待ち合わせ場所。
30分ほど早く着いたため、本読みながら待っていた。
が、全然頭に入ってこない。鞄から出したり、仕舞ったりの繰り返し。
待ち合わせ時間までは5分ほどを余していたが、改札からEが出てきた。
「あー、ホントにいた」
「いるに決まってるだろ」
「だって平日の昼間だし、さっきはちょうど仮病さんからメール来ないかなーとか
思ってたところだったから、ドッキリか何かかと思っちゃいましたよ」
「w ちゃんと来ただろ?」
「いやーまだ油断はできませんよ、いつ小野ヤスシが出てくるか分かりませんからね」
…おまいは本当に20代前半かと。
「でも本当に良かったんですか? せっかくの半休、わたしなんかと会ってて」
「……それ言ったらおまえはどうなの?せっかく一日休みなのに、俺と会ってて
つまんなくね?」
「それは仮病さん次第ですねーw」
と、ここまで言われてハタと気づいた。
(俺、昼間のデートコースなんてわかんねえや)
「どこ行きましょう?」
俺の気も知らず、Eが笑顔を向けてくる。やばい、大マジで惚れそうだ。
……ってもう手遅れか。
「見たい映画とかある?」
「えー」
あからさまなブーイング。今の映画にはそれほど感じるものがないらしい。
「高校生の頃とか、『ライフイズビューティフル』ですっごい泣いたんですけどね」
それより良い映画なら行ってもいい、と。俺だって泣ける映画など知らん。
正直、携帯から2chにアクセスしようと本気で思った。
「ライフイズビューティフルを配給してたチェッキゴーリって破産したんだよね」
もうマジで空気嫁ない俺。この話題は軽くスルーされ、
「映画だとお話できないじゃないですか、せっかく会えたのに」
まるで遠距離カプールのような会話に、一瞬立ちくらみ。