では行きます。
小学校6年生の秋だった。
当時、オレの地域では校内暴力が中高で問題となっていて、
小学校卒業を間近に控えたオレは、心の準備をしていた。
心の準備とはすなわち、ヤンキーの風体を備えること。
中学校に入ってもナメられたくないし、
それに物心が付きはじめていた頃だったから、
急に態度をでかくしてみたり、威勢を良くしてみたりしてた。
おままごとのようだが、恋愛感情も芽生えはじめてたし、
かっちょいい男になって、彼女のひとりでも、、、という気持ちもあった。
まぁ、今考えてみればアホみたいなことだけども。
そんなオレには先生とも言えるような小林という人物がいた。
幼稚園からの友達である小林は、スポーツができて女の子に人気だったが、頭は中の中程度。
頭がそれほどでもないということは、そういう道へ進むと言うことでもある。
小林には歳のはなれた高校の姉がいたから、
クラスの中でもスマートかつ着々と、ヤンキーへの準備をしていたように見えた。
オレは、明るいものの元来はおとなしい性格なのだが、
中学入っていじめられたくないという気持ちがあったし、
小林と毎日遊んでいる手前、流れの取り残されまいと、
見よう見まねでヤンキーをかじりはじめた。
なによりも小林は、オレが当時好きだった彩ちゃんのいるグループと仲が良かった。
それをチャンスだと思いはじめてから、
オレの中では急速に「彼女」という言葉がふくれあがって来た。
「いいな〜、中学生になったら「彼女」というものができるんだろうな〜〜。」
とい感じ。
彩ちゃんとは、別段、仲がいいわけでも無いのに。
まことにバカ丸だしである。
ちなみに「○○ちゃん」と幼稚園の時から呼んでいた小林の名前を、
呼び捨てにし始めたのは、この頃のことだ。
ふむふむ
この小林と、もう一人、イサオという奴がいて、
一緒に学級新聞を任されていたから、よく遊んだ。
イサオは、小林と同じように年上の姉と兄貴がいたし、
兄弟そろって問題児という筋金入りの家族だったから、
オレよりヤンキーの道を3歩ほど先を行っていた。
ただし、イサオは決定的に頭が悪い。
顔もそんなにいけてない。
体は貧弱ではないが、もともと小さいからオレが喧嘩をしても充分勝てる奴だった。
学年が6年生になってから、この3人で集まることが急激に多くなった。
オレは無理して威勢良くしているのを悟られまいと、
必死に話題についていく。
ゲームの話、まんがの話、そしてエロの話。。。
当時はまだパソコンと言えば、PC98/88の時代だったのだけど、
背伸びをしている年頃としては、重要な切り口であった。
その切り口として購入する雑誌にはエロゲーの特集があったりするからでもある。
>>822 断った理由はこのあたりの会話に隠れてるような気がする
「私が…いけないのかもしれない」
「? 理想が高いとか?」
「ちょっと違うと思う。臆病…なのかな…? 私、身体は大きいのに。なんか、怖かった…」
「怖い?」
「ちょっとね、嫌な事があって…。自分と相手に対して自信が持てないんだと思う…」
「嫌な事?」
「それは…ちょっと…」
「?」
「あ、うーん。楽しい話じゃないから、あんまり言いたくないな…」申し訳なさそうに言う。
「レオタードくいこませて。」
無意味にこんな言葉が流行る。
エロゲー特集のほんの小さな一こまが、若い想像力を爆発的に拡張させる。
くいこませると、気持ちいいのかどうだか知らないけど興奮するらしい。
女が本当に興奮してるかどうかわからないが、少なくともオレは興奮する。
とかいう感じでもりあがる。
続けて、「むける」という意味が全然わからないのに、
「おまえ、ずるむけだろ。」
と小林が言う。
「んだよ、おまえもだろ。」
とオレが言う。
イサオは、兄貴から聞いて来たのか偉そうに、
「ずるむけするには、切ったりするらしいぜ。」
と続ける。
「どこをだよ!」
小林もオレもわけもわからずに、そこを押さえた。
「「むける」じゃなくて「ずるむけ」だからな、相当すごいんだろう。」
「しかも、ずるむけしてないと痛いらしいぜ。」
