どうせ毒男だしツンデレ小説でも書く 第4話

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1Mr.名無しさん
毒男のためだけのツンデレ小説を書くスレ。
でも萌えられたらツンデレから多少離れてても良し。
絶対にsage進行。

初代
http://etc4.2ch.net/test/read.cgi/male/1110367127/
第2話
http://etc4.2ch.net/test/read.cgi/male/1120669390/
第3話
http://etc4.2ch.net/test/read.cgi/male/1130681506/

ログ置き場
http://dousedokuodasi.hp.infoseek.co.jp/

はてなダイアリー - ツンデレとは
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C4%A5%F3%A5%C7%A5%EC
2ch検索: [ツンデレ]
http://find.2ch.net/?BBS=ALL&TYPE=TITLE&STR=%A5%C4%A5%F3%A5%C7%A5%EC&COUNT=50

職人さん方、いつもクオリティの高い作品ありがとうございます。
2Mr.名無しさん:2006/02/19(日) 12:33:11
か、勘違いしないでよね&
31:2006/02/19(日) 12:34:30
前スレが容量オーバーになったんで立てときました
ツンデレ好きの同志なら誘導無しでも辿り着く…ハズ
4Mr.名無しさん:2006/02/19(日) 12:36:09
ごめん、前スレで容量オーバーさせたの俺・・・
立てようと努力したんだがホストが……ホストがぁぁ!!

ごめんなさい、以後気をつけます・・・
5田中 ◆SD897wuJPY :2006/02/19(日) 12:37:17
>>1
な、何よ!
スレ立てたからって何も出ないんだからね!
でも…嬉しかった。
6Mr.名無しさん:2006/02/19(日) 12:39:04
正直
一握りの職人が張り切りすぎて
うっかり拙いものを書き込むと
叩かれそうで怖い
そんな雰囲気になっちゃってる
7Mr.名無しさん:2006/02/19(日) 12:42:26
ええと、前スレ◆yVoA9C7lzI が俺なんだけど、続きいる?
8Mr.名無しさん:2006/02/19(日) 12:44:03
キボンヌ〜ん
9過疎時の繋ぎ屋◇yVoA9C7lzI :2006/02/19(日) 12:46:15
このスレからコテはこれで
続きっても、これだけで終わりなんだけど
じゃ、前スレ922の続きどぞ

「……円香さん……これは、円香さんなんですか?」
 舞い降りた桜の花びら。それを一枚掴み、ギュッと握り締めた。
「瀬川さん……。お姉ちゃん、最後まで笑っていたと思いますか?」
 少し、考えた。
 そんなの決まってるだろ。
「笑ってたに決まってるさ。俺達だってそうだろ?」
「……はいっ!」
 踵を返し、丘並木を後にした。
 彼方と手をつなぎ、満開の桜の花を背中で感じ。
 夏が。終わった。





 ていうか、考えてみたら。
 この夏休み、円香さんに付きっ切りだったから宿題なにもやってないんだが……。

              つづく
10Mr.名無しさん:2006/02/19(日) 12:46:42
ツンデレラ、ツンデレラ
ツンデレハウスの大冒険
11過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/19(日) 12:50:22
ごめ、酉を変なふうにミスった
>>9は偽じゃないです
12Mr.名無しさん:2006/02/19(日) 13:37:29
>>1 乙ンデレ
13Mr.名無しさん:2006/02/19(日) 13:38:26
たどりついた。一本終わりでもう一本もあと一回って
また地味に保守を繰り返しつつ続きを待つ日々ということで

しばらくしたら春休みで人増えるかも
14Mr.名無しさん:2006/02/19(日) 13:41:03
ツンデレってどうすればいいの?書いてみたいけど分からない
15Mr.名無しさん:2006/02/19(日) 14:00:25
お前の愛するツンデレを心に秘め、キーボードの上に手を置けば、気が付いたら完成している。
16Mr.名無しさん:2006/02/19(日) 14:01:07
>>14
前スレ嫁
てか、sageろ
17Mr.名無しさん:2006/02/19(日) 14:01:14
先ずsageる所から練習しろ。
18まとめてた人:2006/02/19(日) 16:02:12
>>9
激しくGJ!
いや、楽しませてもらったよ。


で、前スレ500逝っちゃったのか・・
不覚だ。
Life life とか 枯れない花 とか
こりゃまとめがいがあるなーなんて思いながら読んでたんだが・・・

まとめどうする?
19Mr.名無しさん:2006/02/19(日) 22:22:15
スレの最後のほうはもうしょうがないんじゃないの
別サイトに作品別に転載するとか、そういう面倒なことしない限りは
20過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/19(日) 22:31:35
とりあえず、最終話です
>>9の続き


 雨の中、学校に向けて足を動かしていた。
 ビニール傘にぽつりぽつりと雨が落ち、そうして地面へと吸い込まれていく。
 高校三年生になり、もう三ヶ月が過ぎようとしていた。
 梅雨はそろそろ終わりだ。夏は近い。
 大気は、もう夏の匂いだった。



   Life life 最終話



 いつも通り学校に向かう。
 通いなれた通学路も、あと歩くのは半年くらいだと思うと少しだけ寂しく感じる。
 去年のまま、何も変わらず一年を過ごしていたら。きっとこんな風に思わなかったんだろう。
 基本的には俺の生活なんて変わってない。
 午前七時三十分に目覚まし時計にたたき起こされ、買い置きの菓子パンで朝食を済まし、ボロッちいローファーに足を突っ込んで、学校に向かう。
 学校が終わればコンビニに寄ってコンビニ弁当を買い、夕食をそれで済まして適当な時間に就寝。
 基本的には何も変わっていない。
 そりゃ、一年なんて間に生活がガラリと変わることなんて滅多に無いと思う。
 進学したとか、就職したとかそういう特別な状況を除けば。
 まあでも、やっぱり多少の違いはあるんだけど。
21過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/19(日) 22:32:05
 学校に到着し、いつも通りボロッちいローファーを下駄箱に放り投げ、上履きに履き替える。
 ぺち、ぺち、とかかとを踏んだ上履きから音が鳴る。
 今日はどうやって一日を過ごそうか。
 自席で惰眠を貪ろうか。それとも、外の水溜りでも眺めていようか。
 結局、その辺の過ごし方は変わっていないんだな。
 一年前と比べて、変わったこと。
 彼方と付き合い始めたこと。
 たまに実家に帰り、父親との仲直りをしようと努力はしていること。
 ああ、あと円香さんの月命日には墓参りに行くようになったな。
 他には……。
 思いながら、教室の扉を空ける。
 教室に入ると、クラスの面々が俺に視線を向けた。
 そしてすぐに
「おーっす、志紀」
「おはよう、瀬川君」
「よお、瀬川」
 挨拶をしてくるクラスメイト達に、俺も挨拶を返した。
「おはよ」
 他には、友達が出来たこと。
 これが、一番一年前と変わったことなのかもしれない。


 この雨が上がれば、夏がやってくる。
 昨日の夜、天気予報で言っていたことだ。
 この雨が上がれば……また、あの季節がやってくる。
 俺と、彼方と、そして円香さんと。
 三人の、永遠の思い出の季節が。
 空は雨模様。
 しかし、ふんだんに夏の色を含んでいた。

          〜Fin〜
22過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/19(日) 22:38:42
さて、ようやく終わりました
ツンデレとか普通に関係なくなってしまいました。ごめん
ちょっと最後のほうとか先を急ぎすぎたって言うか、展開が速かったのでわかりにくいと思います
ということで、解説みたいなのを

まず、円香さんの未練
これは円香さん本人には未練は無く、円香さんを現世に縛っていたのは彼方の円香さんに頼る思いが原因です
志紀という新しい頼るべき相手を見つけ、彼方が円香さんに抱いていた頼る気持ちが薄れ、円香さん昇天
最後のほうで円香さんの様子がおかしかったのは、それの所為で存在が稀有になり、意識を保つことが難しくなっていたからってことで
あと、彼方の両親と再会しているとき
実はあの時、円香さんはすぐ側にいました
が、先も語ったように存在が稀有になってしまい、波長が合っているはずの志紀でさえも存在を確認できなくなってしまい、様子を見て円香さんは全てに気付き、自分には時間が無いということに気付きましたよーってことで

それじゃ、しばらく名無しに戻ります
また過疎時に会いましょう。では
23Mr.名無しさん:2006/02/20(月) 03:07:52
明日本命の入試だけど。爆泣きした。
こんなに切ない話読んだのは電影少女以来。
本当にGJ。ただ正直、最後円香さんには行って欲しくなかった。
24Mr.名無しさん:2006/02/20(月) 08:30:52
スレ立ってたんだ>>1乙!

そして>>22グッジョォォォブ!
俺の心に永久保存した!
25過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/20(月) 21:16:48
ていうか、今も過疎ってるのか・・・
明日で卒業して大学の入学式まで暇だし、近日中に繋ぎの作品投下するよ
あくまで他の職人さんが作品投下するまでの繋ぎだから、あんまり期待しないでよねっ!
んじゃ、プロット書いてくる
26Mr.名無しさん:2006/02/20(月) 21:24:19
上智の予感
27Mr.名無しさん:2006/02/20(月) 23:04:10
上智合格かよwwメデテェなオイwwww
28Mr.名無しさん:2006/02/20(月) 23:22:11
>>25
期待

>>26
上智って何?
29Mr.名無しさん:2006/02/20(月) 23:25:37
>>25
そんなに自分の使命みたいに思わなくてもいいぞ。
このスレは、盛り上がるときは盛り上がるが静かなときは驚くほどひっそりとしてるからな。
マターリでいいんだマターリで。
だがしかし、新作には期待してるw
30Mr.名無しさん:2006/02/21(火) 01:24:25
工房だったのか…
あまり年言うのは賛成出来ないぞ
毒板は些細な事でチャチ入れるヤツ多いからな
ここは↑にもあるがかなりマターリしてるから
平気だが

まぁあれだ、ハアハアさせてくれればいいんだよ
31Mr.名無しさん:2006/02/21(火) 02:06:18
>>30の言う通りだと思う。マターリ万歳
32ツンデレ十夜:2006/02/21(火) 15:50:31
第一話
こんなツンデレを見た。
家庭科の授業で、意図的に材料を多く用意し、大量のクッキーを作った。
担任は彼女に注意を促す。
「なんで言われた量で出来ないの?」
「初めて作るクッキーなので弟に食べさせてあげたかったので」
彼女はもっともらしい言い訳を担任に述べた。

放課後、彼女は校門から少し離れた電信柱の影で身を潜めていた。
サッカー部員の一人が彼女の元に近づいてきた。
タイミングよく、彼女は電信柱の影から身を投げ出す。
「キャッ!!」
「だ、大丈夫か?」
「気をつけてよ!危ないじゃない」
彼女はおもむろにカバンを開け、クッキーを取り出す。
「せっかく弟に作ったクッキーが割れちゃったじゃない!!」
「わ、悪いな・・・」
「これじゃあげれないから、アンタにあげるわ」
無作為にクッキーを押し付ける彼女。
「いや、でも・・・」
「い、いいから早く食べなさいよ!!!」
サッカー部員は勢いに負け、クッキーを一口、口にする。
「お、美味いじゃん」
「そ、そんな事言って・・ど、どうせご機嫌取ろうとしてるんでしょ?」
「お世辞じゃいって、マジ美味いよ。もっと食いてーな」
ポッと赤くなる顔を隠すように、彼女はサッカー部員に背を向ける。
「あ、アンタがそんなに言うなら、気が向いた時、作ってあげてもいいけど?」
「じゃあ、また頼むな!!」
サッカー部員はそう言って帰っていった。
彼女はサッカー部員の背中が見えなくなった頃、
電信柱の影で自分のカバンをバンバン叩いていた。
33ツンデレ十夜:2006/02/21(火) 15:51:12
ごめんなさい・・・
sage忘れました
以後、気をつけます
34ツンデレ十夜:2006/02/21(火) 22:04:12
第二話
こんなツンデレを見た。
文化祭の準備で買い物に来ている男と女。
小売店で色々な小物を物色していた。
「何か、これってデートみたいだな」
「バカじゃない?くだらない事言ってないでさっさと歩きなさいよ」
男の言葉を軽く受け流す女。

店を出て、クレープ屋の前に差し掛かる。
「なぁ、食べていかないか?」
「アンタ、男のクセに甘い物好きなの?」
「いいじゃんか、すみません、チョコバナナクレープとマロンクレープを」
出来上がったクレープを男は両の手に持っている。
「どっちがいい?」
「私はマロンクレープ」
ベンチに並んで腰掛け、クレープを食べる二人。
「そっちはどんな味?」
男はサッと女の食べかけ部をほお張る。
「な、な、何勝手に人の食べてるのよ!!」
「俺の金だからいいいじゃん、それより、ほら」
そう言って男は自分のクレープを女に差し出す。
 (ちょ、ちょっと・・こ、これって間接キ、キ、キスじゃないの!!)
一瞬ためらった女は男のクレープを一口、口にした。
「こっちも美味いだろ?」
「そ、そうかしら・・た、大した事ないわね・・・」
「は?大した事ない?何が?」
間接キスが大した事ないと思った女は、その意図が伝わらなかった事が
恥ずかしくなり、顔を真っ赤にする。
「う、うるさい!!!この鈍感!!」
そう言うと女は、男の足の甲を思いっきり踏みつけた。
35ツンデレ十夜:2006/02/21(火) 22:05:08
第三話
こんなツンデレを見た。
映画のチケットを2枚、手にしている女。
男は黙ってその女の前に立っている。
「新聞屋から貰ったの」
「そうなんだ」
「見たいと思わない?」
「別に」
「素直になりなさいよ、見たいんでしょ?」
「俺、恋愛物好きじゃないし」
「たまに変わったの見た方がいいわよ、仕方ないからワタシが一緒に見てあげる」
「勝手に決めるな」
「じゃあ、土曜日のお昼にね」
こうして二人は映画を見に行った。

「泣くなって」
「な、泣いてなんてないから・・・」
恋人が死んでしまうシーンでボロボロ涙を流す女。
映画が終わり、男と女は映画館を出る。
「た、たいした事なかったわね」
「オマエ泣いてたじゃんか」
「そ、それは・・・」
「でも、今日来てよかったよ」
「何が?」
「オマエの意外な一面が見れてさ」
女は男の背中を自分の手のひらで強く叩く。
「か、からかうのもいい加減にしてよ!!!」
そう言いながら、女は自分のオデコを男の背中に押し当てていた。
36Mr.名無しさん:2006/02/21(火) 22:06:38
上手いな・・・
37Mr.名無しさん:2006/02/22(水) 05:44:26
うん。上手い。
読み終った後に
清涼感を感じるな
38Mr.名無しさん:2006/02/22(水) 08:07:49
書籍化決定!!
39Mr.名無しさん:2006/02/22(水) 17:49:44
今までとは違ったスタイルだな
気軽に読める短編みたいな感じでいい

>>38
それはいいからまず落ち着け
話はそれからだ
40ツンデレ十夜 作者:2006/02/22(水) 20:01:16
このスタイルを思いついたのはサクっと読めるし
新作までのつなぎ&保守がわりにもなるんじゃね?と
思った。

ネタ思いついたらサクっと書いて投下するし、
新作等の連載期間に入ったら、地下に潜るし。

そんなスタンスなんで、過度な期待はしないように。
まぁ、次のネタがなーんも思い浮かばないんだけどね。
最低でも10話までは頑張る。
41Mr.名無しさん:2006/02/22(水) 20:04:08
>>40

期待してる
42Mr.名無しさん:2006/02/22(水) 20:11:42
( ^ω^)乙!ガンバだお
43Mr.名無しさん:2006/02/22(水) 20:17:07
乙!!結構なツンデレでした
44過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/22(水) 21:49:34
繋ぎ作品の一話ができたから投下しようと思ったが、今は過疎じゃないっぽいね
次の過疎まで暖めときます

>>40
こういうの書ける人はうらやましい
俺短編かけないからな……
GJです!次を楽しみにwktk
45Mr.名無しさん:2006/02/23(木) 02:05:42
上智昨年卒業したけどなんか質問ある?
46Mr.名無しさん:2006/02/23(木) 13:30:26
○智には、何とかエリートサラリーマンに
寄生しようと必死な肉便器女子大生がいるって
本当ですか?
47Mr.名無しさん:2006/02/23(木) 23:02:36
>>46
スレ違いな事でageんな!!!
>>1見てから来い!!!
出来なきゃ半年ROMってろ!!!
48過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/23(木) 23:06:54
俺フィルターにより現在過疎状態にあると判断。ちょっと違うかもしれないが
ということで新作投下。今回は幽霊とかそういうのはまったく絡んでこない
一応俺なりにツンデレを勉強した後に書いたから、前作より少しはツンデレに近づいたはず。たぶんではあるけど
じゃ、次のレスから新作投下していきます
49過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/23(木) 23:07:54
 夏の日中に自転車は地獄だと思う。それも山の頂上まで駆け上がるとあれば、それがより一層際立つというものだ。
 照りつける太陽の熱に地面は熱され、アスファルトからユラユラと蜃気楼が立ち上っている。
 見上げた先に真っ白な建物。俺が住んでいる町唯一の総合病院。
 土地が安いからという理由なのか、標高100メートルくらいの山というか……丘の頂上に立っている。
 周囲に遮蔽物は少なく、最上階からはきっと町が一望できるんだろう。入院はおろか、あの病院に入ったことすらない健康体だからよくわからないのだが。
 で、その健康体の俺がなんで病院に向かっているのかと言うと、自転車の籠にぶち込まれたボストンバックがヒント。
 中味は生活用品一式。歯ブラシとか着替えとかタオルとか。
 そして俺は健康体と言うヒントを織り交ぜれば、答えなんて簡単に見えてくるだろう。
 事の始まりは昨日の夜のこと。
 自宅にかかって来た電話が全ての始まりだった。
『もしもし、可愛い可愛い貴方のアイドル、ひよちゃんでーす』
 受話器を取ってすぐ、聞こえてきたのはそんな声。
 こんなピントがずれすぎて全面が摺りガラス越しに撮影した写真のような事を言ってくる相手なんて、たった一人しかいない。
 母親の妹に当たる日和さん、通称『叔母さん』
 叔母さん? そう聞き返すと、すぐに声が帰ってくる。
50Mr.名無しさん:2006/02/23(木) 23:08:11
>>48
早く!早く!!!
最近ツンデレ不足だ!!!!
51過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/23(木) 23:08:24
『叔母さんっていうなー!! それはそうとひろちゃん、明日暇?』
 ひろちゃん。昔から呼ばれているあだ名だが……正直止めてくれと思う。
 俺ももう子供じゃないし、ちゃんとした弘樹って名前があるんだから。
 なんてことをいっても、きっと叔母さんは聞いてくれないんだろうな。
 暇ですけど、なんでですか?
 そう答えると、またすぐに返事が帰ってくる。
『あたしちょーっと腰痛めちゃって入院することになったから、明日家から生活用品一式を205号室に持ってきて。ああ、もちろん場所は市民病院ね』
 は? ちょ、ちょっと待ってください。と言う前に電話が切られてしまう。
 かけ直そうにも家の電話だったから発信先なんてわからないし、どうせあっちだって出る気は無いだろう。
 母親に押し付けようと思ったのだが、父親がいないので母は仕事。明日は平日でもちろん仕事があるわけで。
 結局、俺がこうやって自転車を漕ぐ羽目になってしまったわけだ。
52過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/23(木) 23:08:55
 ようやく病院に到着するが、俺の悪戯心が暴れだす。
 折角の夏休み初日。それの半分近くを消費させられた罪は重いぜ叔母さん!
 とりあえず玄関口で受付をしていた人に部屋の大まかな場所だけ聞き、そのままエレベーターなり階段なりを使って病室に行くと思わせておいて、玄関の外に出る。
 市民病院なんていっても、それほど大きくは無い。田舎の総合病院なんてそんなもんだと思う。
 病院というよりも、綺麗に手入れされた学校。そんな感じの印象が大きい。
 空に浮かぶ入道雲みたいな白色が太陽に反射されて目がチカチカする。
 受付のお姉さんに聞いたとおり、病棟の西側に向かって歩く。入院患者用の散歩道、そんな道が病院の周りを取り囲むように続いている。
 その途中。西側に向けられた窓の前で足を止める。
 左から順に1,2,3……と号室が並んでいるといっていたので、こちらから見れば右から1,2,3の順番だろう。
 それを考えた上で、205号室を捜索。あのカーテンが完璧に閉じられた部屋がそうなのだろう。
 周囲を見渡すと、おあつらえ向きのイチョウの木。中々大きく、その枝はカーテンが閉じられた病室に向かって一直線に伸びている。
 子供から木登りは得意だった。木の突起部分を手で探り、スルスルとイチョウを登っていく。片手には生活用品一式を入れたバッグを持っているが、登りやすい木に分類されるこのイチョウなら片手と両足で十分だ。
 部屋へ伸びる枝を伝い、窓に鍵がかかっていないことを確認すると、足に力をこめる。
 狙うは昨年の体育で嫌と言うほど仕込まれた前回り受身。土産も買ってきていないし、これくらいのサプライズが手土産には丁度いいだろう。
 これの所為で悪化とかしたら責任取れないが。
 よーし、行くぞぉー。さーん、にー、いーち……。
 病室に飛び込み、これ一本で体育の成績5を獲得したと言っても過言ではない伝説的な前回り受身を華麗に決めてやる。
 パシーン!!
53過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/23(木) 23:09:27
 床を叩く音が病室に響き、ビクッと体を震わせた叔母さん……にはあと二十年ほど早い少女が、大きな目を見開いてさらに大きくしてこちらを見つめていた。
 お互い、言葉を発することができず膠着状態が続き、そして恐る恐る口を開いたのは少女。
「痴漢?」
「ち、違う!」
「変態?」
「それも違う!!」
 少女の右手が時計に伸びる。左手はキラリと光る刃物……って、シャレになってませんよ先生っ!!
 それ果物ナイフですよっ! それで一体何をやるつもりなんですかっ!?
「ちょ、ちょっと落ち着いてくれ! 俺は叔母さんのお見舞いに来たどこにでもいる学生でして、ここが205号室だと確信して飛び込んでみたら女の子がいてあら不思議の国のアリスなんですよっ! 決して寝技を仕掛けようとかそんなことは考えてなくてですねっ!!」
 ぶんっ!
 爽快な風切り音が鳴り響き、俺の顔スレスレに目覚まし時計が通り抜ける。
 壁に叩きつけられ、可愛い女の子向けの目覚まし時計は無残にもバラバラ死体となって床に転がっていく。
 どうやら寝技が誤解されたらしい。クラスの女子と同じノリでやってしまったのが問題だった。
「タノミマスカラキイテクダサーイッ!! ワタシ205ゴウシツイキタイ!」
 大きなジェスチャーと何故か外人っぽいカタコトで敵意が無いことをアピールし、果物ナイフの飛来を事前に防ぐ。
 果物ナイフなんて飛来したら、次の日の朝には『あら同じ病棟のご近所さんですね。昨日はお騒がせしましたー、テヘッ☆』なんて展開になりかねない。
54過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/23(木) 23:09:57
 苦汁を飲み続けてようやくたどり着いた夏休みを、血の紅なんかで染めてたまるか。
「ここは206号室!!」
「でも、左から五番目だろ、ここ」
「この病院に4が付く号室が無いのっ!!」
 オーケー、把握した。つまり日本人のつまらない語呂合わせから、4は死を連想させるってことで4号室は存在しないってことだな。
 ていうか、この状態でナースコールとか使われたら洒落にならない。
 この少女のご近所さんではなく、どこぞの窃盗犯とご近所さんになってしまう可能性だってありうるわけだ。
 少女との距離を下手に詰めないよう、できる限り距離を保ったまま病室の扉へそろそろと向かう。
 こつん、と目覚まし時計の破片が足にあたると、お互いビクッと体をすくませる。
 ようやく扉にたどり着き、そうっと扉を開けて、そしてそうっと扉を閉める。
 病室の外に出た後、大きくため息をついた。掲げられたプレートを見ると、確かに206号室と表記されていた。その隣には205号室。そしてその隣には、確かに203号室の文字。
 どうやら、同じ病棟で生活するご近所さんにはならなくて済んだらしい。
55過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/23(木) 23:10:50
 そんな紆余曲折あり命の危険すらも感じたが、ようやく目的の場所である205号室に到着する。
 掲げられたプレートだって何回も確認した。扉に貼り付けられた真新しいネームプレートだって、穴が開いてしまいそうなくらいに凝視した。
 ていうか、ネームプレートにまで『みんなのアイドルひよちゃんのへや』なんて事書くな、40前半の中年女性もとい叔母さん。
 そうしてたどり着いた。我らが理想のユートピア……とは程遠い諸悪の根源の生息地。
 もう今更前回り受身なんかする気になれないし、ごく普通に自然を装ってというか、ごく自然に病室の扉を開ける。
 部屋に入って一番に目に入ったのは、綺麗なグラスに注がれた、海を連想させるような青透明の液体。切込みが入った数種類のフルーツが飲み口に突き刺さっている。
 窓は全開、カーテンも全開。明るすぎて目が痛くなってしまいそうな病室。
 そしてベッドにて、サングラスを装着しつつこれでもかというくらいにくつろぐ叔母さん……。
 入院と言うより、バカンスでも楽しみに来たのかと疑問に思ってしまう。
「おーう、お見舞いご苦労。なんか隣の病室が騒がしかったけど、何でか知らない?」
 これだけ充実したバカンスを楽しんでいるくせに、入院生活は暇なのだろうか。
 ほんの少しでもいつもと違う様子があれば食いついてくるのだろう。目はまるで子供のようにワクワクテカテカしている。
56過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/23(木) 23:11:25
「全ての始まりは受身でした」
 ああ……やっぱり俺と叔母さんは血が繋がっているんだなぁ……。
 たぶん、俺も入院なんてしたらこうやってバカンス気分で入院生活を満喫することだろう。
 叔母さんと会ったのは、かれこれ一ヶ月ぶりだった。
 父さんと母さんが離婚して直後は何かと世話をやいてくれたのだが、最近は俺が母親のいない生活になれたこともあり、母親も仕事になれたこともあり、関係は一般的な親戚関係と言っても間違いはないだろう。
 適当に世間話を続け、一時間くらいした後に病室を出る。
 病室を出てそういえばと思い立ち、先ほど間違えて突入してしまった少女の部屋の前に立つ。
 扉に貼り付けられたネームプレート。先ほど見た叔母さんのそれとは違い、古ぼけていて名前もかすれ、どれだけ長い期間をこの部屋で過ごしているのかを簡単に悟ることが出来た。
 そのネームプレートには、女の子ということを主張した、可愛らしい丸文字で『まさきひな』と書かれていた。
57過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/23(木) 23:11:58
 次の日、夏休みと言っても別にやることもないし、運動不足の解消という意味も込めて今日も叔母さんのお見舞いに。
「おー、土産とは気が利くじゃない」
 そう言って奪われかけたのは、昨日間違えて突入した病室の主『まさきひな』へ送るプレゼント。
 というか、俺の所為で壊れてしまった目覚まし時計の代わりの品。選びに選び抜いて購入してきた、2000円台に乗った超高級目覚まし時計。
「袋のサイズからすると、ビールとかじゃなさそうだし……」
 そんな内心を悟ってくれる様子も無く、目を輝かせて目覚まし時計が入ったビニール袋を見つめる。
「いや別に一升瓶なんてこともないわな……一滴一滴しっかりと確認されて溜まった少数精鋭たちがつまっている可能性だって……」
「あの、これ土産じゃないですよ。ていうか、病院に堂々と酒なんて持ってくるわけないじゃないですか。いくら悪いのが腰で無駄に個室使っているなんていっても、病室の中でたった一人酒を飲む患者なんてありえないじゃないですか」
「じゃあ、二人で楽しんでってことを考慮すると……」
「俺は昼時に来ることが多いし、今度はピザでも持ってきます?」
「おー、いいねピザ。ま、あたしはビールでもいいんだけど」
「ピザならコーラでも飲みつつ楽しく食べれますからね」
「そうだねぇ。ま、あたしはビールでもコーラでもどっちでもいいんだけどね」
「ピザキャップの新作ピザが発売してるらしいし、辛くて美味いらしいんですよ。今度買ってきますね」
「いいねぇいいねぇ。あたしはピザでもビールでもビールでも、どっちでもいいんだよ? ほんと」
 ……今度来る時はビールを持ってきてやろう。
 腰が悪いだけで中味のほうは悪いところなんてないわけだし。
 クーラーボックスにでも入れて持ってこれば大丈夫だろう。
58過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/23(木) 23:12:32
 205号室を出て、隣の206号室へ向かう。
 扉の前に立ち、数度の深呼吸。間違いなく嫌われている相手に自分から会いに行くなんて緊張する。今日も上手く立ち回り、ここで生活している人たちのご近所さんにならずに住むだろうか。
 でもこの目覚まし時計を渡さずにそのまま帰っても意味無いし、時計が無ければ日常生活に支障をきたすことは間違いない。壊れた原因は俺にあるわけだし、このまま放置していても目覚めが悪いってもんだ。
 恐る恐る、ドアに手の甲を軽くあてる。
「……はい」
 病室の中から聞こえてきたのは、昨日の少女とはかけ離れたような小さな声。
 触れるだけで壊れてしまいそうな声に、少しだけ動揺する。
 意を決して扉を開けると、ベッドに少女が上半身を起き上がらせて座っていた。
 腰どころか膝くらいにまで伸びた髪の毛を、今日の空にも負けないくらいに青いリボンで二つに束ねていた。
 青色が好きなのか、薄い青地に白のラインが二本入っているゆったりしたパジャマに身を包む少女は、間違いなく『まさきひな』
「き、昨日のっ! な、何しに来たのよっ!?」
 うわー、予想通りというかなんというか、随分と警戒されてるもんだ。
 表面に押し出された警戒を緩めることなく、威嚇する仔猫のように大きな目をこちらに向ける。
 いち早くこちらには敵意が無いということをアピールしないと、この部屋が鮮血に染まりかねない。
「これ、プレゼントっつーか、昨日のお詫び。ほら、時計壊しちゃっただろ。だから代わり買ってきた」
 そう言って右手にぶら下げたビニール袋を持ち上げる。
 一歩足を踏み出すと、彼女の表情が明らかにこわばる。やはり近づくのは危険らしい。
「じゃ、じゃあここに置いとくから」
 備え付けのパイプ椅子の上にビニール袋を置こうとした時、少女がこちらに手を伸ばしていることに気付く。
「ん」
 ……これは、手渡していいってことだよな。
59過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/23(木) 23:13:04
 念のため彼女の両手を確認する。手に刃物の類は握られていない。暗器でも持っていない限り、俺から鮮血が飛ぶことはないだろう。
 両者の警戒で、ただ目覚まし時計を渡すという行為がまるで爆発物を手渡す爆発物処理班のように、そろそろと行われる。
「開けていい?」
「あ、ああ、どうぞ」
 目をそらして不機嫌そうにガサガサと包みを開く少女。
 悩みに悩んだ末選んだ『そんな餌じゃ釣られないクマー』目覚まし時計。
 釣り針が口に刺さり引っ張られているのに笑顔を崩さないくまのキャラクターが描かれていて、実に可愛らしい一品だ。
 アラームだって最高。幾つかのパターンの話が始まり、その話が一段落つくと時計に描かれたクマがピカピカと発光し『そんな餌じゃ釣られないクマー!』。面白いように地面を滑っていくクマを見ると心が和む。
「かわいくない」
 なっ!?
 いつでもどこでもハチミツハチミツと意地汚くてブタと仲がいい偽善な黄色いクマなんかより数段可愛いのにっ!
「ぜんっぜん、かわいくない」
 わざとだろうか。明らかに音が大きいため息をついてくれやがる。『キミには失望したよ』感がふんだんに盛り込まれている。
 そうして厳選された目覚まし時計は、テーブルの上にぞんざいな扱いで放置されることに。
「じゃあ、もう渡したから。俺帰るな」
「さっさと帰れっ!!」
 と、背後からみかんが飛来する。
 後頭部にぶつけられたみかんを手に取り
「おお、俺にくれるのか。サンキューな」
 そんなことを言って、微笑んでみせる。きっと歯がキラリと輝いたに違いない。
「て、ていうかあんたほんとにこれ渡し来ただけなの? ほ、他に用事とか無いわけっ!?」
「引き止めてくれるな、男には行かなければならない時だってあるんだ」
「ひ、引き止めてなんか無いんだからっ!! 勝手に勘違いするなぁー!!」
「へいへい、そりゃ申し訳なかった。じゃーな」
 こうして、第二次206号室大戦は幕を下ろした。
60過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/23(木) 23:13:45
 気分爽快で病院を出る。
 何気なく病院の周囲を回る散歩道を歩いていると、昨日登ったイチョウの木が見えた。
 ふと病室を見上げてみると、叔母さんの部屋はやっぱり窓もカーテンも全開。『まさきひな』の部屋は、やっぱりカーテンで遮られていた。


          つづく
61過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/23(木) 23:17:57
で、前よりツンデレに近づいたと信じたい
一人称視点のため姓名が表記されていないので、こっちのほうで軽く説明しとく


タイトル 空に光る

主人公  相楽弘樹(さがらひろき)
ヒロイン まさきひな(漢字は次回発表)
叔母さん 石塚日和(いしづかひより)

あと登場予定として、看護婦さんとかヒロインの姉とかその辺
他には主人公の友達として、前書いた話の主人公、瀬川志紀さん(18)登場
単に新しく登場人物を考えるのが面倒だっただけだけど
62Mr.名無しさん:2006/02/23(木) 23:21:01
>>61
乙。
まあそんなにツンデレなってないかもってびくびくしなくていいって。
萌えられればそれでいいんだから。
俺は過疎の繋ぎなんてもったいないくらいにおまいに期待してるんだ。
今回も良作の悪寒。

(0゚・∀・)  ワクワク テカテカ
63Mr.名無しさん:2006/02/24(金) 01:09:01
普通に過疎時じゃなくてもOKだと思う…が、作者にまかせるよ!ってか作者の作品だしね(^^;

ワクテカで続き待っとるよ
64Mr.名無しさん:2006/02/24(金) 01:09:44
良 ツ ン デ レ の 予 感 !
65過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/24(金) 19:50:08
続き出来たんだけど、読み直していて思った
今回はギャグに走ってる
さって、そんじゃ次のレスから>>60の続きどぞ
66過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/24(金) 19:50:44
   空に光る 二話


 両手で抱えた荷物は、季節的な問題も手伝ってかやたらと重い。
 やっとのことで山道を登り院内に入ると、観測史上稀に見る猛暑と噂の摂氏37度で汗だくになった体を冷たく冷やしていった。
 きっとこれは全人類共通だと思うが、この時ほど文明の発展に感謝する瞬間は無いだろう。
 病院関係者に奇怪な目を向けられながらも、どうにか二階の205号室に到着する。
「今日も来たのか、毎日ご苦労だな。ところで、その荷物はなんだ? あたしの記憶だと、ひろちゃんは部活に入ってなかったはずだけど?」
 人の苦労をなんだと思ってくれやがるこのババア。痛めた腰をさらに痛めて昇天してしまえ。
 是非とも昇天する直前には『我が人生、一片の悔い無し!』と叫んで欲しいものだ。
 ああでも昇天させるには最低でもボーナスが20回継続しないと……。北斗揃いのオーラレインボーでも中々昇天してくれないしなぁ、あの人。すぐ剛掌波とか打つし。
 どこぞの世紀末覇者と理論を同じにすると、この叔母さんが昇天するには並大抵の苦労では済まないようだ。 
「人が折角持ってきてあげたっていうのに」
 言いながらベッドの上にクーラーボックスを置き、蓋を開いてみせる。
 中には総勢5個にはなろうかという熱さまアイス枕と数えるのも面倒くさくなってしまいそうな数の保冷剤にやさしく包まれた缶ビール。ちなみに本生。
「おおっ、ビール!!」
 夢にまで見たアルコールとの対面に、叔母さんは喜びの色を隠す素振りさえ見せない。
 痛めた腰を忘れてベッドの上で踊り始め
「こ、腰がっ」
 へなへなとベッドに横たわる。アホだこの人。
67過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/24(金) 19:51:19
 ついでに買ってきたピザをメインに、時間も丁度良かったので昼食にする。叔母さんはビールばかり飲んでいたが。
 ピザの空箱とビールの空き缶はちゃんと片付けるようにと念を押し、今日は帰ることにする。
 廊下に出た直後。
「あっ!?」
 聞こえた声。
 昨日とはまた違う薄ピンク色のゆったりしたパジャマに身を包み、今日は髪の毛を縛っていない『まさきひな』が俺の目前に。
 自分の病室に戻るところなのだろうか。俺の顔を見た瞬間、容赦なく顔をしかめてくれやがる。
 でもボクは、いくら嫌われていると知っていても無視するなんて子供な対応はしません。
「よお、元気か?」
 社交辞令、社交辞令っと。
「普通。いつも通り。ていうか、入院患者に元気かなんて聞くのもどうかしてるわね」
 前言撤回。大人なボクは今、激しく後悔しておりますよ。
 こいつ、なんて可愛くないんだ。
「そうか、そりゃよかった。いくら咄嗟にナイフ構えるような危険人物でも、元気なのはいいことだしな」
「そうね、ありがと。いきなり他人の部屋に飛び込んで前回り受身をする頭が悪い人が考えるくらいには元気だし」
 こいつ……俺とやりあうつもりか? 言っておくが、罵声の言い合いなら負ける気がしないぜ。
 次なる罵声を、俺のIQ120弱の頭脳をフル回転させて考える。
 次の言葉が、宣戦布告になるだろう。そしてその決定的なワードを今ここで……
「おーい、ひなちゃーん」
 宣戦布告は白衣の天使による乱入で延期となった。
 ぱたぱたとかけてくる看護婦さんは、俺達の前で立ち止まると、俺に向かって軽く会釈をした後に『まさきひな』に向きなおす。
「晴香さん。どうかしましたか?」
 俺と話す時とは明らかに違う、おっとりとした声音。ここまで変わるものなのか……。
 うーん、女って怖い。
68過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/24(金) 19:51:55
「次のひまわり会ね、ちゃんと出し物考えておいてね。ひなちゃんの番だから」
「……あ、そっか」
 闘犬の如き剣幕を見せていた少女がしゅんと音を立てるように小さくなる。
 まさきひな曰くの晴香さんは俺に再び向きなおしてニヤーっと笑うと……
「彼氏さんと一緒のほうがいいよね? そういう風に時間を取っておくから。じゃ、私は回診行って来るねー」
 ニッコリと俺に向かって笑った後に、パタパタとかけていく。
「なっ……!?」
 あっけに取られる我が宿敵。
 ここが機と見た俺は、先ほどの言葉を最大限に利用して追い討ちをかけることにする。
「へー、お前に彼氏なんかいるのか。それにしても、もの凄い趣味が悪い男だな。こんな可愛くない凶暴な女と付き合うなんてなぁ。顔が見てみたい」
「…………」
 あれ、無言?
 もしかして言いすぎたか、俺。
「おーい、聞いてるのか?」
「……そいつの顔、見たい?」
「おお、見せてくれるのか?」
「今からトイレに行って、鏡をじっくり見てこれば見れるわよ」
「マジか、よしわかった」
 急いでトイレに走り、鏡を凝視する。
 鏡に映し出されるのは、男子トイレを主張する青いタイルと俺の顔。
 ……もしかして、あいつの彼氏は……。
 ちょっと待て、それは問題だ。いくらなんでもおかしすぎる。
 一体何がどうなってそうなったのかを一時間くらいかけて問いただしたい!
 急いで廊下に戻ると、まだ『まさきひな』は廊下に立ち尽くしていた。
「お、おい! お前の彼氏って……」
「……わかった?」
69過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/24(金) 19:52:33
「タイルだったのかっ!?」
 いくら入院生活で男っ気が無いとは言っても、タイルを相手に日々の寂しさを癒しているとは……。
「そうか……夜な夜な男子トイレに忍び込んでは、タイルに話しかけているんだな……。いやまぁ、そういう愛の形もいいと思うぞ! 俺は応援するからなっ!!」
 プルプルと体を震わせて喜びを隠しきれていない様子の『まさきひな』。俺のセリフがあまりにも感動的過ぎて涙を堪えているに……
「もう一回トイレ行って来いっ!!」
 違いなくも無かったみたいだ。綺麗なフォームで右のローを決められる。
 が、全然痛くない。目つきが悪いとかでよく上級生とかに絡まれている手前、女の子でしかも入院生活によって運動不足が深刻的な人間からのローなど取るに足らんわ。
「そう恥ずかしがるなって。タイルなんだろ?」
「ほんと頭悪いわねっ! さっきの話をちゃんと思い出してみなさいよっ!」
 いちいちむかつくやつだな、ほんと。
 ええっと、看護婦さんがこっちを見てニヤーっと笑ったあと、彼氏と一緒云々……って、まさか……。
 よく考えてみろ。トイレの鏡に映し出されていたものはタイルだけじゃなかったはずだ。そう、俺は何かを忘れている……。
『鏡に映し出されるのは、男子トイレを主張する青いタイルと俺の顔』
「クリリンの……じゃなくて俺のことかー!!」
「い、言っておくけど……ひまわり会ってのは病院内の18歳未満の入院患者で定期的にやるお楽しみ会で、小さい子も多くて、みんな楽しみにしてるから……」
 あまりに突然なことに唖然としている俺を尻目に、まさきひなは俺の横を通り過ぎ、自室の扉の前に立ち止まる。
「か、可愛くないけどっ、あれば役に立たないわけじゃないからっ」
 ガラガラガラ……ピシャン。
 そんなよくわからない言葉と扉の音を残し、まさきひなは俺の視界から消えていく。
 ……ああ、本当によくわからないのだが……面倒なことにはなったらしい。
70過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/24(金) 19:53:21
 それにしてもよくもまぁ、昨年に引き続きこうも暑い日が続くもんだ。去年も記録的猛暑の大安売りだったが、今年も負けていない。
 蝉も全身全霊をかけて夏を叫んでいる。一週間の命だ、頑張ってくれ。
 子供達がこの時期特有の、あの独特な形をした植木鉢を逆さにしたような形をした袋を持って、楽しげに笑いながら駆けていく。ああ、間違いない。あれはプールにでも行くんだろう。
 夏だしな。しかも暑いし。こうも暑けりゃプールの一つも行きたくなるさ。
 でも俺は……別にプールに行くわけでもなく、学校があるわけでもなく。
 なんで毎日毎日、こうやって同じ道を通らなければいけないんだっ!!
 夏休みも八月に入って数日。ニュースの特番は浜辺がどうこうとかそういうのばかりやっているのに。
「あと十日……かぁ」
 ため息一つ。
 空を見上げると、空という大きなキャンバスに飛行機雲が一直線に線を描いていた。
71過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/24(金) 19:54:08
「ちょっと! 来るのが遅いじゃないっ!! 昨日言ったでしょ、明日からは10時までに集合って!」
 そして叩かれる。別に痛くはないんだけど、やはりいい気はしない。
「つーか、十時って早くね?」
「早くないっ!!」
 面倒なこととは向き合いたくないのが人間の習性なのだ。病院には九時半くらいに到着してたんだけど、叔母さんのところでくつろいでいたらいつの間にか昼過ぎになっていた。
「んで、何やるんだよ」
「折角二人いるんだからさ、二人いることを生かしたことにしようと思うんだけど」
 俺の参加は決定事項らしい。
 まあ、病院側も俺が参加することを考慮してプログラムを作ってしまったらしいし、ここまで来て参加しないというのも気が引ける。
 何より、この少女の逆襲が怖い。
「んー、手品とかどうだ?」
「それいいわね。あんたが箱の中に入って、私が果物ナイフを一つ一つ刺していくの」
「そりゃよくあるわな」
「そして箱を開けると……」
「見事俺が……」
「血だらけになって倒れていました」
「手品じゃねぇからっ!!」
 それから数時間に渡り議論……というか、俺をいかに事故に見せかけて殺すかということについての話し合いが続く。
 そんな中、俺がピアノを習っているということを何気なく話したことがきっかけで。
「じゃあ、あんた弾きなさいよ。あ、あんた弾いてくれるなら、私、その、歌ってあげるから」
 という形で、とりあえずは歌とピアノということに。
 気がついたころには陽も落ち、空も暗い。
「それじゃ俺そろそろ帰るわ。いい加減時間もあれだし。曲は家にある楽譜適当に持ってくるから」
 いつもより随分遅くなったが、今から帰れば母さんの飯を作るくらいの時間くらい残るだろう。と、ドアに手をかける。
「ね、ねえ。いつまでもあんたって呼びにくいから、名前教えてよ」
72過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/24(金) 19:54:46
 唐突に投げかけられる声。かろうじて反応し、振り返る。
「あれ、まだ言ってなかったっけ。相楽弘樹。えっと、相手の相に、楽しい。弓偏にカタカナのム書いて、あとは樹木の樹」
「わ、私は真咲陽奈。真っ直ぐの真で、花が咲く、太陽の陽で、奈良の奈でまさきひな」
 こうして、俺と『まさきひな』は遅くなった自己紹介を済ませる。いつも通り、目をそらして『仕方なく』といった感じで。
「じゃ、また明日な。陽奈ちゃん」
「なっ!? 気安く呼ばないでよねっ!! せめてさんくらいつけろっ! 名前で呼ぶって……そんなに簡単なことじゃないでしょ?」
 俺は普通にクラスの女子に対して名前の呼び捨てとかするんだが。ちゃんが付いてるだけありがたいと思え。
「へいへい。お前いくつだ」
「17」
「今年で?」
 違うと首をふる。ということは、俺とタメか。
「じゃ、真咲。これでいいだろ」
「し、仕方ないわね、それで許してあげる。わ、私は弘樹って呼ぶからね」
「俺は呼び捨てなのか?」
「か、勘違いしないでよっ!? 相楽って噛みそうだから、だから名前で呼ぶんだからっ!! ほんとそれだけだからねっ!!」
「……噛むか?」
 少なくても、俺の苗字で噛んだやつは生まれてこの方見た事はないが。
「わ、私は噛むのっ!! いいから今日はさっさと帰れっ!!」
 そしてミカンが飛来する。
 いつものことなのでそれを上手くキャッチし、ニッコリ笑ってから
「それじゃ、また明日な。ひなちゅわ〜ん!」
 とだけ言って、急いで病室を出る。よし、見事な勝ち逃げ。
 病室の中から聞こえる『戻ってこーい!!』の声を無視し、俺は廊下を悠々と歩き出した。
73過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/24(金) 19:55:24
 弘樹が病室から出て行ったあと、私は大きくため息をついていた。
 なんでだろ。
 もっと仲良くしたいのに。どうしてああやって、すぐきつく当たってしまうんだろう。
 もう一度ため息をつき、弘樹には見つからないように隠してある日記帳を取り出すと、私はペンを取る。
 初めて会ったあの日から、日記帳は弘樹のことばかり書いてある。
 最初に書いていることと、昨日書いてあることの違いがすごい。思わず苦笑を漏らしてしまう。
 明日は……仲良くできるかな。
 何気なく、弘樹がくれた目覚まし時計を手に取る。ギュッと抱きしめる。
 きっと弘樹が今の様子を見ていたら『タイルじゃなくて時計が恋人なのか』とか言うんだろうなぁ。
 少しだけ離して、時計をじっと見つめる。
 やっぱ、可愛くない。
 でもね弘樹。これは私の宝物だよ。
 弘樹がくれたものだから。これからもずっと……私が死ぬまでずっと、大切に使うからね。
 コンコン。
 不意にノックが病室に響いた。もしかしたら用事があって、弘樹が戻ってきたのかもしれない。
 慌てて時計を元の場所に戻して、日記帳を隠すと
「は、はいっ」
 裏返った声で返事をした。
 ゆっくり扉が開いて入ってきたのは晴香さん。私の受け持ちの看護婦さん。
「やっほー。お加減いかが?」
 もう仕事が終わったのだろうか、いつもの制服じゃなくてお洒落な私服。
 羨ましいなぁ。私もああやって、お洒落したいのに。
 そんなことと、弘樹じゃなかったこと。それの所為で私は落胆してしまう。
「……いつも通り……です」
「ご希望の人じゃなかったのが残念なのはわかるけど、そんなに落胆されちゃうと私落ち込むなぁ」
「あ、ごめんなさい……」
「ん、いーんだけどね。私にだって物の覚えくらいあるし」
74過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/24(金) 19:56:20
 そう言って、声を上げて笑う。
 私も晴香さんみたいに、ああやって笑ってみたい。
「あの、それで何か用事ですか?」
 仕事が終わった後に来るなんて珍しい。ていうか、初めて。
「え、用事? えっと、えっとねぇ……。そう、ひまわり会。結局、出し物は何になったの?」
「弘樹がピアノを弾いて、私が歌を歌うってことになりました」
「そっかそっか、ふーん。相楽君がピアノねぇ」
 意味深に笑う。なんだか目が少し怖い。
「相楽君って言えば、どこまで進んでるの?」
 目がキラキラと輝いていた。たぶん、初めからこれが目的だったんだと思う。
「どこまでって……私と弘樹はただの……」
 ただの、なんだろう。
 私は弘樹の事、友達って思ってる。弘樹が望んでくれるなら……それ以上にだってなりたいって思う。今まで経験したことないけど、これがきっと『人を好きになる』ってことなんだと思う。
 でも弘樹は私の事、どう思ってるんだろう。
 きっと弘樹は、私の事なんか『可愛くないし面倒だけど、仕方ないから手伝ってあげてるやつ』くらいなんだろうなぁ。
 そう考えると、少し……うん、嘘。凄く悲しくなってくる。
「ただの?」
 そんな私の様子を察してくれない晴香さんは、まだ目を輝かせていた。
「……ごめんなさい。その、ちょっと今日は疲れてしまったので……」
「あー、こっちこそごめんね。もう寝る?」
「はい」
「ん、じゃあおやすみ。最近起きてる時間が早くなってるから、夜もすぐに眠たくなるんだろうね」
 ドアをくぐって病室の外に出て行く晴香さんを見届けた後、私はもう一度日記を引っ張り出す。
 今日あったことを全部綴って、日記帳をしまったらすぐに電気を消す。
 晴香さんの言うとおり、朝が早い所為で夜がすぐに眠くなってしまう。まだ八時なのに、凄く眠たい。
 目を閉じると、すぐに睡魔が襲ってきた。
 まどろむ意識の中、私はやっぱりこれを思っていた。
 弘樹は、私の事をどんな風に思ってるのかな。
75過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/24(金) 19:57:22
 翌日。
 真咲の部屋は、いつもは閉じられているカーテンが全て開け広げられ、窓までもが開放されていた。
 遠くに見える水平線と、どこか西洋を感じさせる海際の街並みが、夏の日差しに照らされて光っている。
 俺は無言で窓の向こう側を眺め、真咲のほうはというと、俺がチョイスしてきた曲が入っているMDを聞いている。
 コピーの楽譜を眺めながらも、時折目を閉じて聞き入っていた。
 曲が終わったらしく、イヤホンを外すと
「すごい……いい曲。うん。弘樹やるじゃない」
「歌えそうか?」
「そ、それより弘樹、弾けるのこれ。結構難しそうじゃない」
「余裕。お前な、言ってなかったけど、これでもコンクールで入賞したりしてるんだぞ俺。しかも現役だ」
「そ、そうなの? まあ、いいじゃない。楽譜見ながら歌ったことなんてないし、そもそも歌う経験自体が少ないから、ちゃんと弘樹が教えてよね」
76過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/24(金) 19:58:08
 晴香さんに聞いたら、ピアノはひまわり会が行われる大ホールにおいてあるということなので、真咲を引き連れて大ホールまで行く。
 学校とかでよく見かけるサイズの物だった。
 ここ最近真咲のことで家にいる時間が少なかったから、ピアノに触れていなかった。久々に弾くので楽しく感じる。
 そもそも、ピアノは好きだし。
 元々の声が透き通っている真咲の歌は、一体どんな感じなのだろう。
 真咲の声が合う曲を選んできたつもりなのだが……歌を歌う経験が少ないとなると少々不安が残る。
「じゃ、弾くぞ」
「うん」
 最初の伴奏から入り、歌が入るところで
「さん、にぃ、いち、はいっ」
 と声をかけてやると、たどたどしくも真咲は歌い始める。
 うん、予想通りだ。やはり元の声が綺麗なおかげで、この曲が持つ清涼感がしっかりと出せている。
 ……が。
 途中でピアノを止めると、え? といった表情でこちらを見る真咲。
「音程がぜんっぜん駄目だなお前」
 あと九日……間に合うだろうか。


             つづく
77過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/24(金) 20:00:43
さて新規登場人物の紹介と既出の登場人物のおさらい

主人公  相楽志紀
ヒロイン 真咲陽奈
叔母さん 石塚日和
 ―――――ここまで既出―−―――
 ―――――ここから新規―――――
看護婦  白岩晴香

新規は一人だけ
次回は二人〜三人ほど出す予定だから
たぶん、今週中には投下できると思われ
78Mr.名無しさん:2006/02/24(金) 20:06:42
>>77
乙!
ますます期待してるぞ
79Mr.名無しさん:2006/02/24(金) 20:33:15
GJ!
80Mr.名無しさん:2006/02/24(金) 20:38:37
>>77
GJ!
過疎の繋ぎにはもったいない
81Mr.名無しさん:2006/02/25(土) 02:00:05
ワクテカ
82Mr.名無しさん:2006/02/25(土) 09:55:48
まだにくちゃんねるで前スレ見れないのか(´・ω・`)
ログ置き場に追加はもう少し待ってね
83過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/25(土) 12:32:09
ごめ、ミス発覚
>>77の主人公の名前。前の主人公とごっちゃになってる
×相楽志紀
○相楽弘樹
84Mr.名無しさん:2006/02/25(土) 12:36:52
>>82
HTML化して上げとこうか?
85Mr.名無しさん:2006/02/25(土) 13:31:22
保守
86Mr.名無しさん:2006/02/25(土) 13:34:22
保守
87Mr.名無しさん:2006/02/25(土) 14:55:06
GJ!!続きをワクテカ待ちしつつ保守
88Mr.名無しさん:2006/02/25(土) 15:12:00
ageてる奴と保守してる奴はVIPと間違えてるのか?
駄レスでもいいが最低限sageろ。
89Mr.名無しさん:2006/02/25(土) 21:17:42
狂おしいほどワクテカ
90過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/25(土) 22:55:32
終わりに向けて展開が速くなってまいります
てか、予定と大幅に変更した点があり、登場人物が二人ほど削減
うん、楽
じゃ >>76の続きは次のレスから
91過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/25(土) 22:56:13
   空に光る 三話


 気がつけばひまわり会まであと三日となった。
 何かの集まりで大ホールを使うということなので、真咲の病室で練習することになる。
 始めた頃はほとんどの音がずれていた真咲も、さすがに連日練習漬けになっていればまともには歌えるレベルになるらしい。
「今のよくなかった!?」
 自分の上達が楽しいのか、最近の真咲は練習の時間いつもニコニコと笑っている。
 練習が終わって俺が帰る頃になると、結局いつもみたいに変な言い合いがはじまるんだけど。
「悪くはないんだけど……ここの音が半音ずれてる」
「ええー、どこよ? 半音とか細かいねぇ」
 言いながらずかずかと俺のところまで歩いてきて、俺が指す楽譜の一音を凝視する。
 歩いた時に生まれた風で、真咲の匂いがふわりと漂ってくる。なんか、女の子って感じの甘い匂い。
 口をへの字に曲げて、街灯箇所を眺める真咲。
 両側で結った綺麗な黒髪の隙間から覗く透き通った白いうなじ。
 ああ、そうか。性格が性格だから忘れちゃってるけど、こいつだって女なんだよな。同い年の。
「ねえ、どうずれてんの? 自分じゃわかんないんだけど」
 言いながら振り返る真咲。距離が近い。
 そんなことに意識を奪われていたなんてことに気付かれたら、良いように優位を奪われる。それはぜひとも避けたい。
「……な、なんか言いなさいよ」
 真咲の顔が赤い。俺の顔も、きっと赤いだろう。顔が熱かった。
 少しだけ、真咲が俺に顔を近づける。どうしていいのかわからずに、俺はただ硬直していた。
 くるりと振り返り、俺に背を向けて
「ず、ずれてるとこ直すんでしょ!? ほ、ほら、さっさとしなさいよっ!」
 1オクターブほど高い音で、そういった。
92過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/25(土) 22:56:51
 それから陽が暮れる時間帯くらいまで練習をし、そろそろ止めようかとキーボードを片付けていると
「でも、結構いい感じなんじゃない? 歌詞だってちゃんと頭に入ったし、最初に比べれば上達したでしょ」
「そりゃ、最初が最初だったからな。お前の歌を聞いたときはどうなるかと心配になったぞ」
「う、うるさいわねっ! 初めてだったんだから仕方ないでしょっ!!」
 そう言って布団を被る。そんなにショックだったのか。
「さーて、俺はそろそろ帰るわ。別に用事ないよな」
「え、あ、帰るの? よかったー、ようやくこの五月蝿いやつが帰ってくれるのか」
「……そんなこと言うと帰ってやらねぇぞ」
「なっ!? か、帰りなさいよっ! さっさと帰りなさいっ!!」
 布団から真咲が出てくる。その様子を見届けてから帰ろうと振り返ろうとした時に、ベッドの脇に本が一冊転がっていることに気付く。
「これ何の本だ?」
 青色の表紙なのだが、他に何も書いてない。普通、本のタイトルとかそれくらいは書いてあるはずなのに。
 拾い上げて開こうとした刹那
「駄目駄目駄目駄目えぇぇぇぇっ!!!」
 そんな絶叫と共に、今までに一度も見たことが無いくらいの俊敏さで本を奪い取ると、枕の下に放り込む。
「ああ、エロ本か」
「ち、違うわよっ!!」
「そう隠すなって。んじゃ、そろそろマジで帰るから」
 といった直後、部屋の中にノックが響く。
「は、はいっ!」
 裏返った声で返事を返す真咲。よほど慌てているらしい。
 ゆっくりとドアを開き病室に入ってきたのは……
「ま、真咲?」
 これは一体どういうことだ。真咲が二人、一人はベッドで枕を押さえつけ、もう一人は不思議そうな顔で俺を見ているぞ。
 ドッペルゲンガー? ああ、つーことは真咲は近いうちに死ぬわけだな。
 あれでも、ドッペルゲンガーって髪型とか違うのか? ベッドの真咲は長いのに、こっちの真咲はショートだ。
「陽奈、この方は?」
 落ち着いた声音で真咲に尋ねるドッペルゲンガー。
93過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/25(土) 22:57:26
「相楽弘樹。今度のひまわり会で一緒に出し物やることになったんだ」
 答えるのは真咲のオリジナル。俺は何がなんだかわからず、ただ呆然と立ち尽くすだけだった。
「そう」
 と、あくまでも落ち着いた様子のドッペルゲンガー。
「な、なあ真咲。これは一体どういうことだ」
「あれ、言ってなかったっけ? 私の双子のお姉ちゃんで、真咲千影」
 なるほど、双子の姉か。
 一卵性双生児ってやつか。瓜二つっていうか、髪の毛の長さ意外じゃ見分けつかないその容姿も頷ける。
 はじめまして、と頭を下げる真咲姉。
「あ、はじめまして」
 そうして俺も頭をさげて、何気なく時計を見るともう七時。
 いつの間にか順番が逆転していたが、病院に来る理由の内のもう一つを果たさなければならない。
「さすが双子、よく似てるな。丁寧な物腰から落ち着いた仕草まで、どこからどこまでもそっくりだ」
 皮肉を存分に込めて言ってやると、真咲は怒りを露にプルプルと拳を震わせていた。
 いつも通りのミカンの飛来を軽くあしらい、病室を出て行く。それじゃまた明日、とだけ声をかけて。
 あ、そうそう、忘れてた。
 振り返って扉を少しだけ開けると
「あんまエロ本ばっか読むなよ」
 病室の中に向かって言葉を発し、「読むかーっ!!」という反発的な声を無視して逃げる。
 毎度のことながら、見事な勝ち逃げだ。
 扉の力で半分ほどになった叫び声を聞き流しつつ、そのまま叔母さんの病室に足を向ける。
 ビニール袋に入ったスナック菓子と雑誌を手渡して
「じゃ、俺帰るから」
「ちょ、見舞い十秒!?」
「仕方ないでしょ、忙しいんだから。それじゃ帰りますね」
 さっさと叔母さんの病室を出る。
 さーて、明日も頑張るぞー。
94過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/25(土) 22:58:12
 ひまわり会はいよいよ明日。手早く叔母さんのお見舞いを済まし、真咲が待つホールへと向かう。
 ホールに入ると、真咲がピアノの前に座っていた。たどたどしくピアノの鍵盤を押し、音にあわせて声を出している。
 音あわせをしているらしい。
「真咲」
 呼びかけてやると、しかめっ面でこちらに振り向く真咲。まったく、本当に可愛くないやつだ。
 少しだけ世間話をした後、練習を始める。
 それにしても、本当に上達したと思う。最初は頭が痛くなってしまうような音痴だったのに、これだけ歌えるようになったんだ。
 凄いことだと思う。人って、頑張ればなんでもできるんだな。
「ねえねえ、今の良かったでしょっ!?」
 完璧に、半音もずれることなく歌いきった真咲は、自信満々といった表情だった。
「おっけ、完璧」
 俺の言葉を聞いて、飛び跳ねて喜ぶ真咲。俺も真咲がこんなに上手く歌えるようになって、苦労が報われた気がして嬉しくてしょうがない。
「頑張ったなぁ……嫌味にも屈せず、よく耐え抜いた、私」
「はいはい、そりゃよござんしたね。ま、真咲は元々声が綺麗だからな。こういう感じの曲はよく合うんだよ」
「え、あ、ま、まあ、当然よね」
 眉間にしわを寄せているのに、目元と口元は笑っている。
95過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/25(土) 22:58:46
 ここ数日で気付いたのだが、真咲は誰かに真っ直ぐな褒め言葉を言われるのが苦手らしい。
 内心では嬉しいのに恥ずかしさからなのか、素直に喜べないから言葉とか態度を決めかねるんだろう。
 こんな可愛いところを弱点と呼ばずになんと呼ぶ。
「と、当日にピアノの失敗とかやめてよね。せいぜい、私の足引っ張らないでよ」
 ああ、こういう憎たらしい態度。可愛いところもあるのに、憎たらしいところのほうが大きいのはいかがなものか。
「うし、じゃもう一回やるか」
「うん」
 窓辺に立ち、真咲は再び歌い始める。
 夏の日差しに照らされて、髪の毛がキラキラと光る。
 海にもプールにも、どこにも遊びに行かず、毎日病院に通って消費した半分の夏休み。
 それでも、なんでだろうか。つまらないとか、暇だとか思わなかった。
 楽しそうに歌う真咲を見ていて、気がついた。
 ああ、簡単な理屈じゃないか。
 俺は、いつからだろう。
 この、暴力的で憎たらしいところばっかりだけど可愛いところもあるこの少女のことが。
96過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/25(土) 22:59:27
 今日も天気は良好。絶好のピクニック日和となった今日この頃。
 泣くことを久しく忘れている真っ白な雲は、今日も優雅に空に浮かんでいる。
 とうとう、ひまわり会の当日を迎えた。この一日のために努力を重ねていた。それの集大成が、いよいよ今日発表させるわけだ。
 俺が考えているよりもたくさんの人が集まった。
 やはり子供向けのイベントということもあり、集まっている大部分は子供ではあるが、30人程度。
 いつも二人で練習していた大ホールが、まったく別の物に思えてしまう。
 松葉杖を付いていたり、包帯を巻いていたり、中には外からは普通の子供と見分けが付かないような子供ももいる。
 でもやっぱり、それは入院する理由があるからなのだろう。
 真咲の言うことが本当だということが、強固のときになって初めてわかった。
 大ホールに集結した子供達は、みんながみんな楽しそう、今から始まる小型学芸会を今か今かと待ち望んでいる。
 しかし、不思議と気負いは無い。
 期待してくれるなら、それに見合うものを見せてあげたい。そして、俺と真咲ならそれができる。
「はーい、それじゃあ今からひまわり会を始めますねー」
 看護婦姿の晴香さんが司会を勤め、ひまわり会の始まりを告げる。
 決められた数組が様々な形の発表を行う。
 失敗して笑いが巻き起こったり、小さな子供が手品に成功して会場が沸きあがったり、失敗して泣きじゃくる子供をよしよしとあやす母親、そして暖かな目でそれを見つめる観客達。
 そして、今行っている剣玉が終わればいよいよ俺達の出番。そんな時に
「あ、楽譜忘れた!」
 思い出したように言う真咲。
 いつものパジャマ姿ではなく、真っ白なワンピースに青色のリボンで髪の毛を結っている。
 小さい頃、ピアノのコンクールに出るときにあんな格好をした女の子をよく見たな。
「いいだろ別に、どうせ歌詞はちゃんと頭に入ってるんだから」
「よくないのっ! その、緊張してるから……もしかしたら歌詞が飛んじゃうかもしれないでしょっ!?」
 ああ、緊張はしているのか。
「じゃあこれ使うか?」
 ピアノの楽譜を差し出す。
97過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/25(土) 23:00:05
「それには歌詞が書いてないでしょっ! 取ってくるから時間稼いでて!」
 そう言って急いで走って行く真咲。
 おいおい、時間を稼げってどうやって……。
「はい、次は真咲陽奈さんとその仲間でーす」
 能天気な声でこちらの状況はお構いなしに俺達の出番を告げる晴香さん。
 仕方なく派手なカラーテープで飾り付けられた舞台にあがるのだが……。
 巻き起こる拍手。もの凄い歓迎ムードだ。
 次は何? と期待に満ちた目を俺に向ける子供達。ああでもどうしようどうしよう。
 えーと、子供向けな出し物で俺一人でできること……。
「え、えーと……相方がちょっとトイレに逃亡している最中なんで……帰ってくるまでピアノ弾きます、聞いてください」
 結局、思いつくのなんてそれくらいなものだった。
 俺が弾ける曲は子供向けとは言いがたいが、真咲が帰ってくるまで俺のトークショーが繰り広げられるのは無理がある。
 ピアノの前に座ったがいいが、何を弾こうか……ああもういいや、とりあえず俺が一番得意な曲にしておこう。
 選んだ曲はジムノペティ。サティの名曲ではあるが……子供が聞ける曲かどうかは疑問であるが。
 演奏をしつつ観客の様子を見るが、それなりにウケはいいらしい。
 ていうか、子供よりも大人のほうが演奏に聞き入っている。まあ、仕方ないんだけど。
 曲が中盤に入り込む。しかし真咲が帰ってくる様子はない。ああどうしよう、このままだと最初のD.C.に……。
 とその時、扉が開いて手に楽譜を持った真咲がホールに戻ってくる。
 やっとかよ……。最初のD.C.を通らず、そのまま曲を終わらせる。
 と同時に、ホールに拍手が巻き起こる。
「……ちょっと弘樹……あんた何やったのよ」
「ピアノ弾いただけ」
「随分と盛り上がっちゃってるみたいだけど」
98過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/25(土) 23:00:39
「あー、悪い」
 俺のピアノ独奏がメインになってしまった感があるのだが……大丈夫だろうか。
「ええと、これから本番です」
 コホン、と一度咳払いをする。真咲がステージの中心に立ち、ペコリと礼をすると、しっかりと前を向きなおす。
 冷や汗を腕で拭い、小さく深呼吸をする。
 真っ白なワンピースに空のようなリボン。今日の真咲は、本当に綺麗だ。
 ようやく譜面を置くき真咲を見ると、大きく深呼吸をした後にこちらをチラリとみて、うん。と頷いた。

