自分の腕に水滴が穿たれる。
「……あ…」
そこでで初めて泣いている事に気付いた。自覚してしまうともう止まらなかった。
俺は膝を付き、崩れるように机に寄りかかり、泣いた。みっともない姿だったが関係なかった。
…さっきまで必死で我慢していたんだ。
一番見せたくない人には涙を見せずに済んだんだ。
泣いていた彼女を、最後には笑わせることも出来たんだ。
もういいじゃないか。許してくれ。
誰に言い聞かせるわけでもなく。いや、きっと自分の弱さに言っていたのだろう。
俺はしばらく声を殺して泣いていた。床に涙の染みが出来る。
好きな人に告白して、拒絶される事の辛さ、苦しさ、悲しさを俺はこの日初めて知った。
予想もしない程の痛苦に心は千切れそうになる。
こんな苦しみを抱えてこれから生きていけるのか心配になる。
「…片瀬…」
愛する人の名前を呟いてみる。
…失敗だった。涙の勢いが増すだけだった。
俺はベッドに仰向けに倒れた。
窓から映る空は今はもう、雲に覆われていた。
もう星は見えず、少しの雨が降り始めようとしていた。心模様を代弁しているかのようだった。
(そうだ…それでいい…)
さっきはまるで役に立たなかった空の神様に少しだけ感謝して、俺は濡れた目を閉じた。