二通目の手紙の回想〜イチョウの並木道』
『アゲハ』のシーン

『ねぇ、ケシ。植物は何で色付くか知ってる?』
道を先に歩いて行くアゲハ、振り返って笑う
『そんなの、判らないけど……寒くなったら枯れるから?』
アゲハ、ケシの答えに少しだけ困ったように
『じゃあ、人間はなぜ着飾るのかは?』
『それなら判る。気づいて欲しいからだ。僕はここに居るよって』
『でもそれって、無駄だよね。そんな事したって、見つけてもらえるわけないのに。滑稽だよね』
アゲハ、さばさばした表情で空を見上げる
『そんな事ないよ。見つけてくれる人はきっと見つけてくれるんだ。』
ケシ、少しむきになって言い返す
『私は、見つけないよ。表面だけ色を付けても無駄。待ってるだけなんて無駄』
アゲハ、挑むような目で言いながらケシに少しずつ近づく
『ケシって、いつもそうだよね。いつもいつも自分で動こうとしない』
『誰かに見つけてもらいたがってる。大体いつもいつも受身なんだよ。自分から出て行こうとしない。誰かの愛を待ってる存在なんだよ』
ケシ、黙ってアゲハを睨む

『隣町でまたサナギが出たんだって。次は私達かもしれないよ?』
『私、いつまでも君の傍に居ないかもしれないよ?』
『それでも、いいの?』
『ケシは、私が居ないと、駄目だもん……ね?』
微笑、そして――――無言

「カーット! おっけぇ!!」

832『T&E』第七話:2007/01/15(月) 01:17:14

私は不良になってしまったのかもしれない。
休みの日の撮影後はいつもみんなでミーティングと称して夕食を食べに行く。今日は現場から駅までにあるファミレスだった。
スタッフさんと私達四人。合わせて十二人。大テーブルを二つ占領してあーだこーだ言い合う。でも真剣に話しているのは有紀さん、圭さんと二、三人の人だけで私は残りの雑談組。先輩ももちろん雑談組。
ミーティング組は今日も白熱しているようだった。ドリンクバーをすすりながら少しだけ耳を傾ける。残すシーンは後三十パーセントほど。殆どが私の出ない、先輩の独白のシーンばかりだという。

「ねぇねぇ……」と隣に座った人懐っこい顔をした女の子が私に声をかけてきた。確か二年生で大友さんと言ったはずだった。
「綿見さんの事、大場のやつが狙ってるのはみんなの承知の事実なんだけど、結局のところどうなのよ〜?」
「え……っと…………どうって?」
「もう、告白されたの?キスした?付き合ってるの?」
 目をきらきらとさせた、いかにも興味津々という顔で矢継ぎ早に質問されて私はたじろいでしまう。
「うぉい!ちょっとまったぁ! 俺の灯ちゃんに変な事聞いてんじゃねーよ」
「せ、先輩のじゃありませんから!別に付き合ってませんし。キスもまだです!」
耳聡く聞きつけてきた先輩に怒鳴る。
「え? じゃあ俺たちとかもまだまだチャンス有り!?」
「マジマジっ!?じゃあ俺も立候補するぜ」
周りで聞き耳を立てていた男連中がいきり立った。
「だぁー!だめだ、だめだ!!お前ら灯ちゃんに指一本でも触れてみろ!ただじゃおかねーからな!!」
「きゃぁ〜、ヤダー!綿見さんもてもてじゃない、コノコノ〜!あ、でもまだって事はいつかはキスするんだ。そっかー大場君の予約済みかー!」
「「何だと〜!!大場ぁぁぁぁあああ!!!」」
私たちのテーブルは騒がしい事この上ない。
先輩は屈強な男子数人にヘッドロックをかけられた上にくすぐられていた。大友さんはそれを見てケラケラ笑っていた。
本当に、誰とでもすぐに仲良くなれる人だ。一ヶ月前までは私と同じ、まったくの初対面だったのに今では昔からの親友たちのように見える。
 そして私はそれを眩しそうに眺めるのだ。

833『T&E』第七話:2007/01/15(月) 01:18:16
           ◆

私は隣のテーブルからその一部始終をずっと眺めていた。彼女は前に比べて確実に明るくなって来ていた。それもこれも、やはりかつみの力が大きいのだろう。口ではなんだかんだと否定するが、彼女、綿見灯は確実に大場かつみに惹かれて来ている。

以前、二人だけの時に少しだけ話してくれた事がある。
彼女、実は視力はまったく悪くないのだそうだ。しかし、今はああして眼鏡を愛用している。
彼女は昔、他人が怖かったという。別に子供のころにひどい目にあったとか、虐待を受けたとかではなく、純粋に苦手だったのだそうだ。
私は思う。彼女ほどのいい子なら、おそらく周りからちやほやされた事だっただろう。それが逆に彼女にとっては窮屈で嫌なものだったのかもしれない。
ある日、彼女は度の入っていない地味な眼鏡で本当の顔を隠すようになった。そして人との関わりをできるだけ避けるようになったのだ。
他人の居ない世界は気楽で、嫌なことが少なく静かで、時折訪れる少しばかりの寂しささえ我慢すればとても居心地がよく快適だったに違いない。
それはまるで子供のころ母親に内緒でもぐりこんだ押入れの布団の中のようだ。
私は昔、そういった場所から引き戸の隙間から漏れ出す光を見るのが好きだった。
薄暗闇の冷たさとひんやりとした布団の確かな柔らかさ。押入れの中は私だけの秘密基地で家族にも黙ってそこに潜り込んだものだ。
押入れのふすまをほんの一センチほど開けておく。まだ子供だった私はそこから外界を覗きみた。そのころはまだ若かった母が私を探し、私の名を呼んでいた。
子供の私は、ただ黙ってその光景を自分だけの世界の中から眺めていたのだ。


834『T&E』第七話:2007/01/15(月) 01:19:05
「……有紀、どうした? ぼーっとして」
不意の声に意識が現実に戻された。急に黙り込んだ私の顔を覗き込むようにして圭が居た。私の隣にはいつも圭が居る。子供のそういった時間は長くは無い。いつかは外へ出て行かなくてはならないものだ。
私には圭が居る。知り合ってからもうそれなりに立つというのに少しも素直になれないけれど、彼が傍に居てくれてよかったと思う。
圭がそばに居てくれるからこそ私は元気に振舞えるし、怖いものもキット無い。人は一人ではとても弱いものだ。お互い支えあってやっと一人前にまっすぐ立てるのだろう。
彼女はきっと今、本当の意味で外に出ようとしているのだと思う。
彼女にもそういった人が現れるといいと思う。願わくば、それがあのアホのかつみである事を、あいつの友人としては祈るばかりだ。
私は「なんでもないわよ」と笑いかけ、撮影の進行状況の話に戻っていった。
835『T&E』第七話:2007/01/15(月) 01:20:07