 さあ。始めようか。
99過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/25(土) 23:01:09
 最初の音を、最大限にやさしく響かせる。
 一番、二番とピアノのミスはなし。真咲のほうも半音のずれも無く、いつも通りの綺麗な透き通った声で歌い続ける。
 いつも通りの歌声なのに、いつもより輝いて見える。
 二番の終わり、間奏に入る直前。突然真咲の歌が崩れる。
 何事かと慌てて真咲を見ると、どうやら感極まってしまったらしい。目から涙が流れている。
 ようやく間奏に入るのだが、感極まったものがこみ上げてきているらしい。涙が途切れる様子は無い。
 歌いだし、真咲の声は聞こえてこない。これはまずい。
 ……仕方ない。
 伴奏の速度を緩め、真咲が歌うべき場所を変わりに歌う。これしかない。
 微妙に出来てしまった間はどうしようもない。それを最大限誤魔化すために、本来の速度よりもずっと遅く弾く。その間が元々存在しているように、狙い済まして間を作ったように。
 そして、一小節分抜けた歌詞を歌い始める。真咲の声よりもずっと低くて汚い声だが、このまま声もなくピアノだけが聞こえ続けるよりはマシだ。
 真咲に顔を向ける。眉根に寄せたしわがさらに色濃くなっている。
 ギュッと目を結び、そして大きく頷くのを見て、俺はピアノの伴奏に戻る。
 そうして最後まで、さらに高い声で。いつもよりもずっと綺麗な声で、最後の小節を歌いきる。
 俺達の演奏は、本当に、本当に大きな拍手とたくさんの暖かな目に迎えられつつ終わった。
100過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/25(土) 23:01:42
 ひまわり会は無事、何の滞りもなく終了。
 子供達は真咲に「お姉ちゃん歌上手」とか「かっこよかった」とか、次から次へ褒め言葉を投げかける。
 それに対して真咲はいつも通り「ま、まあ、当然よね」と、可愛くないことばかり言ってくれやがる。
 俺はというと、親御さん方に囲まれることになった。「ピアノって難しいですか?」とか「家の子でもできますか?」とか。
 どっちかっていうと、褒められるより雑談の相手として迎え入れられたらしい。
 とにかくも大成功。
 俺のところに喜びの表情を浮かべながらかけて来る真咲に、これ以上はないというくらいの喜びが胸に一杯になった。
101過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/25(土) 23:02:17
 成功の余韻に浸ったまま、叔母さんがいる205号室に入室する。
 叔母さんは虚ろな目をしてこちらを見ると
「……どちら様?」
 お、叔母さん……まさか……。
「ゴルバチョフと申します」
「嘘つけっ!!」
「ただ腰を痛めただけで記憶喪失になるはずないでしょ」
「人をぞんざいにあつかった仕返しだ!」
「子供みたいなこといわないでくださいよ」
 そんなことを言っている叔母さんは……あれ、私服?
 ベッドの上には纏められた荷物。よっと声をあげ、荷物を持ち上げる。
「あれ、どうしたんですか?」
「人の話を聞かないでさっさとどっか行っちゃうからだ。今日で退院」
 時計や財布。一番最後の細かな身支度を整えるおばさんを見て、なんだろう。胸が苦しい。
 叔母さんが退院して、ひまわり会もついさっき終わってしまった。これで、俺が病院に来る必要はなくなってしまった。
 そうしてようやくわかる胸の苦しさ。
 そうか。
 これが、心の底から思う『寂しい』という感情なのか。
102過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/25(土) 23:02:48
 夜、もう陽が暮れてしまった頃。私はたった一人、大ホールに立ち尽くしていた。
 終わってしまったんだ。
 夢みたいな時間だった。
「めぐるめぐる、かぜ、めぐるおもいに、のって……」
 曲の歌いだしを、なんとなく歌ってみる。誰もいない真っ暗のホールに、むなしく私の声がこだまする。
 普段は口が悪いし、センスだって悪いのに、ピアノを弾く姿だけは優しく見えた。実際、優しいんだけど……。
 詰まって歌えなくなってしまったとき、弘樹は変わりに歌ってくれた。
 それがすごいうれしかった。たぶん、弘樹はそんなこと気付いてないんだろうなぁ。
 ああやって目的があって、二人で歌を歌うのもいいけど……今度は何の目的も無くて、ただ二人きりで歌いたい。
 ステージに残された赤と緑のテープ。それはあの日の名残。
 ずきり、と胸が痛くなる。
「……ん」
 慌てて薬を飲む。発作を押さえつけるためのもの。
 ……あと、どれくらい残ってるのかな。
 私に残された時間。きっとそれは、もうそんなに長くないよね。
 うん、わかってる。
 わかってるのに……なんでこんなに辛いんだろう。
 ずっと前から覚悟してたのに……なんで……なんでこんなに辛いんだろう。
 こみ上げる涙を堪え切れなくて、私は地面にしゃがみ込んで、声を上げて泣いた。
 死にたくない、死にたくないよ。
 弘樹……死にたくないよ。


        つづく
103過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/25(土) 23:05:16
ふう、一日ペースで書いてくとさすがに疲れるな・・・
んじゃ登場人物の紹介とおさらい

主人公   相楽弘樹
ヒロイン  真咲陽奈
叔母さん  石塚日和
看護婦   白岩晴香
 ―――ここまで既出―――
 ―――ここから新規―――
ヒロイン姉 真咲千影

次回は明後日くらいに投下予定
104Mr.名無しさん:2006/02/25(土) 23:09:36
不覚にも泣きかけてしまった……GJ!!!!
105Mr.名無しさん:2006/02/25(土) 23:13:00
切ねぇ……GJ!!!
106Mr.名無しさん:2006/02/25(土) 23:32:18
いい・・すごくいいよ・・・GJ!
107Mr.名無しさん:2006/02/26(日) 00:01:28
ハァハァ・・・
つ、続きを・・・
108過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/26(日) 12:32:44
どうやら最近は調子がいいようで・・・
ちょっと頑張ってみたら簡単に出来上がったんで、続き投下
次のレスから >>102の続き
109過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/26(日) 12:33:20
    空に光る 四話


 叔母さんが退院した。
 ひまわり会も終わった。
 でも俺は、結局病院に脚を運ばせていた。まぁ、昨日の今日だし、ひまわり会の喜びを分かち合うなんて理由としては十分すぎるじゃないか。
 俺の顔を見た真咲は「また来たの?」なんていいながらも、結局は終始笑顔だった。
 昨日の成功の喜びが、まだ心の中に残っているのだろう。
 大丈夫、真咲は隣の病室に入院していた叔母さんが、もう退院したなんて知るわけが無い。
 帰り際、明日もまた来ると一言残す。真咲は「来るなっ!」なんて言ってくれやがったけど、そんなの知らん。
 安心して病室を出る。ここに来るのはいつも昼ごろ、帰りは夕日が照らす時間帯。オレンジ色に染め抜かれた町へ続く一本道を歩いていく。
 と、正面から真咲千影が歩いてきた。
 真咲千影は俺の姿に気付くと、足を止めた。俺も彼女の正面に止まり
「よう、真咲の見舞いか?」
 と、声をかける。
「……206号室の叔母さんはもう退院したのでは?」
 いつもより一回り冷静で、冷たい声音だった。
 その言葉の真意はわからないが、言い知れぬ不安が胸を過ぎる。この俺の中で渦巻く気持ち、不安が見透かされているかに思えてしまう。
「なぜ、今日もここに来たんですか? もう貴方がここに来る理由はないでしょう?」
 答えられない。
 こんなこと、口が裂けても言うことなんてできない。
 黙っている俺の変わりに、彼女は口を開く。
「好き、なんですね。陽奈のことが」
 ちくり、と胸が痛む。
 隠せるわけも無い。
 この気持ちは、そうだよ。間違いなくそれだ。
「まぁ、どちらでも構いません。どちらにせよ、この先陽奈に近づかないでください」
 唐突に、冷たく言い放つ。
「……なんで?」
110過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/26(日) 12:39:52
「あの子の夢を……壊さないで。昔からあの子は、夢が大きい子だった。大きくなったら医者になりたい、元気になったら祭りに行きたい。
 でも出来ることも段々減って、夢も語らなくなった。その中で残したあの子の夢を壊さないで!! まだ叶うかもしれない夢があるほうが、よっぽどか救いようがあるじゃない!!」
 考えてみろ。俺は彼女の何を知っている。真咲の、何を知っている。
 いつも部屋にミカンが置いてある。たぶん、青色が好き。曲は優しい曲調が好き。
 これだけじゃないか。なんだよ、誕生日だって知らない、好きな食べ物だって、好きなテレビだって。
 普通の友達同士なら知っていることだって、俺は知らないじゃないか。
 ずっと、理解していた気になっていた。
 でも……ほとんど彼女のことを理解していなかったんじゃないか。
 最後の最後、真咲千影は叫ぶように、感情をむき出しにして言い放ったあと、俯いて鼻をすする。
「あの子は、昔は今ほど体が悪くありませんでした。一般からすれば体がよわかったですが。でも、成長するにつれて病気も進行していきました」
 いつもの、冷静な口調に戻る。
 そこから先は聞きたくなかった。何か決定的な言葉が出てくるような予感がして、背中から冷や汗が流れる。
「もう、そんなに長くはありません。本当は六月ごろの発作で終わるはずでした。今の時間は、それこそサッカーのロスタイムみたいなものなんです」
 その時。
 何故か頭に、演奏を終えたときのあの笑顔が浮かび上がっていた。
「……あいつの病気って、なんなんだ?」
「心臓です。弁膜……血液の逆流を防いでいる弁があるのですが、それが正常に機能していない。治すには移植しかないのですが、場所が場所ですから。今更ドナーが見つかったところで、あの子が手術に耐えるなんてことは出来ないでしょう」
「じゃあ……待つしかないのかよ……」
 終わりを。
 物語の終焉を。
 最後の時を。
 ただ、黙って指をくわえて、待っていろっていうのかよ。
111過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/26(日) 12:40:27
「いいえ、待つ必要はありません。貴方はただ、忘れればいい。陽奈のことを忘れて、日常に戻ればいい。元々、貴方の生活に陽菜は存在していなかった。ただ、元の生活に戻るだけです。何の苦もないでしょう?」
「聞かせて欲しいことがある。真咲の、夢ってなんだ?」
「人に恋をする。それがあの子の夢です。普通に学校にいって、クラスの男の子と、普通に恋をする。それが彼女の夢。全てを、死すらも受け入れたのに、そんなことに執着してるなんて知られたくないんでしょうね」
 何も言い返せず、黙って聞いていることしか出来なかった。
「だからもう、放っておいてください。途中で離れれば陽菜が、最後まで一緒にいれば貴方が傷つく。こんなことを聞いても一緒にいるのは間違っていますよね。私に出来るのは、最後まで彼女の夢を守ること、それだけです。それでは、さようなら」
 言いながら、何事も無かったかのように俺の横を通り過ぎていく。
「あ、陽菜と二人の演奏もそうですが、ジムノペティもとても素敵でした。それとこれ、陽菜からの手紙です。陽菜が亡くなってから見てください」
 それだけ言い残して、病院へと向かって行く真咲千影。
 俺は黙って立ち尽くしていることしかできなかった。
112過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/26(日) 12:41:12
 病院に行かなくなって、二日、三日。カレンダーに書かれた円を見て思い出す。今日は登校日だった。
 明日も来るから。そう言って帰ってきたのに、結局俺は病院に行くことはできなかった。
 夏休みも残り半分、今からでもやり直せる。適当にクラスの友達と遊んでこよう。
 制服に袖を通して、気だるいまま学校に足を向ける。
 たどり着いた教室では、日焼けしたクラスメイト達の姿。お土産を抱えて、残りの夏休みをどう過ごすかなんてことを話し合っている。
「よう、相楽」
 声をかけてきたのは、今年になって初めて友達になった瀬川志紀。
「おっす、志紀」
 適当に挨拶を交わすと、ダラダラと雑談を始める。
「そういや、今日は祭りだろ。お前どうする?」
 祭り?
 ああ、そういえば今日だったか。すっかり忘れてた。
「どうせお前は彼女さんと一緒に行くんだろ? えーと、なんだっけ、彼方ちゃん?」
「まーな、お前はどうするんだよ」
「さあ、わかんねぇ」
 本当なら、真咲と一緒に病室から花火でも眺めるはずだった。
 でも、真咲千影のあの話を聞いてしまうと。
 まだ引き返すことが出来る。今引き返せば、まだ救いようがある。
 そう考えてしまう弱い自分が憎い。
「っと、教師来たな。じゃ、また後で」
 各々席に着くが、夏休みの高揚は押さえきれない。先生が卓に付いたのに、まだ教室はわいわいと賑やかだ。
 この教室は風通しがよくて昼間は日陰になっているので、開放された窓から心地よい風が入り込んで、シャツの中を通り抜けていく。
「今日は祭りがあるけど、羽目を外しすぎて補導されないようにな。先生も巡回に回るけど、そのたびに交番に呼び出されなんてしたら面倒だからな。捕まるのは構わないけど、フリーターですとか言っとけ」
 この時期特有の冗談を言う先生。「捕まっていいんですかー」とかいう質問が飛び交う。
 早くも気分が高ぶっている生徒たちは笑みを漏らす。
 気が付けば、登校日は昼を前にして終わっていた。
113過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/26(日) 12:42:25
 クラスメイト達に挨拶だけを交わし、校舎裏に細々と設置されているベンチに鞄を枕代わりにして寝転がる。
 誰もいない校舎裏は静かで、空はどこまでも青く、校舎はただ白い。まるであの病院のように。
 今頃、あいつはどうしているだろう。あのクマの目覚まし時計にたたき起こされて、来ない俺をただただ待っているのだろうか。
 隣の病室の人が退院してから来なくなったって知ったら、いったいどう思うだろうか。真咲が真咲千影の言うとおり、俺との時間を大切にしてくれているなら、俺のことを大切に思ってくれているのなら。
 それでも。
 今ならまだあきらめれるだろう。俺だって、今ならまだ。
「おーい、相楽。こんなとこで寝てると風邪引くぞ」
 声に目を覚ます。目を開けると、眼前に志紀がいる。
「ったく、終わってからすぐどっか行ったのかと思ったらこんなとこにいたのか」
 志紀は一度家に帰って着替えてきたのか、私服姿だった。
「あれ、その娘は?」
 後ろで志紀に隠れるように立っている少女に気付く。とても綺麗な長い黒髪に、真咲の面影を見る。
「噂の彼方。会うのは初めてだったよな?」
「あ、ああ……噂の彼女さんか」
 ペコリ、と頭を下げる少女。
「ああ、なんつーか……幸せそうでいいな」
 なんだろう。やけに志紀が眩しく見える。
 羨ましいよ。普通に恋愛して、普通に付き合って、そうして普通に一緒にいるんだから。
 なんだって俺は、お互い想いあっているのに、一緒にいることができないんだ。
「んじゃ、お二人さんの邪魔をしたらよくないから俺帰るわ」
「なんだ、帰るのか。なんか悩んでるみたいだったから、どうせ見つけたし相談に乗ってやろうって思ったんだが」
「いいよ別に。人に話してどうとなるもんでもないし。んじゃな」
 ふと思い立ち、足を止める。
「避妊具は付けろよ」
 ボンッ、と彼女さんの顔が赤くなる。志紀は苦笑を漏らし
「ちゃんとつけてるっつーの」
 言いながら俺に手をふっていた。
114過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/26(日) 12:43:00
 学校の敷地内から外に出て、少し考える。今日は、祭りに行かなくてもいいだろう。
 彼女がいない寂しい男達が暗黙の了解のもと、いつも集まって馬鹿騒ぎしている場所があり、俺も毎年その場所に赴いていたが、なんだかそんなことをする気にすらならない。
 ふと、真咲千影の言葉を思い出す。『元気になったら祭りに行きたい』
 彼女は遠くに聞こえる祭りの喧騒を、いつも寂しげに聞いているのだろうか。
 遠くに見える花火を、一人でいつも眺めているのだろうか。

 そう思うと、走り出さずにはいられなかった。
115過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/26(日) 12:43:34
 祭りの会場まで全力で走る。人と言うのはその気になればこれだけ動けるのか、と初めて知った。
 会場までは大体5キロほど。その道のりを、一度も立ち止まらず、歩かずに走り続ける。
 花火まではあと五時間。それまでに病院に戻らなければ意味がない。
 会場となっている海岸の公園に到着すると、海から吹く潮風の匂いと祭り独特の匂いが同時に襲う。
 手持ちの金を全て使い、祭りらしいものを全て買い集める。焼とうもろこし、綿あめ、サイリューム、ラムネ、焼きそば、お面。
 空っぽの鞄に次から次へと詰め込み、町へ続く道を逆送する。
 楽しそうに祭り会場へ向かう人ごみの中、忘れ物を思い出したように全力で走っていく。
 目指す場所。それは自宅ではない。
 あの、小高い丘の頂上にある真っ白な建物。俺と、彼女の思い出の場所。
 面会時間はもう終わっている。それでも構わない。
 やっとのことで病院に到着する。ロビーから入り込めばすぐに見つかってしまう。その場はやり過ごせても、それでは意味がない。
 どうやって病室に行こうかと考えた時、すぐに思い出す。そうだよ、あのイチョウ。
 前回りの受身だ。
 病院を囲むような散歩道を駆け抜ける。
 そして、あのイチョウの下。イチョウの枝は、今日も206号室へ一直線に伸びていた。
 登ろうと手を伸ばした時、思う。
 これでいいのか? 今ならまだ、取り返しが付く。まだ、やり直せる。
 全てを無かったことにして、このまま家に帰るほうが、俺にも、彼女にもいいのではないだろうか。
 胸が締め付けられるような痛みを感じる。息が出来ず、呼吸が乱れていく。
 明日死ぬと聞かされても、きっとこんなに辛くはないだろう。
 頭に声が響く。
 今なら引き返せる。まだやり直せる。全てを無かったことに出来る。
 お前はこんな痛みを抱えたまま生きていけるのか。
 狂ってしまいそうな痛みを抱えたまま生きていくなんてできるのか。俺に、そんなことができるのか。
116過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/26(日) 12:44:13
 そんなのは無理だ。何かを聞くたび、見るたび、思い出す度、心が痛む、心が軋む。痛覚神経をむき出しにして生きていくような、そんな痛みに、苦しみに。
 俺は、耐えることなんてできやしない。
 大きく息を吸い込んでその場に寝転がる。と、ポケットの中に何かが入っている。
 取り出すと、それは真咲からの手紙。真っ白の封筒。
 そうだ、いつでも見れるように、常に持ち歩いていたんだった。
 恐る恐るシールを剥がし、手紙を眺める。
 そこには四文字、これだけが書かれていた。
『ありがと』
 文字は歪んでいて、あの可愛らしい丸文字は見る影も無い。きっと、文字もかけないような状態で書いたのだろう。
 これが精一杯だったと言わんばかりに雑で汚い文字、たった四文字が限界だったと言うように、最後の文字は紙の端までインクが流れていて、それなのに伝えたいこと全てを凝縮したかのような。
 それを見て、決意した。
 胸の痛み、心の苦しみ、頭に鳴り響く警告は止まらない。それでも鞄を取って、イチョウを登っていく。長く伸びた枝を伝い、窓に鍵がかかっていないかを確認する。
 窓は、開いていた。
 そして俺は、あの日のように。始まりの日と同じように、窓から飛び込んだ。

 ベッドに眠る少女は、まるでいつものように。いつもと変わらず、そこにいた。

 何故か浴衣に身を包む真咲。青地に金魚が涼しげに泳いでいる。黄色い帯が少しだけ緩んでいた。
「真咲」
 小さく声をかけると、真咲はゆっくりと目を開けてこちらを見る。
「……弘樹」
 信じられない。そんな表情だった。
 体を起こした真咲は、上げた髪の毛を気にしつつまるで幻でも見るような目でこちらを見ていた。
「今日、祭りだろ。色々買ってきた」
 そうして、真っ暗な病室の中。鞄に詰め込んだものをテーブルの上に並べる。
117過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/26(日) 12:45:02
 途端に病室は祭りの匂いに包まれる。
「なんで……来てくれなかったの?」
 不安そうに問いかける真咲。
「忙しかったんだよ。色々、考えなきゃいけないことが多くてさ」
 サイリュームを手に取ると、真咲の手首にまいてやる。ぱき、ぱき、と音が鳴る。
 暗い部屋に、緑色の光がぽうっと浮かび上がる。
 と、遠くのほうから花火の音が、微かに聞こえてくる。
 二人、ベッドに並んで遠くに浮かぶ花火を眺める。
 ラムネを開けると、全力で走っていたので相当揺れてしまったようで炭酸が噴出す。こぼさないように飲んで見せると、見よう見まねで真咲もそれの真似をする。
 小さな、二人だけの祭りだった。
「なぁ、なんで浴衣なんだ?」
「晴香さんがね、どうせ相楽君も来るだろうからって着付けしてくれたの」
 今夜の真咲は
「お、おかしくない?」
 なんで、こんなに綺麗に見えるんだろう。
 素直にそんな印象を口に出す。
「かわいいよ」
「あ、う、うん……と、当然よね」
 いつものように、可愛くない態度でさえも。それすらも、可愛く見えた。
 真咲は来ないかもしれない俺を待っていてくれた。その浴衣だって、俺が来なければいつもよりずっとむなしいものにさせるための、マイナスの道具にしかならなかっただろう。
 だけど、待っていてくれた。
 恥ずかしそうにこちらをちらちらと見る真咲の姿を見て、確信した。
 この後、間違いなく真咲千影に、心に攻め続けられたあの瞬間が、間違いなくやってくるだろう。
 だけど俺は、後悔なんかしない。
 いつの間にか、胸の痛みも心の苦しさも頭に鳴り響く警告音も消え去っていた。
118過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/26(日) 12:45:41
 ただ、今は彼女と共に、同じ時を過ごしたかった。
「真咲。俺さ、お前のこと好きだ」
 その言葉は、思ったよりもずっと簡単に飛び出した。
 恥ずかしそうにこちらをチラリ、チラリと見ては目をそらし、どうにか俺を見て、彼女は小さく言う。
「……私も」
 花火が続けて上がる。聞こえる音は、祭りの喧騒、花火の音、そして響くこおろぎの鳴き声だけ。
 目の前にはサイリュームに照らされた、真咲の初めて見る髪形、伏せた睫毛。
「あのさ、これから『陽菜』って呼んでいいか? どうせお前は俺のこと弘樹って呼んでるし」
 答えは返ってこない。
「……私ね……そんなに長く……」
「知ってる」
 真咲……いや、陽菜の口からそんなことを聞きたくなかった。
 知っている。知っているからこそ。
 残された時間を。ただ一秒でも多く、一緒に過ごしたいんだ。
 余計な言葉を遮って不安を閉じさせる。そのまま目を閉じてくれた陽菜の唇に、そのまま自分の唇を寄せた。
119過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/26(日) 12:46:17
 まだ、心臓がドキドキしてる。
 レモンの味とか言うけど、全然違った。うん、焼きそばの味?
 私のお見舞いに来てくれなくなって、三日。すごい不安だった。もしかしたら弘樹は、やっぱり私を厄介者としか扱ってなかったのかなって、そう思ったから。
 でも、弘樹は来てくれた。こんなに持ってきて、二人じゃ食べきれないってくらいたくさんの物を持って。
 元気になったら、まず最初にお祭りに行きたかった。なんの祭りでもいい、とにかく、たくさん人が集まって、みんな楽しそうにしているところに行きたかった。
 最後の最後まで、それは叶わないって思ってた。でも、弘樹が叶えてくれた。
 思ってたのとちょっと違ったけど、やっぱりお祭りって面白い。弘樹と一緒だったから、もっと面白かった。
 もう後悔なんて無い。悔いはない。
 最後の最後、弘樹は私の夢を叶えてくれたんだから。
 また、ちくりと胸が痛む。いつもみたいに、急いで薬を飲む。
 あれ、おかしいなぁ……いつもならすぐに楽になるのに。
 痛みが治らない。ずっと、痛い。痛みは段々大きくなって、呼吸をするのも苦しくなってくる。
 ああ、看護婦さん呼ばなきゃ。ええっと、ナースコールはどこだったっけ……たしか……この辺……。
 あ、あった、押さなきゃ。指に力が入らなくて、中々ナースコールを押せない。あれ、どうしよう。
 ナースコールを落としてしまう。床から、かつんって音が鳴った。
 どうしよう、動けない。胸が苦しくて、痛くて、動けない。
 何とかコードを手繰り寄せてボタンを手にすると、出来る限りの力を込めてナースコールを押す。
 どうされましたー? って声が聞こえてきたけど、私のほうから何かを言うことはできなかった。
 この声は、たぶん晴香さん。返事が無いから慌てた様子で
 すぐ行くから、ちょっとだけ我慢してね。そんな声が聞こえた。
 それと同じくらい、意識が黒く塗りつぶされていった。


          つづく
120過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/02/26(日) 12:51:00
まあ、なんとなしにはわかると思うけど、次回で最終話ね
今回は予定通りの長さに治めれてよかったよかった
んじゃ、登場人物の紹介とおさらい

主人公   相楽弘樹
ヒロイン  真咲陽菜
叔母さん  石塚日和
看護婦   白岩晴香
ヒロイン姉 真咲千影
―――ここまで既出―――
―――ここから新規―――
友達    瀬川志紀
友達の彼女 音羽彼方

はい微妙に出てきたね前の話の主人公とヒロイン
正直いなくてもよかったろとか突っ込み禁止
この話の結末は……どっちにしようかはまだ考え中
たぶん最終話は明後日ごろ。明日は無理っす
121Mr.名無しさん:2006/02/26(日) 13:01:50
結末はいったいどっちだ・・・
ドキムネ
122Mr.名無しさん:2006/02/26(日) 21:39:36
叔母さんは ツンデレ
123Mr.名無しさん:2006/02/26(日) 23:39:33
>>118で少し視界がかすんだ。最後気になるな・・・。
124ツンデレ十夜:2006/02/27(月) 09:16:33
第4話
こんなツンデレを見た。
社内でも評判の別嬪がいた。
猫のように大きな瞳、常に潤んでいる唇。
風に揺れる長い黒髪に、男達の目は奪われていた。
でも、その女には欠点があった。まったく笑わないのだ。
一部の人間は「アイスドール」と呼んでいた。

居酒屋で会社の飲み会が行われている。
アイスドールの隣には年下の後輩が座っていた。
「僕、昼間すっげーいい事あったんですよ」
「何があったの?」
「自販機でジュース当たったんです!!!」
誇らしげに胸を張る後輩。
「何それ、そんな事で喜ばないでよ」
「今、笑ってましたよね?」
「えっ・・・」
確かに、アイスドールは微かに笑みを浮かべていた。
「僕、初めて見ましたよ、○○さんの笑顔」
首から頭のてっぺんまでカーっと血が上るアイスドール。
「か、からかわないでよ!怒るわよ」
プイっと顔を横に向ける。
「もう一回笑って下さいって、メッチャ可愛かったんですって」
「い、いいかげんにしてよね!!」
そう言うとアイスドールは、おしぼりを後輩に投げつけた。
飲みかけの梅酒を口に運びながら、”彼女”は心の中で呟いた。
 (アンタと二人っきりなら・・・べ、別にいいけど・・・・)
125ツンデレ十夜:2006/02/27(月) 23:53:51
第5話
こんなツンデレを見た。
室内で向かい合う男と女。
「なあ、くわえてくれって」
男は切ない声で女に哀願する。
「そ、それぐらい一人で出来るでしょ!!!」
女は少し、躊躇しながら答える。
(ホントは、少しぐらいなら・・・・)

「くわえてくれないなら、無理ヤリ行くぞ!!!」
男の声は少しずつ荒くなってくる。
「ちょ、、無理ヤリって・・・・」
 (そ、そんな・・わ、私にも心の準備が・・・・)

「ダメだ!!もう我慢出来ない!!!!!」
男は勢い良く女のすぐソバに来る。
「だ、ダメだってば、、バ、バカ!!!!!」
 (とうとう、、やっと、二人で・・・・)


「で、どこに武器屋があるんだ?」
男は女に質問する。
「そ、それぐらい、自分で見つけなさいよ!!」
 (へへ、やっと興味もってくれた)

女は自分がのめり込んでいるオンラインゲームの世界へ
男を引きずり込む為、冷たく接していたのだった。
126Mr.名無しさん:2006/02/27(月) 23:56:36
>>125
ちょwwwなんだそれwwwww
全力で釣られちったwww
127Mr.名無しさん:2006/02/28(火) 06:19:13
>>125
騙されたww
128ツンデレ十夜 作者:2006/02/28(火) 11:34:45
前スレ後半から何か重めの雰囲気だったから
ちょっと遊んでみたwwww
129Mr.名無しさん:2006/02/28(火) 15:40:00
時に泣け、時に笑える。
このスレは本当に居心地がいいな
作者さん、これからも頑張ってくれ
130Mr.名無しさん:2006/02/28(火) 17:19:07
作者待ち&期待+保守
131Mr.名無しさん:2006/02/28(火) 17:21:14
やあ (´・ω・`)
ようこそ、バーボンハウスへ。
このテキーラはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。

うん、「また」なんだ。済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。

実は君に一生セクロスもオナニーもできなくなる呪いをかけたんだ。

http://food6.2ch.net/test/read.cgi/jfoods/1139485854/
↑のスレに「おちんちんランドからきますた」と書き込めば呪いは消える。
健闘を祈るよ(´・ω・`)

じゃあ、注文を聞こうか。
132Mr.名無しさん:2006/03/01(水) 06:13:55
h
133過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/01(水) 13:41:55
はい最終話いきまーす
昨日投下できる予定だったんだけど、ちょっと野暮用で無理だったんで、遅れながら投下

>>119の続きは次のレスからー
134過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/01(水) 13:42:37
 何気なく空を見上げてみる。
 青色の空に走る一本の飛行機雲。
 ああ、あの時と同じだ。ひまわり会の参加が決まった次の日、陽菜に会いに行ったときと同じあの空だ。
 この町には、陽菜との思い出がたくさん詰まっている。
 この町にある何かを見るたび、陽菜のことを思い出す。
 じわり、と視界が滲む。袖で拭い、手に持った花束をギュッと握りなおす。
 さて、行こう。陽菜が待っている。



   空に光る  最終話



 目が覚めると、私は集中治療室にいた。
 あ、そっか。もう、終わりなんだ。
 なんとなく、そんなことを直感した。
「陽菜、大丈夫?」
 声が聞こえた。声がしたほうに顔を傾けると、お姉ちゃんがいた。
 ああ、やっぱり瓜二つだなぁ。鏡でも見てるみたい。
「……らいようぶ、らよ」
 上手く呂律が回らない。喋ろうとしたことが、ちゃんと話せない。
 私は大丈夫だって、お姉ちゃんに伝えたいのに。
「おねえ……ちゃ、ん」
「何!? 何か欲しいの!?」
「……ひろき……」
 弘樹。最後の時に、弘樹に会いたい。
 ちゃんとわかってる。これが最後だって。今この時が、最後の最後なんだって。
135過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/01(水) 13:43:14
 わかってるから。だから、最後に。
 弘樹に。
 私が一番大好きな人に、会って話したい。
 ありがとうって、伝えたい。
 しあわせだって、伝えたい。
 大好きだよって、伝えたい。
「相楽君、もうすぐ来るから! だから、頑張って!」
「……ん」
 たぶん、ちゃんと頷けたと思う。
 まったく、いつも遅いんだから。
 私は弘樹が来ると思って、無理して起きてたのに。体がしんどい時だって、ちゃんと起きてたのに。
 弘樹はそんなこと、わかってないんだろうなぁ……。
 回りにはお父さんがいて、お母さんがいて、お姉ちゃんがいて。
 今日も、きっと空は綺麗な青色なんだろうなぁ。
 がたんって音が鳴った。あ、やっと来た。
 そう何回も呼ばなくたって聞こえてるよ。汗だくで息も切れてて、ちょっと深呼吸したほうがいいんじゃない?
 手を出そう。
 ……あれ、ちょっとしか動かないや。あ、弘樹のほうから握ってくれた。
 なんか……すごい嬉しい。
 いきなり窓から飛び込んできて、可愛くない目覚まし時計くれて、二人で歌を歌って、楽しかったなぁ。
 歌の練習も、小さな祭りも。私にとって、この夏は夢見たいな日々だった。
 だからさ、最後に。一番最後に、聞きたいことを、聞いてもいいかな。
「ひろ……き」
 ギュッと、もっと強く私の手を握り締めて、何だって答えてくれた。
 だから、私は次の言葉を話した。
「わたしを……えら、んで……こうかい、して、ない?」
 返ってきた言葉は真っ直ぐで、柔らかくて、暖かくて。心の中が一杯になって、涙が止まらなくなった。
 よかった。弘樹、ありがとう。
 安心したら……眠くなっちゃった。ちょっとだけ、寝ようかな。
136過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/01(水) 13:43:45
 あ、そうだ。弘樹に伝えないと。
「ありがとう……。わた、し、しあわせ、だよ。あと……だいすき」
 もう、言葉も出ないや。
 眠い。おやすみ。

 弘樹、私ね。
 貴方に、大切なものいっぱい貰ったよ。
 もう、後悔なんて何一つ無いくらいに。
137過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/01(水) 13:44:59
 残暑はその勢いを翳らせること無く、いまだ蝉の鳴き声は高く響き、空はどこまでも広がっていた。
 目を開けた。見えるのは太陽の熱に揺れるアスファルト。病院へと続く、歩きなれた道。俺の前に立つのは、陽菜の双子の姉、真咲千影。
 それは白昼夢というのだろうか、ほんの少し前のことなのに、随分と昔のことを夢見た気がした。
「貴方は、後悔しないんですか?」
 不意に真咲千影が口を開く。
「ああ」
 当然のように、俺は頷く。
「それが答えですか。貴方は陽菜の夢を守ってくれた。そのお礼に私の力でもう一度、貴方の中であの瞬間に戻って、全てをやり直すことができたのに。貴方の中でだけ、無かったことにできるのに」
 真咲千影は相変わらず、感情を表に出さずにそういった。
 よくわからないが、もしかしたら俺と同じ夢を見ていたのかもしれない。
「その選択は、傷つかないんですか?」
「傷つくさ」
「素直なんですね」
「傷つきすぎて死んでしまいそうだ」
「少女マンガみたいですよ」
 初めて、真咲千影が表情を緩ました。
 似ている。陽菜に。
「私は、あの子からたくさんの物を奪ってしまいました。そして最後の最後に、あの子が一番大切なものも奪おうとしている……」
 ため息を漏らす真咲千景に背を向け、俺はアスファルトを歩き始める。病院へ続く一本道を。
「それでも、俺は後悔なんてしないから」
 そう言い残して。
138過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/01(水) 13:45:52
 俺は選んだ。
 きっと、何度同じ選択を迫られても、俺は同じ決断をするだろう。
 俺が陽菜に上げることができたって言う幸せ、陽菜が抱いていた夢。それを無かったことになんてできないから。
 だいたい、俺が無くしてしまったら、あいつの思いはどこに消える。俺が最後の瞬間に答えた言葉には、一欠けらの嘘もない。俺は後悔なんてしない、忘れたいなんて思わない。
 ただ、悲しいんだ。
 そのことに気付き、受け入れる。
 堰を切ったように涙が溢れそうになり、ただ歩く。
 陽炎揺らめく道を陽菜のように眉間にしわを寄せ、口をキュッと結んで。
 それでも真咲千影に悟られないように、足取りだけはただ真っ直ぐに。
 幾千、幾万と語られる物語のように、涙を拭いて君との思い出を糧にして生きていこう、君の分まで一生懸命生きよう。そんな格好いい終わり方は出来ない。
 もう、堪えきれずに涙がボロボロと溢れ出す。
 この思いも、いつかは時が翳らせるのだろうか。
 この涙、この悲しみ。これもいつかは夏の太陽に照らされて蒸発していく水源のように枯渇し、底に沈んでしまっていたものが顔を除かせるのだろうか。
 でも顔を除かせるのは、君との思い出。大切な、輝いていた日々。
 そして時は残酷に、今は目を閉じれば聞こえてくる声、映る顔、感じる温度も、砂の城が波に崩されていくように、徐々に輪郭を失って、忘れられていくんだという。
 それが、前向きに生きる。そういうことなんだろうか。
139過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/01(水) 13:46:42
 通いなれた206号室に入る。
 ベッドには、いつものように延命措置につなげられた陽菜の姿があった。
 その目が閉じて、もう一ヶ月になろうとしている。
 いつその目が開かれるのかもわからない。いや、もうこのまま開かないんだろう。
 でも、俺は忘れることなんて出来ない。
 この顔を、あの声を、あの日々を。
 全てを無かったことにして、日常に戻る事だってできた。
 だけど、俺はこれを選んだ。
 後悔なんてしない。絶対に、後悔なんてしない。
 忘れなんてしない。絶対に、忘れてやるもんか。
 俺より少し送れて、真咲千影が病室に入ってくる。
「……涙を、拭いてください。陽菜の前ですよ」
 優しい声音。いつもの真咲千影とは、まったく違った。
 ポケットから取り出した花柄のハンカチを受け取り、流れ続ける涙を拭く。
140過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/01(水) 13:47:42
 涙が止まらない。

 たとえ、そうだとしても。

 格好悪く、流れ続ける涙が止められないとしても。

 忘れてなんてやるもんか。お前が忘れろって言ったって、絶対に忘れてなんてやらない。

 真っ直ぐに駆け抜けた夏は、終わりに近づいている。

 俺は。

 涙が病室の床に落ちていく。

 俺は……。

 それでも涙を拭わない。

 この夏を。

 君といた日々を忘れない。

              −Fin−
141Mr.名無しさん:2006/03/01(水) 13:49:45
>>140
。・゚・(ノД`)・゚・。
ちきしょー普通に泣いちまったじゃねーか

GJ
142過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/01(水) 13:49:54
結局どっちにしようか迷った挙句、微妙なところで終わらせてみたんだけど……考えてみたら失敗だったかも
なんか後味の悪い終わり方になってしまいました。批判はバリバリ受け付けるから
さって、これでしばらくは名無しです
また次の過疎で会いましょう。では
143Mr.名無しさん:2006/03/01(水) 13:58:25
>>142
完全に死んじゃったんじゃなく、延命装置につながってる状態ってのは意外でいいと思った。
しかし、周りの連中がもう助からない、みたいな前提で喋ってるのが違和感だったかな。
ちょっとくらい希望持っとこうよ、みたいな

まあ何にしても乙だった
144Mr.名無しさん:2006/03/01(水) 18:36:20
乙!今回も楽しめました
145Mr.名無しさん:2006/03/02(木) 07:49:01
乙!この終わり方で良かったと思う
146Mr.名無しさん:2006/03/02(木) 21:17:54
乙、楽しませてもらった。泣きそうになったわ。

終わり方は、いいんじゃないか。
ただ(言い方は悪いが)陽菜が死ぬか目を覚ますまで
弘樹は暗いんじゃないかな、という感じはする。

あと志紀と彼方がセクースしてるのがショック。
147Mr.名無しさん:2006/03/03(金) 00:39:37
これだから毒男は・・・





              ・・・orz
148Mr.名無しさん:2006/03/03(金) 00:40:52
萌えるためのスレで鬱になるとは・・・
想定外('A`)
149過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/03(金) 01:10:06
名無しになるとか言ったくせにコテで書き込み

>>143
本当は陽菜死亡エンドの予定で、そのために文章構成してから無理矢理延命措置をぶち込んだから、こんな形になった
ちゃんとそれ用に書き直すべきだったなぁ・・・

>>144-145
どもです
褒めてくれる人は一番の励み

>>146-147
あー、なんとなく避妊具どうのこうの書いたんだけど、Life lifeのほうのイメージ崩れたか・・・

>>148
ごめ、スレ違いな小説になってるな確かに
次は鬱にならないやつを心がけるよ

さーて、んじゃ今度こそ名無しに戻ります
ちょっとネタ切れ状態だから、今回の過疎中に現れることはなさそう
んじゃ
150148:2006/03/03(金) 01:14:45
>>149
いや、そういうことじゃなくて>>146-147の流れでの鬱だよ
俺も年齢=('A`)の毒だからさ・・・
151過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/03(金) 01:16:04
ナイス勘違い俺っ!!
え、ていうか鬱なエンドだったと自分でも思うんだけど、それはいいのか……?
152Mr.名無しさん:2006/03/03(金) 01:20:20
一つのエンドとしては充分ありだろ
153Mr.名無しさん:2006/03/03(金) 16:44:54
はぁ・・
プレステのコントローラーをほうり投げるとため息をひとつ。
受験に失敗して2週間、ここのところ毎日こうだ。
勉強も手に着かず、かといって気分転換もできず。
― このままじゃいけない
自分に言い聞かせるものの何にも気力が沸いてこない
ふと見たデジタル時計は22時を指していた。
― 今からでも勉強した方がいい。今日も全く勉強してないだろ
自分で自分を叱っても体は自然とベッドに潜り、携帯をいじり始めた


「・・・死にてー」
不意に口からそんな言葉が出てきた。
そして無意識に
ふと開いた携帯の検索サイトに

「死にたい」

と打ち込んでいる自分がいた
154Mr.名無しさん:2006/03/03(金) 21:36:53
新作!?? まぁ、期待保守
155Mr.名無しさん:2006/03/03(金) 21:40:19
いいからsageろアホ
156Mr.名無しさん:2006/03/04(土) 05:41:38
受験に失敗した俺は
偶然見つけた廃墟サイトにひっそりと書かれた書き込み

「来月自殺します。同じように自殺したい人、一緒に死にませんか?」
に興味本位、あるいはシンパシーから返事を書き込んでしまう。
この時、俺は本気で死にたいと思っていなかったし
この書き込みをした人と悩みを共有して
お互いに解決、励ましあっていこう、
そんなポジティブな考えさえあった。

後にあのようなことになるとは知らずに。
157Mr.名無しさん:2006/03/04(土) 20:00:48
自殺サイトで会った相手が超美人で「どうせ死ぬならやっちまえ」って事件ないのかな。。
まぁ美人とイケメンは人生楽しくて仕方ないのに死にたいなんて思わないか・・・

ブサメンの俺も思わないけどね
158Mr.名無しさん:2006/03/04(土) 21:58:33
イケメンな俺の友達が自殺未遂起こしたこととかあるぞ
イケメンはイケメンで色々と大変なことがあるみたいだな
貧乏人は金持ちを羨ましがるけど、金持ちは金持ちでやっぱ大変なとことかあるだろ
それと同じじゃね?
159Mr.名無しさん:2006/03/04(土) 22:21:45
無いものねだりってやつね

とある商品にそれほど購買意欲が沸かなかったが、在庫切れで買えなくなると急に欲しくなる
てのと同じだな
160Mr.名無しさん:2006/03/05(日) 12:09:39
ふむふむなるほどね。。
保守代わりとはいえスレの流れ乱してスマソ。

では引き続きどうぞ↓
161Mr.名無しさん:2006/03/05(日) 21:48:10
続きじゃないが保守
162Mr.名無しさん:2006/03/06(月) 00:22:22
ここであえて保守る
163Mr.名無しさん:2006/03/06(月) 17:24:51
保守
164Mr.名無しさん:2006/03/06(月) 23:00:28
保守
165Mr.名無しさん:2006/03/06(月) 23:16:20
このまま本格的な過疎になりそうな悪寒保守
166Mr.名無しさん:2006/03/06(月) 23:20:41
いつものことだ
気にするな
167Mr.名無しさん:2006/03/06(月) 23:34:59
最近過疎っていう過疎がなかったから、過疎状態は久々だな
168Mr.名無しさん:2006/03/07(火) 14:43:35
確かに最近投下ラッシュだったしなぁ。。まぁ俺にはせいぜい保守することしかできない
169Mr.名無しさん:2006/03/07(火) 23:11:48
過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzIもしばらくは来ないと明言してるしな
これからまた保守の日々が続くのか
>>156の続き期待保守
170Mr.名無しさん:2006/03/07(火) 23:32:00
突出 玲の続き未だに待っている俺ガイル
171Mr.名無しさん:2006/03/07(火) 23:34:25
俺漏れも
172Mr.名無しさん:2006/03/07(火) 23:43:54
書いてる職人さんも忘れてるような悪寒
173過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/08(水) 01:04:39
なんか過疎ってるっぽいから、新作投下
先に主な登場人物の名前だけ紹介しておきます

主人公   袴田翔矢
ヒロイン1 桐嶋七海
ヒロイン2 チビ女(名前は二話で)

んでは、次のレスから新作の第一話
174過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/08(水) 01:05:29
   淑大オカ研っ!! 第一話


 拝啓、母さん。
 東京は怖いとです。右も左も敵だらけとです。
 今日、自分は親切心からあることを行いました。
 その結果……。
「慰謝料ひゃくまんえんっ!!」
 ただ自分は、自分の部屋のベランダに飛んできた『ある物』を、持ち主に返そうとしただけとです。
 それを説明したのに
「払えないなら慰謝料にひゃくまんえんっ!!」
 ひどいとです。あんまりです。なんで払えないなら〜、のくだりで金額が増えるとですか。
「じゃあ、仕方ないから明日、西塔三階、304号室に来なさいっ! 午後五時だからねっ!! 遅れたら慰謝料さんびゃくまんえんなんだからっ!!」
 自分は今日から、淑大オカルト研究サークルの部員になってしまったとです。
 母さん、自分は今日も、あまり元気なく生きているとです。
 袴田翔矢より 敬具。
175過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/08(水) 01:06:26
 朝、すずめの鳴き声で目を覚ます。
 一人暮らしとは案外気楽なものだ。金銭的なことから一人でいる孤独など、大変なことは多いと聞いていたのに。
 まぁ、元々俺は一人でいることが好きだったし。考えてみれば、一人暮らしになったということは、自分の時間が多く取れるようになったということか。
 今年、俺は大学生になった。愛知の田舎町からこの東京に、大学進学のために上京してきた。
 東京とは一体どんなところなのか。期待を胸に抱いてやってきたはいいが、思ったよりも住み心地はいい。
 噂は本当だったらしく、近所との付き合いは皆無に等しい。引っ越した時、俺は挨拶をするつもりだったけど、大家さんに『そんなことする必要はない』と言われ、結局挨拶はしなかったし。
 アパートの階段とかで近所の人に会っても、会釈すらなし。
 最低限の友達は作るが、そこまで人付き合いが好きではない俺にとっては最高の環境。
 ビバ東京、東京最高、さすが東京。そこに痺れる憧れるぅ!!
 部屋を何気なく見渡してみると、引越しの残骸たちが転がっている。
 引越し業者のロゴが入った段ボール箱。明日が入学式になるわけだし、いい加減片付けないとなぁ……。
 でも、この量を片付けるのは正直しんどい。ざっと見渡しただけで……ええと、ああもういいや。数えるのも面倒くさい。
 とりあえずだ、この大量の段ボール箱は、俺一人で片付けるには手に余る。
 早速携帯電話を取り出し、増援を求めることに。アドレス帳から呼び出したのは、唯一俺の出身高校で同じ大学へ進んだ中学時代からの友達、桐嶋七海。
 住んでいる場所も近所だし、俺が入居したアパート……つまりここの場所だってちゃんと知っている。
 ウダウダと口うるさいやつだが、なんだかんだで何かと世話を焼いてくれる頼れる女友達。それが七海。
 呼び出し音が2コール目に入った頃、プツッと音が聞こえて受話器の向こうから声が聞こえる。
『もしもし?』
 七海の声だ。中学時代から嫌と言うほど聞いていたから、受話器越しでも簡単にわかる。
「あー、もしもし。オレオレ、オレだけど」
『……言っとくけど、金なら無いわよ』
176過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/08(水) 01:07:07
「えぇー、そんなこと言うなよ。こないだ事故起こしちゃってさぁ、慰謝料請求されてるからこの口座に三百万円を……」
『あんたねぇ、振り込め詐欺なんて今時どこのアホでもやらないわよ。で、何の用事?』
 お前から振って置いてそれはないだろ……。
 まぁいいやと思いなおし、本題を切り出す。
「実はな……お前に話があるんだ。これから俺が楽しい大学生活を送れるかどうかの瀬戸際なんだ……」
『な、なによ? そんな真剣な声出して……』
「お前に、頼みがあるんだ。聞いてくれるか?」
『ま、まぁ、あんたがどうしてもっていうなら聞いてやらないこともないけど……』
 よし、言ったな。
 今確かに言ったな。証拠を確保するため、この通話は録音中だぜ。
 それにしても最近の携帯はすごいな。ボタン一つで通話中の音声を録音できちゃったりするんだから。
 こんなどうでもいい機能を充実させる前に、もうちょっと電波よくしてくれ。東京の癖に俺の住んでる場所は電波常に一本だ。
「どうしても、なんだよ。お前にしか頼めないことなんだ」
『そ、そう。あたしにしか頼めないこと、か。し、仕方ないなぁ、あたしがいないと何にも出来ないんだから』
「ほんとだよ、お前がいないと何も出来ないんだよ俺は。とりあえず、俺の部屋に来てくれ、話はそれからだ」
『わ、わかった。一時間くらいしたらつくから』
「一時間? お前のとこから俺んとこまでどんなに頑張っても三十分はかからないだろ」
『あ、あたしにも色々あんのっ!! いいから黙って待ってなさいっ!!』
「少しでも早くお前に会いたいんだよ」
『……わ、わかったよ……。すぐに行くから待ってて』
 電話を切る。
 よし、成功。昔からこいつはこういう誘いは断りきれない所がある。この辺をちゃんと理解しているのが、俺の強みというものだろうか。
 それで思わぬ面倒ごとを押し付けられるのだが、結局は最後まで終わらしてくれるのだからありがたい。
177過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/08(水) 01:07:59
 それから待つこと数分。インターホンが部屋の中に鳴り響く。
 まだ五分くらいしか経ってないのに、もう来たのか。普通に歩けば10分くらいかかる場所なのに。
 ドアを開けると、額に汗を浮かべて呼吸を乱れさせている七海が立っていた。
「よう、わざわざ悪いな」
 とりあえず、侘びを入れることだけは忘れない。なぜかって、俺は英国紳士だからさっ!!
 生まれも育ちも日本だけどな。
「そ、それはいいから……で、頼みって、何よ?」
 途切れ途切れな声で尋ねられる。とりあえず
「まあいいから、上がれよ」
 今ここでその真意を伝えてしまうと、直で帰ってしまいかねない。
 ここは上手く部屋の中に誘導して、とりあえず逃げ出せない状況を作り上げる。これぞ兵法というものだ。わかったか関羽。
「う、うん」
 恐る恐る部屋に上がる七海は、どこか余所余所しい。大げさすぎたのだろうか。
 部屋に入ると同時に、七海は目を丸くして
「うわ……これ片付けたら?」
 段ボール箱のことを言っているのだろう。その言葉にまさか自分が片付ける手伝いをするはめになるなんてことを予言しているニュアンスは欠片も存在していない。
「とりあえず、その辺に座っててくれ。何か飲むだろ?」
「あ、じゃあお茶」
 七海は確か、日本茶が好きだったはず。冷蔵庫をあけ、綺麗なグラスコップに緑茶を注ぎ、七海の前に置く。
 これで恩を売っておくことにより、断るに断れない状況を作る。これぞ兵法というものだ。わかったか曹操。
「ほれ、遠慮はいらんから飲めよ」
「……ありがと。あの、それで、話って何?」
「……実はな……」
 よし、しっかりと確認だ。
 ちゃんと部屋の中に誘導した。これで逃げ出しにくい状況に追い込んだ。
 茶も出した。恩がある以上、頼みは断るに断れないだろう。
 そして極めつけは俺の携帯電話だ。どうしてもっていうなら聞かないことも無い。そんな言葉が見事に収録されている。
 不足は無い。これぞ兵法というものだ。わかったか……もう知らねぇ。
178過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/08(水) 01:08:40
「まず、この部屋を見て欲しい。この部屋を見てどう思う?」
「は? え、その、ひ、広いね」
「それだけか? もっと別の所があると思わないか?」
「青色を主にしたんだね。いい感じじゃん」
 何かおかしい。七海の表情にそんな色が浮かぶ。
「違う、違うんだ! もっと別の……目を背けてはならない現実が存在するんだ!!」
「……なんとなーく、なんであんたがあたしを呼んだのか察しが付いて来た」
「そうか、それなら話は早い。やっぱお前は優しいなぁ、快く承諾してくれるなんて、まるで宮沢賢治のようだ」
「宮沢賢治がどんな人かは知らないけど、つまりあんたはあれね、あたしに片付けるの手伝えってことね」
「片付けるって何をだ?」
「段ボール箱」
「ええっ!? そんな、手伝ってくれるんですかっ!? さすが桐嶋七海さん、素晴らしい人だっ!!」
 額に手を当て、『白々しいことを』とか呟きつつ大きなため息をつく。
「わかったわよ。まったく、あたしがいないと何もできないんだから……」
「そうですよぉ、ボクはあなたがいないと何も出来ない情けない男の子なんですよぉ」
「し、仕方ないわね、そう言うんなら、これからも世話してやらないこともないから」
「マジ? じゃあ手始めに、この段ボール箱全部片付けて」
「……あんたねぇ……」
 あれ、なんで手が振るえてんの? 七海が世話してやるって言ったから世話してもらおうとしただけなのに。
「調子に乗るなぁー!!」
 そんな声と同時に、遥か後方へ吹き飛んでいく俺がいた。左脇に凄まじい痛みを感じつつ。
 最後の最後、僅かにスカートの隙間から見えた白と黄緑の縞パンが、今も忘れられない。
179過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/08(水) 01:09:32
 脇の痛みを抱えながらも、どうにか入学式を終えた。
 入学式の内容は、最高学年の主席挨拶と、学長挨拶などなど。あとは大まかな規則みたいなもの。
 まぁ、規則なんていってもほとんど無いようなもので、警察沙汰にはならないようにとだけ注意された。
 そんなことそうそうは無いから、別に気にかける必要もないだろう。
 それよりも、主席の人の経歴のほうが凄かった。
 俗に言う『イケメン』とかいうやつなのだろう。男の俺から見ても格好いい男の人だった。
 成績は優秀で、すでに卒業論文も書き上げてしまっているのだとか。しかもその論文が学会で評価され、卒業後は研究者として日本を担う存在に云々……。
 まあとりあえず、すごい人ってことか。
 男だったからそこまで細かく覚えてないんだけど。顔を見れば思い出すかもしれないが、名前なんて聞いてもパッと来ないんだろう。
 大学の体育館から外に出て、首を締め付けていたネクタイを少しだけ緩める。それと同時に
「よっ、翔矢」
 後ろから、俺の不調の原因となった人物、七海が声をかけて来る。
「ああ、七海。入学おめでとう」
「あんたもね」
 言いながら、二人同時に苦笑を漏らす。
 つい先ほどまで何の実感もわかなかったのだが、こうやって入学式を終えてしまうと、嫌でも実感せざるを得ない。
「なぁ、今日はこれで帰っていいんだったよな?」
 どうせ帰ってもやることがないし、帰りにゲーセンでも行ってこようか……。
「サークルに入るつもりが無ければ帰っていいんじゃない? サークルの紹介がこの後あるみたいだけど、自由参加って書いてあるから」
「ん? そんなこと書いてあったのか?」
 体育館に入るときに渡された冊子を見ると、確かに書いてある。
「あんたどうすんの、サークル」
 尋ねられ
「どうしようかなー」
 そんな言葉を返しつつ、サークル一覧を流し見していく。
 部員数順になっているのだろうか。メジャーなサークルの上部を占めている。
 上のほうは、バスケとかバレーとか野球とか。文化部なら美術に吹奏楽、軽音楽。
180過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/08(水) 01:10:11
 まぁ、やっぱ学内での権力も部員が多いほうが強いんだろう。だからこんなすぐ目に付く場所に掲載されてるんだろうな。
 っていうか、下のほうはあれだな。とても入る気になんかなれないようなサークルばかり。
 カーリング、自転車、登山とか。
 つーか、この『オカルト研究』ってのはちょっとな。オタクくせぇ……。
 こんなサークル、たとえ親が人質に取られていても入ってやるものか。
「見たとこ、これといってめぼしいサークルも見当たらないし。やめとくかな」
 一分ほど悩んだ末、そんな答えを出す。
 汗と涙の大学生活。そんなのお断りだ。
「えー、陸上辞めちゃうわけ?」
「ん? ああ、別に好きでやってたわけじゃないしな」
 俺は小学校から高校まで、ずっと陸上を続けていた。一応高校二年の頃にインターハイにも出場したのだが、別に好きでやっていたことじゃない。
 周囲からの期待を裏切るに裏切れず、ダラダラと続けていたことだ。
 大学に入って陸上を続ける必要もなくなったし。帰宅部っていう立場も、一度味わってみたかったところだ。
「そっか……。ま、あんたがやらないっていうんなら無理にとは言わないけど」
「無理に言われてもはいらねぇって」
 言いながら踵を返し、自宅に向かう。
「……あんたが陸上やってた姿、あたしは好きだったんだけどな……」
 そんなつぶやきは、聞こえないふりをした。
181過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/08(水) 01:11:09
 結局どこにも寄らず、そのまま部屋に戻ってウダウダと時を過ごす。
 別にやることもないし、少しでも節約しておいたほうが後々楽になるだろうから、金を浪費するようなことは出来る限り避けたほうがいい。
 とすると、部屋で漫画でも読むか、テレビでも見るか。
 テレビだって金の浪費といえば間違いではないけど、そこまでケチケチする必要も無いだろう。
「ふぁ〜……。暇だぁー」
 とつぶやいてみるが、当然なんの答えも無い。
 部屋を見渡してみると、昨日七海が手伝ってくれたおかげで段ボール箱は全て片付き、快適な部屋に変貌していた。
 とりあえず、テレビでも見るか……。
 そう思ってリモコンを手に取り電源を押すと、そのままのチャンネルでリモコンを放り投げる。
 中途半端な時間。テレビの内容は、ほとんどが主婦をターゲットにしたものばかりだ。
 放り投げたリモコンを拾いなおして、パチパチとチャンネルを変えていく。
 と、天気予報に気付きそのチャンネルで止めた。
 一応、天気を知っておいて損はないだろう。
『今日は四時ごろから雨が降り始め、明日の明け方には上がるでしょう』
 四時ごろか。
 そういや、確かに雲行きはよろしくない。時計を見ると三時半、天気予報を鵜呑みにするのなら、そろそろ降り始めてもおかしくない。
 窓越しに空を見たついでに、ベランダにぶら下がる洗濯物が視界に映る。
 今からでも降り始めそうだし、取り込んでおくか。朝からずっと干してたし、もう乾いてるだろ。
 立ち上がり、ベランダに出る。洗濯物を軽く触ってみると、生乾き。
 ……部屋干しか。臭くなるけど、まぁ仕方ない。ベランダに屋根みたいなのはあるけど、こんなんじゃ小雨程度でも降り込んでしまいそうだ。
 ハンガーごと竿から外していると、足に違和感を感じる。むにゅっていうか、なんというか。何かを踏みつけた。
182過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/08(水) 01:12:00
 洗濯物が落ちたのか、と足元に視線を向けると、真っ白な何かが転がっている。
 見た感じ、布だ。だがおかしい、俺は基本的に、服の類は黒を好む。ズボンからシャツ、上着、細かく言えばパンツまで黒ばかり。白なんて一着も持っていない。
 ハンカチ……は違う。そもそも、俺はハンカチなんて使うほど繊細じゃない。トイレで手を洗えば、服で拭ってしまうような人間だぞ。
 考えていても仕方ないか。
 手に抱えた生乾きの洗濯物を部屋に放り投げ、腰を曲げて白い布を拾い上げる。
「…………」
 途端に、思考が停止する。
 大まかに言ってしまえば三角形、厳密に言えば六角形の白い布。部分的にレースが縫い付けてあって、一番長い辺の中心に小さいリボン。
 大きな穴が一つ、小さな穴が二つ。大きな穴は胴体を、小さな穴は足を通すということが簡単にわかってしまうこの形状。
 この独特な装飾と形状。間違いない、かの有名なウーロンが、どんな願いでも叶えてくれるという理不尽な竜にお願いしたあの物体。
 あの言葉を思い出してみろ。そうだ、ウーロンは確かにこう言った。
『ギャルのパンティーをおくれ!!』
 ああ、ウーロンよ。わざわざ竜になんか頼まなくても、ギャル……かどうかは不明だが、女性物の下着は簡単に手に入るじゃないか。
 なんせ、俺も知らぬ間にベランダなんかに転がってるんだからな。
「……って、これマズイだろっ!!」
 ちょっと待て、これは一体どういうことだ。
 七海のか? いやそんなことはないはずだ。少なくても、七海が俺の部屋に来たのは昨日をあわせて二回。そのうちの一回も、別になにもしてない。
 少なくても、七海の下着を洗わないといけなくなるような状況になんて陥るわけ無いじゃないか。
 だとしたら、これは一体どういうことだ。
 女性物の下着を握り締めたまま、一人ベランダで佇んで物思いにふける俺。カッコいー……くねぇ。
183過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/08(水) 01:12:54
 周囲を見渡すと、左右の部屋のベランダでも洗濯物を干しているのが目に入る。右……は男物の服ばかり、ということは違うはず。
 左……これだっ!! 干された洗濯物は全て女性物、間違いなく、風か何かで洗濯物が俺の部屋のベランダに飛び込んで来たに間違いない。
 とりあえず、左隣の住人が帰ってくる前に戻さないと。こんな姿を見つかったら下着泥棒と疑いをかけられてもいい訳が出来ない。
 こちらのベランダから隣のベランダまでの距離は、およそ1メートル。そしてそちらを向くと、微妙ながらも向かい風。
 放り投げてなんて見ろ。風に押し戻されて無駄な時間を浪費するだけだ。
 よしわかった、この状況を回避するには、こちらから精一杯手を伸ばして、あっちのベランダにこれを落とす。これしかない。
 ベランダの左端から精一杯体を乗り出し、手を伸ばす。あと少しで、あちらのベランダに手が届く。
 ……あと……少しだ……。
 ――ガラッ!!
 そんな音と同時に、目標地点のベランダから室内へ続く窓が開け広げられ、女性……いや違う、女の子が姿を現す。
「…………」
「…………」
 目が、合った。
 たぶん、見た感じは中学生くらいか。身長はたぶん、145くらい。現在の女子中学生の平均がどれくらいかはわからないが、たぶんクラスでも小さいほうだろう。
 ベランダに女性物の服しか干してなかったことを考えると、母子家庭。
 髪質はいいらしい。こんな日は湿気が多くて髪が広がってしまうらしいが、そんな様子はまったく見受けられない。
 茶色っぽい肩口くらいで揃えられた髪の毛は、根元まで同じ色。毛染めではなく天然なのだろうか。
 丸っこい目が、まるで小動物が外敵を威嚇するかのようにこちらを見つめる。
 とりあえず、どうしよう。
 互いに声を発することも出来ず、こう着状態が続く。
「……し……」
 声を発したのはチビ女。
「し……下着ドロボー!!」
 やっぱそう来たかぁぁぁぁ!!
184過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/08(水) 01:13:35
「ち、違うっ!! 俺はベランダに飛んできたこれをそっちのベランダに戻そうとっ!!」
「い、言い訳なんて聞くかぁぁぁ!! 寂しい下着ドロはさっさとそれ返して警察署へレッツゴーっ!!」
「ち、違うんだって!! つーか、お前さんじゃ話にならんから母親呼んで来いっ!!」
「ば、馬鹿にしてんのっ!? 私一人暮らしなんだからっ!!」
「ちゅ、中学生が一人暮らしかよっ!?」
「中学生っ!? 失礼な、私は大学二年生っ!! 一回ダブってるから今年21歳なんだからっ!!」
「に、にじゅういちぃ!?」
 おいおいおいおい、俺より二つも年上かよっ!?
「そ、そんなことよりっ!! さっさと盗んだ下着返しなさいっ!!」
「だ、だから盗んだんじゃないんだって! 頼むから警察に連絡とかやめてくれ!」
「じゃあなんで、私の下着持ってこっちのベランダに手伸ばしてんのよっ!?」
「だからさっき言ったろ、ベランダに飛んできてたから戻そうとしてたんだって!」
「い、慰謝料ひゃくまんえんっ!!」
 な、なんだそりゃぁぁぁ!!
「いいから俺の話を聞けって!!」
「は、払えないなら慰謝料にひゃくまんえんっ!!」
「なんで増えるんだよっ!?」
 二百万円なんて見たこともありません。
 こいつぁマジでヤバイ。
185過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/08(水) 01:15:21
「聞くけどっ、あんた、淑大!?」
「あ、ああ、淑大……」
 だからなんだっていうんだ。
「じゃあ、仕方ないから明日、西塔三階、304号室に来なさいっ! 午後五時だからねっ!! 遅れたら慰謝料さんびゃくまんえんなんだからっ!!」
「は、はぁっ!?」
 なんでさっきから請求された慰謝料が増え続けてるんだよ!?
「それと、さっさと下着返せっ!! いつまでも握ってんなっ!!」
 小動物のそれのような俊敏な動きで握り締めた下着を奪い取ると、チビ女は部屋の中にドスドスと足音を立てつつ戻っていった。
 ……西塔三階、304号室……。そこに何があるんだ……。
 咄嗟に携帯電話を取り出して、七海にダイヤル。
『はい、もしもし?』
「オレオレ、オレだけど」
『……また? 言っとくけど、金ならないわよ』
「頼む、三百万円くれ」
『……馬鹿。切るよ』
 プツッ、ツー、ツー。
 ……は、薄情者ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!
186過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/08(水) 01:16:10
「……ついに、この時が来てしまった……」
 憩いの広場と名づけられた、大学の中心部分に広がる中庭に設置されたベンチにて、大きくため息をつく。
 大学の校舎から頭ひとつ飛び出した時計台の時計を見ると、間違いなく時間は四時四十五分。
 約束(?)の時間まで、あと十五分。
 そして西塔に行くのであれば、あと五分もしたら五時に間に合わなくなる。無駄に広い校舎だ、しかも西塔なんて学校の端っこ。あんな辺境の地に、何が悲しくて行かないといけない。
 このまま逃げてしまおうか。そんな考えが頭を過ぎる。
 ……いや駄目だ。曲りなりとも、あのチビ女はお隣さん。今日すっぽかしたとなれば、すぐにでも乗り込んできて『慰謝料いちおくまんえんっ!!』とか言い出しかねない。
 裁判でも起こされたら洒落にならない。負けることは無いだろうけど、俺の社会的地位が危うくなる。
 とりあえず、下着泥棒の一歩手前まで進んでしまった男として、後世に名を残すことに……マジで勘弁してくれ。
 そうこうしている間に、四時五十分。もう行かないと間に合わない。
 咄嗟に、脳内にて選択肢が登場する。
[すっぽかす]
[チビ女に従う]
[七海を生贄に捧げる]
 ああ、俺としては一つ目か三つ目を有力候補に挙げたい。二つ目はいくら間違っても、選択したくない。
 でも、冷静に考えてみろ。このまま下着泥棒未遂として一生を過ごすのか、それとも今日一日の屈辱を我慢して、後の大学生活を謳歌するか。
 そうだよ、そうやって考えれば、明らかに後者のほうが利益が大きいじゃないか。
 そうだよな。うん、そうだよ。
 ってか、そう思いたい。
187過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/08(水) 01:17:12
 結局、西塔三階、304号室の前に到着してしまう。
 腕時計を見ると、まだ指定された時間の二分前。今ならまだ、引き返す事だって……。
 そして脳内で現れた選択肢は
[帰る]
[入る]
 迷う必要なんて無い。
 そうだ、さっきは何を血迷ったんだ。俺は悪いことなんてしてない。下着泥棒未遂なんて、まったくの虚実じゃないか。
 よし、帰るか。
 踵を返したその時
「こら、どこ行く」
 あの、ほんの少しも聞きたくない声が、俺の背後から聞こえてきた。
「……いやぁー、ガスの元栓閉め忘れてないか心配になっちゃって」
「あのアパート、ガス無いんじゃない?」
「そ、そうだっけ? あー、あれだ、部屋の鍵閉め忘れてないかなぁー」
「それは無いわね。今朝あんたに念を押しておこうと思ってドア開けようとしたら、鍵かかってたから。大家さんに聞いたら、もう出てったって言ってたし」
「……ご、悟飯がピンチなんだ」
「ピッコロにでも任せときなさい」
「現れるくせに、すぐ倒されるやつになんか任せておけるか」
「あんたが行ったら、きっと吹き飛ばされて遠くに見える岩山にめり込むことになるわね」
「サタンかよ……。……お、俺はどうすればいいんだよ?」
 振り返る。
 やっぱり、昨日のチビ女がいかにも、といった感じで仁王立ちしていた。
 身長差、およそ35cmほど。チビ女が俺を見上げる形となる。
「黙ってこの中に入ればいいのよ」
 そんなことをまったく気にせず、チビ女はこの部屋に入るようにと促す。
188過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/08(水) 01:18:06
「三角木馬とかないだろうな」
「なによそれ」
「……鞭とか、蝋燭とか……アイアンメイデンとかもないだろうな」
「ここはどんな部屋よっ!?」
「お前の生息地だろ? それくらいのことなら……」
「私は一体どんな人間だっ!?」
「えーと」
 ピっとチビ女に指差し
「見たまま」
 と答える。
 要するに、チビで凶暴で間違いなくSっ気がある女ってことだ。
「……もういいわ、あんたと話してると疲れる。部屋に入る前に、これに名前書いて」
 け、契約書!? 私は貴方の肉奴隷として、一生仕えます!?
 と思ったら、ただの入部届け。サークルは……。
「オカルト研究……」
「言っとくけど、あんたに選択の余地はないから」
「……ちょ、ちょっと、お前、これはさすがに……」
 見た瞬間に『入りたくない』と思わされたサークルに、俺は今こうやって、入部させられようとしているのか。
「慰謝料……」
「わ、わかったよっ!! わかったから、不当な請求はしないでくれ!」
189過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/08(水) 01:18:51
「わかればいいのよ」
 つーか、別に入ってもサークルに顔を出さなければいい話だからな。幽霊部員ってやつだ。
 サラサラと自分の名前を書き、入部届けをチビ女に手渡すと、チビ女は満足したようでうんうんと数度頷き、それを鞄の中にしまった。
「さって、入部も終わったことだし。あ、一応言っておくけど、サボったりなんかしたら慰謝料いっせんまんえんだから」
「…………」
 ぬ、ぬかったわっ!!
 まさかそう来るとは思わなかった……ああどうしよう……。
「ほら、部室入るわよ。他の部員はもうみんな来てるから」
「なあ、さっきの入部届け、返してくれない?」
「駄目よ」
「いやほら、名前間違えたかなー、なんて」
「別に大丈夫。名前なんて間違えてても、あとで何とでもなるし」
「……酷い……」
 神様、この哀れなボクを助けてください。
 ていうか、助けろ。
 そんな内心とは裏腹に、チビ女はドアノブに手をかけ、扉を開く。
 振り返り
「ようこそ、淑大オカ研へ」
 明るい声音で、言った。

