(漏れはいつも彼女の後ろを歩いていたのだが
ある時は信号にわざとつっかえて漏れを待ってみたり、
ある時は階段をゆっくり上って漏れを待ってみたり、
ある時は電車の時刻表を眺めて漏れを待ってみたり、
そんな時彼女はとても可愛かった。しかし漏れはいつも素通りしてしまった。
漏れはチキンだった。
何やってんだ?どうして話しかけなかった?
漏れは後悔ばかりしていた。
明日は話しかけるぞ!
しかし、漏れは行動に移れなかった。
そしていつの頃からか、彼女に会う日が徐々に減っていった。
2日おき、3日おき、週1、2週間に1回・・・
いつもの電車に乗ってるのに何でいないんだ?
理由は分かっている。漏れに愛想を尽かしたのだ。
しかしそれでも漏れは彼女を忘れることが出来なかった。
・・・いや嘘だ。正直一時期忘れたこともあった。
彼女を忘れたというより、漏れが男を捨てていたのだ。
しかし3週間に1回位の割合で彼女に会う度、
彼女は決まって漏れを待ってくれた。
彼女は漏れを忘れてはいない。
そんな希望が漏れに彼女を思い出させた。
そして年が変わり、周りの環境が変わったとき、
漏れも確実に変わっていた。男を再び取り戻したのだ。
漏れが変わったのを彼女も気付いたのかもしれない。
彼女に会う回数が再び増加しだした。
月1から3週間に1回、2週間に1回、週1、3日おき、
そして今ではほとんど毎日会っている。
しかし、今までとは少し環境が違う。
一つは、会うのが夕方の電車から朝の電車になったということ。
もう一つは、彼女の友達も一緒だということだ。
彼女の友達もいることによって、彼女と目を合わせることが出来なくなった。
しかし、彼女との距離は、1メートルほどに縮まった。
漏れの後ろで彼女がしゃべるようになった。
彼女たちの会話を覚えているわけではない。
ほとんど雑談なので、軽く聞き流していた。
しかし中には聞き流せないものもあった。
彼女がタバコを吸ってみたらしいという話。(これは友達の方から語り出した
彼女が朝までオールしたという話。(これは彼女の方が語った
タバコの話をするときは、彼女はほとんど相槌しか打たなかった。
もしかしたら漏れに聞かれたくないのかもしれない、
そんな期待も抱いてみたりした。
ここで一旦会話のことから離れよう。
年が変わった後、もう一つ、変わったことがあった。
漏れはそれまで彼女の友達の存在はほとんど意識しなかった。
幾度か、彼女が友達と一歩に帰っていたことがあったから、
一応存在は知っていた。
そしておそらく漏れのことも、彼女から聞いていたであろう事も・・・
友達は漏れの心を動かすことはなかった。
漏れは彼女に夢中だったからだ。
しかしあるとき、それはつまり
漏れが男を捨てていた時期、それは彼女に月1しか会っていなかった時期でもある。
彼女が朝漏れと同じ電車の同じ車両に乗るようになった。
彼女が漏れと目を合わすことは無かった。
いつも携帯をいじっていた。
おかげで漏れは彼女の顔を観察することが出来た。
可愛く、男を引きつけるような彼女の顔に比べ、
友達の方は控えめな顔立ちだった。
あんまり可愛くないな・・・中の中くらいか?
メイクも控えめだ。
そういえば雰囲気が誰か芸能人に似てるな・・・誰だっけ?
あ、モー娘の紺野あさみだ。
メイクの薄い彼女の頬は赤かった。
ちなみに漏れは友達の名前を知らない。彼女の方は会話で姓まで聞いていた。
しかし気が付くと、漏れは友達を意識していた。
意識していたといっても、彼女ほどではない。
彼女の半分程度なものだ。
先にも述べたが、彼女と会う回数が減っているときに、
その友達の方から漏れに近づいてきたのだ。
正直に言おう。
漏れは、友達が漏れに気があるのではないか?
そう思い始めていた。
朝の電車で友達に会うようになってからしばらくすると、
彼女も朝の電車で漏れに会うようになった。
しかし、彼女は降りる駅が早いため、
漏れと友達が二人で乗っている時間の方が多かった。
しかし、友達は携帯ばかりいじって、
漏れと目を合わせてくれることは無かった。