 
 私は、席を立った。
いまだはしゃぐみんなを背にして黙ってトイレへ向かう。何か楽しげな話に夢中になっているみんなは私の異変に気づかない。ただ、先輩だけがチラッと私を気にしたようだったが、特に何かを感づかれたような事は無かった。
 久しぶりの家族そろっての外食なのだろう。嬉しそうにハンバーグを切り分ける小学生くらいの男の子の脇をすり抜け、このチェーン店の人気の一つであるドリンクバーコーナーを越えていく。
 息が苦しかった。頭がくらくらした。肺の奥から得たいの知れない、何か黒く不定形のモノがじわりじわりとせり上がって来る。どこからかヒューヒューとか細い音が聞こえて来た。私の喉から漏れ出した私の呼吸音であることに気づいた。
額には嫌な汗がじっとりと浮かんでいる。『けほっ』と小さく咳き込んだ。
胸がジクリと痛んだ。
何だろう、これは。そう、きっと気のせいだ。すぐ良くなる。だから、だからみんなに知られてはいけない……
私は周りに誰も居ないことを確認して、トイレの扉に手を掛け、それを開き、そして、パタン、と閉めた。
扉の向こうからはしばらく小さな咳が何度も聞こえていた


T&E第八話に続く

836『T&E』第七話:2007/01/15(月) 01:24:41
閉鎖か。いったいどうなるんだろうな…
俺は最後までここにいるよ。スレも活気づいて来ててうれしい
ツンデレスレに栄光あれ。大嫌いだよオマイら
837謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/15(月) 03:07:39

気になったから俺はストレートに聞いた。
「なんでのんきにジュースなんて飲んでるわけ?」
「飲みたかったから。」
「ふ〜〜ん」
「何か文句でも?」
「いいえ、特に」
「ふ〜〜ん。」
彼女は缶を俺に突き出してきた。
分けてくれるかと思って少し見直した時、彼女が。
「あっこれ飲み終わったから捨てといて。」
あぁきつい、期待をものすごい裏切りやがった。
少し切れ気味に。
「自分でやれ。それくらい」
「あれぇ?今日食べたとてもおいしい料理はなんだっけ?」
「くっ!!!わかったよ捨てればいいんだろ。捨てれば!!」
「わかればよろしい。」
彼女は、とても満足そうに笑っている。
まさに勝利のほほえみだ。
ってか少し考えればわかるが。俺に勝ち目は間違いなくない。
軍隊で表すと。
アメリカと日本が戦争した感じだ。
説明入らないと思うが。アメリカが立森、日本は俺だ。
まぁ日本(俺)は、戦争始まる前に白旗を出すから。
無駄な死傷者(精神的ダメージ)を最小限に抑えられるわけだ。
少しわかりづらい比喩になってしまったが。
俺が立森に勝てないことがわかれば。いいとしよう。



838謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/15(月) 03:28:58

そんなことを考えていると。
ポツッ
「あっ雨だ。。」
「傘ないぞ・・」
「とりあえずコンビニに雨宿りしよ。ほら走って。」
立森は、先にコンビニへ俺は、荷物があるので少し遅れて入る。
「危ない危ない」
「荷物は?」
「セーフだ。」
「よし!!でかした。」
俺は??立森さん・・・
コンビニで俺たちは、10分くらい雨宿りして様子を見た。
しかしやみそうにない。しかもさらに強くなっている。
ザァァァァァァ
「どうする?立森?」
「しょうがないビニール傘買おうか。」
「えぇと。。。おい立森。」
「なんだよ、傘ぐらい一人で買えろよ!!」
「そうじゃなくて、一本しかないぞ。。」
「いいじゃん」
「おい、、片方がぬれて帰るんだぞ。それと俺は荷物がある。」
「あっ。。」
「あっ。。じゃないよ。どうする。荷物おまえ持てないだろ。」
荷物はビニール袋いっぱいにあり。かなり重い。
839謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/15(月) 03:30:07
「一緒なんてやだろ。」
「断固拒否」
「だよな。」
立森は。人差し指を下唇の下にあて考えてる様子。
「う〜〜ん」
「なにかいい案は?」
「とりあえず一本買って。横取りされる前に」
「わかった。」
ピッ
「189円になります。」
これさっきのスーパーで100円だったぞ。。
ぼったくりだな。
「ありがとうございました。」
「買ってきたぞ。なにかいい考えは見つかったか?」
「・・・・・わたしぬれて帰ろっか?」
「えっ!!濡れてもいいのか。風引くかもよ」
「しょうがないじゃん買ったもの濡れたら。1週間ロクなもの食べれないよ」
「・・・・そうか。」
「しょうがないよ」
今俺が着ているコートを立森に羽織らせてやった。
「えっ?」
「せめてもの行為だ、いやか?」
「いやっそんなことないよそれよりおまえ寒くないのか・・・」
「濡れないだけいいよ。」
「そっか。」
「じゃぁ帰るぞ。」
「うん」
ザァァァァァ
相変わらずどしゃ降りの雨だ。
立森が思いっきり濡れている。
俺は、傘に当たる雨の音が聞こえれば聞こえるほど
罪悪感を覚えた。俺はうつむきながら。とぼとぼした感じで歩いていた。
840謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/15(月) 03:37:04

立森は、俺の暗さを察したかのかどうかわからないが、
「どうしたの?やっぱ寒いんでしょ私寒くないから返そうか?」
「いいよ、大丈夫だ。」
「じゃぁそんな暗い顔はしないこと。わかった?」
「はいはい。」
「わかればそれでいい」
あいつなりの励ましかなんかだろう。俺はさらに罪悪感を覚えた。
でもあいつに察しられないように必死で普通な顔をした。
あいつはニコニコ笑いながら楽しそうに歩いていた。
だれでもわかる。無理に楽しそうにしている。
俺は情けなかった。
そしてマンションのロビーに到着
「おい、大丈夫か?ものすごい濡れてるじゃないか」
「平気だよ。あんたのコートがあるから。暖かいよ」
そういいながら。あいつはガタガタとふるえていた。
841謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/15(月) 03:41:43

「立森!!鍵!!」
「はいはい、これ。」
俺は彼女を一刻も早く寒さから解放してあげたかった。
彼女の手を引いて。
エレベーターに駆け込む
「なにすんのよ!!手が痛いじゃない!」
「ごめん・・・」
「ふんっ!!」
そういってあいつは、口をとがらせてそっぽを向いた。
俺は反省した。落ち着け。。落ち着くんだ。。
「ほらっ!!暗い顔禁止だろ!!」
「ごめん・・」
エレベーターは、やっと6階についた。
「ほらっ急ぐぞ!!風引く!」
「おまえに言われなくてもわかってるよ!!」
急いで604号室の鍵を開ける。


842謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/15(月) 03:49:17

ガチャ
急いで脱衣所からバスタオルを持って来た。
玄関から近いのですぐにわかった。
すぐさま彼女を拭いてやった。
「ほらっ。あぁ〜あこんなに濡れて。」
「おい、自分で。するから。やめろ。。」
彼女は俺からバスタオルを取り上げてた。
「もう。私子供じゃないんだからね。」
「ごめん・・・」
「あやまってばっかだな。おまえ」
「ごめん・・・・」
「またあやまった。」
「ごめん・・・」
「ほらまた!!あやまるな!!」
「ごめっ・・・なんでもない。」
ザァァァァァァ
まだ外では雨が降っている。
「私お風呂入ってくる。」
「あぁ。。」
「絶対のぞくなよ」
「あぁ・・・」
「暗い顔禁止だろ。2度目」
「わかった。」
俺は自分が情けなかった。
自分だけ濡れないで帰って来た。
ものすごい罪悪感でいっぱいだった。
もうすこし考えていれば彼女は濡れなくて済んだかもしれない。
そう思うと胸の奥が痛かった。
843Mr.名無しさん:2007/01/15(月) 16:24:09
すげー投下ラッシュで良いんだが次スレの時期じゃないか?
844Mr.名無しさん:2007/01/15(月) 16:39:17
現時点で457KB
最後のまとめに必要な容量はせいぜい3〜4KBなので
もうちょいいけなくもない
今次スレ立てたら埋めるのしんどいし