つづく
190過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/08(水) 01:20:29
今回はスローペースで投下していく予定。よろしく
んで、今まで泣きの要素が入ってるやつばっか投下してたけど、今回は最初から最後まで泣きの要素何一つないから
かといって笑いもあんまりない。つまり中途半端ってことやねぇ
191Mr.名無しさん:2006/03/08(水) 06:35:21
期待☆
192Mr.名無しさん:2006/03/08(水) 12:17:50
それでも期待。
会話の掛け合いがなかなか楽しめる
193Mr.名無しさん:2006/03/08(水) 16:24:41
今回も良作っぽい雰囲気にwktk。
194Mr.名無しさん:2006/03/08(水) 17:25:23
>>193
sageようよ

よし!俺も何か書く!!!
別にお前等のタメに書くんじゃねーからな!!
195Mr.名無しさん:2006/03/08(水) 23:29:41
>>194
スマソorz
196Mr.名無しさん:2006/03/08(水) 23:32:24
よくあることだから仕方ない
これから気をつければいいんだし

>>190
良作の悪寒。期待

>>194
良ツンデレ期待wktk
197Mr.名無しさん:2006/03/09(木) 12:16:11
導入部、しぇいむおんのパクリ?
198Mr.名無しさん:2006/03/09(木) 12:42:20
導入部って最初のやつのこと?
ああ、確かに言われて見ればそうだな。似てる
199Mr.名無しさん:2006/03/09(木) 17:34:08
保守
200Mr.名無しさん:2006/03/09(木) 21:44:59
パクリ疑惑保守
201Mr.名無しさん:2006/03/09(木) 22:40:58
ていうか、パクリでもいいんじゃね?
俺もしぇいむおんの体験版やったけど、確かに似てた
でもその後の話の展開は全然違うし、面白けりゃいいだろ
これはこれで面白そうだから、期待保守
202Mr.名無しさん:2006/03/09(木) 22:45:31
だから萌えられればいいんだって
203過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/09(木) 23:00:48
>>197
しぇいむおん、ググッたら出たよ! ググるまで知らんかったですわ
まあ、ネット上じゃどんなこともいえるわけだし、その辺はそちらの判断に任せます

ちなみに今回の話を思いついた流れ
俺来月から進学のため、愛知の田舎から東京(とは微妙に外れているがほとんど東京)へ上京
        ↓
きっと東京ってのはこんなんだろうなー、と何気なく考える
        ↓
そうしたら次から次へと妄想が膨らむ
        ↓
これ、小説で書けそうだな。よしこの妄想を基盤にして話を作ってみるかー

あと、噂の冒頭部分について
うん、体験版やってみたけど、確かに似てるわ。つかそのまんま
こりゃパクリって言われて当然だなw
冒頭部分を手紙形式にしたのは、早いうちに主人公のフルネームを出しておきたかったことが理由
いい流れが思いつかなかったからこうした
あと、語り口調が東北っぽい件について(たぶん、ここが一番パクリという疑惑が濃いところ)
これは、今は消えうせてしまった『ヒロシ』をイメージした
愛知……俺が住んでる地区の方言はそんなに田舎って感じじゃないし、それ以外の方言なんて大阪、京都、あと東北系しか思い浮かばんかった
主人公の設定が田舎出身だから、より田舎臭さを出すために東北弁を採用したって流れっす

まあとりあえず、上記通りネット上じゃ何とでもいえるし、別にパクリって言われても俺としては問題ないから、その辺は読んでくれるみんなに任せるわ
んじゃ続き書いてきます
パクリ疑惑の作品なんか読むかっ! って人は挙手
別の話考えるから
204Mr.名無しさん:2006/03/09(木) 23:24:01
漏れは面白ければ何でもイイよ
そのしぇいむおん?とやらも知らんし。

と、いう訳で過疎時の繋ぎ屋さんにゃこれ続けて欲しい
205Mr.名無しさん:2006/03/09(木) 23:25:32
>>202で答えは出てるかと
206Mr.名無しさん:2006/03/09(木) 23:26:59
いや、俺もしぇいむおん知らないから普通にヒロシのパロだと思ってたし、別にそーゆーのがあったからって気にはしない。
だが、一つだけ言わせてもらおう…

 東 北 弁 じ ゃ ね ぇ ー !!
207過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/09(木) 23:31:31
>>204
うぃ、了解です

>>205
たしかにw

>>206
うえ、違うの?
俺のイメージではあんな感じなんだが
208Mr.名無しさん:2006/03/09(木) 23:34:40
ヒロシは九州だおwww
209過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI :2006/03/09(木) 23:42:34
そうなんかー、知らんかったわ
なんか、『酷いとです』みたいな感じで文章の中に『と』を入れるのは東北だと思い込んでた
あれは九州の方言なのか
210Mr.名無しさん:2006/03/09(木) 23:49:38
方言よりも、慰謝料釣り上がるくだりが檄似。
これはひどい。
211Mr.名無しさん:2006/03/10(金) 00:14:31
もうパクリでもどうでもいい
萌えられればそれでいいんだ
あんまパクリパクリ言ってると、せっかく作品投下してくれてる職人さんがやる気なくすからやめないか?
仮に最初はパクリだったとしても、展開は違うんだからいいと思うんだけど
212Mr.名無しさん:2006/03/10(金) 00:26:31
こういう展開は思いつきやすくないか?
激似だからってパクリ確定とは言えなくない?
213Mr.名無しさん:2006/03/10(金) 00:29:17
よし、分かった!
さらに俺がパクれば非難の矛先は俺に!
214Mr.名無しさん:2006/03/10(金) 00:37:57
>>213
ちょwwwww
215Mr.名無しさん:2006/03/10(金) 00:46:01
まあ、パクリでも何でも
どっちでもいいってことで。
しぇいむおん、おもすれー。
216Mr.名無しさん:2006/03/10(金) 01:08:12
じゃ、パクリ議論はここまでで糸冬
小説の続きをどうぞ↓
217本当にパクってみた:2006/03/10(金) 02:52:39


 お母さんへ

 ユウキです。
 楽しい生活を期待して来た福岡で、さっそく最悪な事があったとです。
 ユウキです。
 同じ熊本出身でもいい人ばっかとは限らんとです。
 ユウキです。
 『罰金1万払えないなら罰金2万』げな、有り得んこつば言ってくるとです。
 ユウキです。ユウキです。ユウキです。


 俺が一人暮らしをしてみたいと言った時、母は意外にもすんなり認めてくれた。
 今までのかわいがられようを顧みてもいくらかの抵抗があると思っていたので、拍子抜けしつつ少しの寂しさを感じた事を覚えている。
 あれからちょうど1ヶ月。
 相変わらず福岡の人の多さには慣れないが、入学当初の新鮮な気持ちは薄れていた。
 クラスメイトの名前も徐々に覚えてきて、ちらほらとサークル入部の話題が出てきた、そんなある日。
「なぁユウキ、お前どっかサークル入んの?」
 始まりは5限後の教室での瀬川の一言からだった。
「俺はまだ決めとらんよ。バイトの事もあるけん、じっくり決めようち思うて。瀬川は?」
 瀬川はクラスメイトの中で今のところ一番仲の良い奴だ。と言うか俺はコイツとばかりつるんでいるのだが。
 選択授業が同じだったお陰で知り合えた瀬川は、いわゆるイケメンではない。むしろ顔は悪い方だろう。
 だがコイツはそれを補えるだけの魅力を持っている、と思う。
 上手くは言えないが、1ヶ月にも満たない付き合いの、しかも男の俺がこう言うんだから間違いない。
218本当にパクってみた:2006/03/10(金) 02:54:04
 実際、高校時代にはかなりモテたらしいし、今だってよく女子が話しかけてくる。
 もちろん寄って来る女子目当てでつるんでいるわけではない。無いとは言わないが。
「俺はやっぱ卓球かなぁ。今日練習あるって掲示板に書いてあったからさ、ホラ、ラケット持ってきたんだぜ」
 と、リュックのポケットを開きながら瀬川。
 そう、瀬川は元卓球部、そして何を隠そう俺も6年間卓球部だったと言う訳だ。
 しかも趣味が合うだけでは無い。
「ジャーン、超ぼろぼろラケット〜……ってお前も持って来たんかい!」
「へっへー、俺のラケットん方が年季入っとろうが」
 波長も合うのだ。
「お前さっき決めてないって言ったじゃねぇかよ」
「色々試すっちこったい。今日は卓球、明日は……明日も卓球かな」
「明日は練習ねーよっ!……ったく、結局卓球なんだろ?ユウキも」
「瀬川が入ってくれっち頼むなら仕方無く入ってや」
「ハイハイ、んじゃ行くか」
 そう言って立ち上がった瀬川を見ながら、俺はラケットを鞄にしまおうとした……その時。
「きゃあっ」
 大学の教室の通路は狭い。その狭い通路に置かれた鞄に机の上から手を回すと、必然的に通路の中ほどを通過する。
 よって人が通る時には手を伸ばすわけにはいかないのである。
「あっ……と、ごめん…なさい」
 とっさに手を引いてから振り返ったためどこに当たったのかは見えなかったが、声の主が両手でスカートを抑えていることからも、その顔が恥ずかしさの色に染まっていることからも、
そして連れの女が嫌悪の感情を顕にしていることからも、その娘の大事な所の近くに俺の古ラケットが当たったのは明らかだった。
219本当にパクってみた:2006/03/10(金) 02:54:47
「えと……わざとじゃ…」
「アンタ、何ちこつばすっとね!」
「えっ……」
 俺は驚いた。それは怒声を上げたのが連れの女の方だった事に対してではなく、またその女がどうやら同郷出身らしい事に対してでもなかった。
 その女は声に出すよりも速く、その怒りを俺の頬にぶつけたのだ。
 そして俺のダメージはグーパンチ1発分だけでは済まず、つい開いてしまった右手から固い床へ落ちた6年の友は、木目に沿って真っ二つになる乾いた音を立てたのだった。
「おっ、お前こそ何ちこつばっ……弁償しろっ!」
 俺は内心半泣きだった。
「はぁ?何でアタシが!」
「当然だろ!お前が殴ったけん割れたとよ!弁償……罰金1万払えっ!」
「誰が払うか!大体アンタが悪いっちゃろうもん!」
「払わないなら罰金2万だ!」
「アンタ馬鹿!?」
 俺はヤケクソだった。人には自分が悪いだろうと思いながらも引き返せない時があるのだ。
 そして、そういう時に引き返させてくれるのが友人というものなのだが。
「おいユウキ、落ち着けって!」
「ユウキちゃん、私はいいから、とにかく落ち着いて!」
 ……あれ?
「……え?」
 その荒々しい場の雰囲気とは裏腹に、4人の声は見事に揃ったのだった。
220213:2006/03/10(金) 03:02:30
ごめん、方言とか適当w
てか初めて書いた&推敲能力無いからよく分からん文章でスマソ
思い付きで書いたものの…方言ってダメだなやっぱ('A`)
書いたからにはと貼っちゃったけどネタにもなりゃしない…

とゆーわけで吊ってきますorz
221Mr.名無しさん:2006/03/11(土) 00:21:57
保守
222Mr.名無しさん:2006/03/11(土) 17:14:35
作家が減っても保守
223Mr.名無しさん:2006/03/11(土) 17:15:42
すまんあげちまった・・・・・
吊って来る
224Mr.名無しさん:2006/03/12(日) 15:19:38
ほしゅ
225Mr.名無しさん:2006/03/12(日) 22:31:11
パクリ騒動でやる気なくしちゃったのか?
保守
226Mr.名無しさん:2006/03/12(日) 23:56:25
そんな出し惜しみするような大層なものじゃないだろが。
作品で吹き飛ばせばいいだけの事。
227Mr.名無しさん:2006/03/13(月) 01:07:14
一つの作品書くのってスゲー大変よ?
漏れも某スレで一回だけ挑戦してみたが、途中でグダグダになって散々叩かれた記憶がorz
228Mr.名無しさん:2006/03/13(月) 10:32:07
今思うと、初代1のクォリティは高かったよな。
どうしてこの板は作家を潰したがるのか。
だから毒なんだよと納得。
229Mr.名無しさん:2006/03/13(月) 11:08:29
このスレの職人さんは全体的にクオリティ高めだったと思うよ
230Mr.名無しさん:2006/03/13(月) 12:56:35
まあまあここはマターリと待とうぜ
231Mr.名無しさん:2006/03/13(月) 18:10:43
>>227
(´・ω・)あるある・・・
232Mr.名無しさん:2006/03/13(月) 19:15:23
あるある、面白いっていわれて調子に乗ったはいいけど
完結できず放置とかな
233Mr.名無しさん:2006/03/13(月) 22:51:00
長すぎたり、スレまたいだりすると、投下しづらかったり。

一度も完結させたこと無いな・・・
234Mr.名無しさん:2006/03/14(火) 11:19:24
まぁリアルでも何一つ最後までやり遂げた事なかったしな
235Mr.名無しさん:2006/03/14(火) 13:00:39
>>234は死後の世界の住人
236Mr.名無しさん:2006/03/14(火) 16:19:15
本当だw
237234:2006/03/14(火) 18:07:46
やべ!バレちった><;
238Mr.名無しさん :2006/03/14(火) 21:54:46
保守
239Mr.名無しさん:2006/03/14(火) 23:24:31
ageなくても保守になるんだっつの
240Mr.名無しさん:2006/03/15(水) 11:25:31
干す
241Mr.名無しさん:2006/03/15(水) 18:16:29
保守
242Mr.名無しさん:2006/03/15(水) 20:01:23
一日中毛布に包まって世界から逃げつつ保守
243Mr.名無しさん:2006/03/16(木) 13:28:43
ほす、ほされるの関係
244Mr.名無しさん:2006/03/16(木) 20:55:26
一応保守っておくから
もうっ、職人さんはまだなのっ!?
245Mr.名無しさん:2006/03/16(木) 21:46:22
>>244
もう少しまってくれ
数日中に何とかする
246Mr.名無しさん:2006/03/16(木) 22:21:34
>>245
ガンガレ
247Mr.名無しさん:2006/03/16(木) 23:50:15
>>245
た、楽しみになんかしてあげないんだからねっ!!
ま、まあ、少しくらいなら期待してあげてもいいけど……

……虚しいな
保守
248Mr.名無しさん:2006/03/17(金) 13:25:53
>>247
バロスwwwww

保守。
249Mr.名無しさん:2006/03/17(金) 17:57:27
>>247
萌えたw

保守
250Mr.名無しさん:2006/03/17(金) 18:14:48
>>247の人気に嫉妬

保守
251After a long time:2006/03/17(金) 23:34:20

教室の時計を見ると、5時を過ぎようとしていた。
物理の課題を忘れたせいで居残りを命じられ、もう1時間と30分にもなる。
しかもあのクソマジメな物理教師は6時まで帰ってこないらしい。
グラフ作りなどとっくに終えた俺は、一人、教室で小説を読んでいた。

「そんなことないさっ、そんなことないっさぁ〜」

今日からテスト1週間前なので、部活の声は聞こえない。
普段はにぎやかな校舎内も静まり返っている。
一人のときに変な唄を歌うのは、けっこうまえからのくせだ。
もし誰かに聞かれたりしたら自殺ものだけど、そのスリルがたまらない。
・・・マゾヒストじゃないよ?

「けれどたまにはっ」

Bメロにはいったところで、廊下から物音がした。
俺は急いで廊下に出て辺りを見回したが、誰もいなかった。
風だろうか。それとも空耳だろうか。
でも空耳がきこえるほど俺の頭はイカレちゃいない、はず。
そして俺にはその音が、人間の足音にしか聞こえなかった。

「まさかのホラー的展開が・・・」
「何してんの?」
「うわっっ?!」
252After a long time:2006/03/17(金) 23:35:19

急に後ろから呼び止められ、俺は持っていた本を落とした。
そして、ゆっくりと振り返る。

「何、してんの?」

そこに立っていたのは、佐藤あずさだった。

「何だお前か」
「何だとは何よ。しかもいきなり悲鳴あげて」
「いきなり声かけられたら誰でもびびるっての」

俺は落とした本を拾い、机の上においた。

「で、何してんの? 今日から部活無いはずだけど」
「物理の課題忘れて居残り。まさか18にもなって居残りさせられるとは・・・」

思ってもみない・・・こともない、か。
物理の成績やばいし。

「あんたってもう18なんだ? 誕生日って4月だっけ」
「そんなこと良く覚えてるな」
「こ、この前言ってたでしょ」
「この前?」
253After a long time:2006/03/17(金) 23:36:17

佐藤とは小学校からの同級生。
同じクラスになったのは小5のときだけだが、そのとき結構仲が良かった。
でも、仲が良かった反動と言うか何というか・・・
その後は廊下で会ってもお互いに何となく避けていた。
思春期とか、そういう感じで。
中学にあがってさらに疎遠になり、高校にあがって99%他人になった。
こういうことはよくあることだと思う。
今になって急に声をかけてくるなんて、かなりイレギュラーだ。

「この前って・・・最後に話したの、だいぶ前だろ?」

単純に考えて、6年ぶり。

「え、いや、それはそうだけど、何ていうか、その」
「もしかして、ずっと覚えててくれたのか?」
「そ、そんなわけないでしょ! あ、あぁそうだ、この前お母さんに聞いたんだ」
「・・・」

佐藤はもの凄くあたふたしている。
何がしたいのか、俺には良くわからない。

「あ、信じてないでしょ? 他人を信じられない人は、自分も信じられないんだよ」

俺の母親と佐藤の母親は仲がいいらしい。
でもそれは俺と佐藤の繋がりじゃなくて、お互いの兄貴同士の繋がりだ。
だから俺の誕生日を知ってるはずは無い・・・
っていうかもう7月なのに、俺の誕生日の話題がでるわけがない。
あと、言ってる意味がよくわからん。
254After a long time:2006/03/17(金) 23:36:59

「ってお母さんが言ってた」

お前の発言はすべて母親まかせかよ。

「・・・何がしたいんだ?」

俺は率直に聞いた。

「見かけたから、ちょっと挨拶しようとおもっただけ」
「そうか」
「・・・のはずだった」
「はぁ?」

意味深な言葉を吐くと、彼女は自分のかばんを漁り始めた。
そして、中から何かを取り出した。

「これ、あげる」
「これは・・・」

アヒルだった。
よく漫画でお風呂のおもちゃとして出てくる、黄色いアヒルだった。
そして何故か佐藤は自分の髪を束ねていたリボンを解き、そのアヒルの首に巻いた。

「何でアヒルなんてもってんの?」
「わたし、アヒルグッズ集めるのが趣味なの。携帯にも・・・ほら」

確かに佐藤の携帯には、アヒルのストラップが付いていた。
赤むらさき色の、不気味なアヒルが。
255After a long time:2006/03/17(金) 23:37:32

「アヒル、きらい?」

少し上目遣いに覗かれ、一瞬どきっとした。
俺は女の子っぽい女の子があまり得意ではない。
昔はそんなことなかったはずなのになぁ。

「好き? きらい? どっち?」
「アヒルねぇ・・・好きでもきらいでもないな。食べたらおいしそうだけど」
「北京ダックとか?」
「まぁな。ってかこれもらっていいのか? お前のコレクションなんだろ?」
「べ、べつにいいよ。家にはまだいっぱいあるし」
「じゃあもらっとく」
「それに今月の21日になったら、増える予定だし」

そういって佐藤はにやりと笑った。

「・・・そういうことか」
「3倍返しでいいよっ♪」

7月21日は佐藤の誕生日。
俺は今までこのことを忘れたことが無い。
何故って、それは。

「0721で、オナ・・・」
「死ねっ!!」
256After a long time:2006/03/17(金) 23:38:32

殴られた。とても痛い。
何もグーで殴らなくてもいいのにと思う。
まぁ下ネタを言った俺が悪いんだけど。

「でもこのリボンは?」
「え、あぁそれ? な、なんとなくよ、なんとなく」

何か見覚えがあるようなないような・・・

「あとやけに汚いなこのアヒル」
「うそぉ? 毎日ちゃんときれいに使ってたはずだけど」
「毎日ちゃんときれいに使ってた?」
「うん、毎日お風呂でそれを使ってオナ・・・って何をいわせんのよ!」

殴られた。とても痛い。
何もグーで殴らなくてもいいのにと思う。
ってか今のは俺に非はないはずだ。

「それじゃあ、ありがたくいただきます」
「大事に使ってよね」
「お風呂でこれを使ってるお前を想像して・・・」
「・・・マジで、殺すよ?」

この世に100%のことなどないと思う。
でもこれ以上言うと、佐藤に殺される。100%、間違いなく。
257After a long time:2006/03/17(金) 23:39:06

「じゃあ私の誕生日、よろしくね」
「はいはい」
「じゃあそういうことで〜」

佐藤はうれしそうな顔をして、教室を出て行った。
と思ったら急に戻ってきた。

「アヒルのリボン、絶対に解いちゃだめだからね」
「はぁ?」
「絶対に絶対に、といちゃダメだからね!」
「何で?」
「何ででも!」

そういうと佐藤は今度こそ教室から出て行った。
あ、途中でこけたっぽい。
でもまたすぐに走り出したみたいだ。

「ふぅ・・・」

いくら鈍感な俺でも、佐藤がリボンを解いてほしいことぐらいわかる。
俺はアヒルの巻いてあるリボンをゆっくりと解いた。
そしてそのリボンを裏返す。
258After a long time:2006/03/17(金) 23:40:02


「・・・これって」


そこにはこう書いてあった。



「おたんじょうび、おめでとう!」



小学生が書いたかのような、幼い字。




その字は、幼い頃の俺の字に、とてもよく似ていた。


259Mr.名無しさん:2006/03/18(土) 02:17:49
なんかwktkする展開だ
260Mr.名無しさん:2006/03/18(土) 02:51:22
激しく良作の悪寒
期待
261Mr.名無しさん:2006/03/18(土) 08:15:01
燃えてくるね。職人さん乙!
262Mr.名無しさん:2006/03/19(日) 00:08:16
期待を胸に更新したけど最近あんまり投下されてないのか。
量より質だな。非常にwktk。乙!
263Mr.名無しさん:2006/03/19(日) 19:07:21
これで簡潔なのかと思ったんだけど、続くの?
264Mr.名無しさん:2006/03/19(日) 19:21:13
続いて欲しい
265Mr.名無しさん:2006/03/19(日) 19:54:58
第1章が終わった、みたいな感じじゃないの?
266Mr.名無しさん:2006/03/20(月) 00:17:47
一応、続きますよ
267How to get your lost days ?:2006/03/20(月) 00:18:42

テストが終わると、教室中、いや、学校中に活気が戻った。
今までずっと難しい顔をしていたみんなが、一斉に笑い出す。
俺はこの瞬間が大好きだ。

「連絡することあるから、座れよー」

担任が教室に入ってくる。が、全然おさまらない。
この騒ぎをおさめることができるのは、俺の持ちネタしかないだろう。
しかし、あれは危険すぎる。いろんな意味で。
教室に自分の居場所がなくなるのはいやだ。
担任は『しょうがないなぁ』というふうに笑い、プリントを配りだした。

「来週はテスト返しだから、テスト問題忘れるなよ。それじゃ、号令」
「起立礼さよなら解散」
「はやっ?!」

ノリの良い担任教師は、笑いながら教室を出て行った。

「ねぇねぇ、これからどうするー?」
「カラオケでいいんじゃない?」
268How to get your lost days ?:2006/03/20(月) 00:19:24

テストが終わった後の過ごし方は、いろいろあると思う。
友達と遊びに行くったり、すぐに帰って爆睡したり、部活へ直行したり・・・
俺はすぐに帰って爆睡するタイプ。
つまり、一夜漬けでテストを乗り切っているのだ。
だから眠い。死ぬほど眠い。あとものすごく腹が減った。
と、いうわけで、俺は筆記用具をかばんにいれ、教室を出ようとした。
しかし、急に誰かに手を握られた。

「ちょいまち」
「・・・却下」

俺は手を振りほどいて、帰ろうとする。
しかし、また捕まった。

「今からカラオケ行く。君もついてくる。オーケー?」
「・・・」
「ちょっと、変なものを見るような目で見ないでよ。失礼でしょ」
「そういうの、被害妄想って言うらしいぞ」

俺は仕方なく、宇野に振り返った。
そして要点を簡潔の述べる。

「どんなメンバー?」
「え〜っと、わたし入れて、10人かな。男5人と女5人」
「じゃあ俺はいいよ」
「なんで?」
「眠いから」
269How to get your lost days ?:2006/03/20(月) 00:20:02

眠いこと嘘じゃないけど、本当は別の理由があって断った。
でもそれは友人の名誉に関るのでいえない。
俺の友人が宇野に惚れていて、友人と宇野以外8人はカップル。
そんなことになっているなんて、とてもじゃないけど言えない。

「・・・いま、人数で決めた?」

う、意外と鋭い。

「ど、どうしてわかったんだ?」
「『じゃあ俺はいいよ』の『じゃあ』の部分の説明が付かないから」
「・・・」
「っていうか今『どうしてわかったんだ』って言ったよね?」
「あ」

・・・完全に自爆。
これはもう白状するしかないな。
分厚いオブラートに包んで。

「5対5でちょうどいいと思ったんだよ。ほら、フィーリングカップル2005みたいな?」
「じゃあもう一人呼べばいいじゃん」
「・・・あいにく俺にはカラオケに誘うような女友達はいないんでね」

男を呼んできて、うほっ、な展開だけはいやだ。死んでもいやだ。
270How to get your lost days ?:2006/03/20(月) 00:21:14

「じゃあわたしが女の子連れてくればいいの?」
「え? いや、まぁ、そうだな」
「じゃあ連れてくるから、帰らないでまってて」

っていうか、何故そこまでして俺をカラオケに連れて行きたいのだろうか?
俺にはいまいちわからない。

「・・・なぁ、なんで俺をしつこく誘うんだ?」

率直に質問する。

「え? ・・・あぁ、何でだろ?」
「俺に聞くなよ・・・」
「どうでもいいでしょそんなこと。じゃあ待っててね〜」

そういうと宇野は走っていった。

「・・・あ、そういえば、俺の昼飯は?」




271How to get your lost days ?:2006/03/20(月) 00:22:07




カラオケの帰り道、俺は一人、公園のベンチに座っていた。
この公園に来るのは久しぶりだった。
だらだらと空を見上げ、俺はため息を漏らす。

「はぁ・・・」

俺はギャップが好きだ。
さっきまで大勢で騒いでいたのが嘘みたいな、静けさ。
月の光と場違いな水銀灯だけの、薄暗い公園。
そして遠くに並ぶ、家の明かり。
自分だけ世界から取り残されている感じがすると、俺は安心する。
強がりではなく、本当に安心できる。

「今日の晩飯は〜カレーライス〜明日は〜ハヤシライス〜」

携帯をみると、もう7時を過ぎていた。
家ではもう晩飯を食べているだろう。
カレーライスかはわからないが。
俺は帰ろうとして立ち上がった。
すると、背後から『キッ』という自転車のブレーキ音がなった。
振り返る。
272How to get your lost days ?:2006/03/20(月) 00:22:48

「もしかして・・・お兄ちゃん?」

俺はその声を聞いて愕然とした。
なぜならその声は、俺が今一番聞きたい声だったから。
そして同時に、聞きたくない声でもあったから。

「そうだよね?」
「・・・そうだけど、いまさらお兄ちゃんはないだろ」
「あ、やっぱり。久しぶりだね〜」
「あぁ」

俺は田末に背中を向けた。

「ちょうど3年ぶり?」
「たぶんな」
「わたしのこと覚えてるよね?」

そう言うと彼女は自転車を公園の脇に止め、俺の元へ近づいてきた。
俺は少し目線をそらす。
田末の目をみることができないから。

「覚えてる?」
「まぁ・・・」
「何かそっけないな〜お兄ちゃん」
「お兄ちゃんはやめろって」
273How to get your lost days ?:2006/03/20(月) 00:23:34

田末とは、中途半端な幼馴染の関係にある。
幼稚園の頃は、家が近いという理由で、たまに遊びに行ったりしていた。
小学生になって、朝の登校班が一緒という理由で、たまに話したりしていた。
初めて同じクラスになった小5のときは、席が隣という理由で、よく一緒に遊んでいた。
中学生になって、ほとんど話さなくなった。
そして今どこの高校に行っているのか、お互いに知らない。

「え〜いいじゃん別に。あ、やっぱ恥ずかしい?」
「別に」
「・・・あはははは!」
「な、なんだよ」
「『別に』って口癖、今も言ってるんだなって。あはははは!」

俺が彼女に『お兄ちゃん』と呼ばれている理由。
それは、小5のときにやっていた家族ごっこの影響からだ。
同じ班になった田末と佐藤と俺ともう一人の男子で家族ごっこをやった。
俺が長男、佐藤が長女、田末が次女、もう一人の男子が犬のポチという配役。
俺はほかの3人から『お兄ちゃん』と呼ばれていた。
あのころは全然なんとも思わなかったが、今呼ばれると死ぬほど恥ずかしい。
ってか、配役が犬ってのも残酷だったな・・・
ごめん、ポチ。本名すら思い出せないよ。

「そういえば、こんなとこで何してんの?」
「べ・・・ただぼ〜っとしてただけ」
「ふ〜ん。ねぇ、とりあえず座ろうよ」

俺と田末はベンチに腰を下ろした。
274How to get your lost days ?:2006/03/20(月) 00:24:14

「ほんと久しぶりだよね〜元気してた?」
「ほどほどに。そっちは?」
「それなりに」

昔と変わらぬやり取りに、俺たちは目を合わせて笑った。

「何か全然変わってなくて安心したよ〜」
「そうか? 背とか結構伸びたんだけど」
「性格がだよ。そのふてぶてしい態度とか」
「そっちも全然変わっないな。その・・・えっと」
「どうしたの?」

俺は彼女にイヤミを返すことができなかった。
何故だかはわからないが、とっさに言葉が浮かんでこなかった。






それから30分ほど、俺たちはいろんな話をした。
高校のこと、友達のこと、バイトのこと。
いろいろなことを話した。
俺は、その時間が永遠に続けばいいと思った。
でも終わらないものなんてない。

そして、俺は決心した。
275How to get your lost days ?:2006/03/20(月) 00:24:50

「じゃあわたし、そろそろ帰るね」
「あ、うん」
「じゃあまた・・・」

「ばいばい」といいながら手を振る彼女。
俺は彼女をとめなければならない。
今しかないと、思ったから。


告白すると、決心したから。


「ちょっと待って!」

俺は彼女のもとへ駆け寄る。

「なに?」
「俺、実はずっと田末のこと・・・」

ありえないくらい心臓がバクバクしている。
握ってもいないのに、手が汗で濡れている。
極度の緊張の緊張状態。
でもそこに含まれる、少しの諦め。
276How to get your lost days ?:2006/03/20(月) 00:25:35

「・・・好きだったんだ。小5のときから、ずっと」
「え・・・?」
「ずっと好きだった。でも俺は自分から話しかけることが出来なくて、いつも田末に話しかけてもらうのを待ってた。
でも、そんなことでうまくいくわけがない。自分から行動しないといけないのはわかってた。
でも出来なかった。自分でもよくわからないけど、出来なかった」
「・・・」

俺は全ての気持ちを話した。
今までずっと言えなかったことを、全て話した。
ずっと自問自答してきたこと。
全てを無我夢中で話し続けた。

「本気で好きじゃないから話しかけることが出来ないって思うようにしたこともあった。
でも、無理だった。ずっと田末が好きだった。諦められなかった」
「・・・」
「クラスとかで好きな人の話題になると、いつも田末のことが頭に浮かんだ。
でも俺は素直に受け入れられなった。だって今の田末のことを何も知らないから。
でも、絶対に諦められなかった」




「・・・俺は、田末が、好きだ。」


277Mr.名無しさん:2006/03/20(月) 00:35:25
続きはまたこんど・・・
278Mr.名無しさん:2006/03/20(月) 00:48:07
なんてところで切るんだ
こんな悶々としたままで眠れるかああああヽ(`Д´)ノ ウワァァァン

激しく続き待つ
279Mr.名無しさん:2006/03/21(火) 00:35:19
ほしゅうううう
280Mr.名無しさん:2006/03/21(火) 19:36:00
281Invitation to dream:2006/03/21(火) 23:49:46

晩飯のカツカレーを食べていると、携帯がなった。

『2組の佐藤さんがメルアドと番号知りたいらしいんだけど、教えていい?』

宇野からのメール。
どうでもいいが、『誰の』番号なのかが抜けている。
まぁ文脈でわかるけど。
俺は「いいよ」と返信した。

「夏休みどうするの?」
「さぁ」
「おばあちゃんの家、いつ行く?」
「わからん」
「・・・」

最近ほぼ毎日、母親と二人で晩飯を食べている。
上の兄貴は大学院で忙しく、下の兄貴はもう結婚した。
父親は中国に単身赴任しているが、いてもいなくても変わらないようなおっさんだ。
だからいつも二人。
毎年、大型連休になると、みんなで祖母宅に行くのが恒例なのだが、最近は行っていない。
行けばお金をもらえるけど、正直めんどくさかった。
今年の夏休みは・・・どうしようかなぁ。

「野菜も食べなさい」
「・・・ごちそうさま」

母親の言葉を無視して立ち上がり、お茶と携帯を持って自分の部屋がある3階に上がった。
282Invitation to dream:2006/03/21(火) 23:50:23



「ふぅ〜」

テレビをつけると、ネタ番組がやっていた。
『今一番ブーム!』らしい芸人が出てきたが、全く笑えなかった。
チャンネルを変えようとすると、携帯が鳴った。
メール受信を告げる着信音。
俺は携帯をとり、メールを読むと、少し笑ってしまった。

『佐藤あずさです』

一行だけのメール。
何がしたいのか、まるでわからない。
まるで意味のないメール。
でもテレビのネタ番組よりは、数百倍おもしろかった。

『何?』
『テスト送信テスト送信』
『だから何?』
『ちゃんと送れていたら返信ください』

・・・これは、からかわれてるのか?
283Invitation to dream:2006/03/21(火) 23:50:58

『ちゃんと送れてるよ』
『ほんとに?』
『ほんとに』
『ほんとのほんとに?』
『ほんとのほんとに』
『ほんとのほんとのほんとに?』

俺は携帯を放置して風呂に入りに一回へ降りた。




風呂からあがって携帯を見てみると、着信履歴が5件、メールが8件も残っていた。

『・・・あれ? どうかした?』
『返信しろこのくそ野郎』
『好きです。変身してください』
『ねぇ〜返信してよぉ〜』
『メール読んで笑ってるでしょ? そうなんでしょ?』
『早く返信しないと、10日以内にタンスの角で小指をぶつけます』
『おーい、どうかしましたか〜?』
『・・・ゴメン。からかったの謝るから、返事して』

そしてまた新しくメールが来た。

『返信してよぉ〜早くぅ〜お願いだからぁ〜』
284Invitation to dream:2006/03/21(火) 23:51:40

佐藤がリアルで『早くぅ〜』と言っているのを想像して、ときめいた。
やっぱりギャップはいい・・・ってそうじゃなくて。
このまま放置しても面白いけど、さすがにかわいそうだな。

『ごめん、風呂入ってた。ところで何かよう?』

・・・
・・・
・・・
10分たっても、全くメールが返ってこない。
もしかして、復讐のつもりだろうか?
でも俺にそんな手は通用しない。
俺は携帯を放置し、コンビニに雑誌を読みに行った。




部屋に戻って携帯をみてみると、まだメールはきていなかった。
俺が送ってから2時間以上過ぎている。
何かあったのかと思った俺は、メールを送ってみた。

『おーい』
『何かあったのか?』
『とりあえず返信してくれ』
『・・・ごめん、さっきは悪かった』

まだ返信は来ない。
なので、次は電話をかけてみることにした。
285Invitation to dream:2006/03/21(火) 23:52:25

・・・
・・・
・・・

繋がらない。
何度もかけなおしたが、繋がらない。
そこで俺はふと思った。

「もしかして・・・」

そして俺はねむった。





次の日の朝、俺は、携帯が鳴る音で目を覚ました。

「・・・はい」
「あ、もしもし、わたしだけど」
「あぁ」
「えっと、その、お、おはよう」
「あぁ」

日曜の朝におきているなんて何年ぶりだろう。
テレビをつけると、全く知らない戦隊モノが流れていた。
286Invitation to dream:2006/03/21(火) 23:53:04

「ごめん、起こしちゃった?」
「あぁ」
「昨日の夜、ごめんね。途中で寝ちゃったの」
「あぁ」
「・・・あぁとしか言えないの?」
「あぁ」

まだ頭がぼ〜っとしている。
あ〜二度寝でもしようかなぁ〜
でもおなかすいたな〜
朝ごはんあるかな〜パンはいやだな〜

「ねぇ」
「あぁ」
「・・・」
「あぁ」
「わ、わたしのこと、す、好き?」
「何言ってんのお前あたまおかしいのか?」

即答した。

「・・・」
「・・・」

電話口から聞こえる、沈黙。
部屋には悪役怪人の笑い声だけが響いている。
・・・何かシュールだ。
287Invitation to dream:2006/03/21(火) 23:53:52

「・・・っく」
「え?」
「・・っ・・っく」

あれ・・・?
もしかして、泣いてる・・・?
何でだ?!

「ちょ、どうして泣いてるんだよ」
「そ、そん・・な・・・言い方・っ・しなくて・も・・・いい・・じゃない」
「ご、ごめん。俺が悪かった」
「うる・さい・・・ばかぁ・・」

『涙は女の武器』
初めてその言葉を理解した俺は、NOと言えない日本人になってしまった。

「ほんとごめん! 悪気はなかったんだ」
「・・っ・・もう・・いい・よぉ・」
「よくないって。お願いだから泣き止んでくれよ。何でもするから」
「・・・なんでも?」

瞬間、『しまった』という言葉が頭に浮かんだ。

「え?」
「今、なんでもするって言ったよね」
「・・・言ったけど」
「へ〜、ふ〜ん、なんでもしてくれるんだ〜」
288Invitation to dream:2006/03/21(火) 23:55:17

・・・おい、涙はどうした?

「じゃあ〜ちょっと〜お願いがあるんだけど〜」
「何だよ?」
「え? きいてくれるの?」
「あぁ。俺に二言はない」

俺は覚悟して聞いた。





「今月の21日に・・・会えない、かな?」




つづく。
289Mr.名無しさん:2006/03/22(水) 00:13:52
ちょwwwwwそこで切るかwwww
テラモエス(*゚∀゚)=3ハァハァ
290Mr.名無しさん:2006/03/22(水) 00:39:41
コイツぁヤバイバ!(*゚∀゚)=3ハァハァ

・・・ゴメ、わからないよな。首吊ってくる。
291Mr.名無しさん:2006/03/22(水) 11:41:49
(*゚∀゚)=3'`ァ'`ァ いいよいいよー
292Mr.名無しさん:2006/03/23(木) 00:37:01
保守
293Mr.名無しさん:2006/03/23(木) 20:21:11
保守
294Mr.名無しさん:2006/03/23(木) 20:21:43
うほっ、まだスレ落ちてないんだ。あぶねぇあぶねぇ
295Mr.名無しさん:2006/03/24(金) 01:01:24
保守

このスレには天寿を全うして貰わねば・・・!
296Petit mischief:2006/03/24(金) 01:36:06

舞台上で、校長が夏休みの注意をぐちぐちとのたまっている。
聞いているものはほとんどいない。
でもずっとニコニコと笑顔で話している。
俺は素直に『教師ってのは大変だなぁ』と思った。

「ねぇ」
「ん?」

さっきまで隣のクラスの女子と話していた宇野が、急に話しかけてきた。

「今日この後、用事ある?」
「ん〜? 別にないけど」
「え、ほんとに? じゃあ決まりだね」

宇野はまた隣のクラスの女子のほうを向き、話し始めた。
・・・何かいやな予感がする。

「なぁなぁ」
「ん?」
「決まりって、何が?」
「え? そんなのカラオケにきまってるじゃない」
「・・・まじで?」

先週、ってか3日前にいったばかりじゃないか。
297Petit mischief:2006/03/24(金) 01:36:39

「Today is Monday」
「...Yes」
「But.....えっと.....Maeni ittanoha Friday」

・・・仮にも受験生がその程度の英語を話せないなんて、やばいだろ。

「あぁ、もう! とにかく今日もカラオケにいかないとだめなの!」
「なんでだよ?」
「この前のはテスト終了記念。そんで今日は夏休み突入記念」
「何かあるたびにカラオケに行くのか?」
「もちろん」

宇野は胸を思いっきりたたきながら答えた。
・・・あまりない胸を。

「いま何か失礼なこと考えなかった?」
「ぜ、ぜんぜん」
「へぇ〜」
「・・・」
「じゃあ今日もカラオケね」
「・・・わかったよ」

少し引け目を感じた俺は、やむなく了承した。



298Petit mischief:2006/03/24(金) 01:37:11




帰り道、俺は団地の中にある小さな公園にいた。
別に用事があるわけじゃない。
団地の中でたくさんの家族が団欒しているのを想像すると、何故だか安心できるのだ。

「大人の階段の〜ぼる〜 君はまだ〜ツンデレラっさ〜」

いつもどおりの変な唄を歌う。

「強がれば誰かがきっと〜 構ってくれると信じていて〜」

今日の唄は結構いいできかもしれない。
替え歌だけど。

ふと、空を見上げた。
小学生の頃、理科で習った星座の名前。
もうほとんど覚えていないが、ベガ・デネブ・アルタイルの3つだけは覚えている。
言うまでもなく有名な、夏の大三角。

「たしかベガが織姫で・・・」
「アルタイルが彦星だよね」

急な声に俺は慌てて振り返った。
そしてその声の主を確認すると、もう一度背を向けた。

「一年に一度しか会えない恋人。・・・二人は、幸せだったのかな?」
299Petit mischief:2006/03/24(金) 01:38:52

俺は答えない。答えたくない。

「やっぱり、距離を置くほど惹かれるのかなぁ」
「・・・」
「実体験者が語ってよ」

俺の前に回りこみ、いたずらっぽい笑顔で田末はそう言った。
たぶん、軽口のつもりなのだろう。
だが、俺はその言葉を聞いて、とてつもない怒りを感じた。

「ねぇ、ずっと私のこと好きだったんでしょ?」
「・・・」
「時間がたてばたつほど、余計に好きになったり?」
「・・・」
「私のことを思うとむねがはりさ」
「黙れよっ!!」

俺は自分でも信じられないくらい、大きな声で怒鳴った。
田末は明らかに困惑した表情をしている。

「人のことばかにして、そんなにたのしいのか? ふられたおれがそんなに惨めに見えるか?」
「ちがっ」
「あぁ、確かに時間がたてばたつほど余計好きになったさ。お前のことを考えると胸が締め付けられる感じがしたさ。
でもお前にそんなこと言われる筋合いはねぇだろうが! ばかにするな!」
「だからそんなこと・・・」
「やめてくれ。言い訳なんか聞きたくない。同情なんてしてほしくない。お前は笑ってればいいんだ。
『あいつってほんとバカだよねぇ』って笑ってればいいんだ」
300Petit mischief:2006/03/24(金) 01:39:42

わかっていた。
田末がこんな質問をしてきた理由は。
たぶん、昔のような友達に戻りたいのだろう。
お互い気兼ねせずに軽口を叩き合えるような友達に。
そしていつかまた出会ったときに、また冗談を言えるような関係に。
でも、俺には無理だ。

「ごめん・・・でもそんな言い方しないでよ」
「・・・」
「わたし、告白されてちょっと驚いたけど、うれしかったよ? 何年もずっと好きでいてくれて、ほんとにうれしかった。
だから、笑ったりなんかしない。ばかになんかしたりしない。それに、そんなこといわれると、悲しいよ・・・」

田末は泣いていた。
暗くてよく見えなかったけれど、下を向いて肩を震わせていた。

「・・・」
「・・・」

ふたりのあいだにある、壁。
たとえその壁が俺の一方的な拒絶だとしても。
二人を隔てていることに変わりはなかった。



301Petit mischief:2006/03/24(金) 01:40:20




沈黙が続いた。
長さはわからないが、たぶんそんなに長くはなかった。
俺は口を開いた。

「素直な気持ちって言葉があるけど・・・」
「うん・・・」
「それって我がままじゃないかって、俺は思う」
「え?」
「あの人と話したい、あの人に会いたい、あの人に触れたい、ただそばにいるだけでいい」
「・・・」
「あの人が幸せであればそれでいい、たとえ自分が・・・そばにいなくても」

団地内に響く、子供たちがはしゃぐ声や、誰かが笑う声。
俺はその声を聞きながら話す。

「正直、俺にはわからないんだよね、全く」
「何が?」
「う〜ん・・・強いて言うなら、自分かな」
「自分?」
「そう、自分。自分がわからないから、何もわからない」

田末に背を向けた。

「俺ってさ、一昨年ぐらいに気付いたんだけど、感動して泣いたことないんだ。ものごころついてから。
で、世間で話題の泣ける小説とか映画とかドラマとかかなり見たんだけど、結局泣けなかった。」
302Petit mischief:2006/03/24(金) 01:40:54

「フィクションでも、ノンフィクションでも、どうしても他人事にしか思えなかったんだ。
だから俺は、最後の作戦を実行した」

「最後の、作戦?」

「自分が物語の主人公になるんだよ。そうすれば感情移入は簡単、って本人だし当たり前だけど。
そんで何かドラマティックな出来事が起こらないかなぁ〜って思ってたら、お前に再会した」

「・・・」

「前にも言ったけど、俺はお前のことがずっと好きだった。小5のころからずっと。これは嘘じゃない。
お前に再開した瞬間、俺は思ったんだ。『あぁ、泣けるチャンスかもしれない』って。それで告白した。
そして見事に振られた。でも、俺は泣けなかった。そこそこ悲しかったけど、泣けなかった」


もう一度空を見上げる。
何故かデネブだけが、雲に隠れて見えなかった。


「俺は悩んだ。なんで泣けないんだろう? 涙腺がイカレてるのかと思っだけど、あくびをしたら涙が出た。
感情が欠落しているのか? 冷酷な人間なのか? 頭がおかしのか?」

「・・・やめて」

「学校に行って友達と遊んでも、今までと全然変わらなかった。っていうかむしろいつもより楽しかった。
誰かに『あれ、今日ちょっと暗いね?』っていわれるかもしれないって思ってたけど、全くそんなことなかった」

「もうやめて・・・」
303Petit mischief:2006/03/24(金) 01:42:07

俺は立ち上がった。
そして最後の言葉を告げる。

「どっかでまたあっても、俺は話しかけない。話しかけられても応えない。・・・それだけだ」

そして俺は走り出す。
あぁ、何故自分はこんなにもバカなのだろう。
何故ごまかしてばかりいるのだろう。
虚栄心だけ満ちても、何も意味がないのに。
自分から信じなければ、誰も信じてくれるはずがないのに。





その日も俺は、泣けなかった。







つづく。
304Mr.名無しさん:2006/03/24(金) 09:33:37
改行の使い方が巧いな〜
引きずりこまれるよ、マジ

この床上手!
305Mr.名無しさん:2006/03/24(金) 10:30:36
イイヨイイヨー
306Mr.名無しさん:2006/03/24(金) 11:35:42
うほっ、いい技法

保守。
307Mr.名無しさん:2006/03/24(金) 21:03:28
(´・ω・`)ほしゅーん
308Mr.名無しさん:2006/03/25(土) 21:45:51
保守る
309Mr.名無しさん:2006/03/26(日) 00:32:58
保守しなけりゃ毒男が廃る
310Maself - ish:2006/03/26(日) 01:02:42

『海いかない?』

そんなメールが来たのは、午前9時。
しかし、俺が起きたのは、午後3時。
とりあえず『ゴメン寝てた』とだけメールして、俺は二階におりた。

「いつまで寝てんの?」
「さぁ・・・」

夏休みなど関係ない母親は、仕事帰りの格好のままサスペンスに夢中だった。

「せっかくの夏休みなのに、何か用事ないの?」
「べつに」
「ってか勉強しなさい、受験勉強を」
「・・・」

じゃあテメーは俺の昼飯ちゃんと作れよと思ったが、後々面倒なことになりそうなのでやめた。
いつものようにカップラーメンにお湯を注ぎ、3分間待つ。

最近、受験だ受験だとみんなが騒ぐ。
あるときは良い大学にいきなさいと言い、またあるときは自分のやりたい事をやりなさいと言う。
決めるのは自分だとわかっているけれど、俺は正直、誰かに決めて欲しかった。
だってやりたいことなんてないから。良い大学にいくために勉強するのが面倒だから。
自惚れじゃなくて、俺は勉強はかなりできる。
苦手な物理の対策さえすればセンター試験で9割以上は狙える、つまり、国立にもいける。
でも、何故かやる気が出ない。
311Maself - ish:2006/03/26(日) 01:03:56

今の俺は、目標を持っている人が心底うらやましい。
何かに頑張れる人がもの凄く輝いて見える。
俺は遅れているのだろうか。
普通ではないのだろうか。
意味のない考えが頭の中を交錯する。

でも、いまだに答えは出ない。






昼飯を食べて部屋に戻ると、宇野から朝のメールの返信が来ていた。

『寝すぎ(笑 みんなで海行こうって話になってるけど、どうする? 日時は未定』

このメールで意味するところのみんなとは、たぶん、クラス全員をあらわしていると思う。
うちのクラスは何かイベントがある度に集まりたがる、祭り気質(?)なクラスだ。
先月なんて、『あじさい狩り』というイベントにも参加させられた。
みんなで長靴を履いてアジサイを眺めるだけの、意味不明なイベント。
・・・意外とおもしろかったけど。

『たぶんいけると思う。あと、前言ってた花火の件は?』
『あぁ、あれはまた今度。じゃあいけるってことでOK?』
『OK』
『りょーかい』
312Maself - ish:2006/03/26(日) 01:04:50

海か・・・
小さい頃行ってから、一度も行ってないな。
まぁみんなで行ったらそこそこ楽しいだろ。

「ん?」

何かひっかかる。
海には小さい頃一度いったきり。
うちの学校にはプールがない。
と、いうことは。

「水着持ってねぇ・・・」

俺はすぐに友達にメールし、一緒に水着を買いに行く約束をした。







暇つぶしにネットサーフィンをしていると、家の電話が鳴った。
母親が出ると思って放置していたが、どうやらでかけているらしい。
10コールしてもきれないので、俺は仕方なく2階におりて電話に出た。
313Maself - ish:2006/03/26(日) 01:05:36

「はい、どちらさまですか?」
「あの、佐藤ですけど」
「・・・」
「・・・」
「どちらの佐藤さんですか?」
「3年2組の佐藤です」

これは・・・もしかしてつっこみ待ち?

