【誰もが】就寝前イメージランド 第1.9章【ヒーロー】
1 :
1:
2 :
Mr.名無しさん:2005/06/05(日) 22:19:17
3 :
Mr.名無しさん:2005/06/05(日) 22:27:48
4 :
お茶汲み係:2005/06/05(日) 22:57:20
>>1スレ立て記念お茶ドゾー( ^^) _旦~~
5 :
Mr.名無しさん:2005/06/05(日) 22:58:06
ごめん、重複立てちゃった。
1.9章ワロタw
あれ?てか2.9章なのでは・・・
8 :
1:2005/06/05(日) 23:12:01
9 :
1:2005/06/05(日) 23:12:23
10 :
Mr.名無しさん:2005/06/05(日) 23:33:03
落ちたのかよ。ってか何が起きてるんだ
12 :
Mr.名無しさん:2005/06/06(月) 00:55:41
俺もよく知らんが、世間では電車男に関するイベントがあったみたい。
で、それに乗じて電車スレ乱立。
13 :
Mr.名無しさん:2005/06/06(月) 01:04:22
昨日映画が公開されたんだよ
新スレ乙
てか前スレのログうpキボン>管理人さん
15 :
Mr.名無しさん:2005/06/06(月) 21:44:01
保守
16 :
1:2005/06/07(火) 00:01:57
第29話(後半)
圧倒。そんな言葉が俺の脳裏に浮かんだ。
せいぜい5分ほどだ。ヤックソと剣を交えたこの5分で、俺はすでに激しい疲労感と絶望に身体を支配されている。いや、
俺だけではない。深田と平井、そしてカエラも、この恐ろしいほどの強さを誇る魔族と凄まじい攻防を繰り広げ、肩で息
をしている。
「こいつの強さ、今まで戦ってきた連中とは桁違いだ」
平井が顎の汗を拭いながら、吐き出すように言った。4対1という状況にありながら、相手は傷らしい傷を負っていない。
魔族としての実力は間違いなく上原より数段上だ。
俺は横で喘いでいる深田を気遣う。
「大丈夫か?深田さん」
「ええ。でも、これではいつまでたっても埒が明きませんね。あの動きを封じられなければ…」
そうだ。ヤックソの強さはカエラ並みの腕力や、魔術の才もあるが、それ以上に超人的な読みと素早さに支えられている。
細身のレイピアでこちらの攻撃をことごとく受け流し、難なく弾いてしまうのだ。
「…全く勝ち目がありません」
次の手に移れず、俺達はヤックソを正面にしてただ構えることしかできない。
「まだ始まったばかりだぞ。かかって来ないのならば、こちらから行くぞ」
ヤックソが深田に対して突進をかける。彼女は辛うじて避けたが、そこに幾重もの攻撃が重なってくる。
「深田さん!」
俺は思わず叫んだ。
「深田?」
ヤックソが静止した。そして、唐突に防戦一方の深田の腕をぐいと掴んだ。
「そうか。君が深田か。ということは、この腕が上原を殺した腕というわけだな」
2人の顔が接近する。ヤックソの死の目線に当てられた深田は、まるで超能力特番でオバハン催眠術師に施術された芸能
人のように、身じろぎできずにいる。
「く……」
17 :
1:2005/06/07(火) 00:02:14
「有田と婚礼の約を交わした上原。その上原を殺したのが有田の昔の女とはな。皮肉な話だ」
「その手を放せ!!」
ヤックソの二の腕を狙って、俺は俺専用異世界人専用聖剣を振り下ろす。しかし寸前で腕は消え、代わりにレイピアの剣
首が俺の腹部にめりこんだ。
「己の分をわきまえろ、俗物が!!」
ヤックソは吐瀉する俺の頭を抱え、力任せに地面に叩き付けた。
「私は今このお嬢さんと楽しんでいるんだ。外野は我が兵達に委ねるとしよう」
ヤックソは空いている方の指先を、詠唱中の甜歌に向けた。
「しまった!!」
指先から放たれた閃光が甜歌の胸を射る。甜歌は声一つ上げることなく倒れ伏した。ほんの数瞬の出来事だった。
「甜歌、大丈夫か!」
彼女の側に身を屈めて、俺は傷の状態を確かめた。心臓や肺への直撃こそ免れたものの、傷は肩と脇の間を貫通しており、
血が服に滲んでいる。
「大変だ。サークルが!」
平井の声に反応して周囲を見回すと、闘技エリアを守っている光の壁が徐々に薄くなり始めた。甜歌の魔術が破られたか
らだ。外では、数え切れないほどの魔物達が、今か今かと壁が消滅する瞬間を待っている。平井とカエラは侵入させるま
いと、弱まった壁を抜けて侵入してくる魔物を倒していく。しかし、このままでは彼らが大挙して襲ってくるのは時間の
問題だ。完全包囲で俺ら絶対絶命のピンチ。
「愚かで卑小な人間どもよ。安心するがいい。貴様等を葬った後は、全ての人間をこの世界から完全に根絶やしにしてや
る。親、兄弟、友、恋人、全てが同じ無に還るのだ」
高笑いをするヤックソは、依然として深田の自由を奪っている。
「こんなところで…」
力なく呟いて、俺は腕の中の甜歌に目を落とした。何と苦悶の表情を浮かべながらも、彼女は詠唱を続けているではない
か。俺は挫けそうになった自分を心中叱咤した。
「こんなところで…死ぬわけにはいかない」
とは言っても、俺は布で甜歌の傷口を押えてやるしかできない。と、その時である。魔物が攻撃を緩めたのを見計らって、
カエラが俺達の前に立った。
「カエラ…」
「心配はいりません」
18 :
1:2005/06/07(火) 00:02:34
彼女は異様に穏やかな表情で、甜歌の傷口に左手をかざした。眩い光がそこに集中し、傷口を塞いだのだろう、出血がお
さまった。
「さしあたって大丈夫のはずです」
まるで聖母のように、というよりも何かに憑かれた様に、にこりと微笑んだ。
「どうしたんだ?様子が変だぞ」
そんな俺の問い掛けを遮るように踵を返すと、彼女はゆっくりとヤックソの方に歩を進めた。そして、深田の腕を握って
いるヤックソの右手首を掴んだ。
「その手をすぐに放しなさい」
「ククク、戯言を」
当然、ヤックソは手を緩めない。そうする内、ギシギシと腕の骨が軋む音がはっきりと聞こえてきた。その音は次第に大
きくなり、ついにはヤックソの右手首は砕け折れた。握力を失った手から開放されて、深田は我を取り戻し、よろめきな
がら後ろに下がった。
俺は深田の身体を受け止め、カエラの様子を見守る。その表情は実に落ち着いており、明らかに今までのカエラとは違い、
「まるで別人だ」
そう。完全に別人格だ。大学時代、教養科目の心理学で齧った、確か解離性同一障害というやつだろうか。自傷、躁鬱だ
けでなく、多重人格まで備えているとは、まさにメンヘルデパート。
「やるじゃないか」
ブラリと垂れ下がる右腕をかばおうともせずに、ヤックソは興味の対象をカエラに移した。
「魔族を駆逐することは僧侶の天命です。罪も無い人達を傷付けるあなたを看過する訳にはいきません」
カエラは己の頬を、拳で力任せに殴打した。唇が切れて、口元にじわりと血が滲む。自傷癖…ではない。今回のそれは、
彼女流の覚悟を示す行動に見て取れる。
「罪もない人達とは…笑止!」
ヤックソはロンパった目をさらにロンパらせながら、レイピアで阿修羅のごとくカエラに猛襲をかける。しかし、カエラ
の動きはさっきまでとは別格だ。ハルバートの柄はそれを全て捌ききり、返す石突がヤックソの顎を撃った。
「人間ごときが、なぜこれほどの力を…」
19 :
1:2005/06/07(火) 00:02:53
初めてヤックソが膝を地に付けた。それに対して、カエラはハルバートを小剣でも振り回すかのように軽々と振り回して
構えの姿勢をとった。
不意にカエラが問う。
「どうして人を傷つけるの?」
「分かったことを。この地上を下劣な人間どもから救済することが、我ら魔族に与えられた使命だからだ」
即答したヤックソに、再びカエラが問う。
「どうして人間と解り合うことをしないの?」
「自身よりも下等な存在と対等に話すことをするものか。人は牛や豚同然。貴様等とて家畜と対等に話はすまい?」
神職者と魔族。互いに相容れるはずが無い。いつの間にやら、外で騒いでいた魔物達までが、2人の一騎打ちを固唾を呑
んで見守っている。
「カエラさんは次で決着をつける気です」
ようやく落ち着いた深田が囁いた。
カエラが意を決して繰り出したハルバートの斧部。それをレイピアで受け止めるヤックソ。両者の力は拮抗。いや、違う。
互角ではない。力比べの最中だというのに、カエラは両手で握っていた得物を、片手に持ち変えた。そして、懐から抜
いた小刀でヤックソの両目を切り裂いた。
「ぐぉ!?」
ひるんだヤックソの腹部を、今度は先端の槍部が刺し貫いた。顔面と腹に連続攻撃を食らい、さすがのヤックソも力な
くよろめく。しかし、それでも戦意は衰えを見せない。視力を失った眼で、なおレイピアを手放さない屈強な精神は壮
絶ですらある。魔族の優位性に絶対の自信を持っているからこそだろう。
「これしきのことで!まだだ。まだ私は…………な!?」
瞬間、ヤックソの身体が浮き上がった。その胸から何かが突き出ている。魔族の黒い血液で塗られたそれは、紛れも無
い人の腕だ。持ち上げられたヤックソの背後から、あたかも台所の暖簾からそうするように、スポーツ刈りの男がひょ
いと顔を見せた。
20 :
1:2005/06/07(火) 00:03:38
「もういいよ。君、どうせ勝ち目ないし」
「そん、な、え、なり……貴様!!」
ヤックソはどす黒い血を吐き、絶命した。
えなり。こいつがえなりなのか。その風体は魔族と言うには不釣合いで、結構長めのドラマに子役時代から出演してい
たり、ゴルフ誌に連載を持ったりしていそうな、とにかく見事なまでにえなっている。
仲間であるえなりが、ヤックソに止めを刺した。この異常な展開に誰もが唖然としている。
「えなりぃいいい!!」
突然、平井が咆哮した。俺は驚いた(商品手配を忘れていて、一週間経ってから思い出した時くらい)。今まで彼が一
度としてみせたことのない鬼気迫る形相だ。
平井は刀の刃を立てて、恋人の仇を討つべく疾走する。するとえなりの後ろからもう一人の男が進み出た。その黒髪の
男は、背中に背負っていた巨大なクレイモアを抜くと、平井の刀から主を守った。
「お前にはまだ僕と闘う権利はないよ」
えなりは垂れ目をこれでもかと細めて最高の笑顔を投げかける。それに対して苛立ちを顕わにした平井の刀に、曇りが
生じた。クレイモアの勢いに押され砂飛沫を上げて後退する。彼が持つ刀の刀身に亀裂が走った。
「有田に勝てないんじゃ僕とは闘えない」
えなりは笑顔を微塵も崩すことなく、ヤックソの身体を打ち捨てた。
側近と思われる男の名に、俺は聞き覚えがある。彼は平井から目を離し、深田に顔を向けた。その全身からは負の気が
迸っており、天を突く毛髪も相まって、彼が生粋の魔族であることを如実に証明している。穏やかな面持ちで、彼は静
かに口を開いた。
「…久しぶりだな。恭子」
「有田…今頃なぜ…」
男は、深田のかつての恋人であり彼女の身篭っている子供の父親、有田だった。
続く
>>1乙。
えなってる、ワロタ
22 :
1:2005/06/07(火) 00:20:09
今日はここまで。
あとファンタジー編のOP,EDまだ決めてなかったんで。
OP ジョー山中「人間の照明のテーマ」
ED Miz 「Circles」
管理人さん、ログうpありがとー
>商品手配を忘れていて、一週間経ってから思い出した時くらい
ワロタw
ここだったのか。電車が多くて迷った
重複スレに誤爆してしまった。orz
>>1乙。
リアルのえなりには興味ないのに、
>>1のえなりは大好きだ。
で、今回もえなりはイケメソですか?
えなってる噴いた
えなってる禿藁
えなり最高にワロスw
>1乙
なんか、こまめに保守しておいたほうがよさそうだな
33 :
Mr.名無しさん:2005/06/07(火) 21:13:13
ひょす
36 :
1:2005/06/07(火) 23:32:30
次は9日くらい。
ってか、
>>35よく見つけたなw。
37 :
Mr.名無しさん:2005/06/08(水) 13:48:43
保守age
38 :
Mr.名無しさん:2005/06/08(水) 23:47:39
29話前半見逃したみたいなんだけどまたうpしてくれるかな・・・?
39 :
Mr.名無しさん:2005/06/09(木) 00:20:52
>>38 既にまとめ氏がまとめページにうp済みだ。
もうすぐまとめページが1000逝くな
まぁ、そのうち500くらいは俺なんだが
おかしいぞ。600は俺なんだが。
もしや、お前は俺か?
やっぱり2,3人しか居ないんだな…
人少ない方がいいよ。前スレで他スレに教えてる奴とかうざかった。
44 :
1:2005/06/09(木) 20:17:12
第30話(前半)
アブソリュート・サークルが完全に消えた。しかし、外の魔物は不気味な平静を保っている。腕の中の甜歌に目を落とすと、
魔力を使い果たしてしまったのだろう、すやすやと寝息を立てている。俺は彼女の身体をそっとその場に横たえると、立ち
上がった。
「ヤックソ様ガ倒サレタ…」
絶対的な強さを誇った主ヤックソが殺された事態を、魔物達は呑み込めないでいる。しかも、仲間であるはずのえなりによ
って息の根を止められたのだから、尚更混乱せずにはいられない。指針を与える存在を失った者達が、行き先を求めて騒ぎ
始めた。
「俺達ハドウスレバイインダ」
「ヤックソ様ノカタキヲウツゾ」
混乱は次第に一つの形にまとまりを見せていく。
「ドイツダ……ドイツダ…」
「ヤックソ様ヲ殺シタノハ…アイツダ!!」
ずんぐりむっくりした魔物(沖山。小学校三年の担任。渾名はオキヤマゴン)が、闘技エリア内のえなりを指した。それを
受けたえなりは、初めて笑顔を消した。
「全くつまらない連中だ。これだから低級な魔物は使うべきじゃないんだよ」
強い不快感を示しているようだ。
「よろしい!まとめて掛かってきたまえ!!!」
えなりが吼えた。善人顔からは想像もつかない爆音とも呼べる怒号は、鼓膜を劈くばかりに響き渡り、闘技場を震撼させた。
「ォォォォオオオオオオ!!」
それに負けじと魔物達が鬨を合わせた。俺は危険を察知して、気を失っている甜歌を両腕で抱きかかえる。えなりが両手を
胸の前で交差した。何やら魔力を溜めている様子。それを見た有田は、一瞬ぎょっとして身を屈めた。深田にも地面に伏せ
るよう促す。
45 :
1:2005/06/09(木) 20:17:39
「やれやれ、えなり様はノリがいいからなぁ」
「どういうことです」
「見てなよ。一瞬でかたがつくから」
「一瞬で………は!いけない。みんな、その場に伏せてください!」
何かに気付いた深田が、目を見開いて俺達に叫んだ。俺と平井、カエラは彼女の意図が理解できないものの、咄嗟に地に這
いつくばった。
その間にも、魔物達は観客席から闘技エリアに大挙して押し寄せてくる。このままだと俺達も踏み潰されてお陀仏なのだが、
ここは深田の言葉を信じて伏せているしかない。
「塵に帰せ!!!」
えなりが交差した両腕を、ちょうど彼の頭上から見ると綺麗な円を描くように、素早く開いた。
頭の上で一陣の風が吹いた。時が止まっている。そう思えるくらいに周囲が静けさに包まれた。魔物の咆哮が瞬時に消えた
のである。様子を見るべく顔を上げると、
「ない…」
ないのである。こちらに向かってくる全ての魔物の上半身がない。一定の高さ、つまりえなりの肩ほどの高さから上が、皆
一様にそっくり吹き飛ばされているのだ。最前列から最後部までまるで計算したかのように。
「これが……えなりの力なのか!?」
ヤバイ。えなりヤバイ。まじでヤバイよ、マジヤバイ。 えなりヤバイ。
まず強い。もう強いなんてもんじゃない。超強い。
強いとかっても
「ボビーくらい?」
とか、もう、そういうレベルじゃない。
何しろ瞬殺。スゲェ!なんか一発で闘技場埋め尽くす魔物葬り去ってる。K1とかプライドをかなりの勢いで超越してる。瞬
殺だし超強い。
46 :
1:2005/06/09(木) 20:18:00
しかも歴代魔王の側近らしい。ヤバイよ、魔王だよ。側近だよ。
だって普通の魔族は魔王の側近とかならないじゃん。だって勇者一行がラストダンジョンに乗り込んできたりとかしたら困
るじゃん。直前のセーブポイントで腰を据えて最大値までレベルアップとかされてると困るっしょ。
ダンジョンに入った時はレベル27だったのに、自分のポジションに来た時はレベル99とか泣くっしょ。
だから普通の魔族は魔王の側近なんてしない。話のわかるヤツだ。
けどえなりはヤバイ。そんなの気にしない。側近しまくり。恐らく歴代魔王に片腕とか懐刀とか言われて絶対の信頼を一身
に受けていたくらい側近。ヤバすぎ。
……などと、ついヤバイのガイドラインに沿ってしまうほどの力をまざまざと見せつけられ、俺は驚愕せずにはいられない。
我知らず、俺は両手の震えを止めようと握り締めた。
さすがに魔力を消耗したのか、えなりは額の汗をぬぐった。先ほどの不快感とは打って変わって、彼の表情はゴルフで18ホ
ール回り終えた後のような心地よい疲労感を湛えている。
「さて、それじゃあもう行くね。君達は特別に生かしておいてあげるから、二度と僕らの前に姿を現さないでくれ」
返す言葉が見つからない。ヤックソにさえ遅れを取っていた俺である。絶対的な力の差を示されて、強がることができない。
中学時代、得体の知れないヤンキー集団にカツられた時のように。
「そうは問屋がおろさないわ」
カエラが前に進み出た。いつの間にか敬語から元の言葉遣いに戻っている。別人格は姿を消したようだ。ハルバートの槍先
をえなりに向けて、言葉を続ける。
「世界を乱し、人々の生活を踏みにじるあなた達を、野放しになんてできるわけないじゃない」
言っていることはやはりカエラも別人格も同じだ。それにしても無謀が過ぎる。俺はカエラの発言に、えなりがどう出るの
か固唾を呑んで見守った。彼は嘲笑で答える。
「なかなかの度胸だな。だが、今日は君の相手をしている暇は無い。有田行くぞ」
「行かせてたまるか!」
カエラがえなりに斬りかかる。が、先ほどの平井同様、割って入った有田に斬撃を受け止められ、そのまま弾き返されてし
まった。
47 :
1:2005/06/09(木) 20:18:20
「言ったろう。お前らはえなり様と戦う権利がないって」
有田も決して本気は出していない。主人に倣っているのか、どこまでも人を食った態度。
「さて、恭子。行こうか」
クレイモアを背中に背負い直すと、有田は深田に近寄った。
「は?」
深田は眉をしかめて、ロングソードを抜いた。
「つれないな。昔は色々と楽しんだ仲じゃないか」
「言わないで。あなたが卑劣な魔族と知っていれば…」
ロングソードの切っ先を眉間に突きつけれた有田は、
「相変わらずだな。だがお前のそういうところ、俺は今でも好きだぜ」
「わたしはあなたの婚約者を殺した女よ?」
「ああ、そうだったな」
その顔には、婚約者を亡くした者の苦悩などは全く認められない。あるのは軽薄な笑みのみ。
「じゃあ、その責任をとって俺と結婚してくれ」
「な、何を!?」
場がどよめいた。俺は彼の唐突なプロポーズに呆れて、あんぐりと口を開けた。
「一緒に来てくれ、恭子。上原との関係は周囲が騒いだだけなんだ。俺の君への愛は変わっていない」
歯が浮くどころか抜け落ちてしまいそうな臭い台詞を、よくもまぁ軽々と言ってのけてくれる。
「ふざけないで!何を今更」
異世界人専用ロングソードの刀身が黒く変貌を始めた。それを制止するかのように、
「おっと、そうだ。これは言っとかなきゃな」
有田が深田の耳を手で覆い小声で何かを囁いた。内容は聴き取れないが、深田の表情に変化は無い。
「さぁ」
有田は手を差し出した。
しばし目を瞑り、沈黙を続ける深田。そして目を開くと、有田が出している手に、自分の手の平を重ねた。
「ハハハ。深田さん、嘘だろ…?」
48 :
1:2005/06/09(木) 20:18:46
彼女の思惑が分からず、半笑いを浮かべて詰め寄る俺に、
「ごめんなさい…」
深田は一言、謝った。
「お前、ひょっとして恭子に惚れてたの?だったら、とんだ勘違いだぜ」
有田が俺の目を見て、傑作とばかりに嘲った。
「行くよ」
えなりが魔術で漆黒の渦を発生させた。えなりの身長より少し高いそれは、別の場所に移動するためのゲートなのだろう。
えなりと有田、そして深田は一瞥することなく、その中に吸い込まれるように消えていった。
残された俺達は呆然と立ち尽くす。俺の中に言い様の無い怒りがこみ上げてきた。
「一緒に日本に帰るんじゃなかったんかよ!!!」
俺は力任せに、俺専用異世界人専用聖剣を地に投げつけた。
続く
Σ(゚Д゚;)
ここの深田は良い娘だと思ってたのに〜!
続きが気になりまくり⊂⌒~⊃*。Д。)⊃
今日のは一段とおもしろい
最後の終わり方がよかった。感動をありがとう
53 :
1:2005/06/09(木) 22:34:52
今日はここまで。
最近の
>>1はペースが落ちて一回にうpする量が増えてるね。
俺が思うに二回に分けてうpするほうがいいんじゃないかな。
読みやすいし楽しみ増えるし。
イカス!
とにかくGJ
>>ダンジョンに入った時はレベル27だったのに、自分のポジションに来た時はレベル99とか泣くっしょ。
ワロタ
今回のえなりはマジ強いな。
そろそろ分岐キボンヌ
なかなかいい妄想拾ったんだけどうpしていい?
バイオハザードっぽいの。
ほす
66 :
Mr.名無しさん:2005/06/11(土) 23:43:14
>>64 お前が考えたのならいいと思うけど拾ったのは作者の了解がいるんじゃね?
67 :
64:2005/06/12(日) 14:22:42
>>66なるほろ。作者不明だし止めとくぽ。
ちょっと長いし。
HP1000アクセス逝ったら何かしようぜ!
70 :
Mr.名無しさん:2005/06/12(日) 22:49:08
71 :
1:2005/06/13(月) 00:24:40
次は15日くらい。
>>72 俺もおごろう
しかしそのためには
>>1が上京せねばならんのだが・・・
初めてテンカ見たけど、
>>1にでてくるのとイメージが違う。
>>1のほうが萌えるね!
テンカ見たいいいいいいぃぃぃぃ
1000行ったら寧ろ1に何かして欲しい
1には何も求めるんじゃない。好きなようにやらせるんだ。
1,000いったわけだが。
うおおおおおお1001げとーーーーー
80 :
Mr.名無しさん:2005/06/13(月) 23:32:45
しかしなにもおこらなかった
一番海苔かな?
赤川さんのファンです。
こうしてみると甜歌だけなんだよな。フル出演してるの
>>81お茶ドゾー( ^^) _旦~~
ちなみにテンカにいれますた
深田さん(なぜか「さん」付け)に1票入れたぜ!
なぜか甜歌に入れてもうた
甜歌と赤川さんが人気あるな〜
そろそろかな?ワクワクテカテカ
>>84 甜歌のキャラは回を重ねるごとに生き生きとしてきてる。
>>1はよっぽどファンなんだね。
ま、おれも甜歌に投票したけどね。
深田に一票。イメージを思い浮かべやすいから
92 :
1:2005/06/15(水) 22:54:27
第30話(後半)
ヤックソの死とその軍勢の全滅は、ラミハの街を俄かに活気付かせた。報せを聞いた人々は
閉ざしていた門戸を開け放ち、通りをパレードが練り歩くわ、至る所で酒が振舞われるわで、
街はたちまちオモチャ箱をひっくり返したようなお祭り騒ぎの様相を呈した。
俺達はラミハを開放した勇者として、まさにVIP(本来の意味)待遇。宿屋では、今まで縁が
無かったスウィートルーム(歳は普通に取る。基本は馬小屋)に部屋を取って貰い、なおか
つ専属のメイド(森三中)まで付く始末。そうした生活が3日続いた。
そして今夜、俺達は町長主催のパーティに招かれたことになった。優雅なサロンで開催され
たこのパーティの出席者は、いずれも町のセレブリティ(ハワード・ヒューズ、ジョン・ロ
ックフェラー、マーサ・スチュワート、パリス・ヒルトン、エルビス・プレスリー、クリス
ティーナ・アギレラ、エミネム、ホリエモン、三木谷、デヴィ夫人、叶姉姉妹、摩邪、あた
りをガヤとして適当に配置)。いかにも高価そうな純白のクロスを敷いた長テーブルの上に
は、所狭しと豪奢な料理が並べられている。
長々しい町長の挨拶の中で、俺達の名前が呼ばれ、会場を拍手が満たした。こういう宴の場
に慣れていない俺達は、照れながら手を振った。
「おいしい!!これもこれも、これもいただき♪」
町長の挨拶が終わるや、会場に甜歌の声が響いた。彼女は至って無邪気なもので、食べきれ
るのかという大量の料理を、取り皿に山と積み上げていく。ヤックソとの戦闘で負った傷も、
順調に快復している。
93 :
1:2005/06/15(水) 22:54:49
「甜歌はよく食べるねぇ」
とカエラ。そう言う彼女も、相当な量の食べ物を皿によそっている。
そんな2人の食い気をよそに、俺は会場の隅で飲めないワインを、ちびちびと口に運んでい
た。何かとセレブ連中が話しかけてくるが、返事を最小限に止めている。そうすることで、
相手が飽きて去るのを待つ。毒男の基本スキルだ。
「あまり食欲が無いようですね」
すっかり周囲の空気に溶け込んで談笑していた平井が、話の合間に俺の側に寄って来た。
「ああ。ちょっとね。どうもこういう場は苦手で」
具合が悪そうに、俺は後頭部を書いた。
「深田さんのことを気に掛けているんですか?」
「いや、別に……」
別にも何も図星も図星、ウメボシ殿下。
「彼女が有田と一緒に行ったことはやはりショックです。ここまで旅を共にしてきた仲間。
甜歌やカエラさんもああして元気そうにしてるけど、それは沈んだ本心を隠すためじゃない
でしょうか」
「ああ」
「僕も出来れば彼女の真意ではないと信じたい。でも……」
「でも?」
「いざ戦うとなれば話は別です。僕はえなりという仇を討たねばならない。その障害として
深田さんが立ちはだかるなら容赦はしません。あなたも例外じゃない。厳しいようだが、旅
を続けるなら彼女と剣を交える覚悟をしないと」
「俺は……」
94 :
1:2005/06/15(水) 22:55:08
俺は平井の物言いに腹を立てて、言い返そうと言葉を練った。しかし、言葉は出てこない。
彼の意見は一々ごもっとも。この先、深田と相まみえた時、俺は果たして彼女に剣を向ける
ことができるだろうか。敵としての彼女を受け入れられるだろうか。
「お兄ちゃん、食べようよ」
俺の危機を救うナイスタイミングで、甜歌が目の前に皿を差し出してきた。
「ごめんな。今はそういう気分じゃないんだ」
申し訳なさそうに笑って、俺は一人で夜の街に出た。月明かりは朧で、酔った魔術士が灯し
た、今にも消えそうな街路灯の灯りだけが頼りだ。
最初の頃は昼夜問わずの大騒ぎだったが、3日も経つとさすがにお祭りムードも薄れ、深夜
の町は実に静かだ。時折、遠くから酔っ払いの大声が聴こえるくらいで、昼間の喧騒が嘘の
よう。
月明かりの下を歩いていると、俺は奇妙な匂いを覚えた。
「この匂いは……どこからだ?」
異臭。ちょうど今現在うちの台所から流れている三日間放置したカレーが発する異臭、それ
を何倍にも強くしたような匂いが、次第に強くなっていく。その方に急ぐと、ハナマノレマ
ーケットの広場で、建物の2階まで届こうかという炎が、夜の闇に赤々と燃えている。
「死骸を燃やしているのか」
闘技場に散乱していた魔物の死骸を、わざわざ広場まで運んで焼いているのだ。ふと見渡せ
ば、あちらこちらに魔物の骸が転がっている。中には数匹、まだ生きている魔物も混ざって
いる。人々はそれに落書きをしたり、足蹴にしたりしている。今まで魔物に虐げられてきた
のだから、当然といえば当然の仕打ちなのかもしれない。
95 :
1:2005/06/15(水) 22:55:32
「魔物っつっても力を失えば同じ。憐れなもんだ」
俺の右背後から、しわがれた声を掛けるものがいる。振り返ると、牢獄で出会った元ルック
ルック隊の岸部が、相変わらずの無気力な表情で佇んでいる。
「ほれ、あそこで蹴り入れてる連中の顔見てみなよ。えらい楽しそうだなぁ」
炎に照らされる彼らの顔は、サディスティックな感情を剥き出しにしており、とても魔物に
怯えていた人間達とは思えない。
「憎悪は憎悪を生み、それは永遠に繰り返される。神さんも因果な世界を創造したもんだ」
一週間前までの人間と魔物、そして今、目の前の人間と魔物。今こうして見比べてみると、
両者の間に一体どれだけの違いがあるのだろうか。
「岸部さんはこれからどうするんですか?」
「そうさなぁ。俺はシフィーロに行ってみるよ。近々面白いことがあるそうだから」
「そうですか」
岸部と並んで、俺は燃え上がる炎をいつまでも見ていた。
翌朝、俺は平井の部屋に呼ばれた。既に甜歌とカエラは集まっており、小さな丸テーブルを
前に椅子に座っている。平井はテーブルの上に、一枚の地図を広げた。
「今日はこれからについて話し合おうと思うんです」
「ああ」
俺はカエラがすすめてくれた椅子に腰掛けた。地図は以前見せられた物だ。今いる大陸上に
3つの点が置かれており、それぞれが魔族の拠点を表している。羽根付ペンにインクを浸し
た平井は、それらの内、ガシヒロとラミハを黒インクで消しこんだ。
「ガシハラとラミハの魔族を倒した今、残るはここ……」
彼はペン先で、大陸の南に位置する第3の拠点を指し示した。
96 :
1:2005/06/15(水) 22:55:49
「孤島の砦ミャジマ。ここがえなりの根城です」
……えなりはここにいるのか。ということは深田さんも……
「えなりっていう人、一体どういうつもりなんだろう。だって、ヤックソとか自分の兵士ま
でやっちゃうなんて。ウチだったら戦力として残すけどなぁ」
……深田さんは何故有田に付いて行ったんだろう……
「奴は生まれついての享楽家です。その時の気分次第で、相手は敵だろうが味方だろうが構
わない。快楽を得る為だけに戦いに身を投じている男。言わば鬼畜。それがえなりです」
……口調からして相当親しそうだった。やはりまだ彼のことが……
「えなりと有田が深田を迎えに来た。私が思うに、これって魔王の誕生が近いことを意味し
てるんじゃない?」
……しかし、あの時の喋り方は、彼を嫌悪していたようにも思えたし……
「可能性は高いですね。奴は歴代魔王に仕えることを条件に、永遠の命を与えられている。
魔王誕生を察知して、深田さんを誘ったと考えるのが妥当でしょう」
……いや、違う。俺がそう思いたいだけだ。ご都合主義にも程がある……
「お兄ちゃん、大丈夫?」
……これくらいの裏切りには慣れているはずだ…………
「お兄ちゃん!!」
……そうだ。いつものことなんだ……
「お兄ちゃん!!!」
「ん、ああ、そうだな」
97 :
1:2005/06/15(水) 22:56:07
我に返って適当な返事をした俺の顔を、甜歌が心配そうにのぞきこんでいる。それを見た平井
とカエラも複雑な表情だ。
「わりぃ、ちょっと考え事してた」
取り繕うように笑う俺の顔を眺める平井達。そして彼らは、意を決したように頷き合った。
「実はもう一つ話があるんです」
平井は、いつも以上に真剣な面持ちで切り出した。
「なに?」
「昨晩、シフィーロからの伝令がこの手紙を届けに来たんです」
そう言って、平井は懐から一枚の白封筒を取り出した。俺は、赤い封蝋を解かれたそれを受け
取り、中の手紙に目を通す。手紙の内容を端的に述べると、三大魔族最後の一人であるえなり
を討伐するために、シフィーロに各国から精鋭の軍隊が集結しているとのこと。
「世界規模の一軍を作って、一気にかたをつけようってわけか」
俺は手紙を再び封筒にしまって、平井に返した。
「はい。僕らも今の人数では、とてもじゃないがえなりには太刀打ちできない。そこで話し合
って、えなり討伐軍に参加することにしたんです」
「おいおい。話し合ったって、俺は何も聞いてないよ」
そんな重要なことを勝手に決められても困る。
「うん……えっとね。お兄ちゃんは恭子お姉ちゃんを一緒に連れて帰る為に旅をすることにし
たんでしょ……でも、お姉ちゃんがあんなことになった以上…」
いかにも言い難そうに甜歌は言葉を止めた。
98 :
1:2005/06/15(水) 22:56:28
「要するに何がいいたいんだ?」
業を煮やした俺に、
「つまり、あなたはこの先の旅を続ける理由がなくなったってこと」
カエラがとどめとばかりに、はっきりと言い放った。
「あ……なるほど。そうか。そうだな。ははは、空気嫁よ>>俺。マジレスすると足手まといだ
ってことか」
「違うの…そういう意味じゃ…」
詰まる甜歌に、俺は更にたたみ掛ける。
「何が違う?持って回った言い方じゃなくていいから正直に言えよ。もし深田さんを敵に回し
た時、同じ世界から来た俺じゃ、彼女に情があるから手を出せないってんだろ?」
大粒の涙をこぼす甜歌に強い罪悪感を感じながらも、俺は感情を押し戻すことができない。そ
こに平井が言う。
「そうです。えなりが魔王と出会い、世界侵略のノウハウを教え込めば、この世界は暗黒の時
代に突入します。そんな時に、深田さんと世界を両天秤に掛けられては困るんです」
「そうだな。平井、お前の言うことはもっともだ。俺はお前らほど非情になれないからな。所
詮は異世界の者同士。深田さんが奴らの元に行った途端、お前らは…」
その時、カエラの鉄拳が俺の顔面にめり込んだ(ジャイアンパンチを食らったのび犬くらい)。
俺は衝撃で壁で背中を激しく打ち、壁を滑るように崩れた。鼻と唇から血がだらだらと滴り落
ちる。
「お兄ちゃん!!」
「あなたに聖剣を持つ資格は無いわ」
「く……」
おおっこんな時間に来た!!