480KBくらいまではおkかと
845謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/16(火) 02:42:30

俺は靴も脱がず玄関に立ちつくした。
薄暗い玄関で禁止されたはずの暗い顔をしながらうつむいていた。
俺の持っている。傘の先から雨水が垂れて小さな水たまりを作っていた。
いますぐ崩れ落ちたい。
よくわからない感覚が全身を包んでいる。
むずむずするような。重く縛り付けられるような。
俺の言葉では到底表すことの出来ない感覚だ。
あいつ、怒ってるだろうな・・・・・・・
今頃陰口でも止まらないような勢いで言ってるだろうな・・・
あぁダメだ。マイナスなことしか思い浮かばない。
「はぁ・・・」
重いため息をついた。
ガチャ
「おまえ、まだ玄関いたの?」
立森は、タオルで髪の毛を拭きながら言った。
「・・・・・・」
「死にそうなかおしてんじゃねぇよ」
「・・・・・・・」
「何とか言えよ」
「・・・・あぁ」
「とりあえずあがって」
「・・・・・・・・あぁ」
立森が手招きをしている。
俺は傘を置き部屋に入った。
846謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/16(火) 02:58:29

「暗い顔すんなって何度言わせんだよ」
「これで五度目。」
「数えてたのかよ」
「まぁ一応」
他の人から見たらたぶん俺は抜け殻のような感じになってるだろう。
気力のかけらもない。人形のような人のような感じ。
「飯どうする。」
「どうしよ」
「ほらっ!気合い入れる。」
「痛って叩かなくてもいいだろ!」
「ただ叩いた訳じゃないの。気合い入れたんだよ」
その時やっとまともに立森の顔を見た。
さっきまでうつむいていてよく見えなかったが。
今更言わなくてもいいが。やはり美人だ。
しかも風呂上がりと言うこともあって
彼女は、水色の水玉のパジャマを着ていた。
しかしサイズが合わないらしく。手が全く出ていない。
まくってやっと出るくらいだろう。
まぁ彼女は背は160cm前後くらいで俺と
拳一個分くらい背が違う。
しかも腕は細く足はすらっとしていて
その華奢な体を見ているとついつい抱きたくなる。
大半の男は同じ意見を持つだろう。うん
847謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/16(火) 03:07:38

「何ニヤニヤしてんの?気持ち悪い。」
「いやぁなんにも」
「エッチなこと考えてたでしょ」
「ちっちがう」
「い〜や。絶対考えてたね。このドスケベが!」
「俺はスケベじゃない」
「そんなことはいいの。ご飯どうするか聞いてるの。」
「ご飯ねぇ」
「なんかいい考えはないの。スケベ?」
「俺をスケベで呼ぶな」
「事実だからしょうがない」
「小学生高学年みたいなこといってんじゃねぇよ」
「高学年限定?」
「限定。・・・じゃなくて飯だよな」
「そうそう。」
「適当」
「その適当を聞いてる。」
「なんにも浮かばん。」
「使えないなぁ。。エロイことしか考えてないからこうなるんだよ。」
「だから。俺はエロくない」
「じゃぁご飯は餃子で決定」
「いつどこで話が進んだ?」
「さっき私の頭の中で進んだ。」
「あぁそう。。」
「そうなの。」
と言う訳で俺はもう用なし。
俺は、料理をする立森の後ろ姿をずっと眺めていた。
その時少し顔がニヤけてたかもしれない。。
848Mr.名無しさん:2007/01/16(火) 08:41:54
 _n
 ( l    _、_
  \ \ ( <_,` )
   ヽ___ ̄ ̄  )   グッジョブ!!
     /    /
849Mr.名無しさん:2007/01/16(火) 08:55:56
閉鎖age
850謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/17(水) 01:24:07

俺は、ハッとした。
危ない危ない。このままニヤけてたら。
間違いなく立森に
「なにニヤニヤしてるのよ!!やっぱりスケベだな!!」
とかなんとか言われそうな気がする。
しかし目の前に自分のために料理をしてくれる女性が居るのは男として最高の幸せだ。
調理中な感じ溢れる。包丁の材料を切る軽快な音。
フライパンから聞こえる。食欲そそる音。。
あぁなんだか。幸せだ。
ついさっきまでのブルーな俺はどこに?
まぁそんなことはいいんだ。
とにかく今俺は、とてつもなく幸せだった。
もう思わず。
えっへっへっへ
とか言ってしまいそうなほど幸せだ、
851謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/17(水) 01:26:54

「出来たよ〜〜。ってうわっおまえ何ニヤニヤしてんの?」
なんてタイミングだ、チクショー。
立森は視線の先を確認中。
「ふ〜〜ん。私見てニヤニヤしてるんだぁ〜」
「してねぇよ!!」
「ご飯作ってる時も視線感じたんだよねぇ」
「一体、あんたの頭の中で私はどうなってるのかなぁ?」
恥ずかしくて言えんが、おまえが微笑みながら料理をしている。
「それは。。。。」
「どうせ、あんなことや、こんな事を考えてるんでしょ」
「あんな事とは。」
「もちろんおまえが考えるようなことだから、スケベな内容のものでしょ」
「残念。俺は全世界の男が望む。至福のひとときを考えていた。」
「はいはい。どうせエロイんでしょ」
「いいや、全くエロくない」
「言ってみなよ」
再度確認する。この状況で
あなたが微笑みながら料理をしてると言える人がいるだろうか。
そんな人は、是非とも挙手願いたい。
「それはだなぁ。こうなぁ。いかにもさわやかな感じでまさに幸せで小鳥のさえずりが聞こえそうな感じだ」
「ふ〜〜んよくわかんない。まっいっか。食べるよ」
「あぁそうしよう!」
「あっ!今逃げれた。と思ったでしょ」
「思ってねぇよ」
「まぁいいよ」
と言い。あいつは、餃子に手を伸ばした。
852謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/17(水) 01:33:27

「うん、おいしい。」
「あぁ、なかなか。」
「なかなか???」
「いいえ、とてもこの世のものとは思えぬ旨さです。」
「わかればよろしい」
と言ってもまぁ旨い事は旨い。
「今日バイトまで時間あるよな。」
「うん。んで何?まさか!!」
「まさか!!ってなんだよ」
「ご飯を食べるだけ食べて。私がうぎゃぁぁっていうような事を」
「なんだよそれ。第一なぜおまえの中の俺はいっつも暴走気味なんだ?」
「さぁね。日頃の行動、言動。かな」
「俺がいつ下ネタを言った。」
「まぁいいじゃん。」
「よくない。話戻すぞ。おまえ熱とかだるいとかないか?」
「ない」
「ならいいけど」
「そんだけ?」
「そんだけ」
またあいつは、黙々と餃子を食べていく。
しかしよく食うなぁなぜ太らん。
853謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/17(水) 01:42:28