「フルネームと生年月日は?」
「佐藤あずさ。1987年7月21日うまれです」
「血液型は?」
「A型です」
「好きな食べ物は?」
「さばをミソで煮込んだものです」
「新婚さん?」
「いらっしゃ〜」

俺は電話を切った。
またかかってくる。

「はい、どちらさまですか?」
「あの、佐藤ですけど」
「・・・」
「・・・」
「どちらの工藤さんですか?」
「身体は子供、頭脳は大人の・・・ってソレハメイタンテイデスヨ!」
314Maself - ish:2006/03/26(日) 01:06:20

また電話を切った。
またまたかかってくる。

「はい、どちらさまですか?」
「あの、工藤ですけど」

俺は電話を切り、ついでに電話線も抜いた。
すると、今度は携帯がなった。

「・・・何がしたい?」
「いや、ちょっとあそんでみただけ」
「ってか何でわざわざ家にかけたんだ?」
「ん〜何となくかな」

話しながら、一応電話線を元に戻した。

「で、何かよう?」
「あぁ、そうそう、あさっての件だけど・・・」

あさっては佐藤の誕生日。
確か、会う約束をしてたはず。

「もしかして中止とか?」
「そうじゃなくて・・・」
「じゃあなに?」
「えっと、その・・・」
「・・・」
「・・・」
315Maself - ish:2006/03/26(日) 01:07:17

電話口からは「う〜ん」といううめき声しか聞こえない。
何を迷っているか知らないが、正直さっさと話して欲しい。

「朝9時に集合、っていったよね?」
「あぁ」
「それを8時にしてもらえないかな〜なんて」
「・・・別にいいけど」
「え? ほんとに?」
「あぁ」
「ほんとのほんとに?」
「ほんとだって」
「ほんとのほんとのほん」

いつぞやの二の舞になりそうだったので俺は電話を切った。
そして着信拒否。さらにもう一度電話線を抜く。
5分ほど何もなかったが、今度はメールが来た。

『・・・怒ってる?』
『さぁ、どうだろ』

正直に言うと、結構楽しんでいた。

『ほんとに8時にしてもいいの?』
『いいって言っただろ。っていうかなんでそこまでこだわる?』
『べ、べつに。ただなんとなくにきまってるじゃないですか!』

メールで動揺を隠せないやつ、はじめてみた。
316Maself - ish:2006/03/26(日) 01:08:41

『理由は? ぼけるなよ』
『・・・いわなきゃだめ?』
『あぁ。短いメール何回も送るの面倒だから、簡潔に全部いってくれ』

そのメールを送って、1時間たっても返信はこなかった。
俺は少しイライラしながら晩飯を食べ、風呂に入った。





風呂からあがると、佐藤からメールが来ていた。
俺はそのメールを読んだ。



『田末まゆさんのことで話があります』



・・・いやな予感がした。








つづく。
317Mr.名無しさん:2006/03/26(日) 01:12:05
そこで続くか〜!
寝れねーじゃんか!
318Mr.名無しさん:2006/03/26(日) 01:13:32
痛恨のタイトルミス・・・orz

正しくは [ Myself - ish ] です
319Mr.名無しさん:2006/03/26(日) 01:19:45
登場人物の関係を誰かまとめてくれないか…?
320Mr.名無しさん:2006/03/26(日) 01:27:32
>>319
俺もちょっと感じてた
321Mr.名無しさん:2006/03/26(日) 01:55:03
>>319

[登場人物]

・主人公 : 18才高3、帰宅部
・佐藤あずさ : 17才高3、主人公と同じ高校、ハンドボール部
・田末まゆ : 18才高3、微妙な幼馴染、高校不明、スーパーでバイト
・宇野 : 主人公のクラスメイト、強引
・ポチ : 犬役の人、本名分からず


[主人公・田末・佐藤の関係性]

主人公と田末は幼稚園のころからの幼馴染。
といってもそんなに仲が良いというわけではない。
小5のとき、主人公・田末・佐藤・ポチは同じクラスの同じ班になる。
家族ごっこ−−長男:主人公、長女:佐藤、次女:田末、犬:ポチ
一緒に遊んでいるうちに、主人公は田末が好きだと気付く。
中学にあがり、何となく話しかけづらかったりして疎遠に。
高校進学。佐藤と同じ高校。(田末の高校は知らず)
主人公と田末の繋がりは、99%なくなる。
佐藤とのつながりもほぼ皆無。
主人公はずっと田末がすき。


↑の関係性で、>>251から話が展開。



とりあえずはこんな感じです。
322Mr.名無しさん:2006/03/26(日) 08:02:26
とりあえず俺はI''sが好きだったとだけ言ってみる。


保守
323Mr.名無しさん:2006/03/26(日) 08:43:04
d
324Mr.名無しさん:2006/03/26(日) 20:58:59
俺もI"s好きだわ

そんなwktk
325Mr.名無しさん:2006/03/26(日) 22:55:52
>>321
ありがとおおおお!
326Mr.名無しさん:2006/03/27(月) 11:33:23
(´・ω:;.:..ほsh....
327Mr.名無しさん:2006/03/27(月) 14:44:52
保守
328Mr.名無しさん:2006/03/27(月) 22:51:55
保守するぞぉお!
329Too early , Too late:2006/03/28(火) 00:48:07

田舎なのか都会なのかよくわからない街。
だから買い物は電車で都会まで行かなくてはいけない。
といっても一駅だが。

「ういっす」
「おう」

駅前で松岡と合流し、切符を買って、電車に乗った。

「・・・」
「・・・」

俺は、特に用がない限り、自分からは話しかけない。
いわゆるひとつの『世間話』が苦手なのだ。
だからはっきりいって友達はかなり少ない。
松岡はその数少ない友人の一人。

「そういえば」
「ん?」
「何かクラスのやつも、水着屋に現地集合で水着買うらしい」
「で?」
「えっと・・・」
「何だ? はっきり言えよ」

彼は物事をはっきりと言えないふしがある。
そのせいで彼が何回も損をするのを、俺は見てきた。

「その、現地集合の中に・・・」
330Too early , Too late:2006/03/28(火) 00:48:44

ピンときた。

「宇野がいるとか?」
「・・・あぁ」

短いトンネルを抜けると、駅に着いた。
地元の駅とは違い、駅ビルの高さがやばいくらいある。
といっても東京ほど高い建物は一つもない。

「それ、どこ?」
「駅ビルじゃなくて、駅前のデパートらしい」
「ふ〜ん」
「・・・」
「・・・」
「デパートらしい」

松岡は宇野が好きだ。
本人曰く、高校に入ってすぐ一目ぼれしたらしい。
俺と松岡が友達になったのも、俺が宇野と同じ中学だったから。
ことあるごとに俺は宇野のことを聞かれた。
でも俺は宇野についてなんてほとんどしらない。
特殊なことと言えば、見知らぬ家の飼い犬に、勝手に餌付けしていたのを目撃したぐらいだ。

「俺はどっちでもいいけど」
「・・・えっと」
331Too early , Too late:2006/03/28(火) 00:50:11

改札を出て、一段落。
松岡の態度に少しいらだってきた俺は、答えを促した。
いや、強制した。

「じゃあデパートで合流しよう」
「・・・いいのか?」
「っていうか行きたいならはっきりと言えよ。鬱陶しいから」
「あぁ、ごめん」

俺たちはデパートへと向かった。






やつらはまたカラオケに行くらしかった。
水着を買いに集まった、15人で。
俺は用事があるといってやつらとわかれ、駅前をぶらぶらすることにした。

「なんかあったっけな〜」

何か必要なものはなかったかと考える。
でも思い浮かぶのは、漫画とかゲームばかり。
俺は財布の中身を確認し、絶望し、ゲーセンにはいった。
すると久しく見る顔をみつけた。
332Too early , Too late:2006/03/28(火) 00:51:05

「あれ? こっちくるなんてめずらしいね」
「そっちこそ。今日って大会あったっけ?」
「ないよ。ただの暇つぶし」

平井は俺と話しながら手を動かしている。
彼女がやっている格ゲーの画面を見ると、彼女はすでに30連勝していた。
そろそろ飽きる頃だろう。

「あ〜〜〜〜〜〜〜」
「・・・」
「うあ〜〜〜〜〜〜〜」
「・・・」
「ぬわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

奇声をあげ、平井は席を立った。
対戦相手がものすごく驚いている。

「やって」
「いいの?」
「いい。もう飽きた」
「はいはい」

俺は彼女の代わりにゲームをやって、勝った。
だいたい、10連勝ぐらいした。
いつもなら、強い人がいっぱいいるはずなのだが、今日は来ていないみたいだ。
見つけられたら、かもられるし。
しかも何故か俺にだけ容赦ない。
っていうかそろそろ俺も飽きてきた。
333Too early , Too late:2006/03/28(火) 00:52:04

「あれ? まだやってんの?」
「あぁ、うん。でもこの次でやめるけど」
「・・・わざと負けて、悔しくない?」
「全く、これっぽっちも。ってかそろそろ誰も乱入してこなくなってきたような」
「ふ〜ん」

平井は不敵な笑みを浮かべると、どこかに姿を消した。
俺が勝つとすぐに新しいチャレンジャーが現れた。
ニューマカー・・・じゃなくてニューカマー。
あ、でもそういえば、平井はマック使いだったな。

「これ買ったほうが、晩飯おごりでー!」

台の向こうからそんな声が聞こえた。
・・・まったく。
大学生が高校生におごらせるなっつーの。

「ファミレスでいいよー!」

そして戦いが始まった。




334Too early , Too late:2006/03/28(火) 00:52:46




「せこ野郎」
「・・・」
「二択がそんなに好き? 投げがそんなに好き?」
「・・・」
「そんなだからいまだに彼女できないんでしょ」

・・・最後のは誤解だと思う。

「あ〜あ、これで対戦成績は五分五分か」
「・・・今まで数えてたの?」
「うん。今日でちょうど120勝120敗」

ファミレスまでの道を二人で歩く。
彼女が前、俺が一歩後ろ。
決して尻に敷かれてるわけではない。

「で、ほんまのところ、どうなんや?」
「何が?」

っていうか何故に関西弁?

「だから、か・の・じょ♪」
「・・・きもっ」
「あ〜きもいって言った〜龍二に言いつけちゃうぞ〜」
「龍二は同意すると思うけど」
335Too early , Too late:2006/03/28(火) 00:53:30

龍二と言うのは、平井の彼氏のことだ。
大学のサークルで知り合い、意気投合したらしい。
俺は、前から龍二とゲーセン仲間だったから、こうやって平井とも話す。
話すっていうよりおちょくられてる感が強いけど。

「で、どう?」
「虚無」
「ドム? ・・・趣味悪いね」
「ドムみたいな女と誰が付き合うか。虚無っていったの。何もないって言ったの」

まぁドムは好きだけど。もちろんMSの。

「もっとこう、青春を楽しまないと」
「んなこといわれましても・・・」
「好きな人もいないの?」
「・・・いません」

俺は嘘をついた。
わかりやすすぎる嘘を。

「まぁ、いいけどね。寂しくなったら、おねぇさんが相手してあげるよ」
「・・・喰いタンなしで?」
「ありにきまってるでしょ」

話していると、ファミレスについた。
中には龍二がいた。
336Too early , Too late:2006/03/28(火) 00:54:09

「ごちそうさまんさ」
「・・・」

スパゲティの皿が5枚くらい積んであった。

「ねぇ、きいてよ龍二。この子が『負けたんだから飯を奢れ』って言うの〜」
「なに〜? おいおまえ、俺の女に何をした?!」
「きゃあ〜! 龍二かっこいい〜!」

・・・どこからつっこもうか?
とりあえず二人の会話を傍観していよう。

「それでね、いきなり『俺の女になれよ』って言ってキスされたの〜!」
「な、なんだってー! おいお前! リップはちゃんと塗ったんだろうな?!」

してないし、塗ってない。

「さらにさらに、いきなりわたしのあそこに手を伸ばして・・・」

平井は泣きまねをしながら言った。

「わたし、怖くて・・・でも、負けたから仕方なかった・・・」
「・・・」
「ごめん、わたし、汚れちゃったよぉ・・・」
「・・・それは素晴らしい」

もはや意味不明だ。
337Too early , Too late:2006/03/28(火) 00:55:04

「なぁ、龍二」
「何だ強姦魔」
「その女が言ったこと、全てでたらめだ」
「な、なんだってー!」

語尾に(AA略)と付けそうなぐらいわざとらしく驚く龍二。
そしてまた平井ときゃっきゃ言いながら話はじめた。
・・・あれ? もしかして俺、無視されてる?

「なぁ」
「そんな嘘をついて俺の気をひこうなんて・・・」
「おーい」
「ごめんなさい。わたし、まだあなたの気持ちが信じられなくて」
「ねぇちょっと」
「謝るなよ。俺は・・うれしいんだ」
「聞いてる?」
「えっ? ・・・どうして?」
「お願いだから聞いてください」
「お前がそんなに俺のこと好きでいてくれてるなんて・・・俺は、幸せものだな」
「・・・」
「龍二・・・」
338Too early , Too late:2006/03/28(火) 00:56:06

見詰め合う二人。
お互いの顔が近づいてゆく。
そしてそれを見ている一人の空しい男、俺。


「バカップルはしねーーーー!」


俺はそう叫びながら家に帰った。








つづく。
339Mr.名無しさん:2006/03/28(火) 18:23:49
おんどっかんもなんもねーぃ ううぇううぇううぇあーーうぇう




期待保守。
340Too early , Too late:2006/03/28(火) 19:27:43
そこへ、ペニスくんがやってきた

「ペニスくん、君はちんこなの?」
「うん、そうだよ!食べるかい?」
「えっ!いいの?」

ノリスケは驚きつつもペニスくんにしゃぶりついた




つづく
341Mr.名無しさん:2006/03/28(火) 19:40:18
つ、続き・・・ハァハァ
342Mr.名無しさん:2006/03/28(火) 19:54:02
小説内でやってた格ゲーって鉄拳?
どうせなら勝利後に気合溜めとかしてやったほうが相手が怒るよ

まあそんなことはどうでもいいんだ
激しく期待
343Mr.名無しさん:2006/03/28(火) 20:08:26
ゲーセンで格ゲーをプレイしたことがない俺が登場



( ´ω`)リアルファイトは好っきゃないねん
344Mr.名無しさん:2006/03/28(火) 20:12:19
ダウソした記憶のないbuster_songってファイルがいつの間にかあった
しかもクリックしたらデンパだった
こえー((((((;゚Д゚))))))ガクガクブルブル
345Mr.名無しさん:2006/03/28(火) 21:03:06
>>340
だれだあんたww

>>342
バーチャ4 ベータver.
使用キャラ:リオン
346Mr.名無しさん:2006/03/29(水) 01:29:54
とりあえず保守。話はソレからだ。
347Mr.名無しさん:2006/03/29(水) 22:31:32
「ごきげんよう、ご主人様。朝ですよ起きてください」
「……ぐー…zzzz…」
「…ムカ…、ご主人様、とっとと起きやがれでございますよ!」
げしっ、どたん、ゴンッ!!
「蹴り起こすな!」
「おはよう、ようやく起きたわね、ですわ」
「その敬意のかけらもない言葉遣いはどうにかならんのか」
「あんたに払う敬意なんてこの程度でもお釣りがくるってもんです、ご主人様。
はいお弁当」
ちゃりん、ちゃりん、ちゃりん
「なんだコレは?」
「見てわかんないの?100円硬貨よ。数はわかる?いーちにーさん、三枚」
「わかるっちゅーねん、だからなんでコレがお弁当なんだよ」
「コンビニでサンミーとメロンパンと紙パックのカフェオレでも買ってわびしく食べるが
よろしいかと存じますわ、ご主人様
っていうか。漫才続ける?そろそろ朝の連続テレビ小説が始まる時間なんだけど」
「なんでやん! いつもは7時に起こしてくれるじゃん!」
「……私も寝坊したのよ!だから弁当なんか作ってられないのよ、見捨てず
起こしただけでも感謝しなさい、私も遅刻寸前なのよ!」
「お前クビ!今すぐメイドクビ!」
「フッ、炊事洗濯その他全部明日から自分でやると?あたし無しで?本当に?」
「……ごめんなさい、クビは嘘です、許してください」
「大変結構。私は学校行くから」
348Mr.名無しさん:2006/03/29(水) 23:19:40
とりあえずききたい

なんでやん!って何弁?
349Mr.名無しさん:2006/03/30(木) 00:03:35
>>347
とってもいいと思います。
(;゚∀゚)=3
350Mr.名無しさん:2006/03/30(木) 00:21:38
誰か『サンミー』とは何かを教えてくれ・・・いや、マジで。
351Mr.名無しさん:2006/03/30(木) 01:21:05
卒業してもサンミーのみんなのこと、忘れない
352Mr.名無しさん:2006/03/30(木) 02:17:27
マジレスすると、80円ぐらいのパン
353load to Vague:2006/03/30(木) 02:24:16

「あ」

7月21日午前2時。
俺は重大なことに気付いた。
そう。

「誕生日プレゼント・・・」

100%忘れていた。

「・・・」

今の時間ではコンビニぐらいしかあいてないだろう。
でも、風呂上りに外に出るのもメンドクサイ。
俺はとりあえず自分の部屋を探してみることにした。
一応、アヒル関係のものを。

「アヒルっアヒルっあびるっ窃盗っ」

ない。全然ない。
っていうかアヒルグッズなんて普通持ってないと思う。
俺は他の部屋も探してみることにした。
上の兄貴の部屋、下の兄貴の部屋、リビング、キッチン、全て探した。
でも、まったくみつからない。

「まじでどうしよ・・・」
354load to Vague:2006/03/30(木) 02:25:02

キッチンで果汁100%りんごジュースを飲みながら、俺は頭を抱えた。

「アヒルアヒルアヒルアヒル」

一瞬、冷蔵庫に入っているビール一本を持っていって、『ア・ビール』といってごまかそうと考えた。
しかしこんなチンケなダジャレを言ったら、間違いなく殺される。
いや、あえて殺さずに延々と拷問される。
ほんと、どうしようか。

「・・・あ!」

思い出した。
この家にある、唯一のアヒルグッズ。
しかも、女性用。
うん、プレゼントに最適だ。
実用性もあるし。

「よし」

俺は風呂場に向かった。




355load to Vague:2006/03/30(木) 02:26:00





佐藤の家の前の公園に着いたのは、8時ちょうどだった。
しかし、佐藤の姿はない。
俺はベンチに座り、ラジオ体操をしている小学生を眺めた。

「手足の運動〜」

小学生の頃はあんなにいやだったラジオ体操が、今はとても懐かしい。
首にスタンプカードをかけながら、無意味にはしゃいだりもした。
確か毎日行ったら最後に文房具がもらえたような。

「わたしも毎朝、ここでラジオ体操してた」
「俺は近所のガレージだったな。近くに公園がないから」
「ちゃんと毎日行ってた?」
「・・・もちろん」
「今の間はなに?」
「別に」

ベンチから立ち上がり、振り返る。
そこには久しぶりに見る、佐藤の私服姿があった。

「で、話ってなんだよ?」

俺はラジオ体操が終わるのも待たずに、佐藤に聞いた。
356load to Vague:2006/03/30(木) 02:27:02

「田末まゆさんのことなんだけど」
「・・・何故にフルネーム? 仲悪いのか?」
「別にそういうわけじゃないよ。ただなんとなく」

後ろを向いて、自分の顔を隠すように、佐藤は話す。

「告白、したんだよね?」
「あぁ」
「で、振られたと」
「・・・そうだよ」
「どんな気分?」

佐藤はこちらに向きなおし、俺の目をまっすぐに見つめた。
その目を見て、俺はなんだか切なくなった。

「やっぱり、悲しい?」

彼女の目。『嘘は許さない』と主張する、表情。
俺は、正直に答えなければならない。

「・・・ほんとはもっと」
「・・・」
「もっと悲しくなると思ってた」
「うん」
「でも実際はなんと言うか・・・拍子抜けみたいな感じで、ぜんぜん実感が湧かなかった。
普通に笑えたし、普通に飯も食えたし、普通に寝ることも出来た」
357load to Vague:2006/03/30(木) 02:28:24

ラジオ体操の音楽が止んだ。
笑いながら、子供たちは帰っていく。

「こういう言い方は嫌いだけど、俺、本当は田末のことそんなに好きじゃなかったのかもしれない。
昔の思い出を美化しすぎてたのかもしれない。まぁ結果論だけど」
「・・・そう」
「でももっと考えてみると、本当に田末のことが好きだったのかもしれないって思えた。現実を受け入れられないだけで。
考えれば考えるほど、混乱する。堂々巡りってやつだな」
「答えは、でたの?」
「・・・いま、だしたよ」
「え?」

佐藤の目をまっすぐに見つめ、俺は言う。

「俺は、確かに、田末のことが、好きだった」
「・・・そっか」
「でも」
「?」
「一番じゃなかった」

俺はそういうと、公園の出口へ向かった。
慌てて佐藤が追いかけてくる。

「どういう意味?」
358load to Vague:2006/03/30(木) 02:31:09

横に並んで歩く。
しかし俺は佐藤に顔を向けられない。
今は、無理だ。
いま佐藤の目を見つめてしまうと、俺は自分を抑えることが出来ない。
二の舞になるのは、いやだ。

「・・・」
「・・・」

佐藤は俺の気持ちを察したのか、俺の目の前に立ちふさがり、言った。

「遊園地」
「は?」
「いまから遊園地いこ」

あまりにも唐突すぎる提案、もとい強制に、俺は自分の財布の中身を確かめた。
運良く、遊園地ぐらいは余裕な金額が入っていた。

「いいけど・・・」
「なにか問題でも?」
「ワリカン、だよな?」
「・・・」
「・・・」
「早くいきましょ」
359load to Vague:2006/03/30(木) 02:33:08

佐藤は俺の手をつかんで走り出した。
何かをごまかすためだろうか、彼女は笑顔だった。

「ワリカン、だよな?」
「・・・」
「なぁ?」
「あっ、変な雲だ」










つづく。次回でラストです。
360Mr.名無しさん:2006/03/30(木) 04:44:23
>>359

次がラストか
361Mr.名無しさん:2006/03/30(木) 06:56:46
>359
とうとうラストかぁ〜〜。
感慨深いのぉ
362Mr.名無しさん:2006/03/30(木) 10:49:12
感動の最終章ktkr
363Mr.名無しさん:2006/03/30(木) 16:06:10
最終回期待ほしゅ
364Mr.名無しさん:2006/03/30(木) 17:38:40
落ち着いて保守
365Mr.名無しさん:2006/03/30(木) 18:51:06
このスレまとめ

【連載中の作品】
過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI氏の作品
淑大オカ研っ!!
 キャラ名>173
第一話
>174 >175 >176 >177 >178 >179 >180 >181 >182 >183
>184 >185 >186 >187 >188 >189

ツンデレ十夜
第一話 >32
第二話 >34
第三話 >35
第4話 >124
第5話 >125
366Mr.名無しさん:2006/03/30(木) 18:52:25
【連載中の作品】 続き

After a long time
>251 >252 >253 >254 >255 >256 >257 >258
How to get your lost days ?
>267 >268 >269 >270 >271 >272 >273 >274 >275 >276
Invitation to dream
>281 >282 >283 >284 >285 >286 >287 >288
Petit mischief
>296 >297 >298 >299 >300 >301 >302 >303
Myself - ish
>310 >311 >312 >313 >314 >315 >316
 ここまでの登場人物まとめ>321
Too early , Too late
>329 >330 >331 >332 >333 >334 >335 >336 >337 >338
load to Vague
>353 >354 >355 >356 >357 >358 >359

本当にパクってみた作品
>217 >218 >219

七誌さんの作品1
>153 >156

七誌さんの作品2
>347
367Mr.名無しさん:2006/03/30(木) 18:54:32
【完結した作品】
過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI氏(Life life ◆yVoA9C7lzI氏)の作品
Life life
八話(前スレ>922の続き)
>9
最終話
>20 >21
 解説っぽいもの>22

空に光る
 キャラ名>61
一話
>49 >51 >52 >53 >54 >55 >56 >57 >58 >59 >60
二話
>66 >67 >68 >69 >70 >71 >72 >73 >74 >75 >76
 ここまでのおさらい>77(訂正レス>83)
三話
>91 >92 >93 >94 >95 >96 >97 >98 >99 >100
>101 >102
 ここまでのおさらい>103
四話
>109 >110 >111 >112 >113 >114 >115 >116 >117 >118 >119
 ここまでのおさらい>120
最終話
>134 >135 >136 >137 >138 >139 >140

500KB逝っちゃった前スレの最後のほうは仕方ないのでまとめはなしで。
いつものごとく間違いあったら(ry
368Mr.名無しさん:2006/03/30(木) 23:36:50
まとめの人、乙ンデレ
369Mr.名無しさん:2006/03/31(金) 00:21:40
マトメ超乙!!
370ALISE , again:2006/03/32(土) 00:53:56

やられた。完全にやられた。
『遊園地』という存在をなめていた。
ジュースが高いだけの場所だと思っていた。

「・・・大丈夫?」
「うぁ〜〜〜〜〜〜」

最初のほうは全然大丈夫だった。
ジェットコースターも楽しかったし、お化け屋敷も怖くなかった。
昼飯に食べたカレーはおいしかったし、ゲームコーナーでぬいぐるみもとった。
しかし。だがしかし。
あるものの存在を忘れていた。
そう。

「あのコーヒーカップ、回るの異常にはやかったね」

まさか、普段指一本で支配できるカップに翻弄されるなんて・・・
今日、この瞬間から、コーヒーカップは拷問器具に指定されました。
使用する際は、水の入ったバケツと教養のある大人をそばにおいてください。
あぁ、何か頭がおかしい!

「ほんとにだいじょぶ?」
「全然・・・ってかなんでお前は平気なんだよ」
「さぁ? 生まれ持った才能じゃないの?」

意外にヘヴィな答えだ。
そんな才能はいらないけどな。
371ALISE , again:2006/03/32(土) 00:54:51

「どうする? もう帰る?」
「俺はぜひそうしたいけど、もういいのか?」
「わたしはいいよ。十分楽しめたし」

携帯をみると、もう夕方の5時だった。
陽も沈み始めている。

「じゃあ、帰るか」
「うん」

俺は立ち上がり、歩き出した。
まだ足下がふらふらする。
でも、佐藤と手を繋いでいたので平気だった。






地元の駅に着くと、もう6時をまわっていた。
駅前のスーパーには、晩御飯の買い物をしているおばはんがいっぱいいた。

「・・・」
「・・・」

駅前に二人、無言で5分くらい、立ち尽くしていた。
でも、不思議と息苦しさは感じない。
372ALISE , again:2006/03/32(土) 00:55:40

「今日の夜」
「ん?」
「今日の夜、時間ある?」

佐藤は俺の正面に立ち、微妙な笑顔で言った。

「あるけど、それが?」
「ほんとにあるの」
「あるよ」
「ほんとのほんとにあるの」
「あるよ。けどそれ以上繰り返したら、なくなる」
「そっか・・・」

満足したように、佐藤はうなずいた。
俺にはその理由はわからない。

「じゃあ、わたし、帰るね」

佐藤はそういうと、名残惜しそうに手を離した。
一応いっておくが、電車の中では繋いでいない。
いやほんと。
俺は佐藤に手を振・・・ろうとしたが、あることを思い出した。

「ちょっとストップ」
「なに?」
「これ」
373ALISE , again:2006/03/32(土) 00:56:44

俺はポケットから小さな包みを取り出し、佐藤に渡した。

「これ・・・?」
「誕生日プレゼント」
「いいの?」
「いまさら何言ってんだよ」

佐藤の顔が赤くなっているかもしれなかったが、夕焼けでわからなかった。
佐藤が包みを開けようとするのを俺はとめる。

「家に帰って、自分の部屋であけてくれ」
「なんで?」
「いいから。絶対に家族の前で開けるなよ」
「もしかして、大人のおもちゃ?」
「・・・違うって」

一瞬佐藤の言葉が理解できなかった。
っていうか年頃の娘が『大人のおもちゃ』なんていっちゃだめだろ。

「じゃあ、ばいばい。あと今日9時に、小学校の北門ね」
「あぁ。・・・え? 今なんて?」
「だから〜本日21時、小学校ノ北門デ待機セヨ」
「なんで?」
「くればわかるよ。じゃあね〜」
374ALISE , again:2006/03/32(土) 00:57:32

佐藤はそういうと、走っていってしまった。
しかもめちゃくちゃはやい。

「9時・・・ドラマみたいんだけど・・・」

俺はぶつぶつとぼやきながら帰宅した。





小学校の北門のすぐそばには、団地があって、その中に公園がある。
元々は団地使用者専用だったらしいが、今はみんなの遊び場だ。
俺も昔は、ここでよく遊んだ。

「じぞうが〜7つだったのに〜6つに〜なってる〜」

認めたくないが、事実。

「・・・何うたってんの?」
「うおわ?!」

いきなり背後に佐藤が現れた。
しかも不機嫌そうだし。

「べべべべつに? 何でもないですよ?」
「・・・まぁいいけどね」

佐藤はぶすっとした表情のまま、ブランコに乗った。
俺も隣のブランコに乗る。
375ALISE , again:2006/03/32(土) 00:58:23

「なんか怒ってる?」
「怒ってる」
「なんで?」
「・・・」
「・・・」
「・・プレゼント」
「え?」
「何なのよこのプレゼントは!」

いきなり立ち上がった佐藤にびっくりした。
しかしそれ以上に、佐藤の姿にびっくりした。
なんというか、自分でスカートをたくしあげているのだ。

「なんでアヒルさんパンツなのよ! あたまおかしいんじゃない?!」
「いや、だって、アヒルグッズなんてそれしか」

いきなりはいてくるお前の頭のほうがおかしいと思う。
絶対に口には出せないけど。

「だから、なんでこんなもんもってんの?!」
「あぁ、それは兄貴の娘のだよ」
「・・・姪っ子の?」

今現在のうちの家系は、男ばっかり。
俺の家は男3人、父さんの兄の家も男3人、父親の妹の家は男2人、母さんの姉の家は男1人。
そして重要なのは、まだ兄貴しか結婚していないこと。
376ALISE , again:2006/03/32(土) 00:59:03

「初めての女の子だから、みんな騒ぎまくってるんだよ。おもちゃとか服とか買い放題。
俺だって今年受験なのにほったらかしだ」

うちの母親は、先週なぜかパンツをたくさん買ってきた。
子供用のかわいらしいパンツから、大人用のエロイパンツまで。
しかもその一枚一枚を俺に説明した。
今風の言葉を使うと、まじうざかった。

「で、アヒルのパンツがあることを思い出したってわけ。わかったか?」
「・・・そう」

佐藤はまだ何か納得していないような顔をしている。
しかも、まだスカートをたくしあげたままだ。

「なぁ」
「ん?」
「チラリズムだと思うな」
「・・・は?」
「だから、ずっと見えてるよりもたまにちらっと見えるほうがいいと思う」
「何の話?」
「ぱんつ」
「・・・」
「・・・」
「あはははははは!」
「あはははははは!」
「死ね」
377ALISE , again:2006/03/32(土) 00:59:57

みぞおちに一発。
もろに入った。

「どう? きいたでしょ?」

勝ち誇った笑みで、俺を見つめている佐藤。
すこしムカッとした俺は、最終手段に出ることにした。

「告白って、大きく分けて2種類あると思う」
「な、なに? 急に?」

佐藤は明らかにうろたえている。

「ちょっと台詞が違うだけなんだけど、結果は全然違う」
「どんな台詞?」
「まずひとつめは『ずっと好きでした。私とつきあってください。』っていう台詞」
「定番だね」
「あぁ。そんで二つ目が『ずっと好きでした。あなたは、どうですか?』っていう台詞」
「・・・その二つが、どう違うの?」

ようやく腹の痛みが治まった俺は、立ち上がり、話した。
378ALISE , again:2006/03/32(土) 01:00:55

「ひとつめに対する答えは、YESかNOかだよな」
「うん」
「でも、ふたつめに対する答えは?」
「・・・あぁ、なるほど」
「好きじゃなくても付き合う人はいっぱいいる。相手が自分を好きじゃなくても満足する人もいる。
でも俺は、お互いに好き同士じゃないと付き合いたくない。だからふたつめの台詞がいい」
「・・・」

ずっと続くかのように思える、静寂。
前にも感じたことがあるが、今のそれは、以前よりも断然心地良い。

「あぁ、あと忘れてたんだけど、これ」
「それ・・・」

ポケットから取り出したもの。
この前佐藤にもらったリボンの、3倍の長さのリボン。
俺はそれを右手に持って、佐藤に近づく。

「な、なに?」
「結んでもいい?」
「え?」
「だから、お前の髪、結んでもいい?」
「あ、うん、いいけど」

俺は佐藤の返事を聞いて、後ろからではなく、正面から佐藤の髪を結ぼうとした。
自然と、抱きしめるような形になる。
379ALISE , again:2006/03/32(土) 01:01:47

「・・・」
「・・・」

お互い、何も喋らない。
でも、何となく暖かい。

「おわりっと」

佐藤の髪を結び終えた。
しかし、俺は離れない。

「髪結ぶのうまいだろ?」
「・・・」
「母さんが昔、かなり髪が長くて、俺いっつもその髪で遊んでた」
「・・・」
「だからうまいんだ。やろうとおもえば三つあみだって」

瞬間、口を、ふさがれた。

「・・・」
「ん・・・」

俺は何も言わず、目を閉じる。
唇から体温が伝わってくる。
何故だろう。
さっきよりも密着している部分は少ないのに、さっきよりも暖かい。
今までに感じたことのない感覚。
その感覚を楽しむ暇もなく、佐藤はすっと身を離した。
380ALISE , again:2006/03/32(土) 01:02:31

「ずっと好きでした。私と・・・」
「・・・」
「あなたは、どうでぃすか?」

・・・ん?
ちょっと待って欲しい。
いや、かなり待って欲しい。
今、肝心なところで、噛みましたよね?

「ああああなたは、どうですか?」
「・・・言い直してもだめだ」
「な、なんのことかしら?」

慌てて変なお嬢様言葉になっている。
正直、ときめいた。

「どうでぃすかって、あはははははは!」
「ちょっと! わらわないでよ!」
「だってお前、あはははははは!」
「もう・・・」

佐藤は照れくさそうに、後ろを向いた。

「・・・で、どうなの?」

いきなりの真剣な声。
俺は、真剣に答える。
381ALISE , again:2006/03/32(土) 01:03:25

「・・・俺も、好きだよ」
「そう」
「・・・」
「・・・」
「え? 今なんて?」
「だから、俺も好きだよって」
「そう」
「・・・」
「・・・」
「え? 今なん」

とぼけようとする佐藤を、俺は、抱きしめた。

「俺は、佐藤あずさが、一番好きだ」
「・・・ほんとに?」
「ほんとに」
「ほんとのほんとに?」
「ほんとのほんとに」
「ほんとのほんとのほん」

今度は口をふさいだ。

「ん・・・」
382ALISE , again:2006/03/32(土) 01:04:20

口を離すと、佐藤は何故かいきなり走り出した。

「おい、何を・・・」
「この変態野郎〜〜〜!」

意味がわからなかった。
最初は自分からしたくせに変態野郎だ?
しかももう見えなくなったし。

「なんだったんだ、いったい・・・ん?」

ふと、携帯が鳴っていることに気付いた。
メールの受信音。
まさか。っていうかもちろん。

『ほんとのほんとのほんとのほんとのほんとに?』

俺は携帯の電源を切り、そのまま家に帰った。
だって俺には使命がある。
そう。



録画したドラマを見なければならないのだ。




383Prologue:2006/03/32(土) 01:05:03

誕生日会にもって行くプレゼントがない。
でもお母さんに言うのは恥ずかしい。
だから、鏡の机の引き出しの中の、リボンを持っていくことにした。
それだけじゃダメだから、うらにペンで言葉を書いた。
「おたんじょうび、おめでとう!」と。

みんないろんなものを持ってきていた。
ぬいぐるみとか、シャープペンシルとか、高そうなやつ。
それに比べて・・・
こんなの、とてもじゃないけどわたせない。
だから「忘れた」と言ってごまかした。
みんなに笑われたけど、笑えなかった。

みんなが帰った後、トイレを借りた。
もちろん嘘。
あーちゃんに謝ろうと思ったから、嘘をついた。
トイレから出ると、あーちゃんはお皿の後片付けをしていた。
プレゼントを忘れたことを謝ったら、「いいよ」といってくれた。
笑顔で。
だから本当のことを言った。
そしたらあーちゃんは「ありがとう」といって受け取ってくれた。
笑顔で。

お母さんと一緒に帰ろうとすると、手を引かれた。
振り返ると、あーちゃんがいた。
「ありがとう、おにーちゃん」と言われたので「うん」と言ってお母さんと帰った。
お母さんがニヤニヤしながら「あずさちゃん、かわいいね」と言った。
「別に」と言って、家に帰った。
384Epilogue:2006/03/32(土) 01:05:50

今日から大学生。
そんな事実が、俺を興奮させる。
・・・ことはない。

「ちゃんと用意した?」
「うん」
「・・・ネクタイは?」
「今からしめるって」

俺が大学生になっても、母さんは変わらない。
まぁ当たり前か。
母さんにとって、俺は一生、息子なんだから。
俺はネクタイを締めると、一回に降りた。
母さんもついてくる。

「じゃっ」
「いってらっしゃい。変なサークルに関っちゃだめよ」

「なんだそれ」と言って、俺は笑った。
そして真新しい革靴を履き、玄関の扉を開け、外に出た。



385Epilogue:2006/03/32(土) 01:06:31



昨日の大雨が嘘のような、雲ひとつない空。
気温もかなり高くて、スーツでは暑い。
俺はネクタイを少し緩め、携帯を見た。
新着メールが一件。
そのメールを開くと、短く、こう書かれていた。

『ガンバ!』

付き合ってから気付いたが、彼女は死語を多用する。
「ガンバ!」なんて、生ぬるい。
目の前で「そうは桑名の焼きハマグリ!」と言われたとき、俺は一瞬他界した。
でも、まぁ・・・かわいい、けど。

「ラーメンは〜とんこつっに〜〜(クレシェンド)〜〜限る!」

いつもどおり、変な唄を歌いながら、歩く。



386Epilogue:2006/03/32(土) 01:07:43



1+1の答えは2だと、人は言う。
でも、本当にそうだろうか。

片方の1は、もう片方と寄り添って2になる。
もう片方の1も、片方の1と寄り添って2になる。

もし、1+1を二人のこころとして考えたなら。

確実に、2よりも大きくなる。

俺は、そう思いたい。


でも、それ以上に思うことがある。




「俺にはこんな台詞、似合わない」








おわり。
387Mr.名無しさん:2006/03/32(土) 01:08:47

  _n
 ( l    _、_
  \ \ ( <_,` )
   ヽ___ ̄ ̄  )   グッジョブ!!
     /    /
388あとがき:2006/03/32(土) 01:08:48
かなり長くなりましたが一部分でも読んでいただけたらうれしいです。
おもしろいと感じてくれたら、もっとうれしいです。
でもゾウさんのほうがもっと(ry


最後に一言。つっこまれる前に自分で言っときます。


ツ ン デ レ は ど こ で す か ?


ありがとうございました。
389Mr.名無しさん:2006/03/32(土) 01:09:42
いや、楽しませてもらったYO
いいもん読ましてもらいました

乙でした
390Mr.名無しさん:2006/03/32(土) 01:34:29
      /\___/ヽ
     /       :::::::\
    .|          .::::|
    |  ''''''   ''''''   .:::|
    .|(●),   、(●)、::::|
     \ ,,ノ(、_, )ヽ、,,.:::::/
     /``ーニ=-'"一´\
   _/((┃))_____i |_ キュッキュッ
.. / /ヽ,,⌒) ̄ ̄ ̄ ̄ (,,ノ   \
/  /_________ヽ..  \
. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

      /\___/ヽ
     /''''''   '''''':::::::\
    . |(●),   、(●)、.:| +
    |   ,,ノ(、_, )ヽ、,, .::::|
  .   |   `-=ニ=- ' .:::::::| +
     \  `ニニ´  .:::::/     +
     /ヽ、ニ__ ーーノ゙\_
    .| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.|  トン
   _(,,) 乙!!ぐっじょ (,,)_
.. / |            .|  \
/   .|_________|   \
391Mr.名無しさん:2006/03/32(土) 13:46:15
よかたぞ。GJ!
392Mr.名無しさん:2006/04/02(日) 02:21:14
GJ。
393Mr.名無しさん:2006/04/03(月) 03:04:20
良い感じの終わりでした。GJ
394Mr.名無しさん:2006/04/03(月) 07:51:21
上げ
395Mr.名無しさん:2006/04/03(月) 10:34:05
( ´ω`)ageる必要ないお
396Mr.名無しさん:2006/04/03(月) 17:25:32
保守代わりに


ツンデレの成分解析結果 :

ツンデレはすべてやさしさで出来ています。
397Mr.名無しさん:2006/04/03(月) 19:56:57
どうせ毒男だしツンデレ小説でも書くの成分解析結果 :

どうせ毒男だしツンデレ小説でも書くの52%はお菓子で出来ています。
どうせ毒男だしツンデレ小説でも書くの21%は厳しさで出来ています。
どうせ毒男だしツンデレ小説でも書くの12%は花崗岩で出来ています。
どうせ毒男だしツンデレ小説でも書くの8%は魔法で出来ています。
どうせ毒男だしツンデレ小説でも書くの6%は宇宙の意思で出来ています。
どうせ毒男だしツンデレ小説でも書くの1%は勇気で出来ています。

(;^ω^)ちょwwwwお菓子wwwwww
398Mr.名無しさん:2006/04/04(火) 11:26:14
まぁいきなりだけど、なんなら漏れが作品別にまとめサイトみたいなのを作ってもいいが。

どーよ?
399Mr.名無しさん:2006/04/04(火) 18:06:26
うじゃうじゃ来るの嫌だからまとめ作らないって話だったけど、あると助かるのも事実だよね。
個人的には作って欲しいけど、とりあえずもうちょいしてからがいいかも。春だし。
400Mr.名無しさん:2006/04/04(火) 20:21:49
んーまぁ別になくてもいいと思うけどね
401Mr.名無しさん:2006/04/04(火) 21:25:26
あったらあったで便利だしいいんじゃないかなー
個人的にはそう神経質になるほど何かが起こるとは思えない
402Mr.名無しさん:2006/04/05(水) 13:53:22
・ツンデレのデレデレ妹を見て「お前もあれぐらい素直だったらな」とツンデレに言ったら

 椎水、と書かれた表札を横に見つつ、隆志は呼び鈴を鳴らす。軽快なチャイム音。そし
てあとに続く静寂。この時間は何度も彼女の家に足を運んでいるのにもかかわらず、一向
に慣れる事の無い緊張感があった。
 返事が来るのをしばらく待つ。が、全く返事が無い。おかしいな、と思いもう一度呼び
鈴を鳴らそうとしたところで、反応があった。
『どちらさまでしょうか?』
 インターホンから聞こえる声では誰の声か判別しがたい。隆志は礼儀正しく答えた。
「別府です。香奈美さんはいらっしゃいますか?」
『あ、ちょっと待ってください。今開けますから』
 いつもならここで彼女の怒鳴り声が聞こえるはずなのに、と違和感を感じていると玄関
のドアが開いた。
『いらっしゃい、別府さん』
 ああ。と彼は納得した。一つ年下の彼女の妹、奈々がそこに立っていたからだ。
「やあ、奈々ちゃん。お姉さん……いる?」
 この、清楚な雰囲気の眼鏡を掛けた背の低い女の子ににこやかに笑いかけながら彼は聞
いた。奈々もニコッと笑みを返して頷く。
『いますよ。さっきから別府さんが来るのを遅い遅いってイライラしながら待ってたんですよ』
『誰が待ってるって言うのよ』
『うわっ!! 出た』
 奈々がビクッと後ろを振り返る。隆志も奈々の後ろに視線を動かした。そこでは奈々の
姉にして隆志のクラスメートの香奈美が機嫌の悪そうな顔で睨みつけながら立っていた。
『人を化け物かなんかのように言わないでよね。それに、嘘ばっかつかない。誰がこんな
奴待つって言うのよ』
『またまた〜。さっきからリビングを落ち着き無くうろつき回っていたのは誰かな〜』
『そんな事してないわよっ。隆志っ! アンタもボーッとしてないでさっさと上がりなさ
い。模試はもう来週なんだし、こんな所で無駄話する為にあんた呼んだ訳じゃないんだから』
403Mr.名無しさん:2006/04/05(水) 13:57:23
新作?
404Mr.名無しさん:2006/04/05(水) 14:02:54
ガーッと猛獣のように妹に噛み付く香奈美。奈々はそれにたじたじとなる。隆志は呆れ
たようにため息をついて言った。
「へいへい。じゃ、お邪魔しまーす」
 靴を脱いで玄関に上がる。
『どうぞ、ごゆっくり』
 奈々がにこやかに応対する。それに香奈美はピクッと眉を動かして即座に反応した。
『ゆっくりなんてさせないからねっ! 勉強終わったらさっさと帰りなさいよっ。いい?』
「分かった、分かったからそう噛み付くなって」
 キーッとヒステリックに言う香奈美を宥めるように彼は言った。
『とか何とか言っちゃって、いっつも理由を付けては別府さんを帰したがらない癖に』
 せっかく火消しに回ったのに、火に油を注ぐように揶揄する奈々。案の定、香奈美は奈々
に怒鳴り散らす。
『今日はそんな事無いわよっ!! ふっ、普段だってその……別にいて欲しいわけじゃな
いのに、隆志がグズグズするから悪いのよ』
「俺のせいかよ」
 言い様の無い理不尽さを覚えて隆志は不服を唱える。奈々がそれにふるふると首を振っ
て答えた。
『ううん。別府さんのせいじゃないわよ。悪いのはお姉ちゃんだから。済みません、こん
な姉で』
『何であたしが悪いのよっ!! ああ……もういいから、奈々はあっち行ってなさいよね。
アンタには後からゆっくり話つけるから』
『はいはい。邪魔者は消えますよー。じゃあ別府さん。後でお茶淹れて持っていきますか
ら、お姉ちゃんの事、宜しくお願いします』
405Mr.名無しさん:2006/04/05(水) 14:05:28
『お茶なんか淹れなくていいわよ。こんな奴には水道水でも飲ましておけば』
「お前、幾らなんでもそりゃヒドイだろ。一応俺、客なんだしさー。せめて出がらしくら
い言ってくれよ」
『アンタにはそれでももったいないわよ。いっそ青酸カリでも入れてあげようかしら?』
「俺を殺す気か」
『別府さん』
 暴言を吐く姉を無視して奈々がツンツンと隆志をつついた。
『私、今度紅茶の淹れ方を覚えたんですよ。ティーバックからじゃなくてちゃんと茶葉か
ら淹れるのを。だから、その……別府さんにも飲んで欲しくて』
「へえ。そりゃ楽しみだ。さぞかし美味いんだろうな」
『まだ覚えたてだから自信ないですけど。期待しないで待ってて下さいね』
 ニッコリと笑い掛けられると、隆志の頬も自然に緩む。と、ギュウッといきなり、強い
力で片耳を引っ張られた。
「いたいいたいいたいいたい…… 何すんだよ、お前……」
『うるさい、このスケベッ!! さっさと行くわよっ!!』
「わかったから離せって。イテテテテテテ……」
 そのまんま彼女の部屋へと連行されていく彼を、奈々はクスクス笑いながら見送ってい
た。
406Mr.名無しさん:2006/04/05(水) 14:08:27
『ほら、もう、そこは違うでしょ? 何やってんのよアンタは!』
「いや、合ってるって。違うのはお前の方。ここはこれでいいの」
『絶対違ってるって! ホンットにアンタって頑固よねー。いい加減むかついてくるわ』
「そこまで言うんなら解答見てみようぜ」
『望むところよ。ここはほら……って、あれ――? 何で? 何でよっ!!』
「ほらみろ。俺の方が合ってるじゃねーか。もうちょっと人の話は素直に聞けよな」
『フ……フンッ!! たまたま合ってたくらいで偉そうに言わないでよね。いつもいつも
間違ってばかりの人の言う事なんて信頼置けるわけないでしょ』
「なら俺を頼るなよな」
『頼ってないっ!! 一人より二人の方が、その、こ、効率よく勉強できると思ったから
誘っただけよ。別にアンタを当てにしてる訳じゃないんだから』
 年に何回か、テストの前になると見られるお馴染みの光景。どんなに罵られても、隆志
にとっては、いつもこの時間が心地良く感じられた。
「あ、ほら、そこも違ってるぞ」
『ええ!? どこよ。ちゃんと教えなさいよね』
「今気づいたんだから仕方ねーだろ。大体それが人に物を頼む態度か」
『十分にへりくだってるつもりだけど?』
「どこがだよ」
 とその時、コンコン、と部屋のドアをノックする音がした。
『どうぞ』
『お待たせー』
 ガチャッとドアが開き、片手で器用にお盆を持って奈々が部屋に入ってきた。
407Mr.名無しさん:2006/04/05(水) 14:10:58
『ちょうどいい頃合だと思って、お茶淹れてきたよ』
『こんな奴に淹れなくたっていいのに……』
 香奈美は小声でぶつぶつと文句を言った。それに珍しく奈々がジロリ、と睨むような目
付きで姉を見る。
『お世話になってるんだからそういう事言わないの。それに私は別府さんに飲んで欲しく
て淹れたんだから、グズグズ言ってると、お姉ちゃんの分を抜きにするわよ』
『何でそうなるのよ! 奈々もこんな奴に優しくしてると今にロクな事にならないわ
よ!』
「さっきからこんな奴こんな奴って…… 俺、言うほど香奈美に酷い事した覚えはねーん
だけどな」
『そうよ。失礼なのはお姉ちゃんの方だもの。幾らなんでも言葉を慎まないと、もう別府
さんに相手して貰えなくなるわよ』
 二人から責めるような口調で言われ、さすがに香奈美もうっ、とたじろいだ。それから
プイッと横を向いて拗ねてしまう。
『えーえー、そうですよ。どうせあたしの方が悪いですよ』
『済みません。姉がいつもこんな調子で。不快な思いしてるでしょうけれど』
「え? 別にそんな事ないけどな。いつもの事だし」
『そうですか? そう言っていただけると助かるんですけど……』
 香奈美がジロリ、と妹を睨んだが、彼女は素知らぬ顔で、手際よくティーポットから紅
茶を注ぐ。
『どうぞ、別府さん』
「ありがとう。うん、いい香りだね」
『えへへ……これ、取って置きの茶葉なんですよ』
「いいの? そんな物使っちゃって」
『いいんです。一人で飲むのも逆にもったいない気がするので……』
「じゃあ遠慮なく。……うん。美味しい」
『本当ですか? 良かった……』
 仲の良さそうな二人を面白くない目で眺めながら、香奈美も一口啜ってみた。上品な味
と風味が口の中に広がる。
408Mr.名無しさん:2006/04/05(水) 14:12:20
『奈々も、こんなのわざわざこんなの出さなくてもいいのに……』
『お姉ちゃん!』
 奈々がたしなめるが、香奈美はムッとした顔でもう一口紅茶を啜るだけで答えなかった。
「ああ。いいんだよ、奈々ちゃん。こんな事言ってるけど、香奈美もいつも美味いコーヒ
ー淹れてくれるし」
『あ、あれは、その……別にアンタの為じゃないもの。あたしが飲みたいだけで、でも自
分だけ飲むのも何か気まずいから仕方なく分けてあげてるだけだし』
 仏頂面で横を向きながらぶつぶつと文句を言う香奈美。その顔にほんのりと朱が差す。
それを見つつ隆志はククッと笑いを漏らした。
『な、何がおかしいのよ!』
「いや。予想通りの答えが返ってきたからさ」
『た……たまたま当たっただけじゃない、そんなの! ていうか、アンタなんかにあたし
の行動が読めるわけ無いじゃない!』
『お姉ちゃんは根が単純だから』
『うるさいっ!! アンタは黙ってなさいっ!!』
 妹に怒鳴る香奈美と素知らぬ顔でお茶を飲む奈々。そんな二人を見比べつつ、隆志はポ
ツリと呟いた。
「しかしなあ……」
 その声にパッと反応した二人を見て、彼はそこで言葉を止めた。
『何よ。何か文句でもあるの?』
 即座に香奈美が挑戦的な言葉を投げかける。彼はそれに首を振りつつ言葉を続ける。
「いや。たださ、一つ違いの姉妹でここまで性格違うかなーって思ってさ」
『何よそれ、どういう意味よ?』
「お前と違って、奈々ちゃんって素直だし、優しいしさ。お前もあれくらい素直だったら
な。きっと、もっと可愛らしいのにって思って」
 その瞬間。
 ブツン、と香奈美の中で何かが切れる音がした。
409Mr.名無しさん:2006/04/05(水) 14:14:08
『わ、わ、わ……悪かったわねっ!! どうせあたしは奈々と違ってひねくれててガサツ
で頭も悪くて不器用で可愛くも何ともない女よっ!!』
「いや、何もそこまでは……」
『そういうことでしょっ!! 今更取り繕ったって遅いわよ。そんなに素直な子がいいん
だったら、いっそ奈々とでも付き合えばいいじゃない。無理してアタシとなんかいなくて
いいわよ!!』
「落ち着けよ。悪かったって。ちょっと仕返ししたくなって言っただけで――」
『いいの? お姉ちゃん』
 彼の言葉を遮って、大きく、はっきりした声で奈々が言った。
『私……取っちゃうよ?』

つづく
410Mr.名無しさん:2006/04/05(水) 14:17:57
期待
411Mr.名無しさん:2006/04/05(水) 15:28:55
ちょwwwVIPキャラじゃんかwwww
412Mr.名無しさん:2006/04/05(水) 20:20:37
ちょwwwwwwそこで切るのかよwww続き読みTEEEEEEEEEEEEE
413Mr.名無しさん:2006/04/05(水) 20:31:34
これVIPの間接スレのコピペじゃねぇかwwwww
414Mr.名無しさん:2006/04/05(水) 20:41:16
>>413
あっちのスレはなんか生暖かそうだから見てない(;^ω^)
415Mr.名無しさん :2006/04/05(水) 22:23:56
機体捕手
416Mr.名無しさん:2006/04/06(木) 21:46:36
wkwktktk
417Mr.名無しさん:2006/04/07(金) 14:36:50
VIPだかなんだかよくわからんがとりあえずwktkしとく
418Mr.名無しさん:2006/04/07(金) 23:45:12
素直妹vsツンデレ同級生か、・・・なかなか面白いじゃあないか。
俺も激しくwktkさせてもらうよ。

そっちのスレアドかコレの続きのコピペおながいします。
419Mr.名無しさん:2006/04/08(土) 00:31:47
ツンデレにこれって間接キスだよなっていったら188
http://ex14.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1144155960/l50

( ´ω`)これかな?

以前から存在は知ってたけどこんなにパート続いてるとは思わなんだ。違ったらごめーんね(´・ω:;.:..
420Mr.名無しさん:2006/04/09(日) 02:10:22
落ちても悔しくないけど捕手
421Mr.名無しさん:2006/04/09(日) 23:27:46
保守
422>>402>>404-409の中の人:2006/04/10(月) 01:28:04
こっちのスレは初カキコ
つーか、自分の書いた妄想がこっちに甜菜されてるなんて、初めて知ったもんで。

何か、見てみたら初回しか甜菜されていないようなので、VIPでうpした分のtxt持って来ました。
向こうはVIPだしちょっと、という人は見てやって下さい。

http://syobon.com/mini/src/mini19239.txt

今後も更新したらうpするつもりです。コピペは大変なので勘弁して下さい。
ではでは。
423Mr.名無しさん:2006/04/10(月) 02:07:09
>>422
続きが楽しみなので保守。
424Mr.名無しさん:2006/04/10(月) 05:55:05
VIPとここの差。
・「作品」「小説」「作家」といった単語はNG。「脳汁」「書き手」に変換。書いてる人が偉いという錯覚をなくすため。
・「ツンデレ」と「萌え」は必須。どっちが欠けてもダメ。
・コテトリ禁止。投下前に許可を求める、投下後の自虐、感想に対するレスなども不要。書き手は黙って投下するのみ。

VIPに遊びに行くときは以上を守って楽しくやりましょう。
425Mr.名無しさん:2006/04/10(月) 13:09:36
>>422
さすがVIpper
自演もうまくやるな
426Mr.名無しさん:2006/04/10(月) 17:50:16
俺が2chを見始めた時は毒男板と喪男板にいたけどいつの間にかVIPに流れていったな・・・
今じゃこの板じゃこのスレしか見てないや。
427Mr.名無しさん:2006/04/10(月) 22:01:18
脳汁って表現はいいな
しかしVIPは早くてついていけん
428Mr.名無しさん:2006/04/10(月) 22:40:05
>>425
何でわざわざ自演しなきゃなんねーんだよwwwwwww
意味ワカラナス
429Mr.名無しさん:2006/04/10(月) 22:52:15
>>426
お前は俺かwwwww

保守
430Mr.名無しさん:2006/04/10(月) 23:15:56
>>424
レス時間きれいだな


( ´ω`)ほしゅーん
431Mr.名無しさん:2006/04/11(火) 01:14:42
VIPは巣以外では普通に喋れ
432Mr.名無しさん:2006/04/11(火) 19:55:19
口でクソたれる前と後に『サー』と言え! 分かったかウジ虫!

その日まではウジ虫だ! 地球上で最下等の生命体だ

両生動物のクソをかき集めた値打ちしかない!

じっくりかわいがってやる! 泣いたり笑ったり出来なくしてやる!

クビ切り落としてクソ流し込むぞ!

まるで、そびえ立つクソだ

クソまじめに努力するこたぁない!
神様に任せりゃケツに奇跡を突っ込んでくれる!

じじいのファックの方がまだ気合いが入ってる!

タマ切り取ってグズの家系を絶ってやる!

ベトナムに行く前に戦争が終わっちまうぞ、アホ!
433Mr.名無しさん:2006/04/11(火) 19:55:51
                    _, --―-  ,,,,
                  , "',:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.`' 、
                 , '  /:.:.:.:.:\:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ
              /ヾ '".:.:.:.:.:.:.:.:.`:.:.:、___;;;;;:.ヽ
     ,  -―..'''''''''' ―..- ..,,,_:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.',
  , ":::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::``''......:.:,:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:',
  ',:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`゙..ー..、:.:.:.:.:.:.:.:.!
   \::::::::::::::::::::::r=ニj ヾニニ==、,, 、;;;:::::::::::::::::::::`'....、:.:.|
    \:::::::::::::::::k/  :::ヾソ~`_ヽ、:::::::``;,;,;,,、:::::::::::::::::`':.....、
      `'  、:::/   ..::::::,' ̄"::::::::ヽ:::::::ヽ;,;,;`;::、::::::::::::::::::::::::゙:....、
            ,ヾ ,,,_   i、         :::::::\;:;:;:;:;:;::::::::::::::::::::::::::::::\
         !/,  `''":!         ..:::::::::::"ヾ-、゙ヽ::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
         |.″    |    ::::    :::::::::::ノ,,,_ノ ,' ,'::::::::::::::::::::::::::::::::::!
           .!,´\   l    ::::::::::::::::::::::::  r;;,,__ ノ /:::::::::::::::::::::::::::::::_ノ
         l|:::::::ヽ       ::::::::::::::::::::l    ,...:::'";:,‐ー ''''''''''''''" ´
            ,'i_ -=,' !    ::::::::::::::::::::;;`"":::::::,';:/
         iヽ`"ノ .i   i:::::::::::::::::::::,::::::::::::::::::,';ノ   か、勘違いしないでよねっ
         |     "  ,':::::::::::::::,:::'"::::::::::::::, '!    一人前の少尉を育てたかっただけなんだからっ
         !  _,,, '"  ...:::::::,:::'"::::::::::::::::::::/:.:.!   
            ` 、::;;;__:::'"::::::::"::::::::::::::::::::::::::/:.:.:.i
             ` 、::::::::::::::::::::::::::::::::::/:.:.:.:.|
434Mr.名無しさん:2006/04/11(火) 20:48:53
ツンデレ軍曹・・・・激しく萌えねぇorz
435Mr.名無しさん:2006/04/12(水) 14:05:28
ほしゅ
436Mr.名無しさん:2006/04/12(水) 16:20:56
書籍化age
437Mr.名無しさん:2006/04/12(水) 22:48:52
続きが気になりつつ保守
438Mr.名無しさん:2006/04/13(木) 11:38:37
期待sage
こないだの続きが出来たのでロダで投下。

前回まで
http://syobon.com/mini/src/mini19438.txt

今回(その6)
http://syobon.com/mini/src/mini19439.txt


こっちはIDでないらしいので鳥付けてみた。
440Mr.名無しさん:2006/04/14(金) 22:13:52
>>439
猛烈にGJ。
441Mr.名無しさん:2006/04/15(土) 11:22:46
あれだな、あまりの過疎具合に泣きそうになったので俺何か書いてみるよっ
期待しないで待っててねっ!!



一年ほど
その7投下
http://syobon.com/mini/src/mini19514.txt

前回までは>>439参照
443Mr.名無しさん:2006/04/15(土) 16:43:21
マルチポストうざい
444Mr.名無しさん:2006/04/15(土) 21:47:29
>>442
続きまだー?
445Mr.名無しさん:2006/04/16(日) 12:49:32
ほしゅ
446Mr.名無しさん:2006/04/16(日) 13:31:30
>>442
乙GJ
447Mr.名無しさん:2006/04/16(日) 18:01:00
あえて>>441に期待
448Mr.名無しさん:2006/04/17(月) 00:00:14
>>442
とうとうクライマックスだな。次かその次で一区切りが付きそうだ。

その後は、一年間の時を注ぎ込んだ>>441の作品を気長に待つとしよう。
449Mr.名無しさん:2006/04/17(月) 20:07:55
定期保守
最終回投下(その8)
http://syobon.com/mini/src/mini19639.txt

全ログ分
http://syobon.com/mini/src/mini19638.txt


何か、まあ、うちのスレ住人が勝手な事してスマンカッタ。
ではこれにて。
451441:2006/04/18(火) 02:42:18
GJ!
いい感じだー

一年かけて書くって言った物の第一話?っというかさわりの部分だけ出来たんだがどうしようか?
ある程度書きためてから投下したほうがいいのだろうか?