100 :
1:2005/06/15(水) 22:56:56
カエラと甜歌を両腕で押しのけて、俺は逃げるように部屋を出た。食堂の横を取る時、朝食を
取っている男が声をかけてきた。
「よぉ、勇者さん!どこ行くんだい?」
「現実世界に帰るんだよ!ブラボー!クソッタレファンタジー世界!!」
きょとんとしている男を無視して、そのまま宿屋を飛び出した俺は、町外れの草原を目指した。
街中では依然として好奇の視線にさらされるからだ。しばらく歩いて草原に着くと、孤立して
立っている喬木の根元に、俺専用異世界人専用聖剣を突き刺した。
「今までありがとうな。次はもっと相応しい奴が、お前の所有者になってくれるといいな」
そっと剣の束に触れる。しかし、剣は何も語ってはくれない。
ゲート石を地面に埋めると、楕円形の渦が宙に発生した。ゲートの向こう側からは、自動車の
走行音や人の声など、現実世界の音がかすかに聞こえる。
この展開は、エロゲで言うところのバッドエンドなのだろうが、所詮人生なんてこんなものだ。
そう自分に言い聞かせて、俺はゲートに足を踏み入れようと、右の足首を浮かせた。
「……」
俺は寸前で足を止めた。自分の行動が、闘技場でゲートをくぐった深田の姿と重なったからだ。
俺は忌々しさを感じながら、再びゲート内の暗黒に足を進めた。
続く
101 :
1:2005/06/15(水) 22:57:37
乙。今日は長いな。ペースは気にしないで、好きなようにやってくれ。
悪い、興奮して間に割って入ってしまった。
摩邪ワロスww
おいおい、現実世界に戻るのか?
106 :
1:2005/06/16(木) 00:23:45
今日はここまで。
続きが激しく気になるぜ・・・・!!!!!!
昨日あれだけうpしたから今日は無しかな?
110 :
Mr.名無しさん:2005/06/16(木) 23:39:42
>>109 全部投下したらしいからな
次に期待age
111 :
1:2005/06/17(金) 01:09:01
次は20日か21日くらい。
人気投票は実際どれくらいの人数投票してんだろな
重複多そうだしな ちなみに赤川さんにいっぴょ
投票数45か。まあそのうち20は俺だが。
残りのうち15はオレ
このやり取りも当たり前になってきたな。やっぱり3人しか居ないのか。
残りの10はもちろん俺だ。
ここまで少人数でしめやかに続くスレもめずらしいな
おまいらやり杉
俺なんか甜歌たんにたった三票で我慢した
一日に1話づつでいいから毎日掲載して欲しい
欝な通勤電車の中での唯一の楽しみだし
>>120 今、“U-15タレント”なんて板があるんだな。
久々に写真をみたけど、なかなか愛嬌ありそうな、かわいいこじゃん。
甜歌に投票しといてまだ見たことない俺がいますよorz
今度いつテレビ出るの?
123 :
Mr.名無しさん:2005/06/18(土) 13:24:20
天てれ見とけばそのうち出るよ
で、イェスマンスレはどこなんだ?
125 :
Mr.名無しさん:2005/06/18(土) 23:41:22
投票に岸辺が追加されてるw
そのうち悪乗りして投票に お茶汲み係り とか神レスしたレス番とか追加されるのだろーか?
んなこたねーかwww
ゴメ、スレ汚し
128 :
Mr.名無しさん:2005/06/19(日) 23:50:12
さて1も甜歌の握手会から帰ったことだし明日は期待してるぜ
129 :
1:2005/06/20(月) 11:47:29
糞、休みだったのに、仕事になったよ…
まぁ、なんつーか、ガンガレ
131 :
Mr.名無しさん:2005/06/20(月) 14:31:17
仕事だったのに体調が悪くて半休取った俺が来ましたよ。
>>1がんがれ!
てか投票にイェスマンが・・・
135 :
122:2005/06/20(月) 18:50:32
ついにテンテレで甜歌キターーヨーーー(・∀;)ウッウッ
カワイイ・・・
136 :
131:2005/06/20(月) 19:16:21
俺が悪かったのか!
俺今週休日出勤だからその時休んでくれ!
137 :
1:2005/06/20(月) 20:16:54
スマソ。
次22日位。
138 :
Mr.名無しさん:2005/06/21(火) 22:01:04
とりあえずageとく
139 :
Mr.名無しさん:2005/06/21(火) 23:30:43
オレもageとく
140 :
Mr.名無しさん:2005/06/22(水) 17:04:27
今日かな?
今日だな!
人気投票でイェスマンがカエラや甜歌と並んでいる件について
そろそろか?
まだなの(;´Д`)ハァハァ
145 :
Mr.名無しさん:2005/06/22(水) 23:47:52
146 :
Mr.名無しさん:2005/06/23(木) 00:03:24
↓(゚∀゚ )
今日、はじめて天テレ見た。
もちろん甜歌を見てみたいからだ。
存外面白かったな。
ナチュラルにハイテンションの子供らのエネルギーを感じたよ。
彼らもタレントの訓練をしてはいるんだろうけど、
演技で盛り上がっているようには見えなかった。
見終わった後、なんだか結婚して子供がほしいとしんみり思ってしまった。
149 :
1:2005/06/23(木) 00:49:22
第31話(前半)
暗黒のトンネルを歩く内、不意に視界を真っ白な光が覆った。強烈な目くらましにやられた俺は、瞬間、目をつぶった。
そして、次に瞼を明けた時、木製の蓋で封をされた石井戸が目に飛び込んできた。顔を上げて周囲を見回すと、夕焼け
空を背景にして古ぼけた民家が佇んでいる。
俺は朽ちかけた井戸口にかぶさった円形の木板に触れてみるが、
「閉まってる」
久しく開けられた形跡はない。この井戸に落ち、あの奇妙奇天烈摩訶不思議奇想天外荒唐無稽空前絶後的世界に飛ばさ
れたはず。
「夢・・・・・・だったのか」
俺の右手には配達伝票が握られており、身に付けている衣服は冒険者用の服ではなく、御馴染みの家電店の制服だ。や
はり幻覚だったのか。
「だよな。アニメや漫画、っていうか、俺が寝る前にしてる妄想じゃあるまいし」
背中に何かが触れた。俺ははっとして後ろを振り返った。
「あんた熱心に井戸を見ようたが、何かあったんね?」
老婆が俺の背中に手を置いている。そうだ。あの時、この老婆に井戸を覗くようにすすめられ、その後、何者か、と言
うかまず間違いなくこの妖婆に背中を押されて俺は井戸に落下した。しかし、井戸が閉まっている以上、それも自分の
幻覚と捉えるしかない。
「え、いえ、別に……ありがとうございました」
異様なまでに夕陽で逆光して、老婆の表情を読み取ることは出来ない。しかし、踵を返して去ろうとした俺は、後ろか
ら老婆の視線を感じて妙な寒気を感じた。振り返ることはせず、サービスカーに乗り込んだ俺は、配達伝票を伝票入れ
にしまいキーを回した。
150 :
1:2005/06/23(木) 00:49:47
橋を走行していると、上空に朱の太陽を浮かべ、川面をきらめかせる馬洗川が目に映った。見慣れた光景だが、やはり
何度見ても美しい。いつも走っているはずなのに、長い間お目にかかっていないような気がしてならない。それほどま
でにあの長い白昼夢は現実味を帯びていたのだ。
俺が店に戻ると、上司が声を掛けてきた。
「お疲れさん」
「お疲れ様です」
「いつもより時間がかかったみたいだが、どうだったよ?」
「すいません。でも特に問題はないです。結線にちょっと手間取って」
適当に笑ってごまかして、俺は休憩室に向かった。勤務を終えたアルバイトの坂上(高校卒業したばかり。俺より断然
年下なのにタメ口)が、やたら明るい表情で近寄ってきた。
「何だか顔色が悪いよ?」
「大丈夫だよ。でも、ちょっと疲れが溜まってきたかな」
「ふぅん。ねぇ、今日徹カラ(徹夜カラオケのことらしい)いかない?」
いや、たった今疲れが溜まってると言ったはずなんだが。相手の都合などお構いなしなのだが、それでもお客さんの評
判は何故か良い。彼女特有の明るさがあってこそなせる業だろう。やはり性格が明るいと何かと得だ。
「悪いな。今日はちょっと調子が良くないんで」
「つまんない男だなぁ。まぁいいや。それじゃまた今度ね。お疲れ様でした〜」
坂上の背中を見送って、俺は休憩室に備え付けてある冷蔵庫から飲みかけの烏龍茶を取り出した。それを片手に持って、
椅子に腰を下ろす。
(にしてもやけに現実味ある幻覚だったな)
ペットボトルに口をつける。
(そりゃまぁ、毎晩寝る前にしょうもない妄想をしているけど、さすがにここまでくるとヤバイよなぁ。ほとんど現実
みたいな感覚だったもんなぁ。俺病院行ったほうがいいのか)
もう一口、茶を口に運ぶ。
とりあえず待ってる間にオナヌーしてみた
152 :
1:2005/06/23(木) 00:50:09
(深田さん、甜歌、平井、カエラ……彼らは皆俺の想像の産物だったのか……)
ペットボトルを逆様にすると、中身を一気に飲み干し、それをゴミ箱に投げ入れた。
「いずれにしろ、もう俺には関係ないことだ」
独り言を吐いて俺は売り場に出た。平日の、殊に閉店間際ということもあり、客の入りは少ない。そんな中でも諸作業
をこなすことで、次第に現実世界にいることが確かな実感となって蘇ってくる。ようやく幻覚から戻ってくることが出
来た。今までと同じ生活。そう、この退屈な日常へ。
そうして一週間が過ぎた。以前と変わらない生活。起きて、仕事に行って、帰って夕食を取って、2chをして、寝る。
まさに毒男である。
だが、一つだけ変わったこともある。俺は就寝前に寝床で妄想することをやめた。眠りに落ちるぎりぎりの所まで本を
読んで、そのままフェードアウト。少しでも妄想世界での出来事を思い出さずに済むと思ったからだ。しかし、それは
とんだ思い違いだった。確かに寝る直前まで深田達の姿を忘れることが出来たが、そうしたら今度は彼らが夢の中に現
れ出したのだ。夢の内容は、大概彼ら魔物の軍勢に追い詰められている情景で、それを見るたび、うなされて俺は覚醒
させられた。そして、大量の汗を拭いながら決まってこう呟くのだった。
「一体俺にどうしろってんだ」
その日、何年ぶりかの早帰りをした俺は、夕刻の河川敷を歩くことにした。気に入ってよく散歩するこの場所へ来れば、
少しは気が休まるかと思ったからだ。そうしてぶらぶらと歩いていると、背後から声をかける者がある。
「こんな所で何してるんですか?」
振り返ると、右手に買い物袋を提げた女性が立っている。
「あ、赤……鳥羽さん」
既に退社した元同僚だ。旧姓は赤川。同じ店の工事業者である鳥羽と結婚した。俺は彼女に密かに心を寄せていたのが、
その事はとうとう言えずじまいだった。俺達は斜面を覆う草むらに腰を下ろして、少し話をすることにした。
「どう?結婚生活は」
聞きたくもないことを、社交辞令的に尋ねる俺。
「うん。とっても幸せ。でも、いつも家にいるからちょっと退屈かなぁ」
「だろうね。鳥羽さんは仕事好きだったもんな」
153 :
1:2005/06/23(木) 00:50:27
彼女の性格からして、家でじっとしているのは我慢がならないに違いない。今日も夕食の買い物がてらに散歩をしてい
るのだろう。
「あ、そうだ。これ報告しとかなきゃ。今、私のお腹の中に怪物が寄生してるの」
「え!?」
俺はどきりとして目を見開いた。普通ならこんな冗談は軽く突っ込んで流すところだが、深田のことを暗示しているよ
うに思えて、自分でも驚くぐらい大きな反応を返してしまった。
「あははは、リアクション大きいのは相変わらずねぇ。冗談よ。赤ちゃんができただけよ」
「なんだよ。びっくりさせ……って……赤……ちゃん……!!??」
またもや驚かされ、口をあんぐりと開ける俺。
「そう。赤ちゃんができたの。今3ヶ月」
赤川さんは落ち着いた穏やかな表情で、自分の腹を優しく撫でた。一方で俺はというと金縛り状態で硬直している。い
きなり白のペンキをぶちまけられたような思考の中、辛うじて声を絞り出す。
「へ、へぇ、そうなの……ヒヒヒ、おめでとう」
この場に鏡がなくて良かった。動転のあまり怪体な声で笑って祝福の言葉を送る俺の笑顔が、どれだけ不細工に歪んで
見えることか。
「ありがとう」
赤川さんは照れて相好を崩す。
「そうかぁ、赤川さ……いや、鳥羽さんもついにお母さんになるのか。でも、いいお母さんになれると思う。君なら」
流れ出しそうになる涙を必死にこらえて、俺は無理矢理目を細めた。そして、彼の夫と同い年でありながら、独りの自
分が無性に惨めで劣った存在に思えてきた。
154 :
1:2005/06/23(木) 00:50:46
「鳥羽は羨ましいな。妻である鳥羽さんと生まれてくる赤ちゃん、自分を愛して必要としてくれる人がいるなんて」
思わず寂しそうな表情を浮かべた俺に、赤川さんは問う。
「あなたは彼女できたの?」
「いや、今も一人だよ」
「そう。でもきっといつかいい人に会えると思うよ」
お決まりの気休めだ。
「俺を必要としてくれる人なんているのかな」
人妻に対して泣き言を言っている自分がいる。そんな俺に、彼女は相変わらずの優しい笑みを注ぐ。俺が彼女に惚れる
原因となった笑みだ。そして言った。
「必要とされることも大事だけど、それ以上に自分が相手を必要とするってことが大切なんじゃないかな」
「自分が?」
聞き返す俺に、彼女は続ける。
「ええ。相手が自分をどう思ってるかなんて二の次。私ならまず自分の気持ちをぶつけたいわね。受身じゃなくてこっ
ちから、あなたを必要としてるって大声で叫びたい。なんてね。我ながらドラマの台詞みたいなこと言ってる」
赤川さんは朗らかに笑った。
「まったくだな」
つられて俺も笑った。しかし、すぐに真顔に戻って、
「じゃあ、自分の気持ちをぶつけた相手に、必要ないって言われたら?」
つられついでに、たたみかけてみた。
「う〜ん。ぶつかって玉砕したらしたで、それもいいんじゃない?あれこれ考えて悶々とするよりは。とにかく相手の
ホントのホントの本音を確かめることができたら御の字」
「ホントのホントの本音か……強いな。鳥羽さんは」
俺が感心していると、赤川さんは急に真剣な表情になって俺の目を見た。
「伝えてみたら?本当の気持ち」
「え……」
鳩が豆鉄砲食らった表情で、俺は言葉に詰まった。
155 :
1:2005/06/23(木) 00:51:07
「あなたって前から隠し事するの下手よね。職場でもみんな言ってたわよ。人がいいっていうか、本音を隠しているよ
うで隠せない性質だって」
「そうなのか…」
人がいいというと聞こえがいいが、単に計算して行動する頭がないというだけだろう。
「あなたがその人を大切に思ってるってことを、まず伝えてみるべきなんじゃない?」
「ああ、考えてみるよ」
彼女は、恐らく俺に好意を寄せる対象が出来たと思っているのだろう。決して外れではない。甜歌、平井、カエラ、そ
して深田。彼らはすでに俺にとってかけがえの無い存在となっている。この上なく大切な仲間達だ。しかし、彼らは俺
を必要としていない……いや、本当にそうなのだろうか。彼らのホントのホントの本音とやらを、俺は問うてさえいな
いのに。
一陣の風が吹き抜けた。買い物袋がカサカサと乾いた音を立てる。沈む夕陽に大きな目を潤ませている赤川さん。その
横顔を見続けることができず、俺は言葉を失って川面に視線を投げかけた。
しばらくの沈黙の後、俺ははっとして赤川さんの横顔を再度見た。
「ひょっとして…………気づいてた?」
何を“気付いてた”というのか。我ながら不明瞭な問いかけ。しかし、
「……うん。気付いてた」
視線を茜色の空にあずけたまま、赤川さんは小さく答えた。
「そうか。分かってたんだ」
「うん。分かってたよ」
「そうか……」
彼女が自分の気持ちに気づいてくれていた。この気持ちは決して成就するものではなかったけれども、それでも嬉しか
った。長い間、胸中に鬱蒼と生い茂っていた後悔が切りひらかれ、不思議と救われた心持ちになれた。
「ごめんね」
「鳥羽さんが謝ることじゃないよ」
156 :
1:2005/06/23(木) 00:51:23
俺は草むらに両手を手をついて立ち上がり、ズボンに付着した草を払い落とした。
「ありがとう。今日は鳥羽さんに会えてマジ良かったよ」
「ううん。私も良かった。あなたに会えて」
「それじゃ、俺もう行くよ。鳥……いや、赤川さん」
俺は彼女の名を敢えて旧姓で言い直した。最後の最後で、ほんの些細な運命への抵抗。軽く手を上げて別れを告げた俺
に、赤川さんが背後から声をかけた。
「あれ?アパートはそっちじゃないでしょ。これからどっか行くの?」
「ああ。ちょっと行く場所があるんだ。そこに寄ってから家に帰るよ」
もう一度、しかし今度は目一杯高く手を掲げると、俺はアパートとは反対の方向、つまりあの井戸のある家へと向かっ
て歩き出した。
続 く
乙。
赤川さん分かってたのか・・・そっか・・・
なあなあ、このAA使っていい?→。・゚・(ノД`)・゚・。
スマン、オナヌーした手で誤爆してしまった
159 :
1:2005/06/23(木) 01:12:48
今日はここまで。
>>まとめサイト
自分の妄想ごときで人気投票とは恐縮至極トンクス。
>>1 乙!
今日も最高だった。
おれは今、猛烈に感動してるぞ。
前にこのスレを小馬鹿にした創作文芸系の板の書き込みを
誰かがコピペしてたが、こんなに燃える話を提供してくれる奴がそうそういるんか?
久々に赤川さんキター!!
キテタ――――(゚∀゚)――――!!
>>1乙
そして藻前ってホントにすごいな
朝から泣きそうになったよ。ほんと、最高だ。
AA変えてみた。
>>1お茶ドゾドゾドゾー
旦~
旦~ 旦~
ヽ ) ノ
旦~⌒(`・ω・)ノ旦~
/ ( ヽ
旦~ 旦~
旦~
>>1+3人で回しているスレにしてはお茶が多すぎないかw
激しく(・∀・)イイ!!
167 :
1:2005/06/23(木) 23:38:13
次は多分明日。
おぉ!早速明日続きが読めるのか
感激だぜ!
個人的な希望なのだが
少量でいいから小出しに毎日読めるほうがうれしいっす
おおっ!赤川さん登場!!!!!
今日来るのかな?(゚∀゚≡゚∀゚) ワクワク
今日は来ないと思う
174 :
1:2005/06/25(土) 00:28:49
第31話(後半)
煌々と燃える夕陽は既にその半身を稜線に埋めており、周囲の風景は徐々に暗みを帯びていく。俺は熊野橋を渡り、
畠敷町の住宅地を進んでいく。やはり車(95年製シビックフェリオ。9月に車検)で来ればよかったと後悔している
と、目的の民家が見えてきた。俺が息切れを起こしながら門の前に立つ頃には、いつの間にか太陽は沈みきっており、
代わって三日月が淡い光を放っていた。幸いにも家屋内に灯りは付いていない。留守なのだろう。
「申し訳ないけど、不法侵入とか気にしてる時じゃないんで」
門を乗り越えると、俺は近隣住人に気付かれぬよう、努めて物音を立てないように裏庭に回った。さすが田舎の農
家だけあって、いつ見ても広い庭だ。子供のちょっとした草野球くらいならできそう。
「あった」
井戸だ。この庭にあるものの中で異様な存在感を放っているそれは、月明かりの中で井戸自体が薄っすらと緑色の
光を発している。俺の中で向こうの世界の存在が確信に変わった。井戸に近寄るべく、縁側の前を通り抜けようと
歩き出すと、縁側に人の気配を感じた。ゆっくりとした動作で、その方向を向く俺。
「あなたは……」
立っているのはこの家の主である老婆。
「待っとったよ。あんたが戻って来るのを」
月明かりに照らされ、彼女はうすら笑いを浮かべた。俺があの世界に入り、帰ってくるのを見届けていたであろう
人物だ。何かを知っているに違いない。
「あの時、自分の背中を押したのは、やっぱりあなただったんですね」
「ああ」
「やはりあっちの世界は存在しているんですね?」
「ああ」
「何の目的があってあんなことを。あなたは一体何者なんです?」
己が不法侵入者だということは棚に上げまくって、口調を荒げる俺。
「さぁねぇ。教えてやらんことも無いが、タダってわけにゃいかんよ」
175 :
1:2005/06/25(土) 00:29:26
老婆は板敷きに置いてあった細長い棒状の包みを手にした。深紫色に染められ、二点を紐で締められた風呂敷。彼女
が紐を解き袋を下げると、その中から一振りの薙刀が姿を現した。白刃が月明かりを反射して妖しく光る。
「ワシに勝ったら教えてやろう。かかってきんさい」
「な!?お婆さん、ご冗談でしょう?」
相手を気遣っているのではない。その逆だ。いかに老体とはいえ、薙刀の先はまず間違いなく真剣。しかも構えは堂
に入っており、実力は素人目で見てもかなりの域に達していると思える。そこへ、こちらが丸腰だと承知の上での決
闘申し込み。もう少しフェア精神を盛り込んで提案をして欲しい。
「来んのんなら、こっちから行こうかの?」
怒涛。背中が曲がり、明らかに庇護される対象のはずの彼女の体躯から、お年寄りとは思えないほどの乱撃が発せら
れた。俺は辛うじて避けるが、幾重にもかする刃先により身体に次々と切り傷を刻まれていく。
「ムヒョヒョヒョ」
婆さん。あんた楽しんでる。ここぞとばかりにエンジョイしてる。こちらが手も足もでないのをいいことに。
「とどめじゃ!!」
殺す気満々。最早冗談とは到底思えない気迫で、上段に構えた薙刀が俺の頭部に狙いをつける。
「きいぃょりぇえええいいいい!」
老婆の発する人間とは思えない怪声が、俺の鼓膜を振るわせた。
「ええい、ままよ!」
破れかぶれの俺は、目をつぶって、素手で攻撃を受け止めようと両手を構えるが、
「ぁ」
当然、素人に真剣白羽取りなどという大層な芸当が出来るはずもない。薙刀は俺の脳天を直撃した、と思いきや、
「墓参りでもしとるんか?」
老婆の馬鹿にしたような声に反応して目を開くと、刃はまさに紙一重の間合いで静止しているではないか。命拾いした
ものの、俺は無様にも額の前で両手を合わせる格好のまま動けずにいる。
「あんたは異世界じゃ強かったかもしれんが、こちらじゃ全然じゃのう」
「く……!」
176 :
1:2005/06/25(土) 00:29:44
俺は怒り心頭し、力任せに薙刀の柄をぐいと掴んだ。と、柄がくるりと円を描き、投げ飛ばされた俺は背中から地面に
叩きつけられた。ほんの一瞬のことだ。老婆は仰向けに倒れて起き上がろうとしない俺に背中を向けると、薙刀をしま
おうと袋を拾った。
「やはりワシの見当違いだったか」
身体を伝う痛みで、俺は身動きできない。耳鳴りが響く中で老婆の言葉が、付けっぱなしのテレビから流れてくる音声
のように聴こえた。どこか他所の出来事のように。
(月が綺麗だな)
一蹴されたことへの悔しさは無い。この状態にあって、俺の頭を満たすのは何故か満天の夜空に浮かぶ月や星々の美しさ。
(やっぱあっちの世界に行くのは諦めて、望遠鏡で月でも見るかなぁ)
望遠鏡(かれこれ2年前に購入して箱から一度も出していない)を引っ張り出してみるのもいいかもしれない。そう思え
た。老婆にすら勝てない自分に何が出来る。あちらの世界はどうせ俺の現実とは関係ないのだ。なるようになる。手を引
こう。諦めよう。これまでもそうしてきたように。
そう思って大きく息を吸うと、とても落ち着いた気分になれた。身体の力が抜け、思考が研ぎ澄まされていく。ふと、
そんな俺の胸に赤川さんの言葉が思い起こされた。
(でも、俺の気持ちを伝えられないのは残念だ。俺が大切に思っている人達……深田さん、甜歌、平井、カエラ……彼ら
は俺を本当に俺を拒絶したのだろうか……)
「俺が必要とする人達の本当の気持ち……」
いい加減「…」を打つのがしんどくなってきた頃、俺の口をついてそんな文句が出た。
「駄目だ。俺はそれを確かめるまでは、諦めるわけにはいかない!」
赤川さんに感謝した。そして俺は、今まさに自分が必要とするものを思い浮かべた。
177 :
1:2005/06/25(土) 00:30:00
(来い)
俺は試しに心の中でそれを呼んでみた。しかし何も起きない。
「来い」
もう一度。今度は確かな声として。
「来い!!!」
三度目には、その思いは確かな信念となって言葉に乗った。
「何をしとんね?」
薙刀を納め終えた老婆が、呆れたような声を出す。
どこからかミシミシと小さな音がした。痛みをこらえながら上半身を起こした俺は、その音の発生源を探した。どうやら例
の井戸を閉めている木蓋から聞こえてくるようだ。俺は井戸を見詰める。老婆も何事が起こっているのか分からず、同じ場
所に目を見張っている。その間にも異音は続く。
「何者かが下から突いている」
硬い何かが井戸の中から蓋を突いているようだ。見入っていると、ついに蓋の中央部分は破られ、銀色をした先端部がゆっ
くりと、しかし竜が滝壺から昇るような力強さを持って、徐々に全貌を現していく。
「お前は……」
俺専用異世界人専用聖剣。蓋を突き破った聖剣は、宙高く舞い上がったかと思うと、回転しながら放物線を描き、俺の足元
に突き刺さった。震える手で剣の柄に手を当てると、やはりしっくりと馴染む。
「あっちの世界の剣か」
状況を把握した老婆が不適な笑みを浮かべ、再び薙刀を取り出した。そして、こちらの不意をついて渾身の一撃を繰り出し
た。しかし、俺は攻撃を俺専用異世界人専用聖剣で軽々と受け、
「お婆さん。悪いことは言わない。ここらでやめときましょう」
冷静に、しかし確実な自信を湛えた瞳で老婆を睨みつける。
「ちっとはやるのう。しかし!」
178 :
1:2005/06/25(土) 00:30:31
剣にかかる力が抜けたかと思うと、体勢を崩した俺の下顎を柄が打った。耐える俺に対して、連撃が追い討ちをかける。
「まだ若い。若過ぎる!お前さんには勝てん」
しかし、間もなく老婆の言葉は覆されることになる。俺は空振りして隙を見せた薙刀に対して、放物線を描くように斬り上
げ、頂点で刃を返して斬り下げた。薙刀は金太郎飴のように3つに切断されて落ちた。
「終わりです」
「……」
老婆はうなだれた。俺は彼女の肩を手で支えて、縁側に座らせた。
「お茶でも入れましょうか?」
「ここはワシの家じゃ。ワシが入れるわ!」
負けたのがよほど悔しかったのか。機嫌を損ねてしまったようだ。台所で緑茶を用意して戻ってくると、老婆は静かに語り
始めた。
「ワシは異世界の神から託されてこの井戸を守っとる。あちらの世界に行き魔王を倒す人間を選別する為にな。何もワシで
なくてもいいものを……」
彼女は語尾を濁らせた。何やら深い事情があるようだが、そこは敢えて聞かないでおいた。
「何故、魔王を倒すのは俺達でなければならないんですか?あっちの世界にも強い人は沢山いるでしょう」
「魔王に致命的な打撃を与えられるのは、異世界人用武器だけじゃ」
そう言って、老婆は縁側に立てかけてある俺専用異世界人専用聖剣を一瞥した。そして続ける。
「それに加えて、我々の責任とでも言うべきか」
「責任?」
「お前さんにもいずれ分かる時が来る。もう行くがいい」
意味深な所で止めてくれたものだ。しかし、今はそこを問いただしている時ではない。一刻も早く異世界に行かなければ。
「ありがとう」
礼を言っても、不機嫌そうに鼻を鳴らす老婆。俺は小さく笑って、井戸の縁に立つ。
「ふん。お前さんといい史郎といい……」
大きく深呼吸をした俺は、俺専用異世界人専用聖剣を抱えて井戸内に身を躍らせた。
続く
179 :
1:2005/06/25(土) 00:33:14
今日はここまで。
つまり老婆は
>>1にとっての深田なのか??まぁ何でもイイ。今回もよかった
182 :
1:2005/06/25(土) 00:48:33
スマソ。31話(前半)で追加。
彼女は、恐らく俺に好意を寄せる対象が出来たと思っているのだろう。決して
外れではない。甜歌、平井、カエラ、そして深田。彼らはすでに俺にとってか
けがえの無い存在となっている。この上なく大切な仲間達だ。しかし、彼らは
俺を必要としていない……いや、本当にそうなのだろうか。彼らのホントのホ
ントの本音とやらを、俺は問うてさえいないのに。
(↓追加)
幻覚。そう、現実世界にはいない人達。だが、彼らの存在を完全に否定するの
は早い。本当に俺が迷い込んだ異世界は存在していないのか。そして、それを
確かめる方法は一つだけ。
183 :
1:2005/06/25(土) 00:58:02
>>181 >>つまり老婆は
>>1にとっての深田なのか??
スマソ。ようわからん。婆は単に門番のつもりで置いた。
>>1乙。
二夜連続で読み応え満点の妄想をありがとう。
>「ふん。お前さんといい史郎といい……」
新たな伏線がでてきたな。ラスボスは佐野史郎?
185 :
181:2005/06/25(土) 10:57:00
つまり、"オレ"と深田の物語の前に、史郎と老婆の話があり、その時には史郎が魔王を倒したが、現実世界に戻ったヒロインはなぜか老婆になってしまう。魔王が復活したため、老婆は史郎の後継者を井戸に突き落とすことで世界を救おうと…
と想像してみたわけ。暑くなってきたが、家電の仕事がんばれよ
>>1お茶ドゾドゾドゾー
旦~
旦~ 旦~
ヽ ) ノ
旦~⌒(`・ω・)ノ旦~
/ ( ヽ
旦~ 旦~
旦~
>>1乙 冬彦さん…(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
188 :
1:2005/06/25(土) 13:34:34
お前らメンゴ。
史郎→四郎だった。
今年はエアコンが売れそうだね。
>>1は据付工事とかもやるんだろうか?
191 :
Mr.名無しさん:2005/06/25(土) 22:26:28
ほす
193 :
Mr.名無しさん:2005/06/26(日) 23:22:13
で、次はいつなんだ?
194 :
Mr.名無しさん:2005/06/27(月) 00:22:21
195 :
1:2005/06/27(月) 00:28:20
↑
全くの未定。
いいか
ちょっと声だして
「こんとんじょのいこ」って言ってみろ
えなりかずきが「簡単じゃないか」って言ってるように聞こえるから
やべ、言ってたら顔までえなりになってきた
もう寝る
お楽しみ頂いてる(?)人気投票ですが、7月1日午前0時で投票終了とします。
連投規制はありませんので、アク禁にならない程度にどんどん投票しちゃってください。
↑乙!そして200ゲット! (゜∀。)ワヒャヒャヒャヒャヒャヒャ
203 :
Mr.名無しさん:2005/06/29(水) 18:18:44
岸部伸び杉w
名前間違えてるけどな
誰か居る?
どうした?
208 :
Mr.名無しさん:2005/06/30(木) 12:39:04
今日で投票締め切りか。
ところで、1はどうした?
209 :
1:2005/06/30(木) 13:42:14
>>208 月末売上取り込み中。
次は2、3日中。
世間的にはボーナス時期だし
>>1も忙しいだろうな。オレん所は除湿機がもう限界
本当だったら
>>1の家電屋で買い物したいところだがな。
三人の常連が
>>1の家電店に行くだけでは、
>>1の成績も上がらんだろう
三人がプラズマテレビを購入すればだいぶ違うんじゃないか?