ついに完食。
「あぁ〜食った食った」
「普通女が言うか?」
「言うの。」
「あぁそうか。」
立森は、せっせと皿を台所に運んでった。
「なにか手伝おうか?」
「いいよ、どうせなんもできないでしょ」
「うわっひどっ、人の善意をなんだと思ってんだ!」
「事実だからしょうがない」
「はいはい。待ってますよ」
ジャァァァァカチャカチャ
あぁ俺無力。
あと5時間か。。
どうする。俺。
まぁ今度は立森の方を見ないように。窓を延々と見ていた。
おもしくもなんともない。
ジャァァァ・・・・キュ
「はい、終わり。おっ今度はニヤニヤしてない。」
「いつも俺は、ニヤニヤしてんのか?」
「そうだと思ってた。」
「それは、ない。」
念を押すが、俺は随時ニヤニヤしてる訳がない。
まったくのあいつの妄想だ、
854Mr.名無しさん:2007/01/17(水) 15:05:03
それはキミ限定
855謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/18(木) 00:43:55

「あと五時間ねぇ〜どしよ」
「さっき俺が聞いただろ?そしたら話ずれたじゃん」
「そうだっけ?」
「そうだ。覚えてないのか?」
「まぁいいじゃん。それより!どうする?」
「長いぞ。五時間。」
「本読むにしても一時間できつくなるし。」
立森は、人差し指を下唇伸したに当てると言うベタなシンキングポーズをとった、
それに対抗して俺は、腕組みをした。
「映画。見る?」
「2,3本も見るのか。。。」
「あぁ〜それはつらいね。」
「つらい。」
「俺一回家帰ろうかな?」
「ふ〜〜ん。なにすんの?」
「部屋片づける。暇だし。」
「私も行く」
「ダメだ。」
「なんで?見られたらまずいものでもあるの?」
部屋を見られたらまずい。あの荒れようはやばいだろう。
「危ないぞ。」
「何が?」
「ゴキブリ出るかもよ」
「そんな汚いなら、なおさら。」
「・・・・・・・・・」
「いいでしょ?」
「わかったよ。。失望すんなよ」
「よし、決まり。」
そういう事で我が家の清掃をすることになった。

856謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/18(木) 00:55:51

「はぁ〜。おっ息が白いねぇあははは」
「そうだな。こんだけ寒いからなぁ」
あいつは、のんきでいいなぁ・・・
悩みなし!!みたいな。
んん?今日って土曜だよな。
たぶん学校は休みであろう。
それなのに。友達と遊ばないのか?しかも
俺のようなクズとちょろちょろしてるんだ?
気になったのでダイレクトに聞いてみた、
「あのさぁ。」
「んん?なに?」
「おまえ、今日学校休みだろ?」
「そうだけど。」
「何で友達とかと遊ばないで、俺なんかとちょろちょろしたんだ?」
「それは・・・・・・・・」
「聞いちゃダメなところだったか?」
「私、友達あんまいないの。」
「嘘じゃないのか?」
「本当のこと、」
「・・・・・」
「私地方から来たんだ。それに私顔見知りがひどくてさぁ。全然溶け込めないんだよね。」
「ゴメン。」
「なんで謝るの?」
「いやっだっていけない事聞いたかなぁと思って。」
「べつにいいよ」
「そうか。」
「おまえとちょろちょろしたのは、おまえくらいしか知り合いいないからさぁ。それで・・・」
「・・・・それで?」
「まぁ私も少し人とふれあいたかったて言うかなんて言うか。ちょっと本当に少し寂しかったからかな」
「よくわからんがわかった。」
「あっそ」
857謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/18(木) 01:01:54

ガチャ、、ギィィィィ
俺の家は、やはり古い、ってかこれしか借りれない。
「うわっ!!すごいねぇゴミパラダイスじゃん。」
「なんだよ、ゴミパラダイスって。」
「ゴミの楽園」
「直訳しただけだな。」
「ってか引きこもり?」
「・・・・・・・さぁ!片づけようか!!」
「ねぇどうなの?教えろ!!」
立森が、背中をポコポコとたたいてくる。
その後両手でコートをつかみ揺すってくる。
「片づけしているときのおまえを見て決める。」
「よし!!やったろうじゃないの!!」
「そうか。やるのか。」
と言う。訳で作業開始。
「おまえ食べたものくらい捨てろ」「皿も洗えよ」「どこに座んの?」
と次々と彼女の口からぐさりとくるような。言葉が出てくる。
その精神的痛みの代わりに作業は早いぺースで進められた。
858Mr.名無しさん:2007/01/18(木) 22:26:11
>T&E
今さらながら乙
「Cocoon」いいな。なんか岩井俊二あたりが本当に作りそうな映画だ
859Mr.名無しさん:2007/01/18(木) 22:32:43
閉鎖age
860Mr.名無しさん:2007/01/18(木) 22:37:12
このスレもうすぐ容量オーバー?
次スレ行ったらデビューするぜ

姉弟物で
861Mr.名無しさん:2007/01/18(木) 23:38:01
近親かよ
個人的にはあんまし・・・
862Mr.名無しさん:2007/01/19(金) 00:55:38
ツンデレの姉もまた悪くないかもな…萌ス
863Mr.名無しさん:2007/01/19(金) 13:06:15
んじゃ俺は閉鎖されたら何か書く
864Mr.名無しさん:2007/01/19(金) 18:52:39
姉萌え妹萌えな俺としては大歓迎。
865謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/19(金) 23:22:56

「あぁ〜汚い。」
「だから来るなっていたのに。」
「別にいいだろ来たって。」
「あまり来て欲しくなかった。」
「あまりならいいでしょ」
「まぁ。。。」
だいぶゴミも減りついに
「うぁ〜〜終わった〜!!」
「終わったな」
「んで引きこもりなの?」
「まだ覚えてたか・・・」
「お前より働いてたろ?」
「はいはい、僕は引きこもりですよ」
「やっぱり」
「やっぱりって予想してたんかい。」
「わかってたけど決定打がなかった。でも今のでバッチリ!!」
「あっそ」
「今10時だね、」
「まだ。2時間あるな」
「テレビ見ていい?」
「べつにいいけど」
ピッ
866謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/19(金) 23:28:44

「あぁ〜どれもつまらない、」
「だな、」
「おっお笑いやってるじゃん」
「好きなのか?」
「結構ね」
あぁ〜こいつら見たことある。こいつらはいっぱいだろうな。
こいつは、最近司会とかやってるしなんとか生きるんじゃないか?
などと芸人の末路を勝手に予想してた。
立森は食い入るように見ている。
つまんないのでベットに横になった、


・・・・・・・・・・・・
お・・・・起き・・・
おい!・・・・いい加・・・
いい加減起きろ!!!時間だぞ!!!
「んん?おっ!あぁ・・・」
「何寝てんだよ。」
「つい、、、」
「時間てきにそろそろいかないとまずいよ」
「だな。」
ってなわけ家を出た。
寝起きでボーッとしてる。
867Mr.名無しさん:2007/01/20(土) 23:01:45
保守
868Mr.名無しさん:2007/01/21(日) 00:08:04
よっしゃ、俺も次スレ行ったらデビューするぜ
王道・ツンデレ幼馴染と、邪道・ツンデレミステリアス転校生のどっちかがいい?
869808:2007/01/21(日) 00:09:16
ごめん……sage忘れた……
870Mr.名無しさん:2007/01/21(日) 00:14:08
>>868
邪道とやらを見てみたい。ミステリアスなツンデレが単なるクーデレにならないことを願う
871Mr.名無しさん:2007/01/21(日) 00:17:18
>>868
じゃ俺は王道
872Mr.名無しさん:2007/01/21(日) 04:44:58
なんとなく2〜4あたりの過去ログ見てきて昔はすごい職人さんいっぱい居たんだなとオモタ
これからも良い職人さん出てくると良いな。でも本音は自分の書いたものがみんなどこかで書かれた事のあるパクリみたいな気がしてきて欝だ
873Mr.名無しさん:2007/01/21(日) 06:39:56
ツンデレ愛が今爆発しすぎてどうしようもない
やらなきゃならないことはいっぱいあるのにぜんぜん手につかない
もうだめだ!もうだめだ!
何でこんなにおいらを魅了するのか
今目の前にある危機を乗り越えたらおいらも王道ツンデレを書いてみよう
危機は目の前まで迫ってるのに・・・・
874Mr.名無しさん:2007/01/21(日) 17:00:02
>>872
んなこと気にすんな
似てる文章なんか無限にある
875Mr.名無しさん:2007/01/22(月) 06:16:46
作品まとめサイトが更新されてるな