拙い&未熟な作品だけどorz

小説書くのってムズカシス
452Mr.名無しさん:2006/04/18(火) 06:16:54
書けるようになりたいっすよ
453Mr.名無しさん:2006/04/18(火) 17:13:59
拙い方法で満たす感情と君の体温・・・
454Mr.名無しさん:2006/04/18(火) 22:45:07
vipperの言いようじゃないが
小説というより脳の妄想汁を垂れ流すもんだから
あんまり大仰に考えることは無い、はず。
455Mr.名無しさん:2006/04/19(水) 00:18:21
>>450
GJ。良いモン見させてもらった。
456441:2006/04/19(水) 00:36:02
おk。じゃ以下から恥も外聞も無く投下。ちなみにツンデレまだ居ません・・・・orz
457441:2006/04/19(水) 00:37:19
―――僕は眺めていた。いつでも眺めていた。そっと眺めているしか、しなかった。僕の瞳が向かうところには彼女はいつもも居た。教室の喧騒の中に、窓からふと見おろす校庭に、人通りの多い繁華街の交差点に。
その飛びぬけた容姿はどこにいてもその存在を主張していた。その姿はまるで可憐な一輪の華のようではかなげだった。
ゆるくカーブした細く長い髪の毛は色素が薄くて、太陽の光にかざされてきらきらと金色に輝く。
小作りで上品な顔に二つの大きな目はとても映える。黒目がちの瞳は驚きと共に大きく丸くなったり、すこし意地悪そう細まったりしていた。
話していたクラスメートが何か面白いことでも言ったのだろうか。小さくかわいらしくも整った鼻と、まさにつぼみの様な艶やかな唇。彼女が笑うとはかなげな雰囲気から一変して健康的な美しさを見せた。まさに花開くようだ。
彼女は友人と話したり、面白い話を聞いたりした時とてもよく笑った。彼女が笑うとみんなも笑顔になった。周りの空気までも巻き込んで幸福な時間が訪れる。彼女は皆に愛されていた。僕の目はいつでも彼女を探していた・・・・

~TUNDERE novel for single person
『幸福の扉』
act1 『The door is knocked on.』


458441:2006/04/19(水) 00:38:07
「あ、あの・・・突然ですけど・・・俺とつ、付き合ってくださいっ!!」
追い詰められた声、思い悩んだ末の極度の緊張。顔が真っ赤だ。まだまだ初々しい制服姿、今度は一年生か。
「い、いゃ・・・・前に・・・・・・せんぱ・・・・・ごく印象に・・・・・・・・だから・・・・・・」
なにやら大仰な身振り手振りで必死に気持ちを伝えようとしているようだった。後ろから銃でも突きつけられ『しゃべっていないと殺す』と脅されてでもいるのだろうか?と思うほどの気迫が感じられる。
「だか・・・・せんぱ・・・・・・かわいいなっておも・・・・・から・・・・・」
その話し振りは少し離れた物陰から立ち聞きしている俺にも分かるほど狼狽していて、途切れ途切れでしか聞こえてこないにも関わらず、もう支離滅裂で自分でも何を言っているのか分からなくなっているんだろうなと容易に予想できて苦笑してしまう。
『何で愛の告白ってやつは、校舎裏って相場が決まってるんだろうね・・・』
声に出さずに胸のうちだけでつぶやいてみる。
459441:2006/04/19(水) 00:39:28
俺がこんなところで人の告白の立ち聞きなんてしているのはもちろん偶然なんかではない。
確かにこの校舎裏は人目を忍ぶ絶好の場所だけれど煙草を吸うでもなく、タチの悪い不良グループにも入っているでもない真面目な一般生徒であるところの俺には基本的に縁が無い。
俺は今日この場所で行われているこの場面こそを見るために、ここに居るのだ。
「・・・・そんなわけで・・・・ひとめぼ・・・・・・・おねがいしま・・・・・・・あの・・やっぱりダメで・・・・・・・・か・・・・・・・・・?」
春の日差しも暖かい五月初旬のお昼休み。少年の必死のアプローチは尻すぼみ的に小さくなり、最後には半ば懇願のようになっていた。もしかしたら半分くらい泣いていたのかもしれない。
460441:2006/04/19(水) 00:41:00
目に映るのは少年と相対した一人の少女。
今回の主役であるところの告白された女の子だ。相手の男が一年生にしてはそこそこ長身だったせいか、いつもにまして小柄に見える。
彼女はまっすぐ少年の顔を見ている。人の話を聞く態度としてはまさに満点なのだがこれが徹頭徹尾無言で全く目をそらすことも無く無表情でもって見つめられたとあっては勝手が違う。
彼女は告白の最中、何かしらの反応も示すことなく男の話が終わるのを待っていたのだ。これならば露骨にいやそうな顔をされたりしたほうがマシというものだろう。
ただでさえ緊張しているところにそんな対応をされたら恐慌状態に陥ることは必死だ。
「・・・・・・・・・・・・・」「・・・・・」
緊張がピークに達し張り詰めた糸が切れてしまったのか、男がうなだれた。どうやら終わったようだ。
461441:2006/04/19(水) 00:42:38
少女が何事かを言ったように見えた。小声であったのだろう俺の居る場所からは彼女の唇が動いたことしか分からなかったが。ニコリと微笑むと彼女はスカートを翻してそのまま駆けていってしまった。
後に残されたのは呆然とした表情の少年が一人。
彼女の走り去った方向を向いたまま固まっている。俺は物陰から出て、少年の肩に手を置き、ご苦労様と一声かけると彼女とは別方向に歩き出した。丁度渡り廊下から校舎に入る曲がり角を曲がったあたりで
『2点って・・・・・2点って何なんだよぉぉぉぉぉぉおお!!!』
世にも悔しげな絶叫が聞こえた。
俺は堪らず、腹を抱えて大笑いしてしまった。

462441:2006/04/19(水) 00:43:49
内、妹にしたい娘ランキングNo1、恋人にしたいランク10位以内を入学以来キープし続ける彼女、八重樫はるかのに対する轟沈記録がさらに塗り替えられた瞬間であった。
興奮冷めやらず、げらげら笑い続ける僕をいぶかしげに眺める同級生を尻目に僕は教室の扉をくぐる。よし、今日も変化無し。いつもどおりの平和な日常であった。
463Mr.名無しさん:2006/04/19(水) 00:45:59


とりあえず推敲はもっとしたほうがいいかと
誤字脱字らしきところがちらほら見受けられる
464441:2006/04/19(水) 00:46:24
では、続き書いてきます
465Mr.名無しさん:2006/04/19(水) 06:44:58
楽しみだな
466Mr.名無しさん:2006/04/19(水) 06:46:29
>>457
なんていうかいやに本格的だな。とりあえずツンデレが出てくるまでマッタリ待たせてもらうかね


467Mr.名無しさん:2006/04/19(水) 11:24:58
なぁ、俺のパソコンがツンデレでした2 のスレ、途中から読めなくなった
(ウイルスが読み込まれて開けなくなった)んだけど、
あのスレどうなったの?
468Mr.名無しさん:2006/04/20(木) 15:28:00
保守
469Mr.名無しさん:2006/04/21(金) 23:20:15
まだこのスレあった事にびっくりし、
久しぶりに書いてみました。
以前(1〜3のどこか)も買いた事があるんで
作風が似てるだろうけど、ヒマつぶしにで読んでください。
どれだかは散策しないでほしいっすwwww

なにぶん、久しぶりだから乱筆なのはご勘弁を
470年上の・・・  第1話:2006/04/21(金) 23:22:27
新入社員歓迎会の帰り、俺は加奈と二人で帰っていた。
入社時から俺は加奈の事が好きで、いつか告白しようと思っていた。
駅が近づく。電車の方向は別々だ。
もう時間がない。俺は意を決して加奈の歩みを止める。
「なぁ、ちょっと話があるんだ」
「何?」
告白なんて中学以来だ。アルコールの力も加わってありえないスピードで
鼓動する心臓が痛く感じる。
「いや、その、じ、実はさ・・・」
 「何よ〜、いつもと何か違うね〜。酔っ払ってるの?」
屈託のない加奈の笑顔が俺の気持ちを高ぶらせ、それに比例するかのように
ヒザが震えだす。
 (何で震えてるんだよ、俺!!しっかりしろ!!!)
必死に自分を鼓舞し、自分の気持ちを伝えた。
 「お、お、俺さ、入社してからずっと加奈の事が好きだったんだ・・・」
いつも通りの口調で言ったつもりだった。でもその声は聞き取れないぐらい小さい声だった。
 「えっ・・・」
それでも加奈には伝わったらしい。加奈は落ち着きなく髪を撫でたり、視線をあちこちに飛ばしている。
俺がもっと男らしければデンと構えてられるのに、その時の俺は手を前で握り
モジモジしていた。誰がみても器の小さい人間だろうな。
数十秒の沈黙の後、加奈が口を開いた。
 「私も・・遼二の事は、、、好きだよ・・・」
加奈の言葉にキターのAAと、何だってー!!のAAが頭に浮かぶ。
天にも昇る気分ってこういう事なんだ、と俺は思った。
 「じゃ、じゃあ!!」
"付き合ってくれるのか?" そう言おうとした矢先、加奈が言葉を続けた。
 「好きだけどね、それは友達として・・・・かな?」
 「・・・・・」
471年上の・・・  第1話:2006/04/21(金) 23:24:10
加奈の言葉に一瞬にして暗くなる俺の心。ショボーンのAAすら浮かんでこなかった。
 「遼二の気持ちは嬉しいけど・・・私達、今のままの方がいいと思う」
 「今のまま・・・」
 「うん、仲のいい同期って事か・・な?」
俺は加奈を恋愛対象として見ていた。でも加奈は違っていた。
その事実が分かると急に泣きたくなってきた。
でも、加奈の前で泣ける訳もなく、俺は震える声でこう言った。
 「そ、そうだよな、な、何かゴ、ゴメンな。急に変な事いっちゃって。あー、酔っ払ってるのかな」
涙を堪える為、ものすごい勢いで俺は喋る。
 「・・・・」
そんな俺をじっと見つめる加奈の視線に俺の涙腺は限界に近づいていた。
 「ほ、ほら、で、で、電車が来るからさ、、、あっ、俺の方も電車来るみたいだから・・・・」
加奈に背を向け、改札へと歩き出す。早くこの場から立ち去りたかった。
 「ホントにゴメンね」
 「い、いいって、気にしてないから、ホント・・・」
 「じゃあ気をつけてね」
 「ああ、加奈も気をつけて」
そう言うと俺は競歩よりも早く、改札へと向かった。
俺の2年間の秘めた想いはこうして、わずか数分で終わりを向えたのだった。

あの日から3日が経った。あれ以来、加奈と会話をする事が出来なかった。
最低限の仕事の話はしたが、それ以外の事話すことが出来なかった。
みんなで食事をとっている時、加奈から俺に話しかけてくる事があったけど
俺は「ああ」とか「そうだね」とか生返事しか出来ない。
小さい、小さいよ、俺・・・・
472年上の・・・  第1話:2006/04/21(金) 23:25:58
昼休みが終わり、自席で仕事をしていると俺は急に背中を強く叩かれた。
 「どうした?元気ないじゃん?」
叩いてきたのは隣の席のつかさ先輩だった。
つかさ先輩は俺の3つ上でボーイッシュって言葉が似合う人。
微妙に若い頃の内田有紀に似てるかもしれない。
席が隣という事もあって、入社以来、とても世話になっている。
 「いや、別に何でもないです」
同期に振られたなんて口がさけても言えない。でも、つかさ先輩が発した言葉に俺は驚愕した。
 「加奈に振られたんだって」
耳元でささやくように言われ、俺はあやうくイスから転げ落ちるとこだった。
 「な、な、何で知ってるんですか??!!」
 「えっ、ヤダ、、ホントなの?冗談で言ったのに」
うわっ、やっちゃった・・・カマかけにひっかかったのか・・・
 「カンベンして下さいよ・・こっちは傷ついてるんですから」
 「まぁ、何となく知ってたけどね、アンタが加奈の事好きなんじゃなかなって」
 「マジっすか・・・」
 「アンタは態度に出るから分かりやすいんだよ?」
つかさ先輩に気付かれてるんだったら、他のヤツも気付いてるんだろうな。
そう思うと俺はますます落ち込んで言った。
 「ほら、そんなに落ち込まない!」
 「俺、当分立ち直れないっすよ・・・」
 「しょうがないわねー、じゃあ気晴らしにでも行く?」
 「気晴らし・・ですか?」
 「そ、どうやら私がアンタを落ち込ませたみたいだし」
 「そんな事は・・」
つかさ先輩の申し出を断ろうとしたけど、つかさ先輩は聞く耳を持っていなかった。 
「じゃあ決定ね。今度の土曜明けとくように!!」
そう言ったつかさ先輩の顔はどこか嬉しそうだった。
473年上の・・・  第1話:2006/04/21(金) 23:27:12
土曜日になった。
強引に"気晴らし"に連れて行かれる事になった俺は待ち合わせ場所についた。
そこには既につかさ先輩がいた・・・・
 「おっ、ちょうど5分前じゃない。エライ、エライ」
そう言って俺の頭をナデナデする真似をしているのは、俺が知っているつかさ先輩ではなかった。
いつものつかさ先輩はジーンズが殆どで、会社の制服以外のスカート姿なんか
見たことなかった。
今日は薄いピンクのロングスカートを履いていて、靴もスニーカーじゃない。
上着もどっかの雑誌にでも載ってそうな、まさに"女性"の服装だった。
少しの間、俺はつかさ先輩に見とれてしまっていた。
 「な、何よ・・ジロジロ見て・・・・」
 「あっ、い、いや、いつもと服が違うなって・・・」
 「へ、変だった?」
 「へ、変じゃないです。すっごく似合ってます」
俺がそう言うと、つかさ先輩はプイっと顔を背ける。
 「お、おだてたって何も出ないからね」
 「おだててる訳じゃないですって」
今度は背中を向けるつかさ先輩。
 「た、たまたま買ったばかりの服で、、そ、それを着てきただけなんだから」
 「すみません、何か変な事言って」
 「いちいち謝らないでよ、別に怒ってる訳じゃないんだから!」
くるっと俺の方を向いたつかさ先輩の顔は少し赤らんでいた。
 「やっぱり怒ってますよね?」
 「何でよ?」
 「顔、少し赤いです」
 「く、くだらない事言ってないで、ほら、さっさと行くわよ」
 「あっ、ちょ、ちょっと待ってくださいって」
こうして俺は早足で歩いていくつかさ先輩の後を追っかけていった。
474Mr.名無しさん:2006/04/22(土) 00:08:57
(;゚∀゚)=3

イイヨイイヨー
475年上の・・・  第2話:2006/04/22(土) 01:25:13
>>473
"気晴らし"に連れて来られたのはお台場だった。
ここで"気晴らし"って出来たかな?ジョイポリスぐらいしか俺には浮かばなかった。
 「お台場で何するんですか?」
 「今のアンタは癒されないとダメみたいだからね」
 「癒される?」
 「ほら、着いたわよ」
喋りながら歩いてたら目的地に着いたらしい。そこはお台場キャッツリビンという所だった。
 「なんですか?ここ」
 「アンタ知らないの?」
 「ペットショップか何かですか?」
 「入れば分かるわよ、ほら、早く」
言われるがまま、俺は店内へと入っていった。
店内へ入るとアチコチで多数の猫がくつろいでいた。
 「へぇー、こんなトコロあるんですね」
 「ね、癒されるでしょ?」
 「でも以外ですね、つかさ先輩がこんなトコ知ってるなんて」
 「何?キャラじゃないとでもいうの?」
ほっぺを少し膨らませながら、ふてくされた真似をするつかさ先輩に、俺はドキっとした。
ヤバイ、すっごく可愛く見えるよ、この人・・・
バスケットの中に寝ている猫を二人で撫でながら俺は少し回りを見渡した。
 「何かカップルばかりですね」
何ぬきなしにつかさ先輩に話しかける。
 「・わ・・た・達も・・う・・見え・・る・・・かな?」
小さい声でつかさ先輩が言った言葉が全部は聞こえなかった。
 「えっ、何か今、言いました?」
猫を撫でているつかさ先輩の手が止る。
 「別に何も言ってないわよ!!」
 「す、すみません」
何で俺が謝らなければいけないのか・・・・
476年上の・・・  第2話:2006/04/22(土) 01:26:41
 「いやー、すっかり癒されました」
 「そう、連れてきた甲斐があったわ」
 「猫ってあんなに可愛かったんですね。最近はノラ猫もロクに見かけないし」
 「そうね、都会じゃなかなかね」
あの猫は可愛かった、あの猫は不細工だった、何て他愛も無い会話をしながら
俺とつかさ先輩はお台場を散歩していた。
何か、デートでもしている気分に俺はなっていた。
よせばいいのに、思わずそれを口にしてしまった。
 「こうしてると、何かデートしてる感じですよね」
 「な、何バカな事言ってるのよ!!き、今日はアンタの気晴らしでしょ?」
 「そうですよね、すみません。でも、何かそんな気がして」
ふと視界に観覧車が目に入る。観覧車のイルミネーションが回転を始め俺は思わず見入ってしまう。
 「何?まさかアレに乗りたいの?」
 「いや、別に、乗りたいとは・・・」
 「なーんだ、乗りたいなら素直に乗りたいっていいなさいよ。ほら、行くわよ」
 「え、あ、ちょ、ちょっと・・・」
戸惑う俺をよそに、つかさ先輩は小走りに観覧車乗り場へと向かっていった。

徐々に上昇する観覧車の中で、向かい合わせに座っているつかさ先輩は
遠くに見えるレインボーブリッジを見ながら
 「観覧車なんていつ以来かしら?」
と言った。
 「つかさ先輩は・・・」
質問しようとすると、つかさ先輩は俺の言葉をさえぎった。
 「前から思ってたんだけどさ、先輩って呼ぶの変じゃない?」
 「えっ、そうですか?」
 「会社は部活じゃないんだから、でしょ?」
 「でも、、今更何て呼べばいいかわかんないですよ」
 「そうねぇ・・・・」
477年上の・・・  第2話:2006/04/22(土) 01:28:08
少しの間、沈黙が続く。スピーカーから流れるBGMの音と、
観覧車の連結部がきしむ音が室内に響いていた。
 「な、名前で呼んでみる?」
 「名前だったら呼んでるじゃないですか、つかさ先輩って」
 「そうじゃなくて、、そ、その、、、名前だけ・・・とかで・・・」
こんなに歯切れの悪いつかさ先輩を俺は初めてみた。どこか照れくさそうで、
でも可愛らしくて・・・
 「それだと、、呼び捨てになるし・・・・」
俯いた顔を少しだけ俺の方に向け、上目遣いに近い表情で
 「い、一回だけでいいから、、、呼んでみてみれば?」
とつかさ先輩は言ってきた。
膝の上に置かれた手が小刻みに動いている。
何だかとてもつかさ先輩が可愛らしく見えてくる。
 「つ・・・つ・・・つか・・・・」
"つかさ"って呼ぼうとしたその時、観覧車のドアからカチャっと音がした。
地上についたらしい。
 「ほ、ほら、もう終点よ。さっさとおりなさいよ」
 「え、あ、は、はい」
慌てた口調のつかさ先輩に促がされ、俺は観覧車を降りた。
表の空気を吸って落ち着きを取り戻した俺は
 「今なら名前で呼べますよ」
と言った。
 「ホントに名前で呼ぼうとしたの?冗談に決まってるじゃない」
 「え、俺、からかわれたんですか?」
 「当たり前よ、年下のアンタに呼び捨てなんかさせないわよ」
 「えー、ひっどいなー。俺、本気にしちゃいましたよー」
 「ひっかかったアンタが悪いのよ」
そう言った後、小さな声でつかさ先輩は何かを呟いた。
確か"バカ"って言ったように聞こえたけど、聞き直したら怒られそうだったから
俺は聞こえなかったフリをした。
478Mr.名無しさん:2006/04/22(土) 19:08:28
あぁ、たしかになんとなく懐かしい気がするな
479Mr.名無しさん:2006/04/22(土) 23:13:31
>>477
GJ。なかなか面白かったよ。
480Mr.名無しさん:2006/04/23(日) 16:41:36
hoshu
481Mr.名無しさん:2006/04/23(日) 19:44:10
定期保守
4827進:2006/04/23(日) 23:19:53
476は同性愛ですか
483Mr.名無しさん:2006/04/24(月) 12:39:28
>>482
日本語で言って貰える?
484441:2006/04/25(火) 05:13:40
八重樫はるかに対する衆人の印象は「かわいい」これに尽きる。
わが校には伝統的に女子に対するランキングが3つ、男子に対するランキングが4つある。
彼女はそのうちの2つのランキングの不動のランカーなのだ。その理由として、西洋のお姫様かアンティークドールのような可憐さがある。
男子から人気がある女の子は、基本的に同性から嫉妬をもって嫌われるものだが、彼女は同性からも非常にモテた。
もっともそれは恋愛対象ではなく、ある種愛玩動物的なものであるかもしれなかったが。
だいたいの場合、彼女は大勢の良き友達に囲まれている。彼女と特に仲のよい女子のグループの中心人物とも言える。
しかし彼女がみんなを率いているというわけでなく、あくまでマスコットとしてだろう。
休み時間などにボーっと教室を眺め回してみれば、彼女をからかって遊んでいるクラスメートを良く見掛ける。
周りの女子たちも彼女のきれいな長い髪が大のお気に入りらしく、しょっちゅう撫でたり結んだりして遊んでいた。
彼女の髪の毛は多少のクセはあるもののやわらかい素直な髪だったので、かわいい髪形を求める年頃の女の子の丁度いい練習台だったのだろう。
ひどいときには授業が切り替わるごとに髪型が変わっているなどという事もあり、教師陣の苦笑を買ったものだ。
彼女も心得たもので、登校時には邪魔にならないようにゴムとヘアピンで止めただけという簡潔な髪形をしてくるようになった。
彼女は、入学以来2年間、誰とも付き合わなかった。それがランキング上位キープの一番の理由である。どんな美女、美少女でも特定の男が付けば人気は落ちる。
たとえ自分には届かない高嶺の花であろうと誰かのものになってしまうと萎えるらしい。まことに情けない男の性である。
もちろん彼女に対してアタックする輩も数多く居た。妹ランクが示すとおりその容貌は恐ろしく男の庇護欲と独占欲をそそるのだ。
485441:2006/04/25(火) 05:14:23
「それにしても・・・・勿体無いよなぁ」
「なにがよ?」
午後の授業の休み時間。窓際の席に陣取った俺たちはだらけきっていた。春眠暁を覚えずというが、春ももう終わろうかという五月あたりが気候的に一番心地よい。
実に締まらない顔をして教室の逆側に集まった女子のグループを眺めていた前の席のクラスメートが話しかけてくる。
「・・・・なにがって、八重樫に決まってるだろが」
「ああ・・・・」
親しげに友達と話す彼女の横顔を何とは無しに眺める。
「今日の昼も一人玉砕したんだろ。一年生だっけか・・・・あぁ、サッカー部だわ」
「お前のとこだね」
いかにも眠いです、だるいです、もう何もやる気がしませんと言わんばかりの目をしたこの男は宮崎という。腐れ縁というやつなのか一応親友ということになっている。
「お前、また見にいったんだろ?」
「・・・・・・・」
「八重樫に告白しに来る奴って後たたないけど、そのたびにお前居なくなるもんな」
「・・・・・・・そうね」
宮崎の口がいやらしく歪む。
「よっ、ストーカー!」
「まて」
「あとつけまわしたくなる気持ちも分かるけど、ほどほどにしておかないと本気で捕まるぞ」
そう言うと、このたちの悪い友人はげらげらと笑い出した。
「ちがうっつーのに・・・・俺はいちジャーナリストとして知っとく権利があるんだよ」
「ほー、君がジャーナリストだったとはちっとも今の今まで、これっぽっちも知らなかったよ。三笠宗次君?」
わざとらしい口調で名前を呼ぶ。どこまでも小憎らしい。しょうがなく俺は相手をすることにする。
「これでも新聞部の記者だからね。ちなみに今月に入って3人目、結果はお察し。ちなみに今回は2点だったらしい。今年報告されてる中で最低点数だね。最高点はD組の奥田の23点。でも、ごめんなさいっと来たもんだ」
「それはまた・・・手厳しいねぇ」
宮崎は笑って答えた。
486441:2006/04/25(火) 05:15:32
そうなのだ、八重樫はるかは告白してきた男にいちいち点数をつけるという、見ようによってはとんでもないことをしていた。
それが始まったのは入学して間もない春であったはずである。事の発端は、誰にもなびかない彼女を見かねたクラスメートの『じゃあ、はるっちはどんな男だったら付き合ってもいいの?』という何気ない問いだったらしい。
それに対する彼女の答えは『自分採点で40点以上?基準は内緒かな。でも好きになった人じゃないとイヤ』という冗談めかした答えだった。
しかし、それを鵜呑みにした馬鹿な男が数名、自分は何点なのかと聞きだしたらしい。
彼女は最初戸惑ったらしいが、その相手がしつこかったせいもあって、40点には及ばないまでもそれに近い点数を伝えたらしかった。
男というのは単純で悲しい生き物である。そんな冗談話から飛び出した話を真に受けて、もう少し頑張れば手が届くと思ったらしい。
結果、その男は自分を磨くことに腐心し、結果成績を100位近く上げ、おまけに部活ではエースとして全国大会で大活躍という離れ業をやってのけたのだ。
その男が乗せられやすい性格だったというのもあるのだろうが、なんにせよ彼は八重樫に非常に感謝しつつ卒業して行った。彼が卒業生代表を務めた卒業式での彼の表情は、それはそれは、晴れやかなものであった。
以降、彼女に告白するものは点数を聞くという奇妙な習慣が生まれた。みんな思ったのだろう。ご利益があると。
最初のうちは彼女も嫌がっていたらしいのだが、それで何かしらの頑張りになるのならと最近はあきらめているらしい。
487441:2006/04/25(火) 05:16:20
「それにしても今回は低すぎじゃないか?それ2点ってさすがに傷つくだろ」
「そいつ、中学からずっと付き合ってた子が居たらしいんだけど、八重樫にほれ込んで捨てちゃったらしいんだわ。でも彼女は諦めきれなかったらしいんだけど、男の方はやられちゃってるから結構ひどいこと言って突き放したらしいよ」
はー、さすがに情報はやいねぇ・・・と感心したように宮崎がつぶやく
新聞部エースを甘く見るなよ!などと言いながら考える。
彼女の採点方法ははっきり言ってなぞに包まれている。学内でもそこそこ人気のある男が割合低かったり、何でこんなやつが・・・というような冴えないやつが案外高得点だったりするのだ。

「まぁ〜た、はるっちばっかり見てるの?この変質者!」
・・・・うるさいのが来た
「よっ、水野さん」
宮崎が手を上げて挨拶する。その先にいるのは黒い髪をサイドでまとめた女の子、クラスメイトの水野杏子が居た。
「うるさいよ、俺が何を見ようとお前には関係ないだろ。何、お前俺になんか気でもあるわけ?」
「はぁ?自信過剰も大概にしてよね!このデバガメ根暗ストーカー!!」
ぐっ・・・そこまで言うか・・・・
水野杏子。八重樫はるかの親友にして、俺の小学校からの腐れ縁の幼馴染だ。
さっぱりとした性格と健康的な明るさでクラスのムードメーカー的な彼女だが、実を言うと俺の天敵である。
実際仲が悪いわけではない。お互い昔から良く知っている兄妹同然の関係なのだが・・・・
「まぁ、あんたは女と見ると見境無しのロクデナシだしね!」
・・・こいつはある出来事があってから俺に対して突っかかってくる
「女好きの癖に意気地が無いけど」
・・・・昔から軽口や、言い合いなんかは良くあった
「気に入った女の子一人声かけられないんだもんねー」
・・・・・・・でも変わってしまった
「あんたはほんとに意気地なしの根暗チキンだわね!」
あの日を境に
488441:2006/04/25(火) 05:16:56
「あー、うっさいな。お前こそそんな性格だから彼氏できないんだよ。」
「はっ、今はいい人居ないだけよ。私はね、美人だし、性格も明るいからモテモテなのよ。言い寄ってくる素敵な男なんか大勢いるんだからねー」
「あーはいはい。じゃあ俺みたいな根暗に関わってないでさっさとその素敵な男のとこ行けよ」
「何言ってるのよ。私が構ってあげないと、あんたなんか誰からも相手されなくてかわいそうでしょうが」

「お前らほんとに仲いいねー」
宮崎が俺と水野のいい合いを眺めながら言う。はたから見ているとそう見えるのだろうか?こいつには見えて無いんだ。俺と水野の瞳の中にあるお互いへの、どうしようもない苛立ちを
「そんなこと無いよ〜、宮崎君。私こいつのことなんか大嫌いなんだからね」
水野は手をひらひらさせながら、笑顔で答える
俺はそれを感情の篭らない目で眺めている
「じゃ、こいつと居ると私まで根暗になるからもう行くね。宮崎君もあんまり仲良くしてると同類に思われるよ!」


「・・・・なぁ。水野さんさ」
俺は水野の去った方向を見ながら宮崎の声を聞く。宮崎は何が面白いのかニヤニヤ笑っている。
「あれ、どう見てもお前に気があるって」
「ありえないよ」
即答する。
「ばっかだなぁ、ああいうの『ツンデレ』って言うんだぜ。気になる相手には恥ずかしいからきつく当たるんだよ」
『ツンデレ』最近良く聞く言葉だ。意味は知らなかった。
「・・・・・普通に嫌われてるだけだよ」
「お前ら幼馴染なんだろ?しかもツンデレ。あの子、何かって言うとお前に突っかかってくるし。普通嫌いな相手に関わろうとしないだろ」
ばか。ばかすぎる。
「羨ましいなー。俺もツンデレの幼馴染ほしいなー」
俺は何も答えず教室の中央でクラスメートに囲まれた八重樫はるかを眺めた。
彼女は屈託無く笑っていた。その笑いが自分に向けられたらいいのにと思った。
489441:2006/04/25(火) 05:25:22
朝早くから失礼します。書き出してみて明らかに場違いなモノに仕上がって行ったので
もうこのまま投下せずに消えようかと思いましたが折角なので続き投下してみます。
ツンデレは出るものの果たしてこの物語で萌えられるのか!?と自分でも感じます
もし、気に入らないなどのご意見ありましたら言ってくださいまし
直ちに出て行きまする・・・(*_ _)人

>>463
ご指摘ありがとうございます。未熟すぎる自分を痛感です

あぁぁ・・・・住人のみんなごめんよごめんよ・・・・・orz
490Mr.名無しさん:2006/04/25(火) 06:12:29
まずは謙遜と自虐の違いをよく考えるんだ。自分の書いたものを低く評価するのはいいが、その上で「読んで下さい」と言うのが謙遜。それがなければ自虐だ。
VIPのスレでなくとも、自虐は見てて心地よいものではない。
完結してみなきゃ分かんないが、面白そうな気がする。地の文が多いのもVIPに慣れた俺には新鮮だ。完結まで是非頑張って欲しい。
491Mr.名無しさん:2006/04/25(火) 14:19:56

一回一回で萌えられないが展開が気になる希ガス
がんば
492Mr.名無しさん:2006/04/25(火) 23:50:35
悪くない。続きwktk
493Mr.名無しさん:2006/04/27(木) 05:39:03
ホッシュ
494441:2006/04/27(木) 06:30:21
モマイラありがとうございます。・゚・(ノд`)・゚・。
あんまり頻繁には投下できませんが気長に待っててください
その間、他の職人さんに期待です

すらすら書ける人スゲーわ・・・・
495Mr.名無しさん:2006/04/28(金) 17:00:58
保守
496Mr.名無しさん:2006/04/29(土) 08:19:55
みんみんみらくるみくるんるん
497Mr.名無しさん:2006/04/29(土) 15:09:45
>>441
水野と三笠の過去が気になる訳で…

続きが気になる様な文章書ければ及第点だと思うぞ。兎に角最後まで書いてくれ。
498441:2006/04/30(日) 07:22:22
『書きかけの絵があるんだ。その絵にはね、女の子が描かれてるんだ』
―――顔いっぱいに満面の笑顔を浮かべて
『手を広げて走ってくるんだ。こっちを向いて』
―――とっておきの大切なものを見つけた
『特別な友達かもしれないし、大事な家族かもしれない』
―――白いワンピースがはためいて、髪の毛もきらめいて
『背景は草原。たぶん、暖かい風が吹いてる』
―――本当に楽しそうな、うれしそうな顔
『あれ・・・・この子、誰だ?』
―――うれしそうな顔、満ち足りた顔
『笑ってる。けど誰か分からない。よく知ってるはずなのに』
―――うれしそうな顔。幸せそうな顔。だけど・・・・・
『君。誰?』


『幸福の扉』
act2 『少女A』

彼女との出逢いは遙か七年前にもさかのぼる。同時につき合いの長さもそれに準ずるのは勿論のこと。
七年前、俺がまだ自分のことを僕と言っていた頃。確か、十歳の誕生日の三日後の事だったと思う。
事の起こりは共働きであった両親がそろって海外に転勤となった事。それまで住んでいた家を引き払い、遠くアメリカに移住すると言う計画が持ち上がった。
もちろん最初は俺も連れて行くつもりだった。
当時小学生だった俺は、まだ見ぬ異国の地よりも慣れ親しんだ土地や学校の友達の方が大事だったようで強硬に反対した。
499441:2006/04/30(日) 07:23:13
両親もさんざん説得はしたのだろうが、その頃の俺はどうやら相当頑固で、ごねにごねた結果この街に一人残る事を許された。俺は勝ったのだと思った。

そういえば俺たちの住むこの街は海と山に囲まれた自然の多い気候の穏やかな美しい街だ。
海岸線には未だ手つかずのままの美しい浜辺が広がっている。海よりの平地部には近代的な繁華街が広がっており、俺たちのような高校生も大いに満足できる。
観光地化の話なども聞かないでもないのだが、この街はまだまだ静かなのだ。俺はその頃からここが好きだったのだろう。勿論今も好きな街である。

十歳になったばかりの俺が母親に連れられて訪れたのはこの街を一望できる高台に建てられた、古びた洋館であった。
その洋館は奇妙な形をしていた。正面から見れば変哲もない館なのだが建物の後ろ半分が山の斜面に張り出していた。
言ってみれば、館はそれ自体が大きなテラスになっていて、山と海に囲まれたこの街を上から眺める形になっているのだ。
館はこの街の美しい景観を眺めるがためだけに作られていた。この館の真実は外でなく、純粋にそこに住む者だけにしか分からない。
まだ幼いかった俺はその館に何故か、大きな危うさを感じる。
500441:2006/04/30(日) 07:24:07
その後、俺と母さんは申し訳程度の素っ気ない玄関を通り居間に案内され、この館の主と会うことになる。「ここで少し待っていてくださいね」と案内してくれた女性が言った。優しげな人だと思った。
しばらくして現れた館の主は痩せた初老の男だった。眼光が鋭い。俺は無意識に母の手をしっかりと握りしめる。
「お父様」
母さんがそう言った。お久しぶりです、この子があなたの孫です、と。
501441:2006/04/30(日) 07:25:03
その館は、有名な画家であった祖父が道楽で購入したという、昭和初期のこれもまた有名な海外建築家がその生涯の最後に建てたという一風変わった屋敷だ。
二人きりというわけではない。大きい館であったし、祖父は絵を書く事以外全く何もできない人であったから身の回りの世話をしてくれる使用人のような人が必要だった。
その人は水野蓉子(みずの・ようこ)さんと言った。最初に訪れたときに案内してくれた女性だ。
三十過ぎの、右目に泣きぼくろのある優しく落ち着いた雰囲気の人だった。
彼女の仕事は、祖父の食事の世話と屋敷の維持などの家事全般。彼女は仕事の性質上、毎日休みなく通って来ていた。まだまだ親が恋しい年頃の俺は、アトリエに籠もりがちで、なかなか構ってくれない祖父よりも彼女によく懐いていたものだ。
彼女には娘が一人居た。俺と同じ年に生まれた女の子。
祖父に預けられた次の日、蓉子さんに呼ばれた俺はその子に引き合わされる事になる。
その子は最初、恥ずかしがって蓉子さんの後ろに隠れて出てこようとはしなかった。
やっとこっちを向いてくれたのは、蓉子さんが用意してくれたケーキを二人で食べる段になってからだった。思えば、その時からあいつは食い意地が張っていた。
蓉子さんは俺が祖父の所に来たことを幸いと、よく杏子をつれてくるようになった。一人家に残しておくより俺と遊ばせておく方がいいと思ったのだろう。
俺たち二人は学校が同じ事もあってすぐに仲が良くなった。それまでは知らなかったが水野は隣のクラスに在籍していた。俺は名前すら聞いたことは無かったのだが、小学生の接点の無い男女の認識などそんなものだろう。
彼女には父親が居なかった。聞くと顔すらも覚えていないらしい。のちに蓉子さんから彼女が生まれる前に亡くなったのだと聞かされた。
そんな境遇で育ったにも関わらず、水野は基本的に元気で明るい子供だった。蓉子さんも本当の母親のように温かかった。
自ら招いた事とはいえ、幼くして両親から離れて暮らす羽目になった俺は彼女達親子に大いに助けられた。
502441:2006/04/30(日) 07:26:05
二ヶ月もすると、初めて会ったときは威圧感しか感じなかった祖父の事もいろいろ分かってくる。
画家・三笠宗春(みかさ・むねはる)はその世界では知らぬ者は居ないほどの有名人である。その当時の日本の画壇を代表する人物であっただろう。
彼はその才能をもって最高峰の作品を創造し続けていたがその実態は只の孤独な老人であった。
それまでの俺は祖父については何も聞かされていなかった。両親があえて語らなかったのだろう。これものちに聞いたことだが、父は俺の生まれるずっと前に祖父と大喧嘩の末、勘当同然に放り出されたのだという。
そこにどんな事情があったのかは今になっては分からないが、いつも頼りないと感じるくらい温厚な父を思うと今でも信じられない。
母に言わせると、あの人も大人になったのよと笑っていた。
父と母が結婚したのを期に一応の和解はしたらしいのだが、それでもお互い素直になれなかったのか積極的に関わろうとはしなかったという。祖父もその事についていくらか後悔していたようだった。
俺が来るまで蓉子さんが手伝いに来てくれる以外はこの広い屋敷に一人っきりで暮らしていたという。俺が祖父と会ったのは勿論ここに来てからが初めてである。
503441:2006/04/30(日) 07:28:14
ある日、テラス側にあるアトリエの一室で絵を描いている祖父を見つける。
その日は天気が良かった事もあり、水野と二人館の探検をしていたところだった。
館の南側、テラス側は、大きな窓と多くの天窓で構成されており、いつもたくさんの陽光が差し込んでいた。
天気の良い日などは天井にはまった無数のステンドグラスにより、長い廊下に等間隔の光の絵が映し出される。時間と共に採光の角度が変わり、館の廊下は一つの芸術品のように見えた。
屋敷には使っていない部屋も多くあり、俺達にとって格好の遊び場所になった。俺と水野はかくれんぼや鬼ごっこなどをして大いに遊んだ。
仕事中の祖父を見つけたのもそんな時だった。

祖父がその時描いていたのは一種の抽象画のような物のかもしれない。黄色とオレンジと緑と少量の赤。それらの絵の具が楕円形に混じり合ってなんだか丸い物が描かれていた。
祖父はそれを「みかんの絵だ」と言った。
―――みかんは好きか?
水野がお菓子の方が好きだと答えた。
祖父は笑っていた。
―――杏子ちゃんはいい子だ
水野も微笑んだ。ありがとうございますおじいさま。
祖父が相好を崩す。どうも水野と祖父は仲がいいらしい。何となく悔しくなった俺は
「じいちゃん」
と呼んでみた。
祖父は一瞬本当に驚いたようだったが、意味に気がつくと泣き笑いのような表情を浮かべた。今になって分かる。あの人は今まで本当に寂しかったのだろう。その後、祖父はよく笑うようになった。

そんな環境で水野と俺は育った。そんな生活が五年もの間、続くことになる。
504441:2006/04/30(日) 07:31:02
とりあえず第二話の前編。
過去を掘り下げて行くと裏設定が際限なく増えて行くこの不思議
505Mr.名無しさん:2006/04/30(日) 11:01:48
設定まとめて、取捨選択してから投下してみたら?
考えながら書くと鼠算式に回想場面増えるから。
506Mr.名無しさん:2006/04/30(日) 11:31:47
>>504
うまい、うまいぞ。
なんか文章力が急に上がった希ガス。
ますます期待。
裏設定とかは、あんまり見苦しくならない程度ならかまわんだろ。
ご都合主義もひど過ぎなければさ。
507Mr.名無しさん:2006/04/30(日) 20:59:28
>>503
http://upload.fam.cx/cgi-bin/img-box/7ns60430205359.jpg

おもむろに書いてみたがこんな感じかな。
どこに画像アップすればいいか分からん;
508Mr.名無しさん:2006/04/30(日) 21:12:42
いきなり神絵師降臨。GJ、超GJ!!!!
だがここはsage進行らしいぞ。
509Mr.名無しさん:2006/04/30(日) 21:22:05
女のコの絵はもちろん、じいさんもかなり良いな。
激しくGJ。
510Mr.名無しさん:2006/04/30(日) 21:30:37
>>507
(゚д゚)ウマー
あんたこのスレの挿絵師にならないか?
511441:2006/05/01(月) 00:43:46
仕事終わって反応ガクブルしながら見に来たら・・・・
>>507
ちょwwwおまwwww
ヤバイデスヤバイデスみなぎってキター!
(;゚∀゚)ノGJ
512441:2006/05/01(月) 03:02:26
詰まった・・・・orz

アンケートいいでしょうか。
みんな『杏子』ってどんなふり仮名振ってる?
自分の中では「あんず」案と「きょうこ」案でまだ揺れてたりするんだが・・・

>>507さんを筆頭にみんなの声が励みになってます
513Mr.名無しさん:2006/05/01(月) 04:46:28
あんずは甘ったるい感じがする。きょうこに1票
514Mr.名無しさん:2006/05/01(月) 08:59:04
きょうこで読んでたが、間を取って「あんこ」でどうよ
515Mr.名無しさん:2006/05/01(月) 09:01:39
本来は「きょうこ」
で、「あんこ」って呼ぶと怒るとか。ツンデレだし。
516Mr.名無しさん:2006/05/01(月) 09:06:05
リリスって今は企業なのか、最初は同人だったと思ったけど
517441:2006/05/02(火) 08:25:43


「あ、変態だ」
「おまわりさーん、ここに女の子と見ると誰でもつけ回すストーカーの不振人物が居ますよー」
「まーた、こそこそ誰かの後つけてたの?それともデバガメ?今度は誰の秘密握ったのよ」
「・・・・ちょっと何とか言いなさいよ」
「なに見てたの?」
「あ・・・・・おじいさまの・・・・」
いつもの帰り道、普段なら見過ごしていた通学路の途中に街のポスター。立ち止まってしまったのはその絵と文字に見覚えがあったから。
故・三笠宗春展
そして、祖父がみかんの絵だと言った作品。

「もう二年・・・・」
水野の声が沈む。
「お前のせいじゃないよ」
「うん・・・・」
それっきり水野は黙ってしまう。
タイミングの悪いときに会ったものだ。街の近代美術館で祖父の個展が開かれるらしい。
祖父の事はあまり触れたくない。それは水野も同じはずだ。
俺達は二年前に同じように傷を負った。そしてそれは未だ癒えていない。それこそが俺と水野の間にある隔たり。お互い素直になれない理由。
518441:2006/05/02(火) 08:27:57
「・・・・ねぇ」
「何」
しばらく並んでポスターを見ていた水野がつぶやいた。
「もし、私のせいじゃないなら、誰のせいにすればいいの?おじいさまのせい?お母さんのせい?」
「・・・・・」
「あんたの・・・せい?」
のどの奥に何かが詰まったように、何も言えなくなる。水野の声が急速に透明な硬度を増していくのを感じた。
「私たち仲良かったよね。ほんとの家族みたいだったよね?あの五年間は本当に楽しかったんだよ?私んちはお父さんも居ないし、お母さんもおじいさまに雇ってもらえるまでは仕事転々としてて・・・
お母さん、前はいつも疲れた顔しててね、私が心配そうにすると無理して笑うの。
でも、あそこでは幸せそうだった・・・・ここに来て良かったって言ってた。
・・・・だから、やっぱり、私のせいだよ。おじいさまが死んじゃったのも、お母さんの目が覚めないのも」
「そんなこと・・・・」
絞り出すようにやっとそれだけを言う。
519441:2006/05/02(火) 08:28:42
「あんたなんか、嫌い。自分だけ被害者面して抱え込んでるのも嫌いだし、その割に軽薄なとこも嫌い」
・・・・・
「あんたさ、はるちゃんの事好きなんでしょ。何でアプローチしないの?」
・・・・・・・
「もしかして、私に遠慮してる?私の事好きだって言ったもんね」
やめろよ・・・・
「なら、大丈夫。私あんたのことなんか本気で嫌いだから」

やめろって・・・・・っ!








「・・・・バカ・・・・何っ・・であんたが泣・・・て・・・の・・・よ・・・・・・」











その日、二年ぶりに俺達は手をつないで帰った。水野はその間、ずっと泣きじゃくりながら俺なんか嫌いだ、大嫌いだというようなことをつぶやいていた。
・・・・でも、彼女の叔母さんの家にたどり着くまで、決して俺の手を放してくれようとはしなかった。
520Mr.名無しさん:2006/05/02(火) 10:43:18
切ない予感
521Mr.名無しさん:2006/05/02(火) 12:53:34
感動巨編の悪寒

っていうかすでに泣いてる件。・゚・(ノД`)・゚・。
522Mr.名無しさん:2006/05/02(火) 13:41:25
愛媛の伊予柑いい予感
523Mr.名無しさん:2006/05/02(火) 16:31:12
>>519
http://read.kir.jp/file/read45245.jpg
とりあえず。イメージと違ったらすまん
>>508
申し訳ない;以後気をつけます
524Mr.名無しさん:2006/05/02(火) 17:46:07
>>523
またまた(゚д゚)ウマー
新しい楽しみ方だな。
妄想小説を書くスレは数あれど、挿絵師がいるスレはそうあるまい
525Mr.名無しさん:2006/05/02(火) 18:03:16
文も絵も(゚д゚)ウマー

続きwktk
526Mr.名無しさん:2006/05/02(火) 18:30:33
>>523
GJ。

441も乙ンデレ
527Mr.名無しさん:2006/05/02(火) 21:52:57
あげ
528Mr.名無しさん:2006/05/03(水) 14:49:07

529Mr.名無しさん:2006/05/03(水) 17:31:25
せっかく連休に入ったのにさびしいので、短いの投下してもよいでしょうか。
長編の合間だけど・・・
530Mr.名無しさん:2006/05/03(水) 17:36:11
どぞどぞ。

ちなみにこのスレでは需要聞くと荒れる元になる。
作品は書きたい香具師が書いて投下して、
読みたい香具師が読む、というスタイルだから。
531Mr.名無しさん:2006/05/03(水) 17:41:49
>>530
あーそっか、無用な質問でしたね。スマソ。
実はまだ書き上がってないからアレですが。
こんなに早く反応されるとは思わなんだw
532Mr.名無しさん:2006/05/03(水) 17:57:00
ココって常に誰か居るよな
533Mr.名無しさん:2006/05/03(水) 18:11:32
けっこうなことさ
おかげさまで一周年
534Mr.名無しさん:2006/05/03(水) 18:19:41
そういやあ・・去年の3月なのか。初代スレが立ったのは。
早いもんだな。
535529:2006/05/03(水) 18:27:24
2月13日(金)

「おい、お前チョコもらえたか?」
 これが今朝、教室に着いた時。
「お菓子かなんかもらったりした?」
 これが昼。
「何でもいいから、なんか物もらえた?」
 そして放課後の現在、信也は俺に話しかけてきた。
「いい加減にしてくれ、バレンタインなんて俺らにゃ関係ないだろ?」
 思わず言い返してしまう。信也とは中学の頃からの付き合いだし、今日は多分こうなるだろうなぁとは思ってたけど。
「ノンノン、バレンタイン・イブだ。本番は明日だぜ」
 ・・・これも言うと思った。妙に揚げ足を取るのが得意なのである。
「はいはい、それで明日は土曜だから今日なんだろ?」
「その通り!けどさー俺まだ何ももらえないどころか、今日は女子とろくに会話もしてねーよ」
「正直どうでもいい」
 信也は本当に残念そうな顔をしているが、どうにも共感できない。
「武史はいいよな、予約があってさ」
「なんのこと?」
「茜のこと。毎年チョコもらってるんだろ?」
「あぁ、あいつか・・・」
 茜とはいわゆる幼なじみで、幼稚園の頃からの腐れ縁だ。今まで毎年チョコをくれている。小学校ぐらいの時はおばさんと一緒に作ったりしてたみたいだけど、確か去年は105円と書かれたシールが貼ったままのチョコだった。
「正直俺はさ、武史の境遇が結構うらやましいんだよ。茜って黙ってれば相当可愛いぞ?」
「っはは。黙ってれば、ね」
「今日なんか酷いぜ。あいつ俺の隣の席だろ? シャーペン落っことしたから拾って渡そうとしたら、まるで"ここに置け"と言わんばかりに机の上トントン叩いてるんだよ」
「へぇ」
「ありがとうの一言もないんだぞ?」
「まぁ、そんな日もあるさ」
「・・・生理なの?」
「そんなこと俺が知るか」
 多分、朝から妙にハイテンションだったり時間と共に盛り下がったりする信也がなんとなくイヤだったんだろう。にしてもちょっと酷すぎる気はする。もしかして昨日のことで機嫌が悪くなったのだろうか。
536529:2006/05/03(水) 18:28:20
 昨日の放課後――
 茜は俺に言ってきた。
「今年のバレンタインは何が欲しい?」
「んー、100円チョコならいらないよ」
「死ね」
 吐き捨てるように言って、茜は去った。
 ――正直に本音が出てしまったのがいけなかったというのか。しかしラッピングしろとまでは言わないけど、値札ぐらい剥がしてほしいよな。
「で、その茜ちゃんから今年ももらえるんだろ?」
「いや、今年は無い・・・と思う」
「なんで?」
「ちょっと、ね」
「ふーん、夫婦喧嘩か。珍しいな」
「そんなんじゃないって」
 カサッ
 と、机の上に紙くずが転がってきた。転がってきた?
「あれ? 奥さん登場?」
「お、おい信也、変なこと言うなよ」
 いつの間にかすぐ横に茜が立っていた。顔を見上げてみると、明らかに眉間にシワが寄っている。これはただでは済みそうに無い気が・・・
「・・・」
 が、茜は黙って立ち去った。
『あら?』
 計らずも俺と信也の声が重なった。机の上にはクシャクシャに丸められたルーズリーフがポツンと転がっている。
537529:2006/05/03(水) 18:29:13
「なにこれ。陰険ないやがらせか?」
「目の前で堂々と投げてったのを陰険とは言わないだろ。開けてみれば? なんか書いてるかも」
「よくわからんけど、それには勇気がいるな・・・」
 さっきの眉をひそめた表情が浮かんでくる。大量の髪の毛とか入ってたらどうしよう。
「では僕がその勇気を肩代わりしてあげよう」
「あっ」
 信也は止める間もなく紙くずを手にとって開いた。
「・・・果たし状?」
「は?」
 さすがに予想外のセリフだ。チロルチョコでも包まれてるのかと思ったんだけど。その紙を奪い取って中を見てみると、
 "明日14時 中央公園"
と大きく書かれていた。脇には小さく
 "来なきゃ家まで行く"
とまで。
「それは旦那からは何に見えるんでい?」
「ああ、これは紛れもなく果たし状だな」
「・・・ご愁傷様。じゃ、俺部活行くわ。じゃあな」
「まてまて、何か対策とか考えてくれないのか? わけもわからず殺されるのはご免だ」
「最近は葬式の費用も出してくれる生命保険があるらしいよ」
「おいおい」
「また来週なー」
 信也も行ってしまった。さすがにこれが本当に果たし状だなんて思っちゃいないだろうけど、何か誤解されている気がする。こんなカタチでデートの誘いは・・・さすがに無いだろう?
538529:2006/05/03(水) 18:31:54
2月14日(土)

 現在の時刻は午後2時30分。
 約束(?)の時間より10分前に公園に着いた俺は、かれこれ40分もベンチに座っていることになる。天気も良く、小学生が走り回ってたり、じいさんが犬と散歩したりしている。なんとものどかな風景だ。それにしても茜のやつ、遅い。
「時間にルーズなのはいかんよなぁ」
「お待たせっ」
「うぇぃ!? お、おう」
 独り言に答えるように声がしたのでとまどってしまう。知らないうちに、すぐ後ろに茜が立っていた。
 普段学校に着てくるものとは違った、女の子っぽい白いコートを羽織っている。ちょっと変な感じだけど、信也の言っていたことにもうなずけるかもしれない。黙ってれば可愛いんだ。
「遅れちゃって悪いわね。ちゃんと来たんだ」
「あぁ、天気が良いことに感謝しろよ。雪が降ってたら今頃帰ってる」
「昨日の手紙、読んだんでしょ? いなきゃ家まで行くわよ」
「・・・手紙、ねぇ」
 あれが手紙と呼べる代物だろうか。
「なによ、なんか文句あんの」
「いえ、別に」
 ベンチの前のほうまで来たので横にずれると、茜は少し離れたところに腰を下ろした。
「それで、何の用なんだ?」
「・・・今日が何の日かわかる?」
 まさか、あの手紙(?)は本当にデートの誘いだったってのか? しかし・・・一昨日の帰りに死ねと言われたことを考えると、その予想はにわかには信じがたい。
「そういえば明後日は将軍様の誕生日だ」
「は? 明後日のことなんて誰も聞いてないんだけど。っていうか将軍様って誰?」
「そりゃ北の・・・」
「そんなことどうでもいいけど、今日はバレンタインデーでしょ」
「将軍様をないがしろにすると拉致されt・・・」
「だからほら、これ」
 混乱して変なことを言い続ける俺を完全に無視して、茜は手に持っていた包みを俺に押し付けてきた。
539529:2006/05/03(水) 18:32:33
「・・・」
「・・・」
「・・・爆弾?」
「いい加減、日本に帰ってきなさい。その・・・チョコレート、だから。あげる」
 思わず茜のほうを見ると、目が合った。茜が慌てたようにそっぽを向いてしまう。
「ちょ、おま、おととい俺に死ねって言ったじゃん」
「・・・」
「俺はてっきりチョコじゃなく引導を渡されるのかと」
「うるさいだまれ」
「すいませんでした」
 包みに目を戻すと、銀色のそれっぽい袋の口がリボンで縛られている。袋の形は多少ゆがんでる気もするけど、それを見て妙に嬉しくなる。
「これ、茜が自分でやってくれたのか。中身、見ていいの?」
「えっ」
 茜がこちらを振り向いた。思わずこちらも視線を上げるとまた目が合って、今度は下を向いてしまった。
「えっと、ここであけちゃうの? 帰ってからのお楽しみーってもうあけてるしー!」
 さっき無視された仕返しに、勝手にリボンを解いてみた。デパートとかで売ってるちょっと高いチョコが入ってるのかと思ってたら・・・星形やハート形の小さいやつがいくつか入っていた。これはもしかして・・・
「手作り?」
「あ・・・うん」
 何かが胸にこみあげてくる。ガキの頃はなんとも思わなかった茜の手作りチョコが、こんなに嬉しいとは。自分でもちょっと予想外だ。
「なににやけてんの? 気持ち悪いよ?」
「うるせーな。ははは」
 なんだか気恥ずかしくて茜の顔が見れない。どんな表情をしてるのかわからないけど、勢いのままにチョコを一個つまんで口の中に放り込む。そしてこの後、俺の口の中には甘みが一杯に拡がって
「ナニコレ、ニガッ」
「えっ」
 苦い。苦いという単語以外、何も浮かばない。気恥ずかしいとかいう感情もどこへやら、俺の首は勝手に壊れた人形のようにぎこちなく茜のほうを向いた。
「ちょ、なんで泣きそうになってんのよ。そんなわけないでしょ」
 茜もチョコをひとつ取り出して口に入れた。
540529:2006/05/03(水) 18:33:43
「ナニコレ、ニガッ」
 全く同じセリフを言った茜も、瞳が潤んでいる。チョコの作り方なんてよく知らないけど、こんな味にするのは逆にむずかしいんじゃないだろうか。
「茜。これは、ひどい」
「むー・・・こんなはずじゃなかったんだけど」
「味見ぐらいしなかったのかよ」
「だって、昔はおいしく作れたんだもん。味見なんて必要ないよ」
「たしかに、甘くておいしいチョコレートは俺の思い出の中にもある」
「だいぶ昔のことなんだから、多少間違ってもしょうがないでしょ?」
「多少かー。はは」
 苦笑いしながら手の甲で目をこする。隣を見ると、茜も指で涙を拭いていた。と、その手に目が釘付けになる。さっきは手袋をしていたから気付かなかったけど、茜の手は絆創膏だらけだ。
「おい、その手。どうしたんだよ」
「え? あぁ、これ、なんでもない」
 そう言って慌てて手袋をはめなおした。だが手遅れだ、どう考えてもチョコのために色々やらかしたとしか思えないだろう。
「間違ったとかなんとか言って、お前おばさんと一緒に作ったんじゃないのか?」
「一人で作ったに決まってるでしょ」
「・・・なんで?」
「なんでって・・・その、恥ずかしくて」
 柄にも無く、声がだんだん小さくなっていく。
「何が?」
「お母さん、誰にあげるのーとかなんとかうるさいのよ。だから台所から追い出したの」
「えー、素直に俺って言えば別にかまわないだろ? 毎年くれてるんだしさ」
「むー・・・」
「なんだよ」
「・・・ばか」
 茜は消え入りそうな小さな声でつぶやいた。
 なんで俺がそんなことを言われなきゃならないんだ。それは俺のセリフだ、無茶やってるお前のほうが馬鹿じゃないか。そんなことを考えながら、チョコをもうひとつ、口に入れた。
541529:2006/05/03(水) 18:34:22
「あ、ちょっと武史、無理して食べなくていいって」
「ナニコレ、ニガッ」
 やっぱり苦い。全部苦いに決まってる。そしてやはり、涙が出る。
 飲み込んだあと、もうひとつ食べる。
「ナニコレ、ニガッ」
「・・・」
 呆気にとられている茜を尻目に、もうひとつ
「ナニコm、んんっ!」
 茜の手が俺の口と鼻をまとめて塞いだ。苦しい。これは苦しい! 茜の腕をタップするが、なかなか放してくれない。ちょ・・・
「死ね。チョコは失敗だったから、お望み通り引導をプレゼントするわ」
「んー! んー!」
「安心して、これは失敗しない自信があるから」
「んー!!」
「大丈夫、お線香はあげてあげる」
「・・・・・・」
「あれ?」
 声を出すのをやめて白目を向いてみたら、そこでやっと茜は手を離してくれた。久しぶりに呼吸できるようになる。
「ぶはー! はぁ、はぁ・・・俺は・・・」
「あら、生きてたの」
「俺はさ・・・」
542529:2006/05/03(水) 18:37:16
「何?」
 茜はまだジト目で俺をにらんでいる。やっと息が整ってきた。
「俺は、茜が作ってくれたってのが嬉しかったんだよ」
「・・・え?」
「けど、美味くはないな」
「・・・は? そういうことは言わなくていいよ?」
 しまった。せっかく良い雰囲気になったかと思ったらこれだ。正直すぎるのも考え物だ。
「プッ・・・あははは」
「あ?」
 茜が急に笑い出した。何か面白いことでもあったか?
「武史のそういうとこ、昔からホント変わんないわ」
「なんだよ」
「ふふっ、なんでもない。あーあ、今年は完全に失敗だな」
 茜は空を見上げながら言った。それにつられて俺も見上げる。雲はほとんどなく、青空がひろがっていて気持ちいい。
「なぁ・・・茜」
「なに?」
「来年もくれたら嬉しいんだけどな」
「他にあげる人がいなかったらね」
「思い出のチョコレート、また食べてみたいもんだ」
 隣を見ると、目が合った。今度は目をそらさなかった。お互い、自然に笑顔になる。
「今度は失敗しないようにするよ。引導もね」
「それは勘弁」
「あははっ。それじゃあたし、そろそろ帰るね」
「そうか。気をつけて帰れよ」
「子供じゃあるまいし、大丈夫だよ。じゃ、またね」
「ああ、またな」
 茜は立ち上がると公園の入り口に向かって歩いていった。
 袋の中に残っていた最後のチョコ・・・ハート形のチョコを食べてみた。相変わらず、とても苦い。けど、なんというか、おいしい。空を見上げれば、これも相変わらずの青空。雪も嫌いじゃないけど、やっぱり空は晴れているほうが好きだ。
「武史ー!」
 声がしたので振り向くと、入り口のほうで茜がこちらに手を振っていた。
「ホワイトデーのお返し、忘れないでよー!」
 手を挙げてそれに応える。めちゃくちゃ苦いホワイトチョコの作り方、調べなきゃな。
543529:2006/05/03(水) 18:40:10
以上です。

実験作っていうか処女作っていうか、そもそも時期ハズレですいません。
悪いところを指摘してもらえたら嬉しいです('∀`;)
544Mr.名無しさん:2006/05/03(水) 18:40:53
チョコは苦くともふいんきryは甘酸っぱいぞ・・・
鬱だ

だがGJ('A`)b
545Mr.名無しさん:2006/05/03(水) 19:45:40
おい、俺鬱で死にそうだぞ
546Mr.名無しさん:2006/05/03(水) 22:14:55
ステキナオハナシウツダシノウ。
547Mr.名無しさん:2006/05/04(木) 01:24:15
良いんじゃねいですかい?
548Mr.名無しさん:2006/05/04(木) 09:16:32
綺麗にまとまってていいんじゃないのー
549529:2006/05/04(木) 11:45:49
みんなありがdそしてゴメン、鬱死させるつもりはなかったんだがw
一日経ってから見直すと色々問題点が見えてきますな。

ちょっと山に篭ってくる
550Mr.名無しさん:2006/05/04(木) 14:05:58
>>549
つ【鎌双節棍】
551Mr.名無しさん:2006/05/05(金) 03:29:42
ほすすう
552Mr.名無しさん:2006/05/05(金) 13:33:49
ガンガレ
553幸福の扉act3:2006/05/06(土) 08:59:04
また、雨が降り出した。
梅雨にはまだまだ早いはずなのに、もう三日も降ったり止んだりしている。

雨に霞んだ街は昔の古いモノクロ映画のように色あせていて、傘を差した道行く人々まで遠く見たこともない過去の人のように感じた。
回る傘はなぜか黒か深い藍色、地味な単色ばかりで、たまには赤や黄色が通ってもいいものだとは思うが、これはこれでいいのだと妙に納得した。
泣きじゃくる水野を送って行き、叔母さんに睨まれてから5日目
この地方の、今年の連休は雨で見事に潰されることになった。最後の日曜日、俺はしとしとと降る雨音を聞きながら部屋の窓から風景を眺めている。何もする気は起きない。

『幸福の扉』
act3 『Sunday&Rain』


―――雨は嫌いじゃないよ。雨の日は空気が潤うから、いつの間にか自分の中に降り積もっている嫌なものや、余計なものがきれいさっぱり消えるから
雨の日に色々リセットするんだよ・・・・か。
あの時に聞いた言葉。その時は確か笑ったんだっけな。

554幸福の扉act3:2006/05/06(土) 09:00:18
水野の言うように自分は薄情だ。水野がどれだけ思い詰めていたのか見もせずに逃げた。
自分だけ一人納得して、楽になって。
近づいたら痛いことがわかっていたからのらりくらりとかわした。
忘れろよって言うだけで。
水野がまだ、あのことを消化できていないことは薄々知っていた。
そして、無意識に俺に頼りたがっている事も知っていた。
でも、何もしなかった。

忘れるという事は、とても大事なことだ。
楽しかったことも、悲しかったことも、何もかも一切はその瞬間がすぎた後には過去になる。
過去は記憶。
『記憶』は『今』よりも優しいのだ。『記憶』なってしまえば全てはどうにかなる。
楽しい『記憶』はいつまでも大事にしまっておけばいい。辛い『記憶』は薄める事もできるし、忘れることもできるじゃないか。
嫌なことは忘れてしまえばいい。それができなくたって今が幸せなら笑って思い出せる時が来る。

555幸福の扉act3:2006/05/06(土) 09:01:02
そんな自分が水野には苛立たしかったのだろう。忘れるのは得意だと言ったくせに。
だから、水野に当たられるのもしょうがないと思っていた。

しかし、爆発は唐突に
逃げ続けて来た自分に対する最後通告。限界まで引き絞られた弓から矢が放たれるが如く。
水野はあれから電話に出ない。メールも帰ってこない。家に行っても会わせてもらえなかった。
拒絶。
嫌い、大嫌い。もう二度と顔も見たくない。それから、握られた手
あの時の彼女の体温。色が変わるほど握りしめられた。
渇望。
相反する二つの行動。あれはどういう意味なのか。

言いようのない不安が胸を詰まらせる。周りの感覚が遠くなる。現実が鈍っていく。
俺にはもう何もわからなくなってしまった。
水野とどうつきあえばいいかわからなかった。
好きだと言った自分。貰えなかった答え。
雷。崩れたテラス。崩れた家族。眠り続ける母親。離散。
一年の後
そして再会。気まずい空気が流れた。変わってしまったと感じた。自分も、彼女も。
それでも、一緒にいたのに。

もう、水野に会えないような気がして、でも何を言えばいいのか―――

556幸福の扉act3:2006/05/06(土) 09:01:49
―――人気のない美術館。静寂は水の張りつめた泉のようでしんしんと無音がこだまする。
外は相変わらずの雨。館内は薄くぼんやりとした古くさい色の照明で満たされている。
壁には無数の絵画。両端から奥にずっと続いている。大なり小なり、赤や青や黄や緑、またはその複合。横目で見ながら最奥に至る。
ここに一枚の大きな絵。その幅は人が両の手を広げたよりも尚広く、見上げてしまうほどに巨大だ。端から人工的な光でライトアップされている。
そこに白い人影が一つ。小さなアゴをくっと上げて一生懸命見上げている。その瞳はどこか愛おしげで、少し微笑んでいる。
そして、また人影がまた一つ。最初の人影よりも少し大きな人影。ゆっくりと巨大な絵に近づく。
そのまま、絵の前に並ぶ二つの人影。少年と少女。
初めの言葉はどちらからだっただろうか、会話が、始まる。
557幸福の扉act3:2006/05/06(土) 09:02:50
「故・三笠宗春の最後の作品『幸福の扉』彼と彼の家族が描かれていると言われています」
「・・・変な絵だよ。これのどこが家族なんだか」
「そう?両手を広げた乙女にその腕の中にある球体と二人の胎児」
「でも、その乙女の顔の半分は苦しんでいて半分は微笑んでいる」
「この絵の中で彼はどれなのか?隅に描かれている太陽だって言う人もいるし、球体だって人もいる」
「胎児って線は?」
「胎児は彼の二人の孫。一人は血縁はないけれど」
「知ってるよ。片方は俺なんだから」
「初めてじゃない?直接話す事って」
「そうだったかな。俺はよく見てたけど」
「知ってる。アイツはチキンのストーカーだって怒ってたよ」
「・・・その通りだわ。チキンでついでに大バカなんだよ」
「足・・・・濡れてるよ」
「歩いてきたんだ。傘はさして来たんだけど途中で水たまり踏んだから」
「そう」
「うん」
『・・・・・』
「あのさ」
「何?」
「好きな人いる?」
『・・・・・・・』
「・・・・いない、かな?」
「そっか、だよな」
『・・・・・・・』
「あのさ」
「うん」
「水野ってどんな子?」
「・・・私に聞く?」
558幸福の扉act3:2006/05/06(土) 09:03:46
「同性から見てさ」
「・・・・寂しがり屋。よく泣く。弱い子。でも優しい子」
「・・・・・」
「でも、強いところもある。我慢しちゃう子。あと・・・本心を見せるのが苦手な子」
「・・・・・君以上に?」
「私のは天然だから」
「ははっ・・・・」

「キョウちゃんのお母さん・・・・」
「うん」
「日本最高の画家と言われた三笠宗春は2年前の地震に伴う滑落事故に巻き込まれ亡くなりました。
その日は続く長雨の上、進んでいた周囲の乱開発で木が減り地面が緩んでいました。
犠牲者は彼と彼の屋敷に住み込みで働いていたお手伝いさん。二人は土砂に埋もれたまま数十メートル流され、事故から約5時間後発見されました」
「でも、二人は・・・・」
「奇跡的に掘り出された二人でしたが、三笠氏の方は死亡、もう一方の水野蓉子さんは意識不明の重体に陥ってしまいました。そして、そのまま昏睡状態へ。
残された三笠氏の莫大な遺産は生前に書かれた遺書により彼の息子、その嫁、彼の孫、水野蓉子さん、そしてその娘さんに分与される事になりました」
「親父と母さんはもう独り立ちした身だからって相続拒否したんだ。俺の分は預かられたけど・・・」
「そのお金で、キョウちゃんのお母さんは入院してる」
「そして、まだ、目が覚めない。もう二度と覚めないかもしれない。脳も体も問題ないのに何故か意識だけ戻らないんだ」
559幸福の扉act3:2006/05/06(土) 09:04:57
「キョウちゃん。それが自分のせいだって」
「・・・・あの日、喧嘩したんだ。蓉子さんと」
「喧嘩?」
「そう。それで嵐の中、あいつ飛び出していって、それを探しに行ったじいちゃんと蓉子さんは事故に」
「そうなんだ・・・・・だから屋敷から離れたところにいたんだ・・・」
「もっとも屋敷も半分持ってかれたから、中にいても一緒だったと思うけどな」
「キョウちゃん。苦しんでたよ」
「知ってる」
「あと、君がへらへらしてるのがいらいらするって」
「それも知ってる」
「でも、あの頃の関係に戻りたいって」
「っ・・・・・・」
「あの時、返事言えなかった事、後悔してた」
「・・・そんな事までしゃべってるのかよ」
「親友だからねっ」

