サッポロ一番 塩、醤油、味噌(敬称略)ラーメンPart2

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323Mr.名無しさん
タクシーの運転席が射場守男(38)の「勉強部屋」だった。定規と下敷き板で
作った簡易机。乗務の合間を見つけては、受験参考書に読みふけった。
 高卒後、岡山で「大好きな車の仕事を」と、ガソリンスタンド店員や運転手を
続けた。給料の多くは車の改造に充て、家族を顧みない日々。だが三十歳を過ぎ
焦りが募る。「技術も資格も無い。どうしよう」。偶然、乗せて客に「どうせなら
最難関の司法試験に挑戦してみたら」と言われた。
 「死ぬ気でやる」と受験を運転手仲間に宣言。「自分に酔っとんのか」。周囲の
冷ややかな反応に意地になった。だが、三度目の挑戦も失敗。「食っていくだけな
ら今のままでも」。何度もくじけそうになった。
 そして昨年十一月。法務省のホームページを見る手が震えた。七年間、五度の受験。
合格者名簿に自分の名前があった。文句も言わずに支えてくれた妻に報いたい。「転
勤で迷惑を掛けずに済む弁護士がいいかな」。
 射場は四月、司法修習生として人生の再出発を切る。
16年3月20日/日本経済新聞