管理人様テラGJ!
876きみといっしょに。 ◆TSElPlu4zM :2007/01/23(火) 02:34:17

 3日間、寝ずに仕事をこなし続けた。きっと、それが良くなかったんだろう。
 朦朧としたまま、帰宅の為に雨で濡れた会社の階段を降りていると、突然、体が軽くなったと思ったら、そのまま意識が途切れた。
 気がつけば、俺は病室で目を覚ます事となった。
 俺は階段で滑って足を踏み外したらしく、気を失い病院に運ばれたそうだ。頭には包帯が巻かれていた。医者の話によると、俺はイビキをかいて二日近く寝ていたと言う事だ。
 検査もあっけなく終わり、あっさり退院となった。
 俺は働いていた時に着ていたセーターとジーンスに着替えて、六日ぶりに家に帰る事となった。ただ、気になる事が遭った。
 やたらと目がちらつく。後遺症の可能性もあるな。医者から通院するように言われているし、その時、相談する事にしよう。
 首を傾げながらも、電車を乗り継ぎ、自分の住むマンションの部屋の前まで来ると、鍵を差し込んでドアを開け中へと入った。

「はぁ……。きったねぇ……」

 変哲もない1DKの部屋は、相変わらず綺麗な物では無く、ここ最近の忙しさがモロに出ている。
 まぁ、会社から1週間の休みをもらったし、その間にでも掃除をすればいいさ。
 いつまでも玄関に立っていても仕方がない。
 俺は、とっとと靴を脱ぎ、キッチンを兼ねたダイニングを抜け、自室となる部屋の扉を開けた。目の前には、いつもと変わらない風景に見慣れない物があった。
 いや、あったじゃなくて、いるだ。
 なぜか俺のベットの上に、座り膝を抱え、体育座りをしている髪の長い女……。いや、女の子と言っていいのか?
 とにかく女性がいた。多分、年齢は10代後半だろう。結構、かわいいんだが……。俺は知らない。

「……誰?」

 俺は呆然としながら声をかけると、女の子は顔を俺の方に向けると、目の前までやって来た。

「あ、帰ってきたの?お帰りなさい。会社で怪我しちゃったの?帰って来ないから心配したじゃない」
「……あ、うん。――って、違う!お前、誰だ!?」
「え!?もしかして……私の事、見えるの?」
「――はあ?何言ってんだ?」
877きみといっしょに。 ◆TSElPlu4zM :2007/01/23(火) 02:35:30

 きっと、俺の眉の間には皺が寄っていたと思う。しかし、この女は俺を無視して、やたら嬉しそうにしてやがった。
 俺も女に怒鳴りたくはないが、慣れない病院帰りと言う事もあったし、疲れていた事もあって女に怒鳴りつけた。

「おい!ここは俺の部屋だぞ!早く出てけよ!」
「え?どうしてよ?」
「……あのな、出て行かないなら警察を呼ぶ事になるぞ」
「……えっと、……呼んでも無駄だと……思うよ」
「なに言ってんだ、こいつは。とにかく出てけよ!」

 俺が怒鳴ると女は表情を一変させ、泣きそうな顔になった。
 正直、焦ったんだが、ここで俺が態度を軟化させれば、とんでもない事になりそうな気がした。

「頼むから出てってくれ」
「……私、ここを出て行ったら、行く所なんてないもん……」
「だからって、俺には関係ないだろ」
「……それに、この部屋には、私の方が先に住んでたんだもん……」

 今にも泣き出しそうな表情で、床を見つめるながら女は言った。
 俺はそれを聞いて、この女頭大丈夫かと本気で思った。
 ちなみにこの部屋には、もう3年近く住んでいる。だから、この女が言う事は絶対に有り得ない。
 いい加減、俺はいらつき初めていた。

「俺は、ここに3年近く住んでいるが、お前の事なんて見たことない!それに家賃を払ってるのも俺だ!だから、とっとと出てけ!」
「……でも……私の方が……先に住んでた……んだから!」
878きみといっしょに。 ◆TSElPlu4zM :2007/01/23(火) 02:35:51

 俺が捲くし立てると、女は泣き出しやがった……。
 いや、俺も悪いとは思うし、女性を泣かしたくはない。でも、こいつは住居不法侵入の犯罪者だよ。俺だってそんなにお人好しじゃないんだ。

「泣いても無駄!とっとと出てく!」
「うっ……うっ……」

 泣いたまま動こうとしない女に、いい加減呆れて、俺は溜息を吐いた。
 俺は女を避けるようにしてベットまで行くと、持っていた鞄を置いて腰を下ろした。

「ったく、いい加減にしてくれよ……。本当に警察、呼ぶぞ」
「うっ……何よ……君がこの部屋に来てから、ずっと一緒に居たのに……優しくしてくれてもいいじゃないのよ!」

 女は振り向いて、俺の事を睨んだ。見事に逆ギレしている。
 俺は女の態度にマジで堪忍袋が緒が切れた。

「俺は、お前と一緒にいた覚えはない!出てけ、犯罪者!」

 俺は、そう言って女の手を取ろうとすると、女は避けようとするが、俺も運動音痴な訳ではない。女が避けた方に素早く体重移動すると、女の左手を掴んだ――。はずだった……。

「……えっ!?」

 女の手を掴んだはずの俺の手が、何故か女の左手を貫通していた。
 俺は一瞬にして、血の気が引いた。いや、マジで……。
 あまりの事に後ずさりながら、俺はベットに足を引っ掛け、仰向けに倒れた。その拍子に、階段で打った箇所に痛みが走る。

「――いてっ!」
「――大丈夫!?」
879きみといっしょに。 ◆TSElPlu4zM :2007/01/23(火) 02:36:42

 俺がベットの上でのた打ち回ってると、女が心配そうな表情で俺を覗き込んでいた。
 泣いた後だけあって、女の目は赤くなっていた。
 俺は自分の事よりも、貫通してしまった女の左手を心配した。

「――俺はいいから、お前は大丈夫なのかよ!?いや、ほんとゴメン!」
「あ、うん。大丈夫だよ」

 と言って、女は貫通したはずの左手を俺の目の前にかざした。
 貫通した割には綺麗な手だった。血も流れていない。って言うか、傷一つついていなかった。

「――え?」
「ほら、なんともないでしょ」

 女は左手をひらひらと振ってみせた。
 俺は確かに貫通したのを見た。それに感触もあったんだ。何かがおかしい……。
 きっと、俺の額を一筋の汗が流れたと思う。
 俺は、女の手を再び触ろうと右手を伸ばした。

「……」
「……もしかして、触ろうと思ってる?」

 女は俺が伸ばした手を見ながら、少し顔を傾ける。そして、「いいよ」と言って、左手を俺の右の手のひらに重ね合わせた。
 感触はある。生温い。形は人の手なんだが、何か違う気がした。
 重ね合わせた女の手は、やがて、俺の右手を通り抜けた。
 きっと、俺の顔は異常な程に青ざめているだろう。