214 :
1:2005/07/01(金) 00:52:53
第32話
心地よい風が頬を撫でた。ゆっくりと目を開けて身を起こすと、そこは見渡す限りの大平原。微かな涼風が、青い大地を
揺らしてサラサラと音をたてている。
「夢か」
俺は二度寝に陥るべく、再び瞼を閉じた。が、
「……って、夢じゃねえ!」
勢いよく跳ね起きるや、俺は周囲を見回した。彼方に聳える山々、所々まばらに生える木々。間違いなくここはあのファ
ンタジー世界。更に今自分がいる場所に見覚えがある。最初この世界に降り立った時に俺が倒れていた場所だ。同じ場所
からリスタートとは、皮肉なものだ。
俺は手元の俺専用異世界人専用聖剣を握り、緩慢な動作で立ち上がった。
「問題は平井達がどこにいるかだな」
早くも途方に暮れようとしていると、前方に見覚えのある3つの影が。まさかと思いその方向に走ってみると、
「おぅわ!!もう見つけた!?」
当の平井達ではないか。何と言うご都合主義。しかし、様子がおかしい。彼らの向こう側に集団が見える。遠目で見ても
普通の人間ではないと分かる連中。
「襲撃されているのか」
相手は亜人のようだ。ゴブリン、ラットマン、リザードマン、ノールなどなど亜人系が盛り沢山。旅人を襲っては金品を
強奪する追い剥ぎの類だろう。だが、ただの追い剥ぎならまだいいのだが、その数が半端ではない。恐らくギチギチコン
パクトにまとめればイナバの物置に乗りそうなくらいいる。つまり100体くらい。
とか何とか言っているうちに戦闘が開始された。甜歌が後衛から対集団魔術を詠唱している。その背後から忍び寄るノール。
「あ!?」
気付いた甜歌が短い悲鳴を上げた。ノールの三日月刀が甜歌の脳天を狙う。そこへこっそりと忍び寄っていた俺が、ノール
の背中に剣を振り下ろした。
「後ろから攻撃とは士道不覚悟だぜ」
自分も背後から攻撃しておいて、我ながらナイス棚上げ。甜歌の表情が、驚きから安堵に変わった。
215 :
1:2005/07/01(金) 00:53:14
「お、おにいちゃん……だ、駄目だよ!何で戻ってきちゃったの!?」
「いや、色々思うところがあってね。甜歌、ごめんな」
「え?」
「この前はひどいこと言っちゃって」
「そんな……」
今にも涙を落としそうな甜歌の頭を撫でると、俺は再び修羅場に目を移した。視界に入ったのは、ハルバートを振り回しな
がら駆け回るカエラの姿。俺は迫る敵をなぎ倒しながら、彼女に近寄る。
「調子はどうよ?」
「何故ここに……言ったでしょう。あなたはもう戦う理由が無いって」
俺はカエラと背中合わせになって、お互いの死角を無くした。
「そんなことない。理由は幾らでもある」
「どんな理由があるの?」
「やっぱ深田さんを守りたいからだな」
迫り来る亜人達を、俺達はナイスコンビネーションでことごとく撃破していく。
「そして君のことも」
「な!?」
カエラは狼狽して、ハルバートの狙いを外した。俺はその前に回って、すかさずオークの攻撃から彼女をかばいながら反撃
する。一撃の下に絶命するオーク。
「い、今なんて言った?」
うろたえるカエラに対して、
「さてと、この辺りは一段落したようだな」
俺はわざとらしく知らん振りをし、今度はリザードマンに囲まれて苦戦している平井の元に走る。
平井は10数体の敵に取り囲まれ時代劇の殺陣状態。痺れを切らして特攻をかけてきたリザードマンを平井の刀が切り裂く。
すると激昂した他の連中が一斉に襲い掛かってきた。俺は援護すべく、それに割って入った。
的が円になってとり囲むその中心で、俺達は言葉を交わす。
「自分がしたことを分かっているんですか。一度ゲート石を使った以上、あなたはまた魔王を倒さなければ帰れないんです
よ?」
「あ。そういえばそうだな」
216 :
1:2005/07/01(金) 00:53:33
今気付いた。俺はまた魔王を倒さなければならない。深田も一緒に帰るとなると、2人の魔王を倒さなければならないという
ことだ。
「そういえばそうって、考えてなかったんですか」
「まぁ、なるようになるよ」
我ながらどこまでもアバウトだ。
「深田さんと戦う覚悟を?」
「うーん、わからん」
攻撃を受け流しつつ、順番に切り込んでくる相手を確実に倒していく俺達。
「わからんって、そんないい加減な……」
「わからんけど、とにかく深田さんと約束したんだよ。一緒に帰るって」
「でも、彼は有田と一緒に行ったのに」
俺を戒めるように放った平井の重い一撃が、ゴブリンを肩から袈裟掛けに斬った。
「だな。でも、俺には深田さんの真意は違うような気がしてならない。今回だけは自分の勘を信じてみたいんだ。彼女のホン
トの本心聞くまではどこまでもストーカーしてやるよ、俺は」
「希望的観測ですね」
俺は最後に残ったリザードマンの腹部に聖剣を突き刺し、蹴り飛ばした。
希望的観測。その通りだ。深田は魔族の子供を宿している。この如何ともしがたい状況において、俺はまだ幾ばくかの希望を
抱いている。魔族の子供は50年経っても生まれないことがあると彼女自身の口から聞いた。或いは有田に何らかの弱みを握ら
れているのかもしれない。その弱みを突きつけられ、魔王の側近として半ば強制的に連れ去られただけなのでは。自分でも度
が過ぎた希望的観測。しかし、
「たまにはいいだろ。ポジティブに行ってみるのも」
十把一絡げの亜人達は全て討伐完了。俺達はようやく一息ついた。と、それも束の間、上空を大きな影が覆った。見上げると
巨大な褐色の竜が、こちらを見ながら旋回している。
「気をつけて。ドレイクよ」
カエラが注意を促した。促されなくても、あれが危険ということはおおよその予測がつく。UO(専らオークマスク被って貧相
な服着て洞窟で包帯売り)にも出てきたし。ラミハの闘技場で闘ったワイバーンと同じ竜の一種でありながら、よりドラゴン
に近い存在だ。
翼で風を起こしながら大地に降り立ったドレイクは、俺達を睨む。先制を掛けようと機会を伺うカエラを制して俺は前に出た。
「ちょい待ち!無茶よ」
「今の俺なら多分勝てる」
「その自信の根拠は?」
「さぁ」
217 :
1:2005/07/01(金) 00:53:56
とにかく身体が軽い。今までよりも敏捷に動ける気がする。いや、気がするだけではない。確実に自分の身体能力が上がって
いるのが分かる。
ドレイクが俺を叩き殺すべく振った尻尾。その先端に飛び乗った俺は、そのまま尾の上を伝って走り、腰部から背中へと一気
に駆け上がっていく。そしてドレイクの首筋で止まると、鱗と鱗の隙間に狙いを定めて聖剣を突き下ろした。
「ドレイクの体表に剣は通用しません!!」
平井が叫んだ。確かに。まるで金属かというくらいに堅い。先端が突き刺さっただけで、どんなに力を込めても皮膚まで届か
ない。怒ったドレイクが首をやたらめったら振り回す。俺は突き立てた剣にしがみついているのがやっと。俺ピンチ。
「離脱しなさい!」
カエラの怒声が耳に入る。しかし俺にはもう一つの呼びかけが聴こえている。俺専用異世界人専用聖剣が語りかけて来るのが。
「お前を信じる!」
突如ドレイクが岩山に向かって突進を始めた。どうしても俺を振り落とせないと悟り、岩山にぶつけようとしているのだ。迫
る岩肌。しかし俺は間一髪で聖剣を抜いて離脱し、岩山に降り立った。猛烈なスピードで衝突した際の衝撃で、ドレイクの首
筋の鱗がひび割れているのを俺は見逃さなかった。再びドレイクの首に飛び乗るや、俺は聖剣を逆手に構えて振りかぶる。
「覚悟!!」
突き下ろした聖剣は鱗を貫通し、竜の眷属の急所に深く沈みこんだ。血が飛沫を上げる。ドレイクは数歩よろよろと歩いたが、
踏みとどまることができず、豪快に倒れ伏した。その青色の瞳は徐々に光を失っていき、しばらくすると死を湛えた薄暗い灰
色と化した。対象の死を確認した俺は、俺専用異世界人専用聖剣を背中に背負う。極まった。久々に極まった。
「剣技が以前にも増して冴えている。何かあったんですか?」
刀を鞘に収めながら、平井が問う。
「さぁ、俺もよくわからんけど、強いて言うなら禿しく調子(・∀・)イイ」
ポジティブな気持ちを持つことは、ここまで人間を変えるものなのか。わだかまりがふっきれたような。現実世界に一度帰っ
たことで、俺の中の何かが変わったようだ。
「(・∀・)イイ!って……適当な答えねぇ」
カエラが苦笑した。
「おにいちゃん、(・∀・)イイ!」
甜歌もはしゃぐ。四人で久々に笑いあった。
218 :
1:2005/07/01(金) 00:54:15
「じゃあ、シフィーロに行くか」
俺達は一途シフィーロを目指す。っていうか着いた。実際は一日かかっているが、便宜上間は割愛。街はちょうど昼食時とい
うこともあり、宿屋の食堂で軽食を取った俺達は、シフィーロ軍訓練所に向かった。そこでえなり討伐部隊を募集していると
のこと。近付くにつれ、人だかりが大きくなっていく。
「凄い人だな、おい。これ全部冒険者かよ」
訓練所の正門は様々な装備をした冒険者で埋め尽くされている。
「受付はあそこみたいね」
カエラが開かれた正門の向こうを指差した。なるほど。看板にはえなり討伐部隊志願者受付案内所と表記されている。その下
には一体何列あるのかという行列。俺達はその最後尾についた。これほどの行列に並ぶのは、故ポートピアランド(呉市)で
ジェットコースターに乗った時以来だ。物珍しく思い、辺りをきょろきょろ見回す俺。すると、
「あ」
隣の行列に見知った姿が。
「奇遇だな。お前達も参加するのか」
ラミハで別れた岸部だ。鎖帷子を着込んで、トライデント(西遊記のイメージで)を抱えている。
「前に言ってた面白いことってのは、このことだったんですね」
「ああ。この歳になってなんだが、えなりを討ちとって一旗挙げてやろうと思ってな」
ヤックソを倒す為にラミハに単身乗り込んだことといい、無気力な風体と反比例して熱いバイタリティを秘めた男だ。
列に並んで一体何時間待っただろうか。ようやく受付の長机を前にして達成感に浸る俺達。パートと思しきおばちゃんに指示
されるまま、書類に必要事項を記入していく。
「ところで出発はいつごろになるんです?」
合間に尋ねてみると、
「一週間後だよ」
「一週間……結構間が空くんですね」
「世界中から冒険者を集めるてるからね。ある程度の期間を置かないと」
219 :
1:2005/07/01(金) 00:54:38
一体どれだけの規模の討伐部隊になるのだろうか。シフィーロの王は、それだけえなりに脅威を覚えているということか。
手続きを終えた俺達は訓練所を後にし、シフィーロの大通りに戻った。強い日差しを避ける為、街路樹の陰に入る。
「で、どうするの?これから」
俺達は降って湧いた一週間という猶予期間について思案する。
「激戦になることは間違いありません。これが最後の休暇です。一緒に行動するのもいいですが、各々でやっておきたいこと
あるでしょうし」
平井はみんなの顔を見回して賛否を求める。
「うん。私はともかくあなた達はずっと一緒に旅してきたんだし、たまには自由行動ってのもいいんじゃないかな」
カエラは平井の意見に同意したようだ。
「ウチも賛成。でも、おにいちゃんはどうするの?」
三人が一様に俺を見詰める。ゲート石がない以上、俺はまた自分の分の魔王を倒すまであちらの世界には帰れない。とりあえ
ず誰かについていくか。
「じゃあ、俺は……」
<ここで分岐>
@甜歌に同行する
A平井に同行する
Bカエラに同行する
220 :
1:2005/07/01(金) 00:57:25
2、3日とか言っときながら勢いで書いちまった。
今日はここまで。
>>まとめ
人気投票乙。
>>おまえら
プラズマヨロ。
221 :
Mr.名無しさん:2005/07/01(金) 00:57:47
>>1お茶ドゾドゾドゾー
旦~
旦~ 旦~
ヽ ) ノ
旦~⌒(`・ω・)ノ旦~
/ ( ヽ
旦~ 旦~
旦~
@。他の分岐にはエロいシーンがなさそう
>>225 カエラはありそうだが
っていうか、平井もウホッな展開が・・・
@でお願いします。テンテレでテンカ見てはまった。
プラズマでならもっと可愛く見えるかなorz
いいね。久しぶりの分岐だ。
ちゃんと全部書いてくれるだろうから、リクエストはしないよ。
初代スレ立ててからもう半年経ってるwww
ナガスwww
平井分岐には感動と気恥ずかしさが待っている
保守
んじゃ俺は3をキボンヌ!
カエラ→甜歌→平井
の順でお願いします
人気投票はやっぱり甜歌と赤川さんのワンツーだったな
てかなんで岸辺やイエスマンがあんなに人気あんだよw
ほす
イェスマンスレってもう無いんだ?
238 :
1:2005/07/04(月) 00:07:06
次は恐らく明後日。
240 :
Mr.名無しさん:2005/07/04(月) 22:58:21
ふおす
241 :
Mr.名無しさん:2005/07/05(火) 19:10:52
さてageておくか
∧_∧
( ´・ω・) みなさん、お茶が入りましたよ・・・・。
( つ旦O
と_)_) 旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦
いただきます有難う
つ旦
244 :
1:2005/07/05(火) 22:31:07
第32話 (甜歌ルート前半)
「甜歌と一緒に行動させてもらっていいか?」
俺は甜歌の顔をうかがった。
「え!?あ………いいよ!万事おk!」
瞬間、彼女は驚きを見せたものの、すぐに笑みを湛えて返事をした。しかし、どこか引っ掛かる「……」だ。思い過ごしだろうか。
「じゃあ、また一週間後にこの食堂で」
平井の言葉に頷き合って、俺達は別れた。一時の別れ。各々がどこに行くかはお互いに敢えて聞かない。俺達は並んで平井とカエ
ラの後姿を見送った。
「さて、一週間どうしたものか。甜歌はどっか行きたいとことかある?」
「実はね、レク村にちょっとした用事があるんで、一度帰ろうかなと思ってるんだ」
「そうか。まぁ、はいりさんにも甜歌の元気な顔見せてあげた方がいいだろうな。じゃあ、行こうか」
俺が厩舎に向かおうとすると、
「うん。でもその前にちょっと寄りたい所があるんだけど」
「寄りたいところ?」
俺達は冒険者が集結し、お祭り状態のシフィーロを彼女の目的地に向かって歩く。そうして、そろそろ人ごみにうんざりしてくる
頃、甜歌は小さな店の前で足を止めた。看板は非常に古ぼけて意味をなしておらず、業種は判然としない。
「おにいちゃん、そこら辺でブラブラしてて」
「へ?あ、ああ」
甜歌は俺を残して店内に消えて行った。いきなりのほったらかし状態。しばらく手持ち無沙汰でいる内、俺ははたと気付いて自分
の身体を見た。そういえば、またしても家電屋の制服でこの世界に来てしまった。案の定、先ほどから道化師と間違われているよ
うで、往来の通行人は好奇の視線を俺に投げかけている。
辺りを見ると、ちょうど真向かいに服屋が一軒営業している。
「しばらく甜歌は出てこなさそうだし」
早速、入店する俺。この世界で一般的な布の服を一式見繕って、早速試着室で着替える。と、脱いだズボンからバラバラと落ちる
ものがある。クリップ、シャチハタ、車のキー、MP3プレイヤーといったもの。現実世界での携行物だ。俺はそれらを急いで拾い
上げると、新しく購入した麻で出来た腰袋に入れ直した。
服屋を出ると、ちょうど正面の店のドアが開いて人影が出てきた。
「あ……」
245 :
1:2005/07/05(火) 22:31:27
誰だろう。見覚えの無い少女。いや、知っている。この赤い魔術士の服装。
「へへへぇ。どう?似合う?」
少し照れ気味に笑うこの少女は、甜歌だ。ここは床屋だったのか。元々ショートだった髪が更に短くなっている。ボーイッシュな
髪型で、彼女の活発さを更に如実に表しているかのように思える。
「ああ、よく似合っているよ。なんていうか、スッキリしたね。うん」
俺はぎこちなく答えた。実際のところ、持ち前の無粋さ、というより女性経験の少なさが手伝って、女性のヘアスタイルを誉めた
ことなど滅多にないのだが。
「ありがと!おにいちゃんもいいセンスしてる」
新調した服を誉められて、俺も自然と顔がほころんだ。
「それじゃあ!レク村に向けて出発進行!!」
ハイテンションな甜歌の号令。一路、東のレク村目指して馬を出発させる。俺の後部には甜歌が乗っている。初夏の涼しい風が吹
き抜ける平原をひたすら走り続け、レク村に到着した頃には、既に夜の帳が下りた後だった。近くの沼から発せられる蛙の輪唱に
耳を傾けながら、甜歌の屋敷に向けて馬をゆっくりと歩かせる。
「そんなに長いこと留守にしてたわけじゃないけど、何だか懐かしいなぁ」
よく見知っているであろう建物を見回して、懐かしさに身を浸す甜歌。レンガ造りの中央通りを抜けると、広場に行き当たった。
数人の男がこちらの姿を認めて、声を上げる。
「おお!!南の魔術士様だ!!」
「みんなー!!魔術士様が帰ってこられたぞー!!」
呼びかけに反応して、家々の灯りが次々と点り、中から村人達が顔を出す。村の青年(久保島。小学校。こいつをモデルに学級内
で久保島太郎という昔話が創作された)が、甜歌にうやうやしく一礼した。俺と甜歌は馬から下りた。
「魔術士様、ご無事で何よりです」
「はい。私が留守の間、村に異常はありませんでしたか?」
俺は驚嘆した。あの甜歌が落ち着いた敬語調で会話を交わしている。俺に対しては、初対面から一度として敬語で話したことなど
無いのに。村人に対しては、あくまで「南の魔術士」として接しているようだ。彼女の知らない一面を見た気がする。
「はい。えなりの軍勢もここまでは及んでおりません」
「それは何よりです。ところで明後日の……」
246 :
1:2005/07/05(火) 22:31:46
彼らのやり取りに俺が聞き入っていると、不意に宿屋のドアがもの凄い勢いで開け放たれた。そして、3、40人はいようか。大
勢の男達が飛び出して、鬼気迫る勢いでこちらに突進してくるではないか。
「え!!なに!?なに!?」
「あ。ヤバイ。おにいちゃん、早く家へ!!」
事情も分からないまま、甜歌に手を引かれて俺は脱兎のごとく逃げる。逃げる。逃げる。追っ手には、巨大な戦斧を背負う屈強な
戦士や、魔術士の杖を持った冒険者風の者もちらほら。ほとんどが筋骨逞しい荒くれ者達。そんなバーバリアンな連中が血眼にな
って追いかけてくるのだからたまったものではない。
「うぉぉぉおおおおお、テンカタソ!!!!」
「む、むぉ、萌むぉえおおえええええ!!!!」
この世のものとは思えない怒声を張り上げている。俺は恐怖心に駆られながら肩越しに後ろを見た。バイキングそこのけの勢いで
大容量の髭を生やした重戦士(藤井。高校。柔道部。正直これだけでかい奴を他に知らない)が、すぐそこまで迫っている。斧を
持つ腕はまるでボンレスハムのように野太い。
「着いたよ!おにいちゃん」
甜歌の家が見えた。扉を開け、甜歌は中に滑り込む。俺もその後に続いて屋敷内に避難しようとドアに手をかけた。が、
「おっしゃああああ!!!甜歌タソ、ゲットぉおおお!!」
つかまったぁあああああ!!!俺は襟首を力任せに後ろに引き寄せられ、窒息しそうになりながら必死で戦士の腕を数回タップす
る。そろそろ意識が朦朧として気持ちよくなってくる頃、
「あ、これ甜歌タソじゃねぇじゃん」
首を抑える力が緩んで、俺は地面に投げ捨てられた。
「マジかよ。イラネ」
捉えたのが甜歌でないと知った途端、彼らはさも関心がなさそうに、宿屋へと戻っていった。俺はほうほうの態で固く閉ざされた
扉を叩く。扉が少し開き、中から甜歌が片目をのぞかせた。
「もう大丈夫?」
「ああ。行っちまったよ……」
247 :
1:2005/07/05(火) 22:32:08
ドアの隙間から屋敷に入った俺は、恐怖から開放された安心感を噛み締め、その場にへたりこんだ。すると、奥からはいりが水を
運んできてくれた。俺はそれを受け取り、一気に飲み干す。
「はいりさん。ありがとう」
はいりに礼を言う俺。やはりどうしてもエラに目の焦点がいってしまう。とにもかくにも一息ついた俺は、今度はもの凄い剣幕で
剣幕で甜歌に問い詰める。
「甜歌、あれ何!?強盗団!?借金取り!?」
「ウチのファン」
「ファン!?」
「うん、実は3日後にサイン会があるの」
「サイン会!?」
「甜歌様は南の魔術士であると同時に魔術士界のアイドル。殿方の人気が非常に高いのです。そこで強い要望に応えて、半年ごと
にサイン会兼握手会を開催されているのです」
エラ、ではなく、はいりが説明した。当日は先ほどのような連中が大挙して押し寄せるわけか。
「それで、実はおにいちゃんにサイン会のボディガードしてほしいの」
甜歌は俺に向かって拝むように手を合わせた。
「なるほど。そういうことか。お前、最初から俺のことを利用する気だったんだな?」
俺が甜歌との同行を決めた時、彼女が浮かべた笑みが脳内に蘇った。わざと意地悪な口調で問いかけると、
「ごめん!でも、お願い!おにいちゃんじゃないと、ファンの皆さんを止められないの」
「う〜ん。そこまで言われると」
悪い気はしない。
「よし。わかったよ。引き受けよう」
「ありがとう!!」
「ところで前のボディガードは?」
前回もサイン会があったのだから、その際もボディガードがいたはずだ。
248 :
1:2005/07/05(火) 22:32:25
「村外れの土の中」
甜歌は明るい声色で答えた。
「土の中……」
突如、表で雷鳴が鳴り豪雨が降り始めた。まるで俺の運命を暗示するかのように。殺されるかもしれない。えなりとの決戦に赴く
前に、既に死の予感を感じている俺であった。
後半に続く
250 :
1:2005/07/05(火) 23:48:09
今日はここまで。
シリアスムードが一気にギャグになった。w
続き期待大!
乙
リアル握手会とリンクしてるのか
なるほど
>久保島。小学校。こいつをモデルに学級内で久保島太郎という昔話が創作された
ワラタ 禿しく気になる
乗り遅れた!
(((;;;:: ;: ;; ;; ;:;::)) ::)
( ::: (;; ∧_,∧ );:;;;)) )::: :; :))
((:: :;; (´・ω・)っ旦;;;; ; :))
((;;; (っ ,r どどどどど・・・・・
i_ノ┘
((;;;;゜;;:::(;;: ∧__,∧ '';:;;;):;:::))゜)) ::)))
(((; ;;:: ;:::;;⊂(´・ω・`) ;:;;;,,))...)))))) ::::)
((;;;:;;;:,,,." ヽ旦⊂ ) ;:;;))):...,),)):;:::::))))
("((;:;;; (⌒) |どどどどど・・・・・
三 `J
.∧__,,∧ ;。・
⊂(´・ω・`)⊃旦
☆ ノ 丿 キキーッ
ヽ .ノ (⌒) 彡
と_丿=.⌒
.∧__,,∧ゼェゼェ
(´・ω・;)
( o旦o )))
>>1さん、どうぞ
`u―u´
正直、お茶汲み係に萌えている。
259 :
1:2005/07/07(木) 00:35:53
次は恐らく11日くらい。
1乙 次は平井ルートか?待ってます
261 :
1:2005/07/07(木) 00:38:54
いや、一応甜歌ルートの後半がある。
そだったな。1が土の中の人にならないことを祈るw
ショートカットの甜歌リン(;´Д`)ハァハァ
ほうしゅ
265 :
Mr.名無しさん:2005/07/07(木) 13:53:31
また電車男スレで沈まないようage
267 :
Mr.名無しさん:2005/07/07(木) 22:11:58
一応、こまめに保守しておくか
お、じゃあ漏れも保守
270 :
Mr.名無しさん:2005/07/07(木) 23:10:41
今日は死ぬ気で保守。
電車男なんぞより1の妄想の方が遥かに重要だ。俺にとっては。
よって保守
272 :
Mr.名無しさん:2005/07/08(金) 00:02:14
電車ドラマ、あれはあれで面白かったww
一応深夜の保守
予断を許さず保守
一応この時間も保守しておこう
必要以上に保守
277 :
Mr.名無しさん:2005/07/08(金) 15:53:06
保守
280 :
1:2005/07/09(土) 00:53:10
来来キョンシーズのDVD欲しくなったのでage。
281 :
Mr.名無しさん:2005/07/09(土) 15:03:55
保守
282 :
Mr.名無しさん:2005/07/09(土) 17:20:56
ほしゅ
避難所にも万一に備えてスレ立てといたほうがいいかな?
保守
284 :
Mr.名無しさん:2005/07/09(土) 22:58:39
だな。つうか避難所らしきところは今何個あるんだ?
保守していいかな
さんきゅ。俺もほす
ほしゅ
保守がてらみんなにお茶ドゾー
( ( ( ( ( ( ( ) )
( ( ( ) ( ( ( ) )
( ( ) ( ( ) ( ( )
| ̄ ̄ ̄ ̄:::| | ̄ ̄ ̄ ̄:::| | ̄ ̄ ̄ ̄:::| ∧∧
| :::| | :::| | :::| (゚Д゚,,) 全部飲める?
| :::| | :::| | :::|⊂ |)
| ::::::| | ::::::| | ::::::| | |〜
ヽ、 :::;;/ ヽ、 :::;;/ ヽ、 :::;;/ し`J
└──┘ └──┘ . └──┘
お茶汲み係かわいいよお茶汲み係
( ( ( ( ( ( ) )
( ( ( ) ( ∧⊇∧ ) /⊆∧ ) )
( ( ) ( ´∀`) ) ( (゚Д゚,,) いい湯だな
| ̄ ̄ ̄ ̄:::| | ̄ ̄ ̄ ̄:::| | ̄ ̄ ̄ ̄:::|
| :::| | :::| | :::|
| :::| | :::| | :::|
| ::::::| | ::::::| | ::::::|
ヽ、 :::;;/ ヽ、 :::;;/ ヽ、 :::;;/
└──┘ └──┘ . └──┘
絵師の赤川さん見たけどかわええな
294 :
Mr.名無しさん:2005/07/11(月) 10:02:54
ほしゅ
ほしゅほしゅ言ってるけどさ別にageなくてもいいだろ?
最近厨が多くてさ… 吊ってきます
297 :
Mr.名無しさん:2005/07/11(月) 20:07:23
なんつーか、このスレに限っては大丈夫な気がすんだよな。
たまに変なのが出ても、みんな華麗に流してるし。
ほんと、いいスレだよ。
280のレスからすると次の新キャラはテンテンじゃろうか
299 :
1:2005/07/11(月) 22:11:51
第32話(甜歌パート後半)
屋敷に来て3日が経った。
ここでの生活は快適そのもの。宿泊している部屋は現実世界の自室が3つは入りそう広々空間。2階のテラスからは広大なセットー海が
見渡せる。そして朝昼夕とはいりの作る料理は逸品。完璧だ。ある一点を除いて。実はその一つの問題点が、この屋敷を恐怖の屋敷た
らしめている。
問題点とは、故南の魔術士、つまり甜歌の爺様が残した数々の仕掛け。さすが南の魔術士。以前訪れた時は、特定の部屋しか利用しな
かったので気付かなかったが、屋敷内のいたるところに侵入者撃退用の罠やら怪奇現象やらギミックが満載されているのだ。普通に歩
いているはずが堂々巡りする無限ループ廊下、夜な夜な屋敷内を徘徊して不審者を見境無く攻撃してくるフルプレートの騎士、そして
極めつけはあちらこちらに隠された即死必至の魔術地雷。甜歌や、はいりのナビ無しに迂闊に歩こうものなら、命すら失いかねないの
だ。とてもではないが、常人に住みこなせる代物ではない。俺自身、何度死にかけたことか。
昨晩も正体不明の影にのしかかられて悪夢にうなされた俺は、くまが出来た目をこすりながら階下の食堂に向かっている。思考は不明
瞭で、まだ夢の中にいるような気分だ。
階段を下りていると、俺は表が妙に騒がしいことに気付いた。
「何の騒ぎだ……?」
ぼんやりした意識で幾多の罠を避けつつ、窓から外をうかがってみる。するとどうだろう。正面玄関前に、男ばかりで形成された長蛇
の列が。
「サイン会!!」
俺、覚醒。そうだ。今日はサイン会当日だ。ようやくハッキリしてきた意識で、俺は食堂へと走る。
「おにいちゃん。おはよう」
甜歌が笑顔で挨拶をした。
「おはよう、ってのん気だな、おい!!表がえらいことになってるぞ」
「ああ、あれ全部サイン会に来てくれた人達だよ」
「多杉だろ。少なく見繕っても200人近くいるぞ。収拾がつかなくなるんじゃないか?」
「いつものことだし。ファンの皆さんもそこら辺はプロだから、ちゃんと考えて並んでくれてるよ」
300 :
1:2005/07/11(月) 22:12:35
プロって……。当の本人は慣れ切っているのか、どっしりと落ち着いたもの。興奮冷めやらない俺は、はいりにすすめられるまま席に
つく。味もほとんど分からないまま、落ち着かない朝食を済ませた。
のんきに食後の紅茶まで頂いた俺と甜歌は、会場である大広間へと向かった。その途中、玄関から広間に至るまで、順路を示すポール
が続いているのに気付いた。が、肝心のロープが張られていない。通常は列が乱れぬようロープを張るものだ。日替わり特価品の人員
整理をしていた経験上、そこは気になる。
「ロープとか張らなくていいの?」
「おkおk♪」
「おkおkって、これじゃ簡単に列からはみ出ちゃうんじゃ……」
俺はポールの向こう側に身体を乗り出そうとした。
「あ。それ、ポールから少しでも向こうに出ると魔力で身体燃えちゃうよ」
「それ先にっ!!」
俺は間一髪で身を反らした。前髪の毛先が少々焦げたが⊂(^ω^;)⊃セフセフ。なるほど魔力による壁が張られているわけか。一寸先
は死。それを承知でサインを貰いに来るファンの執念深さは尊敬に値する。
大広間に入ると、台座とその前に据えられた長机が目に入った。机上にはペンとインク瓶が置かれている。甜歌が、小柄な体格とはお
よそ不釣合いな台座に座り、俺は机の斜め前に戦々恐々としながら立つ。
スタンバイ完了。俺は思い切り手を振った。遥か先の正面玄関にいるはいりが、小さく首を振ってドアを開けた。いよいよ地獄のサイ
ン&握手会開始。
はいりに導かれて、ファンの列がこちらに近づいて来る。人員整理用ポールのトラップについては心得たもので、それに触れない様に
一列で進んでくる。よく訓練された行進を見るようだ。
行列の先頭、記念すべき一人目のファンは、一切の頭髪を纏っていない無骨な強面の戦士。無口らしく一切言葉を発さない。色紙を差
し出さないのでどこにサインをして貰うのかと思えば、何とブロードソードの鍔にサインを書かせている。特別なインクなのか、鍔に
も難なく文字を書けるようだ。
(こわげだなぁ)
俺が胸中で慄いていると、サインを貰い終えた戦士は決心したように声を絞り出した。
「これ僕の手作りです!受け取ってください!!」
と、差し出したのはファンシーなぬいぐるみ。
301 :
1:2005/07/11(月) 22:12:53
(わぁ、可愛らしいテディベアちゃんだぁ)
GJ!俺、感嘆。
「ありがとう!」
嬉しそうな顔でそれを受け取る甜歌。握手をして貰った戦士は、一瞬絶頂とも思える歓喜の情を顔に浮かべたが、すぐに元の強面に戻
って帰って行った。あの剣で敵を屠っていくのかと思うと複雑な心境だ。
続いて2人目、3人目とサイン会は滞りなく続いてく。中には一般人もいるが、多くが無骨な戦士や騎士、魔術士など冒険者風の連中
ばかり。しかし皆マナーを守る、清く正しい炉利ヲタどもで、甜歌に危害を与えるようなことはなさそうだ。
(これじゃボディガードの出番も無さそうだなぁ)
俺は胸を撫で下ろして、サイン会の流れを見守っていた、かれこれ50人目くらいだろうか、いい加減退屈になってきた頃、今までとは
明らかに違う雰囲気の人間が現れた。この場におよそ相応しくないホスト風のその優男は、甜歌の前に一枚の色紙を差し出した。
「サインを頂きたくて参りました」
実に堂々とした語り口。
「今日はありがとう」
甜歌はごしゃごしゃと珍妙なサインを書いて、男に手渡した。
「こんな時でないとあなたには会えないですから。実は私はあなたを……食べたいんです」
「え……?」
甜歌は優男の顔を見上げた。男はニヤリと邪に笑う。
「おい!てめぇ、甜歌タソが怖がってるだろ!!」
すぐ後ろのファンが、業を煮やして優男の肩を掴んだ。
「うるさいですね」
ファンの手を掴んだ優男は、ねじり上げて身体ごと後ろの列に向かって投げ飛ばした。憐れ将棋倒しに倒れる男達。異常に気付いたは
いりが、咄嗟に魔力の壁を解いた。
「あなたほどの魔術士を食えば、私は永遠の命を得ることが出来る」
優男の顔が破れ、漆黒の魔物へと変貌した。ドラゴニュートの一種か。耳まで裂けた口に鋭い牙を生やし、長い舌をチロチロとのぞか
せている。
302 :
1:2005/07/11(月) 22:13:10
「我が下僕達よ……」
と、列に並んでいたファンが人間の皮を脱ぎ捨て、ドラゴニュートの正体を現した。その数は50体近く。こんなにいたのか。
「どうりでいつもより多いと思ってた」
甜歌があっけらかんと言った。和やかなサイン会場の空気は一変して、緊張が張り詰める。
「ポールの魔力を消してますから、皆さんには逃げてもらいましょう」
「そうだな。ファンの皆さん、逃げてください!」
主催者側の手前上、俺は叫んでファンに促した。すると、
「あ?何一人で格好つけてんだ?てめぇ」
へ。
「俺も手を貸すぜ!甜歌タソを守ってみせる」
え。
「っつか、俺が甜歌のナイトだからwお前らもう帰っていいよ」
といった具合に皆様闘う気満々。そういやこいつら冒険者だった。あっという間に大広間は大乱戦会場に。ファンの皆さんはやはり百戦
錬磨のツワモノ揃いのようで、次々と雑魚を葬り去っていく。
「小癪な連中だ。まぁいい。その間に私はこの少女を頂くとしよう」
台座の前に立つ甜歌に、手を伸ばす魔物。その指先に剣の切っ先が当たる。
「ボディガードを忘れてくれるなよ」
俺は聖剣の刃を魔物の黄色をした眼前にちらつかせる。
「邪魔をするな!」
魔物は黒く光る鋭い爪で、俺に狙いをつけて攻撃を浴びせかける。さすが長だけあって、スピードも威力も相当なもの。だが、そこは俺。
それを確実に捌ききり、隙をついて剣で魔物の胸を斬り裂いた。黒い血液が飛び散る。魔物はよろめき、机を破壊してその上に倒れた。
彼は虫の息で甜歌を見上げる。
「お前の肉を食えば永遠の命が…!!」
最後の力を振り絞って口を開く魔物の頭部を、俺専用異世界人専用聖剣が貫いた。
「永遠の命っていうか、こんなの食べたら腹壊すぞ」
会場内の雑魚達もあらかた片付いたようで、ファンの皆さんは汗を拭いて、各々の武器をおさめた。
「甜歌タソ、大丈夫ですか!」
303 :
1:2005/07/11(月) 22:13:27
「お怪我は!」
あっという間にファンに囲まれる甜歌。それに答えるように、彼女は身体を動かして身の安全を示している。
一人寂しく俺専用世界人専用聖剣をしまう俺の元に、一人のおっちゃんが近寄る。
「ひ弱そうな外見してやがるから雑魚かと思えば、なかなかやるじゃねぇか。糞ったれ野郎。これでお前も立派な甜歌タソファンの仲間入
りだぜ!」
彼は俺の肩を景気よく叩いた。ちょっとした友情が芽生えた予感。
そして夜。今日も故南の魔術士が仕掛けた影で眠れない俺は、一人で海岸の流木に腰掛けている。昼間の騒ぎはどこへやら、夜の岸部は
静けさに包まれている。小波がゆっくりと打ち寄せては引き、打ち寄せては引く。その光景は心に束の間の平安をもたらしてくれる。
思わぬ襲撃を共に撃退したファンの皆さんは、それぞれの日常へと戻って行った。何という爽やかな炉利ヲタ達だろう。次回のサイン会
も懲りずに参加するつもりらしい。
俺は皮袋を開けて中からデジタルオーディオを取り出す。イヤホンを耳に当てて再生ボタンを押すと、以前よく聴いていた曲が流れてく
る。毎朝、通勤時に聴いていた曲なのに、ひどく懐かしく感じれる。
そうしていると俺の隣に甜歌が座った。
「甜歌も聴いてみる?」
「うん」
イヤホンを甜歌の耳に付けてやった。途端に彼女の顔が驚きと共に明るくなった。
「すごい!!これなんて魔術!?」
「魔術っていうか、科学なんだけど」
「ふぅん」
再び沈黙が戻った。と思いきや、
「あ、思い出した!!」
突然、甜歌が素っ頓狂な声を上げてイヤホンを外した。
「な、な、何?」
「昼間、サイン会の時ウチにひどいこと言ったでしょ!」
俺は昼間の出来事を回想した。
「お前を喰ったら腹壊すって言ったこと?わりぃ。あれ、つい勢いで言っちゃったんだよなぁ」
304 :
1:2005/07/11(月) 22:13:41
「もぅ。人を腐ったものかなんかみたいに言ってくれるんだから。ウチを食べたからって…………と思ったけど、やっぱおなか壊すか」
納得しちゃった!この子、納得しちゃったよ。自分で抗議しておいて。やはり天然だ。
またもや押し黙って、甜歌は異世界の歌に耳を傾ける。
「おにいちゃんの世界。素敵な世界なんだろうなぁ」
甜歌はうっとりとしながら、小さく呟いた。
「俺の世界……か」
俺の世界なんかじゃない。現実世界での俺は脇役だ。脚光など浴びることなく、生きがいも無く日々を送るだけのエキストラに過ぎない。
「そんないい世界じゃない」
「でもウチは行ってみたい。あなたが暮らしていた世界に」
意表を付く言葉を浴びせられ、俺は甜歌の顔に目をやった。
「不思議な曲……」(LovepsychedelicoのFantastic World)
彼女は自分が言ったことも既に忘れたように、瞼を閉じて音楽に聴き入っている。海原を見つめていた俺も目を閉じた。小波の音、風の
音。あらゆることを忘れられるこの瞬間。心が自分でも信じられないくらい澄んでくる。この場所にいることが幸いと感じられる。
そして何よりも、甜歌の一言が俺の心を救ってくれた。
「ありがとうな。甜歌」
彼女の耳に届かない位の小さな声で俺は呟いた。と、不意に俺の下唇に、柔らかい何かが触れた。
「……え?」
俺は自分の口に軽く指先を当てて、甜歌を見た。
「ボディガードの報酬だよ」
柄にも無く頬を紅く染めて、甜歌は再び目をつぶった。俺は妙に嬉しくて、今度は目を開けたまま、いつまでも夜の海を見つめていた。
続 く
305 :
Mr.名無しさん:2005/07/11(月) 22:21:12
>>1 「橋本が死んだ」っていうスレ見て「甜歌が!?」と思っただろ?
