6 :
俺:
10代の頃までは、人生をつまらないだとか、考えることも感じることもなかった。
しかし社会に出て、一応俺も働いてみて、人生とはこんなにつまらないものなのかと。
それでよくみんな耐えられるものだと、俺は思った。
俺の人生、いや生活を少し回顧してみる。大卒後新卒でメーカー系企業に就職し、
そのままやめる勇気もなく5年。毎日の出社に嫌気を感じながらずるずるずるずると5年。
趣味はない。学生のころまでは夢中になれるものもあった気がするが、忙しさにかまけて
何もしなくなってしまった。
7 :
俺:2006/01/16(月) 04:20:48
俺の入った企業は、誰もがその名を知っている大手メーカーの一つ。それなりに歴史のある企業で、
古い体質の企業であると言える。社員の年齢構成も見事な逆ピラミッド型で、俺はちょうど底辺の頂点の
あたりで入社したことになる。居心地ははっきり言って悪い。話の合わないおっさんばかりに囲まれて面白くない。
どうしておっさんという奴は、こうも下品で無神経で無教養なのだろう?口を開けば風俗やセクハラまがいの
話しかでてこない。そんな話題を若手にぶつけることが、よりよいコミュニケーションだと思っているふしがある。
そして、いやらしいのは口だけではない。一度、旅行会の幹事を引き受けた時、先輩(といっても20以上年の離れている)
から、「女」は呼ばないのか?と尋ねられた。おっさんどもからすれば、旅行会=買春ツアーなのだ。
そして、有名企業の社員が買春をしていては問題だということで、領収書は架空の企業名にする。
それが幹事のコツなのだと。
8 :
俺:2006/01/16(月) 04:23:32
こいつらと一緒に働いていると、唖然とする事ばかりだ。なにもかも、感覚が噛み合わない。
世間で悪いと思われていることを平然とやる。そしてそれをむしろ、組織の結束のために必要なことだと
正当化している。
おっさんたちはとにかく飲み会が好きだ。しかも職場の人間と飲むことを好む。仕事以外の人間と
飲むことを知らないと言ってもいい。そこでは大抵、若手への説教を始める。理由や内容なんてなくていい。
仕事を問題なくこなす奴には、態度だとか表情が堅いだとか、なんでもいいから叱れればいい。
そうすると気持ちがよくなる。若い奴はまだまだだ。などと自分に自信を取り戻せる。そして決まって最後には
「これはお前のために言ってるんだぞ」などと言う。さも、若手に説教する自分に酔いたいという己の
欲望を満たすためではなく、世のため会社のため言ってやってるんだ、という口ぶりで。
ああ、俺はなんてよくできた社員なのか。そんなところか?ばかめ。
若手への説教が一段落すると、今度は同僚への褒めあいが始まる。
「○○さんのおかげで会社がもってるようなものですよ」
「いやいや、××さんこそたいしたもので」などと一目の置きあいとでもいうのだろうか?
いい歳したおっさんがおべっかの言い合いをおっ始める。毎回毎回儀式的に。
非常にまずい。まずい酒の飲み方だ。このまずい酒の飲み合いを、週一ペースで繰り広げ、
若手に参加を強要する。
9 :
俺:2006/01/16(月) 04:24:52
しかし社会人として生活するうえでつらいのは、過去にエコノミックアニマルなどと呼ばれた、
会社組織の原住民とでも言うべきこのおっさんたちとの共存共栄しながらの生活ではない。
原住民たちの触れ合いの中で、自分が確実に変わっていくことだ。
俺は今の会社で働いてみて、自分がずいぶん駄目な人間になったと感じる。
まず、つまらない人間になった。何をしても、何をやっても、面白いと思えない。
すると、自然と自分が話す内容もつまらない内容になる。何にも興味を持てない。
だから特に話したい内容もない。しかし無言はまずいから、相槌だとか、
どうでもいいありふれた話題だとか社交辞令しかいわなくなる。
あと、口にすることといえば、会社や仕事の愚痴くらい。
10 :
俺:2006/01/16(月) 04:26:22
そんな人間になってしまった。これは病気だと思う。社会人病という心の病。
好景気の後の不景気に入社した、年齢逆ピラミッドの組織にさらされた、同年代のサラリーマンなら
誰でもなる病気。それを俺は、社会人病と名付けた。
入社後1年で、俺はこの病気に気付いた。そして、なんとか快方に向かえないものかと
努力してみようとした。趣味を持とう。何か新しいことを始めよう。それによって、今の自分が変われるはずだ。
しかしだめだった。仕事に疲れ、人間関係に疲れ、私生活の時間ですら何かを始める気力がなかった。
何かをしようにも、何にも興味を持てなかった。そうやって、ただ時間を潰し、
また休日に何もできなかった、そう後悔する。それがますます社会人病を悪化させる。
そんな風にして、もう5年も経ってしまった。
俺は酒を飲むようになった。飲み会ではなく、一人で酒を飲む。
俺はあまり酒に強いたちではないから、すぐに酔う。酔うといい気分になれる。
頭が回らないからか、このつまらない生活のことを考えなくなる。
そして、別の、何か楽しい事を考えられるようになるのだ。