「――――――――――!!!!!!」

 俺は、恐怖の為に声に成らない声を上げ、逃げる様に後ずさった。
 この後、今度は壁に頭を打ち付け、打ち回る事になる。
 これが彼女との出会いだった――。
880 ◆TSElPlu4zM :2007/01/23(火) 02:43:10
勢いで書いたから間違いがあると思います
どうぞご勘弁を
881Mr.名無しさん:2007/01/23(火) 04:57:21
久しぶりのツンデ霊か期待
882Mr.名無しさん:2007/01/23(火) 09:22:35
>>◆TSElPlu4zM さんGJ!!
続き待ってます。


+   +
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・)   ワクワクテカテカ
 (0゚∪ ∪ +        
 と__)__) +

883Mr.名無しさん:2007/01/23(火) 11:45:02
再び幽霊ものか
期待しとこう

現在477kb
そろそろ立てるべきかな・・?
884Mr.名無しさん:2007/01/23(火) 12:05:34
一番最近の幽霊ものって繋ぎ屋のやつだったっけ?

>>883
次スレそろそろ立てるなら俺立ててくるぞ
885Mr.名無しさん:2007/01/23(火) 12:23:21
職人の投下率と即死のかかわりでいつ立てるべきかと思ってたんだが・・

新スレになったらこのスレでの投下はなしにして、まとめだけやって落とすのかな?
それとも490くらいまで粘って、まとめでちょうど500いくようにやってみるのかな?
新スレの即死が心配だが
886Mr.名無しさん:2007/01/23(火) 14:00:22
書き込めなくなってからではいかんのか?
887Mr.名無しさん:2007/01/23(火) 14:34:28
一応スレの総まとめをやっときたいからな
そのほうが読み返すのに分かりやすいんじゃないかと
888Mr.名無しさん:2007/01/23(火) 23:20:46
ttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070123-00000015-imp-sci

べ、別にアンタ達の為に作ったんじゃないからね!!
889Mr.名無しさん:2007/01/23(火) 23:59:05
>>888
やべえ欲しいかもしらん。
890Mr.名無しさん:2007/01/24(水) 00:34:12
>>888
バカスwwwwwwww
確実に買うことは無いだろうけど確かに興味深い一品だwwww
891謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/24(水) 00:43:28

こんなことならつまらないことでもして。
無理やり起きておけばよかった。
もうちょい寝たい・・・
バイト先に入り早速着替える。
「はぁ・・・やる気でねぇ・・」
独り言も虚しく
さっそく仕事に。
と言っても客もそんなに出入りしない。
ちなみに今日も店長と自分と立森の三人だ。
非常に暇だ。ついつい本でも立ち読みしたくなる。
まぁそんなことしたら間違いなく怒られるのでしないが、
客もいないので多少自由だ。話していても怒られることは少ない。
大きな声で馬鹿みたいに話しているのは例外だろうが、
そんな感じでいつものとおりバイトをしていた。
――――しかし、今日は少し違うところがあった、
いつも自ら仕事を探しやらなくていいことまでする。
あの立森が、上の空状態だ。流石に心配だ。
「どうした?立森?」
「・・・・・えっ!あぁ、何?」
「どうしたも上の空でお前らしくないなぁと思って。どこか具合でも悪いのか?」
「いやっ。少しだるいだけ。大丈夫・・・・」
彼女の顔色はあまりすぐれていなかった。
見るからにだるそうだ。華奢な体が俺の不安をさらに募らせる
今すぐ保護してやりたいがどうすればいいものか。
「大丈夫じゃないなら言えよ。」
「うん、わかった。」
あいつはバレバレな作り笑顔を作った。
俺はさらに不安になる。

892謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/24(水) 00:57:04

幸い客は2、3人来たくらいで仕事はあまり無かった。
そして店長も立森の体調を察したようで少し早めにあがらせてくれた。
ナイス判断店長。
そういうことで早く帰れることになった。
立森はやはりだるそうだ。さっきより顔色も悪くなっている。
「立森?大丈夫か?顔色悪いぞ・・・」
「・・・・うん。。大丈夫。」
「嘘付け。無理してるのバレバレだぞ。」
「そっそんなことない。」
俺は手を伸ばし彼女のおでこと俺のおでこの温度を比べた。
「おい!熱あるじゃないか。。」
「微熱だよ。」
「足元もおぼつかないじゃないか!」
「うるさいなぁ!大丈夫なの!!」
彼女はムスッとした顔をしている。
「ほらっ」
「なによ?」
「おぶってやるよ。」
「なっなにいってんの!!」
「ほら。」
「んん。もうしょうがない。」
彼女は顔を赤く染めて俺の背中に乗った。
893Mr.名無しさん:2007/01/24(水) 11:43:24
   GJですね!
     ∧_∧    ∧_∧   |
___( ´∀`)__(・∀・ )___.| 
\\ /    つ目 ( つ目)\\\  
\ ⊂ノヽ ヽ ヽ\\ヽ ヽ ヽ \\\  
===(_):_)==(_):_) ===
::::| |::::::::::::::::::::::::::::| |::::::::::::::::::::::::::::| |::
 """       """       """" 
894Mr.名無しさん:2007/01/24(水) 23:48:35
さて、それでだ
次スレはどうする
まとめやるなら大事を取ってそろそろ立てたほうがよくないかと思うんだが
お前が建てろってんなら立ててくるぞ
895Mr.名無しさん:2007/01/24(水) 23:57:28
そだな。
そろそろ立てといたほうがいいかもな

立てる人は、1に>>820を加えるのを忘れるなよ
896Mr.名無しさん:2007/01/25(木) 00:06:23
>>895
おk。そんじゃ立ててくる
897896:2007/01/25(木) 00:07:58
立てれなかったw
誰か頼む
898Mr.名無しさん:2007/01/25(木) 00:09:42
なら俺が
899Mr.名無しさん:2007/01/25(木) 00:16:00
俺もはじかれた
以下テンプレ
よかったら使ってくれ
------------
毒男のためだけのツンデレ小説を書くスレ。
でも萌えられたらツンデレから多少離れてても良し。
絶対にsage進行。

初代
http://etc4.2ch.net/test/read.cgi/male/1110367127/
第2話
http://etc4.2ch.net/test/read.cgi/male/1120669390/
第3話
http://etc4.2ch.net/test/read.cgi/male/1130681506/
第4話
http://etc4.2ch.net/test/read.cgi/male/1140319920/
第5話
http://etc6.2ch.net/test/read.cgi/male/1153779533/

ログ置き場
http://dousedokuodasi.hp.infoseek.co.jp/
作品別まとめ
http://www.geocities.jp/dousedokuodasi/

はてなダイアリー - ツンデレとは
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C4%A5%F3%A5%C7%A5%EC
2ch検索: [ツンデレ]
http://find.2ch.net/?BBS=ALL&TYPE=TITLE&STR=%A5%C4%A5%F3%A5%C7%A5%EC&COUNT=50

職人さん方、いつもクオリティの高い作品ありがとうございます。
900謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/25(木) 00:28:07