淫行キタ━━(゚∀゚)━━!!!
なんと気持ちの良い連中じゃ
308 :
Mr.名無しさん:2005/07/11(月) 23:17:13
香具師はとんでもないものをヌス(ry
>>1お茶ドゾドゾドゾー
旦~
旦~ 旦~
ヽ ) ノ
旦~⌒(`・ω・)ノ旦~
/ ( ヽ
旦~ 旦~
旦~
>>305俺も思った
いかん、萌えた
タマラン
ピンポイントでやられた
1はデリコも好きなのか
313 :
1:2005/07/11(月) 23:47:00
今日はここまで。
俺は
>>1の妄想を読むために生まれてきたという気さえする。
今週の天テレドラマは甜歌が主役だ。
彼女の演技を見てから読むと
>>1の妄想をイメージする助けになるぞ。
オススメ。
ほす
317 :
Mr.名無しさん:2005/07/13(水) 00:58:04
寝なおす前に 保守
次は平井かカエラか。それが終われば多分クライマックスなんだろうな・・・
1の妄想に終わりなど無いっっ
>>314 ワロタ。w
>1の妄想が終わったらお前どうするんだよ!w
あれ?ラスボスって誰だ?まだ出てないか?
322 :
Mr.名無しさん:2005/07/13(水) 17:47:07
新しい魔王だろうけど、実質えなりじゃね?
323 :
1:2005/07/13(水) 22:53:53
多分明日。
324 :
Mr.名無しさん:2005/07/13(水) 22:55:47
明日に期待age
「クロマティ」の名使うな 映画公開差し止めを申請
7月に公開予定の映画「魁!!クロマティ高校THE☆MOVIE」に無断で名前を使われたとして、プロ野球の元巨人選手で米独立リーグ「サムライ・ベアーズ」監督の
ウォーレン・クロマティ氏が29日、配給元のメディア・スーツ(東京)を相手に、公開差し止めの仮処分を東京地裁に申し立てた。
この作品は週刊少年マガジン(講談社)に連載中の人気ギャグ漫画「魁!!クロマティ高校」を長編映画化。登場人物の不良少年が通う高校名が「クロマティ高校」で、原作
漫画には「バース高校」「デストラーデ高校」など、プロ野球で活躍した人気外国人選手と同じ高校名が登場する。 クロマティ氏の代理人弁護士は「青少年の健全育成に努
力しているのに、不良少年をテーマにした作品に姓が無断使用されたことに憤りを感じ、仮処分を申し立てた」としている。
おい
1は大丈夫か?!まさかリアルで甜歌やカエラに・・・
いや、大丈夫だろw
なるほど
今日うpってことは
>>1は電車男にぶつけてきたわけか
健闘を祈る
1の妄想>>>>>>>>>>超えられない壁>>>>>>>>>電車男
329 :
Mr.名無しさん:2005/07/14(木) 17:59:23
期待age
今深田ドラマに出てるぞ
もうすぐかな・・・ワクワクテカテカ
23歳でセーラー服が似合うってのもすごいな・・・
334 :
1:2005/07/14(木) 21:58:02
第32話 (平井ルート前半)
「平井と一緒に行動させてもらっていいか?」
「え、僕ですか?別にいいですけど」
平井は、瞬間、意外そうな顔をしたが、特に問題もないという様子で了承した。そこにカエラが怪訝な目つきで口を挟む。
「あなた、平井と行動を共にしたがるって怪しいわね」
「おにいちゃん、まさか……」
カエラと甜歌は顔を見合わせて、少しの間を置いて同時に俺を見た。
「“ウホッ”なの?」
あらぬ誤解を招いてしまったようだ。ウホッって何だ。ウホッって。
「いや、違うから」
冷静に切り捨てる俺。しかし、2人の目は容疑者を見る目。
「まぁ、そういうことにしとくわね。人それぞれだし。それじゃ一週間後に」
カエラの幾分にも冷めた眼差しは、確実に俺の興味の対象が男性にあると信じ込んでいる。
「おにいちゃん、ウチは信じてるよ……」
甜歌さん。あんた絶対疑ってる。
「おまwちょww待てwww」
弁解すらも許さず、彼らは背中を向けた。結局誤解は解けぬまま、しばしの別れ。
「むぅ、参ったな」
「ははは、一週間もすれば2人とも忘れてますよ」
と、他人事のように平井。下手をすれば、彼自身も疑惑の対象になったのに。しかし、あの2人のことだ。平井の言う通りかもしれない。
「それもそうだな。で、平井はどこ行くの?」
「墓参りでもしに帰ろうかなと思って」
「墓参り……恋人の?」
「はい。それでは行きますか」
平井は特に感情の変化を表に出すこともせず、踵を返した。
「あ、ちょい待って。その前に服だけ買わせて。このまんまじゃ、また道化師に間違われちゃうよ」
家電屋の制服から、この世界標準の布の服に着替え終わり、俺心機一転。
335 :
1:2005/07/14(木) 21:58:44
目的地はノマク村。シフィーロの南東、レク村にほど近い場所にポツンと存在する小村だ。8年ほど前、平井はこの村で歌手として恋人
と共に幸せな生活を送っていた。しかし、当時、前魔王フィカブーの配下であったえなりの謀略で村は焼き払われ、その際に恋人も命を
落よしてしまった。仇討ちを誓い旅立った平井は、それ以来、一度も村には帰っていないようだ。
海岸沿いの街道を出発した俺達は、一路ノマク村を目指す。
「男同士の旅ってのもなかなかいいもんですね」
「だな。女の子といると何かと気を遣うことも多いし。気楽でいいな」
甜歌やカエラを嫌悪しているわけではない。ただ、これまでの人生であまり女性と交流を持つことが無かった為、彼女らと接していると
必要以上に気を遣ってしまう。例えば毎月のお客様が来た時など。その点、平井は男同士気疲れしなくていい。イケメソとブサメソとい
う相違点はあるけれども。
海岸線を出ると峠を越えることになる。途中、カイタ村に立ち寄って軽い食事を取った後、ノマク村に到着する頃には既に日が傾きかけ
ていた。村内は夕食時ということもあり、人通りはまばらだ。
「堅じゃないか」
こちらに気付いた複数の男達が近付いてきた。平井とは知己らしく、とても親しげに話をしている。そうしていると、一人の女性がとる
ものもとりあえずといった勢いで駆けて来た。それも結構可愛い。歳は22、3歳くらいか。
「兄さん……」
「兄さん?」
彼女の目線を辿ると平井の姿。彼に妹がいたとは初耳である。
「あい……」
あいと呼ばれた平井の妹は、感情を抑えきれなくなったのか、彼の胸に飛び込んだ。再会を果たした兄妹。久々に感じた肉親の絆という
やつ。たまには妹(看護師)に電話でもしてやらねばと、一人密かに反省する俺。
平井の妹を加えて、俺達は村はずれの墓地に向かった。小高い丘の上にあるその場所を目の当たりにして、俺は立ちすくんだ。そこには
夥しい数の墓。二百、いや三百はあろうか。この小村にしては余りに数が多すぎる。
336 :
1:2005/07/14(木) 21:59:08
「この村の住人だけでなく、えなりの手によって殺された人達も同じ場所に葬られています。あの襲撃の夜は、祭りで各地から大勢の観
光客が訪れていましたから」
俺の疑問を察したのか、あいが小さな声で説明した。
平井は黙々と墓の間を歩いていく。そして、一角にある小さな墓の前で立ち止まった。それと知っていてもうっかり通り過ぎてしまいそ
うな、何ら特別な所などない質素で目立たぬ墓である。
俺はいつになく神妙な気分になって、平井を見守る。その表情は、普段見せることのない悲しみに満ちたもの。地に膝を突き、瞼を閉じ
て墓石に手の平をかざしている。既に亡い恋人と対話しているのだろうか。
しばらくの後、平井は立ち上がって声を発した。
「行きましょうか」
いつもの平井に戻っている。あいが平井に提案する。
「酒場のマスターの所に寄って上げて。きっと喜ぶわ」
村に戻った俺達は、酒場を訪れた。店内は小学校の教室ほどの広さ。食事用の丸テーブルが3セット、奥にはカウンターがある。客の入
りはまばら。俺達はカウンターの前に立つが人影は見えない。料理の支度で忙しいのか。
と、しばらく待っていると、奥から中年の男が姿を現した。そして、
「やあ、(´・ω・`) ようこそ、バーボンハウスへ」
「バボハかよ!!www」
突っ込まずにはいられない。彼がこの店のマスターのようだ。(´・ω・`)によく似ている。
「お久しぶりです」
平井は軽く会釈をした。平井の姿を認めたマスターは、大きく目を見開いて息を詰まらせ、すぐに後ろに向き直った。そして棚からグラ
スを二個、取り出そうと両腕を伸ばした。が、グラスを持つ手は明らかに動揺で震えている。それらを台に置き、今度は酒瓶を手に取っ
た。次にこちらを向いた時、グラスには白く透明な酒がなみなみと注がれていた。彼は覚束ない手先で、グラスをカウンター席に置く。
「このテキーラはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい」
337 :
1:2005/07/14(木) 21:59:31
まずあんたがおちけつ。席についた俺達は、挨拶代わりのテキーラを一気に飲み干した。テレビ番組を見ていると一気飲みが基本とでも
いうようにやっているが、正直死ぬかと思った(実話)。
「マスター相変わらず無口ですね」
と平井。マスターは照れを隠すように、無言で俺たちのグラスに二杯目を注いだ。平井の言う通り、元来人と話そうとしない俺でも驚く
くらい無口なようだ。ちなみに二杯目ともくると、テキーラなど滅多に飲まない俺にとっては嫌がらせもいい所だ。
平井は店内を見回して、ひどく懐かしげな表情を浮かべている。壁面の古めかしさからして、どうやらこの酒場は襲撃の中でも大きな被
害を被らずに済んだ様だ。
「懐かしいな。僕はここで歌っていたんですよ」
「そういえば平井は歌手だったんだよな」
「ええ。昼間は野良仕事をして、夜はこのバーボンハウスで歌を歌わせてもらっていたんです」
俺は平井につられて店内を見ている内、夕食を取っている一団に目を奪われた。上は15歳くらいから下は2、3歳までの子供達。それが
皆、一様に(´・ω・`)のような顔をしていのだ。俺が平井の肩を叩くと、
「マスター、また子供生まれたんですか。これで何人目ですか?」
案の定、マスターの子供達のようだ。
「うん、「8人目」なんだ。仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない」
いや、子沢山は別に謝るようなことではないと思う。
「この店は変わってないが、村はだいぶ変わりましたね。思い出のある場所はほとんど焼けてしまった」
平井の言葉に、マスターは少し寂しそうな顔を見せた。しかし、すぐにこうきり返した。
「でも、この現状を見たとき、お前はきっと言葉では言い表せない「希望」みたいなものを感じてくれたと思う。混沌に支配されようと
する今の世の中で、子供達にそういう気持ちを忘れないで欲しい、我々はそう思って半ば廃墟と化したこの村を立て直したんだ」
平井は口元を緩めて頷く。
338 :
1:2005/07/14(木) 22:00:10
「そうですね。俺がえなり討伐をできないでいるというのに、この村は既に歩むべき道を見つけている」
その胸の内には、村の復興を手伝えなかったことと、仇討ちが果たせないでいることへの悔恨の念があるのかもしれない。平井はそれら
を飲みこむように、二杯目のグラスを一気に空けた。俺もそれに続いて飲み下した。自分で頬を叩いて、辛うじて意識を保つ俺。平井も
結構キテいるようだ。
そんな俺達を見て、マスターはニカッと並びの悪い歯を見せた。
「じゃあ、注文を聞こうか」
俺達はマスターの心づくしの料理をご馳走になった。食事を終えた後、俺は店に平井を残しえ早々に退散した。積もる話もあるだろうと
気を利かせたのもあるが、実際のところ、俺自身酒が相当回って限界に近付いていたのである。
ふらつきながら宿の自室に着き、一息つく俺。ズボンを脱いで、パンツ一丁になる。
その時、ノックの音がした。誰だろうか。この村で、俺を訪ねてくる人間などいるはずがないのに。
「はい。どなたですか?」
「……平井の妹のあいです」
「あいさん?」
俺は脱ぎかけたズボンを慌てて履いて、ドアを開けた。そこにはあいが俯いて佇んでいる。
「どうしたんすか?こんな時間に。平井ならまだマスターのとこだと思うけど」
「実はあなたにお願いがあって来たんです」
とりあえず部屋に招き入れると、彼女は依然として思いつめたような面持ちで俺の目を見つめる。俺はズボンがずらないか心配でならな
い。慌ててベルトを締め忘れたのだ。
「で、お願いって?」
339 :
1:2005/07/14(木) 22:01:11
「兄さんの……兄のえなり討伐を、何とか思い止まらせてもらえませんか?」
唐突に何を言うのだろう。俺は面食らった。と同時に、ズボンがずり下がらないように必死に手で上げる。
「そ、そんなこといきなり言われても、ただでは……」
絶妙なタイミングで痰が喉に絡んで、俺の言葉を詰まらせた。“ただではやめるはずがない”、そう言おうとしたのが、
「勿論タダでとは言いません」
完全に勘違いさせてしまった。あいは覚悟を決めた顔で、俺に寄り添ってくる。あれだ。悪代官に父親の弱みを握られ娘が、止むに止ま
れず覚悟を決めて代官に抱かれる。あの時の目だ。というか、俺はそこまで悪人面なのだろうか。
「そ、そんな!」
ナイスタイミングで、俺のズボンがスルリと床に脱げ落ちた。
後半に続く
341 :
Mr.名無しさん:2005/07/14(木) 22:48:05
>>340 あい ◆ai21/5wMe6 だったりしてな・・・
期待していなかった平井コースにこんな展開が!オレなら迷わず行かせてもらう。
だが実生活では…orz
願わずにはいられない
>妹(看護師)
も1の妄想に過ぎないと
344 :
1:2005/07/14(木) 23:42:36
今日はここまで。
>>340 あ、悪ぃ。台詞一箇所端折ったらモデルの名前も一緒に消えてたよ。加藤あいな。
あと妹は妄想じゃないから。
1の妹さんはいつ出てきますか?(*´Д`)'`ァ'`ァ
346 :
Mr.名無しさん:2005/07/15(金) 00:19:05
バーボンすらネタに・・・スゴス
バーボンワラタよ。久々のエロネタに後半を期待汁
お茶くみ係がいないな。また必死で来るのだろ過
バーボン!
(((;;;:: ;: ;; ;; ;:;::)) ::)
( ::: (;; ∧_,∧ );:;;;)) )::: :; :))
((:: :;; (´・ω・)っ旦;;;; ; :))
((;;; (っ ,r どどどどど・・・・・
i_ノ┘
バーボン!
((;;;;゜;;:::(;;: ∧__,∧ '';:;;;):;:::))゜)) ::)))
(((; ;;:: ;:::;;⊂(´・ω・`) ;:;;;,,))...)))))) ::::)
((;;;:;;;:,,,." ヽ旦⊂ ) ;:;;))):...,),)):;:::::))))
("((;:;;; (⌒) |どどどどど・・・・・
三 `J
.∧__,,∧ ;。・
⊂(´・ω・`)⊃旦
☆ ノ 丿 キキーッ
ヽ .ノ (⌒) 彡
と_丿=.⌒
.∧__,,∧ゼェゼェ
(´・ω・;)
( o旦o )))
>>1さん、まずこれを飲んで落ち着いてほしい
`u―u´
>>お茶くみ係
まずはおまいがモチツケ
まとめ管理人が姿を現してないのが心配だ・・・・
>351
2週間ほど出張行ってて、さっき帰って来ました。これから更新しますんで。
353 :
Mr.名無しさん:2005/07/15(金) 23:51:57
乙&保守
おつ
こりゃ平井ルートじゃなくてバーボンルートだな。w
もちろん、続きキボンヌ!
次はそろそろかな?
1がOCNだったりしてw
ありうるな
ツンデレ投下多くてヤラヤマスィ…( ゚д゚)
次はいつだ(´Д`)ハァハァ
今日、クル━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
かな?
365 :
1:2005/07/18(月) 22:28:39
次は20日くらい。
ちなみに俺nifty。
>>1 つ旦~
OCNは大変らしいな
何があったのかは良く知らんが
>>1は今度はK−1にぶつけてきたというわけか・・・
ビッグイベントにことごとく挑戦していく
>>1の野心に愛すら覚える
ここ面白いですね。次が来るまでにまとめを読み終えねば。
バーボンなんかよりよっぽど落ち着くよ
今日だな
ああ、今日だ
373 :
1:2005/07/20(水) 19:00:15
第32話(平井ルート後半)
咄嗟にしゃがみ込んでズボンを上げた所に、あいの顔が急接近する。
「おわ、ちょ、待って!」
「待てません」
せっかく履き直した俺のズボンが、彼女の手で再び下ろされた。
「いや、ほんとまずいから」
俺は負けじとズボンを上げる。
「兄の為です」
更に負けじとあいが下げる。
「まず話し合おう」
もう必死になってズボンを上げる俺。
「苦痛は早く済ませたいんです」
それでもあいは下げる。
「だからあんた勘違いしてる!」
俺、上げる。
「何がですか!」
あい、下げる。
「“タダでは”ってのはそういう意味じゃない!!」
あげ(ry
「じゃあ、どういう意味なんですか!!」
sage
「コントか!!!」
いい加減業を煮やした俺は、あいの両手首を強く握った。激しいズボン上げ下ろし合戦に、二人とも肩で息をしている。
この光景、傍目から見ると変態同士の奇行に映ること請け合い。
汗だくの俺は、疲れ果ててベッドに腰掛けた。
「平井はただではえなり討伐を止めないだろうって、言おうとしたんだよ」
「え……そうなんですか?」
ようやく自らの強引な思い違いに気付いたあい。顔を真赤にする彼女に、俺は自分の隣を手の平で指した。おずおずと
そこに座るあい。
「何で平井を止めたいんだ?」
374 :
1:2005/07/20(水) 19:00:52
俺の問いに、あいは少し間を置いて話し始めた。
「千乃(菊間)は、兄さんを愛していなかったんです」
彼女の話を要約するとこうだ。ある日、村に立ち寄った旅の吟遊詩人があいに忠告した。平井の恋人千乃は隣の大陸では
有名な詐欺師だと。未成年を酒場に呼び出して酒をすすめたり、男をたぶらかして金銭を搾るだけ搾り取る。挙句の果て
に結婚資金を奪って姿を消すことを繰り返してきた魔性の女だと。
「彼女は巧妙に正体を隠していたわ。兄さんは結婚も考えていたようだけど、千乃自身にはそんな気はさらさらなかった
はず。兄さんを利用するだけして、姿を消そうとしていた。そんな人の弔いの為に、兄さんが命を危険に晒すのを見たく
ないんです」
訥々と語る彼女の目尻から水滴が伝った。心底兄のことを心配しているようだ。
「なるほど……」
俺はしばし黙考した。そして、
「わかったよ。明日、俺の口から平井に言ってみる」
「ありがとうございます。お願いします」
翌朝、俺は平井を村外れの丘に誘った。彼を説得するのに、何かと衆目がある村の中よりも、人気の無い場所の方が都合
が良いだろうと思ったからだ。俺達は無言で小高い丘へと向かう。昨晩の雨のせいで地面が所々ぬかるんでおり、ドジな
俺はしばしば滑って転倒しそうになった。
「えなり討伐を諦めてくれないか?」
唐突な俺の申し出を聞いても、平井は想定内という顔で、別段驚いた様子はない。
「誰に頼まれたんですか?」
「お前のことを心配してる人がいるんだ」
真剣な口調の説得モードで話しかける俺に、
「その表情から察すると話しても時間の無駄ですね……わかりました。そこまで言うなら、僕と闘ってください」
意表を突く提案。俺は、彼の意図を理解できずに訊き返す。
375 :
1:2005/07/20(水) 19:01:58
「どいういうことだ?」
「あなたが僕を倒せるだけの実力を持っているなら、僕はえなり討伐をあなたに任せる」
そう言う平井の瞳には、普段の温厚な彼ならば決して見せない敵意が漲っている。
「わかった」
返事が戦闘開始の合図になった。互いに構える。間合いは近い。張り詰める空気。平井は普段背中に背負っている刀を、
今日に限っては腰に提げている。彼が半身を捻って身を沈めた。
風が止まった。
「本気で行きます!」
彼が放った瞬速の居合い抜きを、俺は脊髄反射そこのけの勢いで捌いた。初めて感じる平井の攻撃の重み。次いで放った
俺の反撃が、平井の返す刀とぶつかり合い火花を散らした。両者の実力は完全に拮抗している。
飛び退いて一度間合いを調整して、今度は俺が突進を仕掛けた。激しい剣撃の応酬が繰り広げられ、掠り傷ではあるけれ
ども、お互いの身体に幾多の傷が刻まれていく。そして、ふとした瞬間に、平井がぬかるみに足を取られて体勢を崩した。
そのごく短い隙に、俺は彼の首筋を捉えた。しかし、そこで俺の心に逡巡が生まれた。平井は言う。
「あなたは強くなった。異世界人の特性を考慮しても、最初出会った頃とは段違いだ」
剣を払い除けられたと思うと、俺の腹部に強烈な前蹴りがめり込んだ。
「だが、目的の為に情を捨てることを出来ないでいる。躊躇いを含んだ剣は概して死につながるんです」
「く……」
ぬかるみに仰向けに倒れてうめき声を上げる俺に、平井は吐き捨てる。
「僕を斬る覚悟もできないくせに、えなり討伐を止めようとは片腹痛い」
平井の姿が深田に重なった。俺の中で言いようの無い力が湧き上がった。圧倒的に不利な体勢。そこから放った俺の攻撃を、
平井の刀が受ける。渾身の力の衝突。気付いた時には、双方の得物が宙を舞っていた。俺は素手で反撃に打ち出るべく立ち
上がった。しかし、平井は間髪を入れず、胸元から匕首を取り出して突きつけた。
「これで決着です」
匕首の先が俺の眉間に向けられた。と、その時である。
「やめて!!兄さん。その人は、その人は私の頼みを聞いてくれただけなの」
あいが俺と平井との間に割って入った。
「やっぱりお前か」
376 :
1:2005/07/20(水) 19:02:37
全て承知していたという風な口調。
「ごめんなさい。でも、私、兄さんの身に何かがあったらと思うと……」
流れる涙で言葉を続けられず、立ち尽くすあい。
「千乃は他の大陸では有名な詐欺師だったんだ。平井の金が目当てだったんだよ。そんな女の仇討ちに、命を賭ける意味が
あるのか?」
泥を払いながら立ち上がった俺は、平井に真実を告げた。しかし、平井は首を左右に振った。
「そんなことは知っています」
「え!?」
思いも寄らない答えに、俺とあいは絶句した。
「知っていたんです。千乃が詐欺行為を働いていたってこと。でも僕は彼女の愛を信じていたんです。それは今でも変わり
ません。あの襲撃の夜、僕は結婚資金だけでも持ち出そうと燃えさかる自分の家に飛び込んだ。そこに彼女も来てくれたん
です。僕を助けようと思っての行為だったに違いない。でも彼女は落下した梁の下敷きになって死んでしまった。その時の
彼女の眼が僕の脳裏に焼きついて離れないんです」
そう語る平井の哀しげな眼を目の当たりにして、俺は言葉が出なくなった。
千乃は本当に平井を助けに家に入ったのか。或いは結婚資金だけを取りに戻ったのではないか。それは今となっては確かめ
ようがない。しかし、事実と言うものは、実は瑣末なことに過ぎないかもしれない。平井が彼女に愛を感じていたこと。そ
れが唯一の真実であるわけで、それはそれで万事おkのように思える。
「あい。確かにえなりを倒すことは僕にとっての復讐だ」
平井はいつもの穏やかな笑顔で、唯一の肉親である妹に語りかける。
「でも皆と一緒に旅を続けている内に、僕の中にもう一つの動機が生まれてきた。使命感とでもいうのかな。この世界を守
るという使命だ」
ここで、平井はあいの頭を優しく撫でた。
「ごめんな。あい」
「兄さん……」
377 :
1:2005/07/20(水) 19:03:21
あいは兄の胸に飛び込んで泣きじゃくった。俺はその様を傍から見守るしか出来なかった。助っ人のはずが形無しである。
瞬く間に一週間は過ぎた。静かな村で過ごした日々は、決戦への力を蓄える上での最上の栄養になった。ここまで心の底か
ら安らぐことは、現実世界では有り得なかったことだ。
今日は、束の間の休息を終えた俺と平井がシフィーロに向かう日。数人の村人が見送りに来てくれた。その中にはあいの姿
もある。
「兄さん。必ず生きて帰ってきてね」
心配そうな口調は変わらない。しかし一週間前の彼女と違うことがある。それは眼差しの奥底で兄の生還を確信しているこ
とだ。
「ああ。僕は大丈夫」
平井は力強く約束した。あいは俺に向き直った。
「……あの、あなたもきっと帰ってきてください」
「え、俺?」
「はい……」
どうしたわけか、彼女は居心地悪そうにうつむいた。
「あ、ありがとう」
小さく礼を言う俺。それを見ていた平井が、怖いくらい満面に笑みを浮かべた。そして小さく漏らした。
「あいは絶対に渡しませんからね」
「え?何?何?」
聴き逃して問い返す俺を無視して、平井はさっさと馬を走らせた。
続 く
>>1お茶ドゾドゾドゾー
旦~
旦~ 旦~
ヽ ) ノ
旦~⌒(`・ω・)ノ旦~
/ ( ヽ
旦~ 旦~
旦~
379 :
Mr.名無しさん:2005/07/20(水) 19:19:00
1以外の誰かへ
このスレ面白い最初から読む価値ある?
↑は俺ね。今日は一番乗りだ〜
>>381 お前の体をかけてまで言うか…と
誤変換を好意的に解釈してみる
>>379 昔、あるいは今でも、妄想するのが好きなやつなら
にやにやしながら楽しめる
小説読みに来たなら速攻ログ削除したほうがいい
菊間かよ!
あいかわらず旬のネタ満載だなw
やっと追いついたぁ〜。1乙。
最初の頃みたいに自分の妄想を書くのは駄目なの?
387 :
1:2005/07/20(水) 23:48:44
忘れてた。今日はここまで。
オレは、
>>1の妄想を約三名+お茶汲み係でひたすら何日も待ちわびる、この雰囲気は好きだ。だが違うヤシの妄想があっても悪くない
>>388 お許しを頂いたので書こうと思ったけど、
今、改めて思うとHUNTER×HUNTERのパクリっぽいのでやめた・・・。
もっともHUNTER×HUNTERの連載が始まる前から抱いていた妄想だけどね。
それにまとめサイトを全部読んでしまうとあまりにも稚拙すぎて・・。
>>389 もうひとり見てるぞノ
たまにしか来ないから書き込まないでROMってたよ
オレ以外にもROMってるヤツがいるはず
俺も俺も
いつも点呼はじまったときに
俺が挙手する直前で「やっぱり三人かー」ってレスがあるんだよw
だけどなんかそれもいい感じでなw
>>392 いや、いいんだって。
パクリのオンパレードで。
どうせ長いの書くんなら小説にした方が良かったんじゃね?
>>1
とりあえず保守しとく
俺も1の妄想を毎日楽しみにしてるヤツの一人だ
今度の点呼にはぜひとも参加するよ
前スレでちょっと書いてた奴はどうしたんだろうな。
俺の特殊能力。
相手に俺に対する恐怖心を植え付ける。発動条件は相手に触れる事。
ビビって逃げ出す程度から、シッコをちびる、廃人になるまでの間でコントール可能。
それ以外は何も出来ない貧弱な俺。
なので能力が発動する時は大抵DQNに絡まれて相手が掴みかかってきた瞬間だけど・・・。
この前、絡んで来たDQN新村と高橋はあまりにウザかったので廃人にしてしまった。
そんなある日・・・・。植え付ける恐怖心を上手く調整すると相手を言いなりに出来る事に気が付く。
そこで俺は最初の実験台として常々ズリネタにしている洋子と典子をターゲットに定めた。
>>401 お、珍しいプロットだね。
楽しみにしてるからちゃんと書けよ。
>>402 ごめん・・いつもここから先はオナヌーモードに入ってしまうので、これが限界w
なら、その妄想を書けばいいさw
オナヌー後は妄想が発散されて書けなくなるんだろ
406 :
Mr.名無しさん:2005/07/23(土) 23:52:36
保守しとく
407 :
1:2005/07/24(日) 00:03:31
次は25日くらい。
明日か
409 :
1:2005/07/24(日) 22:36:57
悪い。明日出社になった。次28日。
>>409 どんまいだ。
楽しみが先に伸びただけだよ。
暑い中休みが減ると体にも厳しいだろうし、
お仕事くれぐれも無理しないようにね。
>>1が休みの日に書いてるとすると今月は5日しか休んでないわけか
>>1の影響で電気屋就職するのもいいかも、て思う今日この頃。
| | |
ゴチン 且且~
矧至止 且且~
(´=ω=) 且且~
>>1さんどんまいです
/ヽ○==○且且~
`/ ‖__|且且~
し' ̄◎ ̄◎ ̄◎
414 :
Mr.名無しさん:2005/07/25(月) 22:19:56
>>405 俺はオナニィ後の方が頭スッキリして書き易い。
>>412 家電屋になってもあんまいいことないよ。
ここの常連ってどんなジョブなの?
