開始まであと2時間以上あるが、こんな田舎の花火大会でも人が集まっていた。
やはりカプール連れと家族連れが多い。
去年までだったら来ただけで鬱になっていたんだろうな。
Eと一緒に屋台巡りをしていたら、時間はすぐに過ぎた。
桟敷席に腰掛け、ビールを飲みながら花火を見ていた。
花火の間は「おー」とか「きれー」とかいう陳腐な台紙しか出てこなかったが、
俺がEの方を見るたび、Eも俺を見返してきて、年甲斐もなくドキドキした。
花火が後半にさしかかる頃、目の前に陣取っていたカプールのイチャつき具合が
大変なことになってきて、この場でぬる(ry始めるんじゃないかってくらいに
なってきた。俺は目のやり場に困り、
「あの、えーとさ……場所変えようか?」
「そうしましょう」
Eも同じようなことを考えていたのだろう。俺より幾分か冷静だったようだが。
立ち上がり、歩き始める。
意を決してEの手を握る。すると、ちょっとびっくりしたようだが彼女の方も
俺の手を握り替えしてきた。やわらかい。最後に女の手を握ったのはいつだったか。
そんなことを考えてたら勃(ry
席を立ったはいいが、都合良く二人分空いている席などあるはずもない。あの席を
立ったことを少し後悔し、Eに悪いなあと言ったら、
「このままでも楽しいですよ」
と微笑まれた。
手を繋いだまま、駅までふたりで歩いた。
『もういけるんじゃないか?』と思い、歩きながらEの顔を見た。
「来年も一緒に来たいな」とか「付き合ってくれ」とか、そんな台紙が思い浮かんだ
けど、やっぱり言えなかった。