彼女の手は俺の首筋に当たっていた。その手は俺の思った以上に細かった。
だがその細い手からはしっかりとやさしいなんとも言えない温かさが伝わってきていた。
「大丈夫か?」
「ふん!余計なことばっかして、」
「心配してやってんだぞ!」
「心配しなくてもいいもん!」
「でも心配で仕方が無いんだ。」
「ふ〜ん」
彼女は顔を首の横にうずめて来た。
「―――!!」
俺は思わず驚いてしまった。
「・・・なによ、」
「いやっなんにも」
まさに考えてもいなかった事態だ。
俺は首に感じる温もりに気をとられている間に。
彼女の家に着いた。
「これ、カギ」
立森がぬっとカギを出す。
「あぁありがと」
俺はそのカギを使い立森の家に上がった。
901謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/25(木) 00:29:39
僕立てますよ
902謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/25(木) 00:31:48
903Mr.名無しさん:2007/01/25(木) 00:31:55
>>901
よろしく
904Mr.名無しさん:2007/01/25(木) 00:33:15
>>902
乙だがまたスレタイが……
905謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/25(木) 00:42:32
靴を脱ぎ立森をベッドに寝かす。
「体温計どこだ?」
「そこの棚の2段目」
「わかった。」
ガサガサ
「ほらっ熱計れ」
「うん」
結果は39.6℃
「こんなにあるじゃないか。」
「自分でもびっくりした。」
「早く寝たほうがいいぞ」
「うん。そうする、お前は帰らなくていいの?」
「いてもいいし。帰ってもいいし」
「帰っていいよ。悪いし」
「お前なんか無理しそうだなぁ」
「大丈夫だって」
「本当か?」
「本当だって」
「じゃぁ俺は帰るよ」
「まって。」
「どうした?」
「これ。」
立森はカギを差し出してきた。
906謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg :2007/01/25(木) 00:43:37
「合い鍵、」
「でもどうして。」
「信用あんまして無いでしょ。わたしがなんかすると思ってるでしょ」
「まぁな。」
「だから。」
「そっか」
「おやすみ」
「おやすみ」
俺は立森の家を出た。
907Mr.名無しさん:2007/01/25(木) 08:58:28
謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg さん
GJです

スレ立ても含めて
908Mr.名無しさん:2007/01/25(木) 11:24:48
あと残り15kbほど
まとめに必要なのはせいぜい5-6kbくらいだと思うが、
もうこのスレへの投下はないのかな?ん?
909Mr.名無しさん:2007/01/26(金) 02:05:19
投下したいところなんだけど書けネェ・・・・
次スレにするわ・・・・
910Mr.名無しさん:2007/01/27(土) 21:15:34
保守じゃけん
911Mr.名無しさん:2007/01/27(土) 21:27:16
巡回age
912Mr.名無しさん:2007/01/28(日) 06:25:55
「勘違いしないでよねっ!」
「あんたの為なんかじゃないんだからねっ!」
       ♪
     と〜きっみは言うけれど〜それはどう見たって校医(好意!)
    そう、君は校医〜保健室のおねぇさん〜それっていわゆる保健室のおばさん?(おばさんってゆーな!)
      そう、君はなぜか僕と同い年〜(同い年の校医!)
       それっていわゆる好意!(ば、ばかじゃないの!)
    君はやっぱり校医!(サボってばっかりいるんじゃないわよバカー!)
    やっぱりしたいぜ保健室でのいかがわしい行為!(そ、そんなあんたがどうしてもって言うんなら・・・・)
    つれない君の気持ちはやっぱり好意!(え・・・・もう帰っちゃうの?)
    その寂しそうな顔が萌えもえですよ1.2.3ダー!!!
     (好意!好意!好意!好意!好意!好意!好意!)
                         ♪
       _ _∩.     _ _∩.     _ _∩.     _ _∩.     _ _∩.     _ _∩.
     ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡
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   し ⌒J.    し ⌒J.    し ⌒J.    し ⌒J.   し ⌒J.    し ⌒J.    し ⌒J




長編の続きに行き詰って書けなくてむしゃくしゃしてやった
後悔はしていない。とりあえず今は。



明日あたり見たら多分すると思う
913Mr.名無しさん:2007/01/29(月) 08:54:59
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 好意!好意!
 ⊂彡
914Mr.名無しさん:2007/01/29(月) 09:12:08
巡回age
915Mr.名無しさん:2007/01/29(月) 12:39:33
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 好意!好意!ありがとう!
 ⊂彡

どうも投下の場も新スレの方に移行してるみたいだしこのスレもそろそろ閉め時かねぇ
916Mr.名無しさん:2007/01/29(月) 12:42:34
最後にまとめるのでもう少しだけ待ってくれい
今日中にできるかどうかは自信ないけど
917Mr.名無しさん:2007/01/30(火) 11:06:58
>>916
乙です
918Mr.名無しさん:2007/01/30(火) 17:33:40
最後にこのスレまとめ

【連載中の作品】
過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI氏の作品
夕立刻に降る雨は
序幕
>24 >25 >26 >27 >28 >29 >30 >31 >32 >33
一幕
>223 >224 >225 >226 >227 >228 >230 >231 >232 >233
>234 >235 >236 >237 >238 >239 >240 >241 >242 >243 >244
登場人物名簿 >246
一幕要約 >247
二幕−その1
>281 >282 >283 >284 >285 >286 >287 >288 >289 >290 >291
二幕ーその2
>331 >332 >333 >334 >335 >336 >337
二幕―3
>356 >357 >358 >359 >360 >361 >362 >363 >364 >365 >366
>367 >368 >369 >370 >371 >372 >373

497 ◆ToK1blLRAI氏の作品
>564 >565 >566 >567 >570 >571 >572 >573 >574 >577
>578 >579 >586 >587 >588 >589
休載のお知らせ>592(復活マダー?)
919Mr.名無しさん:2007/01/30(火) 17:34:27
【連載中の作品】続き

謎の鍋 ◆vI/qld5Tcg氏の作品
>712 >713 >714 >715 >721 >722 >723 >724 >741 >742 >754
>755 >756 >763 >764 >765 >766 >767 >768 >769 >775 >777
>778 >779 >783 >784 >786 >787 >803 >804 >805 >806 >837
>838 >839 >840 >841 >842 >845 >846 >847 >850 >851 >852
>853 >855 >856 >857 >865 >866 >891 >892 >900 >905 >906

ふぇろ氏の作品
>795 >801 >819

きみといっしょに。 ◆TSElPlu4zM氏の作品
>876 >877 >878 >879

理恵のカタチ、祐樹のカタチ(仮) 作者:◆D0jSd07HNs
第一話
>136 >137 >138 >139 >140
キャラまとめ>155
第二話
>156 >157 >158 >159 >160
第三話
>194 >195 >196 >197 >198
920Mr.名無しさん:2007/01/30(火) 17:35:04
【連載中の作品】さらに続き

『T&E』
第一話「二人の出会いは・・・」
>105 >106 >107 >108 >109
第二話「チキン・ヘッド」
>127 >128 >129 >130 >131
第三話『Rain days(1)』
>176 >177 >178 >179 >180 >181 >182 >183
第四話『Rain days(2)』
>261 >262 >263 >264 >265 >266 >267 >268
ここまでの復習的あらすじ>393
第五話『彼岸の景色』
>394 >395 >396 >397 >398 >399 >400 >401 >402 >403
第六話『さなぎの心』
>446 >447 >448 >449 >450 >451 >452 >453
第七話『黄色い日々』
>826 >827 >828 >829 >830 >831 >832 >833 >834 >835

