俺は去って行く有希を見ていた。
バンッ。いきなり後ろから背中を叩かれた。思わずビクッとする。
「へへっ見てたわよ少年」
「か、香織先輩…?」
ビックリした。香織先輩とはまだ数回しか話たことなかったし、その殆どが部活の用事だったからだ。
「有希と良い感じだったじゃない?告白されたの?」
「全然そんなんじゃないですよ。ただちょっと話てただけで」
「そうは見えなかったけどな…」
「先輩こそ何してるんですか?」
「う〜ん私は有希と部室で話ててさ、なんか盛り上がちゃって。で、部活帰りに甘いもの食べて帰ろうって誘ったんだけど、用事ありますからってフラレちゃった。」
「へ〜」
ってかなんで俺こんな自然に憧れの香織先輩と話せてるんだ?相づちを打ちながらもそんな事考えていた。
街頭の光に虫が集まっている。
香織先輩はかまわず話を続けた。
「……でさ。ちょっと聞いてるの?人の話?有希を誘ったんだけど、行かないってゆうから付けてたの」
香織先輩はニヤっとしながら
「まぁ有希は先輩の私より君を選んだみたいだね」
え?正直な話どうなんだろう?有希は俺に用事があったんだろうか?
いや単に他の用事だったのかもしれない。頭の中を色んな思いが交錯する。
「あ〜お腹すいた〜。部活の後って甘いもの食べたいよね〜。よしっ君が有希の代わりに寄り道に付き合いなさいっ」
唐突すぎだっ!でも香織先輩と帰り道が同じ方向なので断る理由などない。むしろ願ったり叶ったりだ。
「はいっ行きます」
即答した。
先輩と自転車を押しながら並んで歩きだした。
「ここだよ。言っとくけどおごりじゃないからねっ」
甘党の店蜜柑屋。狭い店の中には部活帰りの学生がちらほらいた。和風な粋な店だ。
先輩は二人掛けのテーブルを選びすわると慣れた手つきでメニューをみている。「よしっ決めた。迷ったけどアンミツにするっ。ふふっここのアンミツ美味しいだよ」
「じゃあ僕も。」
「さっき部室で盛り上がったって言ったけど何の話してたと思う?」
「え?わかんないですよ」
「君の話だよ」
「えっ?」
「ビックリした?本当だよ。だからさっき君と有希を校門で見た時、なんか納得しちゃった。有希ってさぁすっごく嬉しそうに君の話するんだよ?バックハンド教えてもらっちゃいましたって。本当に嬉しそうだった」
「いやあいつとは中学の腐れ縁で」
内心はドキドキしていた。有希が俺の話を嬉しそうにするなんて