俺はガチで配管工です
ってかここの読者って何人いるんだろ
書き込んでる人は4〜5人って感じがするけど
ROMってる人入れたら30人くらいかな?
俺は教育関係。
いつも3人しか居ないって冗談で言ってるけど、
5、6人位は居そうだよな。ROM入れたらもっと。
俺はIT関係。
ぶっちゃけ417と418は俺のレスです
俺は物流関係
普段ROMってるだけだけど楽しみにしてる。
421 :
Mr.名無しさん:2005/07/27(水) 01:08:39
俺は電子メーカー関係
少しの間、茶菓子係りやってたw けど辞めた人
ヘボ学生もいますぜ!
初代スレからのファンだよ
以外と多いな
俺は販売、
>>1と近からずも遠からず
家も近くなので親近感が沸いてる
オレは、消費財メーカー関連。ばんそうこうとか売っている会社
大学院生
人生崖っぷちなのでここで現実逃避してる
当たり障りは無いがちゃんと心のこもった感想を書いてる俺もいる
もうすぐ無職になる悪寒
俺は営業職。
しかし、今年で毒男板を去らなければいけない・・。
何だかしみじみしてきたな
>>427 去る事はない。
性別の違う自分がこのスレを愛読しているのだから
お前も続けて常駐してもいいんだ。
>>427 素直に言うよ。おめでとう。
・・・性転換するわけじゃないよね。
今日だ
先週初めくらいにこのスレに気づいて何気なく覗いてみると・・。
必死でまとめサイト読んでやっと追いついたのに、
ドラクエ3で言うとアレフガルド辺りだろうか??
なんか寂しいな・・・。
おまえら色々職業書いてるけどホントは俺含めて2,3人しかいないんだろw
もちろん。俺もお前も無職だしな。
三人目のオレが来ましたよ
436 :
1:2005/07/28(木) 21:37:54
第32話(カエラルート)
「カエラと一緒に行っていいか?」
「は?私?」
瞬時にカエラの表情が歪んだ。例えるなら、キモヲタから告白を受けた女のそれに似ている。
「め、迷惑?」
選択肢としてカエラルートを設けた手前、俺は一応カエラに問うてみる。
「……まぁ、いいけど」
渋々承諾してくれた。ルート開通。妄想家の面目躍如。
「ねぇねぇ、おにいちゃん」
甜歌が俺の袖を引っ張った。
「どうした?」
「カエラと何かあったの?」
甜歌の尋ねる声は、カエラを気にしてか、ひどく小さい。俺も自ずと小声になってしまう。
「何かって?」
「だって、最近おにいちゃんにツンツンしてるもん」
それは俺も実感している。ちょうどヤックソ戦が終わった後からだ。そっけないというか、とげとげしいというか、
便所で遭遇したカマドウマ並に嫌悪しているというか、まるで今後ツンデレな展開を視野に入れているというか、
とにかく彼女の俺に対する態度は冷たい。何か嫌われるようなことでもしたのだろうか。
「わからないな」
俺はお手上げという風に、首を左右に振った。
「それじゃあ、また一週間後にこの食堂で」
平井の言葉に頷き合って、俺達は別れた。一時の別れ。各々がどこに行くかはお互いに敢えて聞かない。俺達は並
んで平井と甜歌の後ろ姿を見送った。
「さて、私達も行きましょうか」
カエラは市営厩舎の方向に歩き出した。しばらく歩いて、俺は思い立って歩を止めた。
「あ、その前に服屋に寄りたいんだけど」
自分が未だもって家電屋の制服に身を包んでいることに、今頃気が付いた。このままの姿で冒険を続けるのはいさ
さか恥ずかしい。
「その服でもいいと思うけど」
とカエラ。
「本気で言ってるのか?」
「あははは、道化師っぽくていいじゃない」
437 :
1:2005/07/28(木) 21:39:10
その哄笑、絶対に俺を馬鹿にしている。俺はすぐ側の服屋に入ると、適当に冒険者用の服装を揃えてもらった。早
速着替えて表に出ると、カエラの姿がない。
「あれ、カエラ?」
返事はない。辺りを見回すが、御馴染みのキノコカットは見えない。探しに行こうとも考えたが、俺は思い直した。
この場所を離れれば、またややこしいことになりそうだ。幼少期、フラワーフェスティバル会場で家族離散の憂き
目にあった苦い記憶が蘇る。
仕方がないので俺はその場で待つことにした。一体どれくらいの時間を待っただろうか。そろそろ痺れを切らし始
めた頃、ようやく聞きなれた声が背後から響いた。
「お待たせ」
俺はわざと不満げな顔を作って後ろを向く。
「お待たせって、人に断りなく一体どこへ……あ」
キノコがない。立っているのは確かにカエラ。しかし、ボリュームが大分減ってすっきりした髪型に。どこをほっつ
き歩いていたのかと思えば、美容院で髪を切って貰っていたようだ。
「似合う?」
自分でもいたく気に入っているようだ。
「あ、ああ。似合ってる」
ひとまず誉めておくに越したことはない。お互いに心機一転した俺達は、再び市営厩舎を目指して歩く。
「で、カエラはこの一週間をどこで過ごすんだ?」
「修道院のことが心配だから、一度帰ろうと思うの」
「なるほど。了解」
厩舎で馬をレンタルして、俺達はガシヒロを目指して街道を進み始めた。シフィーロから修道院に至る道程は結構な距
離があり、往路だけで丸1日かかる。魔物は出現こそするものの、完全復活を遂げた俺の俺専用異世界人専用聖剣とカ
エラのハルバートの敵ではなく、特に大事は起こらず順調に旅路は進む。
それにしても気になるのは、カエラのヘアスタイルである。やはり人間のイメージは髪型が負う所が大きい。俺がちら
ちらと彼女の横顔を盗み見るていると、カエラがそれに気付かれてしまった。
「私の顔に何か付いてる?」
439 :
1:2005/07/28(木) 21:43:37
「い、いや、キノコが刈られてスッキリしたなぁって、なんてな。ハハハ」
俺は慌ててごまかすが、
「フォローになってないわよ」
痛々しい沈黙が訪れた。俺は極力彼女の方を見ないように、前方に視線を固めた。
そうして耐え難い時間を過ごしていると、見覚えのある円筒形の建物が見えた。カエラが所属している修道院だ。だが
少し様子がおかしい。以前訪れた時は老朽化が進み廃院同然だった。それがどうしたことだろう。人影がちらほら見え
て、補修工事用のやぐらまで組まれているではないか
「なぁ、カエラ。補修工事が始まってるみたいだけど?」
「まさか……」
カエラは修道院に向けて全速力で馬を走らせた。俺もそれに続く。修道院に近付くに従い、幾人もの職人が忙しなく出
入りしているのが確認できた。補修工事はかなりの急ピッチで進められているらしく、以前壁に空いていた幾つもの穴
ぼこが、既に見る影もなく綺麗に修繕されている。
修道僧が3人、表で工事の様子を満足げに見守っている。そのうちの一人が俺達に感付いて、真ん中の一番老齢と思わ
れる僧に耳打ちした。老修道僧がこちらをに振り向く。
「院長様……」
カエラが小さく漏らした。どうやら老修道僧はこの修道院の院長(津川雅彦)のようだ。カエラは足早に院長の元へと
走り寄る。俺はオプションよろしくその斜め後ろについて歩く。
「院長様、指示を守らず修道院を留守にして申し訳ありませんでした」
頭を深々と下げるカエラ。修道院長は眉を顰めた。
「うむ。その点は確かに戒めるべきだな」
「はい……」
「しかし、それを含めても、今回お前が携わったヤックソ討伐の功績は大きい」
「知っていらしたんですか!?」
「ああ。お前は我が修道院の誇り。今やここにとって、なくてはならない存在だ」
「院長様……」
「我々は喜んでお前を迎えよう」
修道院長はにっこりと微笑んだ。
「ありがとうございます!院長様」
440 :
1:2005/07/28(木) 21:44:22
よほど嬉しいのか、カエラは感涙に咽んでいる。っていうか、ちょっと待て。今の会話の流れからすると、カエラがこの
まま修道院に留まること決定のように取れるんだが。
「カエラ、君はこのままここに、どぅふっ!?」
後ろから口を挟もうとすると、俺の口をカエラが手の平で塞いだ。いや、塞いだと言うより張り手。唇を覆う痛みに、俺
はしばし悶絶した。
「いいから黙ってて」
釘を刺すカエラは笑顔のまま。
「客人の部屋も用意しよう。今夜は泊まっていきなさい」
「ふぁ、ふぁぃ……」
腫れた唇を押さえている俺は、頷くしかなかった。
「さぁ、カエラ。中で今後のことについて話し合おう」
「はい」
院長はカエラの肩に手を置いて、修道院の中に消えていった。カエラは一体どういうつもりなのだろう。取り残されてし
まった俺の肩に、優しく手が置かれた。振り返るとアゴヒゲ気持ち青めの修道僧が。
「客室にご案内しましょう。ウホッ」
夜がやってきた。貞操の危機を感じつつ、ウホッな僧に院内を案内してもらった俺は、今つつましやかな食事を終えて回
廊を歩き回っている。
僧達は終課を終えて既に就寝中である。現実世界で言えばまだ18時くらいだろう。これで夜中の2時には起きて、翌日
のお勤めを始めるのだからたまらない。俺のような不規則な生活を送る人間には到底つとまるまい。
回廊を貫くように流れる川を見つめながら、俺は物思いに耽る。といううのも、昼のカエラと院長の会話が引っ掛かって
ならないのだ。ラミハの牢獄で交わしたカエラとの会話を思い起こす限り、彼女はこの修道院にとって失敗を頻発するお
荷物だったはず。それを院長は修道院共々カエラを置き去りにした。何故、今頃になってこの場所に帰ってきたのだろう。
教徒をこの地に呼び込み、地域の有力者の経済的支援を得る方法を見出したということか。そこにきて、まるでカエラの
帰院を待ちかねていたようなあの態度……答えは一つ……
「あ、ここにいたの」
息を切らせて、カエラが俺の元に駆けつけた。
「聞いて聞いて。私助修士から聖歌隊修道士に格上げされることになったの!」
歓喜に輝く瞳で報告するカエラ。しかし、俺は至って冷静に切り返す。
441 :
1:2005/07/28(木) 21:44:57
「えなり討伐はどうするんだ?」
「そこら辺は大丈夫。えなりを倒して戻ってきてからの話だから。しかも、えなりとの戦いにはお供も付けてくれるって」
「そうか」
「更に聞いて驚け。明日の公開ミサに出ることを許されたの。街の有力者の前で私を紹介してくれるんだって」
「そうか」
「そうかそうかって、味気ないわね。ちょっとくらい喜んでくれてもいいんじゃない?」
ここ最近冷淡だったカエラが、今夜はかなり機嫌がいいようだ。しかし、逆に俺はおぼろげだった不安が、確かなものへと
変わっていくのを感じて沈鬱な表情。
「何か言いたいことがあるの?」
「い、いや、別に」
「い〜え!その顔は絶対に何か言いたいって顔よ」
カエラは俺の顔をのぞきこんだ。しばらく逡巡したが、俺は重苦しく口を開いた。
「院長は、本当に教区と修道院のことを案じて帰って来たんだろうか」
「どういうこと?」
カエラは俺が何を言っているのか皆目理解できないと言う表情。
「院長がここに戻ってきたのは、何らかの利益が得られると考えたからだろう。その、何ていうか……院長が必要としてい
るのは君じゃなくて、ヤックソを倒した君の名声なんじゃないだろうか」
「……つまり?」
カエラの拳が小刻みに震える。
「君を広告塔にしようとしている」
「な、何を言うの!!その言葉許せない!!」
激昂したカエラは、俺の胸倉を掴んで拳を振り上げた。しかし、俺は視線を逸らすことをせずに、彼女の瞳を見据える。
「憶測でよくもそんな……」
「俺もこれが憶測で済んでくれればいいと思っている」
カエラは胸倉を掴む力を緩めると、踵を返して就寝所に向かって歩き出した。ふと立ち止まり、俺に振り返ることなく、ま
るで独り言のように力なく呟いた。
「ごめんなさい……でもね、そんなはずはない。そんなはずは……私は必要とされているんだから……」
俺は自分の迂闊な発言を呪いながらも、彼女の後姿を見送るしかなかった。
続 く
あいかわらずイイヨイイヨー
1乙
津川雅彦=松村が真似する津川雅彦だったけど
続きが気になる。
乙。前半って書いてないけど、後半もあると思っていいんだよな?
445 :
1:2005/07/28(木) 23:06:30
446 :
Mr.名無しさん:2005/07/28(木) 23:51:38
んナイス!
いいねぇ、乙ですよ
乙。
こういうちょっと暗いのも良いねえ。
∧_∧
(・ω・)
>>1さん、お茶ドゾー
/⌒ `ヽ-:,,
/ / ★ ノ \; 旦~
|( /ヽ |\___E)
| |\ /━━| ''ミ...
| | ( _ノ | "-:,,.....
| |. | / / "-:,,
| |. | / / ,,,-ー"
| .|(___)__.) ,,,-ー"
| l|::::|::::/ / """"
レ⌒\〉:::|::::| ,,,-
/::::|\:\
∠/  ̄
↑お茶汲み係です。
お茶汲みりりし過ぎだからw
452 :
転載:2005/07/29(金) 12:50:18
364 名前:妄想なんでちょいっと都合がよすぎ? [sage] 投稿日:04/03/19 (金) 00:30
今日はずいぶんと駅に警官が多かった。
俺はなにがあったんだろう? と思いながら傘を片手に足早に立ち去ろうとした。
まだまだ雨が降り続く道路へと続く階段を上りかけたそのとき、後ろから猛烈な爆音と爆風が耳朶を打った。
「うわああっ!」「きゃあっ!!」
人々がどよめき、ついで我先にと逃げ出す。
何かの事故だろうか? とこの期に及んで暢気に考えていた俺の耳に「テロだ・・・」という叫びが聞こえた。
テロなんて冗談だろ?! 三十六計逃げるに如かずだ。と俺も人に押されて逃げ出そうとした。
すると、ふと振り向いた俺の目に、見慣れないものが入った。
「待てっ!」 追いかける警官たち。逃げ惑う群集。
そして、あたりの人間を脅し、時には蹴り飛ばしつつこちらへ―そう、俺のいる上り階段へと走ってくる人相の悪い男たち。
彼らの手には少し大きめのナイフ、そして何かの配線の塊があった。
彼らの、さらに後方からは炎が渦を巻いて追ってくる。人々はあまりの非日常に喚き、泣き叫び、パニックに陥っていた。
俺だってそうだ。何かの拳法を知ってるわけでもない。軍隊にいたこともなければ今までテロなんて地球の反対側の騒ぎだと
高をくくってたただの毒男だ。
しかし、状況はそんなに悠長に考えていられるだけの時間を俺から奪い取ってしまった。
俺より機敏な人々はさっさと逃げてしまい、俺と暴漢どもを隔てるものは数メートルの空気だけになってしまった。
「ドケッ、コロスゾ!」
先頭の男が俺を明確に見て叫んだ。不自然な日本語だ。見たらその顔はマスクで下半分が隠されているものの、目元の彫りはかなり深かった。
453 :
転載:2005/07/29(金) 12:51:32
366 名前:Mr.名無しさん [sage] 投稿日:04/03/19 (金) 00:43
おそらく俺はそのとき他の人々に負けず劣らずパニックになっていたのだろう。
さっさと逃げればいいものを、なんと彼らの前に立ちふさがってしまったのだ。
そしてあろうことか、突進する先頭の男に向かって、こっちも走り出していたのである。
昔少し習っただけの剣道、先生には打ち込みは鋭いがその後が駄目だ、と太鼓判を押された弱さだったのにもかかわらず。
向かってくる俺に、男はマスクの裏でにやりと笑い、ナイフを構えた。すれ違いざまに斬るつもりらしい。
周りから悲鳴が上がる。俺は手の傘を長鑓のように構え、全力で走った。
刹那。
男のナイフは寸前で俺の喉を逸れ、鉄を張った俺の傘は男の喉を潰していた。
周囲の音が消える。
最初の男のすぐ後ろを走っていた二人目の男が倒れた最初の男に躓き、どうとばかりに倒れた。
足をひねったらしく、彼はのた打ち回ってもがいている。最初の男はと見れば、どうやらかなりやばいところに当たったらしく、動かない。
「ちっ。ガキが」
三人目の、おそらくリーダーであろう男は、そういって立ち止まった。
ライオンでも射殺しそうな目で、俺をにらむ。俺はといえば錯乱のあまり、かえって落ち着いてしまい、
同じような目つきで男をにらんだ。
「そこをどけ。アメリカの犬。」
「嫌なこった。ムスリムの恥。」
殺意に満ちた会話を交わし、親愛の情のこれっぽっちもない笑みを交し合う。
男は奇妙にゆっくりと懐に手を入れ、鈍く光る物体を取り出し、俺に向けた。
拳銃。
454 :
転載:2005/07/29(金) 12:52:12
367 名前:Mr.名無しさん [sage] 投稿日:04/03/19 (金) 00:57
「最後通告だ。どけ。」
「自分の国で好き勝手されるのは、60年前だけで沢山だ。ここはサムライの国さ。」
俺が答えるや否や、男はトリガーを引いた。
右肩に衝撃、初めて撃たれた・・・! 圧倒的な痛みと衝撃に、俺の視界が一瞬ブラックアウトした。
俺に宿っていた伝説の英雄めいた気分もあっさりと消し飛ばされそうになる。
くらくらする俺の視界の端に、ひきつった顔の女と共に、蔑みと快感にゆがんだ男の顔が見えた。
「・・・っ、この程度でっ!!」
叫んだ拍子に顔が揺れ、耳たぶを裂いて二発目が抜ける。
男の余裕の笑みが一瞬、崩れた。その隙に、俺は左手で傘を構えなおし、再び突進しようとした。
男が信じられないといった表情でしまいかけた銃を向ける。
撃鉄をかちりと起こす音がやけにスローモーションに聞こえた。
痛みはもうなかった。
三発目を腕を振ってかわし、四発目は前転でかわす。あと二発。彼の銃は六連発の古式ゆかしいリボルバーだ。
「アッラーフ・アクバルッッ!!」
「御旗楯無、御照覧在れっっ!!」
お互い、信じる神に叫び、五発目の銃声と共に、俺は手の傘を思い切り投げた。
いくら山梨の出身だからって、武田信玄はないじゃないか。
ちらりと苦笑し、自分の傘にすべてをかける。膝に重い衝撃。五発目の銃弾を食らったのだ。
膝が砕かれたらしいが、いかなる理由によるものか、全く痛みはなかった。ただ、熱さのみ。
俺はかすみ始めた目で相手を見た。
最後のテロリストは、余裕の笑みを凍らせたまま、眉間に傘を受けていた。
俺と、追いついてきた警官と、周りで見つめる群集と、空気を焦がす炎の中で。
男は、ゆっくりと倒れていった。
最後に引いたらしい六発目の銃声が、高く、遠く、凱歌の様に響いた。
455 :
転載:2005/07/29(金) 12:52:53
368 名前:終わりです。つたない文章でスマソ [sage] 投稿日:04/03/19 (金) 01:04
「日本人をなめるから、こうなる。覚えておけ、テロリスト。
俺は毒男、由緒正しい大和民族だ。命を懸けても、国と・・・誇りは・・・・まも・・・る・・・・・・」
俺は片膝のまま、そう呟くと気絶した。
サイレンのようなどこかの女の金切り声に混じって、
「アラー・・・」というテロリストの誰かの叫びが聞こえた。
俺は、口元に笑みを浮かべつつ、炎の近づく床に倒れこんだのだった。
どうやら一週間以上、俺は気絶していたらしい。
目覚めてしばらくした俺のもとに届いたのは、警視総監の名前で出された感謝状一枚と、
焼け付くような腕と足の痛みであった。
「報奨金くらいくれてもよかろうに・・・」
病院のまずい食事を片手でぱくつきながら、俺はそう苦笑したのだった。
456 :
転載:2005/07/29(金) 12:53:38
以上、昔あった妄想スレからの転載でした。
1の文体によく似てると思ったので。
木村カエラはリーマソ発言がなけりゃなあ
くわしく
>>458 雑誌での発言
「サラリーマンの人達って何が楽しいんだろう。もっと夢を持って生きればいいのに」
かなり叩かれてたな
自殺追い込みはデマゴギーらしいな
つか25日に木村カエラ三次に行ってるwww
カエラの評価が下がったな
国を動かすのはリーマンだぞ
>>461 芸能界の構造ってよく知らないんだけど、
どこかの芸能事務所に所属して仕事を割り当ててもらうんじゃないの?
んで、仕事の代価の給金をもらうわけでしょ?
これってリーマンとどこが違うんだ?
467 :
1:2005/07/31(日) 23:18:53
次は2日。
468 :
Mr.名無しさん:2005/08/01(月) 00:17:30
保守
469 :
Mr.名無しさん:2005/08/01(月) 05:23:12
そろそろOVAもやってほしいものだ
このひっそり感がいいね
秘密基地みたいな感じがたまらん
さて今日ですよ。
そろそろか?
madakanamadakana-
↓さあ、どうぞ!!
475 :
1:2005/08/02(火) 23:34:38
第32話(カエラルート 後半)
翌日行われた公開ミサは、俺の予想通りの展開だった。
ヤックソを倒したカエラの名は既にこの地域一帯に広まっており、彼女を一目見ようと大勢の教徒が訪れて、修道院はまるで
ライブ会場のような有様。聖堂内は信心深い教徒から普段礼拝などしないまで満員御礼、溢れかえった。そしていよいよ始ま
った公開ミサ。ミサ自体は静粛かつ滞りなく執り行われた。しかし最後にカエラが紹介されると、途端に会場は騒がしくなっ
た。彼女が中央に出るや、人々は歓喜の声を上げる。実際はこちらがメインイベントだったようだ。その扱いはジャンヌ・ダ
ルクよろしく、神に選ばれた生きながらの聖女のよう。
ミサは午前中一杯を費やし、それが終わると俺は僧侶達とともに質素な食事をとった。そうして食事を終え食堂から出る際に、
俺はカエラの姿を見出した。慣れない状況にいることもあり、心なしか疲れ気味のようだ。
俺は2人きりになったのを見計らって、後ろから彼女の横についた。
「カエラ、大丈夫か?顔色良くないみたいだけど」
「え?いえ、私は大丈夫。ありがとう」
「この後は何か予定あるのか?」
「これから院長様と一緒に領主様のお屋敷に行くの」
なるほど。カエラの足は修道院二階の院長室に向かっている。
「それじゃ、私は行くからあなたもたまには聖書でも読んでなさ……あれ?先客がいる」
ドアをノックしようとして、ふとカエラは手を止めた。近付いてみると、中から話し声が聴こえる。俺は身体をドアのすぐ側
まで寄せ、隙間から漏れる会話に耳をそばだてた。
「何してるの?」
「し!会話が聴こえる」
「ち、ちょ、盗み聞きなんてはしたないわよ」
「静かに」
俺はドアの僅かな隙間から中の様子を盗み見る。修道院長と、恐らく副院長と思われる男(高橋克実)が座っている。彼らが挟
むテーブルには、人間の頭部ほどの白い布袋が置かれている。院長はその袋を開けて、中から金貨を取り出した。袋の大きさか
らして、相当な額の金が詰まっていることは想像に難くない。まるで品質を見定めるかのように金貨を弄びながら、院長は薄笑
いを浮かべている。
476 :
1:2005/08/02(火) 23:35:17
俺は耳に神経を集中させた。
「一度は捨てたこの修道院が、ここまで役立ってくれるとはな」
「これも全てあの娘のお陰ですな。院内きっての劣等生が聖女に化けてくれたのですから」
どうやら2人は、カエラのことについて話しているらしい。やはり彼女の名声を利用して一財産作ろうと目論んでいるらしい。袋
を満たす金貨は、布施乃至は有力者からの援助金だろう。
「でも、よく彼女が帰ってくると分かりましたな」
「カエラは私に対して強い信頼の念を抱いている。この修道院に戻ってくることは分かっていたよ」
修道院長は午前中のミサと同じ穏やかな微笑を浮かべている。それ故に、会話の内容を考えると、余計に彼の邪さが強調される。
「しかし、カエラはえなり討伐隊に参加するつもりのようですが?」
と副院長。
「だから供を付けるんじゃないか。彼は百戦錬磨の僧兵で、いわばカエラの護衛だ。身を挺して彼女を守るように指示してある。
万が一、彼女が死亡することがあっても、その遺骸を持ち帰るよう命じてある」
俺は息を呑んだ。
「聖遺物……ですか」
死者でさえ商売道具に見据えている。副院長も、院長の余りにも非情な算段には、さすがに戦慄を覚えているようで、すっかり言
葉を失っている。
「どんな人間でも探せば利用価値はあるものだ」
院長は高らかに笑った。
俺は吐気がして隙間から視線を外した。予感が的中した。やはり院長はカエラを利用して一山当てることしか考えていない。この
ことを傍らにいるカエラに伝えるべきか、伝えずにおくべきか。俺はドアから顔を離し、ゆっくりと身体を後方に向けた。すると、
すぐ後ろでカエラが俯いているではないか。どうやら院長達の会話を聞き入っていたようだ。
「カエ……ラ」
表情は見えない。しかし視線を下ろすと、彼女が固く握った両の拳は小刻みに震え、そこから真っ赤な血が滴り落ちている。
俺は急に身体が熱くなって、
「よ、よし!俺が院長に一言物申して……」
勢いに任せてドアを開けようと、向きを変えた。だが、その肩にカエラの手の平が乗った。
「……やめて」
477 :
1:2005/08/02(火) 23:36:20
院長室にはいることなく、覚束ない足取りで去るカエラ。名前を呼んでも応ずることなく幽鬼のように歩く。階段を下り、回廊を
通って、彼女の足は修道院裏の菜園にある無花果の木の下でようやく止まった。
「あなたの言う通りだったわね」
「……」
言葉が見つからない。この状況で軽々しい慰めなど出来るはずがない。
「院長様は私のことなんて思ってくれていなかった。この修道院と一緒に私を捨てたんだ……そして今、私を利用しようとしている」
いつしかカエラの頬を涙が伝っていた。
「それもそうよね。何をやらせても空回りで失敗ばかりだもん。誰だって愛想をつかせちゃうよね……」
カエラは右の掌で自分の左手首を掴んだ。右手に力が込められるのがわかった。
「誰だって……」
俺が止めに入る間もなく音がした。低い、まるで木の枝でも手折るような音。俺はカエラの顔を見た。苦痛。激しい苦痛に顔を歪ま
せている。しかし、これは決して骨折による痛みだけではない。絶対的な信頼を置いていた者に裏切られ、失望と絶望に満たされた
心が漏らす嗚咽に他ならない。
その場を動けず見つめる俺。いや、見とれている場合ではない。カエラの腕が折れて垂れ下がっているのに。俺は他の僧侶を呼ぶべ
く踵を返した。と、その時、背後から声が聞こえた。
「待って下さい」
ひどく落ち着いた声。思わず立ち止まって首を後ろに向けるが、そこにいるのは当然のことながらカエラだけ。だが、彼女の目は明
らかに先ほどまでと変わっている。カエラであってカエラでない者がここにいる。
「あなたは……」
「リエ(木村カエラりえ)」
「リエ?」
この口調、聞き覚えがある。あれは確かラミハの闘技場だ。ヤックソとの戦いでカエラが見せた変貌。その時の彼女の口調だ。
「ええ。私はカエラのもう一つの人格。そして……」
リエに人格交代したカエラは、右手を自分の折れた左腕の患部にかざした。微弱な白い光がこぼれて、しばらくすると骨折していた
はずの左手首が持ち上がった。リエは五本の指を動かして回復術の効果を確認した。
「この子を守る者」
478 :
1:2005/08/02(火) 23:36:55
リエは全てを話してくれた。カエラは両親の厳格な教育方針の下で、常に優秀な姉弟に比べられて育った。失敗することを許されず、
失敗の度に自傷することで自らを苛んできたのだという。精神的に不安定になって姉弟に遅れを取り、結果として両親に見放され修
道院付属の寄宿学校に入れられてしまったのだという。カエラは自傷の苦痛から逃れる為に、回復術を得意とするリエという人格を
生み出し、自分自身で傷を癒してきた。
「私は本当は居てはいけない存在なんです。でも、あなたなら或いは私とカエラを一つにしてくれるかもしれない」
「俺が?でも、俺にはそんなことはとても……」
戸惑う俺。その問いかけに答える代わりに、リエはにこりと微笑んだ。同時に彼女は崩れ落ちた。俺はあわやというところで、彼女
の身体を抱きかかえた。どうやら気絶しているだけのようだ。
(俺がカエラを一つにする?どういうことだ……)
そこへ修道院長が姿を現した。その背後には副院長と数人の僧の姿が見える。
「カエラ!これは一体どうしたことだ?」
こちらを一瞥するなり院長は声を上げた。こいつが全ての元凶だと思うと、俺の中でいいようのない感情がこみ上げていた。
「悪いけど、あなたの金の卵は俺が連れて行きます」
院長はなかなかどうして聡明なようで、金の卵と言う言葉で全てを理解したらしい。眉を吊り上げて歯軋りをした。
「止めろ!!奴を止めろ!!!」
恐らくはカエラのお供に付くはずだった僧だろう。モーニングスターを携えた男(中尾。小学校時代。ビックリマン10弾くらいまで
全キャラ暗誦が特技)が前に躍り出て、俺に殴りかかってきた。しかし俺は動じることなく、カエラをその場に寝かせて、俺専用異世
界人専用聖剣を構える。次いで振り下ろされるタイミングを完璧に読み、一刀の下に銅製のモーニングスターを両断した。格の違いに
恐れを為す僧。
激昂する修道院長。
「どういうつもりだ!」
「俺はカエラ自身に頼まれたんだ。一つにしてくれと」
479 :
1:2005/08/02(火) 23:37:36
カエラを肩に担ぐ俺。そこに本性を露わにした院長が掴み寄ろうとする。
「何を訳の分からんことを!!」
その鼻先に、俺専用異世界人専用聖剣が突きつけられた。
「それ以上近付くなら、殺します」
「ぐ……貴様」
立ち尽くす僧達を尻目に、俺は厩舎に向かった。厩舎で装備品を馬に積んでいると、カエラが目を覚ました。
「ん……ここは」
「行こう。ここを出るんだ」
「え、あ、ひょっとして私、また人格が……」
「馬に乗れよ」
俺は彼女の発言を遮るように、馬を指差した。カエラも状況を飲み込んだようで、馬に飛び乗った。そんな彼女に対して俺は一言付け
加えた。
「君は必ず俺が一つにするから」
自分が吐いた臭い台詞に、胸やけを起こしながら馬を走らせる。追走するカエラはただただ無言で、それでもどこか吹っ切れたような
微笑を浮かべていた。
続 く
>>1が描くカエラはいいな。リーマンを敵に回したことは水に流そう
リーマンを馬鹿にしたのはもう1つの人格がry
カエラは頑張りやサンだな…
483 :
1:2005/08/03(水) 01:33:04
今日はここまで。
木村カエラの身長が154cmって最近知った。てっきり170くらいはあるのかと思ってた。
484 :
Mr.名無しさん:2005/08/03(水) 05:58:44
ここって書いていいのは妄想だけだよな?
485 :
Mr.名無しさん:2005/08/03(水) 06:03:23
3行にまとめろボケ
1いいよ1
>>484 ノンフィクション書きたいんか?
487 :
Mr.名無しさん:2005/08/03(水) 06:10:29
>>486 いや妄想じゃなく創造なんだが…
久々に浮かびそうで
>>482 sakusakuに出てくるカエラとはかなり違う味がするよ。
まああっちも天然系なんだが。
>>487 いいんじゃない?