「クラスメイト」
>150
第一話 【邂逅】
>161 >162 >163 >164 >168 >169

名前の無い物語
>788
♯01
>790 >791 >792
♯02‐1 ある雨の日
>807 >808 >809 >810 >811 >812 >813 >814
921Mr.名無しさん:2007/01/30(火) 17:35:46
【連載中の作品】さらにさらに続き

七誌さんの作品1
>55

七誌さん(60氏)の作品2
ボトム
第一話
>60 >64 >65 >69 >90 >91

七誌さんの作品3
守護霊のいる生活(仮)
-1-
>70 >71 >72 >73 >74 >75 >76(>93)
>94 >95 >96 >97 >98 >99(>101)

七誌さんの作品4
>205 >206 >207 >208 >209 >210 >211 >212 >214 >215
>216 >217 >218
922Mr.名無しさん:2007/01/30(火) 17:36:34
【連載中の作品】さらに(ry

七誌さんの作品5
>489 >490

七誌さんの作品6
>598 >599

七誌さんの作品7
>608 >609 >610 >611 >613 >614 >617 >624 >625 >626
>627 >628 >635 >636 >643 >644 >645 >646 >652 >653 >654

七誌さんの作品8
>773

七誌さんの作品?
>445
>477
>482
>679 >680 >681 >682 >683 >684 >685 >686 >687 >688(転載?盗作?)
喪版からの転載>323-325 >670-673
923Mr.名無しさん:2007/01/30(火) 17:40:05
【完結した作品】
497 ◆ToK1blLRAI氏の作品
>498 >499 >500 >503 >504 >505 >509 >510 >511 >515
>516 >517 >518 >520 >521 >525 >526 >527 >529 >530
>531 >532 >534 >535 >536 >543 >544 >545 >546 >550
>551 >552 >553

彼のと彼女の……
>698 >699 >700 >701 >702 >703
あとがき>704

【応援絵】
>17


何かこのスレはかつてないような投下ラッシュだったな。
おかげでまとめるのも力いっぱい大変だったけど・・・(;^ω^)
次スレも楽しみだな。
そんじゃ間違いあったら教えて栗。

ときに、あと数KB余ってるのはどうしよう?
924Mr.名無しさん:2007/01/30(火) 19:29:58
まとめ乙
残りどうしようか兄者
925Mr.名無しさん:2007/01/31(水) 03:45:03
いつもながらまとめ乙
埋め用に軽いの書きたい所だがPCクラッシュして悲しいんだぜ…?
まぁ、ぐだぐだ雑談しつつ埋めるか
926Mr.名無しさん:2007/01/31(水) 14:41:27
うむ、埋めるとしようか弟者。
927Mr.名無しさん:2007/01/31(水) 19:16:21
うむ、弟よ。
928Mr.名無しさん:2007/01/31(水) 19:28:54
月末age
929Mr.名無しさん:2007/02/01(木) 08:40:48
月頭sage
930Mr.名無しさん:2007/02/01(木) 19:21:24
埋め埋め
931Mr.名無しさん:2007/02/01(木) 19:23:41
もう何か萌えAAでも貼って500にしちまうか?w
932Mr.名無しさん:2007/02/01(木) 19:48:58
ムックいいよな〜
933Mr.名無しさん:2007/02/02(金) 08:41:42
ガチャピンいいよな〜
934Mr.名無しさん:2007/02/02(金) 20:47:10
いやガチャピンとかムックのおまけだろ?
ムックのが全然可愛いし
935Mr.名無しさん:2007/02/03(土) 00:25:42
なにぃ!お前知らないのか?
ガチャピンってああ見えて中の人金髪ツインテのツンデレ美少女なんだぜ!?
936Mr.名無しさん:2007/02/03(土) 00:46:03
節分age
937Mr.名無しさん:2007/02/03(土) 00:47:07
なんかわけのわからんage厨がいるようだな・・・
938Mr.名無しさん:2007/02/03(土) 03:31:53
aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa
ggggggggggggggggggggggggggggggggggggggggggggggggggggggggggggggggggg
eeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・と見せてsageる俺は小心者。
939Mr.名無しさん:2007/02/03(土) 09:59:16
スポーツ万能なガチャピン
940Mr.名無しさん:2007/02/03(土) 13:42:37
とにかくムックマンセー!!
941Mr.名無しさん:2007/02/03(土) 14:09:45
あと5kb
942Mr.名無しさん:2007/02/05(月) 00:04:46
このままちまちまと1000まで逝くのか
943Mr.名無しさん:2007/02/05(月) 00:14:15
暖冬age
944Mr.名無しさん:2007/02/05(月) 08:28:19
寒い朝sage
945Mr.名無しさん:2007/02/05(月) 17:46:26
おまいらが好きな(ハマったきっかけ)ツンデレって誰だい?
946Mr.名無しさん:2007/02/05(月) 17:49:40
俺のきっかけはここの初代スレだな
947Mr.名無しさん:2007/02/06(火) 08:31:39
>>946
俺もだね
948Mr.名無しさん:2007/02/07(水) 08:35:22
しょ・・しょうがないわねっ!
保守しといてあげるわよっ!

949Mr.名無しさん:2007/02/07(水) 08:41:25
まとめサイト作ってくれた人が居たから初代スレ分も何作か読んだが「片瀬青葉」が良かったよ
950Mr.名無しさん:2007/02/07(水) 08:48:01
暖冬age
951Mr.名無しさん:2007/02/07(水) 21:22:15
散々言われた繋ぎ屋はちゃんとあれを完結させてくれるのだろうか?
952Mr.名無しさん:2007/02/07(水) 21:38:31
どーだろな
個人的には、どっちでも構わんな
妄想で萌えるためのスレでキャラを殺しちゃあな、来なくていいって考えがあるのもわかるし
とはいえ奴はそれまでの投下実績もあって、続きを見たいって人もいるだろうし

現れたときに変に叩かないことだけ暗黙の前提にしとけばいいよ
953Mr.名無しさん:2007/02/08(木) 18:56:04
そうか、まぁ俺はできれば完結させてほしいけどな
954Mr.名無しさん:2007/02/09(金) 17:34:15
保守しとくか
955Mr.名無しさん:2007/02/10(土) 19:01:58
あと4KBなり
956Mr.名無しさん:2007/02/10(土) 19:03:50
連休age
957Mr.名無しさん:2007/02/11(日) 20:12:17
こんなんで1000まで埋めるのかよ
958Mr.名無しさん:2007/02/11(日) 22:25:54
umeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee!
959Mr.名無しさん:2007/02/11(日) 22:59:58
iPod復活!!
960Mr.名無しさん:2007/02/12(月) 00:05:50
絵かける人いたら。ラノベみたいに
挿絵描いてみたら。
GJの嵐だな
961Mr.名無しさん:2007/02/12(月) 08:27:23
>>960
wktk
962Mr.名無しさん:2007/02/12(月) 09:53:47
前スレとこのスレの始めにはいたんだけどね
今のとこ一人しか確認されてないから新たに描いてくれるなら大歓迎だぜ!
書き手も増えるかもな
963Mr.名無しさん:2007/02/13(火) 20:59:44
うめ?
ほしゅ?
964Mr.名無しさん:2007/02/13(火) 21:42:50
埋めだな
965Mr.名無しさん:2007/02/13(火) 22:16:53
衝突age
966Mr.名無しさん:2007/02/14(水) 08:28:59
例の日保守
967Mr.名無しさん:2007/02/14(水) 13:10:53
梅茶漬け
968Mr.名無しさん
あと3kb・・・