辛い、というか複雑なことが一つ。
既に塹壕に書いたが先週の土曜にEと飲みに行ったことや、明日一緒に花火を
観に行くことが会社バレしていたこと。
今日は会社に戻らなかったが、同僚や先輩がどういうノリでこの一件を眺めて
いるかは、今朝のやり取りでよーく分かった。
同じ部署の先輩に電話。
既に会社を出ているらしい。
この会話をリアルタイムで周りに聞かれる心配はないかな。
挨拶の後、
「今朝の……Eの話ですけど、誰から聞いたんです?」
(以下、タゲの後輩のことをEとします)
「そんなこと訊いてくるってことは、やっぱり本当なんだな」
――俺はホームラン級の馬鹿か。
「……本当ですよ。ただ付き合ってるとか、そういう関係じゃないから、
いい加減な噂が流れるのは迷惑なんですよ」
「いやー、俺だって心配してたんだぜ? おまえ、いい年して女っ気全然なかった
じゃん。俺がお前の年には二人目が生まれてたぜ」
「……俺の話聞いてます? 誰から聞いたのかって訊いてるんですよ」
「そんな怒るなよ。そうだ、今××(会社近くの居酒屋)だから。
大して遠くないんだからお前も来い。 明日デートなんだろ? 俺のアドバイスは
有益だぞ」
「だからデートじゃ……って、今××にいるんですか? 誰といるんです?」
「えーと、K部長、Dさん、Aさん、それに」
最悪だ。Eと同じ部署の人もいる……。
月曜にはさらに飛躍した噂が流れている――というより飛んでいるだろう。
『 や っ た の か ?』とか訊かれるんだろうな。一気に気が重くなる。
行けば格好の肴にされるだろうが、行かなければ何を言われるか分からない。
悩んだが、結局出かけるのはやめた。
「すみません、ちょっと体調悪いんで」