というか…黙ってそれを妄想と偽って書いてりゃいいものを
正直屋さんめ(´ω`*)
僕は少し根暗な高校2年生。
名前はこんな性格には似合わず<中村 豪>と少しかっこいい名前だ。
親の都合で中学の頃は転校ばかり繰り返していた。
そのせいで元々内気で人見知りな僕はよりいっそう友達がいないでいた。
親もそんな僕に呆れてるようだった。むしろ邪魔と思ってるみたいだ。社会的に不適用とでも思っているのだろう。
そんな僕に友達が出来たのは高校一年の三学期だった。
そいつは<山崎 豊成>といい、たった一人<CC(カードコレクション)部>に入っている。
僕とは同じクラスで唯一の趣味であるCCで気が合い友達になった。
それからと言うもの僕は山崎といつも一緒にいるようになった。
そして高校二年も同じクラスになり楽しく生活を送っていた。。
そんなある日…。
<ジリリリリ…>
目覚ましの音がうるさく部屋に響く。
僕はいつものように目覚ましをベッドの上に寝そべりながら停める。
目覚ましを見ると
<7:25>
まぁいつも通りの時間だ。
衝撃映像のスローモーションぐらいの早さでノロノロとベッドから降り、一階の洗面所で顔を洗いに行くために部屋を後にした。
<キィ、キィ、キィ…>
階段を降りると右手の方にある洗面所で顔を洗う。
積んであるタオルで顔を適度に拭きリビングへ。
まだ眠気が残っているがパンをトースターに入れタイマーをかける。
食器棚にあるコップを取り出し冷蔵庫から出した牛乳を注いだ。
そのついでに冷凍庫から凍ったお茶のはいったペットボトルを取り出して忘れないように部屋に置きに行く。いつも通りの行動。
母に呆れてからと言うもの、中学校から母は僕のためにほとんど何もしてくれなくなった。
なので朝昼晩は全て自分で作らなくてはならない生活が続いていた。
まぁ朝昼晩と言っても昼は学食でパンを買っているわけなんだが。
部屋からリビングに戻るとトースターが
<チン!…>
と鳴りりちょうどパンが焼けたようだった。
パンをトースターから取り出し皿にのせバターを塗ると牛乳を飲みながらゆっくりと食べる。
リビングにある時計を見ると
<7:40>
まだまだ余裕である。
朝食を終えると皿とコップを流しに置き制服を着替えに部屋へと戻る。
寝間着を脱ぎ制服に着替えると鞄をもってさっさと家を出た。
学校は家から徒歩十五分とほどよく近い。
学校が見えてきて昇降口→玄関と移動し上履きに履き替え…
…まただ。最近いつもこうなんだよな。
下駄箱の中の上履きには昇降口ごみ箱のゴミがこれでもかと言わんばかりに詰められていた。
僕はいやいやそのゴミを昇降口のごみ箱へと戻し上履きに履き替え、教室じゃなく部室へと向かった。
僕は平日はこうやって朝早く学校に行きカードの整理をしたりレアカードを眺めたりしている。
同学年のやつらはそんな僕をキモヲタだの秋葉系だの毒男だの言うが、充実した朝を送っている僕の方がよっぽどすばらしいと思っている。
まぁそんなことは関係ない。
僕は周りの視線なんて随分前から気にしないようにしていた。
<ガラガラ…>
カードを整理していると山崎がきた。
「よぉ中村、おはよう。」
『あっ山崎、おはよう。』
挨拶を交すと山崎は鞄から何か取り出すと鞄を地面に落とすように置いてニヤニヤしながら僕に取り出したものを渡した。
「ほら、昨日手に入れたガンダムウォー一年戦争編限定パックだ!!」
『うわっ!凄いじゃないか!これ僕に?!』
それはガンダムウォーというカードゲームの生産が終了しているシリーズのパックだった。
山崎は驚く僕の顔を見て偉そうに言う。
「感謝しろよ。なかなか手に入らなかったんだから。」
そう言うと地べたに座り僕と一緒にカードの整理をしはじめた。
カード整理を朝礼ギリギリまでして僕と山崎は教室に向かった。
教室につくと生徒たちがガヤガヤと立ち話等をしていた。
僕は邪魔だなとおもいながらもおとなしく自分の席につく。
そして担任が教室に入ってきて慌ただしく生徒たちはそれぞれの席へとつく。
「起立」
日直の声と共に一斉に皆起立する。
<ガン!!>
後ろの席に何かが当たったようだ。
お尻が重い…周りを見ると僕を見てクスクスと笑っているやつらがいる。
僕は気付いた。
どうやら僕のズボンと椅子が何かでくっついていたようだ。
きっと誰かが接着剤かなんかを椅子につけていたに違いない。
ふざけたやつらだ。
僕は笑っているやつらを睨みかえした。
その時担任が気付いたようで
「ん?中村、その椅子はどうした?」
どうしたもこうしたもない。
見て分からないのか?
全く公務員と言うのは無能だ。
『何だか接着剤かなんかを椅子につけられていたみたいなんです』
僕がそう言うと担任は良からぬ顔をしてこういった。
「中村、まるで誰かがやったみたいな言い方をするな。先生は恥ずかしいぞ。」
そう言うと担任はダルそうな顔をして日直に<礼は?>と言い先を急がした。
「礼、着席。」
何事もなかったかのように朝礼は進んでいく。
担任は厄介事と僕には関わりたくないのだろう。
とんだ教育者だ。
>>1お茶ドゾドゾドゾー
旦~
旦~ 旦~
ヽ ) ノ
旦~⌒(`・ω・)ノ旦~
/ ( ヽ
旦~ 旦~
旦~
498 :
Mr.名無しさん:2005/08/04(木) 23:16:11
499 :
Mr.名無しさん:2005/08/04(木) 23:19:19
まぁまぁ、マターリしようぜ
>>498 何も非日常的なものだけが妄想じゃないよ
もう少しこう、血沸き肉踊るようなやつが読みたいかなー、なんて。
502 :
Mr.名無しさん:2005/08/06(土) 10:21:20
焼きごてを全身に押し付けられて
血が沸騰
身体はビクンビクン踊るように痙攣し跳ね回る
みたいな話?
↑こらw
504 :
Mr.名無しさん:2005/08/06(土) 15:03:52
マズったか?血湧き肉踊ってると思うんだが
とりあえずここでのカエラは170cmぐらいで俺も読んでおくよ。
506 :
Mr.名無しさん:2005/08/07(日) 21:35:02
干す
次はいつなんでぃすかー(´・ω・`)
508 :
Mr.名無しさん:2005/08/08(月) 00:09:00
今日?
1がこれほど現れないとは。何かあったのだろうか…
クーラーの設置工事で忙しいんだろう
511 :
1:2005/08/08(月) 23:25:05
第33話(前半)
王都シフィーロは前代未聞の大混雑の様相を呈している。無論、えなり討伐隊に参加する者達が集合しているが為である。全国から選
りすぐりの軍隊が招集されたのは当然のこと。加えて戦士、魔術士、武闘家といった一般の冒険者、果てには肉切り包丁を携えた肉屋
の親父や昨日剣を初めて握ったニートまで、我こそはと志願者が今日という日の為に大挙して押し寄せた。
港に目を移すと、幾本ものマストが目に飛び込んでくる。ドックには20隻ほどの帆船が停泊しているのが確認できる。いずれも無数の
砲門を搭載しており、海戦にも対応できる軍船だと素人目にも分かる。
一週間。長いようで短かい最後の休暇は終わり、それぞれの帰郷を終えた俺達は、再び港で合流した。
「おっかしいなぁ」
俺は所属票を片手に港内を歩き回っている。その後に甜歌達がとぼとぼとついて歩く。馬鹿げて広い上に、芋を洗うような混雑振りだ
から、自分の所属する第13分隊を探す時点で手間取っているのである。かれこれ30分は歩き回っただろう。
「お兄ちゃん、まだ見つからないの?」
いい加減疲れ気味の甜歌がぼやいた。
「まぁ、待て。ここはさっき見たところだから、多分あっち、いや、こっちか」
「しっかりしてよね……」
カエラが溜め息を吐いた。
「いや、マジでおかしいんだって。これが第12分隊の船だろ。で、あっちが第14分隊のだから……」
俺が指で指しなぞる跡に、3人は視線を追わせる。巨大な軍船が2艘停泊している間は、そこだけすっぽりと開いている。あるのは漁
船らしき小さな船だけだ。
「本当だ。第13分隊だけないですね」
平井が目を点にした。ようやく彼らも分かってくれたようだ。とにもかくにも、俺達はすっかり途方に暮れてしまって、その場に立ち
尽くしてしまった。周囲では分隊が着々とまとまっていく。そろそろ焦燥感に苛まれ始めていると、俺の肩を叩く者がある。
「いつも4人一緒で仲良いなぁ」
中年男性のどこかとぼけた声。振り返ると、そこには元ルックルック隊で自己破産経験のある岸部が、相も変わらず無気力な顔で立っ
ている。
512 :
1:2005/08/08(月) 23:25:42
「岸部さん」
「お前ら、この一週間で随分顔が変わったな。いい顔をしている」
改めてそう言われると、俺達は恥ずかしくなって照れ笑いを浮かべた。確かにこの一週間で俺達は変わった。皆、どこか吹っ切れたよ
うな顔になった。
「もう大方の隊は集合を終えているようだが、お前らはどこの隊なんだ?」
「実は自分達は第13分隊なんですが……」
「第13分隊か。そりゃまた難儀な隊だな」
岸部は顎を指先で撫でた。眼鏡の奥の瞳が妖しげにに光っている。
「知っているんですか?」
「ルックルック時代の俺の教え子が隊長をしているからな。ほれ、あそこだ」
岸部の指す方向はやはり第12分隊と第14分隊の中間。そこは何度も確認した場所で、やはり軍船など……いや、待て。ひょっとして。
「あ、あれなのか!」
庭の隅のダンゴムシのごとくひっそりと停泊している漁船と思われた船。これこそが第13分隊の船だった。小さい。他と比べて明らか
にスケールが違う。どれくらいかと言うと、1/100MGガンダムと1/144HGUCガンダムくらい。その上ボロい。著しく老朽化が進んでおり、
砲弾の一発でも命中したなら木っ端微塵に弾け飛びしそうだ。
「まぁ、しっかりやりな」
「ありがとうございます」
彼は自分の隊の列へと戻っていった。去り際に浮かべた薄笑いがひどく意味深に思えた。妖しげな眼光と言い胸騒ぎを覚えずにいられない。
とにかく俺達は第13分隊の船に向かうことにした。足早に歩いていると、
「ウチ達、仲良しだって」
甜歌が先ほどの岸部の発言を思い出して嬉しそうに笑った。しかし、すぐにそれは哀しげな笑みに変わった。
「ここに恭子おねえちゃんがいたら……」
俺達は沈黙した。周囲を覆っていた喧騒が消えたように思えた。皆一様に無言で歩く。だが、しばらくして俺は甜歌の肩に手を置いて小
さく、しかし力強く言った。
「大丈夫。必ず深田は連れ戻す」
513 :
1:2005/08/08(月) 23:26:18
船に近付くにつれて、その小ささがより一層実感させられる。船を前にして2人の男が待機している。どうやら彼らも同じ隊に配属され
た人間のようだ。2人はこちらに気付いて、嬉しそうに目尻を下げた。一人は30代くらいの小太りの男(ドランクドラゴン塚地)、も
う一人は20代前半と思われる小柄な男(伊藤淳志)。
「おぉ!お仲間やな。俺は塚地。よろしくな」
小太りの男が握手を求めてきた。腰に肉切り包丁を提げ、背中に背負うリュックからは非常食とおぼしきソーセージが垂れ下がっている。
一言で言うと肉屋の親父っぽい。
「どうもよろしくお願いします」
俺が塚地と握手をしていると、その横の小柄な男も挨拶をしてきた。
「あ、あの、伊藤です。よろ、よろしくお願いします」
その故意とも取れる挙動不審っぷりは完璧なまでにヲタを体現しており、背中の剣は真新しくまだ値札が付いたままだ。一言で言うとニ
ートっぽい。
まさか第13番隊の面子はこれだけなのか。他の隊が2,30人はいるのに、たった6人だけなのだろうか。おまけに2人の戦闘能力は
未知数ときた。行き先に不安を禁じえない。だが、これから生死を共にする仲なのだから第一印象が肝心、俺達もとりあえず自己紹介を
返した。
そうしていると、
「世の中のチャラチャラした野郎ども」
小船の甲板から声が轟いた。13分隊メンバーは一斉にその方向に顔を向けた。小柄な女性が胸の前で腕組みをして立っている。何とも
珍妙な、金魚のようなヘアスタイルをしていて、紫色のチェインメイルで身を覆っている。肩の上にはこれまた小さな猿が。
「あたいが第13分隊の隊長摩邪(以前パーティのガヤで出したのとは別人で再登場)だ!」
何故か彼女の声にはマイクパフォーマンスのようにエコーが掛かっている。そこに伊藤が口を挟む。
「あ、あのぅ、13分隊って僕達だけなんですか?」
数瞬、時が止まった。そして、
514 :
1:2005/08/08(月) 23:26:58
………はぁっ!?」
摩邪は空気を読まない夏厨レスに苛立ちを覚えた時のように、顔を歪めた。
「あああ、すみません。でも、えっと、その、他の隊はもっと人数が……」
「お前なんて名前だ?」
「い、伊藤ですけど」
唐突に問われて、彼はおどおどしながら答えた。摩邪隊長がほくそえむ。
「たった今から“カマドウマの繊毛に発生した原始的な黴の一種にも劣る低脳野郎”に改名な」
「えぇぇぇぇぇぇ!?」
伊藤は目を剥いてショックで小刻みに震える。いきなりの改名指示は冗談か本気か、摩邪隊長は彼を無視して言葉を続ける。
「いいか。よく聞け。お前達は隊を分ける段階で最後まで所属が決まらなかった連中。いわばドッジボールのリーダー同士によって行わ
れるチーム分けで、引き取り手がなくて残り、挙句の果てにハンデとして引き取る側が先攻を譲られるような奴らだ。そんなカスの集合
体であるこの隊に、他の隊並みの人員を……」
摩邪隊長は急に言葉に詰まった。エコーが切れたのである。慌てて腰袋から緑色の液体で満たされた壜を取り出し、それを飲み干した。
どうやらあの液体がエコーの素らしい。
「ぁ、ぁ、テステステス」
小声で発声練習をしてエコーが戻ったのを確認。一呼吸置いて、
「割くわけないんだよっっ!!!!」
彼女はいつの間にか握っていた木槌を、勢いよく甲板に叩き付けた。そこにペットの猿がゴングを鳴らす。摩邪隊長はゴングに合わせて、
勝ち誇ったように拳でアピールをしている。
俺は唖然として平井達の顔を見る。彼らも同じ心境のようだ。ところが、例の2人は少し様子が違う。
「頼もしい隊長じゃないか!」
塚地は全幅の信頼を寄せん勢いで褒めている。俺ら仰天。次いで伊藤の方を見ると、何と先ほど改名させられたカマドウマ何たらという
名前をメモしようと、必死に思い出しているではないか!俺ら更に仰天。
岸部の言動はこれを示していたのだろう。曲者揃いの第13分隊。俺達がえなり討伐隊に参加したことは、正しい選択だったのだろうか。
幾ばくかの疑問を抱き始める俺であった。
続 く
515 :
1:2005/08/08(月) 23:36:09
予告忘れてた。
今日はここまで。
516 :
Mr.名無しさん:2005/08/09(火) 00:28:13
www面白かったよ!
イイヨイイヨー
おつ。
おつー
今回も面白かった
乙です
>>1 暑くて大変だろうけど、仕事はともかく、妄想だけはしっかり頼むな。w
( (
( ( (. )
. -‐ ) ‐- .
.´,.::::;;:... . . _ `.
i ヾ<:;_ _,.ン |
l  ̄...:;:彡|
} . . ...::::;:;;;;;彡{
i . . ...:::;;;;;彡|∧_∧
} . .....:::;::;:;;;;彡{`・ω・´)
>>1さん茶ドゾー
!, . .:.::;:;;;彡 と:.......
ト , . ..,:;:;:=:彳:―u'::::::::::::::::::::::::::..
ヽ、.. ....::::;;;ジ.::::::::::::::::::::::
飲みきれないだろ…
バカ、お茶汲みタンが小指サイズなんだよ(´ω`*)
お茶汲みのaaがバラエティ増してる件について
それを言うならバリエーショ(ry
1の妄想のバリエーショ(ry も大したもんだぜ・・・・グビッ
そろそろまとめページが2000アクセスいくね
次は何する?
1は予告忘れるくらい忙しいのかな(´・ω・`)
2000いったらこのキャスティングで映画。勿論ハリウッド資本
俺が漫画にしてやるよ
・・・・嘘ですゴメンナサイ
532 :
Mr.名無しさん:2005/08/14(日) 16:11:30
>>531 1のうぷも最近は間隔があくしいいんじゃね?
533 :
Mr.名無しさん:2005/08/14(日) 21:51:06
盆スペ無いの?
534 :
1:2005/08/14(日) 22:58:34
わりぃ。しばらく休みがない。
次は20日以降で。
盆スペシャルは無い。次のスペシャル(OAVの続き)は俺の誕生日かクリスマス。
続きクル━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!
って誕生日いつだよ!w
しかもOAVになってるしwwww
とりあえずお仕事乙
オリジナル
アダルト
ビデオ
遂に本格的濡れ場に発展か?
まあOVAは順調に出ない事もあるもんな。
古い話だけどジャイアントロボなんて最終巻が出るまでに何年もかかったし。
伝説のOVA
ペリカンオブチキンなんて
10年くらいかかってるしな
何それスゲーな
そろそろ保守
実はOVAを待っていた。
ほしゅ
保守
544 :
Mr.名無しさん:2005/08/19(金) 01:49:01
1はクリスマスまでの継続を視野に入れているわけか
おっ、今日か?
546 :
Mr.名無しさん:2005/08/19(金) 13:31:15
本日期待age
明日以降じゃねーの?
今日はないのか・・・
せっかくの金曜の夜なのに
待てば海路の日和あり
551 :
1:2005/08/20(土) 00:01:32
次は23日。
ほしゅ
今日もほしゅ
∧_∧
( ´・ω・) みなさん、お茶が入りましたよ・・・・。
( つ旦O
と_)_) 旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦
557 :
Mr.名無しさん:2005/08/21(日) 23:51:26
>>556 つ旦
ドモデス。
でも、3人しかいないスレなのに、お茶の数が多すぎるよ。
3人?まてよ。
俺と、お前と、1と・・・?
3人では無いとROM専の俺がゆってみる。
>>561 分かってるってw
ネタだもん、許してよ(´ω`*)
そういや「ROM専」っておかしいよな。
俺もよく使うんだが、よく考えたら「読むだけだけ」ってことだろ?
1つのスレに対して使うのがROMで、どこでもROMだからROM専って解釈ならアリなのか?
嗚呼、分からなくなってきた。
つか、ぶっちゃけどうでもいい('A`)
>>562 俺も常々、同じように思ってた。まぁ、どうでもいいけどな。
さて、予告だと今日だが。
マチクタビレター マチクタビレター
☆ チン
☆ チン 〃 ∧_∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ヽ ___\(\・∀・) < まだー?
\_/⊂ ⊂_ ) \_____________
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ /|
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| |
| みかん |
565 :
Mr.名無しさん:2005/08/23(火) 21:48:56
さてageとくか。
ドラマがんばっていきまっしょいの主人公が微妙に甜歌に似ている件について
今日か?
酒かってくる!
唐突だが
>>1が
>>534で言ってる、OVAの続きってのはモビルスーツ編ってことか?
そりゃそうだろ。そうじゃなきゃ泣くぞ。
OVAたのしみ(・∀・)人(・∀・)
>>1タン チン☆⌒ 凵\(\・∀・) まだー?!!
とりあえず
>>1来るまで寝て待つ。来たら誰か起こしてくれ
577 :
1:2005/08/23(火) 23:35:20
第33話(後半)
濃い霧の中を船は進む。
シフィーロの港を出発した俺達は、半日ほどのミャジマまでの航路を4分の3ほどをやって来た。途中、クラーケンや
ヒュージオクトパスなど水棲の魔物に襲撃を受けたが、そこは選りすぐりのえなり討伐隊、先頭の一団だけで楽々と
撃破してしまった。補欠である我ら第13分隊に至っては、最後尾ということで、戦闘らしい戦闘は一切行っていない
という始末。
13分隊の船には、俺達えなり討伐隊とは別に、船長を含めて5名(山崎、石井、元国、江原、賀藤。小学校時代。最
強の喪男グループ)のクルーが乗船している。いずれも港の酒場で職にあぶれていたのを拾ってきたらしい。どこま
でも人件費の安上がりな隊である。
甲板上の俺とカエラは、欄干に腕をもたれさせて霧の海を見つめている。
「あのさ。前々から思ってたんだけど」
カエラが口を開いた。
「ん?」
「あなた達、確か以前シフィーロ王の命を助けたことがあるって言ってたよね」
「ああ。そんなこともあったね」
「だったら王様に頼めば、こんな補欠じゃなくて、少しはましな隊に入れたんじゃない?」
「あ」
なるほど。その手があったか。確かに俺達は以前、トライアスの襲撃から王の命を救った。王に参加の旨を伝えれば、
その時の功績で優秀な隊に入れてもらえたかもしれない。
「あの隊長だって、どこまで頼りになるもんだか……」
カエラはちらと同じ甲板上の摩邪を見た。この女隊長はこともあろうにロッキングチェアで昼寝の真っ最中。完全に
熟睡してしまっている。
「この状況下でよく眠れるわよね」
「ま、まぁ、あの人はあの人で力を蓄えてるんじゃないか」
とりあえずフォローを入れておいた。
「ミャジマが見えたぞ!!」
物見台に配置されている元国が叫んだ。俺達も舳先に寄って先を見つめる。霧の中から徐々に島が現れてきた。それ
ほど大きな島ではないが、島全体から禍々しい邪気が漂ってくるのがありありと分かった。
いつの間にか船室から出てきた平井と甜歌も、島の放つ邪気に圧倒されているようだ。
「おにいちゃん、あの島……」
「どうした?甜歌」
578 :
1:2005/08/23(火) 23:36:35
甜歌が俺の袖を引いた。彼女は何かに気付いたのか、いつになく不安そうな表情。そこに摩邪隊長が割って入った。
「お、ちびっころはあの島の異常さ気付いたようだな」
ちびっころと呼ばれた甜歌は少しムッとした表情。俺は摩邪に問い返す。
「異常さ?」
「全く鈍感な野郎だな。あの島は結界が張られているんだよ。結界に不用意に触れようものなら、たちまちの内に溶け
てしまう」
また“溶ける”のか。もううんざりだ。感電をするなり生気を吸われるなり、もう少し設定にバリエーションとを持た
せて欲しいものだ。
「マジすか!っていうか、なら、どうやって島に入るんですか?」
「話によると湾岸部のどこかに結界発生装置があるらしい。鳥居の形をしているって話だ」
なるほど。まずは鳥居を破壊しなければならないのか。さすがえなりの居城だけあって、そう易々とは入れてくれない。
とりあえずはえなり討伐隊総隊長の指示を待つしかあるまい。
と、その時である。轟音と共に前方の海中から、巨大な何かが姿を現した。
「水棲の魔物か」
摩邪は腕組みをして言う。平井はそれを見極めようと、望遠鏡を目に当てた。
「違いますね。クラーケンやシーサーペントでもない。あれは……人間だ」
平井から望遠鏡を渡されて、俺も対象を確認するべく鏡筒を握った。確かに人間だ。全身を鎖帷子で守り、戦斧を担い
だ巨大な男が仁王立ちになっている。
「でかい……」
俺は絶句した。でかい。“でかい”の一言に尽きる。推し量るに、船団最大の帆船が立てているマストの天辺でも、ま
だそれの腰辺りの高さでしかない。巨人は船団の行く手を遮るように、否、確かに遮ることを目的としてそこに存在し
ている。
「恐らくは魔族でしょう」
平井が呟く。その憶測はすぐに確信に変わった。巨人は船団に向けて、戦斧を振り下ろしたのだ。衝撃は小高い波とな
って船団を揺らす。その余波は最後部に遅れ気味についている俺達の船をも揺らした。伊藤と塚地は体勢を崩し甲板に
転げた。
「ど、どどど、どうしましょう!?」
伊藤はすっかりうろたえて、塚地にすがりつく。
「とりあえず戦うしかないやろ!」
579 :
1:2005/08/23(火) 23:37:57
一方の塚地は強気で、伊藤を振り払って肉切り包丁を抜いて、戦闘体勢に入った。しかし、どうやって戦うと言うのか。
先頭付近の数隻は既に沈没の憂き目にあっている。船という船が扇状に拡がり砲撃を浴びせるものの、巨人はダメージ
を被っている様子はない。俺達の船は忘れ去れているのか指示すら下されていない。
「あの身体に鎖帷子の装備。あいつからすれば、砲弾の衝撃はパチンコ玉ほどに過ぎないわ。砲撃じゃ埒が明かない。奴
の身体にに取り付くことができれば」
カエラが下唇を噛んだ。
「と言っても海を泳いで行くわけにもいかないしな」
と俺。すると甜歌が後ろから、
「もう少し近づければ、魔術で何とかなると思うけど」
と力強いお言葉。
「本当か、甜歌?」
「甜歌に任せといてよ」
やけに自信満々な甜歌は、その場に腰を下ろすと詠唱を始めた。普段は天然なのだが、戦闘において彼女の言葉を信じて
裏切られたことはない。俺は隊長である摩邪の目を見ながら、首を縦に振った。摩邪は目をつぶりしばし考えこんだ。そ
して、
「ちびっころを信じてみっか。おし、船長!!巨人の背後に周り込め」
「了解だ」
操舵手に指示が与えられ、船は巨人の背後に回るべく迂回した。
巨人の攻撃は止むことを知らず、船団はみるみる内に三分の一ほどの船を失ってしまった。そうした中を、小さいのが逆に
幸いした俺達の船は、こそ〜り(お茶汲みタソがお茶を置くように)と、巨人の背後に近寄る。さすがにここまで来ると巨人
の動作が直接海面のうねりとなるので、船はまるで木っ端のように激しく揺らされる。
「着いたぞ!甜歌」
俺は欄干にしがみつきながら叫んだ。同時に詠唱し終えた甜歌が急に立ち上がり、海面に向かって杖を振り下ろした。瞬間、
真っ青な光が迸り海に異変が起こり始めた。うねっていた海が一気に白い氷に変化していく。
「なるほど。海を凍らせたわけか。ちびっころめ。やりやがる!」
摩邪感嘆。光は巨人に向かって走り、ついには巨人の浸かっている辺りまでを凍らせ、その動きを止めた。先走った塚地が
船から勢いよく海面に飛び降りた。
「いざ!!……って、薄!!!」
581 :
1:2005/08/23(火) 23:38:59
と思いきや、彼が下りた部分だけ何故か氷は結構薄かったようで、塚地は勢いあって氷を破り海に落ちた。お約束のボケを
嬉しく思いつつ、俺達は塚地を教訓にして注意を払いながら海面に下りた。
「うん、いける」
俺は氷の厚さを確かめて頷いた。そんな俺をカエラは横目で見ながら、
「あなた、また格好いいとこ持っていこうとしてんじゃないでしょうね」
と確信を突いた発言。その傍らで伊藤が塚地を助けようとして、期待通り自分も海中に落ちている。密かに笑いの神が降臨し
た瞬間だ。
「ごるぁあああああああああああああああああ!!」
自由を奪われ怒り心頭した巨人の咆哮が耳をつんざく。彼は俺達の船に対して、戦斧を力任せに下ろした。哀れ船は船員(石
井、元国、江原、賀藤)もろとも木っ端微塵。
「俺の船が!」
船長(山崎)驚愕。彼だけ先に降りていたので命拾いしたようだ。間に合わせの船員については特に意に介していないようだ。
「命があっただけでもありがたく思いな」
摩邪は他人事とばかりに言い捨てた。
俺は俺専用異世界人専用聖剣を握り締める。
「一撃で極める!」
身を一瞬低く屈めるや、俺は氷の上を一直線に走り出した。
「ぐぬおおおお!!」
忌々しげに唸る巨人。電車の車両くらいはあろうかという腕が、俺を掴み取ろうと迫る。紙一重で握撃を交わした俺は、伸びた
腕の上を一気に駆け上
がる。と、俺の横にもう一つの影が並んだ。
「あ、あなたは……」
「悪いが一番首は頂く」
582 :
1:2005/08/23(火) 23:39:50
どこから涌いて出たのか、俺と併走するのは無気力で御馴染みの岸部だった。俺は意表を突かれたが、負けてたまるかとばかり
に彼と競り合う。しかし、この中年男のどこにこんな瞬発力が隠れていたのか。俺は徐々に引き離されていくではないか。俺を
完全に圧倒した岸部は、巨人の鼻の上にひらりと飛び乗った。一対の目がアメリカンクラッカーのように中央に寄り、岸部に焦
点を合わせる。その瞬間、巨人の眉間めがけてトライデントが突き立てられた。
「ぐぉ…」
剣を引き抜くと、傷口から大量のどす黒い血が噴出した。岸部は返り血を浴びながら、巨人の身体を滑り落ちる。俺も慌ててそ
の後を追う。俺が海面に下りたつと同時に、巨人の身体がゆっくりと後ろのめりに倒れ始めた。
「おい、あれ!」
摩邪が巨人が倒れる方向を指さした。視線を向けると、何と巨人が倒れようとしている先には朱塗りの鳥居があるではないか。
こうも都合良く物事が運ぶとは。巨人は勢いよく鳥居の上に倒れ、それを押しつぶしてしまった。途端に、結界が解かれたこと
を意味するのだろう、周囲を覆っていた霧が徐々に晴れていく。
「おし、いい橋が出来た。行くぜ!」
摩邪は巨人の死骸に足を掛けた。
「ままま、まさかこの巨人の上を歩いて!?」
相変わらずの狼狽っぷりの伊藤。
「当然だろうが!このカマドウマの繊毛に発生した原始的な黴の一種が!」
業を煮やした摩邪はさっさと歩き出した。その姿を見守る俺の肩を叩いて岸部が、
「俺もまだまだ捨てたもんじゃないだろ」
と、実に枯れた口調で一言。
「はぁ……」
彼が元ルックルック隊とは言え、父親ほどの年齢であろう彼に差をありありと見せ付けられて、少々ショックの俺。岸部も隊長
の摩邪に後について、巨人の身体で出来た橋を渡り始めた。
歩き出せずにいる俺の肩を、今度はカエラが叩いた。
583 :
1:2005/08/23(火) 23:42:13
「ちょっとショックだったでしょ?」
妙に嬉しそうな顔。
「つ、次は負けない」
精一杯の強がりを見せて、俺は巨人の骸に飛び乗った。後ろからカエラ達も続く。脇に目をやると、残った船団も碇を下ろし小
船でミャジマへの上陸を開始していた。
続 く
>>1乙
近頃のお茶汲み係はコソーリどころか慌ただしいと言っておこう
相変わらず何かこうワクワクさせてくれるな。
588 :
1:2005/08/24(水) 00:42:37
今日はここまで。
そうだ、俺は1の「今日はここまで」が聞きたかったんだ。
とにかくGJだぜ。続き田野紙魚〜
しかし誰も溶けなかったのがちと残念ではあるなwwwww
______
| ..∧_∧ |
|〔(´-ω-`)〕. |
(⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
|⌒⌒⌒⌒⌒⌒|
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| |
| |
お茶汲み係死去。
△
. ( ´・ω・`)
>>1さんお茶ドゾー
( ⊃旦と
)ノ
______
| ..∧_∧ |
|〔(´-ω-`)〕. |
(⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
|⌒⌒⌒⌒⌒⌒|
| |
| |
| |
幽霊になってもお茶ドゾー。
ホリエモンって前に登場したっけ?