そう言って少女、八重樫はるかは朗らかに笑った。俺は苦笑する。これじゃ好きだなんて言えないじゃないか。
・・・・いや、彼女と話していてわかったことが一つ。
560幸福の扉act3:2006/05/06(土) 09:05:46
・・・・いや、彼女と話していてわかったことが一つ。
「八重樫さんってさ」
「な〜に?」
「昔のあんこに似てる」
「あんこ?」
「あいつの昔のあだ名。一緒に暮らしてた時は『あんこ』って呼んでたんだ。杏子の杏を訓読みで『あんこ』」
「あははは、キョウちゃん怒んなかった?」
「いっつも怒ってたよ。あいつは昔っから、からかうと可愛いんだ」
「それ、本人に言ったら喜ぶよ」
「殴られるよ。あいつ俺には強いから」
俺達は笑う。
「だから私の事、熱心に見てたんだ」
「そう、だけど今わかった。俺は八重樫さんを通して昔のあいつを探してただけだった。昔の、心が通じ合ってた頃のあいつを」
「ふーん・・・なんか、私いい面の皮だね」
「あ・・・・・・ごめん」
「まぁ、いいけどね。一つお願い聞いてくれたら」
「う、無理難題は勘弁・・・・」
彼女はにやりと笑う
「ただ、私と友達になってくれたら許したげる。」
「え・・・それだけ?」
「うん、私、三笠画伯の大ファンなんだよね」
なるほど・・・道理で・・・・・
「だから、おじいさまの話とか、あと未発表の作品見せてもらうとか!?」
思わず苦笑する。なるほど、みんなの憧れは意外と現金な性格らしい。確か館は手つかずで放置してあるはずだ。
未発表の作品や未完成品も何点か残っているだろう。
561幸福の扉act3:2006/05/06(土) 09:06:21
「うまくあいつと仲直り出来たら連れてくよ。約束する。」
彼女はおっけーっとブイサインを出す。やはり、仕草一つ一つがかわいらしい。
じゃあ、そんな三笠君にいいことを教えてあげよう、そんな事を突然言い出す。
「三笠画伯がね、昔何かのインタビューで言ってたんだけど、本当に描きたい絵、イメージは夢で見るんだって。夢で描いている自分を見るらしいよ。
三笠君も孫なんだからそんな夢なんか見ないの?見たら書いてみるといいよ。もしかしたら才能あるかも」
それは、祖父からも聞かされたことがある話。実はこの、『幸福の扉』も祖父が夢からイメージをつかみだしたものだ。
俺は、お礼を行って帰ることにする。明日からが勝負になる。対策はいくら立てても損はない。
・・・・あぁ。一つ言い忘れていたことが。
「八重樫さんさ。やっぱり幸運の女神だな」
「そう・・・かな?みんなが喜んでくれるなら、うれしいんだけどね」
「あぁ。俺の目に狂いはなかったってことだな」
「何の話?」
「あの噂、一気に広まったけど、意図的に広めたヤツが居たんじゃないかって話だよ」
「・・・・・は?」
彼女の額に立て筋が刻まれる。顔が怒りに歪んでいく。

「あ、あんたの仕業ぁーーー!?」

俺は、彼女の怒号から逃げるように美術館を後にする。やはり、八重樫は水野とすこし似ていると思った。
気がつくと、いつの間にか雨は止んでいた。水たまりに陽光が反射され、空には虹が出ていた。
雨の日の日曜には、天使に会える。もう一人の天使はまた笑ってくれるだろうか?
全ては自分次第だと思い、俺は駆けだした。

562441:2006/05/06(土) 09:15:23
『幸福の扉』の第三話をなんとかお届けです
なんか、ヒロインの出番が無いのは気のせいです。忘れてください
>>515
あんこ案頂きました(笑基本はキョウコになります
>>523
また、もったいないほどすばらしい絵をありがとうございます(感涙
イメージ的確に掴んでますJG!!
>>529
大GJっす!ニガッナニコレのやり取りが凄い好きだー




563Mr.名無しさん:2006/05/06(土) 14:30:07
イイヨイイヨー
564515:2006/05/06(土) 19:31:22
>>560>>562
m(_ _)m光栄の至りです。

扨面白くなってきた。過去との間隙を埋め、再び水野と心を通わせる事が出来るか…
『幸福の扉』次回も御楽しみに!
565Mr.名無しさん:2006/05/06(土) 22:53:38
よし、じゃあ俺も441さんに影響されてどうせ暇なGW中に
何か書いて見ますよ。
566Mr.名無しさん:2006/05/07(日) 04:04:38
>>441乙ンデレ
今北
はじめ微妙な上に長いだけかと思っていた
初めから通して読んでみたら案外面白かった。頑張って完結させてくれ
567Mr.名無しさん:2006/05/07(日) 06:08:28
待ってる
568Mr.名無しさん:2006/05/07(日) 10:39:48
>>565
もう普通に土日しかねえじゃねえかwwww
569Mr.名無しさん:2006/05/07(日) 16:52:05
570Mr.名無しさん:2006/05/07(日) 17:08:24
ほぅ…。
571Mr.名無しさん:2006/05/07(日) 18:47:37
なかなかイイッ!な
572Mr.名無しさん:2006/05/07(日) 18:54:50
八重樫と聞くと元ヤクルトの変な構えしてたオサンが思い起こされるな
573Mr.名無しさん:2006/05/07(日) 20:22:52
>>569
かわええ・・・
574Mr.名無しさん:2006/05/07(日) 20:25:21
>>569
GJ!
575Mr.名無しさん:2006/05/07(日) 22:19:23
>>564

    ∧_∧
    ( ・∀・)ワクワク
  oノ∧つ⊂)
  ( ( ・∀・)ドキドキ
  ∪( ∪ ∪
    と__)__)
576Mr.名無しさん:2006/05/07(日) 22:43:18
>>569
うめえ……。
思わずドキッとしたぞ。
577Mr.名無しさん:2006/05/08(月) 22:30:38
竹宮ゆゆこ
578Mr.名無しさん:2006/05/09(火) 00:10:35
>>577
私たちの田村くんか・・・?
579Mr.名無しさん:2006/05/09(火) 07:59:55
あげ
580Mr.名無しさん:2006/05/09(火) 16:41:28
◆lWOcOoOmOQ
581Mr.名無しさん:2006/05/10(水) 19:55:01
>>565マダー?
582Mr.名無しさん:2006/05/10(水) 20:13:53
◆lWOcOoOmOQ
583Mr.名無しさん:2006/05/11(木) 22:24:51
保守
584Mr.名無しさん:2006/05/11(木) 23:35:12
ログ置き場の中の人は最近音沙汰無いな
纏めサイトなんて飽きたら終わりでもそれでいいんだけど
585Mr.名無しさん:2006/05/12(金) 03:47:46
まぁ、スレが続けば復活してくるかもしんないしね
586Mr.名無しさん:2006/05/12(金) 16:25:12
しぃ◆lWOcOoOmOQ
587Mr.名無しさん:2006/05/12(金) 20:56:11
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
588Mr.名無しさん:2006/05/13(土) 15:58:16
ほしゅ
589Mr.名無しさん:2006/05/13(土) 20:02:52
保守
590Mr.名無しさん:2006/05/14(日) 15:31:24
ほしゅ
591Mr.名無しさん:2006/05/14(日) 22:35:33
定期保守
592Mr.名無しさん:2006/05/15(月) 04:13:04
続きはいつだ?
593Mr.名無しさん:2006/05/15(月) 04:37:07
すまぬ二、三日中には…
594幸福の扉act.3.5(何:2006/05/15(月) 09:02:51
思い出すのはあの日のこと、ひどい嵐だった。
元気なお母さんを最後に見た日。
お爺様と永遠に会えなくなった日。
そして、宗ちゃんとも離れ離れになっちゃった日。

悪いのは私だ。お母さんの気持ちなんか考えなかった、自分勝手で、子供の私。
人に当たってばかりの、弱い私。

―――そんな、このままでいいのにっ
ねぇ杏子、喜んでくれないの?
―――・・・嫌
どうして、宗春さんが居るから?
―――お爺様はお爺様っ、いまさらお父さんなんて要らない
そんなことないわ。あなたの為にもなるのよ?
―――このままでも良いじゃない、そんな事しなくたって私たちは私たちよっ
もちろんよ・・・・でもね?
―――今まで、居なくってもやってきたのに
でも・・・・
―――この生活を変えないでよっ!このままがいいのに、このままが幸せなのにっ
いつかは変わらないといけないのよ
―――嫌。このままがいい、ここがいい。お母さんが居て、お爺様が居て、宗ちゃんがいてそれだけでいい
あの人もあなたを可愛がってくれるのよ?
―――知らない・・・・あの人、嫌い。お願い、お爺様のほうが好き
でも、それでも、私はあの人が・・・・・
595幸福の扉act.3.5(何:2006/05/15(月) 09:03:25

嫌だった。私の前で女の顔をしたお母さんが許せなかった。汚らしく思った。
私の好きな場所から、私の好きな人たちから引き離す、そんなことは許せないと思った。
だから、ひっぱたいた。そして、逃げたのだ。


「もう、戻れないのかな・・・・」
宗ちゃんにも今度こそ本当に見捨てられたよね
「・・・・ねぇ・・・・お母さん・・・・私、成長しないね・・・・」
また、ひどい事しちゃってるね、ごめんね、でも、好きだよ。そして、嫌い。だから、ごめんね・・・・・

『幸福の扉』
act3.5 『学校にて』


596幸福の扉act.3.5(何:2006/05/15(月) 09:04:27
月曜日、学校で俺を出迎えたのは水野の居ない教室だった。
欠席の理由は誰も知らないようだった。クラスメートには風邪でもひいたのかな程度に思われてるようだ。クラスでの水野は活発なイメージだったから。
唯一、事情を知っている八重樫だけがすこし困った顔で笑っていた。
もしかしたら、水野が登校しているのではという甘い予想は見事に裏切られた。隣で宮崎が何事かしゃべっていたがいっこうに頭に入ってこなかった。

正直、俺はどうすればいいのだろうか・・・このままじゃいけないことはわかっているのに。
水野の心が離れてしまうのが怖い。でも、どうしたら良いか俺にはわからない。
昨日、思わず逃げ込んだ祖父の匂いが残る場所で、水野の心を少し知った。
でもそれは、ただのきっかけに過ぎなかった。
問題は何も解決してない。そして、方法も。

597幸福の扉act.3.5(何:2006/05/15(月) 09:05:05
「どうしたら、いいのかな?」
そして、結局また八重樫に頼っている。昼休みになってすぐに校舎裏に呼び出した
「俺の思ってること、あいつの溜め込んでること、お互い話さなきゃいけないってことはわかったんだけどね」
俺と八重樫は、校舎に並んで寄りかかっている。丁度、以前俺が立ち聞きしていた場所だ。
「話せば、良いんじゃ、ない?」
八重樫はご飯がまだだからと、パンとパックジュースでもぐもぐやっている。何となく弁当派だと思っていたので少し驚いた。
「どうやって?」
「その、まま、素直に」
実に簡単に言ってくれる。
「・・・・俺さ、実はまだ本当にあいつが怒ってる訳がわかんないんだよね。昨日は何となくわかったような気がしたけど」
八重樫はしばらく食べ物を咀嚼する事に集中する様で黙って聞いている。
「俺、あいつの事あんまりわかってないんだよ。だから、下手に何もいえないんだ。下手にわかった気になったらまた同じことの繰り返しなんだよ」
「・・・・三笠君さ、キョウちゃんの何?」
「・・・・・・・・幼馴染?」
598幸福の扉act.3.5(何:2006/05/15(月) 09:06:43
最後のひとかけらを飲み込んだ八重樫が少し険しい目でこちらを睨んだ。
「あの子ね、家族だって言ってたよ」
「家族・・・・な」
「その家族でもわかんないこと、私に聞かれても分かんないよ」
「でも、色々聞いてるんだろ?」
「友達と家族は別モノ」
そういってため息をひとつついた。
「でも、ホントはそんなこと関係ないと思うけどな」
「え?」
「結局、キョウちゃん自身の問題なんだと思うよ?事故の時、何があったのか知らないけどさ」
「やっぱり・・・・そうなのかな」
「正直、三笠君はあたられてるだけだよ。その話、あんまりしてないんでしょ?多分その時、ためちゃったのがいけなかったんだと思うけど」
「その話、したくなかったんだ。早く忘れたかったからな」
事故の後、色々な後始末と手続きのために帰国した両親に俺は早々に引き取られた。
そのときは、酷くごたごたしていたせいもあって水野とは話す機会も無くしばらく離れ離れになった。再会したのは高校に入ってからだ。
「でも、水野もその話触れられたくないと思ったんだ。知ってる?忘れるって事はさ、すっごく大事なんだよ。そもそも人間の脳って・・・・」
少し得意になって人間の忘却能力について一席ぶとうと振り向いた先には困った顔をして笑っている八重樫だった。
何を考えているのか、瞳がすこし揺らめいた気がした。少し見惚れてしまう。
「いいよ・・・・で、三笠君忘れられたの?」
「・・・・・・え。あ、あぁ・・・・忘れられる訳無かったな。あの時期は、結構みんなに迷惑かけたし」
「それが普通です。・・・・キョウちゃんはね、強い子だからね」
そういって目を伏せる。昨日は弱い子だといった。強くて弱い・・・・
「三笠君、お父さんとお母さん、好き?」
「・・・・なんで急に?」
「いいからさ」
質問の意図が分からない。けれど答えなくてはいけないという空気がした。
「・・・・口うるさいし、いつまでも子ども扱いだしイライラする時もあるよ」
でも、嫌いじゃない。
「言いたいこと、言える?」
「ほどほどに・・・・な。喧嘩もするし」
599幸福の扉act.3.5(何:2006/05/15(月) 09:07:33
「じゃ、さ。キョウちゃんも家族にしてあげてよ。」
「え?」
「もう一回さ、家族にしてあげて。なに言われても、真正面から聞いてあげて。また怒鳴られると思うし、責められると思うけど」
「それがいいの?」
「そう。寂しいのは、誰だって嫌だからね」
嫌いだという感情ごと受け容れてやれということだろうか・・・・

「やっぱり、わかってるんじゃないか」
「わかってても、私の仕事じゃないし。本当にわかって欲しい人は決まってるものよ。」
わかって貰うだけじゃ満足しないの。わかって貰っても満足しないの。人間はわがままだからね・・・・そう八重樫は続ける。

「君なら壊せるのかな。どうでもよくできるかな。それは理屈じゃないけど、くだらなくて簡単な事よ。」
キョウちゃんの心、壊してあげてね。八重樫は静かに結んだ。


600幸福の扉act.3.5(何:2006/05/15(月) 09:08:06

結局、八重樫は何も教えてくれなかった。そのまま昼休みが終わり午後の授業へ。
二人そろって教室に戻ると、なぜか女子には祝福され、男子からはリンチにあった。後々のため、誤解はしっかりと解いておく。
ちなみに、率先していたぶってくれた宮崎には向こう一週間昼飯を奢らせることにした。

放課後、八重樫と水野の家に行く約束をした。どうするかは、まだ決めてない。



水野杏子は、緩やかな坂道を登っていた。目指すは、あの屋敷。壊れてしまった夢の時間。
帰りたくて、帰りたくて、少女は顔を伏せたまま道を行く。
一歩進むごとに、心はあの日に戻っていくような気がしていた。
601441:2006/05/15(月) 09:13:54
とりあえず次でクライマックス。その次でエンディングになりそう
>>569
ktkr
GJすぎて言葉がないwとてもハァハァ

次は二、三日中に・・・・・できるといいなぁ・・・・orz

602Mr.名無しさん:2006/05/15(月) 11:06:06
乙ンデレ。
待ってるんでゆっくり書いてくれ

603Mr.名無しさん:2006/05/15(月) 11:17:47
むおおお・・・
良作良作。
続きワクテカ
604Mr.名無しさん:2006/05/15(月) 11:36:39
キテタコレ
なんか回を追うごとに文章が洗練されていく希ガス
焦らず続けてくれ
605Mr.名無しさん:2006/05/15(月) 12:15:16
しぃ◆lWOcOoOmOQ
606Mr.名無しさん:2006/05/16(火) 10:05:23
ほ、保守じゃないんだからね!
607Mr.名無しさん:2006/05/16(火) 15:49:06
べ、別にこんなスレ落ちたって…
…あんたがどーしてもって言うなら…私が…保守しても…




長くなりすぎた。スマソ
608Mr.名無しさん:2006/05/16(火) 15:56:48
できないなら無理にツンデレに挑戦しなくていいよ
逆に萎えるから
609Mr.名無しさん:2006/05/16(火) 16:11:14
>>608
それなんてツンデレ?
610Mr.名無しさん:2006/05/17(水) 11:07:09
611Mr.名無しさん:2006/05/17(水) 15:53:52
>>597 >>598
http://idz.skr.jp/1024kb/updata/idz2541.jpg
八重樫
>>441
続きがwktk。頑張れ
612Mr.名無しさん:2006/05/17(水) 16:04:08
>>611

GJ
613Mr.名無しさん:2006/05/17(水) 17:18:31
>>611
またまたキタコレ
GJ!!
614Mr.名無しさん:2006/05/17(水) 21:30:04
>>611
素晴らしい・・
今このスレすげー楽しみ
615Mr.名無しさん:2006/05/18(木) 12:18:35
83:しぃ◆lWOcOoOmOQ :2006/05/15(月) 01:00:28 sage
オナニーはするよ(>_<)
旦那よりバイブのほうが気持ちいいんだもん(≧▽≦)
616Mr.名無しさん:2006/05/18(木) 14:09:40
>>611
ちょ、これヤバいw
大好きだ。
617Mr.名無しさん:2006/05/18(木) 15:47:09
なんにもしてないのにこのうpろだから403で蹴られる俺……流石毒男orz
618Mr.名無しさん:2006/05/18(木) 17:02:39
比較的最近流れ着いたんだが>>507氏と>>529氏の絵が見れないんだ(´・ω・`)

誰かお優しい方か、書き主再うpしてくれまいか?
激しく見たス…
619Mr.名無しさん:2006/05/18(木) 17:09:07
安価ミススマソ
>>529>>523
620Mr.名無しさん:2006/05/18(木) 17:15:21
621Mr.名無しさん:2006/05/18(木) 17:34:17
>>620
うおっ即レスサンクス!
こんなに反応早いとは思わなかたww
今携帯からなんで帰ったらさっそくパソで見てみるよ!ありがとう!!
622Mr.名無しさん:2006/05/19(金) 11:50:14
ここは他のツンデレスレと比べて一味違いまつね
623Mr.名無しさん:2006/05/20(土) 09:37:56
ほしゅっておく
624Mr.名無しさん:2006/05/20(土) 23:47:46
保守
625Mr.名無しさん:2006/05/21(日) 14:29:00
ほしゅだ
626Mr.名無しさん:2006/05/21(日) 18:16:19
しぃ◆lWOcOoOmOQ
 頭の上には白いカチューシャ。濃紺一色にアクセントで袖口に白をあしらった半袖ワンピース
を隙無く着こなし、白いエプロンを装着している。
 目の前にはメイドが一人。
 ここは喫茶店。テーブル席が4つ、カウンター席が12。狭い店内はがらーんとしていた。何しろ
客数ゼロだから。
 暖かさを演出するオレンジがかった照明がひと気の無い店内をむなしく照らし、「お帰りなさ
いませご主人様」などと女性特有の丸っこい字で可愛く書かれたカラフルなPOPが誰にも
見られることなく飾られている。
 少し訂正。
 目の前にはメイド、のコスプレをしたアルバイト、が一人。胸には「有希」と書かれたネーム
プレート。
 その有希が壁のデジタル時計を指差す。20:00:03と表示されていた。
 「もう閉店。黒板片付けてくる」
 無愛想な硬い声をでそう話すと、こっちの返事を待つより早く、ロングスカートを翻してさっさと
表に出て行ってしまった。顔が可愛いから後のことはどうにかなるだろうと雇ったのだが大失敗
だった。彼女は客相手でもこの無愛想を貫いている。しかもこれで一番多くシフトに入ってい
る主力No1の看板娘。困った事に。
 オレはため息を一つ吐くと息苦しい蝶ネクタイを外した。
 余ったコーヒーを勝手に飲む。どうせ店が閉まったら後は捨てるだけだし。
 砂糖は抜きでミルクだけ入れる。
 コーヒーのカップの中に自分の姿が映り込む。
 清潔感ある真っ白なシャツに上品な黒ベスト。執事なりギャルソンなり何と呼んでも構わな
いがこのコスプレには慣れないものだ。オーナーに騙されてメイドカフェの雇われ店長になん
て因果なものになってもう一ヶ月近くになるが。
 有希は表に飾ってあった黒板とイーゼルを店内に入れ、看板をひっくり返してclosedにす
ると、厨房を片付け始めた。こっちコーヒーを飲み干すと、ついに諦めて売上金の清算をする
ためにレジまで行って、覚悟を決めると、でも目をつぶって勢い良くキャッシュドロアを開ける。
 恐る恐る目を開ける。
 ……。あー。……。
 いわゆるレジスターっていうの機械のうち、お金を入れてる引き出し部分のことはキャッシュ
ドロアって言うんだよ。面倒だから呼ぶときは全部纏めてレジだけどね。
 ……。
 現実逃避してみても見えてるものは変わらない。数えるのに困らない程度の紙幣が申し訳
無さそうに入っているだけだった。
 一瞬で数え終わった総売上10万4950円。売上目標に対してマイナス4万5050円。ある意味
いつもどおり。目標を上回った日なんてありゃしない。
 手近なカウンター席に腰掛けるとまたため息がこぼれた。
 せめて赤字は回避しないと。経費の節減を──。
 「牛乳が賞味期限切れ。トースト用の食パン固くなってる。トマト熟しすぎ。あの玉子のパック
もそろそろ危険。どれももうお客には出せない。捨てる」
 有希が厨房から出てきて淡々と俺に止めを刺した。頭を抱えるオレをスルーし、我関せずと
モップを取り出し客席の掃除をはじめる有希。
 低迷する売り上げ、原材料のロスによる経費圧迫、客を呼べない無愛想バイト、給料払えな
いから時給を下げるって言ったらメイドの半分近くが辞めるし、おかげで無愛想メイドに主力を
任せなきゃいけなくなるし、2chじゃボロカス叩かれて「もうイカネ」とか言われるし、俺の給料も
下げられるし、etcetc.
 殺される、終いにはオレはオーナーに殺されてしまう……。
 カウンターに突っ伏して痛くなった頭と胃のどっちの心配をしようか考えていたら、足に何か
当たった。それがモップだと気づくまで少し時間がかかった。
 「掃除の邪魔」
 頭痛&胃痛の原因の一つが涼しい顔をして言った。自分は全然そんなことに関係ないとでも
考えてる顔が無性に癪に障り、一気に頭に血が昇る。
 「あー、そうですか!邪魔ですか!はいはい今退きますよ!」
 声を荒げると、売り上げ金やらレシートの束やら引っつかんで席から立ち上がる。
 有希がかすかに驚いた表情を見せ、それに気づいてこちらも一瞬で我に返る。
 立ち尽くすオレと立ち尽くす有希、強く握られているモップの柄。
 少し続いた沈黙に耐えられず、「ごめん」とだけどうにか言うといたたまれなくなって逃げるよ
うに、奥の更衣室兼事務所スペースに引っこむ。
 真っ暗な部屋。電気を消したままで暗く、そして狭い。入ればすぐ手前に売り上げ管理用の
中古PC、他に休憩用に椅子が二つ、奥のカーテンの仕切りの向こうに着替えスペース。逃げ
たというには全然距離を稼いでないがあのまま一緒の空間には居られない。
 「……まぁ、とりあえず、やることはやっておかないと……」
 売上金と打ち込まれたレシートの現金差を確認し、PCに売り上げを入力し、お金は金庫に放
り込む。これで仕事は一応終わりだ。
 そうなるとまたさっきの声を荒げてしまったことを考えてしまう。有希はまだ戻ってはこない。
 いまさら出て行くのもなんだか気が重いが、明日も顔をあわせるし、何より彼女がいつ着替え
 に戻ってくるかもわからないし、どうせ顔合わすならこっちからきちんと謝りに行くか。
 重い気分を奮い立たせて立ち上がる、そこで香ばしい匂いが漂ってきていることにようやく
気づく。
 何かしているのか、と、厨房へ出て行った。厨房に立つ有希の背中が見えた。おなかが減る
匂いはどんどん強くなる。
 メイド姿の有希がフライパン片手に何かを焼いている。
 「どうせ捨てるから、フレンチトースト作った」
 並べられていた賞味期限切れの牛乳や硬くなったパンや危険な玉子が綺麗になくなってい
た。その隣にはトマトを使ったサラダ。
 トーストを焼いているフライパンから視線を上げ、背中を向けたまま顔だけこちらを向ける。
 「いらないなら、捨てる」
 「いや、食べるよ」
 予想外の展開にびっくりしつつどうにか言葉を返す。
 「6枚分焼ける」
 「1人3枚か。食べる。飲み物用意するよ、何がいい?」
 またフライパンに視線を戻した有希は背中越しに、アッサムをミルクで、と答える。
 閉店した二人だけの静かな店内。
 暖かな照明に照らされて、焼きあがっていくフレンチトーストと蒸らした茶葉の香りが二人の
間に広がっていく。
 しばらくして客席の4人がけテーブルの上には一枚の皿に6段積みにされたフレンチトースト
とティーポット。カップは二人分。
 もう二枚、有希の分と自分用のお皿を用意して向かい合って席に座る。フォークを使い一番上
のトーストを自分の皿に。有希もそうやって自分の皿にトーストを一枚取る。
 取ると、彼女はオレの皿をひょいと取りあげ、代わりに彼女の皿を渡してきた。
 「一番上のやつは失敗して焦がしたから。こっち食べて」
 「あ、そ」
 焦げてるところなんて気が付かなかったが。
 「……ごめんなさい」
 だからこれは多分焦がしたことに謝ってるんじゃないだろう、と勝手に思うことに決めた。
 「謝るのはオレの方。ごめん」
 照れ臭くてしばらく目線を合わせられず、半袖からあらわになっている有希の腕や、ツヤのあ
る髪の上に乗ったカチューシャに視線を泳がせる。
 「食べて。そっちは上手く焼けてるはずだから」
 そういうと彼女は二人分の紅茶をカップに注ぎ始めた。
 泳いでいた視線を皿の上におき、黄色いフレンチトーストをナイフとフォークで切り分けて口に
運ぶ。
 やわらかい感触と広がる甘さ。
 「美味いよ」
 無反応の有希。並んだ二つのカップの両方にミルクを入れて。
 「砂糖は?」
 目だけこちらに動かして聞いてきた。
 「無しで」
 うなづくと、片方だけ砂糖を入れて、スプーンをつまんでかき混ぜ始めた。
 ゆっくりと円を描いてしなやかに動く彼女の指に目が惹きつけられる。
 「なに?」
 スプーンを抜いてカップをこちらに渡しながら聞いてきた彼女の声で我に返った。
 「いや、なにも」
 入れてももらったアッサムのミルクティーを飲みながら。
 「ちょっと考え事をね」
 「そう」
 向かい合って彼女と一緒に同じ紅茶を飲みながら考えた。
 
 明日からメニューにフレンチトーストを加えようと思う。
633Mr.名無しさん:2006/05/21(日) 22:41:34
ムカつかせる、って思ってたより難しい。

メイド喫茶って実際儲かるもんなんでしょうかねー?。
ウチの近場では最近バタバタ潰れております。
634Mr.名無しさん:2006/05/21(日) 22:50:00
新作キタ?
続くんだよな?

期待
635Mr.名無しさん:2006/05/22(月) 07:20:19
良いね。ほんのりデレw
636Mr.名無しさん:2006/05/22(月) 12:29:40
続くか?読み切りっぽい雰囲気だが如何か…
こんなほのぼのした感じは好きなんで是非シリーズ化を。
637Mr.名無しさん:2006/05/22(月) 12:38:22
>>633
GJ。続きが読みたいって気はするな。

続編でも別の話でも、期待したい。
638Mr.名無しさん:2006/05/23(火) 03:08:40

続編求ム
639Mr.名無しさん:2006/05/23(火) 14:11:44
独特の雰囲気でいいな。期待ホシュ
640Mr.名無しさん:2006/05/24(水) 14:41:35
ほしゅ
641幸福の扉act.4:2006/05/24(水) 15:34:44
「水野、居ないんですか?」
二日前、会いたくないと言ってるから・・・・と自分を追い返した叔母さんが、今日は居ないと言う。
嘘ではないだろう。少し、心配そうな顔をしている。
行き先を聞くと、病院にでも行ったのだろうと言われた。俺たちは病院に向かうことにした。言わずもがな、水野の母親、蓉子さんの入院している市立病院だ。
「おばさん。意外と優しそうな人だったね」
八重樫と並んで歩く。
「蓉子さんの妹さんなんだって、水野は苦手らしいけどね」
以前、泣きじゃくる水野を家まで送っていった時、いかにも責めるように睨まれた事を思い出した。あれは本気で怒った目だった。
「いい・・・・人なんだよ、きっと」

あいつにとって、彼女は家族じゃないのだろうか?心を許せない存在なのだろうか?
なってないのは、あいつじゃないか・・・・

                  ◆

この道、いつも宗ちゃんと通った道。季節によっていろんな植物が代わるがわるに茂って
春には桜、一本だけの大きな桜の木が咲いてて、入学式の時二人で写真とって貰ったっけ・・・・
・・・・もちろん、咲いてるわけないね。もう五月だもんね
つくし。散歩がてらにってお爺様と三人で摘んで、たくさん持ってかえった
お母さん、びっくりしてたけど料理してくれたんだっけ。結構おいしかったな
小学校のとき、宗ちゃんいつも何かいろいろ見つけてきて・・・・
二人でランドセル背負って・・・・懐かしい、な・・・・
642幸福の扉act.4:2006/05/24(水) 15:35:38

                  ◆

病院。市立第一○○病院。近代設備の整ったこの街一番の白亜の神殿。私たちはここに来た。ざわめくロビー、薄暗いエレベーター、白い廊下、消毒液の匂い、くすんだ色のドア。
そして、白い病室。

病室には先客が一人居た。きっちりとセンスのいいスーツを着た男性だ。見舞い客だろうか、椅子から腰を上げ帰る所のようだった。
私と三笠君を見て少し驚いたようだ。軽く会釈した後、三笠君と何事かしゃべり出した。
三笠画伯関係の人なのだろう。私は邪魔にならないようにベッド横にあった椅子に腰掛けて待つことにした。

ベッドを見ると女性が寝ていた。この人が水野蓉子さん。あの絵の、半顔異相の乙女・・・・

その顔は驚くほど安らかで、まるで笑っているようにも見えた。話に聞いていた通り右目に泣きぼくろがひとつあった。
半顔異相、相反する二つの相。親和と苦痛。三笠画伯は彼女に何を見たのだろう。
いや、駄目だ駄目だ。何でもセンチメンタルに考えるのは私の悪い癖だ。自重自重・・・・
この人が過去、何を思っていたにせよ、いつまでも娘をほったらかしたまま眠っているのは少し無責任だと思った。
私は彼女の手を握り、祈る。
早く帰ってきてください、もうキョウちゃんを苦しめるのはやめて。過去に囚われたままの子供はいつまでも成長できません。彼女のためにも、貴方のためにも・・・・・


『幸福の扉』
act.4『こころ』

643幸福の扉act.4:2006/05/24(水) 15:36:10

まさかあの人に会うとは思わなかった。彼もまた、あの記憶の中にある人だ。
しかし、本当に驚いてしまった。
彼は祖父と取引のあった画商たちの中の一人。
当時も俺たちの住んでいる館にたびたび訪れて、祖父の絵を買っていった。
彼が蓉子さんと特別に親しくしていたのは知っていた。彼と話す蓉子さんが恥ずかしそうに笑っているのを見て、よくむず痒い思いをしたものだ。
俺はむず痒いですんでいたが、実の娘である杏子は違った。一種の憎しみとも言えるものをもって彼を見ることが常だった。
多分、嫉妬していたのだろう。
よくは知らないが、彼と蓉子さんは時には言い合いをするようなこともあったようだ。
―――もう来ないでください
そう悲痛そうに言う、彼女の声を聞いたこともあった。

でも結局、彼らはお互い愛し合っていたのだと思う。あの時は子供だったから分からなかっただけで。
そして彼は、いまだ待ち続けていると言う。三日に一回は様子を見に来ているらしい。
ということは、水野と会うこともあるのだろう。
あいつ、絶対いい顔してないんだろうな。そう思って、少し笑ってしまった。

念のため水野と会わなかったかを聞いてみたが、彼がついたときには誰も居なかったと言われた。彼はしばらく話した後、仕事があるからと残念そうに帰っていった。
644幸福の扉act.4:2006/05/24(水) 15:36:40

彼が帰った後、俺は蓉子さんを見た。ここに来るのはずいぶん久しぶりで、蓉子さんはさすがに痩せてはいたけど、以前来た時と同じようにベッドで眠っていた。
先に座っていた八重樫の隣に座り、しばらく蓉子さんを眺めることにした。あいつに似た顔。俺たちのお母さんだった人。
八重樫は何か神妙な顔をして蓉子さんの手を握っていた。
さて、本当にどうしようか。水野がここに居ることを願って来たのだけれど、心当たりがなくなってしまった。後、あいつが行きそうなところは・・・・・

ふと、俺はベッド脇の机の上に一本置かれた野花見つけた。
「なぁ、これ八重樫が持ってきた?」
「え・・・・知らないけど」
それを見た瞬間、本当は、俺にはあいつがどこに行ったのか、わかっていた。でも、あいつはあれ以来あそこを避け続けていた筈だ、とも思った。
それはどこにでも生えているようなひっそりとした小さな白い花だけど、俺には思い出の花だった。あいつが好きだった、館の傍にたくさん生えていた白い可憐な野花だ。

「八重樫。館、行ってみようか」
八重樫が何がなんだかわからないといった顔で俺の顔を見上げてきた。
あいつ、きっとそこに居るよ。

俺は、心の中で『蓉子母さん、ありがとう』と呟いた。

645幸福の扉act.4:2006/05/24(水) 15:37:10
                  ◆

水野杏子は、事故以来決して自分から近づこうとしなかった、旧・三笠邸に立っていた。
私有地につき立ち入り禁止の看板を乗り越えて、あの日のままの簡素な玄関を開けて館内に入っていく。
蜘蛛の巣と埃にまみれた内廊下を進み、大きな応接間に出る。応接間は、やはり誇りにまみれていて、カーペットが敷かれた床には足跡がくっきりとつくほどであった。
在りし日は、ここで自分と母と、館の主である老人とその孫である幼馴染の少年と共に、午後のゆっくりとした時間を過ごしたのだ。
薄暗い室内に入ってくる光は帯となって誇りの舞う室内を彩っている。
その光の中にひとつの写真たてを発見する。
老人と、女性と、子供が二人身を寄せ合って写っていた。水野杏子はそれを手にとってしばらく眺めていた。不意にこみ上げるものを感じて息を詰まらせた。
水野杏子は、しばらく嗚咽を繰り返し、顔を伏せたまま、別のドアを開け、退室していった。

                  ◆

646幸福の扉act.4:2006/05/24(水) 15:38:12
光。色とりどりの光。ああ、そういえばこの先はあの光いっぱいの大廊下になってたんだっけ・・・・
私の目は、突然の光に一瞬完全にくらんでしまった。少しずつ目が慣れてきて、私は後ろ手で埃だらけの応接間へのドアを閉じる。
私のお気に入りの場所、ステンドグラスの大廊下はあの地崩れで半壊してしまっていた。

左右に大きく広がっていた廊下の左側は完全に崩れ去り、大きな崖になって、五月の青空が覗いていた。右側にしても、所々壁が倒れ、太陽の光が差し込んでいる。
前面に配された大きな窓はほとんどが粉々に砕けて廊下に散乱していた。
ただ、なぜか天井のステンドグラスだけはほとんどが無事で、光のかけらが散乱する廊下に相変わらずの、多くの物語を写し出していた。
よく晴れた日は、ここをゆっくりと歩くのが大好きだった。
あの時はここは本当に天国かと思えるほどきれいだったけど、壊れてしまい、廃墟に成り果てた後でも、それはちっとも失われていなかった。
涙腺の緩んだ私は、それにしばらく見ほれてしまう。
ここは、壊れてしまったのに、昔のままだ。暖かな光が私の体を包み、少しずつ解きほぐしていく。
急激に体の力が抜けた。驚いたけど、私はなすすべもなくドアに寄りかかったまま座り込んでしまった。
「お母さん・・・・お爺様・・・・宗ちゃん・・・・・・」
気づかずに持ち出してきてしまった写真たてを抱きしめた。
本当は、謝りたかった。お爺様に、お母さんに、宗ちゃんに。
頼りたかった、誰かに。助けて欲しかった。寄りかかってしまえば楽だったのに、意地っ張りな私はそれを良しとしなかった。
人に頼っちゃダメだと思った。誰も信用しなかった。強くならなくちゃいけない。もうお母さんに頼ることは出来ない。
647幸福の扉act.4:2006/05/24(水) 15:38:50
叔母さんにだって迷惑はかけれない。自分のことは自分で何とかしないと、自分を慰められるのは自分だけだと思った。
家族は、もう無いんだから。もう子供じゃないんだから。
色々押し込めて、やっと何とかやっていけそうだと思ったところに、宗ちゃんが現れた。
家族の残り。もっとも私に近かった人で、唯一、私と同じ境遇の子供。
一年ぶりに再会した彼は、すこし大人びて見えた。
思わず、飛びつきそうになった。心のタガが外れそうになった。彼しか居ないと思った。


でも、彼はわかってくれなかった。
―――その話はしたくないんだ。もう忘れろよ・・・・・
彼はもう、自分なりに決着をつけてしまっていたのだろう。そして、もう私を見てはくれなくなっていた。彼の目は、他の人に向いてしまっていた。
そうだ、彼には本当の両親、本当の家族がまだ居たのだ。一人ぼっちになってしまった私とは違うのだ。

そうわかると、むやみに裏切られた気になった。
『あの時、私のこと好きだって言ってくれたのに、ずっと一緒に居るって言ってくれたのにっ!もう私は一人ぼっちなのにっ!!』
だから、私は彼に当たった。精一杯の皮肉を込めて、できるだけとげとげしく、そして彼にしか分からない悪意を載せて。
これは、罰だ。私を捨てて、自分ひとりだけ楽になろうとした宗ちゃんへの。

でも、それは私の心を救ってはくれなかった。むしろもっともっと惨めにした。
いくら嫌っても、私はどうしようもなく宗ちゃんを求めていた。
あの時、好きだといってくれたのは彼だったけれど、本当は私だって大好きだったのだ。
代わりなんか居ない、ずっと一緒に居た人。
もう心の一部になってしまった、あのすばらしい時間を共有した、一緒に居ると最高に安心する、大事な大事な家族・・・・・
648幸福の扉act.4:2006/05/24(水) 15:39:51
・・・・宗ちゃんへの罰なんて嘘。本当は、ただ振り向いて欲しかっただけだ。
また、こっちを見て、かまって欲しかったんだ。名前を呼んで欲しかったんだ・・・・・



でも、もうおしまい。あいつと一緒に見たポスター。再会してからあのことについて初めてかけてもらった優しい言葉。何が『お前のせいじゃない』よ・・・・・
自分の中で何かが切れる音がした。

もう、忘れよう。
あいつは、こともあろうに私の親友の事を好きになってしまった。私のことなんかちっとも見てくれない。そして彼女のことばかり見ている。
いやなのに嫉妬してしまう、汚い、ひどい自分が手に取るようにわかってひどく苦しい。

はるちゃんは、大事な大事な親友。
何も言わないけど多分、あいつのことも悪く思ってない。
きっと、はるちゃんならあいつを助けてあげられる。あいつ、急に、つらそうな顔するから・・・・あいつが笑ってくれたら、それでいい・・・・

ほんとに・・・・人に迷惑かけてばっかり・・・・・バカだよね・・・・ごめん・・・・




649幸福の扉act.4:2006/05/24(水) 15:40:44
いつの間にか眠り込んじゃったんだ・・・
気がつくと廊下には西日が差し込んでいた。私はガラスが散らばる廊下に座り込んだままだった。
起き上がろうとしたら手のひらに痛みが走った。
「痛い・・・・」
見ると小さなガラスの破片が刺さっていた。急に惨めな気分になったけれど、そっと抜いて血を舐めた。
こんな弱気では、だめ。
私は、あいつのことはきっぱりあきらめて、そんでもってしっかり謝って、はるちゃんにのしつけて引き渡さないといけないんだから。
そう、決めたのだ。

もう学校はとっくに終わってる時間かな。立ち上がって服を払ったとき、不意に、誰かに呼ばれた気がした。

見ると、崩れかけの壁にドアがあった。
ドアの周りだけレンガ壁が残っているだけの、もはや壁の役割を果たしていない壁とその出入り口。
こんなところに・・・・ドアなんてあっ・・・たっ・・・け?
思い出の中を探してみるけど、この廊下にはこんなドアは無かった筈。
ちょっと怪しかったけど、何かに呼ばれるようにして、私はそのドアを開けた。


そして、飛び込んできたのは一面の白い花。
そうか・・・・思い出した。ここは昔よく遊んだ館の中庭だ。宗ちゃんがこの屋敷に来たばかりの頃、一緒に探検して見つけた、お爺様の秘密の場所。

そして、そこに、驚いたようにこちらを見る人影が二人。
探しに、来てくれたの?うれしい。でも、何で宗ちゃん一人じゃないの?何で、二人そんなに仲良さそうなの?今までしゃべったことも無かったのにっ!

そして私は睨みつける。

「・・・・・・何しにきたのよ」

act.5へ続く
650Mr.名無しさん:2006/05/24(水) 15:45:42
疲れました・・・・orz
あんまりできに自信ないですけど、とりあえず投げときますね

>>611
結婚してください。大好きです。
651Mr.名無しさん:2006/05/24(水) 16:02:30
ひとつだけ言わせて

ツンデレまだー?
652Mr.名無しさん:2006/05/24(水) 16:06:37
(つД`)゚・;。先生、切ねぇっす。
きっと誰も悪く無いんよ…過去と真っ直ぐ向き合うなんて辛すぎるもの。
ぅあぁ水野に感情移入しすぎた…泣いても良いですか?
653Mr.名無しさん:2006/05/24(水) 16:09:29
作者激しく乙!!
いいよーいいよー
ジャンプの嘘予告なんかよりよっぽど楽しみだ

>>651
気持ちはわかるが、おまいはこれほどの良作を素直に楽しもうとは思わんのか?
654Mr.名無しさん:2006/05/24(水) 17:34:47
>>653
普通の読み物としてはいいんだけど、ツンデレが存在しないのはどうかと思った
655Mr.名無しさん:2006/05/24(水) 17:45:54
まあツンデレ小説なんてスレタイだからな
その気持ちはわからんでもないが
>>1にもある通り、萌えられればそれでいい

ただ今回の投下分に、多少のツンを俺は感じたが・・・
ツンの理由が重いんだけどな
656Mr.名無しさん:2006/05/24(水) 23:01:25
続き期待
657Mr.名無しさん:2006/05/24(水) 23:41:55
う〜ん、期待している人が多いようだが私の感想は逆だったり。

最近の作品はどうも
「とりあえず人(主にヒロイン周辺)殺して、お涙頂戴にしておけ」
というような流れが続いているように感じる(意図的に悪意ある表現にしてあります)

なんか覚めちゃうんだよね…
658Mr.名無しさん:2006/05/24(水) 23:48:19
さすが毒男
空気嫁てない
659Mr.名無しさん:2006/05/25(木) 11:38:05
>649
http://idz.skr.jp/1024kb/updata/idz2571.jpg
水野

>620
気にせんでいいよ。むしろ感謝
>650
俺もこの読み物大好きだ。続きも頑張ってくれ
660Mr.名無しさん:2006/05/25(木) 13:21:56
>>659
キタコレ
今までと手の入れようが違うw
もうあんた神認定
661Mr.名無しさん:2006/05/25(木) 20:40:16
>>659
キテター
Gj!毎度毎度神絵をありがとう
662Mr.名無しさん:2006/05/26(金) 03:22:59
>>659
乙!
ギャルゲやってる間に来てた(w
663Mr.名無しさん:2006/05/26(金) 18:47:40
下がってたので上げ
664Mr.名無しさん:2006/05/27(土) 08:27:01
>>659
GJ!ポニーテール素敵。
665Mr.名無しさん:2006/05/28(日) 11:25:13
ほす
666Mr.名無しさん:2006/05/28(日) 21:10:21
このスレまとめ

【連載中の作品】
過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI氏の作品
淑大オカ研っ!!
 キャラ名>173
第一話
>174 >175 >176 >177 >178 >179 >180 >181 >182 >183
>184 >185 >186 >187 >188 >189

441氏の作品
~TUNDERE novel for single person
『幸福の扉』
act1 『The door is knocked on.』
>457 >458 >459 >460 >461 >462 >484 >485 >486 >487 >488
act2 『少女A』
>498 >499 >500 >501 >502 >503 -----------------挿絵>507
>517 >518 >519 -------------------------------挿絵>523 補完>620
act3 『Sunday&Rain』
>553 >554 >555 >556 >557 >558 >559 >560 >561 ----挿絵>569
act.3.5
>594 >595 >596 >597 >598 >599 >600 ------------挿絵>611
act.4『こころ』
>641 >642 >643 >644 >645 >646 >647 >648 >649 ---挿絵>659
667Mr.名無しさん:2006/05/28(日) 21:11:00
【連載中の作品】続き

ツンデレ十夜
第一話 >32
第二話 >34
第三話 >35
第4話 >124
第5話 >125

本当にパクってみた作品
>217 >218 >219

アッサムティーにミルクを入れて
>627 >628 >629 >630 >631 >632

七誌さんの作品1
>153 >156

七誌さんの作品2
>347
668Mr.名無しさん:2006/05/28(日) 21:11:36
【完結した作品】
過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI氏(Life life ◆yVoA9C7lzI氏)の作品
Life life
八話(前スレ>922の続き)
>9
最終話
>20 >21
 解説っぽいもの>22

空に光る
 キャラ名>61
一話
>49 >51 >52 >53 >54 >55 >56 >57 >58 >59 >60
二話
>66 >67 >68 >69 >70 >71 >72 >73 >74 >75 >76
 ここまでのおさらい>77(訂正レス>83)
三話
>91 >92 >93 >94 >95 >96 >97 >98 >99 >100
>101 >102
 ここまでのおさらい>103
四話
>109 >110 >111 >112 >113 >114 >115 >116 >117 >118 >119
 ここまでのおさらい>120
最終話
>134 >135 >136 >137 >138 >139 >140

529氏の作品
>535 >536 >537 >538 >539 >540 >541 >542
669Mr.名無しさん:2006/05/28(日) 21:13:57
After a long time
>251 >252 >253 >254 >255 >256 >257 >258
How to get your lost days ?
>267 >268 >269 >270 >271 >272 >273 >274 >275 >276
Invitation to dream
>281 >282 >283 >284 >285 >286 >287 >288
Petit mischief
>296 >297 >298 >299 >300 >301 >302 >303
Myself - ish
>310 >311 >312 >313 >314 >315 >316
 ここまでの登場人物まとめ>321
Too early , Too late
>329 >330 >331 >332 >333 >334 >335 >336 >337 >338
load to Vague
>353 >354 >355 >356 >357 >358 >359
ALISE , again
>370 >371 >372 >373 >374 >375 >376 >377 >378 >379
>380 >381 >382 >383 >384 >385 >386
あとがき
>388

ツンデレのデレデレ妹を見て「お前もあれぐらい素直だったらな」とツンデレに言ったら
>402 >404 >405 >406 >407 >408 >409 >422 >439 >442 >450

年上の・・・  第1話
>470 >471 >472 >473
年上の・・・  第2話
>475 >476 >477

いやー今回はいつにも増してまとめ大変でしたw
まとめへの挿絵の入れ方が特に。あとVIPスレのはどうしようと思ったり。
こんなもんで勘弁。間違い(ry
670Mr.名無しさん:2006/05/28(日) 23:19:59
>>669
671Mr.名無しさん:2006/05/29(月) 10:06:45
>>669
乙ンデレっ!
672Mr.名無しさん:2006/05/29(月) 17:31:48
乙ンデレー
673Mr.名無しさん:2006/05/29(月) 18:12:55
てs
674Mr.名無しさん:2006/05/30(火) 01:11:18
675Mr.名無しさん:2006/05/30(火) 01:34:57
669
乙んでれー!
676Mr.名無しさん:2006/05/30(火) 10:53:17
ほす
677Mr.名無しさん:2006/05/30(火) 14:12:18
作品投下しようかなとも思ってるのだが、
やっぱアレか? シリアスじゃないと駄目か?

なんだかコメディくさいんだが
678Mr.名無しさん:2006/05/30(火) 14:17:19
このスレに投下できる条件はただ1つ
萌えられるかどうかだ

真面目だろーとギャグ調だろーとあんまし関係ない
679677:2006/05/30(火) 14:34:11
初投下なんで緊張するが
やってみる
680677:2006/05/30(火) 14:36:19
チーチチチチ

朝。小鳥の囀る音と共に、僕の意識は覚醒した。
鳥の声で目が覚めたのか、窓から差し込んでくる陽の光に反応したのか。
まぁ、些細なことだ。――そう、僕の隣で無慈悲に時を刻むわが相棒の針が、
午前七時五十五分を指していることに比べたら。

…………。三点リーダ四つ分、僕は硬直したままだった。
瞬間、僕の頭の中が思考で掻き乱される。

ヤバイ! やばすぎる! あれだ、今更だが状況を確認しよう。余裕無いけど。
え〜と、僕は野中潤。成績は中の上から中の中をいったりきたり。
運動神経はソコソコ。持久力は無いが、瞬発力と身体の柔らかさには自信あり。
背が低いのがコンプレックス。本日よりピカピカの高校一年生。

――ああ! 一分も無駄にした。
681677:2006/05/30(火) 14:37:22
僕は無理矢理思考を中断し、
トイレに突っ走って用を足し、念入りに手を洗う。
制服に手短で着替え――ようとしてボタンを掛け違って、やり直す破目になり、
ハンカチとティッシュ、そしてカバンを引っ掴むと、ドタドタと階段を駆け下りる。

階段を下りきり、リビングに飛び込んだ僕を――フライパンが盛大にお出迎え。
パコォンという、今日日マンガでも聞かれなくなったコミカルな音とともにフライパンがめり込む。
ムギュ、と思わず悲鳴がこぼれる。犯人は分かってる。この家でそんな下らない事をするのは、
「姉さんッ!」
声を荒げ、顔にめり込んだフライパンを顔から剥がす。

うう〜、火花がパチパチしてる。頬をパチンと叩いて、火花を無理矢理追い出す。
そして、眼前にいる姉を睨みつける。
「アッハハハハハ、ムギュだって、アンタホントに高校生?」
「うるさいなぁ」
姉――野中美夏の揶揄に適当な相打ちをして、僕は椅子に座った。

時間が無いので、素早く胃に収められそうなものを検索する。
メニューはフレンチトースト・ベーコンエッグ・トマトサラダ・コンソメスープ。
フレンチトーストをコンソメスープで流し込む。決定。
682677:2006/05/30(火) 14:38:20
大方冷め切っているフレンチトーストを口に運ぶ。適度な甘さで、程よく食が進む。
ハムハムとフレンチトーストを頬張りつつ、新聞を手に取った。
時間が無いときでも一面のチェックは欠かさない――のだが。

「潤ちゃ〜ん、今日から高校なんだからね。そんな時間あるの?」

…………。再び、三点リーダ四つ分の硬直。
姉の暢気な声で現実に強制送還とは……。予想だにもしていなかった。
僕の家から高校――水面高校までは自転車で約三十分。
飛ばして二十分。そして、現在時刻が……八時六分。
遅刻の限界が、八時半だから……。ヤッバ! 初登校で遅刻は嫌だ。

フレンチトーストを無理矢理胃袋に流し込んで、
コンソメスープを一口飲んで余りの熱さに噴出して(何で、スープだけ熱いんだよ姉さん)
傍に置いてあった可愛らしい弁当箱をカバンに押し込み(これがからかいの種なんだよ姉さん)
いってきますの挨拶もソコソコに家を発った。
683677:2006/05/30(火) 14:39:20
自転車に跨り、僕は風になる。
先ほど述べたように、僕は瞬発力には自信がある。
しなやかな筋肉から生み出される動力が、ペダルを介して車輪に流れ込む。
道程の半分程で時間は八時十三分。
行けそう――ではないんだなぁこれが。

水面高校と我が家の間に立ち塞がる霧咲峠。
十分ほど登りっぱなしになる、恐怖の峠。
僕の方の地区から向う高校生にとっては、当に壁。
僕は気合を入れ直し、ペダルを踏みしめた。
全体重をかけて、一回一回ペダルをこいでいく。

車で脇を通り過ぎる人に対し睨みつけたくなる衝動に駆られ、それを必死で押さえた。
坂を登りきる手前、体力が限界レベルに到達した。
僕は持久力が無い。
しかも、唯一口に含んだ水分――歯磨き洗顔は別として――はアツアツのコンソメのみ。
喉もカラカラだ。ゼーゼーと早いリズムで、乾いた息が吐き出される。
――アア ヤ――バ、イ
朦朧とする意識の中、三途の川の船頭さんと値段の交渉。
六文もないんですよ〜。ただ乗りさせてくださいよ〜。
とりとめの無い思考に、あぁ余裕あんじゃん僕、と考えながらも視界はさらに霞がかっていく。
684677:2006/05/30(火) 14:40:09
そんな中、不意にヒタッと額に冷たいものを感じた。
「ヒヤッ!」
思わず素っ頓狂な悲鳴が漏れる。もっとも、おかげ様ですっかり意識ははっきりしたけど。
目の前にぶら下がっているのは半分くらいのスポーツドリンク。

それを手にとって振り返ると――
「……飲めば? あげる」
美人さんが居ました。思わず敬語になるほどの衝撃。
茶色がかったサラサラのロングヘアーを風に靡かせ、細いツリ目の瞳は綺麗な黒。
スッキリとした鼻筋に薄い唇。頭よさそうだ。
遅刻寸前の通学路に何で居るのか、そうした疑問が沸くが――まずは飲んじゃえ。

すんなり開いたキャップを片手に、飲み口に口をつけて、今更な事を訊ねる。
「……今更だけど、これ……飲みかけ?」
「当たり前」
動じないねぇ。僕が気にしす――飲みかけぇ!? 時すでに遅し。少し口にはいった。

身体が拒否し、即座に噴出す。
辛うじて、彼女にかける前に首を捻って回避。
勿論の事ながら怪訝な顔をする彼女。
「……なに?」

怒ってる。そりゃ当然のことだ。自分が口をつけたからといって噴出されたんだ。
怒るのも無理はないし、むしろ当然のこと。ワナワナ震える握った拳がチャーミングです。
いや、せめて弁解をさせてください。ちゃんとした訳があるんです。
僕の表情を見たのだろう、問答無用とでも言わんばかりに睨みつけると
スポーツドリンクを奪い返し、サッサと坂を登っていった――電動自転車で。

「いいなぁ……」
その呟きは春の風に流されていった。
685677:2006/05/30(火) 14:43:55
とりあえず導入

萌の欠片もありません orz
686Mr.名無しさん:2006/05/30(火) 14:46:47
期待。

初めっから萌え全開じゃなくてもいいんだよw
総合的な印象も大事なんだから
687Mr.名無しさん:2006/05/30(火) 17:56:11
これはなにやらいい予感(O゚・∀・)wktk
688Mr.名無しさん:2006/05/30(火) 17:58:46
期待してるぜ!
689Mr.名無しさん:2006/05/30(火) 21:25:31
うん。これは期待sage。
690Mr.名無しさん:2006/05/30(火) 23:37:42
流れぶったぎって

>>669
間違いって訳じゃないですが
「アッサムティーにミルクを入れて」はあれで終了という事で
完結作品の方にお願いします。

好評いただけたようでみなさまに感謝です。
691Mr.名無しさん:2006/05/31(水) 00:20:33
>>690
おや。失礼した。
次回まとめのときに移動させときますね。
692677:2006/05/31(水) 23:13:29
岬の頂きに立ったら、後は一気に坂道を下っていく。
坂道でペダルをこぐのは非常に危険であるがそんなこと言ってられない。
坂道を猛スピードで下っていく。頬に当たる風が心地よい――どころではない。
痛い。とにかく風が痛い。時間を確認しようにも携帯を取り出せない。

そして、再び上り坂。負けてたまるかぁ!
スピードに乗ったまま気合でこぎ続ける僕。自転車部で鍛えた方が良いのかな。

坂道をやっとこさで登り終えた僕は、目を見張った。
不意に、白い校舎が目に入ったからだ。あれが、今日から通う学校。
入学試験や入学式でも行ったはずなのに、何か感慨深いものがある。

遅刻寸前で無かったなら、校門前で自転車を傍らにモノローグを展開できるのであろうが、
僕にはそんな余裕は無い。

自転車置き場の隙間に捩じ込む。あ、さっきの電付(電動自転車)だ。
いいなぁ、とぼやきつつ校舎に入っていく。
693677:2006/05/31(水) 23:14:34
僕は1-Bだ。階段を駆け上がり、チャイムが鳴るギリギリで教室に滑り込む。
滑り込みセーフ。ウエットティッシュで手を拭いて座席に着いて項垂れる。しんどかった。疲れた。

「……っと」
ああ、遂に訪れた至福のとき。あの霧咲峠ふざけてんじゃないだろな。

「……ょっと」
大体、こんな高台にあって何が水面高校だよ。昔は霧咲峠が小さな孤島で、
ここら辺は水面だったらしいが。なんつうアバウトな。

「ちょっと」
ん? さっきから一体誰!? 勢いよく振り向いたその先には――さっきの美人さんがいた。

…………。目が合ったまま硬直する僕。いつもの如く三点リーダ四つ分。
口数が少なそうだと思ったのになぁ……とか考えてる場合じゃない。

同じクラスだとは予っ想外だっぜい。つまり、アレだ。
僕は初登校日から――しかもファーストコンタクトで――最悪の印象を与えたわけだ。
ああ――なんて無様。
694677:2006/05/31(水) 23:15:27
「な、何のよウですカ」
思わず声が裏返る。情けない話だが仕方ない。
凄まじい形相なのだ。今の彼女なら閻魔様とも張り合えるね。間違いない。
しかも、顔を真っ赤にしているでもなく、眉を顰めているでもなく、口を尖らせているわけでもなく、
ただただ無表情で僕を見下ろしてくる。

「朝」
一言だけ発する彼女。やはり口数は少ない模様。
朝、と言うのは勿論、スポーツドリンク噴出し事件の事だろう。
しかし、周りの男連中の視線が集まる。そりゃもう痛いほどに。
「あ〜、うん……その事ね」
僕は一旦ここで言葉を切った。そして、ウェットティッシュを差し出す。
「何?」
当然の反応。ここで少し躊躇ったのだが、僕は自らの疾病を告げることにした。
コホン、と軽く咳払い。ンン、ンン! とわざとらしく喉を鳴らす。
そして、僕は話し出した。
695677:2006/05/31(水) 23:16:07
「僕ってさ、潔癖症なんだよね。とはいってもほとんど対人限定だけど」
クエスチョンマークを浮かべる彼女に、僕は話し始めた。

そう、僕は潔癖症だ。とはいってもそんなにひどくは無い方だと思う。
お札にも触れるし、公衆トイレも嫌々ながら利用は出来る。
ただ、他人に触れる事が出来ないのだ。
対人限定なのは、小さい頃の思い出が強迫観念になっているからだろう。

家族なら我慢できるし、その我慢しなければならないという思いも和らいではきている。
ただ、他人だけは駄目だ。頭では分かってるのに身体が拒んでしまうのだ。

まぁ、飲みかけのペットボトルなんてご法度な訳で……。
ここまで説明して彼女は口を開いた。
「つまり、私が不潔ってこと」
ああああああ、教室の温度が一気に下がる。テメーコラナニイッテヤガンダ、と言った野次が聞こえるが、
目の前の冷たい瞳を見れば、右から左へスルーする。

「いや、それは言葉のあ――」
「もういい」
僕の言葉をすっぱりと断ち切って席へ着く彼女。
……修復不可能ですかそうですか。

まさか初日で高校生活に絶望するとは思わなかったよ、姉さん。
696677:2006/05/31(水) 23:16:38
「相変わらずであるな、お主」

そういって、椅子を持ってきて僕の傍に座るのは、
小学校からの親友、深海(ふかみ)大樹(だいき)。しんかい たいじゅ、なんて呼んだら地獄を見る。
とにかく名前のように、深い海のような包容力と何百年と聳え立ってきた大樹の威厳を思わせる人間だ。
高校一年生にして悟りを開いているように聡明だ。……年誤魔化してないだろうな?

とにかく、潔癖症の事を知って、蜘蛛の子を散らすように去っていた同級生の中で理解してくれた数少ない人だ。

こいつが女だったら結婚してもいい。無論冗談だけど。
あぁ、でもこんなに理解のある女の子が居てくれたらなぁ。

「しっかし、何をしでかしたのだ、お主? 古里滝(こりたき)嬢を怒らすとは……ある意味快挙ではあるが」
古里滝さんかぁ、美人だけど無口なんだよなぁ……。声は透き通ってて綺麗なのに。
なるほど、無感動ってことか。確かに快挙だ。勿論、悪い意味で。
697677:2006/05/31(水) 23:17:15
「今朝、霧咲峠でバッタリ会ってね、体力が切れて意識が朦朧としてる僕に飲み物くれたんだけど――」
「皆まで言わずともわかる、
飲み物を
  くれたはいいが
        飲みかけで
            美人なあの子に
               噴出しちゃった――字余り
といったことであろう?」
わざわざ短歌にせんでもいい。律儀に字余りまで。字と余りの間に余白を作るのがコツらしい。

でも、実際その通りなのだからぐうの音も出ない。
とはいえ、僕の事情を知ってる人間が聞いたら、十人が十人そう答えるだろうけど。
ますます項垂れる僕の肩を、どこから取り出したか分からないビニール手袋越しに叩く大樹。
うう、この心遣いが染みるとともに申し訳なさで一杯になる。
698Mr.名無しさん:2006/05/31(水) 23:54:12
いいよいいよー その調子で頑張って!
699677:2006/06/01(木) 00:33:36
「聡明そうな彼女の事、直ぐに過ちに気づくであろう」
そんな大樹の言葉を耳にしながら、僕は右後方の古里滝さんを見やった。
本を読んでる。チラッと五線譜が見えたから――楽譜<スコア>だろうか。

見ている事がばれたのだろう。彼女はスコアを閉じるとツンッとそっぽを向いた。
理解ね……。彼女に理解されるのは非常に骨が折れそうだ。

それと同時に、僕は疑問にとらわれていた。
彼女の持っていたスコアが、僕の家にあるものと一緒だったからだ。

頭の片隅で、流れるチャイムをスルーして、僕はウェットティッシュを取り出した。
潔癖症もだいぶ和らいだとはいえ、ウェットティッシュで机を拭くのは忘れない。
磨きに磨いてピカピカになって満足して、おやすみなさぁい。
700677:2006/06/01(木) 00:36:34
規制くらってますた orz
最後の1個分投稿できませんでした

期待してくれた方、レスサンクスです
701Mr.名無しさん:2006/06/01(木) 20:30:12
イイヨイイヨ〜
支援sage
702Mr.名無しさん:2006/06/02(金) 17:31:58
hosshu
703677:2006/06/02(金) 22:39:26
一日目ということもあってか、先生の話をだらだらと聞く破目になった。
まぁ、ブツブツと喋り続けるサラリーマン教師でなかっただけまだマシかな。

主任の先生は佐藤大輔という名前らしい。ありきた――ゲフン! いい名前ですね、佐藤先生。
大袈裟に身振り手振りを交えて、目を少年のように輝かす先生。
結構好きになれそうだ。暑苦しそうだけど。

さて、水面高校は公立高校の中でも、平均ちょい上の学力を誇っている。あくまでも、ちょい上ね。
んで、先生も結構曲者揃いだったりする。そのうち、ズヴァリの人とかコーヒーの人が出てきそうで、ちょっと怖い。
個性的な教師陣のおかげで、退屈はしないで済みそうだ。
704677:2006/06/02(金) 22:45:31
そして、昼休み。とはいっても、昼休みの後はS.Hがあるだけだが。
古里滝さんは、昼休みの鐘が鳴ると同時に席を立ってしまった。

話したいことがあったのに……。今朝の事、そしてあのスコア。何で彼女があのスコアを?
疑問は尽きないが、まずはお弁当だ。
姉さん作のお弁当を、大樹と机を囲んで食べる。

弁当箱には卵焼きにきんぴらごぼう、鯖の味噌煮にほうれん草のゴマ和え。流石姉さん。バランスが取れてる。
一方の大樹は、サンドウィッチを摘んでいる。

「そういえば潤よ」
大樹が発した疑問の言葉に僕は小首を傾げた。
はて? 何かあったかな?
705677:2006/06/02(金) 22:46:47
「修さんはどうした。最近連絡が無いのだが」
ああ、その件ね。
「修さんは、丁度お隣の県でのライブも終わったし帰って来てると思うよ」

修さんは、僕の師匠だ。
インディーズでもかなり有名どこのバンドである『Around the Earth』通称『A.E』のギター担当のお人だ。
単語の響きだけでバンド名を決めたと言うのは修さんの弁。
小学校5年の時に、ひょんな事から知り合いになってからギターの手ほどきを受けている。
修さんのおかげで、潔癖症も随分緩和した。あのときは本当にひどかったから。

そして、僕を通じて野中美夏――姉さんの声に惚れ込んだ修さんは『Around the Earth』を結成。当時十七歳。
そんな修さんは現在二十歳。今夏にはメジャーデビューも決定しているらしい。
その為か、他県からも度々お呼びがかかるのだ。

流れるようなメロディラインから、メッセージ性の強いリリック――要はクサイのだ――がヴォーカルの姉さんから放たれる。
その歌詞も人気の一つであるし、なにより姉さんの人を惹く声が最大の要因であろう。
クリアーではあるが綺麗なだけではない。かといって濁ってもいない。核があるのだ。見えない核が。
言葉で説明するのは難しいが、姉さんの声は人を惹きつける何かを持っているのだ。
それが全国へとじわじわ浸透していったのだ。
普段はあんなにおちゃらけているのに。
706677:2006/06/02(金) 22:48:19
それは置いといて――
「ふむ、ではいつもの公園か?」
「うん、今夜辺り行こうかなって」
僕や大樹、そして『アイツ』の住んでいる町の外れには公園がある。
何せ外れなので近くに住宅も無く、夜でも楽器を弾けるというわけだ。
よっしゃ、と心の中でガッツポーズをしていると大樹が再び疑問を振ってきた。

「思ったのだが――なぜ古里滝嬢はお主に清涼飲料水を渡したのだ」
うん、僕もそれは思った。
僕は彼女の事を何も知らない。それなのに、たまたまクラスが一緒になった人間が、
たまたまフラフラしていたとはいえ、そう簡単にドリンクを渡せるだろうか。しかも異性に。
断言しよう。僕には無理だ。薄情? そんな蛮勇、僕には無いね! 威張れないけどさ。

そして、もう一つの疑問。
707677:2006/06/02(金) 22:49:01
「あのスコア、『A.E』のスコアだよね。何で持ってるの? 古里滝さんが」

『A.E』の人気の一つに、その流れるようなメロディラインが挙げられる。
それは勿論、ベース・ドラムがしっかりとした土台を作っているからこそではあるが、
やはり多いのだ。スコアを出版してください、という声も決して少なくない。
そんなファンに、修さんは宣言している。メジャーデビューして売れたら好きなだけ出してやる! って。

僕や大機なんかは知り合いのよしみで貰っちゃってるが。――何者なんだ彼女は?
「分からん。あの表紙から察するに『make a road』の辺りであろうか?」
「多分ね」
残った塩味の卵焼きを口に放り込んで、僕は席を立った。
708677:2006/06/02(金) 22:49:51
どこへ行くのか、と目で訊ねる大樹に、僕は肩を竦めて上を指した。

法則その一 ミステリアスで気になるあの子の居場所は屋上でガチ

ベッタベタである。ってか気になるって何さ?