イサオは得意げだ。
彩ちゃんはご多分にもれず、まじめな子で頭も良く、
こんな話は遠巻きに、そして、いくぶん軽蔑の眼で見ている様子だった。
オレは興奮していたものの羞恥心がまだあったから、
小林とイサオが恥ずかし気も無く大声で語り始めると、他の話に切り替えるように努めた。
恥ずかしい気持ちと同時に、彩ちゃんに嫌われたくないという気持ちも当然あった。
オレが冷静に我にかえろうとしても、イサオはおかまいなしに続ける。
彩ちゃんのとりまきの中には「エロ」に興味のある人間もいくらかいたから、
雑誌を片手にもって、イサオは得意げに攻める。
遠くから見ていると、女の子がキャーキャーいいながらも、興味津々というのがよくわかった。
女の子に人気の小林が笑って見ている。
「バカだな、あいつ」
オレは傍観している彩ちゃんに、大人ぶったように話しはじめた。
ついさっきまで、バカの一部だったのに、そんなことは知ったこっちゃない。
今もそうだが、小学生の頃のオレは話の前後関係を深く考えない。
「男子って、いつもそう。」
彩ちゃんは冷静な顔をしながらも、意外にも楽しそうにも見えた。
「だよね。あいつらアホだからな。」
彩ちゃんとはそんなに仲が良いわけでも無く、
子供ながらも緊張した。
この頃というものは、たいてい女の子の成長期が先に来る。
彩ちゃんは成長期をすでに迎えていて、
体操着をとおして女の子特有の下着をつけているのがわかった。
オレの家系は代々成長期が遅く、オレの身長は彩ちゃんと同じくらいの160cm。
男として攻め気になれない理由はここにもあった。
wakuwaku
「宮下くんは、今日、新聞書くの?」
彩ちゃんはオレがクラス新聞を任されていることを知っていてくれた。
「おぅ、今日、あいつらと放課後に書くつもり。でもいつもあの調子だからな。大変だよ。」
「ふふっ。でも新聞いつも面白いよ。あのまんがは宮下くんが描いてるんでしょ?」
オレは算数は苦手だったが、国語と美術が好きだったから、
クラス新聞にいつも勝手気ままにまんがを描いていたのだ。
「あ。うん。面白い?」
「うーん、あれがないとつまらないかもね。」
別段、誉める様子ではない。
小学生の描くまんがなんてたかが知れてるからだ。
「今日も描くの?」
「なんか思い付いたら描くかも。」
「頑張ってね。私たちも花壇係だから、放課後残らなきゃいけないんだ。」
「へー、虫とかだいじょうぶ?」
「うん、幼虫はこわいけど、、、。」
いい感じである。
こんなに彩ちゃんと会話するのはこの日が初めのようなものだ。
卒業を間近に控えるこの季節までお互い部活動をやっていたから、
放課後に話をする機会もなかったのだ。
書いてあるのはここまで。
だけど、
>>24氏の邪魔をしないタイミングっぽいので、
体力の続く限り書くことにします。
今、読みかえしてみたら誤字脱字が多かった。スマソ。
以後気をつけますが、オレは
>>24氏ではないので読みにくいかもしれんです。
「はやく新聞書いて遊びに行こうよー。」
イサオはいつもそうだが、この日もおかまいなしで遊んでいる。
小林がオレと彩ちゃんの近くによってきて、少し冷やかす。
「おまえらできてるのか?デリ子はどうなんだ?」
デリ子とは、オレたち男どもが勝手につけた彩ちゃんのあだ名である。
たしかデリシャスなケツをしているからという理由だったが、
オレはヤンキーへの道の一環として認識してただけで、使うことはなかった。
恥ずかしくて「彩ちゃん」とすら呼べなかった。
まぁ、みんな、彩ちゃんが女性への変身をしているのを敏感に感じ取っていたのだろう。
そして、小学生なりに自分の気持ちを隠すべく、勝手にデリ子と名付けたのだろう。
ようは「好きな子のことをイジメたくなる」というあれだ。
「うざけんなよ。はやくマジック持って来いよ」
顔は赤くならない方だが、あきらかに挙動不審な返信をしてしまった。
彩ちゃんは別に気にしている様子は無い。
「………」
小林はにやけた顔をして無言で自分の机に向かった。
嫌な態度であるが、それ以上つっこんでこなかったので助かった。