穂鮎
594 :
1:2005/08/25(木) 19:05:00
第34話(前半)
ミャジマ島に上陸した俺達を歓迎したのは、矢の雨だった。見ると、前方の小高い丘でゴブリンアーチャーがずらりと横並びに
陣取っている。歴戦の戦士は飛び交う矢を、巧みに得物で斬り落とすが、慣れていない数人の兵士が早くもその餌食となって倒
れた。しかし、この程度の防衛ラインは想定内で、こちらも負けてはいない。自軍の魔術士が放つ遠距離魔術が、丘の数箇所に
直撃した。足場を失い、怯むゴブリンアーチャー。
総隊長(ココリコ田中)が剣を掲げた。
「全軍、突撃だ!」
えなり討伐軍は鬨の声を合わせ、敵軍めがけて突撃をかける。こちらの動向に応じて、えなり側からも武器を構えた魔物達が滑
り降りてくる。ついに決戦の火蓋が切って落とされた。両軍は正面から衝突し、激しい乱戦が始まった。海岸は瞬く間に、文字
通り死屍累々と横たわる修羅場と化す。
「僕達も行きましょう!!」
平井はひどく興奮しているようだ。嬉々として敵軍に飛び込んでいった。とりあえず俺達も戦闘に参加するしかあるまい。甜歌
に後方援護を任せると、俺は間近に迫るオークの一団めがけて斬り込んだ。カエラも懸命にハルバートを振るう。やはり下級の
魔物とあって、個々の戦闘能力は高くない。しかし、その数が尋常ではない。斬っては捨て斬っては捨て、一体身体が返り血で
染まりきるのではないかと思うほど斬ったが、それでもなお涌いて来る敵数たるや果てしないことこの上ない。
それに加えて厄介なことがある。
「痛っ!何してくれるんや!?」
塚地の尻に弓矢が刺さった。そう。後方の味方が放つ弓矢や魔術にも注意を払わなければならないのである。幸い革鎧が塚地の
尻をガードしたので、傷は浅いようだ。彼は前屈みになってそろそろと矢を抜く。
「まったく、よう狙って射たんと……ぐわ!?」
今度は背中に爆炎魔術が炸裂して、前のめりに砂に顔をめり込ませた。
「だから何でワシばっか狙うんじゃ!コントか!これコントか!!」
「塚地さん、何かいかにも狙ってくださいって感じがするからなぁ」
と伊藤。どうやら塚地は生まれながらのボケ体質のようで、味方ですら狙いを付けたくなるようだ。どことなく彼もおいしそう
な顔をしている気が。それにしても、爆炎魔術を食らっても平気とは、どこまでも頑丈な肉体である。
595 :
1:2005/08/25(木) 19:05:31
そんな悲哀を他所に戦闘は続く。禍々しい戦場の空気は、自分を押しつぶそうとしているように思え、俺は先ほどから軽い眩暈
を覚え始めていた。それが、ふとした瞬間に敵との間合いを見誤ることにつながった。オーガの放った棍棒の一撃が肩をかする。
鈍重であるとは言え、オーガの馬鹿力である。衝撃で体勢を崩した俺は、砂浜にどっと倒れこんだ。
「おにいちゃん!?」
「何やってんの!」
後衛から甜歌が火炎弾を放ち、カエラも援護に入ろうとする。しかし間に合わない。起き上がろうする俺の頭上を、巨大な棍棒
の影が覆った。思わず目を瞑った。
……………まだか。まだ来ない。観念した俺は、いつしか棍棒の一撃を待っていた。しかし、いつまで待ってもオーガは己の頭
を砕こうとしない。代わりに聞き覚えのある声が俺に浴びせられた。俺はゆっくりと瞼を開けた。
「どうした、若者。もうお陀仏か?」
そこには頚部をトライデントに貫通されたオーガが映っている。柄を横に振って魔物の死骸を打ち捨てたのは岸部。この状況に
おいてでさえ無気力な表情は崩れない。ちなみに甜歌が放った火炎弾は、何とまたもや塚地に命中していた。さすがに今度は怒
り狂っている。
「この辺りはあらかた片付いたようだ」
岸部は戦闘で欠けたトライデントの刃を、予備のものと取り替えながら言った。
「あ、ありがとうございます」
唖然としながらも礼を言い、俺は立ち上がった。
「このままここにいたんじゃ、面白くねぇな。あの総隊長も若造で頼りにならん」
無精髭の生えた顎を撫でる岸部。
「え?」
「俺とお前達で抜け駆けするか?」
「へ?」
「スタンドプレイってやつだ。俺は事前の情報で城に一直線に通じる獣道を知っている」
事前の情報と軽々しく言っているが、どこからそんな情報を仕入れたのだろうか。総隊長が進路に組み込んでいないということは、
軍関係の人間ですら知らない情報のはずだ。
「岸部さん、あなたは一体……」
その時、背後から俺の身体を払いのける者が。
596 :
1:2005/08/25(木) 19:06:41
「待てよ。13分隊の隊長はあたいだ。こいつらは兵士。あんたの好きにはさせねぇよ?」
モーニングスターの鎖が邪羅利(ジャラリ)と音を立てた。摩邪だ。岸部は微塵も臆することなく、彼女の瞳を見据える。そして一言。
「お前の中の女を呼び覚ましてやろうか?」
岸部の眼の奥で妖しい何かが光った。彼としばらく見詰め合っている内に、摩邪の目じりが下がってきた。そして、
「あ……」
摩邪がイった(←ここ久々の濡れ場)。そして失神。恐るべし、眼で殺す男岸部。
「何も俺と一蓮托生しろと言っているわけじゃない。俺は名誉が欲しい。お前達もえなり討伐隊に参加したってことは、それなり
の目的があってのことだろう?お互いの利益の為に行動を共にしようと言っているだけだ」
俺としても一刻も早くえなりの元に辿り着き、深田さんに会いたい。しかし、それ以前にこの岸部がどこまで信用できるかが問題だ。
実力、肩書き、共に折り紙付きなのは、これまでの戦いぶりから判断して疑いようが無い。だが俺の中の何者かが、(小学校時代の
ビックリマン事件もあって)警鐘を鳴らしている。あの男は信頼に足りるのかと。
「どうする?俺と一緒に来るか、ここで阿呆みたいにいつまでも雑魚を相手にしているか」
俺はカエラ、平井、そして甜歌と順に顔を見た。
「あの男の人相、ちょっと曲者っぽいうわね。何かありそう。でもまぁ、この判断はあなたに任せるわ」
カエラはやはり今一つ岸部を信用できないようだ。
「僕は賛成です。兵士の皆さんには申し訳ないけど、えなりを討つからには、なりふり構っていられない」
恋人の仇討ちが最優先事項の平井は、刀に付着した血液を半紙で拭きながら頷いた。
俺は最後に甜歌に問いかける。
「甜歌はどう思う?」
「う〜ん。甜歌はねぇ」
しばらく考えた後、
「おにいちゃんと一緒ならどっちでもいいよ!」
これでもかと言うくらい純真な笑みで答えた。
「そうか……」
その笑顔を見ていると、俺の中の迷いがどこかに吹き飛んでしまった。彼女の頭を撫でると、岸部に向き直り目を真っ直ぐに見つめ
ながら返事をした。
597 :
1:2005/08/25(木) 19:07:22
「お願いします」
「よし。俺も自己破産こそしたが、文字通り元タイガースの虎と呼ばれた岸部だ。悪いようにはせん」
岸部の後に
「あ、伊藤さん達はどうしますか?」
誰もが忘れていたことに平井が気付いた。見ると、塚地と伊藤はそれなりに戦闘をこなしているようだ。肉屋とニートなのに。
俺はしばし黙考した。そして、
「ここの方がまだ安全そうだ。あの2人には申し訳ないけど、黙ってこっそり行こうか」
彼らの無事をドライに祈りつつ、俺達は岸部の後について森の中へと踏み入った。
続 く
・・・・・・
>>1の野郎、あいからずいい妄想しやがるぜ・・・・・グビッ
乙。予告無しとは驚かせやがるぜ。
久々の濡れ場キター!!!!
602 :
1:2005/08/25(木) 22:32:43
あ、行が抜けてた。
「よし。俺も自己破産こそしたが、文字通り元タイガースの虎と呼ばれた岸部だ。悪いようにはせん」
歩き出した岸部の後ろに続こうとして、
「あ、伊藤さん達はどうしますか?」
でヨロ。
摩 邪 だ ぜ ?
604 :
1:2005/08/25(木) 22:52:54
>>603 あ、わりぃ。
原稿のセリフ消し忘れてた。
GJ!相変わらず良い流れだな!
そしてよく分からんがとりあえず言っとこう
摩 邪 だ ぜ ?
早い時間に来てたんだ・・・
とりあえず・・・
摩 邪 だ ぜ ?
濡れ場ワロタ
久々でコレかよ!
摩 邪 だ ぜ ?
とりあえず甜歌の格好は、ジョーキマホーンズのコスチュームで
>>1の妄想を
楽しませてもらってる。
これって正しいよね?
>>1乙
随分と短期間で現れたな
摩 邪 だ ぜ ?
∫∫
旦旦
⊂_.ヽ、
.\\ .∧_∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
\ ( ´Д`) <
>>1さん、お茶どうぞ…
> ⌒ヽ \
/ , へ \  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
./ / .\\
レ ノ ヽ,_つ
/ /
./ /|
( ( '、
| |、 \
.| | \ ⌒l
..| | ) ./
..ノ ) し'
.(_/
↑名前抜けた。
613 :
1:2005/08/26(金) 23:03:25
614 :
Mr.名無しさん:2005/08/26(金) 23:29:52
615 :
1:2005/08/26(金) 23:36:51
今日はない。
次は29日かもしれないし、延びるかもしれない。
いちさん乙〜
ほしゅ
またたびほしゅ
保 守 だ ぜ ?
トゥデイ?
今 日 だ ぜ ?
部屋とhosyuと私
来る?
624 :
1:2005/08/30(火) 00:07:25
わり。遅くなった
625 :
1:2005/08/30(火) 00:09:56
第34話(後半)
鬱蒼と木々が生い茂る急斜面に、踏み分けられた細い獣道が伸びている。曲がりくねったそれは、まるで俺達を地獄の淵にでも
導いているようで、足取りは自然と慎重になる。幸いにもこの辺りに魔物の姿はない。遠方の山道から魔物兵士達が騒がしく戦
場に向かう音が聞こえてくるが、ここにいれば気づかれることはないようだ。
俺達は軽い息切れを覚え始めているが、先導する岸部は涼しそうな顔で軽々と登っていく。さきほどから激しい喉の渇きを覚え
ていた俺は、喘ぎながら喉元の汗をぬぐった。それを汲み取ってか、
「ほれ、水飲むか?」
岸部が俺の鼻先に水筒を突きつけた。遠慮などする余裕はなく、俺は迷うことなく水筒を受け取った。
「ありがとうございます。ってマズっ!!」
一度は口に含んだ水を思わず地面に吐き出した。形容しがたいほど不味い。それに加えて口の中で何やら粒々が動いている。
「ぺっ、ぺっ、んな、何すか!?これは」
「あ、わりぃ。虫湧いてたか。大丈夫、大丈夫。死にゃせんよ」
大丈夫ではない。俺は慌てて唾液を吐き出す。見ると、白色をした微細な幼虫が数匹、もぞもぞと蠢いている(大学生時代、夏
場に一晩置いておいたカレーを食べた時にこれらが入っていたという本当にあった怖い話。以降カレーは冷凍派)ではないか。
ところが、そんなことは全く意に介する様子はなく、岸部は水筒を仕舞うと再び足を踏み出した。一体どういう神経をしている
のだろう。
「おにいちゃん、まさかと思うけど……飲んじゃったの?」
甜歌がゲテモノ料理を食したリポーターを見る目つきで俺を見る。
「あ、ああ。飲んじゃったorz」
「うわぁ……カワイソス」
3人とも憐れみの視線を俺に浴びせた。俺は口内に依然として不快な違和感を覚えながら、ただただ黙々と歩き続ける。沈みき
った空気を見兼ねて、平井が会話を切り出した。
「あの〜、岸部さん。どうしてこんな道を知っているんですか?」
俺ははっとした。幼虫混入事件で忘れそうになっていたが、そのことが気になっていたからだ。どうしてこの獣道の存在を彼が
知り得たのか。
「俺はここに来たことがあるんだよ」
岸部はあっさりと答えた。
「え?」
626 :
1:2005/08/30(火) 00:11:31
その場の一同は目を丸くして彼に注目する。
「30年前にも俺は魔王を討伐する為にここを訪れている。えなりがいる城は、かつて俺の対となる魔王がいた場所だ」
意外な発言に俺は面食らった。
「ててて、ってことは、あなたはあっちの世界から!?」
「ああ」
岸部はこちらを振り返ることなく頷き、静かに語り始めた。
「あれは昭和50年のことだったかなぁ。俺はカミさんとこに婿養子として入り、あの家に暮らし始めたんだ」
岸部は婿養子としての気苦労から、井戸の縁で空想することが多かったと言う。それがある日、妻と共に庭井戸に転落してしまい
こちらの世界にやってきた。それからは俺と同じで、それぞれの対となる2人の魔王を探す旅をする羽目になった。ところが、彼
らは魔王を倒すことができなくなってしまった。と言うのも、2人の魔王がお互いの覇権を賭けて争い、結果相打ちになり双方が
消滅してしまったからだ。彼らの死骸から生まれたはずのゲート石も行方は知れないまま。それから幾人もの魔王が生まれ、その
度に現実世界から人間が送り込まれてきた。しかし、岸部達に魔王を倒すチャンスは訪れなかった。3年の歳月が流れ、彼らから
現実世界に還る希望が失われ始めたある日、何の前触れもなく世界神が現れてこう言った。ゲート石の力を借りずにどちらか一人
だけ現実世界に戻してやると。
ただしそれには条件があった。
「世界神は、魔王退治を為せる者を選別する役目と引き換え、って言うんだな。重大な役目だが、カミさんは胸に持病があったし、
こちらの世界で生きるよりは安全だろうと考えた。それで俺は妻一人を現実世界に還した。そうだ。彼女のことを思って……いや
……嘘だな」
自嘲するように口の端を緩めて、彼は言葉を切った。妻……井戸……選別者……彼の会話に散りばめられたこれらの単語が、俺の
脳裏で自然と一直線に繋がった。
俺は抑え切れず、ついに問いかけた。
「つかぬことをお聞きしますが、岸部さんの下の名前は?」
「四郎。岸部四郎が俺のフルネームだ」
やはりそうだ。現実世界から戻る際に井戸のある家の老婆が言った言葉が思い出された。別れ際に彼女は四郎という名を出した。
ということは、岸部の話にある妻とは間違いなくあの老婆のことだ。
今度は岸部が俺に質問を投げかけてきた。
627 :
1:2005/08/30(火) 00:12:27
「お前さんもあっちの世界から来たんだろ?」
「え、何故分かるんです?」
「分かるさ。現実世界の奴からは現実世界の匂いがするんだよ。同じ種類の人間のな」
「そうですか」
俺は複雑な気持ちで俯いた。
「どうした?暗い顔して。あ、そうか。魔王を倒した後、俺がゲート石を奪っちまうと思ってるんだろ?」
「いえ……」
それもあるのかもしれない。しかし最初に思い浮かんだのは、ゲートを守る老婆が一瞬見せた寂しそうな顔だ。岸部は、彼女がま
だ自分を待っていることを承知の上で、なおこの世界に残っているのだろうか。
「安心しな。俺はもうあっちに還ろうなんて思っていない。この世界は麻薬みたいなもんだ。あっちの社会のようにしがらみに縛
られることはなく、毎日が刺激に満ち溢れている。俺は寧ろこの世界に残ることを望んでいるんだ」
平凡な日常と婿養子と言う重圧から逃れることを、彼は何よりも望んでいたのかもしれない。彼はもう自分の妻に対して愛を抱い
てはいないのかもしれない。俺はそれを確かめるように体をずらして岸部の横顔を見たが、彼の無気力で不透明な眼はその答えを
憶測することさえ許そうとしなかった。
「見えてきたぞ。あれがえなりの根城だ」
岸部が前方の上方を指し示した。尖塔を幾本も突きたてた、まさに中世ヨーロッパを象徴するような典型的な漆黒の城が聳え立っ
ている。周りをぐるりと堀が囲んでおり、唯一の進入路と思われる跳ね橋は下りていない。
「門番がいるね」
茂みから城の様子を伺っていた甜歌が呟いた。俺も茂みを掻き分けて、跳ね橋の周辺を盗み見る。
「え、どこどこ?」
目を凝らして辺りを見回してみるが、どこにも敵兵の姿は確認できない。ちょうど跳ね橋が架かる位置の左右に悪魔の形を模した、
やたらリアルな石像がずらりと並んでいるぐらいだ。
「あなたって本当にフシアナさんねぇ」
眼が節穴ということか。相変わらず手厳しいカエラ。それをなだめる格好で平井が口を挟む。
「あの石像は魔族が変化しているものでしょう」
「あ……そうなの」
628 :
1:2005/08/30(火) 00:13:36
どうりでリアルなわけだ。姿形から判断するに、サイズこそ小型だが以前戦闘した経験のあるレッサーデーモンらしい。石像はざ
っと見渡しただけでも20体近くはある。
「入り口はあの橋だけだ。どうする。若いの?」
この重要な場で、岸部は俺に判断を委ねた。甜歌達も俺に注目した。
「行きましょう。いずれにしろ道は一つしかないんだ」
俺は俺専用異世界人専用聖剣を鞘から引き抜いた。
「そう来なくてはな。お前の剣の威力、見せてくれよ」
俺専用異世界人専用聖剣に注がれる岸部の視線に、俺は奇妙な胸騒ぎを覚えながら、茂みから姿を露わにした。途端にレッサーデ
ーモンが灰色の石像から、茶褐色の身体へと変化を見せた。
続 く
629 :
Mr.名無しさん:2005/08/30(火) 00:34:18
エクセレンツ!!
相変わらずアツいな!乙!
魔王がすぐ近くにいるのだろうか…
632 :
1:2005/08/30(火) 02:11:24
今寝ようとして何か忘れてたと思ったら、これ忘れてた。
今日はここまで。
乙、いよいよ佳境に入ってきたな。
otu
| | ソ〜〜
| |∧_∧
|_|´・ω・`) ドゾ〜
|愛| o ヽ旦 コトッ
>>1 | ̄|―u'
乙 だ ぜ ?
ほす
チンチンほシュッシュッ!!
来 る か な ?
640 :
Mr.名無しさん:2005/09/01(木) 23:21:49
い つ だ ぜ ?
642 :
Mr.名無しさん:2005/09/03(土) 02:32:48
保守
643 :
1:2005/09/04(日) 22:12:00
次は35%くらいの確率で明日。
明日に期待するぜ!
646 :
1:2005/09/05(月) 19:20:21
第35話(前半)
カエラのハルバートが下級魔族の脳天を直撃し、そのまま身体を真っ二つに切り裂いた。
「案外大したことなかったわね」
23体。ようやく得物を下ろした俺達の足元には、23体のレッサーデーモンの死骸が転がっている。
「いやはや皆なかなか良い腕をしている。これだけの数を相手にして、ものの10分とかからずに全滅させてしまうとは」
そういう彼の視線は、俺専用異世界人専用聖剣にちらちらと向けられる。
「さて問題はこの堀をどうやって渡るかだな」
俺は辺りを見回したが、こちらには橋の上下装置らしきものは見当たらない。堀の外からは橋を下ろす手立てはないようだ。
「橋の上下装置は対岸の守衛部屋の中でしょうね」
「甜歌、空とか飛べないの?」
「おにいちゃん、そんな空想みたいな魔術ないってこの前も言ったでしょ」
そういえば前にも同じ質問をしたような気がした。しかし、これだけ非現実的な現象が揃っているのに、なぜ空を飛べないのか。
全く現実は厳しいものだ。
と、その時である。
「いや、飛べるぜ!」
背後から謎の声が。
「マジか!?」
振り返ると、そこには海岸で気絶している筈の摩邪隊長が。後ろには塚地と伊藤も控えている。13分隊が勢ぞろい。
俺は目を丸くして摩邪隊長を見る。
「魔邪隊長!?」
「こいつを食らいな!」
一喝と同時にラリアートが俺の首に炸裂した。小柄な身体からは想像もつかない強烈な一撃を食らい、俺は驚く暇もなく弾き飛ば
され地面に転がった。
「あたいはあんたらを助けるようシフィーロ王から命を受けているのさ」
「え……?」
「あたいはシフィーロ王の近衛隊の一員なんだよ」
俺達は驚愕した。摩邪がシフィーロ王直属の軍人だったとは。だが、一体何の為に彼女を俺達に付けたのだろうか。
「お前らはえなりとの決戦に必要不可欠。えなりの所まで行き着かせるのがあたいの任務だ」
「でも岸部さんに逝かされたんじゃ?」
俺の問いかけを、摩邪は鼻で笑って一蹴する。
「逝かされる?あたいが?笑わせてくれるね」
そして、ゆっくりと岸部に近付ていく。そして俺を指差しながら、
647 :
1:2005/09/05(月) 19:21:22
「こいつの他に異世界人が討伐隊に紛れ込んでいるという情報はあったが、あんただったとはね。とりあえず泳がせて正解だったよ。
思ったよりも早くこいつらをえなりの元に届けられそうだからな」
摩邪は岸部を睨みつけた。岸部は無表情を崩さない。なるほど。摩邪はわざと絶頂に達した芝居をして、岸部に道案内をさせたわけか。
「でもそれなら別段芝居なんてしなくても、岸部さんの誘いがあった時、一緒に付いてくれば良かったのでは?」
と平井。
「その無気力親父を信用していたわけじゃないからな。お前らを別位置から客観的に見守る必要があったんだよ。つか、一々説明す
るの面倒くせぇ。つべこべ言ってんじゅねぇぞ!タコ野郎!!」
苛立ちのボルテージが一定に達したのか、摩邪のドロップキックが、平井の胸にクリーンヒット。俺同様吹っ飛ばされる平井。まる
で強引にこじつけようとしているようだが、まぁ、よしとしておこう。これ以上指摘すればどんな技が繰り出されるか、分かったも
のではない。
「とにかくだ。こいつを用意してきた」
摩邪の後ろから現れたのは、サーカスやお笑い番組で見かける人間大砲ではないか。
「こいつで堀を飛んで守衛部屋に侵入、守衛を密かに倒して跳ね橋を下ろす」
絶対にうまくいくわけがない。その場にいる誰もが思った。摩邪を除いて。
「ウチ!!ウチやる!!ウチ飛びたい!!」
と思いきや約一名賛同者が。甜歌だ。
「て、甜歌、お前本気で言ってるのか?」
「うん!だって楽しそうじゃん」
甜歌は至って無邪気だ。つか、テーマパークのアトラクションじゃないから。
「チビッコロの申し出は嬉しいが、身長制限に引っ掛かるんだ。飛ぶ人間は既に決めている」
とクールに摩邪。悔しがる甜歌。胸を撫で下ろす俺。
「カマドウマの繊毛に発生した原始的な黴の一種」
「えぇぇぇぇぇええ!?僕でしゅかかああああ!?」
既にカマドウマ何とかで御馴染みらしい。
「隊長命令は絶対だ。大人しく入りな」
言われるがまま、伊藤は砲口から砲筒に身を滑らせた。
「おいしいで!これはシチュエーション的においし過ぎやで!!」
と塚地はいかにも残念そうに言う。
「そこまで言うなら、塚地さん飛べばいいじゃないっすか」
伊藤は不服そうに言う。もっともだ。
「俺はウェイト面で少々難があるんや」
648 :
1:2005/09/05(月) 19:22:11
そういうものなのか。しかし彼の顔に浮かんだ一抹の安堵の情を、俺は見逃さなかった。
「じゃあ、いくで」
「まだ準備が……」
問答無用で塚地が導火線に火を点けた。しかし、この二人である。このままうまくいくはずがない。13分隊のお笑い担当のことだか
らきっと何かやってくれる。誰もが不安に感じ、いや、期待せずにはいられない。
「ちょい待ち!!あ、あれ見て!!」
突然、甜歌が城を指差して素っ頓狂な声で叫んだ。その方向に視線を移した俺は同じく唖然とした。僅かずつだが、跳ね橋が動き出
したのである。
「橋が……下りてる!?」
「マジか!?」
摩邪が甜歌の側に走り寄る。その際に彼女の尻が大砲に当たり、きりきりと砲身が向きを変えた。ベタな展開。
「ほんまやぁ。下りてるわ。おい、伊藤。発射中止や中止」
塚地が大砲に向き直った。塚地が硬直する。お約束通り、砲口は塚地を真正面にロックオンして止まっていたからだ。
「うお!?待て!!どこ狙ってんねや!?」
砲筒に収まっている伊藤の怯えきった目が、塚地の視線に重なった。瞬間、勢いよく発射された伊藤は冷凍マグロのように硬直した
格好で、ゼロ距離で頭から塚地の腹部に直撃した。彼は持ち堪えようと必死に伊藤の頭を支えてふんばるが、そこはファンタジー世
界。ミサイルのような推進力を得た伊藤に、塚地はコミカルな小走りで後方へと押しやられていく。
「どこまで行くんやああああ!!」
「わかりましぇええん!!」
またもやお笑いの神が降臨した二人は、見事期待に応えて森の中へと消えていった。俺達は呆気にとられたが、殺しても死なない彼
らのことだからとりあえず放置プレイ。それよりも跳ね橋である。低く重々しい音を発しながら、橋は既に半分ほど下りている。
「橋が……下りる」
ゆっくりゆっくりと橋が下りる様子を、皆が固唾を飲んで見守る。跳ね橋の向こう側に、言葉通り伏魔殿の入り口がぽっかりと口を
開けている。
「罠ね」
649 :
1:2005/09/05(月) 19:23:14
カエラが呟いた。言わずもがな、十中八九間違いない。これはえなりの罠だ。しかし同時に彼からの俺達に対する挑戦でもある。
「この橋を渡ればもう引き返すことはできねぇ」
岸部が意地悪そうに脅かす。しかし思いは皆同じ。俺達は顔を見合わせて頷き合う。
「行こう」
地響きを立てて接地する橋。その上を渡り、俺達はえなりの城へと足を踏み入れた。
続 く
おつ〜
651 :
Mr.名無しさん:2005/09/05(月) 21:14:40
おー早いな
お つ だ ぜ ?
乙。伊藤と塚地、おもしろすぎ。
653 :
1:2005/09/06(火) 00:26:01
今日はここまで次は多分9日。
乙です!
今回は早いな。w
次回も楽しみに待ってるよ。
○○○
○ ・ω・ ○
○○○つ旦
>>1ポンタデライオンお茶ドゾー
.c(,_u ノ
まとめページカウント1980まで行ったな
うち1200は俺
800は俺
G J だ ぜ ?
…と、ここでひとつ前々から思ってたことを。
よく漫画やアニメででてくる微妙に消化不良な小ネタが気になるんだけど、これってわざとなのかなぁ?
敢えて取っておくことで読者の注意を離さない、とかの技術なのかしら。
今回で言うと、摩耶の絶頂が芝居だったことに対する岸辺のレスが無いこと。
まぁ、無表情で片付けられるんだろうけど、あくまで俺の意見としてはこれじゃ満足できないのよね(俺がガキっぽいってだけなのかも知れんが)。
みなたちはこういう経験ないかな。
>>659 漏れも気にはなってる。
>>1の話呼んでると、「あれはどうなった?」ってのが多い
>>1は伏線張ったはいいが単純に忘れてるんじゃねか?w
個人の妄想にそこまで求めることもなかろう。
>>661 そうだよな
妄想だったんだよな
最近の流れで週一のアニメ見てるみたいな感覚に陥っていたw
>)660
ん、いや1の話だけじゃなくて、普通にプロの作品でもよくあるからさ。
別に忘れてるなら忘れてるでモウマンタイよね。
読む方としてはこれはこれで楽しめるからのぅ。
あと2で2k
665 :
Mr.名無しさん:2005/09/06(火) 20:11:54
2000おめ。
ついに20000hitか
記念カキコ
2000記念保守
保守
∧_∧ 旦
(・ω・)丿 ッパ
. ノ/ /
ノ ̄ゝ
ほしゅ
豪快にずれたorz
シルクハットかぶってるみたいでいいな
674 :
Mr.名無しさん:2005/09/09(金) 19:37:28
675 :
1:2005/09/09(金) 23:16:51
第35話(後半)
えなり城の防衛網は想像以上のものだった。
雑兵はやはりそのほとんどがゴブリン、コボルト、リザードマンと言った戦闘能力の比較的低い亜人種。海岸防衛で
かなりの数が出払っているはずなのだが、なんの出るわ出るわその数たるや通路を埋め尽くさんばかり。と言うより
実際に埋め尽くして、団子状で身動きが取れなくなっている。頭あんまり良くなくてヨカッター\(^o^)/ 。
「とりあえず逃げるチャンスですか?」
先頭の平井が汗を拭きながら、皆を促した。追っ手の魔物を撒いて、俺達は螺旋状の階段を駆け上がる。パーティは
前衛を平井と俺、後衛を甜歌、岸部。そして最後尾をカエラが守っている。
「岸部さん、この階段はどこまで続いてるんです?」
俺は唯一城内を探索したことがある岸部に尋ねた。
「それがな。以前来た時とは大分様子が変わっているんだ。リフォームでもしたのかな」
リフォームってあんた……。
「あ痛!!もう容赦ならねぇ!!」
いきなり摩邪がキレた。
「どうしたんですか?」
「さっきから何度も同じような所で蹴躓いてんだ。このチャラチャラした階段の段め」
そう言いながら、物言わぬ階段に猛烈にストンピングを浴びせ始めた。それを見ている内、俺達の中である憶測が次
第に現実味を帯びていった。
「あのさ、ひょっとして堂々巡りしてるってことない?」
甜歌がおずおずと核心を突いた。正解。俺達今まさに堂々巡りの真っ最中。
「これは幻術か何かなのか」
俺は周囲を見渡した。すると、
「正解です」
階段の上部から、紅いローブをまとった女性が姿を現した。、ひどく眠そうなとろんとした眼をしている。
「私の名はクリステル(滝川クリステル)。えなり様直属の幻術師です」
うやうやしく一礼した。ご丁寧な自己紹介だ。一見上品かつ知的で、とても魔族関係者には見えない。彼女は穏やかな
笑みを浮かべてこちらを見詰めている。
676 :
1:2005/09/09(金) 23:17:21
「申し訳ありませんが、えなり様の元にお通しするわけにはいきません」
俺達も彼女の眼を見詰め返す。リア厨時代ヤンキーにガンを飛ばされるとマッハの速度で視線を逸らすほどチキンだっ
た俺。だが、ことこの局面では負けてたまるかと必死に眼を逸らさないようにする。眼を逸らしてたまるか。眼を……
逸らして……たま……る……………………ZZZZZ。
俺、見事爆睡。
「起きなさい!!」
何かが破裂したような物凄い音と共に、俺は跳ね起きた。気付くとそこは先程と同じ階段の踊り場。
「あら、俺は一体、って痛てええええ!?」
慌てて頬を抑える。じんじんに腫れているではないか。頬をさすってると、すぐ目の前にカエラの姿が目に入った。俺
を起こす為に思い切り頬を打ってくれたらしい。
「全くあなたはどこまで呑気なの」
「俺は眠っていたのか」
「クリステルの術にはまったのよ」
なるほど。あのとろんとした眼は催眠作用を持っていたのか。
「平井達は?」
「わからないわ。気づいたら私とあなただけだった」
周りを見回すが誰もいない。いや、いる。何かがこちらに歩いてくる。息を呑む俺達の眼前に現れたのは、刀を携えたワ
ーウルフと杖を持ったオークメイジ、そして謎のセクシー美女。
「敵か」
俺が剣を抜くと同時に、彼らは攻撃をしかけてきた。俺はワーウルフの攻撃を受け止める。その隙を付いて、オークメイ
ジの火炎魔術が襲う。カエラがフォローに入り、ハルバートを回転させて火炎を退けた。コンビネーションは抜群。相当
戦い慣れした魔物達だ。セクシー美女は何故かプロレス技を駆使して攻撃してくる。
しばらく交戦する内、俺は違和感を覚え始めていた。彼らの戦いをどこかで見たことがある。それもごく最近。
「彼らの戦い方、カエラどう思う?」
「ええ。間違いないわ。平井達ね」
カエラも気付いていた。そう。恐らくワーウルフの正体は平井、オークメイジの正体は甜歌、そして謎のセクシー美女の
正体は摩邪だろう。彼らの動きを見る限り、思い過ごしではないようだ。これもクリステルの幻覚に違いない。と気付い
たもののこのままでは埒が明かない。俺は彼らの攻撃をかわしながら策を探す。
677 :
1:2005/09/09(金) 23:18:10
「う〜ん、気付けになるものがあれば…………あ!はちゃめいた!!(頭上に電球)」
ごく短い隙をついて、俺はワーウルフの胸元に手をあてた。やはりそうだ。俺は毛皮の中、つまり平井の胸元に手を突っ
込み紙袋を取り出した。
「それは?」
カエラが不審そうに問う。
「ブラックブラック烏賊あああああああ!!(ドラえもん秘密道具エフェクト付)」
寺院で危機を救ってくれたグロテスクな乾物が、再び日の目を見ようとは。俺達はブラックブラック烏賊の切れ端を咀嚼
する。口内に言い様の内ペーソスを含んだ辛さが充満する。余りの辛さに涙で目が霞む。だが、涙を払うと魔物の姿は平
井と甜歌に戻っていた。
烏賊を千切ると、隙をついて平井の口をこじ開けて中に叩き込んだ。途端に彼は苦しみ出した。しかし効果は覿面のよう
で幻術は解けたらしい。
「あれ、何で?バブリースライムマッドネスと戦ってたはずなのに?」
彼は唖然として攻撃の手を休めた。やはり俺はバブリースライムだったのかorz。続けて甜歌と摩邪の口にもそれを放り込む。
「辛っ!!って、あれ?おにいちゃんとカエラだ」
「あたいともあろうものが、こうもあっさり幻覚にかかってしまうとは」
摩邪は結構ショックだったようで落ち込んでいる。そうしていると、今度は階段の下から轟音が響き始めた。
「地震か。いや違う」
「おっし!あたいがちょっくら見てきちゃる」
摩邪は威勢良く階段を駈け降りていった。しばらくすると、もの凄い剣幕で駈け上ってきたではないか。
「魔物が追い付いて来たああああああ!!」
すっかり忘れてたあああああああ!!俺達は摩邪に追い立てられるように、脱兎のごとく駆けだした。だがこのまま逃げても、
階段は堂々巡りしているわけだから、永遠に追跡劇が繰り広げられてしまうわけで。
しばらく逃げているうち、俺はふと後ろを振り向いた。何と俺の後ろに付いていたはずのカエラの姿がない。
「まさか!」
俺は階段を駆け降りようと身体を翻した。
「おにいちゃん!?」
「大丈夫だ。ちょっとカエラを連れてくる。甜歌達は先に行ってろ!」
しばらく降りると金属がぶつかり合う音が聞こえてきた。案の定、カエラは独りで魔物を食い止めるべく、ハルバートを振る
っているではないか。
「ったく無茶しやがって」
678 :
1:2005/09/09(金) 23:18:56
助けに入る直前、魔物を押しのけながら巨大な肉塊がせり出してきた。球根のようなそれはあらゆるものを取り込むようで、
周囲の魔物が次々吸収されていく。そして、とうとうカエラの身体も飲み込んでしまった。
俺は慌てて魔物の塊に飛び乗ると、腕に力を込めて突っ込んだ。そして蠢く触手と肉塊の中から力ないカエラの腕を探し当て
た。少し引っ張り上げると、彼女の顔が見えた。幸い気は失っていない。
「あなた……馬鹿ね。何で助けに来たの?折角私が体内からこいつを倒そうと思ってたのに」
何ともカエラらしいと言えばカエラらしい作戦だ。明らかに失敗していたが。
「修道院で約束しただろ。君を一つにするって。ここで犠牲になろうなんて、幾ら君が僧侶だからと言っても俺が許さない」
「とんだ王子様気取りね」
「王子様なんて大層なもんじゃない。君が大事だから助けるだけだ」
俺は両手で彼女の腕を握り締めて、魔物の中から一気に引き抜いた。
「私が……大事……」
カエラを救い上げた俺は、球根を俺専用異世界人専用聖剣で一閃した。石榴のようにぱっくりと割れ、中から黄緑色の体液と
共に無数の魔物の死骸が飛び散った。その後、球根はしばらく痙攣していたが、ついに活動を停止した。
俺は刀身に付着した体液を振り払おうと、剣を上げた。しかし振り払うまでもなく。体液は次第に薄くなり自然に消え失せて
しまった。
「これも幻覚か」
気付くと球根も姿も消滅していた。俺はカエラの方を向いた。彼女はこちらに背中を向けたままで口を開く。
「ありがとう」
普段より落ち着いた口調。彼女に起こった異変が、俺にはすぐ分かった。
「りえさん」
間違いない。寺院で会話したカエラを守護する人格りえだ。彼女は呼びかけに答えるように、ゆっくりとこちらを振り向いた。
「ええ。私はりえ。でもさきほどのあなたの一言で、私達はやっと……」
カエラは拳を握って大きく振りかぶる。そして、自分自身の額を渾身の力で殴打した。
「おい!?」
「……一つになれたわ」
小さな声。しかしとても力強い声。今までのカエラのようでどこか違う。それは確かに彼女の二つの人格が融合したことを意
味している。
カエラが唐突に目を瞑る。
「どうしたんだ?」
「しっ、クリステルが近くにいる」
679 :
1:2005/09/09(金) 23:19:53
俺は促されるままに自分も目を瞑った。自ら視覚を奪うことで聴覚が研ぎ澄まされ、周囲の音という音がその音量を増した。
最も近いのは俺の鼓動。右隣から聴こえるのはカエラの鼓動……そして背後から微かに響く第三の鼓動は……
「そこだ!!」
二人の声が同時にこだました。金属が石の床に落ちる音。俺達はゆっくりと眼を開ける。目の前には胸を2本の刃で刺し貫か
れたクリステルの姿。その足元には彼女の物であろう、紋様を施されたクリスナイフが落ちている。
「有り得ない……人間ごときに……」
顔を苦痛に歪ませながら、クリステルは崩れ落ち、事切れた。
「大丈夫ですか!」
平井達が降りてきた。やはり心配で駆けつけてくれたようだ。甜歌が俺達の無事を確認して嬉しそうにすり寄ってくる。
と、甜歌はカエラの様子を見て首を捻った。
「ねぇ、カエラ。何か変わってない?」
「変わったって?」
「う〜ん、なんて言うか、感じが良くなった」
「何よ。それじゃ、まるで私が今まで感じ悪かったみたいじゃない」
口では怒っているが、カエラの顔は笑っている。申し訳なさそうに手を合わせる甜歌。
「あ、いや、そういうわけじゃ……っと!そんなことより大発見!!上に扉があったよ」
「マジか!?」
早速現場に急行する。幻覚は解け、あれだけ長かった螺旋階段は終わりを告げた。甜歌が言う通り鉄製の扉がある。平井が扉の
ノブに手をかけた。
「待て。いきなり入るのは危険だ。若いの。一緒に様子を見るぞ」
岸部は俺に顔を向けた。俺は特に疑問も抱かずに頷いて、彼の後に続く。扉を開けて中に入ると、そこは大広間になっていた。
かなり以前から使用されていないようで、家具が誇りを被って朽ちかけている。と、俺が入ったのを確認したかのように扉が鈍
い音を立てて閉じた。俺は仰天して扉を開けようと試みるが、固く閉ざされて開かない。まんまと罠にはまったということか。
「岸部さん。閉まっちゃいましたけど!」
680 :
1:2005/09/09(金) 23:20:26
俺の動転具合とは対照的に、岸部は背を向けたまま動かない。俺は正面にある鏡台に彼の顔が映っていることに気づいた。その
顔は、今までに彼が浮かべたことのない不気味な笑みを称えている。
「さて、ようやく二人きりになれたな」
「え?」
背負っていたトライデントを構える岸部。
「何の真似ですか」
俺は俺専用異世界人専用聖剣を握る手に力を込めた。
「お前さんの剣、そいつを俺に譲っては貰えんだろうか?」
続 く
初めて生で遭遇したぁぁぁぁ!!