取敢えず、法則に従い屋上に向う。
まぁ居るかなんて正直半信半疑――

「足元に〜道なんかない、レールも無い、未来はその手で築くんだ〜」

誰か居るゥゥゥゥゥゥウウ!?
っな、まさか本当に居るとは。

しかも、嫌いじゃないけど聴いてて恥ずかしくなってくるこのリリックは、『make a road』だ。
いきなりビンゴっぽいな。何せ、ここまで綺麗な歌声を僕は知らない。
そろり、とドアを開けた。
予想通り、そこには古里滝さんが居た。
709677:2006/06/02(金) 23:01:09
とりあえず、ここで切ります
次からようやくツンデレらしくなるのかな?
710Mr.名無しさん:2006/06/03(土) 11:06:57
いいねぇ(O゚・∀・)wktk
711Mr.名無しさん:2006/06/03(土) 23:55:40
土日保守
712Mr.名無しさん:2006/06/04(日) 14:08:11
日曜保守
713Mr.名無しさん:2006/06/04(日) 15:40:30
続きが気になりつつ保守
714Mr.名無しさん:2006/06/06(火) 03:26:40
保守
715Mr.名無しさん:2006/06/06(火) 23:47:15
 
716Mr.名無しさん:2006/06/07(水) 07:03:59
ぶるぁ
717Mr.名無しさん:2006/06/07(水) 13:11:24
モルスァ
718Mr.名無しさん:2006/06/08(木) 05:43:13
いつだ?
719Mr.名無しさん:2006/06/08(木) 09:57:22
姉は頭が良く、スタイルもいいんだが彼氏という
モノに恵まれていなかった。性格によると思う。
これから検証するので、みてやってほしい。

『姉さん、ちょっと話がある』
「何よー。ドラマ始まっちゃうでしょ。後にして」
『姉さんはすぐ騙されるよね」
「・・・そんな訳ないじゃない。な、何を根拠に」
『さっき姉さんが食べたアイス。あれはオレンジ味じゃなくてみかん味だよ』
「えっあんたオレンジ味だっていったじゃんっ!」
『それとさっき手相をみたよね。生命線長いねっていったけど、あれ寿命線なんだ』
「な、何よもうーっ姉ちゃん嘘つく子は嫌いだよっ!」
『あとね・・・』
「まだなにかしたのもうーっ」
『ドラマ始まっちゃうよ』
「あっとそうだった〜♪」
『姉さん。その新聞昨日のなんだ』
「なんでおいとくのよーっあっ昨日観たじゃんーっもうー」
『でね・・・』



720Mr.名無しさん:2006/06/08(木) 12:28:53
萌え文じゃないなら三行にまとめて
721Mr.名無しさん:2006/06/08(木) 13:35:05
>>719
姉属性の俺は好き
722幸福の扉act.5:2006/06/08(木) 17:58:05
「・・・・・・何しにきたのよ」

夕暮れが近い。生暖かい風が周りの風景を揺らした。
水野の声は今までに無いくらい鋭く硬質で、ナイフのように俺の胸を貫いた。
「探しに来たんだ・・・・やっぱり、ここに居たんだな・・・」
夕日に照らされた水野の目はすこし腫れていた。泣いてたのか・・・・なぜか胸が詰まった。
「・・・・・・何で、はるちゃんが居るの?」
俺の隣には八重樫が立っている。

「・・・・探しに来たとか言って、二人で何してたんだか・・・・・・」
水野は、俺たちを順に眺め回すと、顔をゆがめ、何かいやなものを見たような目をした。
「凄いね。私が居ない間にそんなに仲良くなってたなんて。宗ちゃん結構やるんだね。見直したよ?もうチキンなんて言っちゃいけないね・・・・」
そう言って嘲う。様子がおかしい。
「キョウちゃん、あのね・・・・・」
「はるちゃんは黙っててっ」
水野の鋭い叱責が飛んだ。
「おい、どうしたんだよ。お前ちょっとおかしいぞ・・・・」
「おかしくないっ!おかしいのはあんたよ」
水野が近づいてくる。
「だいたいっ、あんたは・・・・・っ!!」
723幸福の扉act.5:2006/06/08(木) 17:58:51
水野が不意に右手を振り上げた。俺は反射的にそれを掴んで止めた。
水野と俺の顔が近くなる。
瞳の奥を覗き込む。
水野の目は憎しみと悲しみと、混乱に満ちていた。深く、濁った複雑な感情が彼女を支配していくのが何故か俺には分かった。

あぁ、
あの時と同じだ。感じた。
七年前の、忘れもしないあの日と。
逃げ出して、森の奥で泣いていた水野と。
ここだ、七年前、俺はここで最初につまずいた。
これはあの日のやり直し。
風が強く木々を揺らした。日が傾いていく。


激しい雨、落雷、跳ねる心臓、納屋の中だ
『帰らない・・・』
暗闇の中で息を凝らしている水野
『嫌だって言ったもん・・・』
15歳の頃の水野。その目の放つ力はあまりに強くて
『わかってくれないお母さんが悪い』
無力な15歳の俺。俺はそれ以上近づくことができなかった
『来ないでよ・・・ほっといてよっ・・・・帰ってよっ・・・!!』
そして逃げ出した。古びた納屋の扉が、静かに閉まった


724幸福の扉act.5:2006/06/08(木) 18:00:50

「杏子っ!」
思わず叫んでいた。あの時のままの、彼女の名前で。
俺の急な大声に水野は驚き一瞬体をすくめた。
「・・・落ち着けよ」
「・・・・・・・いや・・・・・」
水野は聞きたくないというように頭を振る。
「なぁ・・・・もう、いいじゃないか。あれはお前のせいじゃないし、誰のせいでもない・・・・」
そういって俺は繰り返す。落ち着かせるように、離した両手でそっと水野の肩を抱きしめた。
水野が驚いたように、短く声を上げる。
俺は水野の頭の抱きしめて、目をつぶった。

なぁ、杏子。俺はあの、爺ちゃんと蓉子母さんとお前と過ごした日々を忘れたかった訳じゃないんだ。
忘れられるわけ無いじゃないか。俺だってすごく楽しかったんだ。
小学校、お前と出会ってから、まわりに冷やかされたりもしたけど毎日一緒に登校したよな。中学校だって一緒に行った。
お前はいっつも元気で、だらだらと自分から行動しない俺をいっつも引っ張ってくれたよな。
でも、そのうち分かったんだ。お前のその元気な、活発な性格が本当は寂しいからだって。

『そうだ、水野は部屋で、一人でこっそり泣いていた。俺はそれを知っていた。水野の体温が、呼吸が、感じられて、心が』
725幸福の扉act.5:2006/06/08(木) 18:01:57
寂しくて、弱いから強がってるんだって。そして、その弱い自分が嫌いなんだなって。
それが分かったとき、俺はお前のことを、多分、好きになったんだ。一緒に居てやりたいと思ったんだ。守ってやりたいと、思ったんだ。

『何時も一緒に居る兄妹以上の存在。家族。水野の体がびくりと反応する。それが恋愛感情になるのにそんなに時間はかからなかった』

だから、あの夜、俺はお前の傍に居てやれなかったことにずっと引け目を感じてたんだ。
あの日、俺にもっと勇気があったら、お前をこんな風に、抱きしめてやれたらこんなに苦しめることも無かったと思うんだ。

『拒絶されたから、嫌われたくなかったんだ。そして今、俺の腕の中に彼女が居る』

起こったことは、変わらなかったかもしれない。俺たちがあの納屋に居たときには・・・・もう爺ちゃんも蓉子母さんも俺たちを探しに・・・・出てたんだ。
でも、もしかしたら、何かを変えれたかもしれない。俺がしっかりしてさえ居れば・・・・
だから、

『本当にそうだったのか?それはただのいいわけに過ぎないじゃないか。
気がついたら、爺ちゃんも、蓉子母さんも、館も、そして杏子も!離したくなかったんだ!このぬくもりを!安心を!・・・・でもっ!!』

・・・・ごめん。あの時は俺だって怖かったんだ。だから逃げたんだ、だからあの後もっ!それから再会してからも!!


「・・・・ごめん。本当に謝らなきゃいけないのは、やっぱり俺だ。ほんとに・・・・ごめん」

726幸福の扉act.5:2006/06/08(木) 18:02:32

俺は駄目だ。やっぱり駄目駄目の最低のチキン野郎だ。体から力が抜けていく。自己嫌悪で頭が動かない。
後悔の念が。自分の中の抑えていたものが決壊した。
水野を救う筈だったのに、俺にそんな資格は無いんだ。水野はスルリと俺の腕の中から離れていった。
俺は苦虫を噛み潰したかのような表情で固まってしまった。

水野は黙って顔を伏せていた。表情は読めなかった。

結局、俺が水野を避けていただけなのか。
空が、赤い。日が暮れていく。昼間の時代が終わって夜の時代が訪れる。

「・・・・・・・・・・何よそれ・・・・」
え?
727幸福の扉act.5:2006/06/08(木) 18:03:08
水野が静かに呟いた。
「私が弱いとか、寂しいとか、勝手に決め付けて・・・・アンタ何様のつもりよ・・・・」
「私が欲しいのはそんな言葉じゃない・・・・」
「そんな勝手に人の心なんか分かった気にならないでよ・・・・」
「それが真実だって何でアンタはいえるの?」
「勝手に、見透かしたりしないでよ!!」

そういって水野は怒った。目に涙を溜めて。昔、よく俺と喧嘩したときのように。あの時のままのように。
「人の心なんか分かるわけ無いじゃない。それぞれぜんぜん違う人間なのに」
「・・・・あぁ」
「本当にバカなんだから・・・・あんた、何しに来たのよ。」
「え・・・・あ、お前を迎えに来たんだけど」
「馬鹿・・・・」
そういって水野はゆっくりと歩き出した
「もういい・・・・あんたの言いたい事は分かったから」
「え?」

「帰る」
そういった水野の声はもう泣いてはいなかった。

728幸福の扉act.5:2006/06/08(木) 18:04:11

「大体、アンタはっ、こんなとこまではるちゃん連れ出してっ」
水野は八重樫と何か二、三言かわして涙を拭きながら照れくさそうに笑った。
八重樫はこっちを向いてなぜか苦笑していた。


俺たち三人はゆっくりと山を下っていく。途中、水野は怒ってはいたが、もう俺を拒絶することは無かった。俺のことを恥ずかしいヤツと罵ってくれた。
なぜかは分からないが、ひどく安心した。
結局俺は何も出来なかった。けれど、何となく、何かが、何とかなったのかもしれない。
水野の胸には、懐かしい写真の入った額がしっかりと抱え込まれていた。
俺は、すっかり日が暮れた夜空を見上げていた。

―――なんだ。結局、簡単なことだったんだな。

楽しそうにしゃべる二人を見ながら俺は何となく、笑っていた。

『幸福の扉』
act.5『No,thing』
729Mr.名無しさん:2006/06/08(木) 18:06:10
むおおおおお
つ、続きをおおおおおおおおおおおおおお
730Mr.名無しさん:2006/06/08(木) 18:15:36
うん、すまない。もう一話だけあるんだ。それはまだ書けてない

>>654
ツンデレね、ツンデレって難しい。努力はしてみた。
ツンデレになりつつあるかは俺にもわからナス。

>>657
その意見には俺も賛成かも。一般のメディアでもセカ中とか以降そういうの増えたよね。
自分の場合、ツンになる心理的要因になる過去の悲劇として使っちゃったんだけど、そういう手は確かにすこしずるいかも知れない。
しかし、今更止まれないので今回は、力不足ということでかんべんしてやってくださいorz

>>659
もう、何もいえませんww本当に感謝しております。ありがとう!
731Mr.名無しさん:2006/06/09(金) 03:55:19
キテタ
GJ!!
732Mr.名無しさん:2006/06/09(金) 12:36:36
萌えとかより普通に感動してる漏れガイル。
733Mr.名無しさん:2006/06/10(土) 00:59:30
保守
734Mr.名無しさん:2006/06/10(土) 01:24:06

  ∧_∧  +
 (0゜・∀・)   ワクワクテカテカ
 (0゜∪ ∪ +
 と__)_) +
735Mr.名無しさん:2006/06/11(日) 12:15:54
wktk
736Mr.名無しさん:2006/06/11(日) 18:44:18
age
737Mr.名無しさん:2006/06/12(月) 17:24:38
ほしゅ
738Mr.名無しさん:2006/06/13(火) 22:34:36
ほすっしゅ
739Mr.名無しさん:2006/06/13(火) 22:55:22
>>728
http://idz.skr.jp/1024kb/updata/idz2621.jpg
水野と八重樫
>>730
次が最後になるのかな?楽しみに待ちます。
740Mr.名無しさん:2006/06/13(火) 23:01:34
>>739
毎度毎度素晴らしいですなー
GJ
741Mr.名無しさん:2006/06/13(火) 23:04:45
キタコレ!
GJ!!
742幸福の扉act.6:2006/06/14(水) 06:13:15
日常が戻ってきた。
代わり映えのしない、いや、すこしだけ変わった、かけがえの無い日常が。

『幸福の扉』
act.6『それから』

「なぁなぁ。お前、八重樫さんと何かあった?」
「あん?」
「こないだも二人でどっか行ってさ。友達になったのは分かるけど。最近昼飯、絶対三人で食べてるじゃん」
そうだったかな。俺はすこし笑う。
「別に何でも無いよ。とにかくお前の思ってるようなのじゃない事は確かだな」
「それだけじゃねーよ!水野さんも最近おかしいじゃねーか」
「おかしいって、どこが」
「毎日お前に弁当作ってきたり、お前への対応も、どっかいままでと違う!」
宮崎は握りこぶしを作りながら断言する。
「おいおい、ボーイ。そんなこと、お前が気にすることじゃないぜ。」
おどけて俺は言う。
「悔しいなら、お前も弁当作ってくれる子探すんだな」
「もう、探したよ。けど、みんな断られた」
宮崎は憮然とした表情で机に伏した。何してんだよと俺は苦笑する。

「まぁ、変わったのかもな」
俺はそう言って立ち上がった。
「もう行くのか」
「おう。女子の着替えも終わったみたいだし。ほら、ぼちぼち戻って来てるみたいだから」
「あっそ、まぁせいぜい宜しくやれよ」
机に伏せたまま忌々しげに手をひらひらさせる宮崎を背に、俺は教室を抜け出す。
743幸福の扉act.6:2006/06/14(水) 06:13:56

辺りには思い思いの場所に散って行く生徒たち。がやがやとせわしなく声が聞こえる。

真昼の、初夏らしい明るい太陽がさんさんと光を投げかける。校舎の影でくっきりと色分けされた校庭が見えた。

廊下から眺める教室は窓が全て開け放たれて、気持ちのいい風が吹き込んでいる。

後ろから小さな包みを持った女子生徒二人が、笑いながら走り抜けて行った。



なぁ、宮崎。お前の大事な女の子が泣いてたら、何か抱え込んで、深く傷ついて、悩んで苦しんでたら、お前ならどうする?

選択肢な、

1.理由を聞く。で、解決させようとする
2.励ます。そんなんで悩んでんじゃねーよ。丸投げだな
3.自分も悩む。1と似てる気もするけど解決策を探す
4.とりあえず、抱きしめてキスする。何はともあれ、抱きしめてみる

なぁ、宮崎。俺はさ、1〜3辺りが正解だって思ってたんだ。だって、4とか解決になってないだろ?
でもさ、正解は4だったみたいだよ。
何の話かって?そんなこと、どうでもいいじゃないか。お前の気にすることじゃないさ。



ゆっくりと階段を上がる。屋上への扉は開放されていて、薄暗い校舎から見ると光の中へ入っていく扉のように思えた。
俺はそのまま光の中に一歩、踏み出す。
744幸福の扉act.6:2006/06/14(水) 06:14:39
「おっそい!」
光に目が眩んで立ちすくんで居る俺に罵声が投げかけられる。
「何してたのよ、結構待ったんだけど?」
そこには、髪をすこし短くした夏服の水野が腰に手を当てて立っていた。
「ごめん。女子、四限目体育だっただろ。着替えとかあると思ったんだ」
昼休み。俺はいつものように屋上に来る。
あれから、水野と八重樫と三人で昼飯を一緒に食べることが多くなった。理由は水野が俺と八重樫の分の弁当を作ってくれるから。
あの後、心配かけたお詫びにと、いつも購買食の八重樫に水野が申し出たのだが、『ついでに』俺の分も作ってくれているらしい。
「はい。宗ちゃんの分。今日のは自信作だから味わって食べなさいよね」
「さんきゅ、今日は八重樫は?」
「お呼び出し。なんか先輩みたいだったけど。結構かっこいい人だったよ?」
「そっか。今回は何点つくんだろうな?」
そう言ってクスクスと笑い合う。どうせOKが出ることは無い。みんなも半ば分かってることだ。
俺と水野はすこし日陰になった壁際に腰を下ろす。
「・・・もう、見に行かなくっていいの?」
ひとしきり笑いあった後、不意に目をそらして水野が言う。
ちょっと笑ってしまいそうになる。
「俺はもういいんだよ」
そんな寂しそうな顔されたらいじりたくなるじゃないか。
「杏子見てるほうが・・・・な?」
「えっ、そ、それって・・・・」
真っ赤になって狼狽する水野が凄く可愛く見えた。
「面白いし」
「馬鹿っ!」


745幸福の扉act.6:2006/06/14(水) 06:15:28

俺はさ、あの後色々考えたんだ。あの時、俺は何をしたんだろうって。
何度考えても何にもしてないんだ。
色々言いたいことはあったんだ。謝らなきゃいけないこともあったんだ。
けど、それはほとんど言えなかった。
助けてやりたいと思ったんだ。救ってやりたいと思ったんだ。
でもさ、それってやっぱり驕りだよな。結局自分を救えるのは自分自身なんだよ。
結局、傍に居てあげるだけでよかったんだよ。
自分が居るから相手もいる。人間は寄り添いながら生きるもんだ。
でも、他人と居ると痛い事だってある。永遠なんて無いから失う苦しみだってある。
それでも、人は寄り添うんだ。お互いに相手を自分の腕の中に包みながら。
あの絵、それ自体がアンタだったんだ。もしくは額縁だったのかな。そういえばアンタみたいな古臭い節くれだった額縁だったっけ。
今度もう一回見に行かないと。・・・・それにしたって、ひねくれ過ぎだと思うけど。
でも、俺はちゃんと分かったよ、アンタの願い。
なぁ、爺ちゃん・・・・



俺と水野は弁当を食べ終わった後、午後の授業をサボってしまうことにした。
並んで座ったまま、だらだらと会話しながら時間を潰す。
今日あったこと、友達のこと、家でのこと、テレビのこと。何でも無いことを、冗談を言ったり、時にはからかったりして。
そうして、不意に訪れる沈黙。
顔を見合わせて、笑う。そして自然に唇を重ねる。
唇を離すと水野は恥ずかしがってそっぽを向いてしまう。きっと顔は赤く染まっているのだろう。
そんな仕草がとんでもなく、いとおしく感じてしまう。
とりあえず抱き寄せて、もう一度キスする。
調子に乗るなばか、というような事を言われた気がするけど気にしないでおく。
746幸福の扉act.6:2006/06/14(水) 06:15:58



やっぱりさ、言葉は無力だっていうけど大事だと思う。でももっと大事なのは心だ。相手に伝えようとする心。言葉と、行動で示すんだ。
俺たちには、まだまだ問題は多い。蓉子母さんの事もあるし。でも俺は水野の傍に居たいと思ったから、一緒に居ることに決めた。
もう自分をごまかしたり、逃げたりしないでおく。
色々、真正面から向き合っていこうと決めた。水野の悩みや苦しみだって一緒に受け止めよう。

なぁ、母さん
人を愛するって大人になるってことだよな。
いつか、いつになるか分からないけど、あなたの目が覚めたとき時びっくりさせたいじゃないか。
きっとその時また俺たちは本当の家族になれるんだ。
なぁ、俺たちは成長してる?

俺は杏子と一緒に生きたいと思います。



初夏のさわやかな風が吹いていく。昼下がりの学校の屋上に、すっかり寝こけた二人の子供の姿がある。
寄り添って眠る二人の表情は、とても幸せそうで、安らかで。

『幸福の扉』END
747441:2006/06/14(水) 06:37:39
これにて完結

ツンデレがツンツンするにはそれなりの理由があるだろってことで書き始めたこれですが
結果的にツンデレ成分若干薄めになってしまいましたorz
でも、自分は後悔はしてません。それなりに楽しんで貰えたならうれしいです。

最後に、
ずっと挿絵を書いてくれた絵師さん
本当にありがとうございました。絵は全部保存して一生の宝にしたいと思います

GJと言ってくださったみんな、おかげで最後まで書き上げることができました

本当にありがとうございました(*_ _)人
748Mr.名無しさん:2006/06/14(水) 10:05:04
テトリスとメガの新作マダー?
749Mr.名無しさん:2006/06/14(水) 10:18:31
おっと誤爆
750Mr.名無しさん:2006/06/14(水) 11:25:30
>>441
お疲れ様です

>>748
雰囲気ぶち壊しだバカヤロー
751Mr.名無しさん:2006/06/14(水) 13:51:41
>>441
乙ンデレ!しっかりツン→デレに移行してるからそんなに気にする必要は無いよ
楽しく読ませてもらいました
>>748
何そのタイミング?
752Mr.名無しさん:2006/06/14(水) 13:57:06
お疲れ様でした。
まだ続いてる先生達もがんがって下さいな。
それ何てに匹敵する物語を期待してますよ。
753Mr.名無しさん:2006/06/14(水) 15:42:14
>>747
乙!!
そして激しくGJ!!!
いやー楽しかった。こんな妄想スレで読むようなレベルじゃないw

よかったら、また書いてみて欲しいもんだ。
754Mr.名無しさん:2006/06/15(木) 17:34:04
ほしゅ
755Mr.名無しさん:2006/06/15(木) 22:03:11
善処
756Mr.名無しさん:2006/06/16(金) 13:00:29
次の職人さん期待ほしゅ
757それぞれの冬 その1:2006/06/16(金) 14:27:38
「ヒグチ! のど乾いた。ジュース買ってきて」
 女王様であるところの森本夏咲(もりもとなつき)が命令する。それを聞いた樋口大(ひぐちだい)は危険を冒して校外のコンビニまで買い出しに行くのだった。
「ヒグチー! 肩凝った」
 ペットボトルをぐいっと一口飲んだら、今度は肩もみを要求する。もう、ほとんど樋口は夏咲専用の奴隷状態だった。
 もうこんな状態が一年以上続いている。

 初めての出会いは、中学二年のクラス替えだった。一年の時から、隣のクラスにかわいい娘がいるという噂は聞いていた。そして、二年の春に隣の席に座った娘、それが噂の人物である、森本夏咲だった。
 確かに噂通りの美人だった。
 ちょっとお金持ちのお嬢様風で、髪型から靴に至るまで清楚な感じでまとめられていた。そして何より、明るく社交的な性格だった。友達も多かったし、男子からもなにかと注目されていた。
 だから、樋口はなるべく関わらないようにしていた。
 初めて会ったときから惹かれていた。しかしキモ面とまではいかないが、ふつうより少し劣る容姿、それに図書委員で図書館にばかりいる暗い性格。などなど、諸条件を客観的に考えると、どう転んでも樋口にチャンスはないように思えたからだった。
 ところが、風薫る五月に事件は起きた。
 午後の授業中。快適な温度と湿度、それに伝説的なほど退屈な授業で、八割近い生徒が船をこいでいた。
 樋口もうつらうつらしていると、隣からすっと二つに折られたメモ用紙が差し出された。熊のキャラクターが右下に描かれた、かわいい紙だった。そして、女の子特有の文字で短く次のように書かれていた。
『放課後、部室長屋の一番奥の部屋に来て』
 あわてて隣を見ると、夏咲が表情を伺うような目で、樋口を見ていた。
 部室長屋というのは、体育館の隣にある建物で、各クラブの部室が入っている。図書委員の樋口は一度も行ったことはなかったが、平屋だったし安アパートのように扉が並んでいるはずだったから、迷うことはないだろうと思った。
 いったい、なにが待っているのだろうか?
 さっきまでの眠気は吹っ飛んでしまい、樋口は一人、難しい数式を前にしたかのように悩んでいた。
758ペッカム:2006/06/16(金) 14:43:46
知っていると思いますが、中国では日本の漫画、アニメ、音楽などが大人気
反日国ですが、若い女性は別ですよ 中華娘(クーニャン)は日本男性と付き合いたいと思っています
モテモテです ハーレムも夢ではありません 日本に行きたいという子が沢山います 
可愛いクーニャンを見つけたら、日本に行きたいのなら僕と付き会えば簡単、といいましょう
気に入った子をまとめて日本につれて帰ろう ちゃんと教育する事   
中華娘は働き者ですw   韓国も同じ  4〜5人で翻訳機もって中国にGO
759Mr.名無しさん:2006/06/16(金) 17:40:50
>>759
新作?
760759:2006/06/16(金) 17:51:59
ちょwww
痛恨のアンカーミス>>759>>757
761757:2006/06/16(金) 18:54:10
新作です。
というか、このスレで書くのは初めてです。
よろしくおつきあい下さい。
762Mr.名無しさん:2006/06/16(金) 19:18:32
>>761
新作乙
期待してるが、次からはsageでよろすく
763677:2006/06/16(金) 20:03:32
……言葉が出なかった。
漆黒の髪を春風に靡かせ、朗々と唄を紡ぐ彼女に――僕は見惚れていたのかもしれない。
いや、『かもしれない』という言葉は不要だ。

白状しよう。僕は、見惚れていた。
かつて、その美声と美貌でもって数多の船乗りを虜にしたといわれる、セイレーンのような彼女に……。

ギャルゲーならここでオープニングだよなぁ、と修さんから聞かされた雑学に思いを馳せつつ、僕は彼女の歌声を聞き続けた。
どこまでも澄んだ美しい声。姉さんの声とは一味違った魅力がある。
僕は、いつか彼女の歌声に合わせてギターを弾きたい。そう考えていた。
もし、この世に運命の神様が居るのなら、それはとてもお茶目で悪戯好きなお人なんだろう。

ああ、全てはこの屋上から始まったのだ。
764677:2006/06/16(金) 20:04:17
これも序章の一つなんだろう。

春の風に彼女のスカートが舞い上がったのも。

その中の凄くイイものをバッチリ見ちゃったのも。

唄を止めて振り返ってスカートを押さえた彼女が、僕を目撃したのも。

彼女の顔が真っ赤に染まったのも。

思考停止している僕に強烈な平手打ちを食らわしたのも。

咄嗟にウェットティッシュで顔を拭った僕を蹴り飛ばしたのも。

全ては、なにかのプロローグなんだろう。
……そう信じないとやってられない。
無口な娘って怒ると怖いんだなぁ、と思いつつ、僕は重い足取りで教室に戻った。
765677:2006/06/16(金) 20:05:24
S.H終了後、僕はそのまま楽器店へと向った。
大通りからちょっと脇に逸れた小道に位置する小さな店だ。

「いらっしゃ――おぉ、潤クンか。どうだい、試奏するかい?」

こじんまりとした店内には、店主の源ジイしかいない。
ここ、桑島楽器堂は、開店40年を超える老舗だ。
源ジイの気さくな人柄が好きで、僕は足繁く通っている。

ざっと店内を見渡して、僕は源ジイに話し掛けた。
「何か、新譜入りましたか?」
「うぅむ、特に珍しいものは入っておらんぞ」
それよりも外で客引きをしてくれ、とせがむ源ジイに、僕は苦笑した。
流石にタダでは引き受けたくない。
とりあえず、アコギの弦2セットで手を打って、僕は外に出た。
一度来たお客さんは、結構この店に通うようになるのだが、肝心の一回目が訪れにくい立地条件だ。
だから、大通りに看板を立て掛けてギターを演奏するという客引きを行う必要がある。
正直恥ずかしいけど練習練習。
766677:2006/06/16(金) 20:06:01
ストラップを肩に通し、ピックを片手に、さぁかき鳴らそう。
そう思って頭を上げると――
美しい黒髪、知的なつりあがった瞳、なによりもその透き通った声。
え〜っと……古里滝さん?

「なんでいる」
一目見てわかるほどの嫌悪と侮蔑の表情を浮かべて、僕を見据える古里滝さん。
やばい、怖い。

「え、ええと、僕はここの常連でね。今からここで客引きを――」
「帰る」
ちょ、ちょっと待ったぁぁぁ!
いや、たしかにタイミングは非常に悪かった。悪かったよ?
でもねでもね、かなり酷い。
有無を言わさず立ち去ろうとする古里滝さんを慌てて呼び止めて、僕は桑島楽器堂に向った。
767677:2006/06/16(金) 20:07:02
「いらっしゃ……なんじゃ、潤クンと要ちゃんか」
カナメって、誰?
「その呼び方……嫌い」
……ああ、古里滝さんの名前ね。

知り合いなのか。取敢えず僕は源ジイに席を外してもらって、古里滝さんに向き合った。

「……何?」
整った眉を片方だけ上げて、僕を見据える古里滝さん。
とりあえず、僕は誤解を解こうと口を開いた。
「いや、朝のこと何だけどね――」
「無礼」
華麗に一蹴。
この程度で負けてられない。すかさず、次の一手をパチンと放つ。持ち時間はゼロだったりして。なにこの理不尽。
「屋上の事なんだけどね――」
「変態」
一蹴どころかシャイニングウィザードを喰らっちまいました。
「ストーカー。覗き見。覗き聞き」
三連コンボ。ライフゲージが真っ赤赤。

それだけかと妙な迫力を持ってくる彼女に、僕は思わず頷いていた。
彼女は僕の返事に、満足そうに踵を返すと、雑踏の中に消えていった。
僕は、追いかける術も無く――っていうか、追いかける事が怖くて――彼女の後姿を見送っていた。
768677:2006/06/16(金) 20:11:46



>>441氏 大作お疲れ様でした。大変感動しました。
    次回作があることを願っています。

>>757氏 新作期待。続きが気になります。
769それぞれの冬 その2:2006/06/16(金) 22:12:29
 放課後。
 いつもなら取り巻きと一緒に帰るはずの夏咲は、一人そそくさと教室を出て行った。樋口は図書委員の仕事もあったから、いったん図書館に行って荷物を置いた。放課後、図書館の窓口業務は図書委員の生徒二人が行うことになっていた。
「悪いんだけど、ちょっと用事があるから行ってくるね。たぶんすぐ帰ってくるから」
 一年生の図書委員に仕事を頼み、樋口は部室長屋に向かった。
 部室長屋は体育館の北側にある、ウナギの寝床のような土地で、クラブ活動をしていない生徒はまず来ることはない場所だった。
 日当たりが悪いせいで地面のコンクリートには苔が生えている部分もあった。どの部室も全く同じ作りになっているのだろう。一定間隔で鉄扉が並び、たこ部屋のようになっているのだと思われた。
 よく見ると、鉄扉の上にクラブ名が書かれているプレートが貼ってあったが、それも部屋によってあったりなかったりだった。
 樋口はメモで指定されたとおり、一番奥までやってきた。鉄扉の向こうに話し声などはしない。
 鍵はかかっているのだろうか?
 そんなことを考えながら、ゆっくりとノブを回して扉を開けた。

 目が合った。
 そして、時間が止まった。

 夏咲は中腰で、上半身はブラジャーだけ。そして今まさに、スカートを膝まで降ろしていた瞬間だった。誰がどう見ても、これは体操着に着替える女子と、それを覗いている男子という構図だった。
「うわわわわ―――。ごめんなさい、ごめんなさい」
 樋口は外に退散しようとした。しかし、下着姿の夏咲は、樋口を逃がすまいとして、扉と樋口の間に割って入った。
 そして、夏咲は悲鳴一つあげずに、右手の人差し指を樋口の眉間に突きつけた。
「今日からヒグチはわたしの下僕だからね。もし反抗したら、覗き魔だって言いふらすから」
「そんな! 僕は呼び出されてきただけで、着替えてるなんてしらなかったし……」
「女子更衣室に入ってきて、知らなかったで通ると思うの?」
 言われるまで気づかなかったが、よく見ると四方の壁には縦長のロッカーが並んでいる。そして、いったん外に出てみると、扉の上には『女子更衣室』というプレートがちゃんと貼ってあった。
 完全にはめられたのだった。
 それ以降、夏咲と樋口は女王様と奴隷という関係が続いている。
770Mr.名無しさん:2006/06/16(金) 23:20:40
投下ラッシュ(・∀・)イイ!ね

続きwktk♪
771それぞれの冬 その3:2006/06/17(土) 20:53:41
 最近、夏咲のわがままがエスカレートしてきているな、と樋口は感じていた。中学三年の夏休みが終わり、季節は移り変わろうとしている。進路や成績、内申点など気にかかることは山ほどあった。
 そんなある日。放課後に学校を下見に行くからつきあうように、と夏咲から命令が下された。いじめられつつも夏咲への憧れが捨てきれない樋口は、夏咲の進学先が気になっていた。だから、二つ返事でOKをした(もっとも断る権利は認められていなかったが)。
「あのさ、森本はどこの学校受けるの?」
 放課後、学校から最寄り駅へと歩きながら、樋口は遠慮がちに尋ねた。
「これから行くから、すぐ分かるわ。問題なのは、学科なのよね……」
 最後の方は独り言のように夏咲がつぶやく。
「学科って、大学じゃなくて高校だよ? 普通科じゃないの?」
 樋口は当たり前の疑問を口にする。
「わたしね、小さいときからピアノやってるのよ。それで、本気でこの道を目指すなら、 高校から音楽科に進んだ方がいいと思ってるの」
 少し怒ったような口調だった。夏咲自身、自分の進路についてはかなりナーバスになっているのだろう。
「ま、ヒグチみたいに主体性がなくてフラフラしている人には、一生分からない悩みでしょうけどね」
 その捨てぜりふにカチンと来た樋口は、なんとか言い返してやろうと思ったが、次の瞬間不意に見せた夏咲の寂しそうな表情で勢いをそがれてしまった。

「着いたわ。ここよ」
 音大付属で名の通っている女子校に、つかつかと入っていく夏咲。果たして女子校の校内に入っていいものだろうかと、悩んで立ちすくむ樋口。
「なにしてんの? そんなところでウロウロしてると逮捕されるわよ」
772それぞれの冬 その4:2006/06/17(土) 20:55:00
 校門から数歩入ったところで夏咲がせかす。
「分かった今行くよ」
「それじゃあ、わたしはここで待ってるからね。ヒグチが事務室で学校案内をもらってきてちょうだい」
 学校内の食堂で、紙パックのコーヒー牛乳をすすりながら、夏咲がストローで事務室を指した。
「えっ、でもここって女子校だし。僕は一応男なわけで……」
 モジモジする樋口の耳元で夏咲がささやく。
「ヒグチ、わたしの下着姿覗いたでしょ。あんたは下僕なのよ。奴隷よ、ド・レ・イ」
「わかったよ、行ってくればいいんだろ」
「よろしくねー」
 あきらめて事務室に向かう樋口を、夏咲が悪魔の笑みで見送るのだった。
 事務室の人は樋口を見ても、驚かなかった。学校案内が欲しいと言うと、なんでもない顔で書類を一式渡してくれた。その理由は、学校案内を開いてすぐに分かった。
 T大学付属は女子校だったが、音楽科のみ共学なのだ。
773Mr.名無しさん:2006/06/17(土) 21:01:55
支援
774Mr.名無しさん:2006/06/17(土) 21:56:40
音楽科に行けと?
775Mr.名無しさん :2006/06/18(日) 11:02:37
捕手
776それぞれの冬 その5:2006/06/18(日) 17:58:02
「ふー」
 黄昏時の自室。開け放った窓から入ってくる風に当たりながら、ベッドの上で樋口は天井を見上げていた。
 中学生でいられる時間は、つまり夏咲といられる時間は半年を切っていた。たとえ下僕と言われようが、奴隷扱いされようが、それでも樋口にとっては夏咲はあこがれの人なのだ。
 出来れば同じ高校に行きたいと思っていたし、そのためになら勉強だって苦にならないと思っていた。
 しかし、音楽科となると話はまるで違ってくる。せめて同じ高校の普通科に入れればよかったが、女子校なのだからあきらめざるを得ない。
やはり別れは辛いが、今の自分では中堅の私立校に行くのが妥当だと認めるしかない。
 来年の今頃は、音楽仲間のイケメンくんと仲良くやっているのかと思うと、やりきれない悲しみがこみ上げるのだった。
777それぞれの冬 その6:2006/06/18(日) 18:01:32
 大久保成門(おおくぼなるかど)は、リトルリーグ時代からずっと野球を続けてきた。中学でも、一年の時から頭角を現し、上級生相手にレギュラー争いをしていた。
 そして、三年の夏が終わった。
 四番でピッチャー。大久保は二年の時からチームを引っ張り、全国大会を目指していた。しかし、最後の夏も後一歩及ばず、ついに引退する時が来た。
 中学最後の夏ということもあって、同学年の部員の中には引退で涙する者もあったが、大久保はあっさりしていた。
 当然高校でも野球はするし、今度は甲子園という大目標があるのだ。ここは一つの通過点に過ぎない。
 それよりも大事なことが大久保にはあった。卒業までに決まりをつけなければならない問題。
 それは、森本夏咲への想いだった。
 一年の時、初めて見た瞬間から特別な感情を持っていた。
 流れるような黒髪、白くきめの細かい肌、細長く可憐な指先。その一つ一つが、ふれると壊れてしまいそうなはかなさを醸し出していて、よけいに惹きつけられた。
 しかし、ライバルは多い。大久保は、得意の野球でエースになることで、学校のヒーローになり、学校中のアイドルである夏咲にふさわしい男になろうと思っていた。
 しかし想いは届かず、夏咲は依然としてアイドルのままだった。

 九月も終わりに近づいた頃。大久保は担任に呼び出されて、進路指導室に足を運んだ。
「大久保。あのな、A大付属に行く気はないか?」
 担任は、前置きもなしにそう切り出した。
「スポーツ推薦の枠があるんだ。おまえは野球部でずいぶん活躍したし、今年は全国大会に進んだ部もないからな」
 A大付属なら、野球もそこそこ強かったし、学校のランクも中の上といったところだ。申し分ない提案だった。
「親とも相談して決めます」
「おう。そうするのがいいだろう。もし推薦入試を受けるなら、今週中に返事をするようにな」
「はい。失礼します」
 進路指導室を後にして大久保はため息をついた。
 A大付属の推薦入試は受けるべきだろう。合格する自信も十分あったし、親だって喜ぶはずだ。
 問題なのは夏咲のことだ。なんとかして、A大付属に入ってもらいたかった。
778Mr.名無しさん:2006/06/19(月) 19:31:24
支援保守
779それぞれの冬 その7:2006/06/19(月) 20:49:25
「おはよっす」
 一年の時から親友の、樋口大の席に近づく。学校中が公認の、夏咲の奴隷くんだ。
「うん、おはよ」
「ちゃんと受験勉強してるか?」
 さりげなく、受験に話題を持って行こうとした。
「うーん。まあまあやってるよ」
「森本はどこ受けるんだ? やっぱり奴隷も連れて行くのか?」
 隣の席からこちらを向いていた夏咲に話題を振る。
「あー森本は―――。イテッ!」
 樋口の耳を、夏咲は思いっきり引っ張った。
「ヒグチ! よけいなこと言ったらただじゃ置かないからね」
「なんだ、森本はもう志望校決めてるのか」
「まだ決定ってわけじゃないわ」
 冷たく言い放つ夏咲の表情は、なんだか憂いを秘めていて色っぽかった。
「じゃあさ、A大付属なんてどうよ? 俺受けようかなって思ってるんだけど」
「大久保くん、A大付属うけるの?」
 横から会話に加わってきたのは、田辺愛美(たなべあいみ)だった。中学三年間、手芸部を続けてきた家庭的な娘で、おとなしく地味だが、夏咲とは仲がよかった。
「まだ受けるって決めたわけじゃないんだけどな」
 推薦の話は、口外してはいけないことになっていたので、大久保は言葉を濁した。
「それならあたしもA大付属受けてみようかな……」
 恥ずかしそうに、小さな声で愛美が言う。
「みんなで同じ高校に行けたら、楽しいと思わないか?」
「……そうね」
 夏咲の口調はいつもと違って、静かなままだった。
780それぞれの冬 その8:2006/06/19(月) 20:49:56
 夏咲には、なにか受験について思い悩んでいることがある。好きな人のことだから、大久保にはピンときた。
 ゆっくり時間をかけて自分の魅力に気づいて欲しかった。けれど、そのための時間はもう残されていない。
 卒業まで、あと半年。別々の高校に進めば、もうチャンスは永遠に訪れないだろう。
 深夜。三階建ての都営団地の一室。
 大久保は勉強の手を休めて、窓の外を見ていた。
 外は真っ暗で、窓は鏡のように大久保の顔を映している。よく日焼けした顔で、眉間にしわが寄っていた。ちょっと怖い顔だ。
 変化球は得意でない。投げるなら直球で勝負したかった。
「なあ、森本。今日の放課後、屋上に来てもらえないか?」
 翌日の休み時間。まわりに人気がないのを見計らって、大久保は夏咲に告げた。
 夏咲はちょっと驚いたような顔をして、それからにっこりとほほえみ、
「いいわよ」
 と短く返事をした。
781Mr.名無しさん :2006/06/20(火) 00:43:01
GJ!!
そして捕手
782Mr.名無しさん:2006/06/20(火) 00:56:12
だからageで保守するなと
sageでも保守は出来るんだと何度言ったら(ry
783Mr.名無しさん:2006/06/20(火) 01:05:16
投手
784Mr.名無しさん:2006/06/20(火) 09:03:18
じゃあ僕は三塁手だっ!
785それぞれの冬 その9:2006/06/20(火) 23:13:06
 放課後。
 大久保は先に屋上について待っていた。遅れること数分、夏咲が現れる。
「いい天気ね」
「単刀直入に言わせてくれ」
 大久保は天気の話につきあえるほど、余裕がなかった。
「俺は森本が好きなんだ。俺はスポーツ推薦でA大付属に行く。森本も同じ高校に行かないか?」
「……」
 夏咲は最初、一瞬だけ笑顔になり、その後急に表情を曇らせた。
 夏咲にとっては、男に告白させることは至上の喜びだろう。
それは何より、自分のアイドル性を裏付けてくれるのだから。しかし、素直に喜べない理由があるのだと大久保は思った。
「ごめん、わたしはA大付属には行けない」
「誰か、他に好きなやつがいるのか?」
「いないよ、そんな人――――」
 言いかけて、夏咲は言葉に詰まった。顔がみるみる赤くなる。
 なにも言わなくても、夏咲の気持ちは十分わかったと思った。誰か夏咲の心をつかんでいる男がいるのだ。

 教師たちは、受験というものは夏休みが勝負なのだと言っていた。そしてその舌の根も乾かないうちに、今度は二学期の内申点が重要なのだと言い出した。
 まあ、間違いではないだろう。夏休みを遊びほうけて、秋になってもなにもしなかった人たちだから、公立中学の教師などをしているのだ。
786それぞれの冬 その10:2006/06/20(火) 23:15:35
 樋口大は、特別将来に夢や希望を持ってはいなかったが、高校には当然行くつもりだったから、塾通いの他に、空いている日は図書館で勉強してから帰ることにしていた。
 十一月のどんよりと曇ったある日。放課後ついに、冷たい雨が降り始めた。
 一通り、帰宅する生徒がはけた頃、樋口は図書館に行く途中で玄関を横切ろうとした。
「ヒグチ、……傘」
 誰もいない玄関に、夏咲が立っていた。
「天気予報見てこなかったの?」
「ちゃんと傘は持ってきたの! でも、盗まれた」
 そういって、夏咲はほっぺたを膨らませた。
 外は雨、傘はない。そんな状況なのに、夏咲は実はあんまり怒っていないんじゃないかと思わせるような仕草をした。
「僕だって傘は一本しか持ってないよ」
「だったら、入れてってよ」
「それって、相合い傘じゃ――――」
「勘違いしないで! 濡れて風邪引いたらかわいそうだから、特別に入れてあげるんだからね」
787Mr.名無しさん:2006/06/21(水) 08:22:04
乙ンデレ。
高飛車型ツンデレも亦佳し。
788Mr.名無しさん:2006/06/21(水) 16:00:53
ツンデレ分が少ないんだけど投下してもいい?(ってまだ完成してないけど)
789Mr.名無しさん:2006/06/21(水) 16:05:51
萌えられればぶっちゃけなんでもおk
だからいちいち需要なんか聞くな(;^ω^)
790Mr.名無しさん:2006/06/21(水) 16:15:05
>>789
正直萌えられるかすらわからん。とりあえず投下してみる
791Mr.名無しさん:2006/06/21(水) 16:17:14

告白

俺はその言葉にいい思い出が無い。されたことがないから片方の気持ちしかわかんないけど。
されたことはないけどしたことならある。たった1回、大好きだったあいつに。
ただ、それは・・・なんだか、俺のイメージと違っていた。俺が思うに、普通の告白ではなかったと思う。
なぜって?それは----


春。


俺は高校生になった。環境の変化とかなんたら言ってるおっさんたちがいるけど、さほど変わった気はしない。
中学の時から仲の良い奴らとも(悪友じゃないぞ、ちょっとハジけてるだけだ)同じ学校に進学した。
男の友人だけでなく、女の友人も仲良く進学。その女の中に---由香がいた。小学校のころから仲の良い奴だ。
背はそんなに高くなくて、髪は肩に掛かるか掛からないくらい。顔は・・・主観による考察は偏りがでるので割愛。

いつからか仲の良い友人の枠には収まりきらなくなっていたんだが・・・ヘタレな俺は、告白する勇気が無かった。
それでいいんだ、と自分に言い聞かせてた。本音は告白なんかして、関係が崩れるのが恐かっただけなんだけど。



形あるものは-------たとえそれが目に見えないものであろうとも-------いつかは壊れる。



そのことを俺は、身をもって体験することになった。
792Mr.名無しさん:2006/06/21(水) 16:18:59
おっさんたちのかったるい話しかない入学式も終わり、一旦自分のクラスに集合との指示があった。
入学式に遅れそうになり焦っていた俺は、クラス名簿が張り出してあったことに気がつかなかった。
これから生活を共にする奴らなんだし一通り見ておくか、と思って立ち止まり、ものすごい数の名前を一つ一つ確認していく。

「おー!くぼじゃんか!」
小学校時代からのあだ名を呼ばれ、振り向いた先には-----
予想通り、中学時代からのあくy・・・じゃなかった学友が。その中でも俺といつもいっしょにいた2人が並んでいた。

「なんだよ、まだクラス名簿見てなかったのー?俺なんか朝一番に来て確認したのにw」
森は言った。こいつはやたら常にハイテンションなバカだ。やたらトラブルに巻き込まれる奴。

「そりゃお前がただのお祭り好きなバカなだけだろ、森。」
平野から手厳しい言葉。森は胸をおさえてorzのポーズをしている。本当にバカだ。

「くぼは俺たちといっしょだよ。ほら。」

立ち直った森の指をさした方向には俺たちの名前が。

1年4組;平野 良太
    
1年4組;松田 竜彦

1年4組;森 大輔


ふと、クラス名簿を見上げる。何故かそこに目がひきつけられた。

1年4組;落合 由香

俺は2人に気づかれないように小さくガッツポーズをした。
793Mr.名無しさん:2006/06/21(水) 16:20:44
まだここまでしかできてないんだけど。これからやっと女がでてくると思う。
794Mr.名無しさん:2006/06/21(水) 16:36:04
支援
795それぞれの冬 その11:2006/06/21(水) 20:36:02
 夏咲と並んで、下校する。樋口にとっては夢のような展開だった。ふつうだったら、三歩下がって影を踏まず、で行かなければならない場面だったから。
 樋口の家は、夏咲の通学路の途中にあった。だから、家の前で別れて、傘だけ貸すことになるだろうと思った。しかし、樋口の家まで来たところで、夏咲は思わぬことを言い出した。
「靴が濡れて冷たい。ヒグチん家、寄っていくからね」
 あっけにとられている樋口を置いて、一人玄関へと歩み寄っていく夏咲。
「ヒグチー、鍵閉まってる」
「あ、ああ。今開けるよ」
 樋口は財布から鍵を出して玄関戸を開けた。両親が共働きの家庭だったから、基本的に昼間は人はいない。
「へー。ヒグチん家って、思ったより片づいていて綺麗だね」
「僕の部屋は二階だから」
 放っておくと、家中探索されそうなので、樋口は自分の部屋へ夏咲を通した。
 学習机に本棚、それと反対側に置かれたベッド。こぢんまりとした六畳間は、ごくごくふつうの子供部屋だ。
 夏咲は床にぺたんと座り、濡れた黒いハイソックスを脱いだ。座って膝を立てるから、自然とスカートがめくれあがる。
「コラッ! パンチララインに立つな!」
「見てないよ!」
「それよりタオル取ってきて」
 ここに来て、急にいつもの夏咲女王様が出てきた。それは安心したような残念なような、樋口を不思議な気持ちにさせた。
 階段を駆け下りて、バスルームの床下収納から新品のバスタオルを取って部屋に戻る。
796それぞれの冬 その12:2006/06/21(水) 20:37:53
 ――しまった! はめられた。
 部屋の真ん中で、ベッドの下に隠してあったエロ本を広げてにんまりとしている夏咲。
「へー、ヒグチってこういうのが趣味なんだぁ。意外とむっつりスケベなのね」
「それは、その、あの……」
「しかしベッドの下に隠すとは古典的だね。見つけてくれと言わんばかりじゃない。あー 明日の学校が楽しみだなー。みんなヒグチの趣味聞いたらどんな顔するかなあ」
「そんな! 誰だって秘密の一つや二つあるでしょ? プライバシー守ってよ!」
「よーし。それじゃあじゃんけんで勝ったら黙っててあげる」
 夏咲にしてはおとなしい提案に、樋口は胸をなで下ろす。しかし、次の瞬間には恐ろしい展開が待っていた。
「野球ぅーするなーらー――――」
「ちょっと待ってよ! それって野球拳じゃん!!」
「当たり前でしょ、なんだと思ってたの?」
 勝っても負けても、地獄絵図が待っているような気がした。樋口に出来ることは、勝ち負けをうまく調節して、タイムアップを待つことだけだった。
 しかし、夏咲はめっぽうじゃんけんが強かった。
「リーチ!」
 樋口がパンツ一丁になっているのに、夏咲はカーディガンと赤いスカーフを外しただけだった。
「もう終わり! 僕の負けだよ!」
「それじゃあ、高校になってもわたしの下僕になるって誓ったら、許してあげる」
「下僕でも奴隷でもパシリでもいいです」
「うむ。よろしい」
 満足そうにうなずく夏咲。
 その後約一時間。パンツ一丁の僕を相手に、夏咲はやたらとハイテンションで騒いで帰って行った。
797Mr.名無しさん:2006/06/21(水) 20:50:37
S系ツンデレ期待
798それぞれの冬 その13:2006/06/22(木) 21:09:33
 翌日。
 秋雨前線は日本列島を離れ、朝から気持ちのよい天気だった。
 水たまりをよけながら登校し教室に入ると、誰かが窓を開けていたようで、涼しく心地よい風が廊下へと吹き抜けていた。
 隣の夏咲はまだ学校に来ていない。とりあえず、夏咲より先に登校して、情報漏洩を防ぐという作戦は順調だった。
「やあ! ロリコンのヒグチくんおはよう」
 ガラガラっと教室の扉を開けて入って来るなり、夏咲は大きな声でそう言った。
「えっ、やっぱりそうだったの!?」
「なーんだ。仲間じゃーん」
「樋口くんって不潔」
 教室中が騒然となる。
「田辺は信じてくれるよね?」
 思わず前の席に座っている愛美に救いを求める。
「……」
 田辺は丸い縁なしメガネの奥で、目をぱちぱちさせて苦笑いしていた。
 樋口のささやかな作戦は、もろくも失敗に終わった。
799それぞれの冬 その14:2006/06/22(木) 21:11:55
 その日は一日中、『ロリコップ樋口』と教師にまで呼ばれた。
 放課後。玄関のところに行くと、夏咲が昨日と同じところに立っていた。
 昨日は気づかなかったが、そこは樋口の靴箱がある棚で、夏咲の靴箱は隣の通路にあるはずだった。
「僕になにか用事?」
「昨日の傘返してあげるから、取りに来なさいよ」
 いつもの勢いある命令口調とは違って、小さくて自信のなさそうな声だった。
「あ、うん。……取りに行くよ」
 夏咲の口調には、奴隷なんだから自分で取りに来なさい、というニュアンスは含まれていなかった。むしろ、家に招待しているような感じさえ受けた。
 夏咲と肩を並べて、すっかり紅葉した公園を歩く。木漏れ日が筋になって地面を照らしている。樋口はなんだかアニバーサリーの歌詞みたいだな、と思ってちょっとはにかんだ。
800Mr.名無しさん:2006/06/22(木) 21:21:50
デレまでのタメがとってもいい希ガス
801Mr.名無しさん:2006/06/23(金) 05:58:33
続き期待!
802Mr.名無しさん:2006/06/23(金) 09:29:36
デレキター
803それぞれの冬 その15:2006/06/23(金) 22:42:12
 夏咲の家は、学校からみて樋口の家を通り過ぎたところにある。お屋敷とまでは行かないが、東京の一等住宅街でこの大きさの一戸建ては珍しい。
 門の鍵からして、ナンバーロック式になっていた。
「なにぼんやりしてるの? 早く入りなさいよ」
「う、うん」
 築二十年のウサギ小屋に住んでいる樋口は、ちょっと気後れする。
 玄関は、三和土だけでも樋口の家の三倍くらいの広さがあった。
「あの、傘は?」
「せっかく来たんだから、お茶くらい飲んで行きなさいよ」
「うん」
 なんだかいつもと勝手が違う。樋口は玄関の隅の方で靴を脱いで、家に上げてもらった。
「わたしの部屋、廊下の奥の右側だから。先に行ってて」
 長く、普通より幅も広い廊下には、一定間隔で小さな水彩画が掛けてあった。どれも果物をモチーフにしたもので、ちょっとクラシックな感じがして、洋館風の夏咲の家に似合っていた。
「ここ、かな?」
 白木の扉に、『必ずノックすること!』と書かれたボードが下がっている。
 樋口はおそるおそる扉を開けた。
804それぞれの冬 その16:2006/06/23(金) 22:45:07
 夏咲の部屋は白とピンクを基調としてまとめられていた。部屋の左側には床から天井までの作りつけの洋服ダンス、本棚があり、その奥にしゃれた机があった。
 部屋の奥には出窓があり、薄いピンク色のカーテンが掛かっていて、同系色のミニコンポが置いてあった。そして、右手前にはベッドがあり、ベッドカバーもカーテンと同じ色で合わせてあった。
 生活感は、あまりしない。どちらかというと住宅展示場のモデルハウスのようだと樋口は思った。
 部屋の中を一回りしたが、夏咲が来る様子はない。樋口の視線は自然と、机の引き出しに向けられる。プライバシーの侵害だから、見てはいけない。そう思う一方で、のぞいてみたいという欲求も高ぶっていた。
 そこで、樋口は一つの妥協案を思いついた。
 鍵穴の付いている一番上の引き出しを引っ張ってみよう。鍵がかかっていて、開かなければあきらめる。もし開いていたら、ちょっと中を拝見しようと。
 おそるおそる、取っ手を引く。
 引き出しは音もなく開いた。そして中には――――。
805Mr.名無しさん:2006/06/23(金) 22:59:48
中にはああああああああああ????
何があったんだあああああああああ????????
806Mr.名無しさん:2006/06/23(金) 23:52:22
王道突っ走ってるなwwww
807Mr.名無しさん:2006/06/24(土) 09:53:47
なにこの引き
物凄い気になるんだけど
808それぞれの冬 その17:2006/06/24(土) 13:44:28
「あ――――っ!! なにしてんのよっ!」
 ティーセットを持って入り口に立っている夏咲が叫んだ。
「森本の意外な趣味発見しちゃった」
 樋口の手には、綺麗に一つずつ潰されたプチプチくんが握られていた。
「意外だなー。明るくて社交的な森本が、夜な夜な部屋でプチプチくんを潰していたなんて」
 みるみる夏咲の顔が赤くなる。
 そして、ティーセットを床に置くと、夏咲は樋口からプチプチくんを取り上げようと、飛びかかってきた。樋口は取らせまいとして、高くかかげる。
 夏咲は樋口の腕を抱いて、プチプチくんに手を伸ばした。その拍子に二人の足はもつれ、夏咲が押し倒す格好でベッドに転がった。
胸と胸が合わさって、夏咲の鼓動が響いてくる。
 一瞬と呼ぶには長すぎる時間、二人はじっとしていた。それから、急に我に返った夏咲は上半身を起こして、
「このこと学校で話したら、樋口に襲われたって言うからね」
 と強がりを言ったのだった。
809それぞれの冬 その18:2006/06/24(土) 13:47:55
 街がクリスマスのネオンで飾られる師走。
 田辺愛美は、全国模試の結果を前に、担任との進路面談に臨んでいた。愛美の第一志望はA大付属だった。親は私立でも、本人が望むならかまわないと言ってくれた。
 それになにより、A大付属は大久保成門の進路先でもある。大久保と一緒の高校に行きたいという気持ちは、愛美の中で日に日に大きくなっていた。
「田辺は相変わらず成績いいな。もうちょっと上が狙えるんじゃないか?」
 担任はタバコとコーヒーの混ざった、くさい息を吐いた。口元に見える黄色い歯が、地下道の浮浪者を連想させる。
「あたしは、その。そんなに勉強好きじゃないし。あんまり頭よくないし……」
 それは謙遜ではなく、本音だった。
 中学で習うような内容なら、ちょっと努力すればいくらでもごまかしが効く。努力するのは当然で、その上で本当の能力を試されればボロが出るのは目に見えていた。
「しかしなあ。おまえの成績だとA大付属の順位では一位だぞ。偏差値的にもぶっちぎりだ。もう一度、よく考えてみろ。一生の問題だからな」
 担任は恩着せがましくそう言って、愛美の肩に手を置いた。
「はい。考えておきます」
 さすがに手を払いのけはしなかったが、愛美は一方的に話を打ち切って立ち上がった。
810それぞれの冬 その19:2006/06/24(土) 13:50:26
 愛美にとっては初恋だった。
 夏咲に誘われて野球部の試合を見に行った時から始まっていた。強豪を相手に、チームメイトが弱気になっている場面でも、大久保は一人力強いフォームで投球を続け、野手に頼らず自分で三振を取った。
 愛美はスポーツは得意ではないし、それほど興味もなかった。しかし、大久保の投球フォームは本当に美しいと思った。
 無駄がなく鍛えられた体がしなり、小さなボールを百キロ以上の速度で投げる。それはもう芸術的だと感じたのだった。
 A大付属以外を受けるということは、つまり大久保との別れを意味するのだ。
 しかし担任のことだから、まず両親を説得するくらいのことはするだろう。それらの妨害を振り切って自我を通せるのか。愛美には自信がなかった。
811Mr.名無しさん:2006/06/24(土) 15:27:06
イイヨイイヨー
812Mr.名無しさん:2006/06/25(日) 09:15:22
保守る必要は無いがあえて保守
813それぞれの冬 その20:2006/06/25(日) 15:40:31
 今年はなにもないクリスマスだったなあ、と勉強机でため息をついたのが先週のこと。気が付けば正月になっていた。
 新年の挨拶をして、おとそを飲み、おせち料理をつつき、送られてきた年賀状を眺めているとインターフォンが鳴った。
「愛美、出て頂戴」
 母は台所で洗い物をしていた。代わりに愛美が廊下のインターフォンを取る。
「あ、夏咲ちゃん!」
 白黒のモニターには、夏咲のアップが映っていた。後ろには樋口と大久保の姿も見える。
『やっほー! みんなで初詣行こうよ』
「うん、今行く。ちょっと待ってて」
 階段を駆け上がり、自分の部屋からコートを取る。
「ちょっと、どこか行くの?」
 台所から、母の声がする。
「うん。夏咲ちゃんたちと初詣行ってくる」
 スニーカーをつっかけて、急いで外に出た。元旦の空気は乾燥していて、頬にピリッと来た。
「お待たせ!」
「寒かったぜ。早く神社行って、甘酒でも飲もう」
 みんながそれなりにおしゃれをしている中、一人薄汚れたジャンパーにくたびれたジーパン姿の大久保が身震いをした。
 近所にある普段は無人の神社に行った。夜中に来た人のためにたき火をしたのだろう。すっかり燃え尽きた炭から弱々しく煙が上がっていた。
「それじゃあ、志望校合格を祈願して」
 樋口が小銭を賽銭箱に投げ入れた。続いて愛美たちも投げ入れて柏手を打つ。
 愛美は横に立っている大久保の姿を見た。今大久保はなにを願っているのだろうか。
 親のいうとおり、都立の上位校をねらうべきか、それともA大付属に行くべきか。神前に立って、まだ自分の気持ちが整理されていないことに焦りを感じたのだった。
「ついでだから、絵馬でも奉納しないか?」
 大久保の提案で、臨時の社務所で絵馬を買って、それぞれ願い事を書いた。
「森本はなに書いたんだ?」
 のぞき込む大久保から絵馬を隠して、
「見たら殺すよ」
 と夏咲はにらんだ。
 ああ、そうなんだ。大久保くんが好きなのはやっぱり夏咲ちゃんなんだ。
 じゃらけあう二人を見て、愛美は大久保の気持ちが夏咲に傾いていることを知った。
814それぞれの冬 その21:2006/06/25(日) 15:42:34
 せっかく集合したのにこのまま帰るんじゃもったいないということになって、四人は駅前のファーストフードに立ち寄った。
 正月の朝ということもあって、客も従業員もほとんどいなかった。愛美と夏咲は紅茶を、樋口はホットコーヒーを、そしてなぜだか大久保はコーラを注文した。
「田辺はいいよな。もう勉強しなくても入れる高校はいくらでもあるだろ?」
「そんなことないよ。まだ過去問とか終わってないし……」
 第一、志望校がかたまっていないのだ。そういう意味では、今日集まった四人の中では一番準備が遅れているのかもしれない。
「大久保くんは、なんでA大付属なの?」
 出来れば第二希望を聞いてみたくて、田辺から話しかけた。
「いや、レベルもそこそこ高いし、野球部も強いしな。大学もあるから野球やるにはいい環境だと思ったんだ」
「そうなんだ……。やりたいこと、はっきりしてて偉いね」
 しばし、受験を忘れて語り合う。愛美にとって、これ以上ないお年玉だった。

 三学期は学校はそっちのけで、自分の部屋で机にかじりついて勉強する孤独な日々が続いた。正月に話した時、みんながそれぞれの道を歩もうとしているのだと感じた。
 寂しいことだが、愛美には愛美だけの人生がある。そして、誰にも頼らずに一人で歩かなければならないのだ。
 受験校のことを考えると、吐き気さえする状態が続いたが、愛美はついに決心した。
「お母さん、あたし都立のN高受けるよ」
 数ある都立高校の中でもトップクラスの高校だった。
「あら、やっと決心がついたのね。お父さんも喜ぶと思うから、報告してあげなさい」
815それぞれの冬 その22:2006/06/25(日) 15:44:38
 志望校を決めてから、受験までは早かった。
 過去問を中心に勉強していると、あっという間に二月も終わろうとしていた。
 合格発表日。愛美は一人でN高に来た。受験票を片手に、掲示板に近づく。自分の番号の近くだけ見ればよいのだが、なんだか見るのが怖くて、最初から順に一つずつ丁寧に見ていった。

 あった。

 愛美は見事合格していた。
 その瞬間、涙がこぼれてきて止まらなくなってしまった。自分の中学生時代は終わった。大久保との別れが決まった。
 次々と悲しいことが思い浮かんで、何分たっても涙が止まらなかった。
816Mr.名無しさん:2006/06/25(日) 16:12:10
切ないな・・・
817Mr.名無しさん:2006/06/25(日) 17:29:25
受かったのにな…
818Mr.名無しさん:2006/06/25(日) 20:31:00
( ´;ω;)
非処女はレイプすると貞操よりも命の心配するからサッパリ萌えない。
その点処女はとにかく貞操の危機感が丸出しでマジ萌える。
処女にレイプでトラウマを与える。 これってある意味芸術。
処女をレイプする時「いただきま〜す」って言う。
「ぞうぞおあがりなさい」って言ってくれるまで殴る。殴りつづける。
言ってから挿入して精神的には和姦にしてやる。
女にやがて彼氏ができたり家庭を持って子供ができたりした時、
日常生活で食事のたびにレイプでの処女喪失を思い出す。 間違いなく芸術。
挿入後には歌を聞かせてやろう。
クリスマスソングやバースディソングを唄いながらのレイプなんてもう最高。
毎年そのシーズンに処女のままレイプされた事を思い出す。
町中がネオンで輝けば破瓜の痛みが心をチクリ。 これぞ芸術。
強制フェラをさせながら 「愛してる、好きだよ」と何度もささやくなんてのもポイント高め。
やさ男とのまともな恋愛(?)をしても何かの拍子にこれを言われたら処女喪失と
強制フェラを確実に思い出す。 これぞ芸術の中の芸術。
もちろんフィニッシュは中出し。これ最強。
逝く時は「僕達の子供出来るよね?僕達の子供、ずっと大事にしようね。名前も決めよう」と
何度も繰り返す。結婚した後、ダンナにこんなこと言われたら漏れとの
激しい処女喪失&中出し&妊娠を思い出す。既にそれは芸術アカデミー。
そして、レイプされた女がその事を男に告るのがまた萌える。
話を聞いた彼氏は怒りと悔しさでプルプル拳を震わすに違いない。まさに至高の芸術。
そんな彼氏に一生懸命理解を求める姿がまたいい。これはもう男として最高の栄誉。
レイプで処女を喪失したことを彼氏に告る事で自分を維持していこうという姿勢と
一緒に乗り越えようとか言ってる二人の姿はまるで傷ついて飛べなくなった小鳥たちのようだ。
芸術の殿堂とはまさにこのこと。
819Mr.名無しさん:2006/06/25(日) 20:33:15

そろそろ予定調和のネタに入ろうか
どれがいい?

