「何考えてたのか、気になるな」
「・・・気になるの?」
こっちを見ないままでA子がそう言った。
「うん。多分俺も今週おなじ事考えてたと思うから」
「そうかあー」
ゆっくりと煙を吐いたあと、A子はまいったな、って呟いた。
「んー・・・同じ事、考えてたのかなあ?」
「うん、多分。それで、俺はずっとA子になんていおうか考えてた」
「何を?」
また煙を吐いて、A子は今度は俺の顔を真っ直ぐに見返してきた。
「私は、ずっと考えたけど?こいつ何考えてたんだろうって。どうしてこの人は私に謝るんだろうって。
ごめんって謝って許してもらいたいのかとか、許してもらったらまたゼロに戻したいのかって。全部
リセットして終わらせるようなそんな事だったのかなって」
一気にそう言って、タバコを灰皿で潰して消して。
「もし直球がそう思ってるなら、最低じゃない?」
最低じゃない?
そう言われて胸が痛くなった。
「でも、ちゃんと会って言いたかったんだ。最低だけど、何も覚えてないのは本当だから」
頑張って、目をそらさずにそう言った。
だけど、覚えていないけど、初めて会ったときから好きでしたって、今しかいえないと思った。
「だから」
「聞きたくない」
「でも聞いて欲しいことがあるんだ」
「いいから!・・・出よう。場所、変えたい」
そう言ってA子はテーブルの上の伝票を握って席を立ってしまったから俺は慌てて
A子の後を追いかけた。