>>1おつ
乙。目が覚めたよ
683 :
1:2005/09/10(土) 00:12:31
今日はここまで。
次は14日か15日。
今クリステル出てる。寝そう
乙。
まぢでおもしろいよ。
続きがマジで気になるぞ!
劇中のカエラの印象、どんどんよくなっていくなあ。
でも現実の木村カエラだったら先頭なんてほっぽって
一番先に逃げ出しそうだが。
×先頭
○戦闘
乙
続きが早く読みたいもんだ
∧_∧ 旦
(・ω・)丿 ッパ
. ノ/ /
ノ ̄ゝ 今度こそ
>>1お茶ドゾー
690 :
Mr.名無しさん:2005/09/12(月) 00:58:24
選挙速報見ながら深夜保守age
sexアンドオナニー
保守
乙加齢
補習
閑散としてるな
今日か?
697 :
1:2005/09/15(木) 17:35:37
第36話(前半)
鏡越しに見える岸部の眼。無気力に彩られていながら、それでいて獲物を狙う虎のような眼へと変わっている。彼は最初から俺の
剣が目当てで同行を申し出たのだ。
俺は岸部の挙動に、全神経を集中させながら答える。
「できない。と答えたら?」
二人の距離が、か細い緊迫感の糸一本で繋がっているのが実感できる。
「少々手荒だが……!」
糸が切れた。
瞬間、俺の顔面めがけて三つの点が一直線に飛んできた。俺は咄嗟に上半身を反らせる。すぐ後ろの石壁に目をやると、トライデ
ントの刃先が突き刺さっている。驚く俺が油断している隙に、間髪入れず放った岸部の前蹴りが俺の腹を打った。
「ぐぇ……」
歯を食いしばる俺。その間に岸部はトライデントを抜き、俺の頭上から突き下ろす。しかし、こちらも押されてばかりではない。
剣で巧みに捌き、返す刃で岸部の顔を斬りつけた。
彼の頬から血が滲む。ここぞとばかりに俺は連撃で畳みかける。しかし、そこは百戦錬磨の岸部。俺の攻撃を全てトライデントで
受けながら、確実に自分の得意な距離まで離していく。
距離を置いて呼吸を整える。両者とも一歩も引かない。
「なかなかのものだ。俺に引けを取ってない」
「何故こんなことをするんです?」
俺の問いかけに、岸部は一時武器を下ろして語り始めた。
「俺はこの世界にかれこれ30年近くいる。30年だ。分かるか?お前さんが生まれ落ちる前からいるんだ。俺はその年月を刻苦と共
に生きてきた。妻を帰してこの世界を選んだ後も、全身全霊を剣技を磨くことに命を賭してきた。それも全てただ強くなりたいと
いう信念があったからこそだ。しかし俺には何かが足りなかった。そう得物だ。俺の能力に得物がなかったんだ」
岸部は俺の剣に視線を落とした。
698 :
1:2005/09/15(木) 17:36:19
「そこにお前さんの登場だ。ラミハで初めて見た時、その剣の刻印を見て、或いはと思ったんだが、まさか本当にtanasinnソード
だったとはな」
「tanasinnソード?」
俺専用異世界人専用聖剣はtanasinnソードという正式名称なのか。
「この世界にいるだけで俺達地球人の身体能力は飛躍的に向上するのはお前さんも承知の通りだ。そしてその剣は更に俺達の能力
を向上させることが出来る」
俺は今まで気にもとめなかった剣の刻印を見てみた。確かに剣把に刻印がある。逆三角形の図形の真ん中に目のような丸がある紋
様が描かれており、その周囲にはこの世界の言語で更に細かく文字が刻まれている。
「Don't think. Feel and you'll be tanasinn……tanasinnは感じるもの?どういうことだ?」
岸部は、俺が疑問を抱いたのを当然とでも言うように続ける。
「tanasinnとは、ある者曰く精神。ある者曰く創造主。そしてある者曰く真理。その実、誰一人としてその本質を知らない。いや、
知ろうとする行為こそがtanasinnであると主張する学派もある」
何が何だかさっぱり理解できない。一体tanasinnとは何なんだ。tanasinn… tanasinn…
699 :
1:2005/09/15(木) 17:37:17
∴
∵ ∴ ∴∵∴ ∴
∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∴∵
∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵
∴∵∴∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴
∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵/ ⌒ヽ∴∵∴∵∴
∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵| | |∴∵∴∵
∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∪ / ノ∴∵∴∵∴∵
.. ∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵| ||∵∴∵∴∵
.∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∪∪∴∵∴∵∴∵
.∵∴∵∴∵∴∵∴∵:(・)∴∴.(・)∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴
∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴/ ○\∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴tanasinn
..∵∴∵∴∵∴∵∴∵/三 | 三ヽ∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵
「く!」
俺は頭を激しく振った。視界が狭まって眼前の光景にノイズが走り(小学校校長朝礼挨拶的)、何か得体の知れないものに身体を
掴まれたような気がしたからだ。
「あまり考えるな。tanasinnに引き込まれるぜ。とにかくtanasinnの名を冠する剣は、その使用者に無尽蔵の力を与えるってことだ」
襲いかかる頭痛に頭を抱えながら、俺は岸部に問う。
「この剣を手に入れてどうする気なんです?」
「分かりきったことだ。tanasinnソードを手に入れれば、俺はこの世界で最強の男になれる。魔族すら調伏できる。言わば支配者だ。
もう自己破産という恥辱を味わうこともない。そして……!」
言葉を切って、岸部はトライデントを構え直し再び攻撃を仕掛けてきた。混濁した思考が反応を遅らせた。切っ先が左の二の腕をか
すめ、鮮血が飛び散る。俺は痛みに耐えながら、第二撃に備える。
700 :
1:2005/09/15(木) 17:38:09
「あなたは本当にそれでいいのか?残してきた奥さんのことはどうなる?」
「俺の半分も生きていない若造が何をほざく!」
岸部が苛立たしげに咆哮を上げた。俺専用異世界人専用聖剣の防御をフェイント気味にかいくぐったトライデントの柄が、俺の顎を
打った。大きく後ろに跳ねとばされ、俺は地面に転がった。口内に生温かい鉄の味が広がる。血と一緒に抜けた差し歯を吐き出した。
「妻は地球で幸せに暮らしているはずだ。お前には関係のないこと。それよりも、どうだ?その剣の真実を知って恐ろしくなっただ
ろう。お前ごとき若造の手に負える品じゃない。俺に渡した方が身の為だぞ?」
起き上がれずにいる俺に、岸部の影が被さった。
「駄目だ。渡さない。俺にはこの剣が必要なんだ!!」
力を振り絞って跳ね起き、頭元の岸部に一閃を浴びせる。
「おっと」
紙一重でかわす岸部。しかし、俺は次の斬撃でトライデントの刃先を刎ね飛ばすことに成功した。後退した岸部は、思わぬ反撃に意
外そうな表情。
「何故引かない?」
「深田さんと一緒に帰ると誓ったんだ。さぁ、もうあなたの武器はもう使い物にならない」
俺は岸部の眉間に俺専用異世界人専用聖剣を向け、降伏を促した。岸部もそれに応じたのか、両手で持っていたトライデントの柄を
下ろした。
そして一言。
「どこまでも甘い」
「え?」
突如トライデントの柄が割れ、中から刺突剣エストックが現れた。近距離から放たれた強烈な突きは俺の右肩を刺し貫き、そのまま
身体ごと押しピンで刺し留めるかのように、壁に深く突き刺さった。激痛で身動きが取れない俺に、岸部は吐き捨てるように言う。
「戦士に必要なのは才能だけじゃない。モノを言うのは経験だ。場数を踏んだ年月がそのまま実力になる。如何に相手の虚を突くかだ」
岸部は苦悶する俺をよそに、床に落ちた俺専用異世界人専用聖剣を拾い上げた。
「これさえあれば、俺はこの世界で最強の男になれる」
彼は剣を高く掲げた。自分以外の手に握られた聖剣を初めて見た俺は、奇妙な違和感を感じた。それがtanasinnソードという名を持
つと知ったからかもしれない。とにかく嫌な予感がした。
俺の予感は的中し、異変が岸部に襲いかかった。
701 :
1:2005/09/15(木) 17:39:23
「……ぐぉ……んな、何だ!?ば、馬鹿な、手が、手が……溶ける!?」
剣を握る岸部の手が、まるで蝋人形を溶かすように、どろどろに溶解していくのだ。俺は肩のエストックを引き抜こうと力を込める。
「くそ、離れん!」
混乱してもがく岸部。ようやくエストックが抜けると、俺は岸部の元に走り寄り、彼の手から俺専用異世界人専用聖剣を引き剥がした。
剣把を握っていた右手の部位は無惨に溶けて、既に手の平としての形を残していない。恐らくもう武器を握ることは出来ないだろう。
俺は岸部の身体を床に横たえた。彼は肩で息をしながら、俺の眼を見上げる。
「その剣は自らの意思でお前を選んだと言うことか」
「…………」
俺は無言で岸部の応急処置をする。身体が溶けた時の処置法なんて自動車免許の講習では教えてくれなかったので、とりあえず袖を破
って包帯代わりにぐるぐる巻きに捲いておいた。
「最強や支配者などに憧れる器ではなかったということか」
自嘲的な微笑を浮かべて、岸部は続ける。
「なぜ助けた……情けか……?」
「とてもじゃないが情けをかける余裕なんてない。岸部さんの奥さんの為です。あの人の為にも還ることを諦めないでください」
俺の言葉を鼻で笑う岸部。
「妻の為だと?婿養子として姑の傀儡となっていた……現実世界から逃げて自分に都合の良いこの世界を選んだ……そんな不甲斐ない
俺が還ったところで、何故妻が幸せになると言い切れる!?」
岸部が激昂した。俺は、彼が以前口にした言葉を思い浮かべた。この世界は麻薬。現実のしがらみから逃げることができる。彼はこの
世界で生き、強さを求めることで、現実世界での自分の弱さと訣別しようとしていたのかもしれない。
俺は無言で立ち上がって岸部に背を向けた。その時、扉が威勢のいい音を立てて開き、摩邪が転がり込んできた。どうやら何十回とタ
ックルしてこじ開けたようだ。
「おにいちゃ〜ん!助けに来たよ!」
「やっぱ凄いですね。摩邪さんは、って、凄い傷じゃないですか!!大丈夫ですか」
俺の姿を認めた平井と甜歌が駆け寄る。
702 :
1:2005/09/15(木) 17:40:57
「中で魔物に襲われたんだ」
駆けつけたカエラが、俺に治癒術を施した。俺は岸部の方に目をやり、
「ありがとう。カエラ、岸部さんも治癒術を施して上げてくれないか。あと彼にはここで休んでいて貰った方がいい」
「魔物の姿なんてないけど、一体何があったの?」
「実体のない魔物だったんだよ。たちの悪い魔物だ」
岸部の治癒が終わり、皆が出たのを確認して、俺は振り返ることなく岸部に言った。
「信じる信じないはあなた次第だ。それでも彼女は今でも待っていると思いますよ。強かろうと弱かろうと、あなたのことを」
俺はゆっくりと扉を閉じた。その際、後ろから微かな嗚咽が漏れたように思えたが、気のせいということにしておいた。
続 く
おまえスゲーよやっぱ。
やっぱ溶けるのかよw
∬
旦 ∧,,∧
>>1さん
(^ミ,,゚Д゚彡 とりあえずお茶ドゾー!!
ヾ, と,,ミ
〜ミ ,,つ
し´
∬
∧,,∧旦
ミ,,゚Д゚ミ^)
>>1さんお茶ドゾー!!
,ミ' つ,ミ'
⊂,, ,ミ'
`J
706 :
1:2005/09/15(木) 21:34:10
今日はここまで。
次は未定。
> 俺は、彼が以前口にした言葉を思い浮かべた。この世界は麻薬。
> 現実のしがらみから逃げることができる。彼はこの世界で生き、
> 強さを求めることで、現実世界での自分の弱さと訣別しようとして
> いたのかもしれない。
ううう。
岸部の正体は
>>1自らの、いや俺たちのすがる妄想行為のメタファだったなんて・・・。
この作品はビューティフルドリーマーを越えているかもしれない。
708 :
Mr.名無しさん:2005/09/15(木) 23:45:56
ぶっさん困ってるなw
誤爆スマソ
1乙。今回もステキだぜ。
捕手
>>1かっこよすぎ
そりゃ甜花もカエラも惚れるわw
>>713 夏の間もスペシャル企画的なものは無かったけど
>>1はわりと大量に投下してくれているしな。初期に比べると
だから何もいらん
期待はしてるが
ねとらじヨロ
716 :
Mr.名無しさん:2005/09/19(月) 20:44:05
次は多分明日。
ヒャッホーィ
チンチンいぢって待ってるぜ!!
719 :
Mr.名無しさん:2005/09/20(火) 19:02:25
Gタイム保守
720 :
1:2005/09/20(火) 21:39:28
第36話(後半)
扉がある。特に重厚と言うわけではなく、何の変哲もない木製の扉。馬末の酒場に備え付けられているような、これと言って特徴の
ない扉だ。しかし俺は今、この扉を隔てた向こう側に、禍々しいまでに特異な存在感を感じている。それがえなりのものかは定かで
はない。しかし、確実に“それ”はいる。
「いるな」
「ええ、間違いありません。僕も感じます」
同意する平井の顔は、強い緊張感を湛えている。
俺はドアノブを握った。自ずと腕が震えてきた。この扉を開ければ、もう後に引くことは出来ない。全ての決着を付ける最後の戦い
に身を投じることになる。
「みんな、準備はいいか?」
俺は問いかけるように、仲間達の顔を順番に見回していく。
「いつでもどうぞ。僕は大丈夫です」
平井はとうに覚悟は出来ている様子。恋人の仇を討つという誓いを立てた彼のことだから、問うだけ野暮だったかもしれない。
「私?神職に就く者として、害を為す魔族を屠るのは当然の職務だしね。まぁ、回復術出来る人間いないと話にならないし」
そう言ってカエラは全員に守護術を施してくれた。高位の術らしく、身体が軽くなり身体能力が向上したのが実感できる。
「シフィーロ王の命は、あんたらをえなりとの決戦に届けること。この扉を開けて奴に会わせるまでは帰れねぇな」
とか言いながら、摩邪の口調からは最後まで付き合う気でいるのが汲み取れる。口は悪いが付き合いはいいようだ。
俺は甜歌の顔で視線を止めた。満面の笑みで迎えられて俺は少し困った。と言うのも、彼女をこの先に連れて行くことを断ろうとし
ているからだ。魔術師を欠くのは正直痛いが、これは先ほど甜歌以外の皆で決めたことだ。幾ら天才魔術師とは言え、やはり11歳
の少女。扉の先で待ち構えているであろう空前絶後の危険な戦いに、巻き込む訳にはいくまい。
721 :
1:2005/09/20(火) 21:41:11
「甜歌……お前はここで待っていてくれないか?」
「え……?」
瞬時に甜歌の顔から笑顔が消えた。ここで挫けてはいけない。心を鬼にして俺は続ける。
「その、何だ。扉の向こうにはどれだけの敵がいるか分からない。甜歌がいると……なんて言うか……足手まといっていうか……」
「それどういう意味?」
真剣な表情で問い返す甜歌。
「えっと…あの…魔術師は打たれ弱いだろ。で、みんな甜歌を庇いながらだと、思い通りの戦いが出来ないんだよ……」
言ってしまった。ついに言ってしまった。ここで甜歌が「もういいよ!(泣)」とか叫んで身を引いて、俺が「これで良かったんだ……
これで」なんて頷く展開になるはず。俺としては身を切る思いだが、これも致し方ないことだ。
ところが、
「何だ。そんなことか。心配しなくてもだいじょーぶだって!」
「へ?」
「ウチはずっとお兄ちゃんの後ろについてるから」
「え?」
「お兄ちゃんがいつもウチを守ってくれればいいよ。そしたら、みんな好きに戦えるじゃん!」
全然効いてない!!俺は驚愕した。どこまで天然なんだ。かなり直接的表現で諭したつもりだったのだが、全く効果を奏していない。
それどころか守って貰う気満々ときた。
甜歌は、再びこれでもかというほどに純真な笑顔を浮かべた。
「だからぁ!!俺が言ってるのは……はぁ。甜歌、俺の側を絶対に離れるんじゃないぞ」
もうどう抗っても無駄と悟った俺は、甜歌に注意を促した。
「了解!」
乙っ子よろしく敬礼する彼女とは対照的に、脱力する俺。俺達の様子を見守る平井やカエラの顔に、自然と笑顔が生まれた。
722 :
1:2005/09/20(火) 21:42:24
「それじゃあ、行くか」
気を取り直して、俺はもう一度ドアノブに触れる。不思議と手は震えていない。今の一件で緊張がほぐれ、心をリラックスすること
ができたのだろう。怪我の功名というやつだ。それに加えて、甜歌が同行することを渋々認めたものの、嬉しくも感じている自分に
気づいた俺ガイル。
意外なほどに軽い扉が開いた途端に、光が目を射った。薄く目を開けると、沈みゆく太陽が山の端を朱に染めているのが映った。眼
前にはサッカーコートほどはあろうか、相当な広さの空間が広がっている。ここは城の最上部、つまり屋上に位置しているようだ。
「きれい……」
息を呑む美しさに、すぐ後ろのカエラが嘆息した。確かにこの景観は心にくるものがる。それに、この高さであるから吹く風もかな
り強い。陰鬱な城内を探索して来ただけに、余計に心地よく感じられる。
「どういうことだ。さっきまで感じていた敵の気配が消えてる」
怪訝そうな表情で平井。確かに扉を開ける前までは感じていた気配が雲散霧消している。えなりの罠なのだろうか。
俺は注意深く前に進む。屋上の縁には、取り囲むように無数の松明が焚かれており、煌々と辺りを照らしている。
と、前方そう遠くはない位置にある松明の影に、人の気配を察知した。
「誰かいる!」
俺はその方向に向き直り、俺専用異世界人専用聖剣を構えた。続いて平井達も身構える。
こちらの戦闘態勢に動揺を見せることなく、人影は暗がりから現れた。松明で照らされて、その姿が徐々に顕わになっていく。
723 :
1:2005/09/20(火) 21:43:11
「ふ・・・・・・!?」
窒息したように言葉が出てこない。俺は目を見開き、電流が走り抜けたような衝撃に身体を硬直させた。衝撃の余り危うく剣を落と
しそうになったのを、慌てて持ち堪える。
左右に下ろした髪型(いわゆるツインテール)に変わっているが、その姿はこの距離からでも見紛おうことはない。
「ふ、深田さ……ん」
服装はラミハで別れた時と同じ冒険者用の服。顔は少し痩せたような気もするが、ほとんど変わっていない。実際はそう長い期間離
れていたわけではないのだが、何故だか数年来に会ったような心地だ。
「待ちなさい!不用意に近寄ってはいけないわ」
カエラが俺の二の腕を掴み、力を込める。
「大丈夫だ。用心するから」
自制がきいていないのは自覚している。だが居ても立ってもいられず、俺は強引にカエラの腕を外し深田に向かって歩を進める。近
くに寄れば寄るほど、深田の面影が蘇ってくる。
「お久しぶりです」
深田は目を潤ませて、以前にも幾度か見せた憂いのある微笑を浮かべる。やはり変わってない。俺は安堵して、彼女の息遣いを感じら
れる位置まで歩み寄った。
続 く
乙・・・・
なんかラストっぽくて悲しいな・・・。
ドラクエで言うと、もう竜王の島に渡ってしまった感じだな・・。
727 :
Mr.名無しさん:2005/09/20(火) 23:02:00
良いよ良いよ
728 :
1:2005/09/20(火) 23:45:17
今日はここまで。
次は未定。
>1
乙。
おーい、お茶汲み、1に茶を出してやってくれ。
深田キタワァ(・∀・)
731 :
Mr.名無しさん:2005/09/21(水) 18:59:39
>>729ほいやっさ!
( )) プヒン!
(( ⌒ ))__∧__∧___ モロン
(( (≡三(_( `・ω・ )__() ミヽ
(( ⌒ )) ( ニつノ ヾ
>>1 (( ) ,‐(_  ̄l 旦 旦 旦 <コトッ コトッ コトッ
し―(__)
↑あげちゃた。スマソ
>>726 そうだな。ラスボス前のセーブポイントで体力回復、の雰囲気でちょっと寂しい
hoshu
735 :
Mr.名無しさん:2005/09/24(土) 01:02:59
上昇
736 :
Mr.名無しさん:2005/09/25(日) 21:16:29
上昇だ!
737 :
1:2005/09/25(日) 21:43:00
次は恐らく明日。
738 :
1:2005/09/25(日) 22:37:31
なんちゃって( ´,_ゝ`)プッ
740 :
Mr.名無しさん:2005/09/26(月) 21:09:17
それで本当に今日なのかage
741 :
Mr.名無しさん:2005/09/26(月) 21:12:35
クル━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
age
742 :
1:2005/09/27(火) 00:15:27
第37話(前半)
俺は瞳を閉じた。
とても懐かしい匂いだ。俺の好きな金木犀に似た香り。この香りを最後に嗅いだのはいつだったか。そうだ。ラミハでの深田との
別れ以来だ。ゆっくりと瞳を開けると、香りの主がすぐ目の前に佇んでいる。
「深田さん」
俺は彼女の身体をこちらに引き寄せようと、腕をつかんだ。
その瞬間、
「つ〜かまえた〜」
ニタァと、深田は嗤った。同時に扉の外で感じたのと同じ凄まじく邪悪な気配が発生した。
「――――え?」
気づいた時には、こちらから腕をつかんだはずが、逆に彼女の両腕に身体をがっしりと抱き締められ、俺は全く身動きが取れなくな
っていた。
「ど、どういうことだ!?」
足掻くが、人外とも言える怪力での抱擁はびくともしない。
「ほんと馬鹿ですね〜。わたしはあなたの敵ですよ〜?」
「!?」
「わたしは望んでこの魔王軍に加わったんです。ラミハでの別れのシ〜ンを思い出して下さいよ〜」
俺はあの忌まわしい光景を思い起こした。確かに深田は、有田に誘われるまま自らすすんでゲートに消えていった。だが、俺はその
行動が彼女の本心でないことを信じてきた。“ホントの本心”を聞くまでは捨てることのできない、一縷の望みを抱いていた。しか
したった今、本人の口から真意が告げられた。すがっていた希望が、ガラガラと音を立てて崩壊していく。全身から力が抜け、いつ
しか俺は深田の抱擁に身を任せていた。
「深田さん、君は本当にまだ有田のことを?」
力なく問う俺に、
「はい。だって……」
そこまで言って、深田は言葉を止めた。まるで次の言葉を強調するかのように。
「ただ一人、私が愛している人ですから〜」
743 :
1:2005/09/27(火) 00:16:38
ああ、この人も同じなんだ。恋する人が、また俺の手の届かない所に行ってしまった。いつもそうだ。一瞬、俺の脳裏に現実世界で
の赤川さんの姿がフラッシュバックした。
深田の抱きしめる力は次第に強くなっていき、俺の筋肉と骨が軋んで音を立てる。
「おにいちゃん!」
業を煮やした甜歌が、魔術を発動させるべく詠唱を始めた。それを平井が遮る。
「駄目だ!術を使えば彼にも当たってしまう」
「でも!」
「甜歌、機を待ちなさい。今は見守るしかないわ」
カエラが甜歌の肩に手を置いた。その表情は固く、彼女もまたはやる気持ちを懸命に抑えている。
死の抱擁に身を預けながら、我知らず俺の口から忍び笑いがこぼれてきた。
「ほんと俺って馬鹿だよなぁ。己の分を知れっての」
「はい?」
きょとんとする深田をよそに、俺は独白するように続ける。
「最初から分かってたことじゃないか。自分じゃ深田さんと釣り合わないって。それがちょっと一緒に旅をしたくらいで好きになった
りして。ははは、笑っちゃうよな」
うつむく俺の頬を伝って、幾筋かの水滴が落ちていった。
「笑いながら泣いてるんですかぁ?」
不思議そうに問う深田。
「ああ、おかしいだろう」
涙をぼろぼろ流しながら、俺は自嘲的な笑顔を浮かべている。それをなおも興味深げに見つめていた深田は、
「大分堪えてるみたいですねぇ〜。可哀想だから死ぬ前に教えてあげちゃおっかなぁ」
不意に彼女の両腕から力が抜けた。自由を得たものの、俺は立ち続ける力を保てず、その場に座り込んだ。
深田はのほほんとした顔でこう言った。
「ボクはお母さんじゃないよ」
………ボク?………お母さん?
「お、お母さんって、どういうことだ?」
俺は耳を疑った。一体彼女は何を言っているのだ。気が触れているのか。皆目意味が分からない。
「ボクは魔王」
744 :
1:2005/09/27(火) 00:17:42
理解できず俺はただただ唖然として、呆けたように彼女の姿を見つめる。深田は……いや今の内容から判断すると“深田”ではなく、
深田の姿をした“それ”は喋り続ける。
「母胎にいる時、ボクは四六時中思案していた。このまま産まれるべきなのかってね。生まれ落ちた瞬間、自分は“ただの魔王”にな
ってしまう。でもただの魔王なんて今時ダサイし芸がない。何か特殊な存在になりたかった。唯一無二、前例のない存在」
魔王は空を見上げた。陽はほとんど沈み、辺りは夜の闇に包まれていく。
「そして思いついた。ボクがいるのは異世界人の胎内じゃないか。そもそも異世界人が魔王を宿すなんて前代未聞。この機会を棒に振
ることはないってね」
これ以上にないくらい最悪な事実。事態を少しずつ飲み込むにつれ、俺は眩暈を覚え、締め付けられるような頭痛に苛まれた。
「それでお前は……」
「そう。これは実験なんだ。魔王が異世界人と融合したらどうなるのか試してみたくなった。だから、ボクは産まれることをやめた。
異世界人という特異なお母さんの身体にとどまり、ボクという魔王の魂の容器にしたのさ」
「そんな。それじゃ深田さんは!!」
「ボクの意識の奥底に沈めた。もう二度と浮かび上がってこれないだろうな」
「このっ……!?」
俺の中で何かが暴発した。俺専用異世界人専用聖剣を握りしめ、俺は深田の身体を纏った魔王に斬りかかった。しかし攻撃は紙一重ど
ころか、相当な余裕を持ってかわされる。
「何故ボクはお母さんの意識を殺さずに生かしているか、教えてあげようか?」
そう言って手招きをして挑発する魔王に、俺は瞬速の連撃を繰り出す。
「君の剣術の師はお母さんだ。故にこの人の意識を生かしておくことで、君の攻撃パターンはみんな……」
全ての攻撃はかすりもせず、確実に捌かれていく。
「ボクにはお見通しというわけ♪」
不意を突いてたった一撃、魔王は俺の胸を異世界人用ロングソードの剣把で打った。凄まじい衝撃に弾き飛ばされ、俺は地に足をつけた。
軽く打っただけのはずなのに、俺は激痛に血反吐を吐きながらもがいた。
「取るに足らない君みたいな相手でも、tanasinnソードを持つ以上は魔族にとって侮れないからねぇ」
魔王は異世界人用ロングソードを鞘に収める。魔族の王が、魔族特効武器を使うとは悪い冗談にしか思えない。
745 :
1:2005/09/27(火) 00:18:30
「えなりさぁん!!もういいっすよ!いい加減出てきて」
魔王が叫んだ。すると松明に照らされて、暗がりから2つの人影が出現した。
「魔王様の芝居、なかなか楽しませてもらいましたよ」
拍手しながら出てきたのはえなりだ。そしてその斜め後ろには有田が控えている。今まで消していた邪気を解放したようで、彼らから発
せられる強烈な圧迫感は今にも俺達を押し潰さんばかりだ。立ち上がれずにいる俺を守るように、平井とカエラが前に出た。
「ラミハ以来だね。また会えるとは僕も嬉しいよ」
えなりはピエロのような戯けた大仰な動作で一礼した。
「魔王様やえなり様の手を煩わせるまでもない。こいつらはオレにやらせて下さい」
有田が進み出た。ニヤニヤと笑う顔は、自信の表れ以外のなにものでもない。彼の視線は平井とカエラの間を通り抜けて、俺の目に一直
線に向けられている。
「お前、恭子の身体を知らないんだろ?」
「な!?」
俺は身体を硬直させた。
「教えてやろうか」
「やめなさい!」
カエラがハルバートを構えて有田に突進をかける。彼は背中のクレイモアを抜き、ハルバートを受け止めた。カエラの強烈な攻撃を受け
ながらも、有田は俺から目を離さない。そして目を見開いてこう吐いた。
「最高だったぜ」
続 く
深キョンは救ってやってくれよ。現実世界に二人で戻ってほしい
金木犀気に入った。イケメソな表現でつね
腸乙
752 :
1:2005/09/27(火) 01:03:02
今日はここまで。
おつ。おやすみ。
しかしよくここまでドラマティックに妄想出来るもんだ
>>1はスゲーな!
>>1 蝶乙。誰かアニメ化してくれないかな('A`)
俺は実写がいいな。
おもれえええええGJ!!
やばい、有田が嫌いになりそうだ。
∫∫∫
.__ 旦旦旦
|. ● | (,,・∀・) がんばれニッポン
 ̄ ̄| ( O┬O
〜〜 ◎-ヽJ┴◎
堂本兄弟 深田とえなりがレギュラーになるんだな
妄想最強乙
旦
1は随分と顔出してないな
764 :
1:2005/10/01(土) 21:46:55
次は恐らく火曜日。
カラオケで"Look back again"のPV見て、かなり鬱になったよ・・・
poshu
768 :
1:2005/10/03(月) 00:45:51
>>766 矢井田のふとした表情が赤川さんに激似だから。最初に会った時の髪型と同じだし。
その悲しみも妄想の糧になる
強くなるんだ1よ
| | ソ〜〜
| |∧_∧
|_|´;ω;`) ドゾ〜
|愛| o ヽ旦 コトッ
>>1 | ̄|―u'
772 :
1:2005/10/04(火) 22:14:32
スマソ。ちょっと延期。今日は仕事が思った以上にきつかった・・・
>>771 それ違う。
>>乙。ぼちぼち年末商戦が見えてきたかもしれんが、家電店は何を目玉にするつもりなの?
やっぱプラズマTVですか
775 :
774:2005/10/05(水) 20:34:16
ごめん、アンカー付け間違い
776 :
1:2005/10/05(水) 22:20:08
次は恐らく土曜日。
>>774 年末商戦もあるんだが、とりあえずプリンタ新製品と年賀状ソフト関係で
忙しい。
777 :
Mr.名無しさん:2005/10/05(水) 22:31:48
ほしゅ
/||ミ
/ ::::|| __
/:::::::::::|||W.C|
|:::::::::::::::|| ̄ ̄||
|:::::::::::::::|| ガチャッ
|:::::::::::::::|| ||
|:::::::::::::::||∧_∧
|:::::::::::::::||´・ω・`) 皆さん、お茶が入りましたよ・・・。
|:::::::::::::::|| o o旦~ 少し休みましょうよ・・・。
|:::::::::::::::||―u' ||
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\ ::::||
\||彡
そうだな
もう年末商戦とかなんだなぁ
じゃあ俺が
>>1に年賀状出してやるよ