・学歴
・レイプ
・幼女/姉/妹
・肉便器
・嫌韓
・DQN

820Mr.名無しさん:2006/06/26(月) 09:18:16
>>818
コピペ乙
>>819
必要無かろう
821Mr.名無しさん:2006/06/26(月) 11:42:17
ログ長い間うpしてなくて正直すまんかった
822Mr.名無しさん:2006/06/26(月) 13:44:16
>>821
まとめの人?
GJ!
823Mr.名無しさん:2006/06/26(月) 21:10:38
乙乙
824それぞれの冬 その23:2006/06/26(月) 21:24:42
 午前四時半くらいだったと思う。樋口は夢うつつで、携帯の着信メロディーが流れたような気がした。
 その音楽が、電話の着信なのかメールの着信なのか考えているうちに、なんとなく目が覚めてた。
 上半身を起こして、枕元の携帯を手に取る。メールが来ていた。
『大至急、窓の外を見なさい!』
 送信者の欄には、森本夏咲とあった。
 あわてて、樋口はカーテンを開けた。家の前の通りには、MTBにまたがった夏咲がいてこっち見上げていた。
 降りてきなさい。
 夏咲がジェスチャーを送ってきた。
 樋口はあわててパジャマを着替え、ジャケットを着込むと、音を立てないように注意して外に出た。
「どうしたの? こんな時間に」
「いいところに連れてってあげるから、早く自転車にのってよ」
 夏咲はサドルを指さしている。
「あのー。つまり僕が漕いで、森本が後ろに立つのね」
「当たり前でしょ。女の子に乗せてもらうつもりだったの?」
『あきれた人ね』といわんばかりの口調だった。
「じゃあ、しっかりつかまっててね」
 樋口が運転し、後輪のハブに足を乗せた夏咲が、樋口の肩につかまる。
「どっちに行けばいいの?」
「川崎街道をずーっと走って!」
 だんだんと夜も白けてくる。街路灯の灯りよりも、周りの方が明るくなり、景色が見渡せるようになってきた。
「急いで! 間に合わなくなっちゃう!!」
 夏咲が耳元でせかす。
「了解!」
 ギアを一段上げて、体重をかけてペダルを漕ぐ。
 二十分くらい漕いだだろうか。もう関戸橋を過ぎて、聖蹟桜ヶ丘まで来ていた。
「次の信号、左!」
「りょうかーい!」
 左に折れて小さな橋を渡ると、すぐにつづら折りの坂道が待っていた。ギアを一段、また一段と落とすが、最後には徒歩より遅くなってしまった。
「ほら、しっかり漕いでよ!」
 飛び降りた夏咲が後ろから樋口を押す。
825それぞれの冬 その24:2006/06/26(月) 21:28:57
「ここよ」
 三回目のヘアピンカーブで、夏咲は足を止めた。カーブの外側に、小さな公園がある。
「ここ?」
 一人先に公園に入っていく夏咲を、樋口も追いかけた。
「これって――――」
 その景色に、樋口は言葉を失った。
 手前には聖蹟桜ヶ丘のデパート、そして多摩川。遠くには新都心の高層ビルまで見えている。そして、地をはうように街を覆い尽くしている朝靄。
「そう、例のアニメのモデルになった場所。わたしの宝物」
 しばらく、二人とも幻想的な景色に見とれていた。
「あのね、わたし大に言わなきゃならないことがあるの」
 夏咲は初めて樋口のことを名前で呼んだ。
「悔しいけど、わたしは大が好き。自分でも不思議なんだけど、二年になって、隣に座った時からずっと好きだった。
 わたしは周りから、しょっちゅうちょっかいを出されてきたから、それが当たり前なんだと思ってた。
 男子が告白しに来るのが快感だったの。でも、大は違ってたね。いつもなんでもない顔して隣に座ってた。
 だから消しゴム隠して、授業中困ってる大にもったい付けて貸してあげたりしてたの。
それでも無視されたから、もう頭に来ちゃって。着替えを覗かせて弱みを握ってやろうって。
そういうわけ。ごめんね」
 夏咲はちょろっと舌を出した。とても寂しそうな表情で。
826それぞれの冬 その25:2006/06/26(月) 21:31:00
「そんなことで謝らないでくれよ!」
 樋口は夏咲を抱きしめた。
「二年間、いじめられても、虐げられても、夏咲に憧れ続けてたのは僕なんだから」
 感極まって、涙が出そうになった。
「うれしい。でもね、言っておかなきゃならないことがあるの。わたしね、やっぱりT大付属の音楽科に行くことにしたよ。だから今までの関係は解消ね。高校行ったら、きっとかわいい子がいて、大もつられちゃうんじゃない?」
「それなら心配いらないよ。僕が行くのは男子校だから」
「ホント!?」
「ああ、本当だよ」
 夏咲がギュッと抱きついた。
「じゃあ、春にはお花見に行こうね。夏には花火やプールに行こうね。週末には公園でのんびりしようね」
「ああ。中学で出来なかったこと、少しずつやっていこう」
 雲の間から朝日が昇り、強烈な金色の光線が二人を照らし出した。
 樋口は夏咲への気持ちを、力強く昇ってくる朝日に誓った。


        どっとあれい。
827Mr.名無しさん:2006/06/26(月) 22:23:07
完結かな
毎日乙ですた
828Mr.名無しさん:2006/06/26(月) 22:44:32
( ´;ω;)俺結婚したくないけど子供が欲しい
自分の子供を小学校6年生くらいになるまで手塩にかけて育てて
卒業式の日中学にあがれる期待と喜びに心を躍らせて帰ってきた娘を
自分の部屋に呼んでいきり立ったちんぽを見せて「この日を待っていたんだよパパは・・・」
って言って娘を押し倒して狂ったように突きまくりたい
829Mr.名無しさん:2006/06/26(月) 23:11:01
乙でした

しかし、なんか唐突に終わった感が否めない・・・
830Mr.名無しさん:2006/06/26(月) 23:40:44
いまふと思ったんだが樋口と夏咲って
車輪か、賢ちゃんなっちゃんかな
訳判らなかったらスマン
831Mr.名無しさん:2006/06/27(火) 08:58:24
ぼくは灯花がすきです
832Mr.名無しさん:2006/06/27(火) 15:30:48
完結か?打ち切りぽいふいんきだが…
もう一組の末路も気になる。
833Mr.名無しさん:2006/06/27(火) 20:58:26
一応、この話はこれで終わりです。
確かに、打ち切りっぽい終わり方かもしれませんね。
でも、受験生の冬ってこんな感じだったと思います。
私事になりますが、ダンゴムシの分際で、好きな子がいて、
後何分か話したいなと思っているうちに学校が休みに
入ってしまい、一ヶ月後に顔を合わせるのは卒業式。
当然、卒業式で親友たちと記念撮影をしている子に
話しかけられるわけもなく、金輪際お別れ。
今でも、時々その頃の夢を見ます。
834Mr.名無しさん:2006/06/28(水) 03:49:26
作者自身の告白が一番切ない件
835Mr.名無しさん:2006/06/28(水) 19:20:53
>>833
おまおれ
836Mr.名無しさん:2006/06/29(木) 18:53:08
切ない保守
837Mr.名無しさん:2006/06/30(金) 23:44:44
過疎で悲しい保守
838Mr.名無しさん:2006/07/01(土) 11:16:31
保守
839Mr.名無しさん:2006/07/01(土) 14:25:14
>>833
全米が泣いた
840Mr.名無しさん:2006/07/02(日) 03:51:34
「こんな風になれたらなぁ」

つい独り言を嘆く。
今世間でもそれなりに話題になっているであろう、W杯の事だ。
テレビに映し出されている選手達を見ているとつい口から本音がこぼれた。
もちろんその独り言に反応する者などはいない。
一緒に見る彼女などはもちろんいるはずもなく、家族はもっぱらの野球好き。
日本代表などは熱心に応援していたが日本代表が負けてしまった以上
関心も薄れてしまったらしい。
今ではすっかり巨人が何連敗だのと話題は野球に移っていくようになった。

「うおおおおっ!すげえ!」
一人で見てるにも関わらず決定的シーンになると思わず叫んでしまう。
そしてつくづく憧れる。そう、まさに憧れなのだ。
目標などとは口が裂けても言えない。
なぜなら高校に入ってからサッカーを始めたからである。
簡単に言うと下手なのだ。
一年の頃はろくに玉も蹴ることができなかった。
ちなみに小学校の時は少年野球をやっていたが
大会で大きなミスをしてしまい気まずくて辞めてしまった。
そしてそのまま中学校は帰宅部だった。

こうして自分はスポーツとは無縁の人間なんだと思いつつ過ごしてきたが
きっと今思えば四年前のW杯で今の気持ちが生まれたんだと思う。

あの頃は気づかないふりをしていたけどきっとそうだと言える。
841Mr.名無しさん:2006/07/02(日) 03:53:59
高校に入った時、テニス部とバスケ部が強い高校だと知った。
サッカー部が二年生しかいない事を知った。
人数が足りなくて試合にも出れないくらいの弱小部。
こういった環境のせいもあるのだろうがそれ以上にサッカー部の勧誘紙を
見たときに四年前の感覚が鮮明にフラッシュバックした。

「草太、W杯見に行くぞ!日本を応援だ!」
急に何を言い出すのかと思った。だが握りしめてるチケットを見て呆然とした。
もの凄い競争率であっただろうW杯のチケットを手に入れてしまったのである。
初めて間近で応援しに行ったがそのスタジアムのあまりの雰囲気に圧倒された。
辺り一面の青。会場が揺れるような声の固まり。その中でプレーする選手達。
得点と同時に沸き上がる怒声のような歓喜。猛々しく吠える選手。
俺の両親も会場の雰囲気に感化されてしまった。
「うおおおおおおお!何してる!?お前も声出せ!草太!応援だ!!
うおおおおおお日本!日本!!」
こうして代表のみ熱心に応援する野球好きの両親が出来上がった。
かく言う俺自身も感化された。必死にボールを蹴る選手を目で追い続けた。
他の外国の国などの試合も見続けた。それからサッカーを見る習慣がついた。
体育の授業でサッカーがある度に楽しみになっていった。

出来たばかりの弱小部だしそんなに厳しくもないだろう。
帰宅部のままじゃ暇だし体も鈍って太るかもしれないし
そういった意味でもいい運動にもなるかもしれない。
まるで言い訳のような、自分に言い聞かせるように。
サッカー部に足を進めた。

ハーフタイムが終わり後半戦が始まる。
意識は自然とテレビに引き戻されまた一人で叫ぶ。

明日は遅刻かもしれないな。
842Mr.名無しさん:2006/07/02(日) 04:39:51
「すいません、ちょっと寝坊してしまって」
案の定遅刻した。
でも仕方がない、なんたって凄い試合なんだから、サッカーの祭典なんだから。
担任に注意を受けながらそんなことを考えていると
「どうせサッカー見てたんだろー?賭は俺の勝ちだぞー」
こんな突っ込みが入ってくる。
声がした方を見ると友達の同じ部活メンバーでもある雅典が笑って見ていた。
そうだった、そういやどっちが勝かで昼飯賭けていたんだった。
「サッカー見て遅刻した挙げ句に昼飯まで奢ってもらうことになるなんて
なんだか悪ぃ〜な〜」
担任の注意中にそんなことを言い放つもんだから
もちろん雅典にも担任の注意が飛び火する。
「そんな事して遅刻したのか、なら遅刻した高島はもちろん立浪も
昼休みに俺の所に来い。特別に宿題出してやるから。昼飯は抜きだ」
「え!俺も!?勘弁してよ先生〜」
とんでもないことを言い放つ担任に対して雅典が食い下がる。
クラスメート達の中から笑い声が漏れた。
担任の小言も終わり自分の席につくと同時に授業が再開される。
鞄から教科書を出して広げようとしていると

「ばーか、録画予約くらいしなさいよ」

こんな台詞が後ろから聞こえてきた。
843Mr.名無しさん:2006/07/02(日) 05:03:40
新作キタコレ
こんな時間ってーのが毒男らしいな
844Mr.名無しさん:2006/07/02(日) 08:35:24
wktk
845Mr.名無しさん:2006/07/02(日) 13:15:39
>>843はサカー見てた毒男
846Mr.名無しさん:2006/07/02(日) 14:48:11
>>845
その通りw
847Mr.名無しさん:2006/07/03(月) 02:45:32
もう誰もいないの?(´・ω・`)
848Mr.名無しさん:2006/07/03(月) 02:58:33
いるよ
ってかageんな
849Mr.名無しさん:2006/07/03(月) 03:08:44
俺もいる

>>842
さあ、漏れの中で宮村の声が渦巻いてきましたよ(`・ω・´)
850Mr.名無しさん:2006/07/03(月) 21:53:44
「もちろん録画したさ、当たり前だろ」
当然の如くそう返す。あんな試合録画しないなんてもったいないことできない。
「録画してんのに起きてて遅刻したってわけ?本当にばかね」
「サッカーは生で見なきゃおもしろくないんだよ。録画は後で勉強するためのものなんだよ」
少し得意気に言い返す。
「じゃあ録画する意味ないじゃない。初心者が見ただけで上手くなれるなら苦労しないわよ」
一気にテンションが下がるようなことを言い放ってくる。
「そんなことする暇あったらリフティングでもしなさいよ。下手くそ」
もはや何も言い返せない。テンションガタ落ちである。
「でもリフティングしても意味ないか、あんた思い切りボール蹴るだけだもんね。
せめてちゃんと周りを見て蹴りなさいよ」
「うっさいなーもうそんなことはしてないって、いつの話だよ」
少しムッときて身を後ろに返しながら言い返す。いつも一言多いんだ、こいつは。
「うるさいのはお前もだ高島」
前にむき直すと担任が顔をしかめながらこちらを見ている。ヤバイと思った時にはもうすでに遅く
担任の小言説教がまた始まった。
「それから一ノ瀬もだ、お前も最近少しうるさいのが目立つぞ?」
そうだ、元々はこいつが俺にちょっかいかけてきたのが発端じゃないか。
「あ・・・すみません」
そうそう、謝れ謝れ。先程めちゃくちゃ言われたので少しだけ気分がスカッとする。
まあこんなことで気分が晴れる俺も情けないといえばそうなんだが。
「それじゃ次な。ここは重要だからテェックしとけ」
担任がそう言いながら授業が再開される。
椅子に腰掛けると間髪入れずに後ろからまた声をかけられる。

「あんたのせいだからね、ばか」

お前のせいだろーが!
そう言い返したかったがさすがにもう怒られると不味いことになりそうなので
グッと堪えてやりすごす。

まったく、何でいっつもいっつもこうなんだか。
851Mr.名無しさん:2006/07/03(月) 21:54:35
「いやーさっきは災難だったな草太」
そう言いながら嬉しそうに話しかけてくる雅典。恨めしそうにそうに雅典を見つめ返す。
そう、俺は本当に職員室まで呼ばれたのだ。最近本当にうるさい、と。
「ったく、なんだよ・・・」
雅典への返事と自分のぼやき。元々あいつのせいじゃないか。あいつも呼べっての。
今からパン買いに行ってもろくなもん残ってないだろうな。
そんなことなど思いながら不満気にしていると
「安心しろよ草太」
そんなことを言いながら雅典が俺に満面の笑みを浮かべてくる。
その手にはしっかりと俺の金で買った焼きそばパンとクリームパンが握られている。
その他にもコロネやあんパンやクロワッサン。ピザパンとお好み焼きパンまで。
ん、メープルカズタードも買ったのかこいつは。ちょっと買いすぎだろ・・
「お前がパン買いに行く時間が無くなると思って先に買っておいてやったんだ。
沢山買っておいたからな、ありがたく思えよ〜」
「雅典・・・・」
そりゃ俺の金で買ったんだろ、などと突っ込みたくもなったが
ここは純粋に感謝しておく。賭けに負けたのは自分だし、実際時間も遅いだし。
「それじゃあどれにしようかな」
沢山あるので迷ってしまう、焼きそばとクリームは雅典が大事そうに持ってるし。
さすがにメープルカスタードはレアだから悪いな。
ピザパンかお好み焼きパンにしよう。意外とこってりしてて美味しいんだよな。
そうして手を伸ばすと
「ちょっと待て草太。言っておくけどお前はクロワッサンとあんパンだかんな。
それとお前のパン買ったら400円ほどオーバーしたからその分くれ。
面倒くさいし500円でいいぞ〜」
・・・・・・。
「ふっざっけんなっ、てめーよりによってクロワッサンとあんパンかよっ!
っていうか500円ってなんだよっ!金とんのかよっ」

そのままメープルカスタードの取り合いになった。
852Mr.名無しさん:2006/07/03(月) 21:56:30
「しっかし草太は本当に里沙ちゃんと言い合いばっかりするよな〜」
昼飯を食べ終わってしばらく話していたら雅典がそんなことを言ってくる。
「俺じゃないよ、吹っかけてくるのはいつもむこうからさ」
「そうか〜?俺から見ればどっちも変わらないけどな」
「いや、それは違う。よく見れば雅典だってそう思うよ」
さっきのだって向こうから振ってきたのが原因だし。
「ん〜そうかなぁ〜」
切れの悪い返事を聞きながら先程のことを思いだし一ノ瀬の方を見る。
一ノ瀬は他の女子と数人で話しながら談笑していた。
「可愛いよな〜里沙ちゃん。テニスは凄く上手いし頭も良いし可愛いし。」
俺が一ノ瀬の方を見ていることに気づいたのか雅典が続けて話を切り出す。
「里沙ちゃんはいつもあんな感じだぞ。可愛いし。
男子にはやっぱりあそこまではいかないけどな、でも可愛いし。
だけど口喧嘩するまで発展するなんてお前くらいだろ?」
そうなのだ。よりによって一ノ瀬は俺にだけ凄く文句を言ってくるのだ。
それはもうもの凄く。心に突き刺さる言葉をグサグサと。
「やっぱアノせいなんだろ〜な」
「・・・・・そうだろうな」
雅典の言うことに同意してしまう。
「まあアレは仕方ないとはいえさすがにな〜、う〜んでもな〜、どうなんだろ。」
黙って煮え切らない雅典の言葉を聞き流しながら考え込む。確かにアレは俺が悪い。
確かに文句も言えないが・・・・いや、しかし・・・・う〜ん。
そんなことを考えている間にチャイムが鳴り昼休みが終わる。
「あ、終わりか。そんじゃさっき言った通りどこか考えとけよ。俺はドイツだからな〜」
雅典が次ぎの賭け勝負のためどこが優勝するかを宣言して自分の席に戻っていく

俺はそんなことよりも先程雅典が言ったアノことを改めて思い出していた。
853Mr.名無しさん:2006/07/03(月) 22:24:48
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 続き!続き!
 ⊂彡
854Mr.名無しさん:2006/07/03(月) 22:32:57
この時間になると上がってくるなw
855Mr.名無しさん :2006/07/03(月) 23:52:13
捕手
856Mr.名無しさん:2006/07/04(火) 00:10:53
>>1が理解できない香具師はカエレ
857Mr.名無しさん:2006/07/04(火) 22:24:43
続き期待保守
858Mr.名無しさん:2006/07/04(火) 22:56:49
過疎ってるアゲ
859Mr.名無しさん :2006/07/04(火) 23:11:37
繋ぎ屋はまだか?!!
860Mr.名無しさん:2006/07/04(火) 23:18:13
よし、あと24時間以内にカキコなかったら
俺がツンデレ小説書いてやる
861Mr.名無しさん:2006/07/05(水) 02:20:40
>>860
早く書いてよ。


・・・・・・ん?
これは書き込みに入るのか?
862Mr.名無しさん:2006/07/05(水) 03:19:54
帆諏
863Mr.名無しさん:2006/07/05(水) 06:09:16
>>861
失望した
でもきっと>>860は書いてくれると信じてる




…う、嘘よっ!あなたのが読んでみたいなんて思って無いんだからね!
864Mr.名無しさん:2006/07/05(水) 07:47:02
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 続き!続き!
  ⊂彡
865Mr.名無しさん:2006/07/05(水) 19:03:17
ミサイル上げ
866Mr.名無しさん:2006/07/06(木) 00:44:48
書き込む前に>>1
867Mr.名無しさん:2006/07/06(木) 04:51:33
チャイムが鳴って午後からの授業が始まるが未だに雅典と話したアノ事を思い返す。

あれはちょうど一年前くらい。クラスの中で仲の良いグループ同士で集まったりし始める頃。
高校入学時は部活で忙しくまだ友達も見つけることができず少し焦っていた。
だから結構小心者の俺がクラスに馴染めるのかとても不安だったが
幸運にも部活で雅典のような気の合う友達が出来てようやく気持ちに余裕が生まれた。
その部活でできた友達というのが雅典である。部活もクラスも同じということで何話すようになったのだ。
雅典とよく話すようになってくると当然このクラスについても話すようになる。
男同士の会話なのだから自然とクラスの女子についても話題が及んでいった。
「おい、草太。お前ってどういう子がタイプなんだ〜?」
にやけながら話しかけてくる雅典。男同士ならば極々ありがちな話題。
そんなありがちな話題でクラスメートの女子を見回して
初めて一ノ瀬という存在を認識した。


辺り見回す目が一ノ瀬を前にした時思わず止まってしまったのだ。
可愛い、というよりも綺麗という方が正しい。
高校一年とは思えないモデルのようなスレンダーな体型。
透けるような白い肌としなやかな黒髪が相対的でその二つの色彩をより鮮明に映し出す。
そこから覗くはっきりとした二重、それでいて少し鋭いともいえる吸い込まれそうな瞳。
日の光を受けながら窓辺に一人で佇むその姿は寡黙でとても凛々しく神秘的な印象すら感じさせた。
本当に、本当に綺麗だった。
868Mr.名無しさん:2006/07/06(木) 04:53:05
「一ノ瀬さんかぁ〜ありゃ相当難しいぞ?果たして草太で上手くいくかどうか」
突然の雅典の突っ込みに驚いた。
「はぁ?まだ何も答えてないのになんでそうなるんだよ?」
照れ隠しに思わず否定するが無駄だった。
「だって今見てただろ?俺もしっかりお前の目線をマークしてたぜ?」
してやったりという顔で笑う雅典。
今思えばこの頃から何かと抜け目のない性格ぶりを発揮してたんだなぁ。
「とにかく一ノ瀬さんは凄いぞ。中学やテニスで全国行ったりしたらしくてさ
高校入ったばっかの一年なのにもうレギュラー確実って言われてんだよ。」
「ふ〜ん、知らなかったな。でも入ったばっかりでレギュラーなんて確かに凄いね」
こんなことを言い返すと雅典が当然だという顔を見せて。
「そりゃそうだって!どっかの誰かみたいに
人数が少ないか試合に出るのとはわけが違うっつ〜の」
などと言い返してきた。この切り返しに数秒経ってから気づく。
「・・・・・それは俺の事言ってんのか?雅典君よお〜」
そうなのだ。実はこの時のサッカー部は全員で14人しかいなく
入ったばかりの俺が試合に抜擢されるという事件が起こっていた。
「はははっ、まあ軽い冗談だって!まあ緊張しないように頑張れよ、草太」
ヘッドロックされながら雅典が励ましてくる。
「それに一ノ瀬さんは勉強もできるらしいし何よりあのルックスだからな〜
もう既に上級生に告白とかされたりしてるって噂もあるくらいだ。
とにかくライバルは多いぞ〜頑張らなきゃな」
ヘッドロックをさらにきつく締めた。
「なんでそうなるんだ、別に俺は何も思ってないっ」

そんな事を言っていたが正直その時は照れ隠しもあったのかもしれない。
ただしくれぐれも『その時は』であるし。照れ隠しもあったの『かも』しれないということ。
実際に試合を間近に控えて部活の練習が大切だったし。
今の現状を思えばこの時の一ノ瀬のことなどどうでもいいことだった。

とにかくその日の練習で俺は奴。
一ノ瀬 里沙とまさに衝撃的なコンタクトを取ることとなった。
869Mr.名無しさん:2006/07/06(木) 04:53:45
その日の放課後の部活。試合も間近になりミニゲームの試合練習は自然と気合いが入る。
「今日は違うチームか、まあよろしくな」
そう言う雅典も先程のじゃれ合いとは打って変わって真剣な表情だ。
元々雅典は中学校の頃サッカーをやっていて一年の中でもボールの扱いが最も上手い。
かく言う俺はスタメンの中では明らかに下手なレベルだった。
ジダンやリケルメ、カカなどのように、と憧れても当然できるわけもなく
ポジション自体守備的な中盤に置かれた。横の先輩のフォローをするような形だ。
とはいえサッカー自体高校から本格的に始めたようなものだしいくら人が少ないとはいえ
いきなりスタメンで使われるなんてこと自体が俺にとっては奇跡のようなものだった。
「高島ー!パス!」
とにかく必死でプレーした。フォローに回ってこぼれ球を拾って味方に繋ぐ。
もはや隣のテニス部がどうとか女子がどうとかそんな思いは頭の中に無いに等しい。
その時である。
カウンターから雅典がサイドを抉るように駆け上がってくる。
そこでサイドのスペースを埋めようと先輩が走りだしていき雅典のチェックにいく。
そのままもつれ合いが始まりボールがこぼれる。
こぼれたボールはサイドラインをわらずにそのまま自陣に向かってバウンドしながら転がっていく。
雅典だけでなく他の敵が勢いよく一斉に上がってくる、味方の攻撃陣はまだ敵の自陣に残ったまま。
このままでは危険だ。一旦ボールを外に出してゲームを切ろう。
そう判断し先輩のフォローに走っていた俺がいち早くボールに追いつき
そのボールを思いっ切りクリアした。

思い切り蹴りこまれたボールは勢いよく飛んでいきながら大きな弧を描いて
とても大きな弧を描いて・・・。
そう。本当に大きな弧を描いて・・・・。


・・・・・・・・・そのまま一ノ瀬の頭に直撃した。
870Mr.名無しさん:2006/07/06(木) 07:29:24
修羅場の悪寒!!
871Mr.名無しさん:2006/07/06(木) 07:34:29
>>869
乙ンデレ
流れ的にいい感じにいってるとおもう。
続きが気になってるので頑張ってくれよ
872Mr.名無しさん:2006/07/06(木) 07:36:30
アンカーミスw
873Mr.名無しさん:2006/07/07(金) 21:41:18
続き期待保守
874Mr.名無しさん:2006/07/07(金) 22:16:10
だれかつんでれたのむ












萌分不足中なんだ(´・ω・`)
875Mr.名無しさん:2006/07/07(金) 22:24:21
過去ログ読んで補給汁
876Mr.名無しさん:2006/07/08(土) 07:36:28
保守
877Mr.名無しさん:2006/07/08(土) 18:47:56
ほす
878途中の二人:2006/07/08(土) 21:33:22

「今日の晩ごはんなにー?」
「ハンバーグとポテトサラダと味噌汁」
「ハンバーグの中の玉ねぎはやっぱり」
「あぁ。先に炒めてからいれてる」

生のままひき肉と混ぜると玉ねぎのぐにょっとした感触が残って気持ち悪い。
だからいつもアメ色になるまで炒めてから混ぜるようにしている。
生の食感がいいって人もいるかもしれないけど。

「あ、そういえばさぁ」

テーブルに料理を並べ、ご飯をよそい、席に座った。
と同時にカナも向かいの席に座った。

「今日陽子と買い物行ったときに見かけたんだけど、何してたの?」
「何って、遊んでただけ」
「誰と?」
「趣味の友達」
「あぁ、あのしょーもない趣味ね」

しょーもないとは失礼な。
ディプロマシーは数あるTRPGの中でも一番かけひきが面白いゲームなんだぞ。
一般人にはおもしろさが理解できないから困る。
879途中の二人:2006/07/08(土) 21:35:05

「それって女?」
「俺いれて男六人」
「ほんとに?」
「前に初心者の女の子もいれてプレイしたことあるんだけど、もう二度とこないって言われた」

まぁあのゲームで重要なのは『いつ裏切るか』だからしょうがない。
ある程度なれてないと人間関係がズタぼろになる。

「買い物って、何か買ってきたのか?」
「うん、買ってきたよ」
「へぇ〜」
「買ってきたよ」
「ふ〜ん」
「買・っ・て・き・た・よ?」

ハンバーグの最後の一切れを口に入れようとした瞬間、頭をつかまれぐいっと顔を引き寄せられた。
この体制、間違いない。
顔をもっと近づけて唇と唇を……

「って何しようとしてんのよ!」

持たれていた頭をぐきっと真横に回された。
痛い。まじで痛い。
880途中の二人:2006/07/08(土) 21:35:49

「冗談だろ冗談」

カナの手をどけてハンバーグの最後の一切れを口の中に入れた。

「冗談でもやっていいこととわるいことがあるでしょ、このキス魔!」
「誰がキス魔だ。もうかれこれ十年以上はしてないっちゅーの」
「え? ……キスしたことあるの?」
「幼稚園のときお前とな。ま、あれはキスっていうよりチューだったけど」

食器を重ね、ふきんでテーブルを拭いて席を立った。
洗い物メンドクサイなぁ。
全自動食器洗い乾燥機ほしいなぁ。

「……」

でもこびりついた汚れはなかなか取れないらしいし・・・
やっぱ手洗いが一番なのかも。

「ねぇ」
「ってか食器洗い乾燥機よりもドラム式の洗濯乾燥機が」
「ねぇってば」
「ん? なに?」
881途中の二人:2006/07/08(土) 21:36:40

ちらっとカナを見たが、カナはこっちを見ていなかった。

「え〜っと、その」
「んー?」
「うー・・・だからぁ」
「だからなに?」

食器を乾燥機の中に入れてカナの向かいに座った

「あ、その変に京都っぽいかんざしか? 今日買ってきたのって」
「変に京都っぽいって何よ。ちゃんと京都っぽいでしょ」

ちゃんと京都っぽいってなんだよ。

「それにかんざしじゃなくてただの髪留めだし」
「どう違うんだ?」
「雰囲気」
「きっぱり言うな」

俺は席を立って風呂に行き、お湯を入れはじめた。
温度は四十五度。
夏は熱い風呂に限る。

「あっれ〜? 牛乳ないよ?」

振り返るとカナが冷蔵庫をあけていた。
位置的にこちらにおしりを突き出すような格好になっている。
エロイ。
882途中の二人:2006/07/08(土) 21:37:23

「しょうがない、オレンジジュースでがまんするか」

問答無用のラッパ飲み。
やけに男らしい。
そんなこと言ったらきれられるけど。

「じゃあちょっとコンビニ行ってくる」

牛乳がないと朝こまる。

「あ、わたしも行く」
「何かいるのか? ついでに買ってきてやるよ」
「…わたしも行く」
「だから俺が買ってきてや」
「いいから! 今コンビニ行きたい気分なの!」

何をそんなにむきになってるんだか。
カナが行くなら俺は部屋で待ってたいんだけど、どうせ無理だろうな。

「早くいこ」
「いいけど、お前、サイフは?」
「ん」
883途中の二人:2006/07/08(土) 21:38:34

カナが指差した先。
それは俺の股間、ではなくて俺のポケット。

「さ〜て、どんなお菓子買おうかな〜」
「頼むから千円までにしてくれ」







つづく、かも?
884Mr.名無しさん:2006/07/08(土) 22:01:47
二人の関係がすごく気になる

さっぱりした会話になぜか激しく萌えた
是非続けてほしい
むしろ続け
885Mr.名無しさん:2006/07/08(土) 22:41:42
いいねいいね
腐れ縁?みたいな関係のツンデレはまだこのスレでは未出だった希ガス
886Mr.名無しさん:2006/07/09(日) 03:05:34
結構イイ
これからの展開に期待できる。
どうぞ頑張っちゃってください。
887Mr.名無しさん:2006/07/09(日) 11:26:38
ディプロマシーはTRPGじゃなくてマルチゲームだろ
888Mr.名無しさん:2006/07/09(日) 14:44:44
>>887
TRPG論争はよそでやれ
889Mr.名無しさん:2006/07/09(日) 19:15:33
TRPGって久々に聞いたな、今はネトゲがあるしな
890途中の二人:2006/07/09(日) 21:26:45

光に群がる虫。
夏の自販機はこれだから嫌だ。

「あ〜もう! 虫どっかいけ!」

駄菓子屋のとなりにある団地を見上げてみる。
変なものは何も見えない。
霊的なものも、変質者も。

「ごめーん」
「遅すぎ」

やっと再テストを終わらせやがったか。

「凡ミス続けちゃって」
「じゃあ最終的には?」
「うん、満点コース」

塾のテストは怖い。
最初は八割、次は九割、最後は満点をとらないと帰してもらえない。
俺は再テストになったことないけど。

「いる?」

左手のコーヒーを差し出す。
891途中の二人:2006/07/09(日) 21:27:32

「ありがと。ってこれ入ってないし」
「『飲む?』とは聞いてないだろ。いるかどうか聞いたんだ」
「同じでしょ」
「違う」
「何が」
「目的が」
「目的?」

間接キッス目的、と言ったらにらまれた。
怖い。

「……キッスって何か親父くさい」
「そこかよ」
「それに間接キスくらい別に」
「なんとも思わないんだから!」
「喧嘩うってんの?」

二人分のかばんを持って歩いていると、おいしそうなカレーの匂いがした。
明日はカレーにしよう。そうしよう。
今日のとんかつの残りとあわせてカツカレーにしよう。
892途中の二人:2006/07/09(日) 21:28:37

「昨日さぁ」
「ん?」
「新しい水着買ってきたんだけど」
「へ〜どんなやつ?」
「黒と白のストライプ。ビキニ」
「それは楽しみだなぁ。ぐへへ」
「ぐへへとか言うな」

あぁ、自分でも後悔したさ。
何かの小説で読んだときは結構いい感じだと思ったのに。

「友達と旅行でも行くのか?」
「だからぁ、そうじゃなくて」

玄関の鍵を開けて中に入った。
密閉してた空気がむわっとして最悪。

「え〜? 海とか嫌いなんだけど」
「たまにはいいでしょ」
「でも俺水着もってないし」
「100均で買えばいいじゃん」
「小学生かよ」
「じゃあネット通販」
「試着させろ」
893途中の二人:2006/07/09(日) 21:29:17

冷蔵庫からキンキンに冷えた麦茶をだしてラッパ飲み。
装飾する言葉がみつからないくらい最高。
麦茶フォーエバー。

「あ、わたしも飲むからだしといて」
「間接キスだなぁ。くぺぺ」
「五回死んで五回生き返ってまた死ね」

ソファーに座ってクーラーをつける。
設定温度は二十五度。
これ以上下げるとお腹が痛くなる自分の体質が煩わしい。

「あ〜やっぱ夏は麦茶に限る!」

俺が飲んだのとは違うほうのお茶を飲んでいるカナ。
っていうかそれは。

「番茶うまいか?」
「……」

カナは無言でお茶を片付けると俺の向かいに座った。
894途中の二人:2006/07/09(日) 21:30:13

「で、いつ行くんだよ?」
「行ってくれるの?」
「家族連れが多いところは嫌だからな」
「……わかってる」
「水着買いに行かないと」
「明日行く?」
「久しぶりにタナカヤでも行くか?」

俺は立ち上がり、風呂場にいって蛇口をひねった。
今日は念入りに掃除したから浴槽がピカピカだ。

「あそこってまだ潰れてないんだ」

麦茶をコップに入れてソファーに戻る。

「少年野球チームのユニフォームとかで儲けてるんだろ」
「ふ〜ん。で、いつ行く?」
「そうだなぁ。俺はいつでもいいけど」
「じゃあ空いてる海水浴場、調べとくね」

簡単に調べられるところには人がいっぱいいると思うが、言わないでおこう。

「あ、もう帰る」
「今日は一緒に風呂に入らないのか?」
「……いつ一緒に入ったのよ」
895途中の二人:2006/07/09(日) 21:31:05

おざなりな返答をしてカナは玄関へ向かった。

「あ、そうそう。言い忘れたんだけど」
「なに?」

玄関の扉を少し開けたところで不機嫌そうに振り返るカナ。
でも俺の視線はカナの顔ではなく、足下に向いている。

「靴下、左右色違いでおしゃれだな」






つづく。
896Mr.名無しさん:2006/07/09(日) 21:53:13
ワクテカが止まりませぬ……

このキモチどうしてくれようか
897Mr.名無しさん:2006/07/09(日) 22:03:38
いいよー
ものすごくいいよー
期待期待

>>896
ときにsageんかいワレ
898Mr.名無しさん:2006/07/09(日) 22:19:50
>>896
久々にやっちまったスマンorz
899Mr.名無しさん:2006/07/09(日) 22:21:59
>>896>>897
俺はもうダメかもしらんね
吊ってくるわ
900Mr.名無しさん:2006/07/10(月) 01:14:13
日曜の夜になると書きたくなるのは多分現実逃避だな、明日もあるし寝よ
901Mr.名無しさん:2006/07/10(月) 22:49:31
保守
902Mr.名無しさん:2006/07/10(月) 23:49:12
久々に毒男来たら、まだこのスレ残ってて驚いた
次スレあたりになったら、またなんか書くかなー。テスト終わったら概ね暇になるし
903902:2006/07/10(月) 23:49:49
ごめん、sage忘れたorz
904Mr.名無しさん:2006/07/11(火) 00:10:44
良作の予感保守
905Mr.名無しさん:2006/07/11(火) 00:15:11
VIPの方はつぶれちゃったしな
906Mr.名無しさん:2006/07/11(火) 01:12:06
>>905
そうなの?
SS祭りとか楽しかったのになぁ
907Mr.名無しさん:2006/07/11(火) 11:34:42
>>905>>906
VIPは避難所で続いてるみたい
先週くらいに向こうで良作を見た
908Mr.名無しさん:2006/07/11(火) 17:44:04
スクリプトにやられたらしいね……。

くわばらくわばら……。
909Mr.名無しさん:2006/07/12(水) 18:33:41
ほしゅ
910途中の二人:2006/07/12(水) 23:04:18

「お願い、帰ってきて……」

いまさらそんなことを言われて、帰るとでも思っているのだろうか?
俺をここまで追いつめたのは誰だ?
自分は被害者打とでも言いたいのか?
笑わせる。

「もう無理なの。私もお姉ちゃんも」
「何が」
「あんな息苦しい家で生活すること」
「息苦しい? どこが?」
「……全部お兄ちゃんのせいなんだから」

『全部お兄ちゃんのせいなんだから』

その言葉を聞いて、俺は本気で奈津美を殴ろうとした。
しかし、できなかった。

「何で逃げたの? ねぇどうして」
「逃げてない」
「うそ。逃げた。今も逃げてる」
「逃げてない」
「そうやってずっと言い訳しとけばいい。無責任。意気地なし」
「はは、言いたい放題だな」
911途中の二人:2006/07/12(水) 23:05:04

俺は無理に笑顔を作って席を立ち、台所へむかう。

「突然来たと思ったらそんなしょうもないことを言いに来たのか」

やかんに入った沸かしたてのお茶をコップに入れ、飲んだ。

「一度だけ。一度だけでいいから帰ってきて」
「無理」
「わたしのためだと思って」
「じゃあ俺のためだと思って帰ってくれ」
「ばか」
「あ?」
「ずっと捕まっとけばよかったのに」

奈津美の言動はいちいち俺を惑わせる。
もしかしてわざと言っているのだろうか。
もしそうだとしても俺には関係ない。

「本当に捨てられたと思ってるの?」
「あぁ、そうだ」
「お父さんとお母さん、ほんとは心配し」
「黙れ!!」

まだ少しお茶の残っているコップを台所のシンクに思い切り叩きつけた。
912途中の二人:2006/07/12(水) 23:05:55

「あいつらが心配してるだと? あ?」
「そ、そうだよ。確かにあの時はひどかったけど、ほんとは」

奈津美のキャミソールの肩紐を両方ともつかんで捻りあげる。

「い、痛いってば」
「……」
「ねぇ、離して」

あぁ、俺は妹相手に何をしているのだろうか。
なぜ奈津美の言葉を聞き流せないのだろうか。
それはたぶん、期待しているから――

「あいつらが俺に何を言ったか知ってるか?」
「何ていわれたの?」
「ただ一言。『死ね』」
「え」
「俺は、俺はたぶん、期待してた。何か言ってくれると思ってた」

今思い出しても腹が立つ。

「警察署の椅子に座ってる俺をチラッと見て、『死ね』だぞ? 最高におもしろくないか?」
「……」
「おもしろいよな? おもしろいよな? なぁ、おもしろいよな?」
「じゃあ何で泣いてるの」
「ばーか。笑い泣きだよ」
913途中の二人:2006/07/12(水) 23:06:46

奈津美をつかんでいた手を離して、俺は自分の涙を拭った。
予想以上に量が多い。
俺の涙腺は頑張りやさんだな。

「おじゃましまーす。ってどうしたの?!」

実にタイミングよくカナが来た。

「何でもない何でもない。あ、奈津美。今日は帰ってくれ」
「でも」
「また電話するから」
「ほんとに?」
「あぁ。ゼッタイ、100%、間違いなく」

奈津美はとても悲しそうな顔でわかったと言い玄関へ向かった。
そして俺とすれ違うとき。

「ん……」

唇を重ねられた。

「ゼッタイだから」

そう言い残し、奈津美は家を飛び出していった。
俺は追いかけたくもないし、追いかける義理もない。
奈津美がいなくなって、安心しているのだから。
914途中の二人:2006/07/12(水) 23:07:30

「ねぇ、マナブくん?」
「あ、お前いたの?」
「『いたの?』ですって?」

恐ろしい。ただ、恐ろしい。
他に形容する言葉がみつからない。
恐ろしい。

「今のはどういうこと?」
「どういうことって言われても」
「今の女の子誰よ。いいなさい。早く。いいなさい」
「何でだよ」
「気になるから。知りたいから」
「だから何で」
「何でも」
「お前、言ってることめちゃくちゃだぞ」
「私のことは関係ない。早くあの子とどういう関係か教えなさい」
「だからおま」
「いつもっ!!」

突然の大声。
いつもとは違う、本気の叫び。
動けない。
915途中の二人:2006/07/12(水) 23:08:16

「いつもいつもいつもいつもっ! 何で? ねぇどうして?」
「だから何が」
「何で言ってくれないの? どうして言ってくれないの?」
「あのなぁ、今の子はそういうのじゃなくて」
「違う!」

わからない。
カナが何を言いたいのかわからない。
いや、わかっているのかもしれない。
でもそれを言われたら、俺は。

「何で相談してくれないの? 私、そんなにダメ?」
「違う」
「ダメなの? 好きってだけじゃダメ?」
「違う」
「言ってくれないとわかんないよ。全部、言ってくれないと」
「全部?」
「マナブのことを、理解しようとしても、いいのかどうか」
「……ごめん」

瞬間、頬が熱くなった。
殴られた。
仕方ない。
当然だ。
どうしようもない。
わからない。
自分が何をしたいのか。
916途中の二人:2006/07/12(水) 23:09:00

「もっと私を頼ってよ!」


耳の中でこだまするカナの声。
その声は俺を動かすには十分過ぎて。
勢い余って目的地を飛び越えてしまいそうで。


でも結局、俺が選ぶ道は、一つ。








つづく。
917Mr.名無しさん:2006/07/12(水) 23:27:36
急展開・・・?
引きが憎たらしくってかなわんわ

ときに現在445KB
このペースだと1000逝く前に500KB越えの悪寒
460くらいなったら次スレ立てたほうがよろしかろう
あとはまとめでしめれば
918Mr.名無しさん:2006/07/12(水) 23:30:39
480くらいでいいんじゃないか?
40Kって結構書き込めるぞ。
919Mr.名無しさん:2006/07/12(水) 23:32:57
スレ全体のまとめだからどんだけの容量になるのかわからんかったからさ
まとめが入りきるのなら480で
920Mr.名無しさん:2006/07/13(木) 07:57:32
hosyu
921Mr.名無しさん:2006/07/14(金) 21:30:01
適当に保守
922Mr.名無しさん :2006/07/14(金) 23:27:58
誰か次スレ頼む
923Mr.名無しさん:2006/07/15(土) 06:19:51
次スレなんざ990くらいで立てりゃいいだろ。バカに釣られて立てるなよ?
924Mr.名無しさん:2006/07/15(土) 21:39:17
>>923
いや500kb越えしてスレに書き込めなくなるだろ
このままのペースで行って990まで持つか?
925Mr.名無しさん:2006/07/15(土) 21:48:50
何も投下されなければ1000までいくだろうな
梅用短編でも誰か書いてくれりゃいいが。
926Mr.名無しさん:2006/07/15(土) 22:48:48
現時点までの纏めをまず上げて
その後、残り容量を見て考える、というのもアリかも
誰がやるかという話になるが。これで448?
927Mr.名無しさん:2006/07/16(日) 01:28:56
埋め用短編もやめたほうがいいんじゃない?
500超えたらにくちゃんでみれないし
928Mr.名無しさん:2006/07/16(日) 17:49:32
埋め代わりに……雑談でもするか?
929Mr.名無しさん:2006/07/16(日) 17:57:38
雑談してまで埋める事は無いと思うが…

いや、ここの人達と雑談したいけどw
930Mr.名無しさん:2006/07/16(日) 19:13:28
しかしこのままでは満足に投下出来ないのもまた事実!

最近、知り合いが大怪獣ツンデレラって言い出してさ、着ぐるみ着た強気ツンデレがぶーたれながらセットの街を破壊するイマジンした訳

「ちょっと、何よ!この役〜!」
ってな。うん分かってる、どうでもいいんだ。でも僕はツンデレが好きです
931Mr.名無しさん:2006/07/16(日) 20:27:46
【連載中の作品】
過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI氏の作品
淑大オカ研っ!!
 キャラ名>173
第一話
>174 >175 >176 >177 >178 >179 >180 >181 >182 >183
>184 >185 >186 >187 >188 >189

ツンデレ十夜
第一話 >32
第二話 >34
第三話 >35
第4話 >124
第5話 >125

本当にパクってみた作品
>217 >218 >219

七誌さんの作品1
>153 >156

七誌さんの作品3
>791 >792

七誌さんの作品4
>840 >841 >842 >850 >851 >852 >867 >868 >869

途中の二人
>878 >879 >880 >881 >882 >883
>890 >891 >892 >893 >894 >895
>910 >911 >912 >913 >914 >915 >916
932Mr.名無しさん:2006/07/16(日) 20:28:22
【完結した作品】
過疎時の繋ぎ屋 ◆yVoA9C7lzI氏(Life life ◆yVoA9C7lzI氏)の作品
Life life
八話(前スレ>922の続き)
>9
最終話
>20 >21
 解説っぽいもの>22

空に光る
 キャラ名>61
一話
>49 >51 >52 >53 >54 >55 >56 >57 >58 >59 >60
二話
>66 >67 >68 >69 >70 >71 >72 >73 >74 >75 >76
 ここまでのおさらい>77(訂正レス>83)
三話
>91 >92 >93 >94 >95 >96 >97 >98 >99 >100
>101 >102
 ここまでのおさらい>103
四話
>109 >110 >111 >112 >113 >114 >115 >116 >117 >118 >119
 ここまでのおさらい>120
最終話
>134 >135 >136 >137 >138 >139 >140

529氏の作品
>535 >536 >537 >538 >539 >540 >541 >542
933Mr.名無しさん:2006/07/16(日) 20:28:59
After a long time
>251 >252 >253 >254 >255 >256 >257 >258
How to get your lost days ?
>267 >268 >269 >270 >271 >272 >273 >274 >275 >276
Invitation to dream
>281 >282 >283 >284 >285 >286 >287 >288
Petit mischief
>296 >297 >298 >299 >300 >301 >302 >303
Myself - ish
>310 >311 >312 >313 >314 >315 >316
 ここまでの登場人物まとめ>321
Too early , Too late
>329 >330 >331 >332 >333 >334 >335 >336 >337 >338
load to Vague
>353 >354 >355 >356 >357 >358 >359
ALISE , again
>370 >371 >372 >373 >374 >375 >376 >377 >378 >379
>380 >381 >382 >383 >384 >385 >386
あとがき
>388

七誌さんの作品2
>347

ツンデレのデレデレ妹を見て「お前もあれぐらい素直だったらな」とツンデレに言ったら
>402 >404 >405 >406 >407 >408 >409 >422 >439 >442 >450
934Mr.名無しさん:2006/07/16(日) 20:29:37
441氏の作品
~TUNDERE novel for single person
『幸福の扉』
act1 『The door is knocked on.』
>457 >458 >459 >460 >461 >462 >484 >485 >486 >487 >488
act2 『少女A』
>498 >499 >500 >501 >502 >503 -----------------挿絵>507
>517 >518 >519 -------------------------------挿絵>523 補完>620
act3 『Sunday&Rain』
>553 >554 >555 >556 >557 >558 >559 >560 >561 ----挿絵>569
act.3.5
>594 >595 >596 >597 >598 >599 >600 ------------挿絵>611
act.4『こころ』
>641 >642 >643 >644 >645 >646 >647 >648 >649 ---挿絵>659
act.5『No,thing』
>722 >723 >724 >725 >726 >727 >728--------------挿絵>739
act.6『それから』
>742 >743 >744 >745 >746
あとがき
>747


年上の・・・  第1話
>470 >471 >472 >473
年上の・・・  第2話
>475 >476 >477
935Mr.名無しさん:2006/07/16(日) 20:30:53
アッサムティーにミルクを入れて
>627 >628 >629 >630 >631 >632

677氏の作品
>680 >681 >682 >683 >684 >692 >693 >694 >695 >696 >697 >699
>703 >704 >705 >706 >707 >708 >763 >764 >765 >766 >767

それぞれの冬
>757 >769 >771 >772 >776 >777 >779 >780 >785 >786 >795 >796 >798 >799
>803 >804 >808 >809 >810 >813 >814 >815 >824 >825 >826
あとがき
>833



これで454らへんかと
しかしやはり面倒だな、この作業
936Mr.名無しさん:2006/07/16(日) 20:40:44
おや、漏れが迷ってる間にまとめやってくれたのね
乙でした
937Mr.名無しさん:2006/07/16(日) 20:53:13
まとめ乙
そして只今452K。
938Mr.名無しさん:2006/07/16(日) 22:38:11
次スレ立てるか?
そろそろ必要っていうなら立ててくるぞ
939Mr.名無しさん:2006/07/16(日) 23:31:08
まとめも入ったことだし、このスレでの作品投下は打ち止めでいいんじゃねーの?
続きは次スレでってことで。
以降は多少おまいらと雑談したい気分w
940Mr.名無しさん:2006/07/16(日) 23:31:45
追加
次スレは雑談するなら次スレは970か980あたりでいいかと
941Mr.名無しさん:2006/07/17(月) 00:34:42
自身の過去最長記録更新予定のつもりだが
この連休で書けたの2行
激しくお蔵入りのパターンwww

ってな感じ
942Mr.名無しさん:2006/07/17(月) 08:05:57
今住人または職人(未完でも投下したことのあるヤシ)
って何人くらい居るんだろうな
点呼でも取ってみるか?
俺一応職人兼住人(・∀・)ノ
943Mr.名無しさん:2006/07/17(月) 10:19:01
いやいやそういうのはひみつだから楽しいんだよ
実は自分以外は全部自演というのが楽しい
944Mr.名無しさん:2006/07/17(月) 12:41:42
おまいら未だに待ってる職人とかいるか?
945Mr.名無しさん:2006/07/17(月) 13:02:46
古里滝さん…
946Mr.名無しさん:2006/07/17(月) 13:09:11
スレが終わる今だからこそ言える。
実は初代1です。こんなに続いているとは。
947Mr.名無しさん:2006/07/17(月) 13:13:46
ちょっとまて
今気づいたが677氏の作品はまだ完結してないよな?
まとめじゃ完結になってるが・・・
948Mr.名無しさん:2006/07/17(月) 13:15:58
>>946
じゃ早く続き書けよw
949Mr.名無しさん:2006/07/17(月) 13:29:12
>>948
他の場所でツンデレ物書いてました。
950Mr.名無しさん:2006/07/17(月) 13:37:23
他の場所ってVIPかな
2ちゃんのツンデレ関係って今何あるっけ
VIPの間接キス(避難中)
毒男のどうせ〜(ここ)
藻男のマクドナルド
あと創作文芸板にもあったかな。動いてないみたいだけど…
951Mr.名無しさん:2006/07/18(火) 16:57:13
昔このスレで書いてた職人さんは今でもこのスレにいるのかな・・
952Mr.名無しさん:2006/07/18(火) 17:51:17
今年の一月から三月くらいまでに二つ書いて、三月初めに三つ目書いてる途中に逃げ出したのが俺w
次のスレから過疎時に、新しいので復帰すると思う
953Mr.名無しさん:2006/07/18(火) 19:03:32
期待してるよ!


…俺もまた何か書くかなぁ
954Mr.名無しさん:2006/07/19(水) 14:10:11
VIPはもう復活しないのかな…?
955Mr.名無しさん:2006/07/19(水) 20:12:04
スクリプトが死なない限り避難所生活だな。
956Mr.名無しさん:2006/07/20(木) 04:53:36
>>946
早く書いて欲しいから、とか、おだてて書かせよう、ってんじゃないけどな
俺はお前と丸出毒男をずっと待ってたんだぜ
957Mr.名無しさん :2006/07/20(木) 18:24:34
>>956
おまいに同意
958Mr.名無しさん:2006/07/20(木) 18:29:34
ageて言っても説得力なんかねーぞ
959Mr.名無しさん:2006/07/21(金) 23:19:05
とりあえず保守
9601000狩り:2006/07/21(金) 23:38:46
1000!!1000!!1000!!1000!!!
9611000狩り:2006/07/21(金) 23:40:23
みんなで1000目指すぞ!!!!!
9621000狩り:2006/07/21(金) 23:41:00
おいおいみんな書けよ〜!!!!!!!!
9631000狩り:2006/07/21(金) 23:42:13
な…何で誰も書いてくれないの………○| ̄|_
964Mr.名無しさん:2006/07/22(土) 00:17:22
何か、かわいスww
965Mr.名無しさん:2006/07/22(土) 00:43:48
嵐まがいの名前でageて書いてりゃスルーされて当然
966Mr.名無しさん:2006/07/22(土) 13:02:27
>963
m9リ(l|゚ . ゚ノlリプギャー
967Mr.名無しさん:2006/07/22(土) 18:38:23
【2004年アメリカ単独ライブでの『READYSTEADYGO』】
http://www.youtube.com/watch?v=wdvK3axd0uo&search=larc%7Een%7Eciel%20%20READY%20STEADY%20GO
【2005年アジアツアーでの『Killing Me』と『HEAVEN'S DRIVE 』】
http://www.youtube.com/watch?v=lTmQ4IIXJ1g&search=larc%7Een%7Eciel%20%20Killing%20Me%20
【2005年アジアツアーでの『Driver's High』と『LOST HEAVEN』】
http://www.youtube.com/watch?v=64x6LLdWV5I&search=larc%7Een%7Eciel%20%E3%80%80ASIALIVE
【2005年アジアツアーでのラルクアンシエルメドレー】
http://www.youtube.com/watch?v=BBs0QTixVUw&search=larc%7Een%7Eciel%20%E3%80%80ASIALIVE
【2005年アジアツアーでの『snowdrop』『winterfall』『forbidden lovver』
http://www.youtube.com/watch?v=C35EgbebunY&search=larc%7Een%7Eciel%20%20LIVE
【2005年アジアツアー『Getoutfromtheshell』『Newworld』『自由への招待』】
http://www.youtube.com/watch?v=85ImSI4qeJ0
【2005年アジアツアーでの『虹』】
http://www.youtube.com/watch?v=wuy2lb0WJc4&search=larc%7Een%7Eciel%20%E3%80%80ASIALIVE
【2004年アメリカ単独ライブでの『STAYAWAY』】
http://www.youtube.com/watch?v=Bv2K4UKaXi4&search=larc%7Een%7Eciel%20%20LIVE
【2004年アメリカ単独ライブでの『HEVEN'S DRIVE』】
http://www.youtube.com/watch?v=tdPq1OPCUWI&search=larc%7Een%7Eciel%20%20LIVE
【2004年アメリカ単独ライブでの『driver's high』】
http://www.youtube.com/watch?v=kF2wMw7WWyE&search=l%27arc
【2004年アメリカ単独ライブでの『花葬』】
http://www.youtube.com/watch?v=ltoWHk5FX-c&search=l%27arc%20USA
【おまけ★HYDEのソロ活動台湾での『evergreen』『shallowsleep』】
http://www.youtube.com/watch?v=qMMSealOPSY&search=larc%7Een%7Eciel%20%20LIVE
【おまけ★2000年経済大国日本での壮絶、壮烈、衝撃ライブ『いばらの涙』】
http://www.youtube.com/watch?v=p_7YRAz6XGc&search=larc%7Een%7Eciel%20%20ibara
968Mr.名無しさん:2006/07/22(土) 18:39:46
誤爆スマソ
969Mr.名無しさん:2006/07/22(土) 23:19:54
保守
970Mr.名無しさん:2006/07/22(土) 23:33:36
これで970だけど、次スレそろそろ立てるか?
971Mr.名無しさん:2006/07/22(土) 23:38:00
いんじゃね、そろそろ
972Mr.名無しさん:2006/07/22(土) 23:39:47
980くらいでいいんジャマイカ?
980を越えると即死判定があるから、書き込みが無いとすんなり落ちてくれるし。
973Mr.名無しさん:2006/07/23(日) 01:16:14
>>972
じゃあ >>980のやつが立てるってことで
974Mr.名無しさん:2006/07/23(日) 20:05:43
急に書き込みが無くなった件について
975Mr.名無しさん:2006/07/23(日) 20:16:32
きっと職人さんたちは今の間に書きためてくれているだろう
976テンプレ:2006/07/23(日) 21:05:22
毒男のためだけのツンデレ小説を書くスレ。
でも萌えられたらツンデレから多少離れてても良し。
絶対にsage進行。

初代
http://etc4.2ch.net/test/read.cgi/male/1110367127/
第2話
http://etc4.2ch.net/test/read.cgi/male/1120669390/
第3話
http://etc4.2ch.net/test/read.cgi/male/1130681506/
第4話
http://etc4.2ch.net/test/read.cgi/male/1140319920/

ログ置き場
http://dousedokuodasi.hp.infoseek.co.jp/

はてなダイアリー - ツンデレとは
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C4%A5%F3%A5%C7%A5%EC
2ch検索: [ツンデレ]
http://find.2ch.net/?BBS=ALL&TYPE=TITLE&STR=%A5%C4%A5%F3%A5%C7%A5%EC&COUNT=50

職人さん方、いつもクオリティの高い作品ありがとうございます。
977Mr.名無しさん:2006/07/24(月) 16:47:12
このペースだと990でもいいかもわからんね
978Mr.名無しさん:2006/07/25(火) 01:00:15
次スレ期待保守
979Mr.名無しさん:2006/07/25(火) 07:03:46
罠セット
980Mr.名無しさん:2006/07/25(火) 07:20:35
新スレ
職人さん張り切ってドゾー
http://etc4.2ch.net/test/read.cgi/male/1153779533/l50
981Mr.名無しさん:2006/07/25(火) 10:14:23
なら埋めるしかないじゃないか。
そろそろ書いてみようかすら。
982Mr.名無しさん
まぁ、梅